JP3560748B2 - 横穴付粉末成形品の製造方法 - Google Patents

横穴付粉末成形品の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、横穴が設けられる粉末成形品の製造方法に関し、特に、上下パンチで加圧して得られる圧粉体において原料粉末の密度を均一化させ、この圧粉体焼結後における最終製品の変形を小さくできるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、エンドミルやフライスなどに使用されるスローアウェイチップは、原料粉末を加圧した後に焼結して作製される粉末成形品の一つであり、このスローアウェイチップとしては、図17に示すような縦刃ブレーカ付のチップ101がある。このチップ101は、側面102と上下両面103、104との各稜線に切刃105、106を形成するとともに、側面102に取付用の横穴107が設けられている。
【0003】
そして、このようなチップ101では、横穴107の部分がアンダーカット部となるため、一般的なダイを用いて上下のパンチによって加圧成形してもその圧粉体をダイから抜き出すことが不可能となる。従って、横穴107を形成するためのピンをダイのキャビティに対して出没自在に設け、このピンを突出させた状態でキャビティへ原料粉末を充填し、かかる原料粉末を上下パンチで加圧した後に、ピンをキャビティから没入させて圧粉体をダイから抜き出すようにして対応している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧粉体の形成に際して、ピンを突出させたキャビティへ原料粉末を単に投入するだけでは、キャビティ内における原料粉末の分布が均一とならない場合があり、この原料粉末をそのまま上下パンチで加圧しても部分的に密度の異なる圧粉体が形成されることになる。特に、キャビティ内においてピンの直下部分では原料粉末が充填されにくく、形成された圧粉体の横穴下方部分において原料粉末の密度が低くなり、この圧粉体を焼結させてもその最終製品が不良品になるといった問題点を有している。
【0005】
すなわち、圧粉体の密度が均一でない場合には、この圧粉体を焼結させると、密度の高い部分では膨らみが大きく、一方、密度の低い部分では膨らみが小さいため、最終製品の表面に許容範囲を超えて不必要な起伏や窪みを生じさせたり、また横穴の断面形状を円形から楕円形に変形させてしまう、といった過度の変形を生じさせることになる。そして、例えば図17に示すチップ101においてかかる変形が生じると、これをチップ取付座に取り付ける場合にチップの座りが悪くなって切刃の正確な位置出しが難しくなる他に、楕円形に変形した横穴によって取付用ボルトが差し込み不能になるため、好ましくない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、圧粉体における原料粉末の密度を容易かつ確実に均一にできるようにして、この圧粉体を焼結しても変形を小さくでき、不良品の発生を防止できるようにした横穴付粉末成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して、かかる目的を達成するために、本発明に係る横穴付粉末成形品の製造方法は、横穴が設けられる粉末成形品の製造方法であって、原料粉末が投入されるキャビティが形成されたダイと、このキャビティの両側開口部から原料粉末を加圧する上下パンチと、前記横穴を形成するためにキャビティに出没自在のピンとを用い、前記下パンチを、前記ピンの長手方向と直交する方向に複数に分割して少なくとも外側の第1パンチとこれに挟まれる内側の第2パンチとで構成するとともにこれらが相対的に移動するように設け、先ず、前記キャビティに前記ピンを突出させるとともに、前記下パンチを、前記第2パンチの先端が前記第1パンチより前記キャビティ内方に突出した状態でこのキャビティ内のピン付近まで差し込み、次いで、この下パンチを前記ピンから離しつつ、当該キャビティに原料粉末を充填させ、次いで、このキャビティに前記上パンチを差し込むとともに、前記第2パンチを前記第1パンチに対して引き込んでその先端を当該第1パンチの先端に一致させてから、これら上下パンチによって原料粉末を加圧し、前記ピンを当該キャビティから没入させた後に、このキャビティから圧粉体を抜き出すようにしたことを特徴とする。
