JP3555905B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真や静電記録、イオノグラフィ等の方法で形成された静電潜像を、液体現像剤を用いて可視像化した後、記録媒体に転写する画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、画像形成装置では、画像支持体上に形成されたトナー像を紙に転写する方法として、トナーと反対の極性を有する電荷で帯電した転写体を紙を介して画像支持体に当接することにより、画像支持体上のトナーを静電気力によって紙に移動する方法が用いられている。また、この際、トナーの紙への移動を容易にして転写性を向上させるため、紙をプリウェット液で濡らすことにより紙の表面を平滑に処理する方法が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の液体現像剤を用いた画像形成装置では、紙の種類により表面粗さや吸水性が異なるので、転写時に必要とされる紙の表面を平滑に処理するためのプリウェット液量が異なる。このため、特定の種類の紙しか記録媒体として使用することができず、異なる種類の紙を記録媒体として使用した場合、画像支持体上に形成されたトナー像を良好に転写することができないという問題があった。
【0004】
【目的】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、画像支持体上に形成されたトナー像を記録媒体の種類にかかわらず良好に転写することができる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の画像形成装置は、画像支持体の潜像面に、絶縁性液体中に帯電した顕像化粒子であるトナーが分散された液体現像剤を供給することにより、前記画像支持体上にトナー像を形成する現像手段と、記録媒体上に前記画像支持体上に形成された前記トナー像を静電気力により転写する転写手段と、を具備する画像形成装置において、前記画像支持体上に、離型性を有し化学的に不活性な誘電性液体であるプリウェット液を供給するプリウェット装置を備え、前記プリウェット装置は、前記記録媒体の表面平滑度の値が大きいほど、前記画像支持体上への前記プリウェット液の量を少なくするように制御して塗布することを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明の画像形成装置は、請求項1記載の発明において、前記プリウェット装置が、前記プリウェット液を前記画像支持体上に塗布するプリウェット供給体と、前記プリウェット供給体に前記プリウェット液を供給する供給手段と、前記記録媒体の表面平滑度の値に応じて前記プリウェット供給体への前記プリウェット液の供給量を増減する供給制御手段とを有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項3記載の発明の画像形成装置は、請求項2記載の発明において、前記供給手段が、DCモータで作動するポンプを有し、前記供給制御手段は前記DCモータの回転数をパルス幅変調により制御するものであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4記載の発明の画像形成装置は、請求項2記載の発明において、前記供給手段が、DCモータで作動するポンプを有し、前記供給制御手段は前記DCモータの回転数をパルス周波数変調により制御するものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5記載の発明の画像形成装置は、請求項1,2,3又は4記載の発明において、前記プリウェット装置が、前記記録媒体のサイズが長いほど、前記画像支持体上に前記プリウェット液を長く塗布することを特徴とするものである。
【0010】
請求項6記載の発明の画像形成装置は、請求項5記載の発明において、前記プリウェット装置が、前記プリウェット供給体を前記画像支持体に離接する離接手段を有し、前記離接手段が前記記録媒体のサイズに応じた時間だけ前記プリウェット供給体を前記画像支持体に当接させることを特徴とするものである。
【0011】
請求項7記載の発明の画像形成装置は、請求項1,2,3,4,5又は6記載の発明において、前記液体現像剤が、絶縁性液体中にトナーが高濃度に分散された100〜10000mPa・sの高粘度のものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項8記載の発明の画像形成装置は、請求項7記載の発明において、前記液体現像剤の絶縁性液体の粘度が0.5〜1000mPa・s、電気抵抗が1012Ωcm以上、表面張力が21dyne/cm以下、沸点が100°C以上であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項9記載の発明の画像形成装置は、請求項8記載の発明において、前記液体現像剤がシリコンオイルを絶縁性液体として利用するものであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項10記載の発明の画像形成装置は、請求項7,8又は9記載の発明において、前記液体現像剤が平均粒径0.1〜5μmのトナーを5〜40%の濃度で含むものであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項11記載の発明の画像形成装置は、請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9又は10記載の発明において、前記プリウェット液の粘度が0.5〜5mPa・s、電気抵抗が1012Ωcm以上、沸点が100〜250°C、表面張力が21dyne/cm以下であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項12記載の発明の画像形成装置は、請求項11記載の発明において、前記プリウェット液がシリコンオイルを主成分としたものであることを特徴とするものである。
【0017】
【作用】
請求項1記載の画像形成装置は、画像支持体上にプリウェット液を記録媒体の種類に応じた量だけ塗布するプリウェット装置を設けたことにより、記録媒体の種類にかかわらず記録媒体の表面を平滑に処理することができるので、記録媒体の種類にかかわらず静電気力によるトナーの記録媒体への移動を容易にして転写性を向上させることができる。
【0018】
請求項2記載の画像形成装置は、プリウェット装置を上記の構成としたことにより、簡易な構成で請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0019】
