JP4362171B2 - プラズマ破壊装置およびこれを用いた破壊方法 - Google Patents

プラズマ破壊装置およびこれを用いた破壊方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、岩石などを破壊するためのプラズマ破壊装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のプラズマ破壊装置としては、特開平4−222794号公報に開示されているものがある。図6に、その概要を示し、構造および動作原理について説明する。
【0003】
まず、従来のプラズマ破壊装置の構造を説明する。
パルスパワー源6は、図6に示すように、コンデンサバンク4、スイッチ3などを含む回路からなっている。このパルスパワー源6には、電源5が接続されており、パルスパワー源6の回路と、この回路を含む筐体、および車体は、図6に示すように接地されている。
【0004】
岩石などを破壊するための、破壊電極1は、パルスパワー源6に対して、1本の同軸ケーブル2によって結ばれている。破壊電極1の先端には、接地された接地電極と、パルスパワー源6のスイッチ3が閉じられたときにコンデンサバンク4によって蓄えられた電荷が導かれる電極とが備えられている(図示省略)。後者の電極は、コンデンサバンク4に蓄えられる電荷が、正電荷であれば正電極、負電荷であれば負電極と呼ぶことができるが、ここでは、便宜上正電位の場合を想定して考えることとし、以下、「正電極」とする。仮に、コンデンサバンク4に蓄えられる電荷が負電荷である場合も、正電極が負電極に置き換わるのみで同様に考えることができる。
【0005】
同軸ケーブル2の断面構造を図7(a)、(b)に示す。同軸ケーブル2は、中心部分に、導電体からなる導線部分(以下、「正導線」という。なお、負電極に対応するものを「負導線」という。)21を有し、その周囲に絶縁体23を介在して、接地された導電体からなる遮蔽層24が取囲んでいる。
【0006】
次に従来のプラズマ破壊装置の動作原理を説明する。
破壊対象となる岩石などに、ドリルなどを用いて、あらかじめ穴をあける。この穴の中に水などの電解液を注入する。この穴に破壊電極1を挿入する。
【0007】
電源5で電荷を発生させ、この電荷をコンデンサバンク4に蓄積する。ただし、コンデンサバンク4の片側の極は図6に示すように接地されている。
【0008】
コンデンサバンク4に十分に電荷が蓄積された後にスイッチ3を閉じることによって、同軸ケーブル2によって接続された破壊電極1の先端において、正電極と接地電極との間に電位差が生じ、放電が起こる。このとき、電極の先端付近の電解液が放電エネルギーによってプラズマ化し、衝撃波(衝撃圧力)を発生し、周囲の岩石などを破壊する。
【0009】
放電が起こった際の同軸ケーブル2の内部での動作を、図7を参照して説明する。放電が起こった際には、その放電に伴うパルス状の電流(以下、「パルス電流」という。)は、パルスパワー源6から破壊電極1へ流れる際には、同軸ケーブル2の中心部にある正導線21を通り、逆に戻る際には、遮蔽層24を流れる。すなわち、1本の同軸ケーブル2の内部で、正逆両方の向きの電流が流れることとなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来のプラズマ破壊装置においては、1本の同軸ケーブル2の内部で正逆両方の向きの電流が流れるものとなっていたため、パルス電流が流れる度に、中心部分の正導線21と周囲の遮蔽層24との間で、反発力を生じ、遮蔽層24には400〜500psiもの内圧が作用していたことが知られている(参考:Hamelin M., Kitzinger F.,「Hard Rock Fragmentation with Pulsed Power」Ninth Intl. Pulsed Power Conf.,1993、p3)。したがって、遮蔽層24はこの内圧に耐えうる構造にしなければならず、そのため、同軸ケーブル2の製造は困難なものとなっていた。あるいは、同軸ケーブル2の耐久性によって、一度に放出可能なエネルギーの大きさが制限されていた。
