JP3562343B2 - 自動車のフロントサスペンションメンバとセンタメンバとの連結構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車、特に乗用車のフロントサスペンションメンバとセンタメンバとの連結構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のフロントサスペンションメンバは左右の各側部にサスペンションアームを、両側部の中間部にエンジンマウントをそれぞれ取り付けて支持し、左右の各側部で車体に取り付けられる。その結果、サスペンションアームから主として車体の幅方向、つまり横方向の荷重が加わり、エンジンマウントから主として上下方向の荷重が加わる。
【0003】
フロントサスペンションメンバはアッパパネルとロアパネルとを重ね合わせて閉じ構造に形成され、それ自体で十分な剛性を有するが、荷重が加わる部位はその他の部位と比べて剛性を高める必要がある。そこで、左右の各側部と、エンジンマウントを取り付ける中間部とに補強パネルを配置して剛性を高めている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フロントサスペンションメンバが3つの補強パネルを、各補強パネルが独立した形態で備えていることから、部品点数が多くなっているばかりでなく、フロントサスペンションメンバの製作を煩雑にしている。
【0005】
左右のサスペンションアーム取付部間にわたって丸棒を配置した技術(トヨタ技術公開集、発行番号4228:1991年9月20日)によれば、前記課題を解決しうるとも考えられるが、この技術は左右のサスペンションアーム取付部だけを補強しており、車体との取付部やエンジンマウントの取付部の補強については考慮されていない。
【0006】
ところで、フロントサスペンションメンバのエンジンマウントの取付部近傍には、車体の前後方向へ伸びるセンタメンバが結合される。そこで、センタメンバが結合されるフロントサスペンションメンバの部位にブラケットパネルを配置し、このブラケットパネルとアッパパネルとによって閉じ構造を形成してセンタメンバの結合部としているが、前記閉じ構造だけでエンジンマウントからのねじり荷重を受け止めるのには十分でなく、ねじり荷重による振動発生の原因となっている。
【0007】
本発明は、フロントサスペンションメンバとセンタメンバとの剛性の高い連結構造を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、車体に取り付けられる第1の取付部と、サスペンションアームを取り付ける第2の取付部とを左右の側部にそれぞれ有し、エンジンマウントを複数組のボルト及びナットで取り付ける第3の取付部を左右の側部の中間部に有し、アッパパネルとロアパネルとによって閉じ構造に形成される自動車のフロントサスペンションメンバと、車体の前後方向へ伸びるセンタメンバとを複数組のボルト及びナットで連結する構造である。前記フロントサスペンションメンバは、前記左の第1の取付部と、前記左の第2の取付部と、前記第3の取付部と、前記右の第1の取付部と、前記右の第2の取付部とにわたり、前記アッパパネルと前記ロアパネルとの間に配置される補強パネルを備える。
【0009】
前記フロントサスペンションメンバと前記センタメンバとを連結する複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組と、前記エンジンマウントを前記第3の取付部に取り付ける複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組とは、前記アッパパネル及び前記補強パネルによって形成された閉じ構造と前記補強パネル及び前記ロアパネルによって形成された閉じ構造とが隣り合って位置する部位に配置されている。
【0010】
【作用及び効果】
所定の形状に形成された補強パネルをアッパパネルとロアパネルとの間に配置して位置決めし、例えばスポット溶接によって接合することにより、フロントサスペンションメンバが得られる。
【0011】
1枚の補強パネルが左右の第1の取付部及び第2の取付部と、中間の第3の取付部とにわたっているため、部品点数を減らすことができる。また、1枚の補強パネルをアッパパネルとロアパネルとの間に配置して接合するだけでよく、フロントサスペンションメンバを製作する際の煩雑さを解消できる。
【0012】
本発明に係る連結構造の発明では、エンジンマウントの取付部が補強パネルによって補強されているため、エンジンマウントの可及的近くに位置するセンタメンバの連結剛性を高めることができることと、エンジンマウントの可及的近くにセンタメンバを位置させることにより、エンジンマウントから加わるねじり荷重によってセンタメンバに働くモーメントの距離、いわゆるモーメントアームが小さくなり、モーメントが小さくなることから、振動の発生を抑えることができる。
【0013】