請求項3及び4記載の画像形成装置は、上記の構成としたことにより、簡易な構成で画像支持体上に塗布するプリウェット液の液量を制御することができる。
【0020】
請求項5記載の画像形成装置は、画像支持体上に、記録媒体の種類に応じた量のプリウェット液を、記録媒体のサイズに応じた長さだけ塗布するプリウェット装置を用いたことにより、画像支持体上にプリウェット液を必要以上に塗布するのを防止することができる。
【0021】
請求項6記載の画像形成装置は、画像支持体にプリウェット供給体を記録媒体のサイズに応じた時間だけ当接するように、離接手段の動作を制御する離接制御手段をも具備するプリウェット装置を設けたことにより、簡易な構成でプリウェット液の画像支持体上の塗布範囲を制御することができる。
【0022】
請求項7記載の発明の画像形成装置は、トナーが高濃度に分散された液体現像剤を用いたことにより、従来の低濃度の液体現像剤に比べて、現像剤の液量を遥かに少なくすることができる。尚、液体現像剤は、粘度が10000mPa・s以上になると、絶縁性液体とトナーとの攪拌が難しくなり、液体現像剤をどのようにして作るかが問題となる。したがって、10000mPa・s以上の液体現像剤はコスト的に見合わなくなり、現実的でなくなる。一方、100mPa・s以下では、トナー濃度が低くなるとともに、トナーの分散性が悪くなるので、現像液を薄層にして現像することができなくなる。
【0023】
請求項8記載の画像形成装置は、絶縁性液体に前記特性のものを用いることにより、高粘度の液体現像剤を得ることができる。尚、絶縁性液体中にトナーが高濃度に分散された液体現像剤を用いているので、画像支持体の潜像面に供給される液体現像剤は少量となり、このため、転写時に紙等に吸収される絶縁性液体もきわめて少量となる。したがって、粘度が1000mPa・s以下であれば絶縁性液体の紙等への付着の問題は特に生じない。しかし、粘度が0.5mPa・s以下であると揮発性が高くなるので、危険物扱いとなり適当でない。絶縁性液体は沸点が100°C以下であると、蒸発量が多くなるので現像剤の保存方法に問題があり、装置全体を密閉構造にしなければならず、また作業環境を改善することも難しくなる。電気抵抗は1012Ωcm以下になると、絶縁性が悪くなり、トナーの導電性の問題が起こり現像剤として使用できなくなる。したがって、電気抵抗はできるだけ高い値が望ましい。表面張力は21dyne/cm以上になると、濡れ性が悪くなり、プリウェット液との馴染みが悪くなる。したがって、表面張力は、できるだけ低い値が望ましい。
【0024】
請求項9記載の画像形成装置は、絶縁性液体がシリコンオイルを主成分としたものであることにより、請求項8記載の特性を有する絶縁性液体を得ることができる。
【0025】
請求項10記載の画像形成装置は、液体現像剤が平均粒径0.1〜5μmのトナーを5〜40%の濃度で含むものであることにより、絶縁性液体中にトナーが高濃度に分散された液体現像剤を得ることができる。また、トナーの粒径の大きさに略反比例して、解像度が良くなる。通常、トナーは、プリントアウトされた紙上で5〜10個位の固まりとなって、存在しているので、トナーの平均粒径が5μm以上になると、解像度が悪くなる。一方、トナーの平均粒径が0.1μm以下になると、物理的な接着力が大きくなり、転写の際にトナーを剥がし難くなる。
【0026】
請求項11記載の画像形成装置は、プリウェット液の特性が前記のものであることにより、離型性を有し且つ絶縁性の良いプリウェット液を得ることができる。プリウェット液は、転写時に紙等に吸収されるため、定着時に蒸発させる必要がある。このため容易に蒸発し易いものとするために粘度は0.5〜5mPa・sが望ましい。粘度が5mPa・s以上であると蒸発し難くなり、0.5mPa・s以下であると揮発性が高くなるので、危険物扱いとなり適当でない。沸点は100°C以下であると、蒸発量が多くなるのでプリウェット液の保存方法に問題があり、装置全体を密閉構造にしなければならず、また作業環境を改善することも難しくなる。一方、沸点が250°C以上になると、定着時に紙がカールして使用できなくなり、また加熱のための高エネルギーが必要になるので、コスト高となる。電気抵抗は1012Ωcm以下になると、絶縁性が悪くなり、プリウェット液として使用できなくなる。したがって、電気抵抗値はできるだけ高い値が望ましい。表面張力は21dyne/cm以上になると、濡れ性が悪くなり、液体現像剤との馴染みが悪くなる。したがって、表面張力は、できるだけ低い値が望ましい。
【0027】
請求項12記載の画像形成装置は、プリウェット液がシリコンオイルを主成分としたものであることにより、請求項11記載の特性を有するプリウェット液を得ることができる。
【0028】
【実施例】
以下に本発明の一実施例を図1乃至図4、および図7を参照して説明する。図1は本発明の一実施例である画像形成装置の概略構成図、図2は図1に示す画像形成装置に用いられるプリウェット装置の概略斜視図、図3は図2に示すプリウェット装置の動作を説明するための図、図4はプリウェット液供給体を感光体に当接したときのプリウェット液の流れを表した図、図7は図1に示す画像形成装置の動作を説明するための図である。
【0029】
本実施例の画像形成装置は、図1に示すように、画像支持体である感光体10と、感光体10上に後述するプリウェット液を塗布するプリウェット装置20と、感光体10を帯電させる帯電装置30と、感光体10上に像を露光する露光装置40と、感光体10の静電潜像が形成された部分にトナーを供給することにより静電潜像を顕像化する現像装置50と、感光体10上のトナー像を所定の紙Pに転写する転写装置60と、紙P上に転写されたトナー像を紙Pに定着する定着装置70と、感光体10上に付着したトナーを除去するクリーニング装置80と、紙Pを転写装置60に送り込む給紙装置90と、図示されていないが、感光体10を除電する除電装置と、を備えている。
【0030】
帯電装置30、露光装置40、クリーニング装置80、給紙装置90、および、除電装置については従来の電子写真式プリンタに用いられている従来技術をほとんどの場合について流用することができる。したがって、本実施例では、上記の各装置の説明を省略して、本発明の主要部であるプリウェット装置20、現像装置50、転写装置60及び定着装置70について説明する。
【0031】
プリウェット装置20は、図2に示すように、感光体10上に描かれる画像幅と略同じ長さを有する板状のプリウェット液供給部体202と、プリウェット液供給体202を収納するケース204と、プリウェット液を貯蔵するタンク206と、タンク206に貯蔵されたプリウェット液を汲み上げるポンプ208と、ポンプ208の動作を制御するポンプコントローラ209と、管路210a,210bと、プリウェット液供給体202を感光体10に離接する離接装置212と、を備える。
【0032】