【0008】
なお、上記製造方法においては、前記上パンチとして、前記下パンチの第1及び第2パンチとそれぞれ対応するように外側の第3パンチとこれに挟まれる内側の第4パンチとで構成するとともにこれらが相対的に移動するものを用い、この上パンチを前記キャビティに差し込むときに、前記第2パンチを前記第1パンチに対して引き込むことに同期させて、前記第4パンチの先端を前記第3パンチより当該キャビティ内方に突出させるようにしてもよい。
【0011】
このように、本発明に係る横穴付粉末成形品の製造方法は、下パンチを、ピンの長手方向と直交する方向に複数に分割して少なくとも外側の第1パンチとこれに挟まれる内側の第2パンチとで構成しているため、第2パンチがピンの直下部分に対応するとともに第1パンチがそれ以外の部分に対応することになる。従って、下パンチがダイに対して下方に移動する吸い込み充填後、第2パンチが第1パンチに対して引き込むことにより、ピンの直下部分に確実に原料粉末を充填させることが可能となる。
【0012】
そして、ピン直下部分に確実に原料粉末を充填させることによってキャビティ内の原料粉末の分布を均一にできるため、この原料粉末を加圧して形成された圧粉体において、原料粉末の密度を容易かつ確実に均一化することができ、かかる圧粉体を焼結しても最終製品の表面に生じる起伏や、横穴の変形が小さくなるので、最終製品に不良品が発生するのを防止できるようにしている。なお、第2パンチは、原料粉末の加圧時に、その先端が第1パンチの先端と一致するため、圧粉体の下面に段差が生じるようなことはない。
【0013】
また、上記製造方法において、上パンチを、下パンチの第1及び第2パンチとそれぞれ対応するように第3パンチ及び第4パンチで構成したものでは、上パンチをキャビティに差し込む際、第2パンチを第1パンチに対して引き込むことに同期させて、第4パンチの先端を第3パンチよりキャビティ内方に突出させることにより、キャビティ内における原料粉末の充填比を調整させることができる。これにより、キャビティ内の原料粉末の分布をより一層均一にできるため、圧粉体における原料粉末の密度を一層容易かつ確実に均一化することができ、最終製品に不良品が発生するのを防止することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図16を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、この実施の形態は、図17に示す縦刃ブレーカ付のチップ101を成形するものである。ただし、粉末成形品に横穴を設けるものであれば、このようなチップ101の成形用として用いることに限定されず、他の粉末成形品の製造装置としても使用することができる。
【0018】
そして、キャビティ2が形成されるダイ1には、キャビティ2を挟んで対向する水平状態の2つの水平孔3、4が設けられている(図2参照)。また、ダイ1は、固定具6に挟持された状態でダイプレート5に固定されるとともに、このダイプレート5から垂下する脚部7が、油圧等で駆動するロッド等に連結されている。従って、ダイ1は、ロッド等を移動させることにより、脚部7及びダイプレート5を介して基台8に対し上下に移動する。
【0019】
また、図2及び図3に示すように、ダイ1の水平孔3には円柱状の雄側ピン9が、また水平孔4には同じく円柱状の雌側ピン10がそれぞれ摺動自在に設置されている。この雄側ピン9は、先端側(図2の右側)部分に小径部9aを設けるとともに、この小径部9aの基端部分を順次拡径してテーパ部9bが設けられている。また、小径部9aの断面形状は、図示のような円形状に形成されることに限定するものではなく、例えば上下方向の径が横方向の径より長くなった略楕円形状に形成されるものであってもよい。
【0020】
一方、雌側ピン10は、先端側(図2の左側)部分に、雄側ピン9の小径部9aを嵌め入れ可能な開口部10aを設けるとともに、その先端部分を順次拡径してテーパ部10bが設けられている。なお、テーパ部9b及びテーパ部10bのテーパ角度は、約30゜〜45゜の範囲に設定されるが、その角度は任意に設定することができる。ただし、これらテーパ部9b、10bは、直線状に拡径することに限定するものではなく、曲線状に拡径させるようにしてもよい。