フロントサスペンションメンバとセンタメンバとを連結する複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組と、エンジンマウントを第3の取付部に取り付ける複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組とは、アッパパネル及び補強パネルによって形成された閉じ構造と補強パネル及びロアパネルによって形成された閉じ構造とが隣り合って位置する部位に配置されているため、大きな剛性部での締付けとなり、振動の発生を抑えることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
自動車のフロントサスペンションメンバ10は、分解斜視状態の図1と、フロントサスペンションメンバ10に取り付けられる部品を分解した斜視状態の図2と、部品を取り付けた斜視状態の図3とに示すように、アッパパネル12と、ロアパネル14と、補強パネル16とからなる。フロントサスペンションメンバ10は、車体(図示せず)に取り付けられる第1の取付部18と、サスペンションアームを取り付ける第2の取付部20とを左右の側部にそれぞれ有し、エンジンマウントを取り付ける第3の取付部22を左右の側部の中間部に有し、アッパパネル12とロアパネル14との間に補強パネル16を配置して閉じ構造に形成されている。
【0015】
アッパパネル12は鋼板をプレス成形して作られたもので、全体に上方に向けて凸状となっており、本体部分24と、本体部分24の前方の左右側部から横方へ張り出された第1部分25と、本体部分24の後方の左右側部から横方へ張り出された第2部分26とを一体に有する。上下に貫通する穴27が第1部分25に、また上下に貫通する穴28が第2部分26に開けられている。
【0016】
ロアパネル14は鋼板をプレス成形して作られたもので、全体に下方に向けて凸状となっており、本体部分30と、本体部分30の前方の左右側部から前方へ張り出された第1部分31と、第1部分31の後方となる本体部分30の左右側部から横方へ張り出された第2部分32と、本体部分30の後方の左右側部から横方へ張り出された第3部分33とを一体に有する。上下に貫通する2つの穴34,35が第3部分33に開けられている。
【0017】
補強パネル16は鋼板をプレス成形して作られたもので、本体部分38と、本体部分38の左右側部から前方へ張り出された第1部分39と、本体部分38の左右側部から横方へ張り出された第2部分40と、本体部分38の左右側部から後方へ張り出された第3部分41とを一体に有する。第1部分39には一対の支持部分42が前後に間隔をおいて設けられており、前後方向に貫通する穴43が支持部分42に開けられている。さらに、上下に貫通する穴44が第2部分40に開けられている。
【0018】
ブラケット50が補強パネル16に接合される。ブラケット50は鋼板をプレス成形して作られたもので、本体部分52と、本体部分52から前方へ張り出された第1部分53と、本体部分52から横方へ張り出された第2部分54とを一体に有する。上下に貫通する2つの穴55,56が第2部分54に開けられている。ブラケット50は、その第1部分53を補強パネル16の第3部分41と重ね合わせてスポット溶接し、補強パネル16に接合されている。
【0019】
フロントサスペンションメンバ10は、ロアパネル14の上側に補強パネル16を重ね合わせ、さらに補強パネル16の上側にアッパパネル12を重ね合わせ、3枚のパネルを接合して形成される。重ね合わせに際し、補強パネル16の第1部分39の一対の支持部分42をロアパネル14の第1部分31に載せ、補強パネル16の第2部分40をロアパネル14の第2部分32に載せる。そして、補強パネル16に接合されたブラケット50の第2部分54の穴55をロアパネル14の第3部分33の穴34と、またブラケット50の穴56をロアパネル14の穴35とそれぞれ整合させる。さらに、アッパパネル12の第1部分25を補強パネル16の第2部分40に載せてアッパパネル12の穴27を補強パネル16の穴44と整合させ、アッパパネル12の第2部分26をブラケット50の本体部分52と第2部分54とに載せてアッパパネル12の穴28をブラケット50の穴55と整合させる。この状態で、3枚のパネルをスポット溶接し、接合するとフロントサスペンションメンバ10となる。
【0020】
3枚のパネルを重ね合わせて接合した結果、第1取付部18がアッパパネル12の第1部分25と補強パネル16の第2部分40とによって作られ、第2取付部20が補強パネル16の第1部分39とロアパネル14の第1部分31とによって作られ、第3取付部22がアッパパネル12の本体部分24と補強パネル16の本体部分38とロアパネル14の本体部分30とによって作られる。従って、補強パネル16は左の第1の取付部18と、左の第2の取付部20と、第3の取付部22と、右の第1の取付部18と、右の第2の取付部20とにわたっていることとなる。
【0021】
フロントサスペンションメンバ10は、左右のサスペンションアーム60(図3には右のサスペンションアーム60のみを示してある)と、エンジンマウント62と、ステアリングギア64とを取り付けて支持し、センタメンバ66がフロントサスペンションメンバ10に連結される。フロントサスペンションメンバ10は、左右の側部にある第1の取付部18の穴44,25と、さらに左右の側部にある、ロアパネル14の第3部分33の穴35及びブラケット50の第2部分54の穴56とを貫通するボルト(図示せず)によって車体に取り付けられる。