プリウェット液供給体202は、ベルイータ(登録商標:カネボウ(株))で形成されている。ベルイータは、気孔が連続した立体網目構造を有する連続多孔質体であり、気孔の体積分だけプリウェット液を保持することができる。また、気孔の体積を越えるプリウェット液が供給されたときには、図4に示すように、気孔の体積を越える分のプリウェット液をプリウェット液供給体202の放出側202bから放出すると共にプリウェット液供給体202の底面から放出する。ケース204の感光体10と対向する面には、図3に示すように、プリウェット液供給体202の底面を感光体10に当接することができるように開口部204aが設けられている。管路210aは、ポンプ208により汲み上げられたプリウェット液をプリウェット液供給体202の供給側202aに搬送する。プリウェット液供給体202の供給側202aとケース204との間には空間部204bが形成されており、プリウェット液はこの空間部204bに蓄えられた後、供給側202aからプリウェット液供給体202に供給される。管路210bは、プリウェット液供給体202の排出側202bから排出されたプリウェット液をタンク206に搬送する。
【0033】
ポンプ208は、図示されていないが、DCモータを動力源とするものである。図示されていないDCモータは、ポンプコントローラ209から出力されたパルス信号によって作動する。ポンプコントローラ209は、予めオペレータによって入力された紙Pの種類に基づき、パルス信号のパルス幅変調を行う。すなわち、パルス信号のパルス幅を変えることにより、DCモータの回転数を制御する。これにより、プリウェット液の汲み上げ量を調節する。紙Pの種類に基づきプリウェット液の汲み上げ量を調節するのは、表1に示すように、紙の種類によって平滑度(sec)や表面粗さ(μm)が異なるため、紙の表面を平滑に処理するのに必要なプリウェット液の液量が異なるからである。ここで、平滑度(sec)とは、紙特有の試験機によって測定した値を秒で表示したものである。この値が小さい程面が粗く、高い程面が平滑であることを意味する。また、表面粗さ(μm)とは、触針式表面粗さ計で求めた紙面凹凸の平均値である。尚、紙の表面を平滑に処理することについての理由は後述する。
【0034】
【表1】
Figure 0003555905
【0035】
離接装置212は、装置本体に固定されると共にケース204の下端部が回転自在に取り付けられた軸213aと、装置本体に固定された軸213bの両端部に設けられたカム214a,214bと、カム214a,214bをケース204に当接するバネ215a,215bと、軸213bを回転駆動するモータ216と、モータ216の動作を制御するモータコントローラ219とを有する。
【0036】
モータコントローラ219は、外部からの信号に基づき、モータ216を180度回転し、紙Pのサイズに応じた時間を経過した後、更に180度回転する。すなわち、外部からの信号がモータコントローラ219に入力されたときは、カム214a,214bを180度回転することにより、ケース204を軸213aの回りに回動する。これにより、図3(B)に示すように、プリウェット液供給体202を感光体10に当接する。そして、紙Pのサイズに応じた時間を経過した後、更にカム214a,214bを180度回転し、図3(A)に示すように、プリウェット液供給体202を感光体10から離す。これにより、感光体10上にプリウェット液を紙Pのサイズに応じた長さで塗布する。尚、紙Pのサイズに応じた時間T(sec)は、モータの初期立ち上がり時間をα(sec)、感光体10の周速、即ち感光体10の表面の移動速度をA(mm/sec)、紙Pの送り方向の長さをh(mm)とした場合、T=α+h/Aで表すことができる。また、紙Pの送り方向の長さh(mm)は、給紙装置90にセンサ等を取り付けることにより検出することができる。
【0037】
現像装置50は、図1に示すように、現像部51と、塗布部52とを備えて構成される。現像部51は、現像剤支持体である現像ベルト510と、現像ベルト510を回転駆動すると共に現像ベルト510の一部を感光体10に当接するようにして保持する駆動ローラ512a,512bと、を有する。現像ベルト510は、駆動ローラ512a,512bによって感光体10に従動する方向に回転駆動される。現像ベルト510には、シームレスの金属ベルト、例えばニッケルベルト、ポリイミドベルトのような樹脂ベルト等の可撓性を有するベルト部材が用いられる。尚、現像ベルト510は現像バイアスを印加できるものでなければならない。したがって、樹脂ベルトを用いる場合には、ベルト表面を導電加工するか、ベルト材質に導電性微粒子を添加するなどして電気抵抗値を下げる必要がある。
【0038】
塗布部52は、液体現像剤を貯蔵すると共に放出するベローズポンプ520と、ベローズポンプ520から放出された液体現像剤を現像ベルト510に搬送する搬送ローラ522a〜522dとを備える。搬送ローラ522dは搬送ローラ522cと当接するように、搬送ローラ522cは搬送ローラ522bと当接するように、そして、搬送ローラ522bは搬送ローラ522aと当接するようにそれぞれ設けられている。搬送ローラ522dは現像ベルト510に従動する方向に、搬送ローラ522cは搬送ローラ522dに従動する方向に、搬送ローラ522bは搬送ローラ522cに従動する方向に、そして、搬送ローラ522aは搬送ローラ522bに従動する方向にそれぞれ回転する。
【0039】
転写装置60は、図1に示すように、転写ベルト610と、転写ベルト610を回転駆動する駆動ローラ612a,612b,612cと、転写ベルト610と感光体10とが当接する位置において転写ベルト610の裏面側に設けられたコロナ放電器614と、を備える。
【0040】
転写ベルト610は、駆動ローラ612a,612b,612cによって感光体10に従動する方向に回転駆動される。転写ベルト610には、シームレスのニッケルベルト、ポリイミドフィルムベルトのような樹脂ベルト等の可撓性を有する部材が用いられる。これにより、感光体10上に形成されたトナー像と転写ベルト610とが接触する際の接触圧力を分散させることができる。転写ベルト610は帯電することができるものでなければならない。したがって、樹脂ベルトを用いる場合には、導電性微粒子を添加するか又は導電加工を施す必要がある。コロナ放電器614は、感光体10と転写ベルト610との当接部において、転写ベルト610を裏面から帯電する。駆動ローラ612a,612bは接地されており、コロナ放電器614により帯電した転写ベルト610を除電する。
【0041】
定着装置70は、紙Pを感光体10から離す分離ブレード726と、紙Pを挟んで押圧・定着する一対の定着ローラ722a,722bと、を有する。定着ローラ722aには、定着ヒータ724が内設されている。
【0042】
