JP3557623B2 - 誘電体磁器原料粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、誘電体磁器原料粉末の製造方法に関し、特にチタン酸バリウムを主体とし、たとえば積層セラミックコンデンサに用いられる誘電体磁器原料粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、磁器コンデンサに用いられる誘電体磁器組成物として、チタン酸バリウムを主体とするものが数多く知られている。チタン酸バリウムは、120℃付近にキュリー点を持ち、10,000近い誘電率を示すが、それだけでは常温で高誘電率とはなり得ない。そこで、シフター材と呼ばれるものを加え、キュリー点を常温に移動させて常温で高誘電率を持たせている。このシフター材として、錫酸化物,ジルコニウム酸化物などを添加した組成物が、高誘電率の誘電体磁器組成物として知られている。
【0003】
しかし、この高誘電率の誘電体磁器組成物を用いた磁器は、結晶粒径が10μm〜20μmと大きい。そのため、この誘電体磁器組成物を用いて積層セラミックコンデンサを形成した場合、破壊電圧値が低く、また、機械的強度も低いという欠点があった。
【0004】
また、最近の磁器コンデンサは小型化の傾向にあり、特に積層コンデンサにおいては、誘電体層の厚みが5μm〜15μmのものが実用化されつつある。誘電体層が薄くなるに従って、磁器の構造的な欠陥が特性に反映され易くなるので、誘電体磁器組成物としては、高誘電率であるだけでなく、結晶粒子の大きさ(グレインサイズ)が均一でかつ微細であることと、空孔が少なくかつ小さいことが望まれている。また、誘電体層が薄くなることによって、誘電体層に印加される電界強度も大きくなるため、電圧依存性の小さいことも要求されている。
【0005】
グレインサイズの小さいチタン酸バリウムを主体にした誘電体磁器が、たとえば、特開昭58−135507号、特開昭58−223669号、特開昭59−86103号などに開示されている。これらの誘電体磁器は、チタン酸バリウムに酸化セリウムを加え、あるいは酸化セリウムとジルコン酸バリウムを加え、あるいは酸化ネオジムを加えることによって、チタン酸バリウムのグレインサイズを小さくしたものである。また、グレインサイズを小さくする試みとして、微細なチタン酸バリウムを用いることも行われている。
【0006】
チタン酸バリウム粉末の製造方法としては、従来、炭酸バリウムと酸化チタンとの混合物を1000℃以上で仮焼し、そののち粉砕をして原料粉末を得る方法が用いられている。しかし、この方法では、仮焼時に焼結が進み、粗大粒子を多量に含むので、微細で均一な粒度を有する粉末を得ることは困難であった。この問題を解決する試みとして、共沈法、アルコキシド法、加水分解法、水熱合成法などによる原料粉末の合成が行われている。中でも、水熱反応により合成された粉末は、粒子が微細であるだけでなく、組成が均一であり、従来の製造方法によって作製された原料粉末を用いた誘電磁器焼結体に比較して、結晶粒径が小さく、大きな誘電率が得られるということが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、グレインサイズの小さいチタン酸バリウムを主体とした誘電体磁器では、誘電率が常温で最大10,000前後であり、グレインサイズの大きいものに比べると誘電率が小さく、積層コンデンサを小型にした場合、大きい静電容量を得ることが困難であった。さらに、誘電率の温度変化曲線が急峻であることも問題であった。また、グレインサイズの小さい誘電体磁器は焼結温度が高く、1300℃以上の温度で焼成しなければならないため、積層セラミックコンデンサを形成した場合、内部電極として高価なPd電極を用いる必要があった。そのため、生産コストに占める内部電極材料のコスト比率が高く、特に静電容量の大きいものでは内部電極数が多くなるため、さらにコスト高となり、高信頼性にもかかわらず価格面で大きな障害となっていた。
【0008】
