JP3560284B2 - 磁気変換素子、薄膜磁気ヘッドおよびそれらの製造方法 - Google Patents

磁気変換素子、薄膜磁気ヘッドおよびそれらの製造方法 Download PDF

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    • H01F10/3268Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer the exchange coupling being asymmetric, e.g. by use of additional pinning, by using antiferromagnetic or ferromagnetic coupling interface, i.e. so-called spin-valve [SV] structure, e.g. NiFe/Cu/NiFe/FeMn

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気変換素子、それを用いた薄膜磁気ヘッドおよびそれらの製造方法に関するものであり、より詳細には、熱安定性の良い磁気変換素子、それを用いた薄膜磁気ヘッドおよびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハードディスクなどの面記録密度の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドとしては、磁気変換素子の一つである磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子と記す。)を有する再生ヘッドと、誘導型磁気変換素子を有する記録ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。
【0003】
MR素子としては、異方性磁気抵抗効果(AMR(Anisotropic Magnetoresistive)効果)を示す磁性膜(AMR膜)を用いたAMR素子と、巨大磁気抵抗効果(GMR(Giant Magnetoresistive)効果)を示す磁性膜(GMR膜)を用いたGMR素子などがある。
【0004】
AMR素子を用いた再生ヘッドはAMRヘッドと呼ばれ、GMR素子を用いた再生ヘッドはGMRヘッドと呼ばれる。AMRヘッドは、面記録密度が1Gbit/inch超える再生ヘッドとして利用され、GMRヘッドは、面記録密度が3Gbit/inchを超える再生ヘッドとして利用されている。
【0005】
ところで、GMR膜としては、「多層型(アンチフェロ型)」、「誘導フェリ型」、「グラニュラ型」、「スピンバルブ型」等が提案されている。これらの中で、比較的構成が単純で、弱い磁場でも大きな抵抗変化を示し、量産に好ましいと考えられるGMR膜は、スピンバルブ型である。
【0006】
図17は、一般のスピンバルブ型GMR膜(以下、スピンバルブ膜と記す)の構成を表すものである。図中符号Sで示した面は磁気記録媒体と対向する面に対応する。このスピンバルブ膜は、下地層91の上に、軟磁性層92、非磁性層94、強磁性層95、反強磁性層96および保護層97をこの順に積層して構成したものである。このスピンバルブ膜では、強磁性層95の磁化Mpの向きが反強磁性層96との交換結合により固定され、軟磁性層92の磁化Mfの向きが外部磁場によって自由に変化し、その相対角度に応じて抵抗が変化するようになっている。
【0007】
近年、20Gbit/inchを越える超高密度磁気記録を可能にするため、スピンバルブ膜の電気抵抗の変化率(以下、抵抗変化率とする。)をより大きくすることが望まれている。例えば、文献”CoFe specular spin valves with a nano oxide layer”, 1999 Digests of INTERMAG 99, published on May 18, 1999 には、スピンバルブ膜の強磁性層にNOLと呼ばれる酸化膜を設けることが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の文献には、NOLと呼ばれる酸化膜の材質、厚さおよび挿入位置などの具体的な条件については何も述べられていない。そこで、本出願人は、スピンバルブ膜の強磁性層または軟磁性層における最適な位置に、例えば酸化膜よりなる層間層を設けることによって抵抗変化率を大きくすることを提案している(特願平11−227530号)。
【0009】
しかしながら、この方法では、抵抗変化率は大きくできるものの、熱安定性については十分な結果を得ることができない場合があった。特に、層間層を強磁性層の中に設ける場合において問題であった。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みて成されたもので、その目的は、熱安定性の良い磁気変換素子、薄膜磁気ヘッド、およびそれらの製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明による磁気変換素子は、一対の対向する面を有する非磁性層と、非磁性層の一方の面側に形成された軟磁性層と、非磁性層の他方の面側に形成された強磁性層と、強磁性層の非磁性層とは反対の側に形成された反強磁性層と、軟磁性層および強磁性層のうちの少なくとも一方の磁性層中に形成され、磁性を有し、かつ前記磁性層の少なくとも一部よりも電気抵抗が大きい層間層と、この層間層と非磁性層との間および層間層の非磁性層とは反対の側のうちの少なくとも一方に形成され、Mn(マンガン),Cu(銅),Ir(イリジウム)およびPt(白金)からなる群のうちの少なくとも1種を含む挿入層とを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明による磁気変換素子では、軟磁性層および強磁性層のうちの少なくとも一方の磁性層中に設けられた層間層が電子の少なくとも一部を反射して電子の通路を制限するため、抵抗変化率が改善される。更に、層間層と非磁性層との間および層間層の非磁性層とは反対の側のうちの少なくとも一方に、Mn,Cu,IrおよびPtからなる群のうちの少なくとも1種を含む挿入層が形成されているため、高い熱安定性が得られる。
【0018】
なお、層間層の厚さは、0.5nm以上1nm以下であることが好ましい。また、層間層は、O(酸素)およびN(窒素)からなる群のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。更に、層間層は、前記磁性層の構成元素のうち少なくとも1種を含んで構成されていることが好ましい。また、軟磁性層は、少なくともニッケル(Ni)を含む第1軟磁性層と、少なくともコバルト(Co)を含む第2軟磁性層とを有することが好ましい。第1の軟磁性層は、さらに、コバルト,鉄(Fe),タンタル(Ta),クロム(Cr),ロジウム(Rh),モリブデン(Mo)およびニオブ(Nb)からなる群のうち少なくとも1種を含んでいても好ましく、第2の軟磁性層は、さらに、ニッケルおよび鉄からなる群のうち少なくとも1種を含んでいても好ましい。更に、強磁性層は、少なくともコバルトを含むことが好ましく、さらに鉄を含んでいても好ましい。
【0019】
また、本発明による薄膜磁気ヘッドは、上述した磁気変換素子を有することを特徴とするものである。
【0023】
本発明による磁気変換素子の製造方法は、一対の対向する面を有する非磁性層と、非磁性層の一方の面側に形成された軟磁性層と、非磁性層の他方の面側に形成された強磁性層と、強磁性層の非磁性層とは反対の側に形成された反強磁性層とを備えた磁気変換素子の製造方法であって、軟磁性層および強磁性層のうちの少なくとも一方の磁性層中に、磁性を有し、かつ前記磁性層の少なくとも一部よりも電気抵抗が大きい層間層を形成する工程と、この層間層と非磁性層との間および層間層の非磁性層とは反対の側のうちの少なくとも一方に、Mn、Cu、IrおよびPtからなる群のうちの少なくとも1種を含む挿入層を形成する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0024】
