JP3898931B2 - 破砕装置用電極および破砕装置 - Google Patents

破砕装置用電極および破砕装置 Download PDF

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    • B02C2019/183Crushing by discharge of high electrical energy

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、破砕装置用電極および破砕装置に関し、より特定的には、高い破砕効率を示す破砕装置用電極および破砕装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、岩石などを破砕する破砕方法の一つとして、岩石などの破砕対象物に形成した下孔に電極を挿入し、その電極において放電を発生させ、この放電によるエネルギーを利用して破砕対象物を破砕する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような破砕方法に用いる破砕装置として、発明者はたとえば図7および図8に示すような破砕装置を提案している。図7は、本発明に関連する破砕装置を示す模式図である。また、図8は、図7に示した破砕装置に設置された電極の部分拡大模式図である。図7および図8を参照して、本発明に関連する破砕装置を説明する。
【0004】
図7および図8を参照して、本発明に関連する破砕装置は、同軸電極101とパルスパワー源106と電源109と同軸ケーブル105とを備える。パルスパワー源106はコンデンサ108、スイッチ107などを含む回路からなる。パルスパワー源106には電源109が接続されている。パルスパワー源106の回路は接地されている。
【0005】
破砕装置用電極である同軸電極101はパルスパワー源106と同軸ケーブル105により接続されている。同軸電極101は、中心軸にそって延在する中心電極112と、この中心電極112の外周面上に配置された絶縁体113と、この絶縁体113の外周面上に配置された外周電極115とを備える。同軸電極101は、岩石などの破砕対象物102に形成された下孔110の内部に挿入されている。下孔110の内部には電解液としての水111が配置されている。同軸電極101の先端部116では、中心電極112の端部が突出している。外周電極115は、先端部116側に位置する外周電極部分114aと、この外周電極部分114aと中心軸の延びる方向において間隔を隔てて配置された外周電極部分114bとを含む。
【0006】
次に、図7および図8に示した破砕装置の動作を簡単に説明する。まず、あらかじめコンデンサ108に電源109から電荷が供給・蓄積される。そして、破砕対象物102に形成された下孔110の内部に同軸電極101を配置する。この状態で、パルスパワー源106のスイッチ107が閉じられるとコンデンサ108に蓄えられた電荷が同軸電極101に導入される。この結果、中心電極112の端部と外周電極部分114aとの間で第1の放電が発生することによりアーク120が形成される。そして、外周電極部分114aと外周電極部分114bとの間においても放電が発生し、もう一つのアーク120が形成される。
【0007】
このように、同軸電極101に電流が供給され、中心電極112と外周電極115との間に当該電流が流れる場合、上述のように2つのアーク120を形成できる。図7および図8に示した破砕装置では、このように放電が起きる個所の数を2つ(複数)にすることにより、電流値を一定にした場合において、従来より放電抵抗を増加させることができる。ここで、放電により消費されるエネルギーは同軸電極101に供給される電流値の2乗×放電抵抗に比例するので、放電により消費されるエネルギー(つまり、破砕に利用されるエネルギー)を大きくできる。したがって、破砕装置の破砕能力を大きくできる。
【0008】
しかし、上述した破砕装置においては、以下のような問題があった。すなわち、図8に示すように同軸電極101の先端部において、中心電極112と外周電極電極部分114aとの間で放電が発生することによりアーク120が形成されている。この同軸電極101の先端部において発生した放電により発生する圧力波は、同軸電極101の先端部の周囲に位置する破砕対象物102を破砕するとともに、同軸電極101にも衝撃を与える。この結果、上記放電を発生させると、同軸電極101が下孔110から飛び出す方向(図8における右方向)に応力を受けることにより、同軸電極101が下孔110から飛び出す方向に移動する。
