JP3561572B2 - ポリビニルアルコール系樹脂組成物 - Google Patents

ポリビニルアルコール系樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリビニルアルコール(以下PVAとする)系樹脂の熱成形加工によるフィルムまたはシートの製造に際し、実質的に無水の状態で溶融成形することのできるPVA系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PVA系樹脂は、戦後日本でビニロンの工業化に伴い飛躍的に発展した水溶性の合成樹脂であるが、近年では、他の非水溶性汎用合成樹脂のフィルムやシート分野にも進出している。PVA系樹脂は、接着性、フィルム成形性、その強靭性、無色透明性などの優れた物性のほかに、水溶性であることから環境に優しいプラスチックとして最近特に脚光を浴びつつある。
従来、PVA系樹脂は他の汎用熱可塑性樹脂と異なり、熱分解温度が融点より低いため、その成形加工には水を可塑剤とした溶融押出成形、流延成形が適当な方法とされてきた。この方法は多量の水を添加するため、成形加工機の厳密な温度管理、特にはダイ温度を 100℃以下に保つこと、吐出溶融物中に気泡を生じさせないこと、さらには製膜しながら含有水分を除去するための乾燥、熱処理を行うことなど複雑な操作を必要とし、結果的に得られる製品が高価になり、その分野も薄手のフィルムに止まり、厚手のシートを得るのは技術的に困難であった。
【0003】
その改善のため、これまでに多くの提案がなされてきた。すなわち、PVAにスルファミン酸を付加してPVA硫酸化物とすることにより水に対する溶解性を改善する方法(特公昭37−12538号公報)、リン酸にアルコール、グリコールエーテル及びアミドを付加したリン酸エステルを可塑剤として用いる方法(特公昭42−18813号公報)、PVAの熱成形加工時に熱による着色を防止するために、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸ナトリウム塩(特公昭43−3975号公報)、メルカプトチアゾールまたはイミダゾール類(特公昭45−7691号公報)、カルボン酸(特公昭46−37664号公報)、リン酸のアルカリ金属塩(特公昭47−24265号公報)をそれぞれ添加する方法、低ケン化(35〜60モル%)PVAにグリセリンのプロピオン酸付加物を混合する方法(特開昭49−131240号公報)、低ケン化(70〜97モル%)PVAにフタル酸のグリセリン付加物を混合する方法(特開昭49−120946号公報)、リン酸またはピロリン酸を添加して着色を防止する方法(特開昭51−88544号公報)などである。
しかし、これらのいずれの方法でもPVAの押出成形加工またはカレンダー成形加工のように高温の動的かつ発熱を伴う熱成形加工での着色防止については十分な効果を示していない。
【0004】
また、アルカリまたはアルカリ土類金属塩を用いて溶融成形加工時の加工性を改善する方法(特開平4−202535号、同 5−98038号、同 5−96617号各公報)、アルキルポリオキシエチレン付加ジメチルアンモニウムクロリド系界面活性剤を用いて熱成形加工時の離型性及びプレートアウト性を改善する方法(特開平5−163369号公報)、シリコーンエマルジョンを用いて押出成形時のダイ離れを改善する方法(特開平5−194812号公報)なども提案されているが、これらの方法も加工性の改善のみに止まり、熱安定性については不十分であった。したがって、熱安定性と共に成形加工性をも改善するという課題は解決されていない。
さらに、多価アルコールを添加して無水の状態で溶融成形する方法(特公昭44−28588号公報)が提案されたが、これも時間の経過とともにスクリュー部、ダイの周縁部などに焼けた樹脂カスが溜まる、いわゆる目やに(成形加工メーカーなどにおける業界用語)現象が発生し、シートの表面の平滑性や外観を損なうため、長時間にわたって連続運転することが実際上困難であった。また多価アルコールの存在下でポリ酢酸ビニルをケン化して得られる変性PVAを溶融成形する方法(特公昭42−26930号公報)、多価アルコール芳香族カルボン酸及び環状炭化水素の縮合物を配合する方法(特開昭50−22049号公報)、α−オレフィン変性PVAと熱可塑性樹脂を混合し無水の状態で溶融成形する方法(特公昭53−24975号、同56−49733号各公報)は、いずれも基本的に完全な水溶性とすることが困難であった。
【0005】
オキシアルキレン基含有PVA共重合体を用いて溶融成形する方法(特開平3−203932号公報)は、ビニルアルコール、ビニルエステル、オキシアルキレンアリルエーテルなどを重合させる条件、収率、混合後の溶液回収などにより、コストが高いものになった。
また、有機スルホン酸の金属塩と有機リン酸エステル化合物とを組み合わせて添加する方法(特開平7−268164号公報)が開示されており、これによると熱成形加工時の熱安定性と成形加工性をも同時に改善するというものであるが、離型性及びプレートアウト性についてはまだ十分ではなく、さらには表面平滑性も不十分なことから、製品の外観が悪く商品価値を損ねてしまうという課題が残った。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、実質的に無水の状態で成形加工することのできるPVA系樹脂組成物、特には溶融押出成形、射出成形などで熱成形加工されたときの熱劣化に対する安定性、加工機の金属処理面との剥離性と共に、加工されたPVA系樹脂が高温下に曝されたときの熱劣化や着色に対しても優れた防止効果を有するPVA系樹脂組成物を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を、PVA系樹脂に配合される成分の種類と量で解決すべく種々実験を重ねた結果、完成されたものである。すなわち、本発明によるPVA系樹脂組成物は、PVA系樹脂 100重量部に対し、(a)炭素数4〜22の脂肪族カルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物 0.025〜5重量部、(b)炭素数12〜22の脂肪族カルボン酸 0.025〜5重量部および(c)マンニトールまたはソルビトール0.05〜10重量部を配合してなることを要旨とする。
