JP3562251B2 - 電源装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、商用電源等の交流電源を入力として負荷回路に高周波電力を供給する電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、蛍光灯のような放電灯負荷を高周波で点灯させる装置としては、インバータ点灯装置があるが、このインバータ点灯装置は、コンデンサを備えた整流平滑回路にて交流電源電圧を直流電圧に一旦変換して、その直流電圧を電源としてスイッチ手段のオン、オフにより高周波電圧を発生せしめて放電灯負荷に供給するものである。このインバータ点灯装置では、交流電源を整流して得た脈流電圧をコンデンサにて平滑しているために、入力電流に高調波成分を含んだ歪みのある波形成分が含まれている。そこで、その高調波成分を取り除くために、チョッパ用チョークコイルとダイオードとスイッチ手段とによって構成されたチョッパ回路を電源入力部に付加したインバータ点灯装置が良く知られている。しかし、このインバータ点灯装置はチョッパ回路とインバータ回路とを組み合わせたものとなり、従って装置が大型化し、またコスト的にも割高になるという欠点があった。
【0003】
例えば、電圧共振型一石式インバータ回路と呼ばれるインバータ点灯装置の代表的な回路方式(特開平3−74091号)では、ゼロボルトスイッチングによる低ノイズ化が容易に実現できるといった長所があるが、特に昇圧型のチョッパ回路と組み合わせると、スイッチ手段の耐圧が非常に高くなり、大きなコストアップとなる。
【0004】
ところで、装置の小型化、コストダウンを図るために、チョッパ回路のスイッチ手段と、インバータ回路のスイッチ手段とを共用し、1つのスイッチ手段で両回路の動作を行わせるものとしては、特願平2−98744号がある。この電源装置は、入力電源にチョッパ用チョークを介して、負荷と平滑用のコンデンサとの直列回路に接続するとともに、上記負荷と平滑用のコンデンサとの直列回路にスイッチ手段を接続し、スイッチ手段をオン、オフ駆動するものであるから、スイッチ手段がオンした時には入力電源からチョッパ用チョーク、スイッチ手段、入力電源の閉回路に電流が流れ、同時にコンデンサの充電電荷がコンデンサ、負荷、スイッチ手段、コンデンサの閉回路で放電され、スイッチ手段がオフしたときには、入力電源からチョーク、負荷、コンデンサ、入力電源、チョークの閉回路で電流が流れ、負荷を通じてコンデンサを充電する。このようにしてコンデンサには負荷を通じて充電電流、放電電流が流れ、コンデンサの両端電圧は入力電源電圧とほぼ等しい値となる。さらに、この特願平2−98744号を改良して負荷変動に対する制御性を良くした電源装置が幾つか提案されている。
【0005】
一方、インバータ点灯装置として電圧共振型一石式インバータ回路とともによく用いられる回路方式として、ハーフブリッジ式のインバータ回路がある。この回路方式においても、チョッパ回路の部品をインバータ回路と兼用した回路方式として特開昭61−46181号がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
昇圧チョッパ回路とインバータ回路とを組み合わせた構成のインバータ点灯装置において、チョッパ回路の昇圧率を1に近付ける場合、平滑コンデンサの電圧は全波整流器出力電圧のピーク値より少なくとも高く設計する(昇圧率を1以上とする)必要がある。もし、平滑コンデンサの電圧が全波整流器出力電圧のピーク値より低くなれば、全波整流器出力と平滑コンデンサの間には、チョッパ用チョークとインバータ発振用チョークの直流抵抗により限流されるが、基本的にチョッパ回路の無い構成と同様に、平滑コンデンサにラッシュ電流が流れ、入力電流に高調波成分を含んだ歪みのある波形成分が含まれる。従って、回路を構成する部品のばらつきや負荷で消費する電流のばらつき、周囲温度等も含めて昇圧率を1以上にするためには、マージンを含めて中央値を大きく設定する必要がある。しかし、昇圧率を1よりも大きくすると平滑コンデンサ(一般的に電解コンデンサを用いる)やスイッチング素子(MOS−FETやバイポーラトランジスタとダイオードの並列回路を用いる)に印加される電圧が高くなり、部品の信頼性に問題がある。また、耐圧の高い部品を採用すると、コスト面とサイズ面で不利となる。