【0011】
一方、一般に、放電によって放出できるエネルギーが300kJの場合には岩石の2次破砕には十分であるが、1次破砕には不十分であることが明らかになるなど(参考:同文献、p2)、岩石の破壊には、より高いエネルギーを放出できるプラズマ破壊装置が求められている。
【0012】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたもので、より高いエネルギーを放出できるプラズマ破壊装置を提供することを目的とする。あるいは、従来のエネルギーレベルのプラズマ破壊装置を、より小パワーの部品の複合により実現することを目的とする。また、上述のような同軸ケーブル2にかかる負荷を低減したプラズマ破壊装置を提供することを目的とする。さらに、破壊対象の性質に応じた、パルス波を設定して、放電を行なえるプラズマ破壊装置をも提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に基づくプラズマ破壊装置の1つの局面においては、放電して電解液をプラズマ化することで衝撃波(衝撃圧力)を発生させるための破壊電極と、1つの前記破壊電極に電力を供給するための2組以上のパルスパワー源を含むパルスパワー源群と、上記パルスパワー源群から上記破壊電極に電力を導く電力媒介手段とを備える。
【0014】
上記構成を採用することにより、複数のパルスパワー源に電荷を蓄積できるため、これらを組合せて放出すれば、従来よりも大きなエネルギーを発生させることができる。あるいは、従来のエネルギーレベルのプラズマ破壊装置を、従来よりも小さなパルスパワー源の組合せにより実現できる。
【0015】
また、上記発明において好ましくは、上記パルスパワー源群は、所望の極性で所望の量の電荷を蓄積できるパルスパワー源の組み合わせからなり、上記パルスパワー源群のうち、一部または全部の上記パルスパワー源から、破壊対象および条件に応じて選択された、必要に応じて所望の時間差を含む、所望の順序で、破壊電極に対して電力を供給させるための、パルス波制御手段を備える。
【0016】
上記構成を採用することにより、破壊対象および条件に応じた最適なパルス電流のパターンを構成して流すことができるため、効率良く破壊作業を行なうことができる。
【0017】
さらに、上記発明において好ましくは、上記パルスパワー源群は、正電荷を蓄積する正電位パルスパワー源と、負電荷を蓄積する負電位パルスパワー源とを含む。
【0018】
上記構成を採用することにより、正電位と負電位を破壊電極に提供することができ、パルス電流波形の制御が容易になる。
【0019】
さらに、上記発明において好ましくは、上記パルス波制御手段は、上記正電位パルスパワー源および上記負電位パルスパワー源の両方から、同時に、上記破壊電極に対して電力を供給させるための、パルス同期化手段を備える。
【0020】
上記構成を採用することにより、正電位パルスパワー源に生じた電位差と負電位パルスパワー源に生じた電位差との合計の電位差が破壊電極において生じ、より大きなエネルギーをもって衝撃波(衝撃圧力)を発生させることが可能となる。
【0021】
さらに、上記発明において好ましくは、各パルスパワー源それぞれに対応する電位ごとに電力を媒介するための同軸ケーブルを備える。
【0022】
また、本発明に基づくプラズマ破壊装置の他の局面においては、上記電力媒介手段は、正電位の電力を媒介するための正電位同軸ケーブルと、負電位の電力を媒介するための負電位同軸ケーブルとを含む。
【0023】
上記構成を採用することにより、同軸ケーブルが2本に分かれ、破壊電極に向って電流が流れる同軸ケーブルと、破壊電極から電流が戻ってくる同軸ケーブルが別個となったため、同軸ケーブル内の遮蔽層の内圧の問題が解消できる。
【0024】