【0021】
また、小径部9aを開口部10aに嵌め入れるものに限定されず、例えば小径部9aの先端と、雌側ピン10の先端部分を単に突き合わせるようにしたものであってもよく、しかも、その突き合わせ位置は任意に設定することができる。なお、雄側ピン9と雌側ピン10との突き合わせ位置をキャビティ2の略中央に設定したものでは、これらピンを圧粉体から抜くときに、圧粉体に対する負荷をバランス良く負担することが可能となる。
【0022】
また、図3に示すように、雄側ピン9の小径部9aを雌側ピン10の開口部10aに嵌め込むようにしたものでは、雄側ピン9と雌側ピン10とを突き合わせたときに、これらピンをキャビティ2内で確実に連続させることができ、後述する上下パンチによってキャビティ2の原料粉末を加圧したときでも両者のずれを防止し、圧粉体の横穴を精度良く形成させることが可能となる。
【0023】
続いて、雄側ピン9は、図2に示すように、継手11を介して駆動手段12に接続されている。この駆動手段12は、シリンダ13とピストンロッド14とで構成され、前後シリンダ室のそれぞれに供給されるエアの圧力によってピストンロッド14を駆動し、このピストンロッド14とともに継手11を介して雄側ピン9を移動させるようにしている。
【0024】
一方、雌側ピン10は、継手15を介して駆動手段16に接続されている。この駆動手段16は、駆動手段12と同様、シリンダ17とピストンロッド18とで構成され、前後シリンダ室のそれぞれに供給されるエアの圧力によってピストンロッド18を駆動し、このピストンロッド18とともに継手15介して雌側ピン10を移動させるようにしている。ただし、これら駆動手段12、16は、雄側ピン9又は雌側ピン10を移動させるものであれば上記のような構成のものに限定されず、例えば、油圧シリンダの他、モータなどの駆動源を用いるようにしてもよい。
【0025】
なお、駆動手段12による雄側ピン9の移動は、小径部9aをキャビティ2から没入させた状態と、小径部9a及びテーパ部9bをキャビティ2に突出させた状態との範囲で行われる。一方、駆動手段16による雌側ピン10の移動は、テーパ部10bをキャビティ2から没入させた状態と、テーパ部10bをキャビティ2に突出させた状態との範囲で行われる。
【0026】
そして、駆動手段12、16によって雄側ピン9及び雌側ピン10をそれぞれキャビティ2に向けて移動させることにより、雄側ピン9の小径部9aが雌側ピン10の開口部10aに嵌まり込み、かつそれぞれのテーパ部9b、10bがキャビティ2に露出した状態となる。なお、ダイ1と駆動手段12、16との間は、下端部分がダイプレート5に固着されたカバー19によって覆われており、雄側ピン9や雌側ピン10、継手11、15、ピストンロッド14、18を保護するようにしている。
【0027】
また、雄側ピン9及び雌側ピン10のそれぞれには、筒状のストッパ20、21が取り付けられ、ナット22、23によってそれぞれ後方への移動が係止された状態となっている。そして、上記のように雄側ピン9及び雌側ピン10をそれぞれキャビティ2に向けて移動させた場合、ストッパ20、21のそれぞれがダイ1の外壁に当接することによって、雄側ピン9及び雌側ピン10のそれぞれは、その位置から前方への移動が係止されることになる。
【0028】
このストッパ20、21は、雄側ピン9及び雌側ピン10が必要以上にキャビティ2方向へ移動してしまうのを防止するものであり、これにより、雄側ピン9及び雌側ピン10のテーパ部9b、10bをキャビティ2内壁に沿って適切に露出させることが可能となる。ただし、ストッパ20、21として図示のものに限定されるものではなく、所定位置にある雄側ピン9等の前進を規制できるものであれば、その構成は任意である。さらに、駆動手段12、16によってピストンロッド14、18の移動量を正確に制御できるものであれば、ストッパ20、21を設けるか否かは任意である。
【0029】
なお、雄側ピン9等を前進させた位置で、これら雄側ピン9等が後退しないように、ダイ1に各種保持部材を設けるようにしてもよい。ただし、駆動手段12、16によって雄側ピン9等を強く保持できるものであれば、このような保持部材を用いる必要がない。