次に、本実施例に用いた画像形成用資材について説明する。本実施例に用いた液体現像剤は、エポキシ等のバインダーとなるレジン、トナーに所定の電荷を与える荷電制御剤、着色顔料、トナーを均一に分散させる分散剤等からなるトナーと、キャリア液とからなる。トナーの構成は、従来の液体現像剤に用いられてきたものと基本的には同様であるが、帯電特性及び分散性の調整のためそれらの処方はシリコンオイルに適合するよう変更してある。トナーの平均粒径は、小さい程解像度がよくなるが、粒径が小さいと物理的接着力が大きくなり、転写する際にはがし難くなる。このため、本実施例ではトナーの平均粒径は、転写性の向上を目的として2〜4μmあたりに中心が来るように調整してある。
【0043】
液体現像剤の粘性は、用いるキャリア液、レジン、着色顔料、荷電制御剤などおよびそれらの濃度により決まる。本実施例では、粘度を50〜6000mPa・s、トナー濃度を5〜40%の範囲で変化させて実験した。
【0044】
キャリア液は、高電気抵抗を示すジメチルポリシロキサンオイル、環状ポリジメチルシロキサンオイル等の低粘度のものを用いる。尚、現像ベルト510上に形成される液体現像剤層は薄層状に形成されるため、液体現像剤層中に含まれるキャリア液はきわめて少量である。したがって、感光体10の潜像面に供給される液体現像剤中に含まれるキャリア液もきわめて少量となるので、転写時に紙等に吸収されるキャリア液はきわめて少量となる。このため、粘度が1000mPa・s以下であれば定着後に残留するキャリア液は、ほとんど見られない。
【0045】
本発明者等の実験によれば、キャリア液に粘度が2.5mPa・sである米国ダウコーニング社のDC344を用いて出画実験を行ったときは、定着後に紙上に残留するキャリア液は見られなかった。しかし、揮発性が高いため、現像装置を密閉構造にする必要が生じた。また、キャリア液に粘度が6.5mPa・sである米国ダウコーニング社のDC345を用いて出画実験を行ったときは、DC344を用いて出画実験を行ったときと同様に、定着後に紙上に残留するキャリア液は見られなかった。しかし、揮発性が高いため、現像装置を密閉構造にする必要が生じた。さらに、キャリア液に粘度が20mPa・sである信越シリコン社のKF−96−20を用いて出画実験を行ったときは、定着後に紙上に残留するキャリア液は見られなかった。また、揮発性がそれほど高くないので、現像装置を密閉構造にする必要は生じなかった。DC344,DC345及びKF−96−20は、一般的に化粧品に用いられるもので毒性等の安全性は高い。キャリア液については、信越シリコン社のKF9937等他に多くの種類があり、電気抵抗、蒸発特性、表面張力、安全性等が満たされていればいずれを選択してもよい。
【0046】
また、本発明者等が行った実験では、表面張力が大きい場合にはかぶりやトナーの塊が感光体10に付着することがあり、実験的には21dyne/cm以上では画質に問題が起こりやすいことが分かった。
【0047】
電気抵抗値としては、トナーの帯電安定性の問題があり、1014Ωcm以上が望ましい。最低限1012Ωcm以上は必要である。本実施例の説明では、これらの実験結果に鑑み、価格が低く入手の容易なDC345を用いた例を示す。
【0048】
プリウェット液は、感光体10上に形成された静電潜像を乱すことなく、定着時に容易に蒸発し、かぶりやトナーの塊が感光体10に付着しないものであることが要求される。例としては、米国ダウコーニング社のDC344,DC200−0.65,−1.0,−2.0、信越シリコン社のKF96L−1,KF9937等がある。一般的に蒸発性の高いシリコンオイルを選択する必要がある。
【0049】
本発明者等の行った実験では、液粘度が0.5〜3mPa・sの範囲で問題なく現像、転写、定着による液の乾燥が行われたが、5mPa・sから6mPa・s程度ではやや定着時の液の乾燥に時間と温度が必要になる傾向が見られた。10mPa・sでは乾燥に要するエネルギーが大きくなり過ぎ一般的ではない。また、0.5mPa・s以下であると揮発性が高くなるので、危険物扱いとなり適当でない。また、紙への加熱の影響もあり、沸点は、250°C以下のものである必要がある。
【0050】
表面張力は、液体現像剤と感光体10との付着力をなくし、離型性をよくして画像の汚れ、かぶりを防ぎ、また画質の解像力、かぶりを向上させるため、できるだけ低いものがよい。本発明者等の実験によれば、20〜21dyne/cm程度が限界でこれより低いものを選択する必要がある。
【0051】
電気抵抗は、低い場合、絶縁性が悪くなり電荷をリークしてしまう。従って、できるだけ高いものを使用する必要がある。実験的には1014Ωcm程度以上が望ましい。最低限1012Ωcmは必要である。
【0052】
次に、本実施例の画像形成装置の動作について説明する。先ず、図7(A)に示すように、帯電装置30により感光体10を帯電する。一般に帯電装置30には、コロナ放電器が用いられる。次に、帯電した感光体10上に像を露光する。例えば、レーザースキャナーにより像を露光して感光体10の表面に静電潜像を形成する。図7(B)に示すようにレーザースキャナーの光が当たった部分は、導電化するので電荷が消失し、光の当たらなかった部分は電荷の像である静電潜像として残る。
【0053】
次に、図7(C)に示すように、プリウェット装置20により、感光体10上に、紙Pの種類に応じた量のプリウェット液を、紙Pのサイズに応じた長さで塗布する。
【0054】
次に、現像装置50により静電潜像を顕像化する。ベローズポンプ520により搬送ローラ522aと搬送ローラ522bの当接開始位置側に放出された液体現像剤は、隣合う搬送ローラ間の当接部により均一な厚みに規制されて現像ベルト510の表面に薄くムラなく塗布される。これにより、現像ベルト510上に液体現像剤の薄層を形成することができる。
【0055】
次に、現像ベルト510上に形成された液体現像剤層を、図7(D)に示すように、感光体10の表面に形成された静電潜像に近接させて、静電気力により、帯電したトナーを感光体10上に移動する。これにより、感光体10上にトナー像を形成する。
【0056】
次に、図7(E)に示すように、転写装置60により感光体10上に形成されたトナー像を紙P上に転写する。コロナ放電器614は、転写点において転写ベルト610をトナーと反対の極性を有する電荷で帯電する。これにより、感光体10上に形成されたトナー像は、静電気力により、転写ベルト610上に移動する。
【0057】
次に、図7(F)に示すように、定着装置70により紙Pにトナー像を定着する。紙Pは、分離ブレード726により感光体10から引き剥がされた後、定着ローラ722aと定着ローラ722bとの間に送り込まれて押圧されると同時に定着ヒータ724により加熱される。これにより、転写されたトナーが熱的に溶融し定着する。
【0058】