本発明による磁気変換素子の製造方法では、軟磁性層および強磁性層のうちの少なくとも一方の磁性層中に層間層が形成され、その層間層と非磁性層との間および層間層の非磁性層とは反対の側のうちの少なくとも一方に、Mn、Cu、IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種よりなる挿入層が形成された磁気変換素子が得られる。
【0025】
また、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法は、磁気変換素子の製造工程において、本発明による磁気変換素子の製造方法を用いるようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
<MR素子および薄膜磁気ヘッドの構成>
最初に、図1ないし図7を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る磁気変換素子の一具体例であるMR素子およびそれを用いた薄膜磁気ヘッドの構成について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド100を備えたアクチュエータアーム200の構成を表すものである。このアクチュエータアーム200は、例えば、図示しないハードディスク装置などで用いられるものであり、薄膜磁気ヘッド100が形成されたスライダ210を有している。このスライダ210は、例えば、支軸220により回転可能に支持された腕部230の先端に搭載されている。この腕部230は、例えば、図示しないボイスコイルモータの駆動力により回転するようになっており、これによりスライダ210がハードディスクなどの磁気記録媒体300の記録面(図1においては記録面の下面)に沿ってトラックラインを横切る方向xに移動するようになっている。なお、磁気記録媒体300は、例えば、スライダ210がトラックラインを横切る方向xに対してほぼ直交する方向zに回転するようになっており、このような磁気記録媒体300の回転およびスライダ210の移動により磁気記録媒体300に情報が記録され、または記録された情報が読み出されるようになっている。
【0028】
図2は、図1に示したスライダ210の構成を表すものである。このスライダ210は、例えば、Al・TiC(アルティック)よりなるブロック状の基体211を有している。この基体211は、例えば、ほぼ六面体状に形成されており、そのうちの一面が磁気記録媒体300(図1参照)の記録面に近接して対向するように配置されている。この磁気記録媒体300の記録面と対向する面はエアベアリング面(ABS)211aと呼ばれ、磁気記録媒体300が回転する際には、磁気記録媒体300の記録面とエアベアリング面211aとの間に生じる空気流により、スライダ210が記録面との対向方向yにおいて記録面から離れるように微少量移動し、エアベアリング面211aと磁気記録媒体300との間に一定の隙間ができるようになっている。基体211のエアベアリング面211aに対する一側面(図2においては左側の側面)には、薄膜磁気ヘッド100が設けられている。
【0029】
図3は、薄膜磁気ヘッド100の構成を分解して表すものである。また、図4は、図3に示した矢印IV方向から見た平面構造を表し、図5は、図4に示したV−V線に沿った矢視方向の断面構造を表し、図6は、図4に示したVI−VI線に沿った矢視方向すなわち図5に示したVI−VI線に沿った矢視方向の断面構造を表し、図7は、図6に示した構造の一部を取り出して表すものである。この薄膜磁気ヘッド100は、磁気記録媒体300に記録された磁気情報を再生する再生ヘッド部101と、磁気記録媒体300のトラックラインに磁気情報を記録する記録ヘッド部102とが一体に構成されたものである。
【0030】
図3および図5に示したように、再生ヘッド部101は、例えば、基体211の上に、絶縁層11,下部シールド層12,下部シールドギャップ層13,上部シールドギャップ層14および上部シールド層15がエアベアリング面211aの側においてこの順に積層された構造を有している。絶縁層11は、例えば、積層方向の厚さ(以下、単に厚さと記す)が2μm〜10μmであり、Al(酸化アルミニウム)により構成されている。下部シールド層12は、例えば、厚さが1μm〜3μmであり、NiFe(ニッケル鉄合金)などの磁性材料により構成されている。下部シールドギャップ層13および上部シールドギャップ層14は、例えば、厚さがそれぞれ10nm〜100nmであり、AlまたはAlN(チッ化アルミニウム)によりそれぞれ構成されている。上部シールド層15は、例えば、厚さが1μm〜4μmであり、NiFeなどの磁性材料により構成されている。なお、この上部シールド層15は、記録ヘッド部102の下部磁極としての機能も兼ね備えている。
【0031】
また、下部シールドギャップ層13と上部シールドギャップ層14との間には、スピンバルブ膜である積層体20を含むMR素子110が埋設されている。この再生ヘッド部101は、磁気記録媒体300からの信号磁界に応じて積層体20における電気抵抗が変化することを利用して、磁気記録媒体300に記録された情報を読み出すようになっている。
【0032】
この積層体20は、例えば、図6および図7に示したように、下部シールドギャップ層13の上に、下地層21,第1軟磁性層22,第2軟磁性層23,非磁性層24,強磁性層25,反強磁性層26および保護層27がこの順に積層された構造を有している。下地層21は、例えば、厚さが5nmであり、Ta(タンタル)により構成されている。
【0033】
第1軟磁性層22は、例えば、厚さが1nm〜8nmであり、Ni,Co,Fe,Ta,Cr,Rh,MoおよびNbからなる群のうちの少なくともNiを含む磁性材料により構成されている。具体的には、[NiCoFe100−(x+y) 100−Z I Z により構成されることが好ましい。式中、MはTa,Cr,Rh,MoおよびNbのうちの少なくとも1種を表し、x,y,zはそれぞれ原子%で75≦x≦90、0≦y≦15、0≦z≦15の範囲内である。
【0034】
第2軟磁性層23は、例えば、厚さが0.5nm〜3nmであり、Ni,CoおよびFeからなる群のうちの少なくともCoを含む磁性材料により構成されている。具体的には、(111)面が積層方向に配向しているCoFeNi100−(x+y) により構成されることが好ましい。式中、x,yはそれぞれ原子%で70≦x≦100、0≦y≦25の範囲内である。なお、これら第1軟磁性層22および第2軟磁性層23は共にフリー層とも言われる軟磁性層を構成しており、磁気記録媒体300からの信号磁界に応じて磁界の向きが変化するようになっている。軟磁性層の厚さ、すなわち第1軟磁性層22および第2軟磁性層23の厚さの合計は、例えば、3nm〜8nmとされている。
【0035】
非磁性層24は、例えば、厚さが1.8nm〜3.0nmであり、Cu,Au(金)およびAg(銀)からなる群のうち少なくとも1種を80重量%以上含む非磁性材料により構成されている。
【0036】
強磁性層25は、例えば、厚さが2nm〜4.5nmであり、CoおよびFeからなる群のうちの少なくともCoを含む磁性材料により構成されている。この強磁性層25では、磁性材料の(111)面が積層方向に配向していることが好ましい。なお、この強磁性層25はピンド層とも言われ、強磁性層25と反強磁性層26との界面における交換結合により、磁化の向きが固定されている。ちなみに、本実施の形態ではy方向に固定されている。
【0037】