【0009】
上記ように同軸電極101が移動する際の移動速度は極めて速いため、同軸電極101が移動した後には、それまで同軸電極101の先端部が位置していた領域(すなわち同軸電極101の先端部においてアーク120が発生した領域)に真空領域が形成される。同軸電極101によりアーク120が形成された領域にこのような真空領域が位置する場合、放電による圧力波を発生・伝播させる媒体となる水111が上記真空領域には存在しないので、同軸電極101でいくら放電を発生させても、破砕対象物102を破砕するための充分な強さの圧力波を発生させることが困難になる。つまり、同軸電極101に投入された電力が無駄に消費されることになるので、同軸電極101に投入した電力を破砕対象物102の破砕に効率的に利用できない(破砕効率が低下する)場合があった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、投入された電力を効率良く破砕対象物の破砕に利用することが可能な破砕装置用電極および破砕装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の1の局面における破砕装置用電極は、中心導電体と絶縁体と外周導電体とを備える。中心導電体は先端電極部と、この先端電極部に接続され、中心軸に沿って延在するとともに中心軸の放射方向において先端電極部の寸法より小さい寸法を有する中心電極部とを含む。絶縁体は中心電極部の側壁面上に配置されている。外周導電体は絶縁体上において、先端電極部とは間隙形成用絶縁体を介して間隙を隔てて配置されている。中心軸からの先端電極部の外周側面の位置と、中心軸からの間隙形成用絶縁体および外周導電体の外周側面の位置とは等しくなっている。
【0012】
このようにすれば、中心電極部と外周導電体との間隙(ギャップ)は破砕装置用電極の側面に形成されることになる。破砕装置用電極の中心導電体と外周導電体とに電流を供給すると、この間隙において放電が発生する。このため、破砕対象物に形成され水などの電解液で満たされた下孔内部に破砕装置用電極(以下、電極とも言う)を配置した状態で、電極に電力を供給して放電を発生させる場合、放電を電極の先端部側ではなく側面側において発生させることができる。したがって、破砕装置用電極は放電により発生する圧力波の衝撃を側面側から(破砕装置用電極の延びる中心軸方向とはほぼ垂直な方向から)受けることになる。
【0013】
従来のように電極の先端部側で放電が発生した場合には、電極は先端部側から応力を受けるので下孔から飛び出す方向に大きく移動することになっていた。一方、本発明による破砕装置用電極では、上述のように側面側で放電が発生するので、従来のように電極が下孔から飛び出す方向に大きく移動することを抑制できる。この結果、下孔の内部で電極が移動することに起因して、電極の先端部付近で真空領域が形成されることを抑制できる。したがって、この真空領域の存在により、放電によって形成される圧力波の強度が小さくなる、あるいは圧力波が形成されないといった問題の発生を防止できる。
【0014】
また、電極の側面側での放電に起因して、電極が下孔から飛び出す方向にある程度移動するような場合、多少ではあるが電極の先端部付近に上記真空領域が形成される可能性もある。しかし、本発明による破砕装置用電極では、上述のようにその側面側において放電が発生する。つまり、真空領域が形成される電極先端部から間隙を隔てた領域(電極の側面上の領域)において放電を発生させている。このため、電極がある程度移動して電極の先端部付近に形成された真空領域は、電極の側面上の領域に形成された放電にほとんど影響を及ぼさない。この結果、放電により充分な強さの圧力波を形成できる(放電のエネルギーを、圧力波のエネルギーへと効率良く転換できる)ので、破砕能力の高い破砕装置用電極を得ることができる。
【0015】
なお、電極はその側面側から放電に起因する圧力波の衝撃を受けることになる。このため、下孔の内部において、中心軸と垂直な方向に電極は移動する可能性は有る。しかし、移動方向には水などの電解液が存在するので、電極の移動がなされることはすなわち電極が水を押しのけることになる。押しのけられた水は、電極の周囲を周りこんで、電極の移動に伴って発生する真空領域に突入することになる。この結果、真空領域は消滅することになる。したがって、中心軸と垂直な方向(横方向)に電極が移動することによる問題は無いと考えられる。一方、電極が下孔から飛び出す方向(上方向)に移動する場合、電極の先端部付近に形成された真空領域に水が(電極の周囲を)周りこんで侵入するための力は重力しかない。したがって、電極が上方向に移動する場合、真空領域の発生は避けられない。