その後、感光体10は、クリーニング装置80により感光体10上に残留した液体現像剤が除去された後、図示されていない除電装置により除電される。そして、再び上記の帯電から除電までのサイクルに繰り返し使用される。
【0059】
図8乃至図12は本実施例の現像過程について詳細に説明するための図であり、図8は現像過程の全体を説明するための図、図9は接近過程の様子を示す図、図10はトナー移動過程の様子を示す図、図11は非画像部の分離過程の様子を示す図、図12は画像部の分離過程の様子を示す図である。従来の現像過程と異なり、本実施例の現像過程は、図8に示すように、現像ベルト510が感光体10に接近して液体現像剤が感光体10の表面に接近する接近過程と、液体現像剤層とプリウェット液層とがソフトコンタクトしてトナーが移動するトナー移動過程と、現像ベルト510が感光体10から離れて現像ベルト510に付着するトナーと感光体10に付着するトナーとに分離される分離過程との3つの過程から成り立っていると考えられる。
【0060】
接近過程では、現像ベルト510を可撓性を有するベルト部材で構成したことにより、図9に示すように、現像ベルト510上の液体現像剤層と感光体10上のプリウェット層とが接触する際の接触圧力が分散され、キャリア液とトナーからなる高粘度の液体現像剤とプリウェット液とはソフトコンタクトされる。これにより粘度の低いプリウェット液は前後に若干押し出されてプリウェット液の液溜りが生ずる。
【0061】
トナー移動過程においては、図10に示すように、画像部では、現像ベルト510上のトナーが感光体10上の電荷と現像ベルト510の間に形成される電界によって主にクーロン力によりプリウェット液層を通過して潜像面に移動する。一方、非画像部では、現像ベルト510上のトナーは、感光体10の表面と液体現像剤層とがプリウェット液層により分離されているので、感光体10の表面に移動しない。
【0062】
分離過程においては、非画像部では、図11に示すように、液体現像剤は現像ベルト510上に残留する。プリウェット液層と液体現像剤層との界面では2つの層が分離する際に、粘度の低いプリウェット液層の一部が液体現像剤層に転移して分離する。したがって、2つの層の分離点は、プリウェット液層の内部にあると考えられる。一方、画像部では、図12に示すように、感光体10の表面に移動したトナーがプリウェット液層を押しのけるため、プリウェット液層はトナー層の上に位置し、両者はプリウェット液層の内部で分離する。現像ベルト510上には、トナーが移動した後に残るキャリア液の一部とプリウェット液の一部が層を形成する。
【0063】
図13は液体現像剤を薄層化したことの意義を説明するための図である。現像ベルト510上に塗布された液体現像剤層が厚すぎると、液体現像剤の粘度が高いので、静電気力で現像ベルト510から感光体10の表面に移動しようとするトナー群が、その周りに位置するトナーに対して粘性を断ち切れずにクラスターを形成して、感光体10の表面に移動する。このため、トナーが過剰に移動し、感光体10上に形成されたトナー像に乱れが生じて画像ノイズが発生する。このクラスターの発生を抑えるために、液体現像剤層の層厚を現像が十分にできる最小限の値に抑える必要がある。
【0064】
次に、現像ベルト510上の液体現像剤層の層厚、感光体10上のプリウェット液層の層厚について説明する。現像ベルト510上の液体現像剤層の層厚は、液体現像剤の粘性が50〜100mPa・s以上のものについては、特に500mPa・s以上のものについては、薄くする必要がある。理想的には、現像時に要求されるトナー現像量(すなわち、ベタ黒を出したときの濃度)を満たす層厚より若干厚目が良い。これは、粘度の高い液体現像剤を用いた場合、現像時に、静電気的に選択されたトナーが液の粘性により余計なトナーを引き連れて感光体10上に移動してしまうため、感光体10上に形成されたトナー像に乱れが生じるからである。本発明者等の実験では、トナー濃度の高い液体現像剤については約5μmの層厚で、また、トナー濃度の低いものについては約40μmの層厚で良好な画像が得られた。特に、トナー濃度20〜30%の液体現像剤を用いた場合、液体現像剤の層厚が約8〜20μmで良好な画質が得られた。
【0065】
感光体10上のプリウェット液層の層厚は、選択されたプリウェット液の粘度、表面張力により最適値が存在する。薄過ぎる場合には、現像ベルト510上のトナーが感光体10上に不規則に移動して感光体10上に形成されるトナー像に乱れが生じる。プリウェット液の量を増やしていくに従って、トナー像の乱れは改善されて、現像時の最適値が確認される。更に量を増やしていくと、感光体10上のトナーが流れて、感光体10上のトナー像がぼける傾向を示し、紙への転写時、トナー像が流れる傾向を示す。DC344を用いた実験では、0.1〜40μmの厚みで良好な結果を得られた。これより粘性の低いものについては、この結果より薄めでも、厚目でも良い結果を得られる。しかしながら、高粘度のものに関しては、最適値は範囲が狭くなる傾向にある。
【0066】
また、感光体10上のプリウェット液の液量は、転写の際に転写ベルト610により感光体10に押圧された紙Pの表面を平滑に処理することができる程度の液量でなければならない。感光体10上のトナーは静電気力により転写ベルト610上に移動するが、本実施例で用いる液体現像剤は、トナー間の凝集力が強く、粉体現像剤の場合と同じように、機械的衝撃や静電気力によりキャリア液からトナーを遊離させることはできない。すなわち、感光体10と感光体10に押圧された紙Pとの間に空気が介在すると、トナーの感光体10から紙Pへの移動が困難になる。したがって、感光体10と紙Pとの間に空気が介在していると、紙P上に転写されたトナー像の画質が劣化する。このため、感光体10と紙Pとの間に空気が介在しないように、感光体10上にプリウェット液を塗布して紙Pの表面を平滑に処理する必要がある。
【0067】
前述したように、紙は種類によって平滑度(秒)や表面粗さ(μm)が異なるので、紙の表面を平滑に処理するのに必要なプリウェット液の液量も紙の種類によって異なる。本発明者等は、ポンプ208によって単位時間当たりに汲み上げられるプリウェット液の流量(ml/min)を変えることにより、感光体10上のA4サイズ当たりに塗布されるプリウェット液の塗布量を変えて、感光体10上のトナー像を紙に転写する実験を行った。その結果、表2に示すように、ダル紙では塗布量が0.03(ml/A4サイズ)以上で、熱転写紙では塗布量が1.91(ml/A4サイズ)以上で良好な転写を行うことができることが分かった。また、アート紙では、塗布量が0.03(ml/A4サイズ)以下でも良好な転写を行うことができることが分かった。一方、上質紙では、塗布量が2.24(ml/A4サイズ)以上でも、熱転写紙、ダル紙及びアート紙に比べて転写が良好に行われないことが分かった。尚、表2では、紙に転写されたトナー像の画質を6段階で表示し、画質の最も良いものを6とした。