反強磁性層26は、例えば、厚さが5〜30nmであり、Pt,Ru(ルテニウム),Rh,Pd(パラジウム),Ni,Au,Ag,Cu,Ir,CrおよびFeからなる群のうちの少なくとも1種MIIと、マンガン(Mn)とを含む反強磁性材料により構成されている。このうちMnの含有量は45原子%以上95原子%以下、その他の元素MIIの含有量は5原子%以上65原子%以下であることが好ましい。この反強磁性材料には、熱処理しなくても反強磁性を示し、強磁性材料との間に交換結合磁界を誘起する非熱処理系反強磁性材料と、熱処理により反強磁性を示すようになる熱処理系反強磁性材料とがある。この反強磁性層26は、そのどちらにより構成されていてもよい。
【0038】
なお、非熱処理系反強磁性材料にはγ相を有するMn合金などがあり、具体的には、RuRhMn(ルテニウムロジウムマンガン合金),FeMn(鉄マンガン合金)あるいはIrMn(イリジウムマンガン合金)などがある。熱処理系反強磁性材料には規則結晶構造を有するMn合金などがあり、具体的には、PtMn(白金マンガン合金),NiMn(ニッケルマンガン合金)およびPtRhMn(白金ロジウムマンガン合金)などがある。保護層27は、例えば、厚さが5nmであり、Taにより構成されている。
【0039】
この積層体20では、強磁性層25が積層方向において下層25aと上層25bとに分割されている。この下層25aと上層25bとの間、すなわち強磁性層25の中には、本発明における「層間層」の一具体例に対応する強磁性層間層28が設けられている。この強磁性層間層28は、検出電流が積層体20を流れる際に、電子の少なくとも一部を反射して電子の移動する経路を制限し、積層体20の抵抗変化率を大きくするためのものであり、強磁性層25よりも大きな電気抵抗を有している。また、この強磁性層間層28は磁性を有しており、下層25aと上層25bとが磁気的に一体になるようになっている。すなわち、上層25bと反強磁性層26との界面における交換結合により上層25bの磁化の向きが固定されると、下層25aの磁化の向きも同じ方向に固定されるようになっている。
【0040】
なお、この強磁性層間層28は、例えば、強磁性層25を構成する材料よりも電気抵抗の大きい材料で構成されることにより、強磁性層25よりも大きな電気抵抗を有するようになっている。この強磁性層間層28は、例えば、酸化物、窒化物および酸化窒化物のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。磁気的に安定であり、出力変動を小さくすることができるからである。また、この強磁性層間層28は、例えば、強磁性層25の構成元素のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。強磁性層25の一部を酸化、窒化、あるいは酸化および窒化することにより、良好な強磁性層間層28を容易に得ることができるからである。更に、この強磁性層間層28は、例えば、添加物として、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。熱安定性を向上させることができるからである。具体的には、この強磁性層間層28は、Ni,CoおよびFeからなる群のうちの少なくともCoと、OおよびNからなる群のうちの少なくとも1種と、Mn, Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0041】
強磁性層間層28の厚さは、例えば、0.5nm以上1nm以下であることが好ましい。厚すぎると下層25aと上層25bとの磁気的結合力が弱まり大きな抵抗変化率が得られないからであり、薄すぎると電子の移動経路を十分に制限することができず、大きな抵抗変化率を得ることができないからである。
【0042】
積層体20の両側、すなわち積層方向に対して垂直な方向の両側には、磁区制御膜30a,30bがそれぞれ設けられており、第1軟磁性層22および第2軟磁性層23の磁化の向きを揃え、単磁区化していわゆるバルクハウゼンノイズの発生を抑えるようになっている。この磁区制御膜30aは、磁区制御用強磁性膜31aと、磁区制御用反強磁性膜32aとを下部シールドギャップ層13の側から順に積層した構造とされている。磁区制御膜30bも磁区制御膜30aと同一の構成とされている。これら磁区制御用強磁性膜31a,31bの磁化の向きは、磁区制御用強磁性膜31a,31bと磁区制御用反強磁性膜32a,32bとのそれぞれの界面における交換結合によってそれぞれ固定されている。これにより、例えば図7に示したように、磁区制御用強磁性膜31a,31bの近傍では第1軟磁性層22および第2軟磁性層23に対するバイアス磁界Hbがx方向に発生している。
【0043】
磁区制御用強磁性膜31a,31bは、例えば、それぞれ厚さが10nm〜50nmである。また、磁区制御用強磁性膜31a,31bは、例えば、NiFe、または、Ni,FeおよびCoからなる磁性材料などにより構成されている。この場合、NiFeとCoとの積層膜としても良い。磁区制御用反強磁性膜32a,32bは、例えば、それぞれ厚さが5nm〜30nmであり、反強磁性材料により構成されている。この反強磁性材料は、非熱処理系反強磁性材料でも熱処理系反強磁性材料でも良いが、非熱処理系反強磁性材料が好ましい。また、磁区制御膜30a,30bとしては、硬磁性材料(ハードマグネット)を用いてもよい。この場合には、TiW(チタンタングステン合金)層とCoPt(コバルト白金合金)層との積層膜、あるいはTiW層とCoCrPt(コバルトクロム白金合金)層との積層膜などを用いることができる。
【0044】
これら磁区制御膜30a,30bの上には、TaとAuとの積層膜、TiWとTaとの積層膜、あるいはTiN(窒化チタン)とTaとの積層膜などよりなるリード層33a,33bがそれぞれ設けられており、磁区制御膜30a,30bを介して積層体20に電流を流すことができるようになっている。
【0045】
記録ヘッド部102は、例えば、図3および図5に示したように、上部シールド層15の上に、Alなどの絶縁膜よりなる厚さ0.1μm〜0.5μmの記録ギャップ層41を有している。この記録ギャップ層41は、後述する薄膜コイル43,45の中心部に対応する位置に開口部41aを有している。この記録ギャップ層41の上には、スロートハイトを決定する厚さ1.0μm〜5.0μmのフォトレジスト層42を介して、厚さ1μm〜3μmの薄膜コイル43およびこれを覆うフォトレジスト層44がそれぞれ形成されている。このフォトレジスト層44の上には、厚さ1μm〜3μmの薄膜コイル45およびこれを覆うフォトレジスト層46がそれぞれ形成されている。なお、本実施の形態では薄膜コイルが2層積層された例を示したが、薄膜コイルの積層数は1層または3層以上であってもよい。
【0046】
記録ギャップ層41およびフォトレジスト層42,44,46の上には、例えば、NiFeまたはFeN(窒化鉄)などの高飽和磁束密度を有する磁性材料よりなる厚さ約3μmの上部磁極47が形成されている。この上部磁極47は、薄膜コイル43,45の中心部に対応して設けられた記録ギャップ層41の開口部41aを介して、上部シールド層15と接触しており、磁気的に連結している。この上部磁極47の上には、図3ないし図6では図示しないが、例えば、Alよりなる厚さ20μm〜30μmのオーバーコート層(図13(B)におけるオーバーコート層48)が全体を覆うように形成されている。これにより、この記録ヘッド部102は、薄膜コイル43,45に流れる電流によって下部磁極である上部シールド層15と上部磁極47との間に磁束を生じ、記録ギャップ層41の近傍に生ずる磁束によって磁気記録媒体300を磁化し、情報を記録するようになっている。
【0047】
<MR素子および薄膜磁気ヘッドの動作>
次に、このように構成されたMR素子110および薄膜磁気ヘッド100による再生動作について、図6および図7を中心に参照して説明する。
【0048】