【0007】
また、従来の回路構成では、いずれも電源をオンした瞬間に点灯装置に突入電流(平滑コンデンサの充電電流)が流れる。この電流は通常動作時の数十倍の電流が流れ、装置内だけでなくブレーカーや壁スイッチ等を構成する部品にもストレスを与える。なお、従来技術の中では特開昭61−46181号だけは電源投入時の突入電流が無く(定常動作時と同程度の電流値に抑制され)優れているが、インバータ回路方式としてはハーフブリッジ方式であるため、輻射ノイズが比較的大きく、また2個のスイッチング素子を交互にオン・オフ制御するための制御・駆動回路が必要である等の課題がある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、平滑コンデンサに印加される電圧を低減し、装置としての信頼性を向上させ、小型化・コストダウンを実現すること、低ノイズで電源投入時の突入電流を抑制して部品の信頼性を向上させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電源装置にあっては、上記の課題を解決するために、図1に示すように、交流入力端子に交流電源ACを接続された全波整流器DBと、全波整流器DBの一方の直流出力端子に一端を接続されたチョッパ用の第1のインダクタL1と、第1のインダクタL1の他端と全波整流器DBの他方の直流出力端子の間に接続されたスイッチング素子Q1と、第1の整流器D7を介して第1のインダクタL1と並列に接続された発振用の第2のインダクタL2及び平滑用の第1のコンデンサC1の直列回路と、第2のインダクタL2及び第1のコンデンサC1の直列回路を前記スイッチング素子Q1に接続して閉回路を形成する第2の整流器D8と、前記スイッチング素子Q1と並列に接続された共振用の第3のインダクタL3と負荷回路と第2のコンデンサC4の直列回路と、全波整流器DBの出力電圧が0V近傍となる谷部と全波整流器DBの出力電圧が最大値近傍となる山部とでは第2のインダクタL2に流れる電流が逆方向となるように、前記スイッチング素子Q1をオン・オフ制御する制御部とを備え、第1の整流器D7は前記スイッチング素子Q1のオン時に蓄積された第1のインダクタL1の電磁エネルギーをスイッチング素子Q1のオフ時に第1のコンデンサC1に充電する方向に配置されており、第2の整流器D8は前記スイッチング素子Q1のオン時に第1のコンデンサC1の放電電流が流れる方向に配置されており、第1及び第2の整流器D7,D8は前記全波整流器DBから第1のコンデンサC1に流れ込む充電電流を阻止する方向に配置されており、平滑用の第1のコンデンサC1の電圧は全波整流器DBの出力電圧のピーク値よりも低く設定されることを特徴とするものである。
【0010】
この電源装置では、インダクタL1とスイッチング素子Q1、整流器D7,D8、コンデンサC1が昇降圧チョッパ回路を構成しており、スイッチング素子Q1とインダクタL2、L3、コンデンサC4、負荷回路、コンデンサC1がインバータ回路を構成している。スイッチング素子Q1がオンすると、全波整流器DBの出力より電源電圧(通常は商用電源)の絶対値に比例した電流がインダクタL1に流れ、電磁エネルギーがインダクタL1に蓄積される。同時にインダクタL2とインダクタL3にも電流が流れ、電磁エネルギーが蓄積される。次にスイッチング素子Q1がオフすると、インダクタL1に蓄積した電磁エネルギーを電源として、インダクタL1、L2、コンデンサC1、整流器D7の閉回路に電流が流れ、コンデンサC1が充電される。この時の電流は電源電圧の絶対値に比例している。従って、電源ACと全波整流器DBの間に適切なローパスフィルターを付加すれば、点灯装置の入力電流が入力電圧と略相似の波形となり、高調波歪みを抑制できる。
【0011】
また、インバータ回路については、スイッチング素子Q1のオン時にはインダクタL2とL3に電磁エネルギーが蓄積され、スイッチング素子Q1のオフ時に、電磁エネルギーが放出されてコンデンサC4と負荷回路に電流が流れる。インダクタL3の電磁エネルギーが無くなると、コンデンサC4に蓄積された電荷によって逆方向の電流が負荷回路に流れる。なお、インダクタL2には、インダクタL1を電源とする電流とコンデンサC1を電源とする相対する電流が流れる。従って、インダクタL2に流れる電流の向きはインダクタL1に蓄積された電磁エネルギーの大きさにより変化し、全波整流器DBの出力電圧波形が山部の期間では、インダクタL1→インダクタL2→コンデンサC1の順に流れ、全波整流器DBの出力電圧波形が谷部の期間では、コンデンサC1→インダクタL2の方向に電流が流れる。