さらに、上記発明において好ましくは、上記正電位同軸ケーブルおよび上記負電位同軸ケーブルのうち少なくとも一方は、上記正電位または上記負電位の電力を媒介可能な導線と、絶縁体を介在して上記導線の周りを取囲むように形成され、接地された導電体からなる遮蔽層とを含む。
【0025】
上記構成を採用することにより、電流が流れる導線を、接地電位でかつ電流がほとんど流れない遮蔽層が取囲んでいるため、絶縁体の電界分布を固定する遮蔽層に電磁力による絶縁体からの剥離力が生じ得ない。このため、いかなる状態でも絶縁体内に均等な電界分布を安定して生じさせることができる。この結果、電界集中による絶縁破壊の発生を防止できる。
【0026】
さらに、上記発明において好ましくは、上記破壊電極は、絶縁体の中に互いに隔離して並列して配置された正電極および負電極と、上記絶縁体を介在して上記正電極および上記負電極をともに取囲む接地電極とを有する。
【0027】
上記構成を採用することにより、正電極と負電極との間で放電を起こさせることが可能となり、これらは、絶縁体を介在して接地電極によって取囲まれているため、作業上も安全である。
【0028】
さらに、上記発明において好ましくは、上記正電極および上記負電極は、絶縁体を介在して一方が他方を取囲む同心状に配置されている。
【0029】
上記構成を採用することにより、正電極と負電極との間で放電を発生させやすくなる。
【0030】
さらに、上記発明において好ましくは、上記正電極、上記負電極および上記接地電極は、これらのうちの任意の2つの間で放電が可能なように、各々の先端の位置関係が定められている。
【0031】
上記構成を採用することにより、放電を起こす組合せを選ぶことができ、種々のパルス波を発生できるため、破壊対象の性質や条件に適した運転が可能となる。
【0032】
また、本発明に基づく破壊方法においては、請求項1から10のいずれかに記載のプラズマ破壊装置を用いて、各パルスパワー源のスイッチを閉じるタイミングを組合せることで所望のパルス波を生成する。
【0033】
上記方法を採用することによって、破壊対象や条件に応じたパルス電流の波形を作り出すことができ、その結果、効率良く破壊作業を行なうことができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
(装置全体の構成)
図1、図2を参照して、本発明に基づく本実施の形態におけるプラズマ破壊装置の構成を説明する。
【0035】
この装置は、図1に示すように、正電荷を蓄積するための正電位パルスパワー源61と、負電荷を蓄積するための負電位パルスパワー源62とからなるパルスパワー源群60を備えている。図1では、電源5は、各パルスパワー源ごとに独立して設けられているが、適宜、1つの電源5で複数のパルスパワー源への電力供給を兼用して行なってもよい。
【0036】
パルスパワー源群60からは電力媒介手段として同軸ケーブル2が延びており、電力を破壊電極1に供給することができる。従来のプラズマ破壊装置においては、同軸ケーブル2は図6に示すように1本であったが、本実施の形態におけるプラズマ破壊装置においては、正電位パルスパワー源61と破壊電極1とをつなぐ正電位同軸ケーブルと、負電位パルスパワー源62と破壊電極1とをつなぐ負電位同軸ケーブルとの2本に分かれている。したがって、パルスパワー源群60から破壊電極1に向って流れる電流と、破壊電極1からパルスパワー源群60に戻ってくる電流とは、図3に示すように、別々の同軸ケーブルを通ることとなる。
【0037】
(同軸ケーブルの構成)
図3は、同軸ケーブル2の構成を示したものである。図3(a)、(b)に、正電位同軸ケーブルの構成を示し、図3(c)、(d)に、負電位同軸ケーブルの構成を示す。正電位同軸ケーブルを例にとると、図3(a)、(b)に示すように、正電位の電力を媒介可能な導線である正導線が中心に位置し、その周りを絶縁体23を介在して、遮蔽層24が取囲んでいる。なお、遮蔽層24は接地されている。さらに遮蔽層24の外側は保護のための絶縁層によって被覆されている。負電位同軸ケーブルの場合は、図3(c)、(d)に示すように、中心の導線が負導線になる点が異なるのみで、他の構成は同様である。もっとも、「正導線」、「負導線」とは、役割に起因した便宜上の区別のための呼び名にすぎず、物自体は同じものであってよい。