この薄膜磁気ヘッド100では、再生ヘッド部101により磁気記録媒体300に記録された情報を読み出す。再生ヘッド部101では、積層体20の強磁性層25と反強磁性層26との界面での交換結合による交換結合磁界により、例えば、強磁性層25の磁化Mpの向きがy方向に固定されている。強磁性層25は強磁性層間層28によって下層25aと上層25bとに分かれているが、強磁性層間層28は磁性を有しているので、下層25aと上層25bのそれぞれの磁化Mpの向きは一体的に固定されている。また、磁区制御膜30a,30bの発生するバイアス磁界Hbにより、第1軟磁性層22,第2軟磁性層23および強磁性層間層28の磁化Mfはバイアス磁界Hbの方向(ここではx方向)に揃えられる。なお、バイアス磁界Hbと強磁性層25の磁化Mpの向きは互いにほぼ直交している。
【0049】
情報を読み出す際には、積層体20に、リード層33a,33bを通じて定常電流である検出電流(センス電流)が例えばバイアス磁界Hbの方向に流される。その際、電子の多くは、電気抵抗が低い第1軟磁性層22から強磁性層25の間において非磁性層24を中心として移動する。但し、ここでは、強磁性層間層28の電気抵抗が強磁性層25の下層25aよりも大きくなっているので、下層25aから強磁性層間層28に移動しようとする電子の少なくとも一部は、強磁性層間層28の表面で反射される。すなわち、電流は、主として第1軟磁性層22,第2軟磁性層23,非磁性層24および強磁性層25の下層25aにおいて流れる。
【0050】
磁気記録媒体300からの信号磁界を受けると、第1軟磁性層22および第2軟磁性層23における磁化Mfの向きが変化する。強磁性層25の磁化Mpの向きは、反強磁性層26により固定されているので、磁気記録媒体300からの信号磁界を受けても変化しない。第1軟磁性層22および第2軟磁性層23における磁化Mfの向きが変化すると、積層体20を流れる電流は、第1軟磁性層22および第2軟磁性層23の磁化Mfの向きと強磁性層25の磁化Mpの向きとの相対角度に応じた抵抗を受ける。これは、非磁性層と磁性層との界面における電子の散乱の度合いが磁性層の磁化方向に依存するという「スピン依存散乱」と呼ばれる現象によるものである。この積層体20の抵抗の変化量は電圧の変化量として検出され、磁気記録媒体300に記録された情報が読みだされる。
【0051】
ここで、強磁性層間層28が設けられていなければ、積層体20における主な電子の通路は図7において矢印Bで示す範囲、つまり第1軟磁性層22,第2軟磁性層23,非磁性層24および強磁性層25である。これに対し、本実施の形態では、第1軟磁性層22の中に強磁性層間層28が設けられているので、電子の主な通路は図7において矢印Aで示す範囲、つまり第1軟磁性層22,第2軟磁性層23,非磁性層24および下層25aに狭められる。さらに、強磁性層間層28で電子がスピンを保存したまま反射する。よって、電子が非磁性層界面に集中して「スピン依存散乱」に寄与する電子数が増加し、抵抗変化率が大きくなる。
【0052】
また、強磁性層間層28は、添加物として、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含んでいるので、積層体20の熱劣化が抑制される。更に、この強磁性層間層28の厚さが0.5nm以上1nm以下とされれば、下層25aと上層25bとを磁気的に結合させつつ、大きな抵抗変化率が得られる。
【0053】
<MR素子および薄膜磁気ヘッドの製造方法>
続いて、図8ないし図13を参照して、MR素子110および薄膜磁気ヘッド100の製造方法について説明する。なお、図8,図12および図13は、図4におけるV−V線に沿った断面構造を表している。また、図9ないし図11は、図4におけるVI−VI線に沿った断面構造を表している。
【0054】
本実施の形態に係る製造方法では、まず、図8に示したように、例えば、Al・TiCよりなる基体211の一側面上に、スパッタリング法により、絶縁層11を構成の欄で述べた材料を用いて形成する。次に、この絶縁層11の上に、例えば、めっき法により、下部シールド層12を構成の欄で述べた材料を用いて形成する。続いて、この下部シールド層12の上に、例えば、スパッタリング法により、下部シールドギャップ層13を構成の欄で述べた材料を用いて形成する。そののち、この下部シールドギャップ層13の上に、積層体20を形成するための積層膜20aを形成する。
【0055】
ここで、積層体20の形成工程について詳説する。まず、図9(A)に示したように、下部シールドギャップ層13の上に、例えば、スパッタリング法により、下地層21および第1軟磁性層22、第2軟磁性層23,非磁性層24および強磁性層25の下層25aを構成の欄で説明した材料を用いて順次成膜する。なお、この工程は、例えば図示しない真空チャンバの中で、到達圧力1.3×10−8Pa〜3.0×10−6Pa、成膜圧力1.3×10−3Pa〜1.3Pa程度の真空のもとで行う。
【0056】
次いで、図9(B)に示したように、強磁性層25の下層25aの表面に、例えば、スパッタリング法により、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうちの少なくとも1種よりなる金属層28aを、約0.2nmの厚さで形成する。なお、この金属層28aは、下層25aの全面を覆っている必要はなく、島状に形成されることにより、下層25aの表面の一部が露出していてもよい。
【0057】
続いて、図示しない真空チャンバ内に酸素ガスおよび窒素ガスのうちの少なくとも一方を導入し、真空度が1.3×10−3Pa〜10Pa程度となるようにする。そののち、例えば、この酸素および窒素のうちの少なくとも一方を含む雰囲気中に、上記の金属層28aに覆われた下層25aの表面を0.01分〜60分間さらす。これにより、金属層28aおよび下層25aの一部が酸化、窒化、または酸化窒化され、強磁性層間層28が形成される。この強磁性層間層28の形成に伴い、下層25aの厚さは最初に成膜した状態よりも薄くなる。なお、この酸化,窒化あるいは酸化窒化工程においては、真空チャンバ内の真空度を1.3×10−2Pa〜2.6×10Paとすればより好ましく、下層25aの表面をさらす時間を0.1分〜30分間とすればより好ましい。膜厚の制御を容易にすることができ、良好な強磁性層間層28を容易に得ることができるからである。
【0058】
強磁性層間層28を形成したのち、図9(C)に示したように、例えば、図示しない真空チャンバ内を再び減圧して高真空にし、スパッタリング法により、強磁性層間層28の上に強磁性層25の上層25b,反強磁性層26および保護層27を構成の欄で説明した材料を用いて順次成膜する。これにより、積層膜20aが形成される。その際、反強磁性層26を非熱処理系反強磁性材料により構成する場合には、例えば、y方向に磁場を印加した状態で反強磁性層26を形成する。これにより、強磁性層25の磁化の方向は、反強磁性層26との交換結合によって印加磁場の方向yに固定される。
【0059】
そののち、図10(A)に示したように、例えば、保護層27の上に、積層体20の形成予定領域に対応してフォトレジスト膜401を選択的に形成する。なお、このフォトレジスト膜401は、後述するリフトオフを容易に行うことができるように、例えば、保護膜27との界面に溝を形成し、断面形状をT型とすることが好ましい。フォトレジスト膜401を形成したのち、例えば、イオンミリング法により、フォトレジスト膜401をマスクとして、積層膜20a(すなわち、保護層27,反強磁性層26,強磁性層間層28,強磁性層25,非磁性層24,第2軟磁性層23,第1軟磁性層22および下地層21)をエッチングする。これにより、図10(B)に示したような積層体20が形成される。
【0060】
積層体20を形成したのち、図11(A)に示したように、例えば、スパッタリング法により、積層体20の両側に、磁区制御用強磁性膜31a,31bおよび磁区制御用反強磁性膜32a,32bをそれぞれ順次形成する。その際、磁区制御用反強磁性膜32a,32bを非熱処理系反強磁性材料により構成する場合には、例えば、x方向に磁場を印加した状態で磁区制御用反強磁性膜32a,32bをそれぞれ形成する。これにより、磁区制御用強磁性膜31a,31bの磁化の方向は、磁区制御用反強磁性膜32a,32bとの交換結合によって印加磁場の方向xに固定される。
【0061】