【0030】
また、ダイ1は、脚部7が移動することによりダイプレート5を介して基台8に対し上下に移動するが、このとき、駆動手段12、16もダイ1の移動とともに上下に移動することになる。
【0031】
次に、下パンチ24は、キャビティ2の下側開口部分から差し込まれた状態に設定され、図1に示すように、小径部9a(雄側ピン9)の長手方向と直交する方向に複数に分割され、外側の第1パンチ25とこの第1パンチ25に挟まれる内側の第2パンチ26とで構成されている。従って、第2パンチ26は小径部9aの直下に位置するとともに、第1パンチ25は小径部9aの直下以外に位置することになる。
【0032】
そして、第1パンチ25は、シリンダ27及びカバー28を介して基台8に固定されており、一方、第2パンチ26は、シリンダ27内にセットされるピストン29に取り付けられている。従って、第2パンチ26は、シリンダ27内の上部室27aもしくは下部室27bにそれぞれ油圧サーボからの油圧が導入されることによって、ピストン29の駆動を介して第1パンチ25に対し相対的に上下に移動する。ただし、第2パンチ26の駆動手段としては、図示のような油圧シリンダの他、エアシリンダやモータなどの駆動源を用いるようにしてもよい。
【0033】
また、この第2パンチ26の移動は、その先端が第1パンチ25の先端と一致した状態から、この第1パンチ25より突出して小径部9aに当接しない状態までの範囲で行われる。なお、このような第2パンチ26の移動範囲の設定は、ピストン29の駆動範囲で設定する他、図示しない各種ストッパによっても適宜設定可能である。
【0034】
ただし、この下パンチ24としては、図示のように三分割することに限定されず、第1パンチ25及び第2パンチ26をそれぞれさらに複数に分割してこれらが独立して駆動するようなものであってもよい。この場合であっても、第2パンチ26は小径部9aの直下部分に位置し、かつ少なくとも外側の第1パンチ25に挟まれるとともに第1パンチ25に対して相対的に移動することは勿論である。
【0035】
また、下パンチ24と基台8との間には、振動機構を設けるようにしてもよい。この振動機構は、下パンチ24に対して縦振動を与えるものであり、その駆動を調整手段によって制御するようしている。すなわち、下パンチ24を振動させる振動幅や振動時間がこの調整手段によって適宜設定され、振動機構の駆動を介して下パンチ24を適宜振動させるようにしている。なお、振動機構の振動として縦振動に限定されず、縦振動に横振動を加えたものや横振動のみであってもよい。
【0036】
また、振動機構は、下パンチ24のみを対象として設けられることに限定するものではなく、例えばダイ1とダイプレート5との間のみ、もしくはここと下パンチ24の双方に設けるようにしてもよい。なお、振動機構をダイ1とダイプレート5との間に設けた場合は、ダイ1全体、すなわちキャビティ2自体を振動させることになる。このとき、縦振動とするか否か、調整手段で振動幅や振動時間を調整するか否かは上述と同様任意である。
【0037】
次に、上パンチ30は、カバー31、シリンダ32、接続部材33を介して、油圧等で駆動するロッド34と連結されており、このロッド34を移動させることにより上下に移動する。なお、この上パンチ30は、キャビティ2の上側開口部分から差し込むことができるような位置関係で設定されている。
【0038】
また、上パンチ30は、図1に示すように、第1パンチ25及び第2パンチ26とそれぞれ対応するように複数に分割され、外側の第3パンチ35とこの第3パンチ35に挟まれる内側の第4パンチ36とで構成されている。従って、第4パンチ36は小径部9aの直上に位置するとともに、第3パンチ35は小径部9aの直上以外に位置することになる。
【0039】
そして、第3パンチ35は、カバー31及びシリンダ32を介して接続部材33に固定されており、一方、第4パンチ36は、シリンダ32内にセットされるピストン37に取り付けられている。従って、第3パンチ35は、ロッド34の移動に伴って上下に移動し、一方、第4パンチ36は、シリンダ32内の下部室32aもしくは上部室32bにそれぞれ油圧サーボからの油圧が導入されることにより、ピストン37の駆動を介して第3パンチ35に対し相対的に上下に移動する。ただし、第4パンチ36の駆動手段としては、図示のような油圧シリンダの他、エアシリンダやモータなどの駆動源を用いるようにしてもよい。