【0068】
【表2】
Figure 0003555905
【0069】
ところで、本発明者等は、本実施例装置において、プリウェット装置20のポンプコントローラ209から出力されるパルス信号の周期Tを80msに固定し、パルス信号のパルス幅Tを変えて実験を行ったところ、パルス幅Tと周期Tとの比率(T/T)と、ポンプ208によって単位時間当たりに汲み上げられるプリウェット液の流量(ml/min)との間には、図5に示すような関係があることを確認した。また、パルス幅Tと周期Tとの比率(T/T)と、プリウェット液供給体202によって感光体10上のA4サイズ当たりに塗布されるプリウェット液の塗布量(ml/A4サイズ)との間には、図6に示すような関係があることを確認した。このため、本実施例装置では、ポンプコントローラ209によってパルス幅変調を行うことにより、紙の種類に応じてポンプ208のDCモータの回転数を変え、感光体10上に塗布するプリウェット液の塗布量を最も適した量となるように制御した。具体的には、パルス信号の周期Tを80msに固定しパルス幅Tを変えることにより、パルス幅Tと周期Tとの比率(T/T)を、アート紙の場合は約0.1、ダル紙の場合は約0.2、熱転写紙の場合は約0.6、そして、上質紙の場合は約0.9となるように、ポンプコントローラ209を設定した。尚、パルス幅Tと周期Tとの比率と、プリウェット液供給体202によって感光体10上のA4サイズ当たりに塗布されるプリウェット液の液量(ml/A4サイズ)との関係は、周期Tや用いるポンプの能力により当然に異なってくる。本実施例ではチューブ式ポンプを使用した。
【0070】
上述の条件下で画出し実験をおこなった結果、本実施例に最適な液体現像剤及びプリウェット液の粘性に関する範囲は、現像剤が100mPa・sから6000mPa・s、プリウェット液が0.5mPa・sから5mPa・sの間であることが分かった。尚、プリウェット液のシリコンオイルには、ダウコーニング製のDC200シリーズを用い、また現像液のキャリア液には、同社製のDC345を用いた。
【0071】
本実施例によれば、感光体10上にプリウェット液を紙Pの種類に応じた量だけ塗布するプリウェット装置20を設けたことにより、紙Pの種類にかかわらず紙Pの表面を平滑に処理することができる。このため、紙の種類にかかわらず静電気力によるトナーの紙への移動を容易にして転写性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施例によれば、感光体10上にプリウェット液を紙Pのサイズに応じた長さで塗布するプリウェット装置20を設けたことにより、感光体10上にプリウェット液を必要以上に塗布するのを防止することができる。
【0073】
さらに、本実施例によれば、気孔が連続した連続多孔質であるベルイータ(登録商標:カネボウ(株))で形成されたプリウェット液供給体202と、プリウェット供給体202を感光体10に離接する離接装置212と、プリウェット液供給体202にプリウェット液を供給するDCモータで作動するポンプ208と、紙Pの種類に基づき、DCモータの回転数をパルス幅変調により制御するポンプコントローラ209と、を具備するプリウェット装置20を設けたことにより、簡易な構成で感光体10上に塗布するプリウェット液の液量を制御することができる。
【0074】
また、本実施例によれば、感光体10にプリウェット供給体202を紙Pのサイズに応じた時間だけ当接するように、モータ216の動作を制御するモータコントローラ219を具備する離接装置212を設けたことにより、簡易な構成でプリウェット液の塗布範囲を制御することができる。
【0075】
さらに、本実施例によれば、液体現像剤のキャリア液としてシリコンオイルを用いたことにより、従来のものに比べて以下に述べる利点を有する。
【0076】
従来の液体現像剤は、一般にキャリア液としてIsoparG (登録商標:Exxon 社製)を用いている。このIsoparは、シリコンオイルほど抵抗値が高くないので、トナー濃度を濃くすると、即ち粒子間距離が小さくなると、トナーの帯電性が悪くなる。したがって、Isoparの場合は、トナー濃度に限界がある。これに対して、本実施例で用いたシリコンオイルは、抵抗値が十分に大きいので、トナー濃度を濃くすることができる。また、一般にIsoparの場合、トナーの分散状態が良く、したがって、トナー濃度が1〜2%でも、トナー同士が反発しあうので、均一にトナーが分散している。これに対して、シリコンオイルは、トナー濃度が1〜2%の場合、分散性が良くなく、じきに沈殿してしまう。しかし、トナー濃度を5〜40%にすると、密に詰まった状態となり、安定して分散する。このため、本実施例では、トナーが高密度に分散された高粘度の液体現像剤を使用している。これにより、従来の低濃度の液体現像剤に比べて、現像液の液量を大幅に低減することができ、装置の小型化を図ることができる。更に、本実施例の液体現像剤は高粘度の液体であるので、保管や取り扱いの点でも、従来の低粘度の液体現像剤や粉体現像剤に比べて容易になる。
【0077】
従来の液体現像剤で用いていたIsoparは、前述のように、揮発性が高く、しかも悪臭を放つので、作業環境を悪化させるだけでなく、公害を起こすという問題があった。これに対して本実施例で用いているシリコンオイルは、化粧品用として用いられていることからも明らかなように、安全な液体であり、また無臭であるので、本実施例によれば、作業環境を改善することができ、また公害の問題も発生しない。
【0078】
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々の変形が可能である。たとえば、上記の実施例では、プリウェット装置として、ポンプ208の動力源であるDCモータの回転数を、パルス幅変調により制御するポンプコントローラ209を設けたものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。DCモータの回転数の制御は、パルス周波数変調により行うものでもよい。
【0079】
また、上記の実施例では、プリウェット装置として、感光体10にプリウェット供給体202を紙Pのサイズに応じた時間だけ当接するように、モータ216の動作を制御するモータコントローラ219を具備するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。感光体10にプリウェット供給体202を当接する時間は、紙の種類にかかわらず一定時間としたものであってもよい。この場合、感光体10にプリウェット供給体202を当接する時間は、使用される紙のうち最も大きなサイズの紙に合わせて設定する必要がある。
【0080】