磁区制御膜30a,30bをそれぞれ形成したのち、同じく図11(A)に示したように、例えば、スパッタリング法により、磁区制御用反強磁性膜32a,32bの上に、リード層33a,33bをそれぞれ形成する。そののち、例えば、リフトオフ処理によって、フォトレジスト膜401とその上に積層されている堆積物402(磁区制御用強磁性膜、磁区制御用反強磁性膜およびリード層の各材料)を除去する。
【0062】
リフトオフ処理を行ったのち、図11(B)および図12(A)に示したように、例えば、スパッタリング法により、下部シールドギャップ層13および積層体20を覆うように、上部シールドギャップ層14を構成の欄で説明した材料を用いて形成する。これにより、積層体20は下部シールドギャップ層13と上部シールドギャップ層14との間に埋設される。そののち、上部シールドギャップ層14の上に、例えば、スパッタリング法により、上部シールド層15を構成の欄で説明した材料を用いて形成する。
【0063】
上部シールド層15を形成したのち、図12(B)に示したように、例えば、スパッタリング法により、上部シールド層15の上に、記録ギャップ層41を構成の欄で説明した材料を用いて形成し、この記録ギャップ層41の上に、フォトレジスト層42を所定のパターンに形成する。フォトレジスト層42を形成したのち、このフォトレジスト層42の上に、薄膜コイル43を構成の欄で説明した材料を用いて形成し、この薄膜コイル43を覆うようにフォトレジスト層44を所定のパターンに形成する。フォトレジスト層44を形成したのち、このフォトレジスト層44の上に、薄膜コイル45を構成の欄で説明した材料を用いて形成し、この薄膜コイル45を覆うようにフォトレジスト層46を所定のパターンに形成する。
【0064】
フォトレジスト層46を形成したのち、図13(A)に示したように、例えば、薄膜コイル43,45の中心部に対応する位置において、記録ギャップ層41を部分的にエッチングし、磁路形成のための開口部41aを形成する。そののち、例えば、記録ギャップ層41、開口部41a、フォトレジスト層42,44,46の上に上部磁極47を構成の欄で説明した材料を用いて形成する。上部磁極47を形成したのち、例えば、この上部磁極47をマスクとして、イオンミリングにより、記録ギャップ層41および上部シールド層15を選択的にエッチングする。そののち、図13(B)に示したように、上部磁極47の上に、オーバーコート層48を構成の欄で説明した材料を用いて形成する。
【0065】
オーバーコート層48を形成したのち、例えば、積層体20の反強磁性層26および磁区制御用強磁性膜31a,31bを熱処理系反強磁性材料によりそれぞれ構成する場合には、それらの磁界の方向を固定するための反強磁性化処理を行う。具体的には、反強磁性層26と強磁性層25とのブロッキング温度(界面で交換結合が生じうる温度)が磁区制御用反強磁性膜32a,32bと磁区制御用強磁性膜31a,31bとのブロッキング温度よりも高い場合には、磁界発生装置等を利用して例えばy方向に磁場を印加した状態で、反強磁性層26と強磁性層25とのブロッキング温度での加熱を行う。これにより、強磁性層25の磁化の方向は、反強磁性層26との交換結合によって印加磁場の方向yに固定される。続いて、薄膜磁気ヘッド100を磁区制御用反強磁性膜32a,32bと磁区制御用強磁性膜31a,31bとのブロッキング温度まで冷却し、例えばx方向に磁場を印加する。これにより、磁区制御用強磁性膜31a,31bの磁化の方向は、磁区制御用反強磁性膜32a,32bとの交換結合によって印加磁場の方向xにそれぞれ固定される。
【0066】
なお、反強磁性層26と強磁性層25とのブロッキング温度が磁区制御用反強磁性膜32a,32bと磁区制御用強磁性膜31a,31bとのブロッキング温度よりも低い場合には、上の作業順序は逆になる。また、反強磁性層26または磁区制御用反強磁性膜32a,32bを非熱処理系反強磁性材料により構成する場合には、この熱処理を行う必要がない。更に、ここではオーバーコート層48を形成したのちに反強磁性化のための熱処理を行うようにしたが、強磁性層25および反強磁性層26を成膜したのちオーバーコート層48を形成する前に行うようにしてもよく、また磁区制御膜30a,30bを成膜したのちオーバーコート層48を形成する前に行うようにしてもよい。
【0067】
最後に、例えば、スライダの機械加工により、エアベアリング面を形成し、図3ないし図5に示した薄膜磁気ヘッド100が完成する。
【0068】
<第1の実施の形態による効果>
このように本実施の形態によれば、強磁性層25の中に強磁性層間層28を設け、その強磁性層間層28がMn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含むようにしたので、積層体20の抵抗変化率を大きくすることができ、かつ、積層体20の熱劣化を抑制することができる。よって、薄膜磁気ヘッド100を製造する工程において、積層体20に長時間の熱処理が施されても抵抗変化率の低下が少なく、大きな抵抗変化率を維持することが可能になる。
【0069】
なお、強磁性層間層28の厚さを0.5nm以上1.0nm以下とするようにすれば、強磁性層25の下層25aと上層25とを磁気的に一体化させつつ、より大きな抵抗変化率を得ることができる。
【0070】
また、強磁性層間層28を形成する工程において、強磁性層25の下層25aの表面にMn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種よりなる金属層28aを形成し、この金属層28aおよび強磁性層25の一部を共に酸化、窒化または酸化および窒化することにより強磁性層間層28を形成するようにすれば、Mnなどの添加物を含有した強磁性層間層28を容易に得ることができる。
【0071】
[第1の実施の形態の変形例]
また、図14を参照して、第1の実施の形態に関する変形例について説明する。
【0072】
図14は、変形例における積層体20の構成を表すものである。この変形例における積層体20では、強磁性層25に強磁性層間層28が設けられ、かつ、第1軟磁性層22に軟磁性層間層29が設けられている。この積層体20では、第1軟磁性層22が積層方向において下層22aと上層22bとに分割されており、下層22aと上層22bとの間、すなわち第1軟磁性層22の中に、本発明における「層間層」の一具体例に対応する軟磁性層間層29が設けられている。軟磁性層間層29は、第1軟磁性層22よりも電気抵抗が大きく、かつ、磁性を有しており、積層体20の抵抗変化率を更に大きくするようになっている。
【0073】
軟磁性層間層29は、例えば、酸化物、窒化物または酸化窒化物のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。磁気的に安定であり、出力変動を小さくすることができるからである。また、この軟磁性層間層29は、第1軟磁性層22の構成元素のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。第1軟磁性層22の一部を酸化、窒化あるいは酸化および窒化することにより、良好な軟磁性層間層29を容易に得ることができるからである。
【0074】
なお、軟磁性層間層29は、第2軟磁性層23の中に設けてもよいし、第1軟磁性層22と第2軟磁性層23との間に設けてもよい。軟磁性層間層29を第2軟磁性層23の中に設けるようにした場合、軟磁性層間層29は、第2軟磁性層23の構成元素のうちの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。第2軟磁性層23の一部を酸化、窒化あるいは酸化および窒化することにより、良好な軟磁性層間層29を容易に得ることができるからである。また、軟磁性層間層29を第1軟磁性層22と第2軟磁性層23との間に設けるようにした場合には、軟磁性層間層29は、第1軟磁性層22および第2軟磁性層23の少なくとも一方の構成元素の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。第1軟磁性層22および第2軟磁性層23の少なくとも一方を酸化、窒化あるいは酸化および窒化することにより、良好な軟磁性層間層29を容易に得ることができるからである。