【0012】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
本発明の電源装置を放電灯点灯装置に応用した実施例を図2に示す。ACは交流電源であり、インダクタL0とコンデンサC0はローパスフィルタ回路を構成しており、整流器D1〜D4は全波整流器DBを構成している。インダクタL1はチョッパ動作用のチョーク、インダクタL2は限流用チョーク、C1は平滑用コンデンサ、Laは放電灯、C3は予熱用コンデンサ、C2は共振用コンデンサ、インダクタL3は共振用チョーク、Q1はMOS−FETよりなるスイッチング素子、IC1〜IC3は入力信号の負論理を出力する反転回路、IC4は一般的なタイマー用IC555(例えばNEC(株)のμPC1555)であり、ここでは単安定発振動作を行う。これらのIC1〜IC4と、抵抗R1〜R7、コンデンサC5〜C9、整流器D5、D6は制御回路を構成する。
【0013】
以下、制御回路の動作について説明する。この制御回路は、スイッチング素子Q1の電圧が略零ボルトであることを検出して、一定期間スイッチング素子Q1のオン駆動信号を出力する零ボルトスイッチング動作を実現している。図3に制御回路の各部の電圧波形を示す。図中のa〜lは図2の回路中に記した点a〜lの電圧波形を示している。電源を投入すると、反転回路IC3の入力kはLow論理であるから、反転回路IC3の出力lはHigh論理であり、整流器D6と抵抗R3を介してスイッチング素子Q1をオンする(図3−i、j,k,l)。制御電源Vccから抵抗R6を介してコンデンサC9が充電されるから、一定時間後、反転回路IC3の入力kが所定の電圧になり、反転回路IC3の出力lがHighからLowに反転し、スイッチング素子Q1がオフする。上記の起動信号によりインバータ回路(主回路)が動き出して、インダクタL1、L2とコンデンサC2とスイッチング素子Q1が電圧共振スイッチを構成しているから、スイッチング素子Q1のドレイン電圧(a点の電圧)が上昇する(図3−a)。
【0014】
LC共振動作によりa点の電圧が略0Vに戻ると、抵抗R1とR2による分圧(b点の電圧)も0Vに戻る(図3−b)。ここで、コンデンサC5は誤動作防止のための遅延用コンデンサである。反転回路IC1の入力bがLow論理になると、反転回路IC1の出力cはHigh論理になる(図3−c)。c論理が反転すると、コンデンサC6を介したd点の電圧もHigh論理となるが、すぐに抵抗R7を介して放電する(図3−d)。d点の電圧がHigh論理に変化すると、反転回路IC2の出力信号eが立ち下がる(図3−e)。この信号eはタイマー回路IC4のトリガー端子(2番ピン)に入力されており、信号eが立ち下がると抵抗R4とコンデンサC8で構成する積分回路により、コンデンサC8の電圧gは上昇する(図3−g)。コンデンサC8の電圧gがタイマー回路IC4の電源電圧Vccの2/3まで上昇すると、タイマー回路IC4の放電端子(7番ピン)によりコンデンサC8が放電して急激に立ち下がる。コンデンサC8の充電中、タイマー回路IC4の出力hはHigh論理であり(図3−h)、整流器D5、抵抗R3を介してスイッチング素子Q1をオンする。
【0015】
なお、反転回路IC3とタイマー回路IC4がスイッチング素子Q1を駆動するために必要な電流を供給できない場合には駆動回路が必要であるが、図2では省略している。また、タイマー回路IC4のコントロール端子fはタイマー回路IC4の内部抵抗とコンデンサC7の積分回路により所定の時定数でLowからHighに論理が反転するが、Lowの期間タイマー回路IC4の出力はLowに固定される(図3−f)。従って、スイッチング素子Q1のオン時間は抵抗R4とコンデンサC8によって設定できるが、スイッチング素子Q1のオフ時間はa点の電圧が0Vに戻るまでの時間で決まる。すなわち主回路の状態によって変化する。
【0016】