上記PVA系樹脂組成物は、(a)成分のエステル化合物が、ステアリン酸とペンタエリスリトールとのエステルであり、(b)成分の脂肪族カルボン酸が、ステアリン酸またはベヘン酸のいずれかであることを好適とする。
本発明のPVA系樹脂組成物を熱成形加工すると、高温で、しかも動的加工によって生ずる熱分解、これに起因する着色が防止され、同時に成形品の離型性及びプレートアウト性、さらには表面平滑性も改善されるなど、極めて良好な成形加工性が付与され、フィルムその他の製品の商品価値を高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のPVA系樹脂組成物において、PVA系樹脂と共に用いられる(a)成分は、炭素数4〜22の脂肪族カルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物である。
炭素数4〜22の脂肪族カルボン酸は、飽和脂肪族のモノもしくはジまたは不飽和脂肪族のモノカルボン酸であって、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸などが挙げられる。
他方、多価アルコールには、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
(a)成分は、PVA系樹脂 100重量部に対して、 0.025〜5重量部、好ましくは 0.1〜3重量部配合されるもので、これが 0.025重量部未満では金属面との剥離性が悪化して成形加工することが困難になり、また5重量部を超えると透明なフィルムが得られなくなる。
【0009】
(b)成分は、炭素数12〜22の脂肪族カルボン酸、より具体的には飽和脂肪族または不飽和脂肪族のモノカルボン酸であって、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸などが挙げられる。
(b)成分は、PVA系樹脂 100重量部に対して、 0.025〜5重量部、好ましくは 0.1〜3重量部配合される。これが 0.025重量部未満では加工時の熱による着色を生じ、金属面との剥離性も不十分になる。また、これが5重量部を超えるとゲル化(PVA系樹脂が加熱されて溶融状態になること)が遅れてしまうので加工上好ましくない。
一方、成形加工後のフィルムなどが経時の過程で、ブルーミング(フィルムの表面に加工時に配合された各種添加剤が析出してくる現象で、ゴム及びポリ塩化ビニルなど合成樹脂の業界で通常使われる技術用語)を生じさせ、これが印刷やラミネートなどの二次加工の際に問題となり、且つ商品価値を損なうことにもなる。
【0010】
(c)成分は、マンニトールまたはソルビトールであって、PVA系樹脂 100重量部に対し、0.05〜10重量部、好ましくは 0.2〜6重量部配合される。これが0.05重量部未満では熱安定性が不十分で、熱劣化によりPVA系樹脂が分解し炭化してしまい、これが10重量部を超えると色相が悪化し無色透明なフィルムなどができなくなる。
【0011】
本発明のPVA系樹脂組成物は、上記成分の外に、有機亜リン酸エステル、ヒンダードフェノール類または含硫黄カルボン酸アルキルエステルなどの酸化防止剤;β−ジケトン化合物またはエポキシ化合物などの有機系熱安定化助剤;無機金属塩または複塩などの無機系熱安定化助剤;紫外線吸収剤などの光安定剤などの各種添加剤を、目的に応じて適宜併用することができる。
【0012】
酸化防止剤としての有機亜リン酸エステルは、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイト、アルキルアリールホスファイト、ビスフェノール−A−ホスファイト、多価アルコールホスファイト、環状構造をもつサリチルアルキルホスファイトなどによって代表され、これらのホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリイソトリデシルホスファイト、トリベンジルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリ−2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、2,4−ジ−t−ブチルフェニルジイソデシルホスファイト、トリブトキシエチルホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェニルアルキル(C12〜C15)ジホスファイト、ヘプタキス(ジプロピレングリコール)トリホスファイト、サリチルオクチルホスファイトなどが挙げられる。
【0013】
同様に、ヒンダードフェノールは、アルキルフェノール、アルキルフェノールエステル、アルキレン又はアルキリデンビスフェノール、ポリアルキルフェノールエステルなどによって代表され、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジフェニルプロパン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)などが挙げられる。