また、従来の誘電体組成物粉末においては、主原料以外の副成分原料についても酸化物粉末あるいは炭酸物で添加される。一般に主原料と副成分原料の分散状態は、特性のばらつきの原因や信頼性に影響を与える。分散状態をよくするためには、主原料同様、副成分原料も細かくする必要があり、むしろ主原料よりもさらに微細な粉末が必要である。しかしながら、従来の副成分原料粉末はあまり細かくすることができないため、誘電体組成物粉末において、主原料と副成分原料の分散状態は非常に悪かった。そのため、特に主成分原料に対して副成分原料の添加量の少ないグレインサイズの小さいチタン酸バリウムを主体とする誘電体磁器組成物粉末におてい、特性のばらつきの原因になっていた。
【0009】
それゆえに、この発明の主たる目的は、グレインサイズが小さく、大きい誘電率を有し、温度変化に対する誘電率の変化が少なく、電圧依存性が小さく、しかもこれを用いることにより積層セラミックコンデンサの内部電極に比較的安価なAg−Pd合金を用いることのできる特性のばらつきの少ない高信頼性の誘電体磁器原料粉末の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる誘電体磁器組成物粉末の製造方法は、水熱反応によりチタン酸バリウム粉末を合成する第1の工程と、合成したチタン酸バリウム粉末を水洗し乾燥したのち熱処理して、不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.03重量%以下、ハロゲンの含有量が0.03重量%以下であり、かつ、比表面積が4.0m2 /g以下、未反応のBaO量が2.0%以下のチタン酸バリウム粉末を得る第2の工程と、第2の工程で得られたチタン酸バリウム粉末100モルに対して、Ce化合物をCeO2 換算で2.0〜4.8モル、Ti、Sn化合物を(Ti1-a Sna )O2 (ただし、0<a≦1.0)換算で1.0〜7.0モル、Mn化合物をMnO2 換算で0.08〜0.5モル、かつ、0.97≦(BaO+CeO2 )/(TiO2 +SnO2 )≦1.02(モル比)の割合になるように添加する第3の工程と、を備え、第3の工程は、Ce、Ti、Sn、Mnの化合物として有機溶剤に可溶な有機金属化合物を用い、有機金属化合物の有機溶剤溶液とチタン酸バリウム粉末を混合した後、空気中で熱処理により有機物を除去して粉末とする工程を含む、誘電体磁器原料粉末の製造方法である。
【0011】
【作用】
水熱合成法で合成されるチタン酸バリウム粉末は、出発原料として塩化物が用いられることが多く、また、結晶化を促進するために、鉱化剤としてNaOH,KOHなどの各種のアルカリ金属溶液を用いることが一般的である。そのために、Na2 O,K2 Oなどのアルカリ金属酸化物とClなどのハロゲンが不純物として取り込まれている。
【0012】
本発明者らは、チタン酸バリウムを主体とする誘電体磁器の粒径が3μm以下と小さいときに誘電率が10000に満たない原因を種々検討した結果、主原料であるチタン酸バリウムの不純物の種類とその含有量とが多い場合、その誘電率が大きくならないことを見いだした。また、主原料であるチタン酸バリウム粉末の比表面積、未反応のBaO量によっても、誘電率が大きくならないことを見いだした。つまり、Na2 O,K2 Oなどのアルカリ金属酸化物の含有量が少なく、比表面積が小さくて、未反応のBaO量が少ないチタン酸バリウムにおいて、これに酸化セリウムを加えることによって、グレインサイズが小さくなり、しかも大きい誘電率を示すことを見いだした。また、酸化錫を加えることにより、誘電率の温度変化率が小さい誘電体磁器が得られることを見いだした。さらに、不純物としてClなどのハロゲンをある一定量以上を含んでいるチタン酸バリウムを主原料に用いて積層セラミックコンデンサを作製した場合、信頼性に大きく影響することも見いだした。
【0013】
【発明の効果】
この発明にかかる誘電体磁器組成物粉末を用いれば、誘電率が11,000以上あり、しかもこのように高誘電率であるにもかかわらず結晶粒径が2μm以下と小さい誘電体磁器が得られる。したがって、積層セラミックコンデンサを製造するときに、誘電体層を薄膜化しても、従来の積層セラミックコンデンサのように層中に存在する結晶粒の量が少なくならない。このため、信頼性が高く、しかも小型で大容量の積層セラミックコンデンサを得ることができる。さらに、この誘電体磁器組成物粉末は、1300℃以下の比較的低温で焼成可能であるため、内部電極としてAg−Pd合金の使用が可能であり、安価な積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0014】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0015】