【0016】
上記1の局面における破砕装置用電極では、外周導電体が中心軸に沿った方向において互いに間隙を隔てて配置された複数の外周導電体部分を含むことが好ましい。
【0017】
この場合、複数の外周導電体部分の間には、複数の間隙(ギャップ)が形成されることになる。したがって、中心導電体と外周導電体とに電流を供給することにより、上記複数のギャップにおいて複数の放電を発生させることができる。この結果、破砕装置用電極における放電抵抗をより高めることができるので、破砕装置用電極に供給されるエネルギーを一定とした場合、破砕に利用されるエネルギーを大きくできる。したがって、破砕効率を向上させることができる。
【0018】
上記1の局面における破砕装置用電極は、先端電極部からみて中心電極部が接続された側とは反対側に設置されたスペーサ部材をさらに備えることが好ましい。
【0019】
この場合、スペーサ部材のサイズを変更することにより、破砕装置用電極の先端部(スペーサ部材において先端電極部が位置する領域とは反対側の端部)から、放電が発生する領域である先端電極部と外周導電体との間の間隙までの距離を任意に変更できる。このため、外周導電体や中心導電体の構成を一定にした状態で、破砕装置用電極の側面において放電の発生する領域の位置を任意に変更できる。
【0020】
この発明の別の局面における破砕装置用電極は、先端部と、この先端部とは反対側に位置する後端部とを含み、放電を発生させることにより破砕対象物を破砕する破砕装置用電極であって、後端部から先端部へ延びる方向に延在し、先端部側に位置する一方端部を含む一方線状導電体と、一方線状導電体の延びる方向と同じ方向に延在し、一方線状導電体と誘電体を介して対向するとともに、先端部側に位置する一方端部を含む他方線状導電体と、一方線状導電体を覆うように形成された一方被覆部材と、他方線状導電体を覆うように形成された他方被覆部材とを備える。上記別の局面における破砕装置用電極では、一方線状導電体と他方線状導電体とのいずれか一方が前記後端部側へ屈曲する屈曲部が先端部に配置され、一方線状線状導電体の一方端部と他方線状導電体の一方端部とが間隙を隔てて対向するように配置されている。
【0021】
このようにすれば、一方線状導電体と他方線状導電体との間隙(ギャップ)は破砕装置用電極の側面に形成されることになる。破砕装置用電極の一方線状導電体と他方線状導電体とに電流を供給すると、この間隙において放電が発生する。このため、破砕対象物に形成され水などの電解液で満たされた下孔内部に破砕装置用電極(以下、電極とも言う)を配置した状態で、電極に電力を供給した場合、電極の先端部側ではなく側面側において放電を発生させることができる。
【0022】
したがって、破砕装置用電極は放電により発生する圧力波の衝撃を側面側から受けることになる。このため、本発明による破砕装置用電極では、下孔から飛び出す方向に圧力波の衝撃を受けることがないので、従来のように電極が下孔から飛び出す方向に大きく移動することを抑制できる。そのため、下孔の内部で電極が移動することに起因して、電極の先端部付近で真空領域が形成されることを抑制できる。この結果、真空領域の存在により、放電によって形成される圧力波の強度が小さくなる、あるいは圧力波が形成されないといった問題の発生を防止できる。
【0023】
また、上記別の局面における破砕装置用電極は比較的構造が簡単であり、一方線状導電体および他方線状導電体として、たとえば一般的な絶縁被覆導電線を用いることができる。このため、上記1の局面における破砕装置用電極より製造工程を簡略化できる。
【0024】
また、電極の側面側での放電に起因して、電極が下孔から飛び出す方向にある程度移動するような場合、多少ではあるが電極の先端部付近に上記真空領域が形成される可能性もある。しかし、本発明による破砕装置用電極では、上述のようにその側面側において放電が発生する。つまり、真空領域が形成される電極先端部から間隙を隔てた領域(電極の側面上の領域)において放電を発生させている。このため、電極の先端部付近に形成された真空領域は、電極の側面上の領域に形成された放電にほとんど影響を及ぼさない。この結果、放電により充分な強さの圧力波を形成できる。
【0025】