【0075】
また、軟磁性層間層29が、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含むようにしてもよいし、含まないようにしてもよい。
【0076】
[第2の実施の形態]
更に、図15を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、積層体の構成が異なることを除き、第1の実施の形態と同一の構成を有している。よって、ここでは、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0077】
図15は、本実施の形態における積層体50の構成を表すものである。この積層体50は、第1の実施の形態における強磁性層間層28に代えて強磁性層間層59を備えると共に、この強磁性層間層59に隣接して反強磁性層26の側に挿入層60を備えたことを除き、第1の実施の形態における積層体20と同一の構成を有している。強磁性層間層59は、例えば、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含んで構成されていなくてもよいことを除き、強磁性層間層28と同一の構成を有している。
【0078】
挿入層60は、積層体50の熱安定性を向上させるためのものであり、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含んで構成されている。なお、この挿入層60は、本発明における「熱安定化促進層」の一具体例に対応している。挿入層60の厚さは、例えば、0.03nmより厚く0.6nmよりも薄いことが望ましい。厚さが0.03nm以下だと熱安定性を十分に向上させることができず、0.6nm以上だと抵抗変化率が小さくなってしまうからである。
【0079】
なお、本実施の形態では、挿入層60を強磁性層間層59の反強磁性層26の側に設けるようにしたが、非磁性層24の側に設けるようにしてもよく、両側に設けるようにしてもよい。また、本実施の形態では、挿入層60を強磁性層間層59に隣接して設けるようにしたが、強磁性層間層59と離間して設けるようにしてもよい。すなわち、挿入層60は、強磁性層間層59の非磁性層24と反対側および強磁性層間層59と非磁性層24との間の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0080】
この積層体50は、次のようにして製造することができる。まず、例えば第1の実施の形態と同様にして、下地層21,第1軟磁性層22,第2軟磁性層23,非磁性層24および強磁性層55の下層55aを順次積層する。次いで、例えば第1の実施の形態と同様にして、下層55aの表面を酸化、窒化あるいは酸化および窒化処理し、強磁性層間層59を形成する。続いて、強磁性層間層59の上に、例えばスパッタリング法により、挿入層60を形成する。そののち、挿入層60の上に、例えば第1の実施の形態と同様にして、強磁性層55の上層55b、反強磁性層26および保護層27を順次形成する。これにより、図15に示した積層体50が得られる。
【0081】
このように本実施の形態によれば、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群の少なくとも1種を含む挿入層60を備えるようにしたので、第1の実施の形態と同様に、熱劣化を抑制することができる。
【0082】
なお、強磁性層間層59の厚さを0.03nmより厚く0.6nmよりも薄くするようにすれば、抵抗変化率を大きな値に保ちつつ、熱劣化を抑制することができる。
【0083】
なお、挿入層60が、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうちの複数の元素を含む場合には、挿入層60を、複数の層を積層した構造としても良い。
【0084】
また、第1の実施の形態の変形例と同様、図16に示したように、第1軟磁性層22の中に軟磁性層間層29を設けても良い。あるいは、第2軟磁性層23の中または第1軟磁性層22と第2軟磁性層23との間に軟磁性層間層29を設けても良い。いずれも場合も、軟磁性層間層29は、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含むようにしても良いし、含まないようにしても良い。また、軟磁性層間層29の非磁性層24とは反対の側および軟磁性層間層29と非磁性層24との間の少なくとも一方に、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含む挿入層を設けても良い。
【0085】
【実施例】
また、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0086】
[実施例1〜10]
実施例1〜10として、図7に示した積層体20を、表1に示したように強磁性層間層28の添加物を変えて作製した。まず、表面にAl膜が形成されたAl・TiCよりなる絶縁性基板の上に、スパッタリング法により、Taを用いて厚さ3nmの下地層21を成膜し、その上に、NiFeを用いて厚さ2nmの第1の軟磁性層22を成膜した。その上に、CoFeを用いて厚さ2nmの第2軟磁性層23を成膜し、その上に、Cuを用いて厚さ2.1nmの非磁性層24を成膜し、その上に、CoFeを用いて下層25aを成膜した。下層25aの厚さは、後の酸化処理により酸化されるのを見越して設定しておき、酸化処理後の厚さが1.8nmとなるようにした。
【0087】
次いで、下層25aの上に、スパッタリング法により表1に示した材料を用いて厚さ0.2nmの金属層28aを形成し、この金属層28aと下層25aとを酸化して厚さ0.9nmの強磁性層間層28を形成した。なお、実施例8〜10では、金属層28aを形成する際に、それらの合金板をターゲットとして用いた。また、強磁性層間層28の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)により観察したものである。続いて、強磁性層間層28の上に、CoFeを用いて厚さ1nmの上層25aを形成し、その上に、PtMnを用いて13nmの反強磁性層26を成膜し、その上に、Taを用いて厚さ3nmの保護層27を成膜した。熱処理系反強磁性材料(PtMn)を用いて反強磁性層26を形成するようにしたので、成膜ののち熱処理により反強磁性処理をそれぞれ行った。
【0088】
【表1】
Figure 0003560284
【0089】
このようにして作製した実施例1〜10の積層体20について、真空中において250℃で5時間の熱処理を行ったのち、抵抗変化率を測定し、これを初期特性値とした。次いで、これら積層体20について、真空中における250℃での熱処理を更に行い、5時間後、10時間後、20時間後および60時間後の抵抗変化率を測定した。なお、この加熱時間は、5時間の熱処理後からの時間である。また、これらの結果に基づいて、5時間熱処理後の初期特性値に対する劣化率をそれぞれ求めた。この劣化率は、各熱処理後の抵抗変化率を初期特性値で割り100を掛けた値である。それらの結果を表1および表2にそれぞれ示す。なお、本実施例に対する比較例として、強磁性層間層28が添加物を添加しないことを除き、本実施例と同一の条件で積層体を作製した。この比較例についても、本実施例と同様にしてその熱劣化特性をそれぞれ調べた。その結果も表1および表2に併せて示す。
【0090】
【表2】
Figure 0003560284
【0091】
表1および表2から分かるように、本実施例によれば、60時間熱処理を行っても劣化率は70%以上であり、比較例の劣化率55.7%よりも大きな値を得ることができた。すなわち、強磁性層間層28にMn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含ませるようにすれば、熱劣化を抑制できることが分かった。