【0040】
また、この第4パンチ36の移動は、その先端が第3パンチ35の先端と一致した状態から、この第3パンチ35より突出して小径部9aに当接しない状態までの範囲で行われる。なお、このような第4パンチ36の移動範囲の設定は、ピストン37の駆動範囲で設定する他、図示しない各種ストッパによっても適宜設定可能である。
【0041】
ただし、この上パンチ30としては、図示のように三分割することに限定されず、下パンチ24を分割した個数に応じて第3パンチ35及び第4パンチ36をそれぞれ複数に分割してこれらが独立して駆動するようなものであってもよい。この場合であっても、これら第4パンチ36は小径部9aの直上部分に位置し、かつ少なくとも外側の第3パンチ35に挟まれるとともに第3パンチ35に対して相対的に移動することは勿論である。なお、これら第1〜4パンチ25、26、35、36からなる下パンチ24及び上パンチ30は、キャビティ2に充填された原料粉末を加圧するものとして用いられる。
【0042】
なお、以上の製造装置では、下パンチ24の第1パンチ25を固定して(上下に移動しないようにして)、ダイ1を上下に移動させるタイプのものであるが、これに限定されるものではなく、例えば、ダイ1を固定するとともに、第1パンチ25を上下に移動させるようにしてもよい。すなわち、ダイ1と第1パンチ25とが相対的に移動するように構成したものであれば、その態様は任意に設定可能である。ただし、第1パンチ25が移動するタイプのものであっても、第2パンチ26を、この第1パンチ25に対して相対的に移動させる点は同様である。
【0043】
続いて、図17に示すチップ101などの横穴付粉末成形品の製造方法について説明すると、図4に示すように、第1充填工程(A)、第2充填工程(B)、充填比調整工程(C)、加圧工程(D)、圧抜き・雄側ピン及び雌側ピン抜き工程(E)、抜出工程(F)、雄側ピン及び雌側ピン挿入工程(G)といった一サイクルの成形手順によって行われる。
【0044】
第1充填工程(A)については、図5及び図6に示すように行われる。先ず、原料粉末の充填に先だって、図6に示すように駆動手段12、16をそれぞれ駆動し、雄側ピン9及び雌側ピン10の双方をキャビティ2に向けて前進させる。このとき、雄側ピン9の小径部9aは雌側ピン10の開口部10aに嵌まり込み、かつ各テーパ部9b,10bがキャビティ2に露出した状態となっている。さらに、下パンチ24を、第2パンチ26が第1パンチ25より突出した状態にして、この第2パンチ26の上端がテーパ部9b付近に位置するようにダイ1の移動位置を調整する。
【0045】
また、図6に示すように、雄側ピン9及び雌側ピン10の双方をキャビティ2に向けて前進させたときには、ストッパ20、21によって、雄側ピン9等がそれ以上前進しないように規制される。これにより、雄側ピン9及び雌側ピン10のテーパ部9b、10bのそれぞれは、キャビティ2内壁に沿った適切な位置に露出した状態となっている。
【0046】
そして、図5及び図6に示すように、フィーダ38をキャビティ2上方に移動させるとともに原料粉末をフィーダ38からキャビティ2に供給する(第1充填)。なお、このような原料粉末の供給方法としてフィーダ38による供給方法に限定するものではなく、例えば、ロボットハンドによる秤量済原料粉末を空中より給粉するようにしてもよい。
【0047】
次に、第2充填工程(B)については、図7及び図8に示すように行われる。先ず、ダイ1上においてフィーダ38を図7(図8)右方に移動させ、フィーダ38をキャビティ2の上方から離す。このフィーダ38が移動する際、キャビティ2に充填された原料粉末をフィーダ38ですり切ることにより、かかるキャビティ2に一定量の原料粉末を充填できるようにしている。
【0048】
そして、図7及び図8に示すように、ダイ1を持ち上げる。このとき、下パンチ24は移動しないため、第1パンチ25及び第2パンチ26の上端が相対的にキャビティ2の下方に移動することによりキャビティ2の原料粉末を引き込み、小径部9a直下に原料粉末を回り込ませるようにしている(第2充填)。その結果、小径部9a直下において効率よく原料粉末を充填できるものとなる。このとき、第1パンチ25と第2パンチ26とは相対的な移動が行われていない。