なお、電極はその側面側から放電に起因する圧力波の衝撃を受けることになる。このため、下孔の内部において、電極の延びる方向と垂直な方向に電極は移動する可能性は有る。しかし、移動方向には水などの電解液が存在するので、電極が移動することはすなわち電極が水を押しのけることを意味する。押しのけられた水は、電極の周囲を周りこんで、電極の移動に伴って発生する真空領域に突入することになる。この結果、真空領域は消滅する。したがって、中心軸と垂直な方向(横方向)に電極が移動することによる問題は無いと考えられる。
【0026】
上記別の局面における破砕装置用電極では、他方線状導電体が間隙を隔てて配置された複数の導電体を含んでいてもよく、他方被覆部材は、複数の導電体のそれぞれを覆うように形成された複数の被覆部材部分を含んでいてもよく、複数の導電体の間の間隙は先端部以外の領域に位置することが好ましい。
【0027】
この場合、複数の導電体の間には、複数の間隙が形成されることになる。したがって、一方線状導電体と他方線状導電体とに電流を供給することにより、上記複数の間隙においてそれぞれ放電を発生させることができる。この結果、破砕装置用電極における放電抵抗をより高めることができる。したがって、破砕装置用電極に供給されるエネルギーを一定とした場合、破砕に利用されるエネルギーを大きくできる。
【0034】
この発明のもう一つの局面における破砕装置は、上記1の局面または上記別の局面における破砕装置用電極を備える。
【0035】
このようにすれば、破砕能力の高い破砕装置を容易に得ることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0037】
(実施の形態1)
図1は本発明による破砕装置の実施の形態1を示す模式図である。図2は、図1に示した破砕装置に用いられる電極の先端部を示す拡大断面模式図である。図1および2を参照して、本発明による破砕装置の実施の形態1を説明する。
【0038】
図1および2を参照して、本発明による破砕装置は、同軸構造の電極1とパルスパワー源6と電源9と同軸ケーブル5とを備える。パルスパワー源6はコンデンサ8、スイッチ7などを含む回路からなる。パルスパワー源6には電源9が接続されている。パルスパワー源6の回路は接地されている。破砕装置用電極である電極1はパルスパワー源6と同軸ケーブル5により接続されている。
【0039】
電極1は、中心軸に沿って延在する中心導電体としての中心電極16と、この中心電極16の側壁面の一部上に配置された絶縁体18と、この絶縁体18の外周面上に配置された外周導電体としての外周電極15とを備える。中心電極16は、電極1の先端側に位置し、相対的に大きな直径を有する先端電極部としての中心電極先端部13と、この円柱状の中心電極先端部13に接続され、電極1の先端部とは反対側に位置する端部にまで中心軸に沿って延在する中心電極部としての円柱状の中心電極ベース部12とからなる。なお、電極1の中心軸に沿った方向における中心電極先端部13の長さLは20mm以上であることが好ましい。
【0040】
中心電極先端部13の直径(中心軸の放射方向における寸法)は中心電極ベース部12の直径(中心軸の放射方向における寸法)よりも大きくなっている。そして、この中心電極ベース部12の側壁面上に絶縁体18が配置されている。絶縁体18の形状は、中心電極ベース部12を囲むようないわゆる円筒形状である。この絶縁体18の外周面上に、外周電極15を構成する外周導電体部分としての外周電極部分14a〜14cが絶縁体17を介して間隔を隔てて配置されている。外周電極部分14a〜14cの形状は、それぞれ絶縁体18を囲むような円筒形状である。また、外周電極部分14aは、中心電極先端部13と間隔を隔てて配置されている。外周電極部分14aと中心電極先端部13との間には絶縁体17が配置されている。
【0041】
この結果、第1の導電体としての中心電極先端部13と外周電極部分14aとの間、外周電極部分14aと外周電極部分14bとの間、外周電極部分14bと外周電極部分14cとの間において、それぞれギャップ19が形成される。導電体部分としての外周電極部分14a〜14cを含む外周電極15が第2の導電体に対応する。図1および図2からもわかるように、電極1の延在する方向に沿った側壁部にのみ、間隙としてのギャップ19は形成されている。また、電極1の側面において、電極1の中心軸からの中心電極先端部13の外周側面の位置と、電極1の中心軸からの絶縁体17および外周電極部分14a〜14cの外周側面の位置とはほぼ等しくなっている。なお、中心電極ベース部12および外周電極部分14cは、それぞれケーブル5を介してパルスパワー源6と電気的に接続されている。