【0092】
[実施例11〜18]
実施例11〜18として、図16に示した積層体50を、表3に示したように挿入層60の材質を変えて作製した。まず、表面にAl膜が形成されたAl・TiCよりなる絶縁性基板の上に、スパッタリング法により、Taを用いて厚さ3nmの下地層21を成膜し、その上に、NiFeを用いて下層22aを成膜した。下層22aの厚さは、後の酸化処理により酸化される分を予め加味し、酸化処理後の厚さが2.0nmとなるようにした。次いで、下層22aの表面を酸化し、厚さ0.6nmの軟磁性層間層29を形成した。なお、軟磁性層間層29の厚さは、TEMにより観察したものである。続いて、軟磁性層間層29の上に、スパッタリング法により、NiFeを用いて厚さ0.5nmの上層22bを成膜し、その上に、CoFeを用いて厚さ1.5nmの第2軟磁性層23を成膜し、その上に、Cuを用いて厚さ2.1nmの非磁性層24を成膜し、その上に、CoFeを用いて下層55aを成膜した。下層55aの厚さは、後の酸化処理により酸化される分を予め加味し、酸化処理後の厚さが1.8nmとなるようにした。
【0093】
【表3】
Figure 0003560284
【0094】
下層55aを形成したのち、下層55aの表面を酸化し、厚さ0.9nmの強磁性層間層59を形成した。なお、強磁性層間層59の厚さは、TEMにより観察したものである。そののち、強磁性層間層59の上に、表に示した材料を用いて、厚さ0.2nmの挿入層60を成膜し、その上に、CoFeを用いて厚さ1nmの上層55bを成膜し、その上に、PtMnを用いて13nmの反強磁性層26を成膜し、その上に、Taを用いて厚さ3nmの保護層27を成膜した。保護層27を形成したのち、反強磁性層26を熱処理系反強磁性材料(PtMn)を用いて形成したので、熱処理により反強磁性処理を行った。
【0095】
このようにして作製した実施例11〜18の積層体50について、実施例1〜10と同様にして熱劣化特性を調べた。それらの結果を表3および表4にそれぞれ示す。なお、本実施例に対する比較例として、挿入層60を設けないことを除き、本実施例と同一の条件で積層体を作製した。この比較例についても、本実施例と同様にしてその熱劣化特性を調べた。その結果も、表3および表4に併せて示す。
【0096】
【表4】
Figure 0003560284
【0097】
表3および表4から分かるように、本実施例によれば、60時間熱処理を行っても劣化率は72%以上であり、比較例の劣化率56.6%よりも大きな値を得ることができた。すなわち、Mn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含む挿入層60を設けるようにすれば、熱劣化を抑制できることが分かった。
【0098】
[実施例19〜26]
次に、実施例19〜26として、図16に示した積層体50を、挿入層60の材質および厚さを表5に示したように変化させたことを除き、実施例11〜18と同様にして作製した。作製した実施例19〜26の積層体50について、実施例1〜10と同様にして熱劣化特性を調べた。それらの結果を表5および表6にそれぞれ示す。なお、表5および表6には、表3および表4で示した比較例の結果について併せて示す。
【0099】
【表5】
Figure 0003560284
【0100】
【表6】
Figure 0003560284
【0101】
表5および表6から分かるように、挿入層60の厚さが0.03nmのときには、比較例と同程度の熱劣化特性しか得られないのに対して、挿入層60の厚さが0.03nmよりも厚いときには、比較例に比べて熱劣化特性を大幅に改善できた。また、挿入層60の厚さが0.6nmのときには、抵抗変化率が比較例よりも小さくなってしまったのに対して、挿入層60の厚さが0.6nmよりも薄いときには、比較例とほぼ同等の値が得られた。
【0102】
すなわち、挿入層60の厚さを0.03nmより厚くすれば、抵抗変化率の熱劣化をより効率的に抑えることができ、挿入層60の厚さを0.6nmより薄くすれば、抵抗変化率を大きく保持できることが分かった。
【0103】
なお、上記実施例では、いくつかの例を挙げて具体的に説明したが、他の構成を有する積層体についても層間層にMn,Cr,Ni,Cu,Rh,IrおよびPtからなる群のうち少なくとも1種を含ませるようにすれば、または、挿入層を設けるようにすれば、同様の結果を得ることができる。
【0104】
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、強磁性層の中には強磁性層間層を設けず、軟磁性層の中に軟磁性層間層を設け、その軟磁性層間層が添加物を含むようにした構成も可能である。この場合、軟磁性層間層に添加物を含ませる代わりに、軟磁性層間層の非磁性層と反対側および強磁性層間層と非磁性層との間のうちの少なくとも一方に挿入層を設けるようにしてもよい。
【0105】
また、軟磁性層の中に軟磁性層間層を設け、強磁性層の中に強磁性層間層を設けた場合には、強磁性層間層が添加物を含むようにし、軟磁性層間層の非磁性層と反対側および軟磁性層間層と非磁性層との間のうちの少なくとも一方に挿入層を設けるようにしてもよい。また、強磁性層間層が添加物を含まないようにし、軟磁性層間層が添加物を含むようにした構成も可能である。この場合、軟磁性層間層に添加物を含ませる代わりに、軟磁性層間層の非磁性層と反対側および強磁性層間層と非磁性層との間のうちの少なくとも一方に挿入層を設けるようにしてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態および実施例では、第1軟磁性層22,52、第2軟磁性層23、非磁性層24、強磁性層25,55および反強磁性層26を下から順に積層した場合について説明したが、逆に反強磁性層26の方から順に積層するようにしてもよい。すなわち、本発明は、一対の対向する面を有する非磁性層と、この非磁性層の一方の面側に形成された軟磁性層と、非磁性層の他方の面側に形成された強磁性層と、この強磁性層の非磁性層とは反対の側に形成された反強磁性層とを有する場合において広く適用することができる。
【0107】
また、上記実施の形態および実施例では、軟磁性層が第1軟磁性層と第2軟磁性層との2層構造を有する場合について説明したが、軟磁性層は単層構造とされていてもよく、また3層以上の積層構造であっても良い。
【0108】
また、図6に示した磁区制御膜30a,30bとしては、磁区制御用強磁性膜31a,31bと磁区制御用反強磁性膜32a,32bに代えて、硬磁性材料を用いてもよい。この場合には、TiW層とCoPt層との積層膜、あるいはTiW層とCoCrPt層との積層膜などを用いることができる。
【0109】
また、上記の実施の形態では、反強磁性層26および磁区制御用反強磁性32a,32bを、いずれも、熱処理系反強磁性材料により形成したが、反強磁性層26を熱処理系反強磁性材料により形成し、磁区制御用反強磁性32a,32bを非熱処理系反強磁性材料により形成しても良い。また、反強磁性層26を非熱処理系反強磁性材料により形成し、磁区制御用反強磁性32a,32bを熱処理系反強磁性材料により形成しても良い。あるいは、反強磁性層26および磁区制御用反強磁性32a,32bを、いずれも、非熱処理系反強磁性材料により形成しても良い。
【0110】
更に、上記実施の形態では、本発明の磁気変換素子を複合型薄膜磁気ヘッドに用いる場合について説明したが、再生専用の薄膜磁気ヘッドに用いることも可能である。また、記録ヘッド部と再生ヘッド部の積層順序を逆にしても良い。
【0111】