【0038】
なお、正電位と負電位の同軸ケーブル2の組み合わせとすることが本来望ましいが、異なる2つの電位であれば、2本の同軸ケーブル2を、各パルスパワー源それぞれに対応する電位ごとに電力を媒介するための同軸ケーブル2としても、これらの電位の差が十分に大きければ、破壊電極1において放電を起こさせ、同様の効果を得ることができる。
【0039】
(破壊電極の構成)
この装置における破壊電極1の構成を、図2に示す。破壊電極1は、正電極11、負電極12を有し、図2(a)に示すように、正電極11の周りを絶縁体13を介在して同心状に取囲むように、負電極12が形成されている。さらに、図2(b)に示すように、正電極11および負電極12の根元部分においては外側を絶縁体13を介在して取囲むように接地電極14が形成されている。すなわち、正電極11および負電極12は破壊電極1の先端にまで延在しているのに対し、接地電極14は先端までは延在しておらず、手前に留まっている。接地電極14は、同軸ケーブル2内の遮蔽層24を経由して接地されている。
【0040】
(使用方法)
破壊対象となる岩石などに、ドリルなど(図示省略)によって、穴をあけ、この穴に水などの電解液を注入し、この穴に破壊電極1を挿入する工程までは従来技術に基づくものと同じである。
【0041】
電源5で電荷を発生させ、この電荷を、正電位および負電位パルスパワー源61,62のコンデンサバンク4にそれぞれ蓄積する。このとき、正電位パルスパワー源61の負電位側および負電位パルスパワー源62の正電位側は共に接地されているため、正電位パルスパワー源61には正電位が、負電位パルスパワー源62には負電位が、それぞれ充電されることとなる。
【0042】
コンデンサバンク4への十分な充電が完了したら、正電位および負電位パルスパワー源61,62のスイッチ3を同時に閉じる。スイッチ3を同時に閉じることで、破壊電極1先端で放電が起こり、破壊対象は破壊される。
【0043】
(作用効果)
正電位および負電位パルスパワー源61,62のいずれか1つ当りに生じる電位差をVとすると、上述のように正電位および負電位パルスパワー源61,62のスイッチ3を同時に閉じることで、正電極11と負電極12との間には2×Vの電位差が生じ、破壊電極1先端では2×CV2/2のエネルギーを発生させることができる。すなわち、図6に示す従来技術に基づくプラズマ破壊装置の場合の2倍のエネルギーを発生させることができる。
【0044】
なお、本実施の形態は、従来技術に基づくプラズマ破壊装置において、破壊電極1の構造さえ変更すれば、電源部分については小規模な変更のみで実現することができる。
【0045】
本実施の形態においては、2本の同軸ケーブル2によって別個に導かれる正導線21と負導線22との間で電流が流れるため、各同軸ケーブル2の遮蔽層24には電流はほとんど流れない。したがって、従来問題であった遮蔽層24に対する内圧はほぼ問題とならず、従来に比べて非常に簡便な遮蔽層24を有する同軸ケーブル2を用いることができる。また、正逆の向きの電流は1本の同軸ケーブル2内を流れるのではなく、2本の別個の同軸ケーブル2内をそれぞれ流れるため、正逆の向きの電流の間に生じる反発力は、相互の同軸ケーブル2の拘束または動きにより対応することができる。
【0046】
さらに、従来は、同軸ケーブル2の耐久性は、プラズマ破壊装置のパワーの上限を定める要因の一つとなっていたが、本実施の形態によれば、上述のように遮蔽層24の内圧が問題とならないため、パワーの上限を定めるに当たって、同軸ケーブル2の都合を無視できる。
【0047】
また、遮蔽層24には電流がほとんど流れないことから、1つのパルスパワー源当りでみれば、パルスパワー源から破壊電極までの電流が流れる経路が半減する。したがって、1つのパルスパワー源当りの同軸ケーブル2によるジュール損が減少する。
【0048】