また、含硫黄カルボン酸アルキルエステルは、例えば、ジラウリルメルカプトプロピオン酸エステル、ジステアリルメルカプトプロピオン酸エステルなどが挙げられる。
【0014】
有機系熱安定化助剤としてのβ−ジケトン化合物は、例えば、デヒドロ酢酸、シクロヘキサン−1,3−ジオン、2−アセチルシクロペンタノン、2−ベンゾイルシクロペンタノン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、アセチルステアロイルメタン、ベンゾイルアセトンパルミトイルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、トリベンゾイルメタン、4−メトキシベンゾイル−ベンゾイルメタン、ビス(4−メトキシベンゾイルメタン)、4−クロロベンゾイル−ベンゾイルメタン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロンなどが挙げられる。
また、エポキシ化合物は、エポキシ化不飽和油脂、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル、エポキシシクロヘキサン誘導体などによって代表され、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシ化ステアリン酸のブチル、イソオクチル、2−エチルヘキシルなどのアルキルエステル、3−(2−キセノキシ)−1,2−エポキシプロパン、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、エポキシ化ポリブタジエンなどが挙げられる。
【0015】
無機系熱安定化助剤としての無機金属塩または複塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、合成ハイドロタルサイト、A型ゼオライトなどが挙げられる。
【0016】
紫外線吸収剤などの光安定剤は、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシベンゾエート系、シアノアクリレート系、シュウ酸アニリド系またはヒンダードアミン系によって代表され、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、p−t−ブチルフェニルサリチレート、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)−(シュウ酸アニリド)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ{[6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][( 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]}などが挙げられる。
【0017】
本発明のPVA系樹脂組成物に適用されるPVA系樹脂は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどの単独または混合物のビニルエステル系モノマーの重合体を部分ケン化することにより得られるものである。
PVA系樹脂の重合度は 100〜3,000 の範囲のものが好ましく、これが 100未満のものでは成形加工品の機械的強度が劣り、3,000 を超えるものでは本発明の成形加工用組成物の外に(可塑剤としての)多価アルコールを添加しても、成形加工時にPVA系樹脂の熱分解が起こり成形加工することができない。
また、ケン化度は50モル%以上が好ましく、さらには80モル%以上がより好ましい。これが50モル%未満ではPVA系樹脂が本来持つ特性を失ってしまって使用できない。
【0018】
上記PVA系樹脂としては、上記ビニルエステル系ホモポリマーの外に、このビニルエステル系ホモポリマーを形成するビニルエステル系モノマーと共重合可能な他種のモノマーとのコポリマーでもよく、このコポリマーを形成する他種のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルまたはビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸及びその塩またはそのエステル類;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。
これらの共重合可能なモノマーの含有量としては、10モル%以下、特には5モル%以下が好ましい。
【0019】
上記PVA系樹脂には、可塑剤としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリンなどを添加することができる。前記可塑剤の添加量は、PVA系樹脂の重合度によっても異なり、例えば、重合度 100〜600 、ケン化度5〜99モル%のPVA系樹脂において、含水率がPVA系樹脂製造上不可避の量以下の範囲内であれば、水分が可塑剤として作用するため、特に前記可塑剤を添加する必要はない。
この可塑剤を添加する場合はPVA系樹脂 100重量部に対して0.01〜 200重量部、特には1〜60重量部が好ましい。これが0.01未満では重合度が 600を超えたPVA系樹脂を成形加工する場合に、流動性が得られない。また、これが 200重量部を超えると成形物から可塑剤が溶出するので好ましくない。