【実施例】
(実施例1)
まず、0.10モルのチタンイソプロポキシド(Ti(OC3 H7 )4 )を秤量し、約300mlのイソプロピルアルコール(IPA)に溶解させたものを数種用意した。これらの溶液を十分に攪拌したのち、それぞれの溶液に0.2モル〜0.6モルのNaOHを含有する水溶液120ccを加えて加水分解させた。次に、これらの加水分解させた溶液それぞれに0.10モルのBaCl2 ・2H2 Oを窒素ガスを吹き込みながら添加・混合し、混合溶液を得た。そののち、これらの混合溶液を、それぞれ500mlのオートクレーブに入れ、200℃にて10時間水熱処理した。水熱処理後、冷却して得られたスラリをろ別して、通常の方法によって、洗浄,ろ過を数回繰り返し行ったのち、110℃で乾燥した。乾燥後、空気中にて700℃〜1150℃の温度で1時間熱処理を行い、表1に示すNa量、CI量および粉末特性の異なったA〜Gの7種類のBaTiO3 の白色粉末を得た。この7種類の白色粉末のBa/Ti比は1.00であった。
【0016】
【表1】
【0017】
次いで、上記A〜Fの6種類のBaTiO3 とオクチル酸Ce,オクチル酸Sn,Tiアセチルアセトネート,Mnアセチルアセトネートを準備した。これらの原料を表2に示す割合となるように配合したのち、エタノールとトルエンの混合有機溶剤を加えて、ボールミルによって16時間混合分散処理を行った。そして、スプレードライにより乾燥・造粒したのち、空気中600℃の温度で熱処理を行い、有機物の除去を行った。そののち、乾式粉砕機により粉砕し、BaTiO3 とその他の成分が均一に分散した原料粉末を得た。
【0018】
【表2】
【0019】
この原料粉末に、酢酸ビニルバインダと純水とを加えて16時間湿式混合して混合物を得た。この混合物を乾燥後造粒したのち、2000kg/cm2 の圧力で直径10mm、厚さ0.5mmの円板を、表3に示す温度で2時間焼成して、円板状の磁器を得た。そして、得られた磁器の表面を走査型電子顕微鏡にて、倍率1500倍で観察し、グレインサイズを測定した。
【0020】
【表3】
【0021】
得られた磁器の主表面に銀電極を焼き付けて測定試料(コンデンサ)とし、その室温での誘電率,誘電損失および温度変化に対する静電容量の変化率を測定した。また、200V/mm,1KHzの交流電圧を印加し、誘電損失(tanδ)を測定した。さらに、絶縁抵抗計によって500Vの直流電圧を2分間印加したのちの絶縁抵抗値を測定した。絶縁抵抗は、25℃および85℃の値を測定し、それぞれの体積抵抗率の対数(logρ)を算出した。
【0022】
なお、誘電率(ε)および誘電損失(tanδ)は温度25℃、1KHz、1Vrmsで測定し、温度変化に対する静電容量の変化率については、20℃での静電容量を基準とした−25℃と85℃での静電容量の変化率(ΔC/C20)を示した。
【0023】
以上の各試験の結果を、表3に合わせて示す。
【0024】
(実施例2)
実施例1の試料番号10の誘電体磁器原料粉末と表1のGのチタン酸バリウムを用いて試料番号10と同様の配合比率で同様の方法で作製した誘電体磁器原料粉末を用意した(試料番号21)。この誘電体磁器原料粉末に、ポリビニルブチラール系バインダおよびエタノールなどの有機溶剤を加えて、ボールミルにより湿式混合し、スラリを調製した。そののち、スラリをドクターブレード法によってシート形成し、厚み14μmの矩形のグリーンシートを得た。
【0025】
次に、このセラミックグリーンシート上に、Pdを主体とする導電ペーストを印刷し、内部電極を構成するための導電ペースト層を形成した。導電ペースト層が形成されたセラミック・グリーンシートを導電ペーストの引き出されている側が互い違いとなるように複数枚積層し、積層体を得た。得られた積層体を空気中において、表4に示す温度で2時間焼成した。焼成後、得られたセラミック焼結体の両端面に銀ペーストを塗布し、大気中において750℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成した。
【0026】
【表4】
【0027】
上記のようにして得られた積層コンデンサの外形寸法は、幅;1.6mm、長さ;3.2mm、厚さ;1.2mmであり、内部電極間に介在される誘電体セラミック層の厚みは9μmである。また、有効誘電体セラミック層の総数は19であり、一層当たりの対向電極の面積は2.1mm2 である。