【0049】
なお、ダイ1を持ち上げて下パンチ24の上端を下方に移動させていることに代えて、ダイ1を固定させるとともに下パンチ24を下方に移動させるようにしてもよいことは勿論である。
【0050】
また、下パンチ24に振動機構が設けられている場合には、キャビティ2への原料粉末の充填時もしくは充填後の少なくとも一方で振動機構を駆動して下パンチ24を振動させ、キャビティ2内の原料粉末を小径部9a直下により一層効率よく充填させるようにしている。なお、この振動機構は、下パンチ24の他、ダイ1に設けて、ダイ1を振動させることによってキャビティ2内の原料粉末の充填効率を高めるようにしてもよい。
【0051】
さらに、振動機構における振動幅や振動時間に関しては、調整手段によって適宜設定され、キャビティ2内において小径部9aより上方と下方の原料粉末の比率をコントロールするように振動機構の動作態様を調整している。これにより、上下パンチ24、30で原料粉末を加圧したときに、その圧粉体の略中央に小径部9aを位置させつつ、全体の密度の均一性を向上させるようにしている。ただし、このような振動機構及び調整手段を設けるか否かは任意である。
【0052】
次に、充填比調整工程(C)については、図9に示すように行われる。キャビティ2の上側開口部分から上パンチ30を差し込むとともに、第4パンチ36を駆動してその先端を第3パンチ35の下端から突出させ、これと同時に第2パンチ26を第1パンチ25に対して引っ込めるように移動させる。これにより、小径部9a直上部分の原料粉末が第4パンチ36に押される一方、第2パンチ26を引き込むことにより小径部9a直下部分に原料粉末を吸い込ませており、小径部9a直下部分において原料粉末の密度が低くなるのを規制するようにしてキャビティ2内における原料粉末の充填比を調整するようにしている。
【0053】
なお、この充填比調整工程において、第2パンチ26は、その先端が第1パンチ25の先端に一致するまで引っ込められ、一方、第4パンチ36は、第2パンチ26が引っ込んだ量に対応するように第3パンチ35から突出する。また、第2パンチ26や第4パンチ36が複数個に分割されて構成されている場合には、第2パンチ26のそれぞれが引き込むことに同期させて、第4パンチ36のそれぞれを突出させるようにする。
【0054】
ただし、上パンチ30を、第3パンチ35及び第4パンチ36とで構成させることに限定するものではなく、単一部材からなるものであってもよい。この場合、充填比調整工程(C)は、下パンチ24において、第2パンチ26が第1パンチ25に対して引き込まれるだけで行われる。
【0055】
次に、加圧工程(D)については、図10及び図11に示すように行われる。下パンチ24は、第1及び第2パンチ25、26の先端を一致させ、一方、上パンチ30は、第4パンチ36を第3パンチ35に対して引き込んでその先端を一致させた状態で、上パンチ30と下パンチ24との間でキャビティ2内の原料粉末を加圧し、圧粉体39を形成する。
【0056】
このとき、ダイ1を多少下方に移動させるようにして、小径部9aが圧粉体39の略中央に位置するように調整する。なお、ダイ1や上パンチ30の移動は油圧シリンダ等の駆動源によって行われ、それぞれの移動量は、各種センサに基づく出力などによって設定される。ただし、このようなダイ1の移動による調整方法に代えて、ダイ1を固定するとともに下パンチ24を多少移動させるようにして調整してもよい。
【0057】
また、上下パンチ24、30で原料粉末を加圧した場合、加圧された原料粉末が雄側ピン9及び雌側ピン10のテーパ部9b、10bを外側に向けて押圧するため、雄側ピン9及び雌側ピン10には外側に向けて移動させる力が働くが、駆動手段12、16で雄側ピン9及び雌側ピン10をそれぞれ前進方向に付勢しているため、不用意に後退することはない。ただし、これら雄側ピン9等の後退を規制するための保持部材等をダイ1に設けるか否かは任意である。
【0058】