【0042】
このように、図1および図2に示した破砕装置では、中心電極16を構成する中心電極先端部13と外周電極部分14aとの間隙(ギャップ19)が電極1の側面に形成されることになる。また、外周電極部分14a〜14cの間に形成されるギャップ19も同様に電極1の側面に形成される。この状態で電極1の中心電極16と外周電極15とに電流を供給すると、このギャップ19において放電が発生する。つまり、放電を電極1の先端部側ではなく側面側において発生させることができる。したがって、電極1は放電により発生する圧力波の衝撃を側面側から(電極1の延びる中心軸方向に対してほぼ垂直な方向から)受けることになる。
【0043】
従来のように電極1の先端部側で放電が発生した場合には、電極1は先端部側から応力を受けるので下孔10から飛び出す方向に大きく移動することになっていた。一方、図1および図2に示した破砕装置では、上述のように電極1の側面側で放電が発生するので、従来のように電極1が下孔10から飛び出す方向に大きく移動することを抑制できる。この結果、下孔10の内部で電極1が移動することに起因して、電極1の先端部付近で真空領域が形成されることを抑制できる。したがって、電極1の先端部において放電の発生する領域に真空領域が形成されることを防止できるので、この真空領域の存在により、放電によって形成される圧力波の強度が小さくなる、あるいは圧力波が形成されないといった問題の発生を抑制できる。
【0044】
また、電極1の側面側での放電に起因して、電極1が下孔10から飛び出す方向にある程度移動するような場合、多少ではあるが電極1の先端部付近に上記真空領域が形成される可能性もある。しかし、本発明による破砕装置では、上述のように電極1の側面側において放電が発生する。つまり、真空領域が形成される電極1の先端部から間隙を隔てた領域(電極1の側面上の領域)において放電を発生させている。このため、電極1が下孔10から飛び出す方向にある程度移動して電極1の先端部付近に形成された真空領域は、電極1の側面上の領域に形成された放電にほとんど影響を及ぼさない。この結果、放電により充分な強さの圧力波を形成できるので、破砕能力の高い(破砕効率の良い)破砕装置を実現できる。この場合、発明者が電極の放電時の動きを解析した結果によれば、中心電極先端部13の長さLを20mm以上にしておけば、真空領域が放電に影響を及ぼすことを確実に防止できる。
【0045】
なお、電極1はその側面側から放電に起因する圧力波の衝撃を受けることになる。このため、下孔10の内部において、中心軸と垂直な方向に電極1は移動する。しかし、この場合、下孔10の内径を電極1の外径よりわずかに大きくなるように決定しておけば、中心軸と垂直な方向における下孔10内部での電極1の移動距離を充分小さくできる。このため、中心軸と垂直な方向における電極1の移動に伴って発生する真空領域のサイズを充分小さくできる。この結果、放電により圧力波を形成する工程に対する、上記電極1の側面側に形成される真空領域の影響を充分小さくできる。
【0046】
また、図1および図2に示した破砕装置では、すでに述べたように外周電極15が中心軸に沿った方向において互いに間隙を隔てて配置された複数の外周導電体部分としての外周電極部分14a〜14cを含んでいる。この場合、複数の外周電極部分14a〜14cの間には、複数のギャップ19が形成されることになる。したがって、中心電極16と外周電極15とに電流を供給することにより、上記複数のギャップ19において複数の放電を発生させることができる。この結果、電極1における放電抵抗をより高めることができるので、電極1に供給されるエネルギーを一定とした場合、破砕に利用されるエネルギーを大きくできる。したがって、破砕効率を向上させることができる。
【0047】
次に、図1および2に示した破砕装置を用いた破砕方法について簡単に説明する。
【0048】
まず、岩石などの破砕対象物2に下孔10を形成する。下孔10はドリルなどの切削装置を用いて形成してもよい。下孔10の内部に電解液としての水11を配置する。なお、電解液であれば、水以外の材料を下孔10の内部に配置してもよい。そして、この下孔10の内部に電極1の先端部を挿入する。このとき、電極1は専用のマニピュレータを用いて下孔10に挿入されてもよいし、一般的なクレーンやパワーショベルといった建設機械を用いて電極1を下孔10に挿入してもよい(たとえば、0.3m3クラスのパワーショベルのアームの先端部にワイヤなどを用いて電極1を吊り下げ、パワーショベルのアームを操作することにより電極1を下孔10に挿入するといった手法を用いてもよい)。