加えて、本発明の磁気変換素子の構成は、トンネル接合型磁気抵抗効果膜(TMR膜)に適用しても良い。更にまた、本発明の磁気変換素子は、上記実施の形態で説明した薄膜磁気ヘッドのほかに、例えば、磁気信号を検知するセンサ(加速度センサなど)や、磁気信号を記憶するメモリ等に適用することも可能である。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項9のいずれか1に記載の磁気変換素子、請求項10記載の薄膜磁気ヘッド、請求項11記載の磁気変換素子の製造方法、または請求項12記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、軟磁性層および強磁性層のうちの少なくとも一方の磁性層中に、磁性を有し前記磁性層の少なくとも一部よりも電気抵抗が大きい層間層を設け、その層間層と非磁性層との間および層間層の非磁性層とは反対の側のうちの少なくとも一方に、Mn、Cu、IrおよびPtからなる群のうちの少なくとも1種を含む挿入層を形成したので、抵抗変化率を大きくすることができ、かつ、高い熱安定性を得ることができるという効果を奏する。
【0116】
また、請求項ないし請求項記載の磁気変換素子、または請求項10記載の薄膜磁気ヘッドによれば、層間層の厚さを0.5nm以上1.0nm以下とするようにしたので、磁性層を磁気的に一体化させつつ、より大きな抵抗変化率を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁気変換素子を含む薄膜磁気ヘッドを備えたアクチュエータアームの構成を表す斜視図である。
【図2】図1に示したアクチュエータアームにおけるスライダの構成を表す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成を表す分解斜視図である。
【図4】図3に示した薄膜磁気ヘッドのIV矢視方向から見た構造を表す平面図である。
【図5】図3に示した薄膜磁気ヘッドの図4におけるV−V線に沿った矢視方向の構造を表す断面図である。
【図6】図3に示した薄膜磁気ヘッドの図4におけるVI−VI線に沿った矢視方向の構造、すなわち図5におけるVI−VI線に沿った矢視方向の構造を表す断面図である。
【図7】図6に示した磁気変換素子における積層体の構成を表す斜視図である。
【図8】図3に示した薄膜磁気ヘッドの製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図9】図8に続く工程を説明するための断面図である。
【図10】図9に続く工程を説明するための断面図である。
【図11】図10に続く工程を説明するための断面図である。
【図12】図11に続く工程を説明するための断面図である。
【図13】図12に続く工程を説明するための断面図である。
【図14】第1の実施の形態の変形例に係る磁気変換素子における積層体の構成を表す斜視図である。
【図15】第2の実施の形態に係る磁気変換素子における積層体の構成を表す斜視図である。
【図16】第2の実施の形態に係る磁気変換素子における積層体の構成の他の例を表す斜視図である。
【図17】従来の磁気変換素子における積層体の構成を表す斜視図である。
【符号の説明】
11…絶縁層、12…下部シールド層、13…下部シールドギャップ層、14…上部シールドギャップ層、15…上部シールド層、20,50…積層体、21…下地層、22…第1軟磁性層、22a…下層、22b…上層、23…第2軟磁性層、24…非磁性層、25,55…強磁性層、26…反強磁性層、27…保護層、28…強磁性層間層、29…軟磁性層間層、30a,30b…磁区制御膜、31a,31b…磁区制御用強磁性膜、32a,32b…磁区制御用反強磁性膜、33a,33b…リード層、41…記録ギャップ層、42,44,46…フォトレジスト層、43,45…薄膜コイル、47…上部磁極、48…オーバーコート層、55a…下層、55b…上層、59…強磁性層間層、60…挿入層、100…薄膜磁気ヘッド、101…再生ヘッド部、102…記録ヘッド部、110…MR素子(磁気変換素子)、200…アクチュエータアーム、210…スライダ、211…基体、211a…エアベアリング面、220…支軸、230…腕部、300…記録媒体、401…フォトレジスト膜、402…堆積物。

Claims (12)

  1. 一対の対向する面を有する非磁性層と、
    前記非磁性層の一方の面側に形成された軟磁性層と、
    前記非磁性層の他方の面側に形成された強磁性層と、
    前記強磁性層の前記非磁性層とは反対の側に形成された反強磁性層と、
    前記軟磁性層および前記強磁性層のうちの少なくとも一方の磁性層中に形成され、磁性を有し、かつ前記磁性層の少なくとも一部よりも電気抵抗が大きい層間層と、
    この層間層と前記非磁性層との間および前記層間層の前記非磁性層とは反対の側のうちの少なくとも一方に形成され、マンガン(Mn),銅(Cu),イリジウム(Ir)および白金(Pt)からなる群のうちの少なくとも1種を含む挿入層と
    を備えたことを特徴とする磁気変換素子。
  2. 前記層間層の厚さは、0.5nm以上1nm以下であることを特徴とする請求項1記載の磁気変換素子。
  3. 前記層間層は、酸素(O)および窒素(N)からなる群のうちの少なくとも1種を含んでいることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気変換素子。
  4. 前記層間層は、前記磁性層の構成元素のうちの少なくとも1種を含んでいることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1に記載の磁気変換素子。
  5. 前記軟磁性層は、
    少なくともニッケル(Ni)を含む第1軟磁性層と、
    少なくともコバルト(Co)を含む第2軟磁性層と
    を有することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1に記載の磁気変換素子。
  6. 前記第1軟磁性層は、さらに、コバルト,鉄(Fe),タンタル(Ta),クロム(Cr),ロジウム(Rh),モリブデン(Mo)およびニオブ(Nb)からなる群のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5記載の磁気変換素子。
  7. 前記第2軟磁性層は、さらに、ニッケルおよび鉄からなる群のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の磁気変換素子。
  8. 前記強磁性層は、少なくともコバルトを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1に記載の磁気変換素子。
  9. 前記強磁性層は、さらに鉄を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1に記載の磁気変換素子。
  10. 請求項1ないし請求項のいずれか1に記載の磁気変換素子を有することを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  11. 一対の対向する面を有する非磁性層と、前記非磁性層の一方の面側に形成された軟磁性層と、前記非磁性層の他方の面側に形成された強磁性層と、前記強磁性層の前記非磁性層とは反対の側に形成された反強磁性層とを備えた磁気変換素子の製造方法であって、
    前記軟磁性層および前記強磁性層のうちの少なくとも一方の磁性層中に、磁性を有し、かつ前記磁性層の少なくとも一部よりも電気抵抗が大きい層間層を形成する工程と、
    この層間層と前記非磁性層との間および前記層間層の前記非磁性層とは反対の側のうちの少なくとも一方に、マンガン(Mn),銅(Cu),イリジウム(Ir)および白金(Pt)からなる群のうちの少なくとも1種を含む挿入層を形成する工程と
    を含むことを特徴とする磁気変換素子の製造方法。
  12. 請求項11記載の磁気変換素子の製造方法を用いることを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
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