次に、主回路(図2)の動作を図4〜図11によって説明する。主回路の動作はスイッチング素子Q1とコンデンサC2の状態により大きく4つのモードに分かれる。さらに、全波整流器DBの出力電圧(AC電圧の絶対値)により電流の方向が異なる。ここでは、全波整流器DBの出力電圧の0V近傍(以後「谷部」と表記)の動作モードa〜dを図4〜図7に示し、全波整流器DB出力電圧の最大値近傍(以後「山部」と表記)の動作モードe〜hを図8〜図11に示す。
【0017】
(a)図4は全波整流器DBの出力電圧が谷部で、スイッチング素子Q1がオンである場合の動作を示している。スイッチング素子Q1がオンすることにより、コンデンサC1の放電電流がインダクタL2、スイッチング素子Q1、整流器D8を介して流れ、また、全波整流器DBの出力電流(装置の入力電流)がインダクタL1、スイッチング素子Q1に流れる。負荷側では、コンデンサC4から放電灯La(及びコンデンサC3)とインダクタL3の直列回路に電流が流れ、インダクタL2、L1とL3に電磁エネルギーが蓄積される。このとき、全波整流器DBの出力電圧は交流電源電圧の絶対値に等しいから、全波整流器DBからインダクタL1に流れる電流も交流電源電圧の絶対値に比例した値になる。
【0018】
(b)図5は全波整流器DBの出力電圧が谷部で、スイッチング素子Q1がオフ、コンデンサC2が充電モードである場合の動作を示している。スイッチング素子Q1がオフすると、インダクタL2、L1とL3に蓄積された電磁エネルギーにより動作モードaと同じ方向に電流が流れ続け、コンデンサC2が充電される。その結果としてコンデンサC2の両端電圧(スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧)が上昇する。また、全波整流器DBからインダクタL1の電磁エネルギーにより動作モードaと同じ方向に流れる入力電流の大きさは、インダクタL1の電磁エネルギー、すなわち交流電源電圧の絶対値に比例する。
【0019】
(c)図6は全波整流器DBの出力電圧が谷部で、スイッチング素子Q1がオフ、コンデンサC2が放電モードである場合の動作を示している。インダクタL3の電磁エネルギーが無くなると、コンデンサC2が放電を開始する。その放電電流はインダクタL3と放電灯La(及びコンデンサC3)の直列回路を介してコンデンサC4を充電する。また、インダクタL1、L2の電磁エネルギーにより、インダクタL1、L2を流れる電流も同じ経路でコンデンサC4を充電する。
【0020】
(d)図7は全波整流器DBの出力電圧が谷部で、スイッチング素子Q1の内蔵ダイオードがオンである場合の動作を示している。コンデンサC2の放電が終了すると、インダクタL3の電磁エネルギーによってスイッチング素子Q1のドレイン−ソース電圧が0Vより低くなり、スイッチング素子Q1の内蔵ダイオードがオンする。その結果、動作モードcと同じ方向に電流が流れる。また、動作モードcと同様に、インダクタL1、L2の電流がコンデンサC4に充電される。但し、インダクタL1、L2の値により入力電流波形に休止区間が発生することもある。
【0021】
(e)図8は全波整流器DBの出力電圧が山部で、スイッチング素子Q1がオンである場合の動作を示している。スイッチング素子Q1がオンすることにより、コンデンサC4から放電灯La(及びコンデンサC3)とインダクタL3の直列回路に電流が流れ、インダクタL3に電磁エネルギーが蓄積される。また、インダクタL1に全波整流器DBの出力電圧が印加されて、インダクタL1にも電磁エネルギーが蓄積される。このとき、全波整流器DBの出力電圧は交流電源電圧の絶対値に等しいから、インダクタL1に流れる電流も交流電源電圧の絶対値に比例した値になる。インダクタL2を流れる電流はインダクタL2の値により異なる。
【0022】
(f)図9は全波整流器DBの出力電圧が山部で、スイッチング素子Q1がオフ、コンデンサC2が充電モードである場合の動作を示している。スイッチング素子Q1がオフすると、インダクタL3の蓄積された電磁エネルギーにより動作モードaと同じ方向に電流が流れ続け、コンデンサC2が充電される。その結果として、コンデンサC2の両端電圧(スイッチング素子Q1のドレイン−ソース電圧)が上昇する。スイッチング素子Q1がオフ状態であるから、インダクタL1の電磁エネルギーにより整流器D7→インダクタL1→インダクタL2→コンデンサC1のループに電流が流れる。その大きさはインダクタL1の電磁エネルギー、すなわち交流電源電圧の絶対値に比例する。