【0022】
サスペンションアーム60はいわゆるL形アームである。前方の端部68は、断面状態の図4に示すように、第2の取付部20である、補強パネル16の第1部分39とロアパネル14の第1部分31とに接合された一対の支持部分42に前後方向へ伸びる水平軸70によって取り付けられている。サスペンションアーム60の後方の端部69は、ブラケット50の第2部分54の穴55周縁にある取付面57とアッパアーム12の第2部分26との間に配置され、穴55,28を貫通する垂直軸(図示せず)によってフロントサスペンションメンバ10に取り付けられる。サスペンションアーム60は、それ自体公知のように、各端部68,69に配置したゴムのブッシュのたわみにより上下に揺動可能である。
【0023】
エンジンマウント62は、図2と、断面状態の図5とに示すように、支持部材72の前方にある2本のボルト74のそれぞれを第3の取付部22、つまりアッパパネル12の本体部分24と補強パネル16の本体部分38との間に配置したカラー76に通し、カラー76を締め付けるようにナット78をボルト74にねじ込んで第3の取付部22(図3)に取り付けられている。さらに、支持部材72の後方にある2本のボルト80をアッパパネル12に開けた2つの孔82に通し、ナット(図示せず)をねじ込んでアッパパネル12に取り付けられている。
【0024】
サスペンションアーム60とエンジンマウント62とは、それぞれ前後の2箇所でフロントサスペンションメンバ10に取り付けられているのに対し、補強パネル16は、サスペンションアーム60との1箇所の取付部とエンジンマウントとの1箇所の取付部とにわたっているだけである。これは、次の理由による。図示のサスペンションアーム60は平面形状がL字状を呈しており、前方の端部68の横方にタイヤの回転中心が配置されることから、タイヤから加わる横方向の荷重の大半が図3の矢印Aで示すように、前方の端部68を経てフロントサスペンションメンバ10に入力することによる。また、エンジンマウント62から加わる荷重は、図5の矢印Bで示すように、エンジンマウント62の前方の取付部又はその近傍を経てフロントサスペンションアーム10に入力することによる。
このように、大きな荷重が入力する取付部間にわたる補強パネル16を備えることにより、荷重を分散させる効果が大きくなることから、補強パネル16は、大きな荷重が入力する取付部には必ず位置することが必要である。なお、比較的小さい荷重が入力する取付部にも補強パネルが位置するように補強パネルを形成することもできる。
【0025】
ステアリングギア64は、図2と、図3と、断面状態の図6とに示すように、前方に配置した2本のボルト84をアッパパネル12の本体部24と、補強パネル16の本体部38とにそれぞれ開けた穴に通し、ボルト84にナット86をねじ込んで締め付け、フロントサスペンションメンバに取り付けられている。さらに、後方に配置した2本のボルト88をアッパパネル12の本体部24と、ブラケット50の本体部52とにそれぞれ開けた穴に通し、ボルト88にナット90をねじ込んで締め付け、フロントサスペンションメンバに取り付けられている。図3に示すように、ステアリングギア64の前方の取付部65には矢印Cで示した横方向の荷重が入力することから、補強パネル16を取付部65に配置して剛性を高めている。
【0026】
次に、図2と、図3と、図5とを参照して自動車のフロントサスペンションメンバ10と、車体の前後方向へ伸びるセンタメンバ66とを複数組のボルト及びナットで連結する構造を説明する。フロントサスペンションメンバ10は、前述のものである。一方、センタメンバ66は、アッパパネル100とロアパネル102とによって閉じ構造に形成されている。
【0027】
フロントサスペンションメンバ10とセンタメンバ66とを連結する複数組のボルト及びナットのうち1組は、エンジンマウント62を第3の取付部22に取り付ける複数組のボルト及びナットのうち1組と共通にされている。
【0028】
図示の実施例では、センタメンバ66の端部がフロントサスペンションメンバ10の上に載り、フロントサスペンションメンバ10とセンタメンバ66とは3組のボルト及びナットで連結されている。そして、エンジンマウント62の支持部材72の取付座のうち前方の右側にある取付座がセンタメンバ66の端部に載り、エンジンマウント62は2組のボルト及びナットで第3の取付部22に取り付けられており、そのうち1組が共通となっている。すなわち、センタメンバ66は、ボルト104及びナット105と,ボルト(図示せず)及びナット106と、ボルト74及びナット78でフロントサスペンションメンバ10に連結されている。そして、エンジンマウント62の支持部材72は2組のボルト74及びナット78で第3の取付部22に取り付けられ、そのうち右側にある1組のボルト74及びナット78がフロントサスペンションメンバ10とセンタメンバ66とを連結し、共通となっている。
【0029】