次に、圧抜き・雄側ピン及び雌側ピン抜き工程(E)については、図12に示すように行われる。先ず、圧粉体39に対する上下パンチ24、30の加圧を減少もしくは除去する。ただし、上パンチ30を圧粉体39から引き離すのではなく、上下パンチ24、30で圧粉体39を挟み込んだままの状態としている。そして、駆動手段12、16(図2参照)をそれぞれ駆動して雄側ピン9及び雌側ピン10の双方をキャビティ2から引っ込める。
【0059】
その結果、圧粉体39には、小径部9aのあった部分に横孔40が形成された状態となっている。さらに、雄側ピン9及び雌側ピン10のテーパ部9b、10bによって圧粉体39の横孔40には面取りがなされた状態となっている。なお、上下パンチ24、30は、圧粉体39への加圧を減少もしくは除去しているため、小径部9aを抜く際の負荷をかけないようにしており、しかも、横孔40が形成された圧粉体39を押しつぶすことはない。
【0060】
次に、抜出工程(F)については、図13及び図14に示すように行われる。圧粉体39を上下パンチ24、30で挟んだまま、下パンチ24の上端がダイ1の上面と一致するまでダイ1を下方に移動させる。これにより、圧粉体39はダイ1(キャビティ2)から抜き出され、その後、上パンチ30を圧粉体39から引き離すことにより、圧粉体39は下パンチ24上(ダイ1上)から払い出され、圧粉体39が取り出される。このように、下パンチ24の上端をダイ1の上面に合致させているため、圧粉体39の払い出しを容易にしている。なお、この抜出工程(F)では、上下パンチ24、30は、第1及び第2パンチ25、26の先端同士、並びに第3及び第4パンチ35、36の先端同士をそれぞれ一致させた状態のまま保持されている。
【0061】
また、ダイ1が下方に移動することによって、圧粉体39の側面とキャビティ2の壁面との間が擦れ合うことになる。そして、圧粉体39には横孔40が形成されているため、キャビティ2の壁面と擦れ合って横孔40の上側部分にクラック等が生じやすくなっている。しかし、圧粉体39には、雄側ピン9及び雌側ピン10それぞれのテーパ部9a、10aによって横孔40に面取りが施されているため、上述のようなクラック等が生じるようなことはない。
【0062】
次に、雄側ピン及び雌側ピン挿入工程(G)については、図15及び図16に示すように行われる。図13及び図14の状態まで下げられていたダイ1を上方に移動させるとともに、第2パンチ26を移動させてその先端を第1パンチ25から突出させ、この第2パンチ26の先端がダイ1の水平孔3、4より下側となるようにセットする。さらに、駆動手段12、16を駆動させて雄側ピン9及び雌側ピン10の双方をキャビティ2に向けて移動させ、キャビティ2内において小径部9aを開口部10aに差し込んだ状態にする。
【0063】
これにより、原料粉末を充填可能なキャビティ2がダイ1に形成され、第1充填工程(A)が可能な状態になる。そして、この雄側ピン及び雌側ピン挿入工程(G)の状態から図5及び図6に示すフィーダ38をダイ1上にセットすることにより、第1充填工程(A)が行われることになる。
【0064】
以上のような一サイクルの手順を繰り返すことにより、横穴40を持つ圧粉体39を連続して成形することが可能になっている。なお、ダイ1から取り出された圧粉体39は、その後焼結されるとともに、寸法精度を高めるために適宜研磨されて図17に示すようなチップ101の完成品が得られる。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明に係る横穴付粉末成形品の製造方法は、下パンチを、ピンの長手方向と直交する方向に複数に分割して少なくとも外側の第1パンチとこれに挟まれる内側の第2パンチとで構成しているため、第2パンチがピンの直下部分に対応するとともに第1パンチがそれ以外の部分に対応することになる。従って、下パンチがダイに対して下方に移動する吸い込み充填後、第2パンチが第1パンチに対して引き込むことにより、ピンの直下部分に確実に原料粉末を充填させることができる。
【0066】
そして、ピン直下部分に確実に原料粉末を充填させることによってキャビティ内の原料粉末の分布を均一にできるため、この原料粉末を加圧して形成された圧粉体において、原料粉末の密度を容易かつ確実に均一化することができ、かかる圧粉体を焼結しても最終製品の表面に生じる起伏や、横穴の変形が小さくなるので、最終製品に不良品が発生するのを防止することができる。