【0049】
そして、電源9で電荷を発生させ、この電荷をコンデンサ8に蓄積する。ただし、コンデンサ8の片側の極は接地されている。コンデンサ8に十分に電荷が蓄積された後にスイッチ7を閉じる。この結果、コンデンサ8に蓄えられた電荷が電極1に導入される。すると、電極1においては、電極1の側面に設けられた複数のギャップ19においてそれぞれ放電が発生することによりアーク20が形成される。この結果、放電に伴って発生する圧力波により破砕対象物2を破砕することができる。
【0050】
図3は、本発明による破砕装置の実施の形態1の変形例における電極の構造を示す拡大断面模式図である。図3は図2に対応している。図3を参照して、本発明による破砕装置の実施の形態1の変形例を説明する。
【0051】
図3を参照して、破砕装置は、基本的には図1および2に示した破砕装置と同様の構造を備えるが、電極1の先端部の構造が異なる。すなわち、図3に示した破砕装置における電極1の先端部には、中心電極先端部13の先端側にスペーサ部材としての先端絶縁体21が形成されている。なお、先端絶縁体21の先端部から中心電極先端部13において絶縁体17と対向する面までの距離Lは20mm以上であることが好ましい。このようにしても、図1および2に示した破砕装置と同様に、電極1の側面においてアーク20を形成することができる。この結果、図1および2に示した破砕装置と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、スペーサ部材としての先端絶縁体21のサイズ(中心軸方向における長さ)を変更することにより、電極1の先端部の端面(先端絶縁体21において中心電極先端部13と接続された面とは反対側の端面)から、放電が発生する領域である中心電極先端部13と外周電極部分14aとの間のギャップ19までの距離を任意に変更できる。このため、外周電極15や中心電極16の構成を一定にした状態で、電極1の側面において、電極1の先端部に対する放電の発生する領域(ギャップ19)の位置を任意に変更できる。
【0053】
(実施の形態2)
図4は、本発明による破砕装置の実施の形態2を示す模式図である。図5は、図4に示した破砕装置における電極の先端部を示す部分拡大模式図である。図6は、図5に示した電極の先端部の断面を示す拡大断面模式図である。図4〜6を参照して、本発明による破砕装置の実施の形態2を説明する。
【0054】
図4〜6を参照して、破砕装置は図1および図2に示した破砕装置と同様の構造を備えるが、電極1の構成が異なる。すなわち、パルスパワー源6に接続された電極1は、先端部と、この先端部とは反対側(パルスパワー源6側)に位置する後端部とを含む。電極1は、後端部から先端部へ延びる方向に延在する一方ケーブル3と、この一方ケーブル3が延びる方向と同じ方向に延在する他方ケーブル4およびケーブル部分23a〜23cと、この一方ケーブル3と他方ケーブル4およびケーブル部分23a〜23cとを固定するための固定部材22a〜22gとを備える。
【0055】
一方ケーブル3および他方ケーブル4はパルスパワー源6に電気的に接続されている。一方ケーブル3、他方ケーブル4およびケーブル部分23a〜23cは、それぞれ導電体24を誘電体としての絶縁体25で被覆した単芯絶縁電線を用いて構成される。一方ケーブル3およびケーブル部分23aを構成する導電体24が一方線状導電体に対応し、他方ケーブル4およびケーブル部分23b、23cを構成する導電体24が他方線状導電体に対応する。ケーブル部分23aを構成する導電体24のケーブル部分23bと対向する端部が一方線状導電体の一方端部に対応する。また、ケーブル部分23bを構成する導電体24のケーブル部分23aと対向する端部が他方線状導電体の一方端部に対応する。ケーブル部分23cおよび他方ケーブル4を構成するそれぞれの導電体24が、他方線状導電体に含まれる複数の導電体に対応する。
【0056】