【0028】
静電容量(C)および誘電損失(tanδ)は、自動ブリッジ式測定器を用いて周波数1KHz、1Vrms、温度25℃の条件で測定し、静電容量から誘電率(ε)を算出した。次に、絶縁抵抗(R)を測定するために、絶縁抵抗計を用い、16Vの直流電圧を2分間印加して、25℃,85℃での絶縁抵抗(R)を測定し、静電容量(C)と絶縁抵抗(R)との積、すなわちCR積を求めた。また、20℃での静電容量を基準とした−25℃および85℃での温度変化に対する静電容量の変化率(ΔC/C20)を測定した。さらに、各試料50個ずつの直流破壊電圧値B.D.V(V)と抗折強度とを測定し、平均値と最小値を示した。
【0029】
なお、抗折強度は、図1に示す抗折強度測定装置10を用いて測定した。抗折強度測定装置10は試料保持台12を含む。試料保持台12上には、被試験積層セラミックコンデンサ14が置かれる。被試験積層セラミックコンデンサ14は加圧ピン16によって加圧される。そして、加圧された圧力が置き針付きテンションゲージ18によって表示される。なお、この試験に際して、試料保持台12の治具のスパンは2mmとした。
【0030】
また、高温負荷試験として、各試料を100個ずつ、温度85℃にて、直流電圧を32V印加して1000時間経過後の絶縁抵抗を測定した。湿中負荷試験としては、各試料を100個ずつ、湿度95%,温度70℃にて直流電圧を16V印加して1000時間経過後の絶縁抵抗を測定した。なお、高温負荷試験および湿中負荷試験では、ともに1000時間経過後の絶縁抵抗値(R)と静電容量(C)との積、CR積が50MΩ・μF以下の試料を不良として、その個数を示した。
【0031】
比較例1として、表1のAのチタン酸バリウムと純度99%以上のCeO2 ,SnO2 ,TiO2 ,MnO2 を用意し、実施例1の試料番号10と同じ配合比率になるように秤量し、上述と同様の方法によって積層セラミックコンデンサを作製した。また、比較例2として、純度99.8%以上のBaTiO3 ,BaZrO3 ,CaZrO3 を準備し、BaTiO3 100モルに対して、BaZrO3 18.5モル,CaZrO3 8.9モルになるように秤量し、上述と同様の方法によって積層セラミックコンデンサを作製した。この比較例1,2について、上述の各特性を測定した。また、それぞれの積層セラミックコンデンサの表面を走査型電子顕微鏡にて、倍率1500倍で観察し、グレインサイズを測定した。
【0032】
以上の各試験の結果を、表4に合わせて示した。
【0033】
表3から明らかなように、この発明にかかる誘電体磁器組成物は誘電率εが11,000以上と大きく、また200V/mmの交流電圧を引加したときの誘電損失が5.0%以下と小さい。しかも、温度に対する静電容量の変化率ΔC/C20)が、−25℃〜85℃での範囲でJIS規格に規定するF特性規格を満足する。また、25℃,85℃における絶縁抵抗は、体積抵抗率の対数(logρ)で表したときに、それぞれ13以上、11以上と高い値を示す。さらに、焼成温度も1300℃以下と比較的抵温で焼結可能であり、粒径についても2μm以下と小さい。
【0034】
また、表4から明らかなように、この発明にかかる誘電体磁器組成物で作製した積層セラミックコンデンサは、比較例に比べて、高い破壊電圧および抗折強度を有し、そのばらつきも小さい。さらに、この積層セラミックコンデンサは、湿中負荷時の絶縁抵抗の寿命が長く、優れた信頼性を示す。
【0035】
以上のことから、この発明にかかる誘電体磁器組成物で作製した積層セラミックコンデンサは、誘電体層が10μm以下と薄くなっても十分対応でき、小型大容量の積層セラミックコンデンサとして期待できる。さらに、焼成温度が1300℃以下と低いため内部電極として30Ag−70Pb(重量%)などのAg−Pb合金の使用が可能である。
【0036】
ここで、この発明における組成の限定理由について説明する。
【0037】
試料番号1のように、BaTiO3 100モルに対してCeO2 が2.0モル未満の場合、誘電率が11,000未満となり、200V/mmの交流電圧を印加したときの誘電損失が5.0%を越え、また温度特性がF特性規格を満足しない。一方、試料番号15のように、CeO2 が4.8モルを超えると、誘電率が11,000未満になり、温度特性もF特性規格を満足しない。