【0023】
(g)図10は全波整流器DBの出力電圧が山部で、スイッチング素子Q1がオフ、コンデンサC2が放電モードである場合の動作を示している。インダクタL3の電磁エネルギーが無くなると、コンデンサC2が放電を開始して、インダクタL3と放電灯La(及びコンデンサC3)の直列回路を介してコンデンサC4に充電する。また、動作モードfと同様に、インダクタL1の電磁エネルギーを電源として、整流器D7→インダクタL1→インダクタL2→コンデンサC1のループに電流が流れて、コンデンサC1が充電される。
【0024】
(h)図11は全波整流器DBの出力電圧が山部で、スイッチング素子Q1の内蔵ダイオードがオンである場合の動作を示している。コンデンサC2の放電が終了すると、インダクタL1とL3の電磁エネルギーによって、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース電圧が0Vより低くなり、スイッチング素子Q1の内蔵ダイオードがオンする。その結果、動作モードgと同じ方向に電流が流れ、コンデンサC4が充電される。
【0025】
図12に全波整流器DBの出力電圧が谷部であるときのスイッチング素子Q1の両端電圧Vds(図12−A)、スイッチング素子Q1の電流Id(図12−B)、ランプ電流Ila(C)、インダクタL2の電流IL2(図12−D)、インダクタL1の電流IL1(図12−E)を示す。また、図13に全波整流器DBの出力電圧が山部であるときのスイッチング素子Q1の電流Id(図13−F)、インダクタL2の電流IL2(図13−G)、インダクタL1の電流IL1(図13−H)、全波整流器DBの入力電流IDB(図13−I)の各波形を示す。図中のa〜hは、上述の各動作モードa〜hに対応している。
【0026】
また、全波整流器DBの出力電圧VDBと全波整流器DBの出力電流IDBを図14に示す。ただし、図13−Iは図14−bを時間軸方向に拡大したものである。全波整流器DBの出力電圧VDBは交流入力電圧を全波整流したものであり、全波整流器DBの出力電流IDBのピーク電流が全波整流器DBの出力電圧VDBに比例していることから、インダクタL0とコンデンサC0を最適に選べば、入力電流の高周波成分をカットして入力電流は全期間で入力電圧波形に比例した波形になる。従って、装置の力率を向上し、入力電流高調波歪みを低減することができる。
【0027】
ところで、この回路はチョッパ回路の方式として昇降圧チョッパ回路方式に分類される。すなわち、整流器D8が存在することによって全波整流器DBの出力電流を直接コンデンサC1に充電することができないため、コンデンサC1の両端電圧(昇圧率)に関らずラッシュ電流が流れることはなく、入力電流の高調波歪みを抑制することができる。従来は、回路を構成する部品のばらつきや負荷で消費する電流のばらつき、周囲温度等も含めて昇圧率を1に近づけるために細心の注意を払ってインダクタL1の値や動作周波数等の設計を行わなければならなかったが、本発明では昇圧率を1以下に設計しても高調波歪みを大きく悪化させることはない。また、昇圧率を1以下に設計することによって、コンデンサC1やスイッチング素子Q1に印加される電圧を抑えることができ、部品の信頼性を向上させ、耐圧レベルの低い部品を選定してコストダウンや小型化を実現できる。
【0028】
さらに、全波整流器DBの出力電流は整流器D8によって直接コンデンサC1に充電することができない構成であるから、コンデンサC2やC3、C4の充電電流は流れても、コンデンサC1に比べれば小さい容量のコンデンサであるから、実質的に電源投入時の突入電流がなく、定常動作時と同程度の電流値に抑制されるものであり、部品の信頼性を向上させることができる。
【0029】
(実施例2)
本発明の第2の実施例を図15に示す。この実施例は図1の回路(基本構成)のインダクタL1を全波整流器DBの低圧側に接続している。それに伴って、コンデンサC1とインダクタL2、整流器D7、D8の配置も異なるが、それぞれの部品の役割は基本構成と同じである。この構成では平滑コンデンサC1とスイッチング素子Q1、制御回路の基準となる端子(グランド端子)が共通であるから、各種の検出信号の基準電位も共通で制御回路の安定性が向上し、回路構成が複雑にならない、という長所がある。