なお、上記説明においては、破壊電極1の中心に正電極11を配置したが、負電極12を中心に配置することによって、正負の電極の配置を逆にしても同様の効果が得られる。
【0049】
(実施の形態2)
回路構成および使用方法は実施の形態1と同じであるが、破壊電極1の構造は、以下に示すものとすることもできる。
【0050】
(実施例1)
図4に他の破壊電極1の構成の例を示す。図1に示したものに比べて、接地電極14が破壊電極の先端まで延在している点が異なる。この構成を採用することによって、破壊電極1の先端まで完全に接地電極14に被覆されるため、作業上安全であり、かつ電磁波などの発生も少なくなる。
【0051】
このような構成の破壊電極1によっても、実施の形態1と同様の使用方法によって同様の効果が得られる。
【0052】
なお、正電極と負電極の配置を逆にしても同様の効果が得られる。
(実施例2)
図5にさらに他の破壊電極1の構成の例を示す。破壊電極1は各電極が同心状に配置された構成である必要はなく、図5に示すような構成であってもよい。すなわち、接地電極14に取囲まれた絶縁体13の中に、正電極11および負電極12が、互いに隔離して並列して配置されている。
【0053】
このような構成の破壊電極1によっても、実施の形態1と同様の使用方法によって同様の効果が得られる。
【0054】
(実施例1,2に共通の作用効果)
実施例1および2に示した破壊電極1(図4、図5)の構成においては、正電極11、負電極12および接地電極14の先端が、ほぼ同一平面内にあるため、正電極11と負電極12との間以外にも、必要に応じて、正電極11と接地電極14との間や、負電極12と接地電極14との間において、放電を起こさせることができる。したがって、放電を起こす組合せを選ぶことができ、種々のパルス波を発生できるため、破壊対象の性質や条件に適した運転が可能となる。
【0055】
なお、これらの電極の先端は、必ずしもほぼ同一平面内にある必要はなく、任意の2つの間で放電が可能な範囲内であれば先端位置がずれていても同様の効果が得られる。
【0056】
(実施の形態3)
(装置の構成)
本実施の形態における、プラズマ破壊装置の回路構成は、図1に示すものと、類似するが、パルスパワー源群60を構成するパルスパワー源は図1に示すように正電位パルスパワー源61と負電位パルスパワー源62との組合せにする代りに、同じ極性、すなわち、2つのパルスパワー源をいずれも正電位パルスパワー源61となっている。
【0057】
この場合、正電極と接地電極14との間で放電が起こるため、破壊電極1の構造については、従来のプラズマ破壊装置におけるように、破壊電極1に備える電極を正電極11と接地電極14のみとすることができる。電力媒介手段としては、1本の同軸ケーブル2のみを使用することができる。ただし、その同軸ケーブル2のパルスパワー源群60側の一端においては、正導線21から2つの正電位パルスパワー源61の正電位側に分岐させる一方、遮蔽層24から2つの正電位パルスパワー源61の接地側に分岐させることとする。この場合、遮蔽層24にも電流が流れることとなるから、同軸ケーブル2内の遮蔽層の内圧や電磁波の問題が存在する。そのため、同軸ケーブル2は、十分な耐久性を持たせた構造とし、必要な電磁波対策を行なう。
【0058】
(使用方法)
同じ極性のパルスパワー源を2つ備えている場合、これらのスイッチ3を適当な時間差を設けて連続して閉じることによって、2つのピークをもつ電流を一連のパルス電流として流すことができる。したがって、放電による衝撃波(衝撃圧力)も連続して生じることとなる。
【0059】
(作用効果)
破壊対象の性質や条件によっては、1回の放電による1回の衝撃よりも、2回の連続した放電による連続的な衝撃を与えた方が破壊しやすい場合があると考えられる。このような破壊対象の性質や条件に応じて、第1のパルス、第2のパルスとして放出するエネルギーの大きさや両者の時間的間隔を適宜設定し、一連のパルス電流として連続して流すことによって、効率良く破壊を行なうことができる。