また、絶縁体25としては、プラスチック、ゴム、ビニール、絶縁性の樹脂などの誘電体を用いることができる。導電体24としては、銅、銀、アルミニウム、鉄などの電気導電性を有する金属を用いることができる。固定部材22a〜22gを構成する材料としては、電極1において放電を発生させることにより破砕対象物2を破砕する工程の前後において、一方ケーブル3と他方ケーブル4およびケーブル部分23a〜23cとを固定部材22a〜22gにより保持することが可能なように、十分大きな強度を有する材料が選択される。また、一方ケーブル3、他方ケーブル4およびケーブル部分23a〜23cをそれぞれ互いに固定する方法としては、上記のような固定部材22a〜22gを用いるのではなく、他の手法を用いてもよい。たとえば、一方ケーブル3、他方ケーブル4およびケーブル部分23a〜23cをそれぞれ互いに接着剤で接着固定する、あるいは一方ケーブル3、他方ケーブル4およびケーブル部分23a〜23cを互いに撚り合わせてもよい。
【0057】
なお、ケーブル部分23aは、一方ケーブル3の先端部がほぼ180°曲げられ、一方ケーブル3に沿うように配置されることにより形成されている。つまり、電極1の先端部には、一方ケーブル3とケーブル部分23aとを接続する屈曲部が配置されている。ケーブル部分23a〜23cは、それぞれ互いにギャップ19を介して対向するように間隔を隔てて配置されている。図4〜6からわかるように、電極1においてはギャップ19が電極1の先端部ではなく側面側にのみ形成されている。また、一方ケーブル3の屈曲部(電極1の先端部)からケーブル部分23aの端部までの距離Lは、20mm以上であることが好ましい。また、一方ケーブル3において、上記屈曲部以外の領域(すなわち、電極1の側面に位置する領域)で、一方ケーブル3の一部を切断することにより1つ以上の間隙(ギャップ)を形成してもよい。このとき、電極1の延在する方向において、一方ケーブル3におけるギャップの位置は、ケーブル部分23a〜23cおよび他方ケーブル4の間のギャップ19の位置とは異なる位置に配置することが好ましい。
【0058】
このように、図4〜6に示した破砕装置では、電極1の側面にのみギャップ19が形成されているので、本発明の実施の形態1における破砕装置と同様の効果をえることができる。つまり、電極1の一方ケーブル3と他方ケーブル4とに電流を供給すると、このギャップ19において放電が発生する。このため、破砕対象物2に形成された下孔10内部に電極1を配置した状態で、電極1に電力を供給した場合、電極1の先端部側ではなく側面側において放電を発生させることができる。
【0059】
したがって、電極1は放電により発生する圧力波の衝撃を側面側から受けることになるので、下孔10から飛び出す方向に圧力波の衝撃を受けることがない。このため、従来のように電極1が下孔10から飛び出す方向に大きく移動することを抑制できる。そのため、下孔10の内部で電極1が移動することに起因して、電極1の先端部付近で真空領域が形成されることを抑制できる。この結果、真空領域の存在により、放電によって形成される圧力波の強度が小さくなる、あるいは圧力波が形成されないといった問題の発生を防止できる。
【0060】
また、図4〜6に示した破砕装置の電極1は比較的構造が簡単であるので、本発明の実施の形態1における電極1より製造工程を簡略化できる。
【0061】
また、図4〜6からわかるように、電極1では、他方ケーブル4とケーブル部分23b、23cが間隙を隔てて配置されたている。他方ケーブル4、ケーブル部分23a〜23cの間のギャップ19は電極1の先端部以外の領域(すなわち電極1の側面)にのみ位置している。
【0062】
この場合、一方ケーブル3と他方ケーブル4とに電流を供給することにより、上記複数のギャップ19においてそれぞれ放電を発生させることができる。この結果、電極1における放電抵抗をより高めることができる。したがって、電極1に供給されるエネルギーを一定とした場合、破砕に利用されるエネルギーを大きくできる。
【0063】
次に、図4〜6に示した破砕装置を用いた破砕方法を簡単に説明する。図4〜6に示した破砕装置を用いた破砕方法は、基本的には図1および2に示した破砕装置を用いた破砕方法と同様である。すなわち、まず岩石などの破砕対象物2にドリルなどを用いて予め下孔10を形成する。この下孔10の内部に電解液としての水11を配置する。次に、この下孔10の内部に図4〜6に示した電極1を挿入する。
【0064】