【0030】
(実施例3)
本発明の第3の実施例を図16に示す。この実施例では、図2の回路のコンデンサC2をインダクタL2に並列接続している。インダクタL2とコンデンサC2とスイッチング素子Q1が電圧共振スイッチを構成している点は図2の回路と同様であるから、回路動作は図2の回路とほぼ同じである。
【0031】
(実施例4)
本発明の第4の実施例を図17に示す。この実施例は、図2(第1の実施例)の回路において、負荷回路とインダクタL3とコンデンサC4の直列回路をインダクタL2に並列的に接続し、コンデンサC10と整流器D9、D10を追加した構成である。負荷回路を介してコンデンサC1に電流が流れるため、図2の回路よりコンデンサC1のリップル電流は増加するが、コンデンサC4を削除可能になるという利点がある。また、コンデンサC10と整流器D9、D10を追加することによって、インダクタL1が蓄積した電磁エネルギーを放出した直後に逆向きの電流を全波整流器DBの方向に流し、全波整流器DBに過電圧が印加されることを防ぐ効果が期待できる(インダクタL1の逆向きの電流がインダクタL1、整流器D9、D10で構成する閉回路を流れるため、全波整流器DBにストレスを与えない)。それ以外の回路動作は図2とほぼ同じである。
【0032】
なお、上記実施例はいずれも負荷を放電灯として説明したが、高周波電流を通電する負荷であれば何でも良く、整流平滑回路を備え、交流を直流に変換する電源装置でも適用できる。また、負荷は複数でも良く、負荷を並列あるいは直列に接続した構成でも良い。さらに、ローパスフィルタのみあるいは全波整流器DBとローパスフィルタ以外を個別に構成してもよい。
【0033】
【発明の効果】
本発明の構成によれば、平滑用のコンデンサの両端電圧に関らず交流電源からのラッシュ電流が流れることはなく、入力電流の高調波歪みを抑制することができ、設計の自由度が高い。したがって、昇圧率を1以下に設計することによって、平滑用のコンデンサやスイッチング素子に印加する電圧を抑えることができ、部品の信頼性の向上や、耐圧レベルの低い部品を選定してコストダウンや小型化を実現できる。また、実質的に電源投入時の突入電流が無く、定常動作時と同程度の電流値に抑制されるから、部品の信頼性を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第1の実施例の回路図である。
【図3】本発明の第1の実施例の制御回路の各部の電圧波形を示す波形図である。
【図4】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が谷部である場合の第1の動作を説明するための回路図である。
【図5】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が谷部である場合の第2の動作を説明するための回路図である。
【図6】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が谷部である場合の第3の動作を説明するための回路図である。
【図7】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が谷部である場合の第4の動作を説明するための回路図である。
【図8】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が山部である場合の第1の動作を説明するための回路図である。
【図9】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が山部である場合の第2の動作を説明するための回路図である。
【図10】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が山部である場合の第3の動作を説明するための回路図である。
【図11】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が山部である場合の第4の動作を説明するための回路図である。
【図12】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が谷部であるときの動作波形図である。