【0020】
上記PVA系樹脂には、さらに必要に応じて、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、カラギナン、キチン、キトサンなどの含窒素多糖類、リン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの滑剤、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの充填剤、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸コバルト、ホウ酸亜鉛、酢酸第一錫、ギ酸鉛、臭化マンガンなどの着色防止剤、酸化チタン、カーボンブラック、蛍光顔料などの各種着色剤、発泡剤、pH調整剤などを添加してもよい。
【0021】
【実施例】
次に、本発明の具体的態様を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1〜8)
ケン化度88.0モル%、重合度 600のPVA 100重量部と、可塑剤としてのグリセリン10重量部とを、基本配合として用意し、これに表1および表2に示す各種添加剤(重量部)を加えて、それぞれよくかき混ぜ、 100℃に加熱した高温乾燥器中に30分入れた後、取り出して十分に混合した。
ローリング(混練)試験:
次に、表面温度 185℃のミキシングロール(電気誘導加熱式の可変速型テストロール機、 155mmφ× 380mm、ロール間隔= 0.3mm、前ロール回転数= 22rpm、後ロール回転数=20rpm )によってローリング(混練)試験を行った。このローリング中の、シートの離型性とプレートアウト性、ローリング6分後の表面平滑性、ローリング12分後に採取したシートの試験片(30×30mm)についての熱分解(劣化)による着色性を、それぞれ下記の基準で評価すると共に、ローリング熱経時(熱履歴)によるPVA系樹脂組成物の架橋、劣化によってロール表面にシートが粘着し始める時間を測定した。
【0022】
さらに、上記配合物について下記の条件で押出成形及び射出成形を行い、それぞれについて、成形品の着色および表面平滑性を下記の基準で評価すると共に、Tダイ部または吐出部に熱劣化したPVA系樹脂組成物が粘着し始めるまでの時間を測定した。
押出成形:
押出機の種類:二軸押出機、スクリュー‥L: 1,280mm、D:40mmφ、L/D:32、回転数: 70rpm、シリンダー温度(圧縮部): 205℃、Tダイ温度: 200℃
射出成形:
射出成形機の種類:日本製鋼所製 J220E型、スクリュー混練温度: 200℃、吐出部温度: 210℃、金属温度:50℃、射出圧力: 1,250kg/cm、成形サイクル:20秒
【0023】
(評価基準:5ないし1の5段階で表し、3以下では商品化できない)
▲1▼ローリング12分後の着色または成形品の着色:
5:無着色、4:微黄色、3:黄色、2:黄褐色、1:赤褐色
▲2▼シートの離型性:
5:非常に良く剥離する、4:良く剥離する、3:やや剥離しにくい、2:剥離しにくい、1:非常に剥離しにくい
▲3▼ローリング時のゲル化性または成形時のゲル化性:
5:非常に早い、4:早い、3:やや遅い、2:遅い、1:非常に遅い
▲4▼ローリング6分後の表面平滑性または成形品の表面平滑性:
5:シートの表面が非常に平滑で艶がある、4:平滑で艶がある、3:微細な凹凸があり、やや艶がない、2:全く艶がない、1:凹凸が激しくざらついている▲5▼ローリング6分後の透明性または成形品の透明性:
5:非常に透明度が高い、4:透明度が高い、3:透明度がやや低い、2:透明度が低い、1:透明度が非常に低い
▲6▼ローリング時のプレートアウト性:
5:ロール表面に全くプレートアウトしない、4:殆どプレートアウトしない、3:少しプレートアウトする、2:プレートアウトする、1:激しくプレートアウトする
以上の結果を表1および表2に示した。なお、表中の−はミキシングロールに粘着してしまったため評価できなかったことを表す。
【0024】
【表1】
Figure 0003561572
【0025】
【表2】
Figure 0003561572
【0026】
【発明の効果】
本発明のPVA系樹脂組成物は、実施例に示されるように、混練を12分行っても着色せず、成形時の離型性やプレートアウト性も改善され、またシートの表面平滑性が良好なため優れた成形品が得られる。

Claims (3)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂 100重量部に対し、(a)炭素数4〜22の脂肪族カルボン酸と多価アルコールとのエステル化合物 0.025〜5重量部、(b)炭素数12〜22の脂肪族カルボン酸 0.025〜5重量部および(c)マンニトールまたはソルビトール0.05〜10重量部を配合してなることを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂組成物。
  2. (a)成分のエステル化合物が、ステアリン酸とペンタエリスリトールとのエステルである請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂組成物。
  3. (b)成分の脂肪族カルボン酸が、ステアリン酸またはベヘン酸のいずれかである請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂組成物。
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