そして、電源9で電荷を発生させ、この電荷をコンデンサ8に蓄積する。コンデンサ8の片側の極は接地されている。そして、このコンデンサ8に電荷が蓄積された状態でスイッチ7を閉じることにより、パルスパワー源6から電極1に電荷が導入される。すると、電極1の側面側に位置する複数のギャップ19においてアーク20が形成される。このように、電極1の側面側において複数のアーク20を形成することができるので、本発明の実施の形態1における破砕装置と同様に、破砕対象物2を効率的に破壊できる。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0066】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、破砕装置用電極の側面において間隙を介して対抗するように導電体を配置するので、破砕装置用電極の側面において放電を発生させることができる。この結果、破砕装置用電極が移動することにより形成される電解液の存在しない領域(真空領域)の発生を抑制するとともに、真空領域の形成される領域と放電が起きる領域とを隔離することができる。このため、真空領域の存在により破砕に利用される放電のエネルギー量が減少するといった問題の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による破砕装置の実施の形態1を示す模式図である。
【図2】 図1に示した破砕装置に用いられる電極の先端部を示す拡大断面模式図である。
【図3】 本発明による破砕装置の実施の形態1の変形例における電極の構造を示す拡大断面模式図である。
【図4】 本発明による破砕装置の実施の形態2を示す模式図である。
【図5】 図4に示した破砕装置における電極の先端部を示す部分拡大模式図である。
【図6】 図5に示した電極の先端部の断面を示す拡大断面模式図である。
【図7】 本発明に関連する破砕装置を示す模式図である。
【図8】 図7に示した破砕装置に設置された電極の部分拡大模式図である。
【符号の説明】
1 電極、2 破砕対象物、3 一方ケーブル、4 他方ケーブル、5 ケーブル、6 パルスパワー源、7 スイッチ、8 コンデンサ、9 電源、10 下孔、11 水、12 中心電極ベース部、13 中心電極先端部、14a〜14c 外周電極部分、15 外周電極、16 中心電極、17,18 絶縁体、19 ギャップ、20 アーク、21 先端絶縁体、22a〜22g 固定部材、23a〜23c ケーブル部分、24 導電体、25 絶縁体。

Claims (6)

  1. 先端電極部と、前記先端電極部に接続され、中心軸に沿って延在するとともに前記中心軸の放射方向において前記先端電極部の寸法より小さい寸法を有する中心電極部とを含む中心導電体と、
    前記中心電極部の側壁面上に配置された絶縁体と、
    前記絶縁体上において、前記先端電極部とは間隙形成用絶縁体を介して間隙を隔てて配置された外周導電体とを備え
    前記中心軸からの前記先端電極部の外周側面の位置と、前記中心軸からの前記間隙形成用絶縁体および前記外周導電体の外周側面の位置とは等しくなっている、破砕装置用電極。
  2. 前記外周導電体は、前記中心軸に沿った方向において互いに間隙を隔てて配置された複数の外周導電体部分を含む、請求項1に記載の破砕装置用電極。
  3. 前記先端電極部からみて前記中心電極部が接続された側とは反対側に設置されたスペーサ部材をさらに備える、請求項1または2に記載の破砕装置用電極。
  4. 先端部と、前記先端部とは反対側に位置する後端部とを含み、放電を発生させることにより破砕対象物を破砕する破砕装置用電極であって、
    前記後端部から前記先端部へ延びる方向に延在し、前記先端部側に位置する一方端部を含む一方線状導電体と、
    前記一方線状導電体の延びる方向と同じ方向に延在し、前記一方線状導電体と誘電体を介して対向するとともに、前記先端部側に位置する一方端部を含む他方線状導電体と
    前記一方線状導電体を覆うように形成された一方被覆部材と、
    前記他方線状導電体を覆うように形成された他方被覆部材とを備え、
    前記一方線状導電体と前記他方線状導電体とのいずれか一方が前記後端部側へ屈曲する屈曲部が前記先端部に配置され、
    前記一方線状導電体の一方端部と前記他方線状導電体の一方端部とが間隙を隔てて対向するように配置された、破砕装置用電極。
  5. 前記他方線状導電体は、間隙を隔てて配置された複数の導電体を含み、
    前記他方被覆部材は、前記複数の導電体のそれぞれを覆うように形成された複数の被覆部材部分を含み、
    前記複数の導電体の間の間隙は前記先端部以外の領域に位置する、請求項4に記載の破砕装置用電極。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の破砕装置用電極を備える破砕装置。
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