【0038】
また、試料番号2のように、BaTiO3 100モルに対して(Ti1−a Sna )O2 が1.0モル未満の場合、誘電率が11,000未満となり、200V/mmの交流電圧を印加したときの誘電損失が大きくなって好ましくない。一方、試料番号16のように、(Ti1−a Sna )O2 が7.0モルを超えると、誘電率が11,000未満となり、温度特性がF特性規格を満足しなくなる。
【0039】
試料番号3のように、BaTiO3 100モルに対してMnO2 が0.08モル未満の場合、室温および高温での絶縁抵抗が低くなり好ましくない。また、試料番号17のように、MnO2 が0.50モルを超えると、200V/mmの交流電圧を印加したときの誘電損失が5.0%を越え、25℃,85℃での絶縁抵抗が大幅に低下してしまう。
【0040】
また、試料番号4のように、(BaO+CeO2 )/(TiO2 +SnO2 )のモル比が0.97未満の場合、200V/mmの交流電圧を印加したときの誘電損失が5.0%を越え、室温および高温での絶縁抵抗が低くなり、またグレインサイズが2μmより大きくなってしまう。一方、試料番号18のように、(BaO+CeO2 )/(TiO2 +SnO2 )のモル比が1.02を超えると、焼結性が極端に悪くなる。
【0041】
試料番号5のように、SnO2 量aが0の場合、200V/mmの交流電圧を印加したときの誘電損失が5.0%を超え、温度特性がF特性規格を満足しなくなる。
【0042】
試料番号19のように、比表面積が4.0m2 /gを超え、未反応のBaO量が2.0%を超えるチタン酸バリウムEを用いた場合、静電容量の温度変化率は小さいが、誘電率が大幅に低下してしまう。また、試料番号20のように、アルカリ金属酸化物の含有量の多い水熱反応を利用して作製したチタン酸バリウムFを用いた場合、誘電率が小さくなる。試料番号21のように、ハロゲンの含有量の多い水熱反応を利用して作製したチタン酸バリウムGを用いて、積層コンデンサを作製した場合、高温負荷試験および湿中負荷試験での不良数が多くなり好ましくない。
【0043】
また、比較例1のように、粉末で添加物を添加した場合、破壊電圧値および抗折強度の平均値は、比較例2に比べて大きいが、min値が平均値に比較して大幅に小さくなってしまい好ましくない。
【0044】
なお、この発明にかかる有機溶剤可溶な有機金属化合物として、オクチル酸Ce,オクチル酸Sn,Tiアセチルアセトネート,Mnアセチルアセトネートを用いたが、これに限定されるものではなく、アルコキシドやその他の脂肪酸塩,アセチルアセトネートでも同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料の抗折強度を測定するための抗折強度測定装置を示す図解図である。
【符号の説明】
10 抗折強度測定装置
12 試料保持台
14 被試験積層セラミックコンデンサ
16 加圧ピン
18 置き針付きテンションゲージ
Claims (1)
- 水熱反応によりチタン酸バリウム粉末を合成する第1の工程と、
合成した前記チタン酸バリウム粉末を水洗し乾燥したのち熱処理して、不純物として含まれるアルカリ金属酸化物の含有量が0.03重量%以下、ハロゲンの含有量が0.03重量%以下であり、かつ、比表面積が4.0m2 /g以下、未反応のBaO量が2.0%以下のチタン酸バリウム粉末を得る第2の工程と、
前記第2の工程で得られたチタン酸バリウム粉末100モルに対して、
Ce化合物をCeO2 換算で2.0〜4.8モル
Ti、Sn化合物を(Ti1-a Sna )O2 (ただし、0<a≦1.0)換算で1.0〜7.0モル
Mn化合物をMnO2 換算で0.08〜0.5モル
かつ、0.97≦(BaO+CeO2 )/(TiO2 +SnO2 )≦1.02(モル比)の割合になるように添加する第3の工程と、
を備え、
前記第3の工程は、Ce、Ti、Sn、Mnの化合物として有機溶剤に可溶な有機金属化合物を用い、前記有機金属化合物の有機溶剤溶液と前記チタン酸バリウム粉末を混合した後、空気中で熱処理により有機物を除去して粉末とする工程を含む、誘電体磁器原料粉末の製造方法。
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