【0060】
なお、2つのスイッチ3を連続して閉じる代りに、1つずつ閉じて、別個の破壊作業を行なうこととしてもよい。その場合であっても、2つのパルスパワー源をあらかじめ充電しておけば、一方のパルスパワー源による放電を行なった後に、他方のパルスパワー源の充電時間を待たずに2回目の放電を行なうことができ、作業効率を向上させることができる。
【0061】
なお、パルスパワー源の数は2に限らず、上述と同様に3以上設けてもよく、その場合さらに多くの回数の放電を連続して行なうことができるため、より好ましい。
【0062】
なお、上記説明では、正電位パルスパワー源61の場合について説明したが、負電位パルスパワー源62の場合でも同様の構成を採用することができる。すなわち、負電位パルスパワー源62を複数配置することとしてもよい。
【0063】
また、同じ極性の複数のパルスパワー源61,62を設ける場合に、各パルスパワー源61,62に蓄えられる電荷量や電位は、等しくする必要はなく、異なる値とすることもできる。
【0064】
(実施の形態4)
(装置の構成)
パルスパワー源群60としては、実施の形態1においては、1の正電位パルスパワー源61と1の負電位パルスパワー源62とからなるものを用いて説明し、実施の形態3においては、同じ極性のパルスパワー源を複数設ける場合について説明した。しかし、パルスパワー源群60の構成はこれらの場合に留まらず、正電位パルスパワー源61と負電位パルスパワー源62とを任意の数ずつ組合せたものとしてもよい。
【0065】
正負問わず複数のパルスパワー源61,62からなるパルスパワー源群60を有し、破壊対象の性質や条件に応じて、その都度、放出する一連のパルス電流の波のパターン、すなわち、極性、エネルギーの大きさ、連続する数、時間的間隔、などの条件を任意に設定できるパルス波制御手段を有するものとする。一連のパルス電流の組合せにおいては、その組合せに含まれるパルス電流の一部または全部について時間的間隔をあけずに同期させてもよい。そのように同期させることで、大きなエネルギーを放出することができ、より強い衝撃波(衝撃圧力)を引き起こすことができる。
【0066】
なお、パルス波制御手段としては、任意の公知の技術により、各パルスパワー源のスイッチ3を閉じるタイミングを制御するものとする。
【0067】
(作用効果)
破壊対象の性質や条件によって、破壊のために有利な衝撃波のパターンが異なる場合には、パルス波制御手段により、最適なパルス波を設定し、各パルスパワー源61,62に別個に蓄積された電荷の一部または全部を、一連のパルス電流として連続して、または、同時に、流すことによって、破壊に有利な衝撃波を発生させることができ、効率良く破壊作業を行なうことができる。
【0068】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0069】
【発明の効果】
本発明に基づくプラズマ破壊装置によれば、正負の2種類のパルスパワー源を用いて同時にスイッチを閉じることにより、単極の場合の2倍の電位差を生じさせて、2倍のエネルギーを放出することができるため、より大きな衝撃波を発生させることが可能となる。また、パルス電流は、破壊電極に向って流れるものと戻ってくるものとが別々の同軸ケーブルを流れ、各同軸ケーブルの遮蔽層には電流がほとんど流れないため、従来遮蔽層に生じていた内圧の問題を解消することができる。その結果、簡便な遮蔽層で足りることとなり、同軸ケーブルの製造が容易になる。
【0070】
また、パルス波制御手段により、破壊対象や条件に応じて、複数のパルスパワー源から一連のパルス電流として所望のパターンのパルス波を形成して流すことができるため、効率良く破壊作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に基づく実施の形態1におけるプラズマ破壊装置の構成を示す概念図である。
【図2】 本発明に基づく実施の形態1におけるプラズマ破壊装置の破壊電極の構造を示す断面図である。