図5から明らかであるように、エンジンマウント62を取り付けるボルト74とナット78とは、アッパパネル12の本体部24と補強パネル16の本体部38とによって形成された閉じ構造110内に位置している。この閉じ構造110は、補強パネル16の本体部38とロアパネル14の本体部30とによって形成された閉じ構造112と隣り合って位置している。このように、共通のボルト74及びナット78が隣り合って位置する2つの閉じ構造110,112によって支持されている結果、共通のボルト74及びナット78がある第3取付部22は大きな剛性を有する。
【0030】
前記実施例では、1組のボルト74及びナット78を共通に使用しているが、これに代えて次のような構造とすることもできる。すなわち、フロントサスペンションメンバ10とセンタメンバ66とを連結する複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組と、エンジンマウント62を第3の取付部22に取り付ける複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組とを、アッパパネル12及び補強パネル16によって形成された閉じ構造110と、補強パネル16及びロアパネル14によって形成された閉じ構造112とが隣り合って位置する部位に配置させる。例えば、図3において、センタメンバ66を右側へずらし、その端部を3組のボルト及びナットでフロントサスペンションメンバ10に連結する一方、そのうち後方の2組を閉じ構造110に位置させるようにし、エンジンマウント62を第3の取付部22に取り付ける2組のボルト74及びナット78を閉じ構造110に位置させるようにする。
【0031】
断面状態の図7に示した従来の連結構造では、センタメンバ120は、アッパパネル122とブラケットパネル124とによって形成された閉じ構造126に関連して連結されていたが、1つの閉じ構造があるだけであったため、連結剛性は十分ではなかった。そのため、図5のようなねじりモーメントMが加わるとき、振動が発生していた。これに対して、センタメンバ66とフロントサスペンションメンバ10とを連結する複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組と、エンジンマウントを取りつける複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組とを2つの閉じ構造110,112に関連して位置させることにより、連結剛性を高めてねじりモーメントMによる振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車のフロントサスペンションメンバを示す分解斜視図である。
【図2】自動車のフロントサスペンションメンバを示す斜視図で、実線で補強パネルを示し、仮想線でアッパパネル及びロアパネルを示し、さらにエンジンマウントとステアリングギアとの取付前の状態を示している。
【図3】自動車のフロントサスペンションメンバを示す斜視図で、サスペンションアームと、エンジンマウントと、ステアリングギアと、センタメンバとを取り付けた状態を示している。
【図4】図3の4−4線で切断した断面図である。
【図5】図3の5−5線で切断した断面図である。
【図6】図3の6−6線で切断した断面図である。
【図7】従来の連結構造を示す、図5と同様な断面図であるが、エンジンマウントは図示してない。
【符号の説明】
10 フロントサスペンションメンバ
12 アッパパネル
14 ロアパネル
16 補強パネル
18 第1の取付部
20 第2の取付部
22 第3の取付部
60 サスペンションアーム
62 エンジンマウント
64 ステアリングギア
66 センタメンバ
Claims (1)
- 車体に取り付けられる第1の取付部と、サスペンションアームを取り付ける第2の取付部とを左右の側部にそれぞれ有し、エンジンマウントを複数組のボルト及びナットで取り付ける第3の取付部を左右の側部の中間部に有し、アッパパネルとロアパネルとによって閉じ構造に形成される自動車のフロントサスペンションメンバと、車体の前後方向へ伸びるセンタメンバとを複数組のボルト及びナットで連結する構造であって、
前記フロントサスペンションメンバは、前記左の第1の取付部と、前記左の第2の取付部と、前記第3の取付部と、前記右の第1の取付部と、前記右の第2の取付部とにわたり、前記アッパパネルと前記ロアパネルとの間に配置された補強パネルを備え、
前記フロントサスペンションメンバと前記センタメンバとを連結する複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組と、前記エンジンマウントを前記第3の取付部に取り付ける複数組のボルト及びナットのうち少なくとも1組とは、前記アッパパネル及び前記補強パネルによって形成された閉じ構造と前記補強パネル及び前記ロアパネルによって形成された閉じ構造とが隣り合って位置する部位に配置された、フロントサスペンションメンバとセンタメンバとの連結構造。
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