さらに、上記の実施例では、プリウェット装置として、プリウェット液供給体202により感光体10の表面にプリウェット液を塗布するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プリウェット装置は、紙の種類に応じた量のプリウェット液を感光体の表面に均一に塗布することができるものであればよい。たとえば、軸方向に並んだ複数のノズルからプリウェット液を吐出させることにより塗布するもの、スポンジローラ等により塗布するもの等でもよい。
【0081】
また、上記の実施例では、現像装置として、現像剤支持体に可撓性を有する部材で構成された現像ベルト510を用いたものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、現像装置は、現像剤支持体に金属等の導電性部材で形成された剛体ローラや弾性体で形成された弾性ローラを用いたものでもよい。但し、剛体ローラを用いる場合、剛体ローラ上に形成された液体現像剤層と感光体上に形成されたプリウェット液層とを二層状態を維持しつつ接触させるため、画像支持体に可撓性を有する部材を用いるか、または、剛体ローラを剛体ローラと感光体との間に微小なギャップ即ち間隔を形成するようにして設ける必要がある。
【0082】
さらに、上記の実施例では、現像装置の塗布部として、複数の搬送ローラ522a〜522dを介して現像ベルト510上に液体現像剤を塗布したものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、現像ベルト510上に薄層の液体現像剤層を形成することができるものであればどのような方法によるものであってもよい。たとえば、現像ベルト510上に塗布された液体現像剤をゴム又は剛体のブレードによって層厚を規制することにより、現像ベルト510上に薄層の液体現像剤層を形成するものでもよい。
【0083】
また、上記の実施例では、転写装置として、コロナ放電器614により転写ベルト610をトナーと反対の極性を有する電荷で帯電することにより、感光体10の潜像面上に形成されたトナー像を紙P上に転写するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。転写装置は、たとえば、転写ベルトを回転駆動する駆動ローラに導電性微粒子が添加された電気抵抗値の低いゴムローラを用い、この駆動ローラにバイアス電圧を印加することにより転写ベルトにバイアス電圧を印加してトナー像を紙P上に転写するものでもよい。
【0084】
また、上記の実施例では、露光装置40により帯電した感光体10上に像を露光し、その後、プリウェット装置20により感光体10上にプリウェット液を塗布するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プリウェット装置20により感光体10上にプリウェット液を塗布した後、露光装置40により感光体10を帯電し、感光体10上に像を露光するものであってもよい。
【0085】
さらに、上記の実施例では、画像支持体として有機感光体を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像支持体は、カールソン法で用いる各種感光体あるいはイオノグラフィ等の静電潜像を直接形成する導体上に絶縁体層を形成したもの、静電プロッタのような静電記録紙でもよい。
【0086】
また、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、プリウェット液層が形成され、且つ、液体現像剤の層厚が5〜40μmであれば、高粘性現像剤の粘度は10000mPa・sであっても良い。現状では、6000mPa・s以上の高粘度の現像剤は、キャリア液とトナーとの攪拌が難しくなるので、コスト的にあわなくなると考えるが、安価に入手できるようになれば、6000mPa・s以上でもよい。粘度が10000mPa・sを越えるものは、現実的でなくなる。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、画像支持体上にプリウェット液を記録媒体の種類に応じた量だけ塗布するプリウェット装置を設けたことにより、記録媒体の種類にかかわらず記録媒体の表面を平滑に処理することができるので、記録媒体の種類にかかわらず静電気力によるトナーの記録媒体への移動を容易にして転写性を向上させることができる画像形成装置を提供することができる。
【0088】
請求項2記載の発明によれば、プリウェット装置の構成をプリウェット液を画像支持体上に塗布するプリウェット供給体と、プリウェット供給体にプリウェット液を供給する供給手段と、記録媒体の表面平滑度の値に応じてプリウェット供給体へのプリウェット液の供給量を増減する供給制御手段とを有するものとしたことにより、簡易な構成で画像支持体上に塗布するプリウェット液の液量を制御することができる画像形成装置を提供することができる。
【0089】
請求項3記載の発明によれば、供給手段としてDCモータで作動するポンプを用いると共に、DCモータの回転数をパルス幅変調により制御する供給制御手段を用いたことにより、簡易な構成で画像支持体上に塗布するプリウェット液の液量を制御することができる画像形成装置を提供することができる。
【0090】
請求項4記載の発明によれば、供給手段としてDCモータで作動するポンプを用いると共に、DCモータの回転数をパルス周波数変調により制御する供給制御手段を用いたことにより、簡易な構成で画像支持体上に塗布するプリウェット液の液量を制御することができる画像形成装置を提供することができる。
【0091】
請求項5記載の発明によれば、画像支持体上に、記録媒体の種類に応じた量のプリウェット液を、記録媒体のサイズに応じた長さだけ塗布するプリウェット装置を用いたことにより、画像支持体上にプリウェット液を必要以上に塗布するのを防止することができる画像形成装置を提供することができる。
【0092】
請求項6記載の発明によれば、画像支持体にプリウェット供給体を記録媒体のサイズに応じた時間だけ当接するように、離接手段の動作を制御する離接制御手段をも具備するプリウェット装置を設けたことにより、簡易な構成でプリウェット液の画像支持体上の塗布範囲を制御することができる画像形成装置を提供することができる。
【0093】
請求項7記載の発明によれば、トナーが高濃度に分散された高粘度の液体現像剤を薄層にして現像することにより、高解像度で小型化が容易であり、しかも低公害化が可能な画像形成装置を提供することができる。
【0094】
請求項8記載の発明によれば、前記の構成としたことにより、請求項7記載の発明の効果に加えて、液体現像剤とプリウェット液との馴染がよい画像形成装置を提供することができる。
【0095】