【図3】 本発明に基づく実施の形態1におけるプラズマ破壊装置の同軸ケーブルの構造を示す断面図である。
【図4】 本発明に基づく実施の形態2の実施例1におけるプラズマ破壊装置の破壊電極の構造を示す断面図である。
【図5】 本発明に基づく実施の形態2の実施例2におけるプラズマ破壊装置の破壊電極の構造を示す断面図である。
【図6】 従来技術に基づくプラズマ破壊装置の構成を示す概念図である。
【図7】 従来技術に基づくプラズマ破壊装置の同軸ケーブルの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 破壊電極、2 同軸ケーブル、3 スイッチ、4 コンデンサバンク、5電源、6,61,62 パルスパワー源、11 正電極、12 負電極、13絶縁体、14 接地電極、21 正導線、22 負導線、23 絶縁体、24遮蔽層、60 パルスパワー源群。

Claims (11)

  1. 放電して電解液をプラズマ化することで衝撃波を発生させるための破壊電極と、
    1つの前記破壊電極に電力を供給するための2組以上のパルスパワー源を含むパルスパワー源群と、
    前記パルスパワー源群から前記破壊電極に電力を導く電力媒介手段とを備える、
    プラズマ破壊装置。
  2. 前記パルスパワー源群は、所望の極性で所望の量の電荷を蓄積できるパルスパワー源の組み合わせからなり、
    前記パルスパワー源群のうち、一部または全部の前記パルスパワー源から、
    破壊対象および条件に応じて選択された、必要に応じて所望の時間差を含む、所望の順序で、破壊電極に対して電力を供給させるための、パルス波制御手段を備える、
    請求項1に記載のプラズマ破壊装置。
  3. 前記パルスパワー源群は、
    正電荷を蓄積する正電位パルスパワー源と、
    負電荷を蓄積する負電位パルスパワー源とを含む、
    請求項1または2に記載のプラズマ破壊装置。
  4. 前記パルス波制御手段は、前記正電位パルスパワー源および前記負電位パルスパワー源の両方から、同時に、前記破壊電極に対して電力を供給させるための、パルス同期化手段を備える、請求項3に記載のプラズマ破壊装置。
  5. 前記電力媒介手段は、各パルスパワー源それぞれに対応する電位ごとに電力を媒介するための同軸ケーブルを備える、請求項1から4のいずれかに記載のプラズマ破壊装置。
  6. 前記電力媒介手段は、
    正電位の電力を媒介するための正電位同軸ケーブルと、
    負電位の電力を媒介するための負電位同軸ケーブルとを含む、
    請求項3または4に記載のプラズマ破壊装置。
  7. 前記正電位同軸ケーブルおよび前記負電位同軸ケーブルのうち少なくとも一方は、
    前記正電位または前記負電位の電力を媒介可能な導線と、
    絶縁体を介在して前記導線の周りを取囲むように形成され、接地された導電体からなる遮蔽層とを含む、
    請求項6に記載のプラズマ破壊装置。
  8. 前記破壊電極は、
    絶縁体の中に互いに隔離して配置された正電極および負電極と、
    前記絶縁体を介在して前記正電極および前記負電極をともに取囲む接地電極とを有する、
    請求項1から7のいずれかに記載のプラズマ破壊装置。
  9. 前記正電極および前記負電極は、
    絶縁体を介在して一方が他方を取囲む同心状に配置された、
    請求項8に記載のプラズマ破壊装置。
  10. 前記正電極、前記負電極および前記接地電極は、
    これらのうちの任意の2つの間で放電が可能なように、各々の先端の位置関係が定められている、
    請求項8または9に記載のプラズマ破壊装置。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載のプラズマ破壊装置を用いて、各パルスパワー源のスイッチを閉じるタイミングを組合せることで所望のパルス波を生成する、破壊方法。
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