【図13】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧が山部であるときの動作波形図である。
【図14】本発明の第1の実施例の全波整流器の出力電圧と出力電流の波形図である。
【図15】本発明の第2の実施例の回路図である。
【図16】本発明の第3の実施例の回路図である。
【図17】本発明の第4の実施例の回路図である。
【符号の説明】
Q1 スイッチング素子
C1 平滑用コンデンサ
L1 チョッパ用インダクタ
L2 限流用インダクタ
L3 共振用インダクタ
DB 全波整流器
AC 交流電源
D7 第1の整流器
D8 第2の整流器

Claims (5)

  1. 交流入力端子に交流電源を接続された全波整流器と、全波整流器の一方の直流出力端子に一端を接続されたチョッパ用の第1のインダクタと、第1のインダクタの他端と全波整流器の他方の直流出力端子の間に接続されたスイッチング素子と、第1の整流器を介して第1のインダクタと並列に接続された第2のインダクタ及び平滑用の第1のコンデンサの直列回路と、第2のインダクタ及び第1のコンデンサの直列回路を前記スイッチング素子に接続して閉回路を形成する第2の整流器と、前記スイッチング素子と並列に接続された第3のインダクタと負荷回路と第2のコンデンサの直列回路と、全波整流器の出力電圧が0V近傍となる谷部と全波整流器の出力電圧が最大値近傍となる山部とでは第2のインダクタに流れる電流が逆方向となるように、前記スイッチング素子をオン・オフ制御する制御回路とを備え、第1の整流器は前記スイッチング素子のオン時に蓄積された第1のインダクタの電磁エネルギーをスイッチング素子のオフ時に第1のコンデンサに充電する方向に配置されており、第2の整流器は前記スイッチング素子のオン時に第1のコンデンサの放電電流が流れる方向に配置されており、第1及び第2の整流器は前記全波整流器から第1のコンデンサに流れ込む充電電流を阻止する方向に配置されており、平滑用の第1のコンデンサの電圧は全波整流器の出力電圧のピーク値よりも低く設定されることを特徴とする電源装置。
  2. 前記スイッチング素子又は第2のインダクタと並列に第3のコンデンサを接続したことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
  3. 前記スイッチング素子の両端電圧を検出する検出手段を備え、前記制御回路はスイッチング素子の両端電圧が略0Vに戻ったタイミングでスイッチング素子のオンを開始することを特徴とする請求項2記載の電源装置。
  4. 前記負荷回路は放電灯と予熱用コンデンサの並列回路であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電源装置。
  5. 交流入力端子に交流電源を接続された全波整流器と、全波整流器の一方の直流出力端子に一端を接続されたチョッパ用の第1のインダクタと、第1のインダクタの他端と全波整流器の他方の直流出力端子の間に接続されたスイッチング素子と、第1の整流器を介して第1のインダクタと並列に接続された第2のインダクタ及び平滑用の第1のコンデンサの直列回路と、第2のインダクタ及び第1のコンデンサの直列回路を前記スイッチング素子に接続して閉回路を形成する第2の整流器と、第2のインダクタと並列に接続された第3のインダクタと負荷回路と第2のコンデンサの直列回路と、全波整流器の出力電圧が0V近傍となる谷部と全波整流器の出力電圧が最大値近傍となる山部とでは第2のインダクタに流れる電流が逆方向となるように、前記スイッチング素子をオン・オフ制御する制御回路とを備え、第1の整流器は前記スイッチング素子のオン時に蓄積された第1のインダクタの電磁エネルギーをスイッチング素子のオフ時に第1のコンデンサに充電する方向に配置されており、第2の整流器は前記スイッチング素子のオン時に第1のコンデンサの放電電流が流れる方向に配置されており、第1及び第2の整流器は前記全波整流器から第1のコンデンサに流れ込む充電電流を阻止する方向に配置されており、平滑用の第1のコンデンサの電圧は全波整流器の出力電圧のピーク値よりも低く設定されることを特徴とする電源装置。
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