請求項9記載の発明によれば、前記の構成としたことにより、請求項8記載の発明の効果に加えて、公害が少なく、作業環境の改善を図ることができる画像形成装置を提供することができる。
【0096】
請求項10記載の発明によれば、前記の構成としたことにより、上記の効果に加えて、転写の際にトナーを剥がしやすくなる画像形成装置を提供することができる。
【0097】
請求項11記載の発明によれば、前記の構成としたことにより、上記の効果に加えて、転写の際の離型性を向上させることができる画像形成装置を提供することができる。
【0098】
請求項12記載の発明によれば、前記の構成としたことにより、上記の効果に加えて、更に公害が少なく、作業環境の改善を図ることができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である画像形成装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置に用いられるプリウェット装置の概略斜視図である。
【図3】図2に示すプリウェット装置の動作を説明するための図である。
【図4】プリウェット液供給体を感光体に当接したときのプリウェット液の流れを表した図である。
【図5】パルス幅Tと周期Tとの比率(T/T)と、ポンプによって単位時間当たりに汲み上げられるプリウェット液の流量(ml/min)との関係を示す図である。
【図6】パルス幅Tと周期Tとの比率(T/T)と、プリウェット液供給体によって感光体上のA4サイズ当たりに塗布されるプリウェット液の塗布量(ml/A4サイズ)との関係を示す図である。
【図7】図1に示す画像形成装置の動作を説明するための図である。
【図8】現像過程の全体を説明するための図である。
【図9】接近過程のようすを示す図である。
【図10】トナー移動過程のようすを示す図である。
【図11】非画像部の分離過程を示す図である。
【図12】画像部の分離過程を示す図である。
【図13】液体現像剤を薄層化したことの意義を説明するための図である。
【符号の説明】
10 感光体
20 プリウェット装置
30 帯電装置
40 露光装置
50 現像装置
51 現像部
52 塗布部
60 転写装置
70 定着装置
80 クリーニング装置
90 給紙装置
202 プリウェット液供給体
204 ケース
206 タンク
208 ポンプ
209 モータコントローラ
210a,210b 管路
212 離接装置
213a,213b 軸
214a,214b カム
215a,215b バネ
216 モータ
219 モータコントローラ
510 現像ベルト
512a,512b,612a,612b,612c 駆動ローラ
520 ベローズポンプ
522a,522b,522c,522d 搬送ローラ
610 転写ベルト
614 コロナ放電器
722a,722b 定着ローラ
724 定着ヒータ
726 分離ブレード

Claims (12)

  1. 画像支持体の潜像面に、絶縁性液体中に帯電した顕像化粒子であるトナーが分散された液体現像剤を供給することにより、前記画像支持体上にトナー像を形成する現像手段と、記録媒体上に前記画像支持体上に形成された前記トナー像を静電気力により転写する転写手段と、を具備する画像形成装置において、
    前記画像支持体上に、離型性を有し化学的に不活性な誘電性液体であるプリウェット液を供給するプリウェット装置を備え、前記プリウェット装置は、前記記録媒体の表面平滑度の値が大きいほど、前記画像支持体上への前記プリウェット液の量を少なくするように制御して塗布する ことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記プリウェット装置は、前記プリウェット液を前記画像支持体上に塗布するプリウェット供給体と、前記プリウェット供給体に前記プリウェット液を供給する供給手段と、前記記録媒体の表面平滑度の値に応じて前記プリウェット供給体への前記プリウェット液の供給量を増減する供給制御手段とを有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
  3. 前記供給手段は、DCモータで作動するポンプを有し、前記供給制御手段は前記DCモータの回転数をパルス幅変調により制御するものであることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
  4. 前記供給手段は、DCモータで作動するポンプを有し、前記供給制御手段は前記DCモータの回転数をパルス周波数変調により制御するものであることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
  5. 前記プリウェット装置は、前記記録媒体のサイズが長いほど、前記画像支持体上に前記プリウェット液を長く塗布することを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の画像形成装置。
  6. 前記プリウェット装置は、前記プリウェット供給体を前記画像支持体に離接する離接手段を有し、前記離接手段が前記記録媒体のサイズに応じた時間だけ前記プリウェット供給体を前記画像支持体に当接させることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
  7. 前記液体現像剤は、絶縁性液体中にトナーが高濃度に分散された100〜10000mPa・sの高粘度のものであることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の画像形成装置。
  8. 前記液体現像剤は、絶縁性液体の粘度が0.5〜1000mPa・s、電気抵抗が1012Ωcm以上、表面張力が21dyne/cm以下、沸点が100℃以上であることを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
  9. 前記液体現像剤は、シリコンオイルを絶縁性液体として利用するものであることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
  10. 前記液体現像剤は、平均粒径0.1〜5μmのトナーを5〜40%の濃度で含むものであることを特徴とする請求項7,8又は9記載の画像形成装置。
  11. 前記プリウェット液は、粘度が0.5〜5mPa・s、電気抵抗が1012Ωcm以上、沸点が100〜250℃、表面張力が21dyne/cm以下であることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9又は10記載の画像形成装置。
  12. 前記プリウェット液は、シリコンオイルを主成分としたものであることを特徴とする請求項11記載の画像形成装置。
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