【0067】
また、上記製造方法において、上パンチを、下パンチの第1及び第2パンチとそれぞれ対応するように第3パンチ及び第4パンチで構成したものでは、上パンチをキャビティに差し込む際、第2パンチを第1パンチに対して引き込むことに同期させて、第4パンチの先端を第3パンチよりキャビティ内方に突出させることにより、キャビティ内における原料粉末の充填比を調整させることができる。これにより、キャビティ内の原料粉末の分布をより一層均一にできるため、圧粉体における原料粉末の密度を一層容易かつ確実に均一化することができ、最終製品に不良品が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る横穴付粉末成形品の製造装置の、実施の形態を示す側面断面図である。
【図2】図1に示す製造装置の正面断面図である。
【図3】図1に示す製造装置の、キャビティ部分を拡大した断面図である。
【図4】本発明に係る横穴付粉末成形品の製造方法における手順の説明図である。
【図5】原料粉末の第1充填工程を示す側面模式図である。
【図6】原料粉末の第1充填工程を示す正面模式図である。
【図7】原料粉末の第2充填工程を示す側面模式図である。
【図8】原料粉末の第2充填工程を示す正面模式図である。
【図9】原料粉末の充填比調整工程を示す側面模式図である。
【図10】原料粉末の加圧工程を示す側面模式図である。
【図11】原料粉末の加圧工程を示す正面模式図である。
【図12】圧粉体に対する圧抜き・雄側ピン及び雌側ピン抜き工程を示す正面模式図である。
【図13】圧粉体の抜出工程を示す側面模式図である。
【図14】圧粉体の抜出工程を示す正面模式図である。
【図15】雄側ピン及び雌側ピン挿入工程を示す側面模式図である。
【図16】雄側ピン及び雌側ピン挿入工程を示す正面模式図である。
【図17】横穴を持つ縦刃ブレーカ付のチップ(粉末成形品)を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ダイ
2 キャビティ
9 雄側ピン
10 雌側ピン
24 下パンチ
25 第1パンチ
26 第2パンチ
30 上パンチ
35 第3パンチ
36 第4パンチ
39 圧粉体
40 横穴

Claims (2)

  1. 横穴が設けられる粉末成形品の製造方法であって、
    原料粉末が投入されるキャビティが形成されたダイと、このキャビティの両側開口部から原料粉末を加圧する上下パンチと、前記横穴を形成するためにキャビティに出没自在のピンとを用い、
    前記下パンチを、前記ピンの長手方向と直交する方向に複数に分割して少なくとも外側の第1パンチとこれに挟まれる内側の第2パンチとで構成するとともにこれらが相対的に移動するように設け、
    先ず、前記キャビティに前記ピンを突出させるとともに、前記下パンチを、前記第2パンチの先端が前記第1パンチより前記キャビティ内方に突出した状態でこのキャビティ内のピン付近まで差し込み、
    次いで、この下パンチを前記ピンから離しつつ、当該キャビティに原料粉末を充填させ、
    次いで、このキャビティに前記上パンチを差し込むとともに、前記第2パンチを前記第1パンチに対して引き込んでその先端を当該第1パンチの先端に一致させてから、これら上下パンチによって原料粉末を加圧し、
    前記ピンを当該キャビティから没入させた後に、このキャビティから圧粉体を抜き出すようにしたことを特徴とする横穴付粉末成形品の製造方法。
  2. 前記上パンチとして、前記下パンチの第1及び第2パンチとそれぞれ対応するように外側の第3パンチとこれに挟まれる内側の第4パンチとで構成するとともにこれらが相対的に移動するものを用い、
    この上パンチを前記キャビティに差し込むときに、前記第2パンチを前記第1パンチに対して引き込むことに同期させて、前記第4パンチの先端を前記第3パンチより当該キャビティ内方に突出させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の横穴付粉末成形品の製造方法。
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