JP3555802B2 - 新規有機ケイ素化合物およびその製造方法並びにそれを用いる表面処理剤および樹脂添加剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅、鉄鋼およびアルミニウム等の金属またはガラス繊維、シリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機物質と樹脂との接着性の改善を行うための表面処理剤、またはエポキシ樹脂等の樹脂の硬化反応を促進し、樹脂の機械的強度を改善するための樹脂添加剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器用のボードは銅箔と紙−フェノール樹脂含浸基材やガラス−エポキシ樹脂含浸基材等を加熱、加圧して銅張積層板を作成した後、エッチングして回路網を形成し、これに半導体装置等の素子を搭載することにより作られる。
【0003】
これらの過程では、銅箔と基材との接着、加熱、酸やアルカリ液への浸漬、レジストインクの塗布、ハンダ付け等が行われるため、さまざまな性能が要求される。これらの要求を満たすために、銅箔は黄銅層形成処理(特公昭51−35711号公報、同54−6701号公報)やクロメート処理、亜鉛または酸化亜鉛とクロム酸化物とからなる亜鉛−クロム基混合物被覆処理(特公昭58−7077号公報)、シランカップリング剤処理等が検討されている。また樹脂は、樹脂や硬化剤の種類およびその配合量を変えたり、添加剤等によって上記要求特性を満足させている。また、ガラス繊維はシランカップリング剤等の表面処理等が検討されている。しかしながら、最近、プリント回路が緻密化しているので、使用される電子機器用のボードに要求される特性はますます厳しくなっている。
【0004】
これに伴うエッチング精度の向上に対応するため銅箔のプリプレグと接着される粗化面(M面)にはさらに低い表面粗さ(ロープロファイル)も求められている。しかし、M面の表面粗さは一方ではプリプレグとの接着にあたって、アンカー効果をもたらしているので、M面に対するこのロープロファイルの要求と接着力の向上とは二律背反の関係にあり、ロープロファイル化によるアンカー効果の低減分は別の手段による接着力の向上で補償することが必要である。
【0005】
また、発電所などの高電圧・高容量の機器や半導体の封止等に使われている電気絶縁用注型材料はエポキシ樹脂のマトリックス中にシリカやアルミナ等の無機物質を充填した複合材料である。これらの材料にはさまざまな電気的・機械的特性が要求されており、それらの特性を満足させるためには、無機物質と樹脂の接着性を向上させる必要がある。この対策としてシランカップリング剤を樹脂中に添加したり、無機物質をシランカップリング剤で表面処理することが提案されているが、さらなる樹脂/無機物質界面の改善が要求されている。
【0006】
【発明が解決するための課題】
本発明は、こうした要請に対応できる、すなわち銅、鉄鋼およびアルミニウム等の金属またはガラス繊維、シリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機物質と樹脂との接着性を向上させることができる新規な有機ケイ素化合物、その製造方法、並びにそれを用いた表面処理剤または樹脂への添加剤を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を進めた結果、前記一般式(1)に示す新規有機ケイ素化合物により金属または無機物質を表面処理した場合、樹脂との接着性を向上させることができ、また、エポキシ樹脂等の樹脂に添加しても硬化反応が促進され、機械的強度が改善されることを見出した。
【0008】
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、その要旨は、
(1)下記一般式(1)で表される新規有機ケイ素化合物。
【0009】
【化3】
【0010】
[ただし、一般式(1)において、R1,R2,R5は水素または炭素数が1〜5のアルキル基、R3,R4は炭素数1〜5のアルキル基、mは1〜5、nは1〜3を示す]
(2)下記一般式(2)で表されるビニルイミダゾールと下記一般式(3)で表されるメルカプトシランをラジカル開始剤の存在下、40〜100℃で反応させることを特徴とする前記(1)記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
【0011】
【化4】
【0012】
[ただし、一般式(2)および(3)において、R1,R2,R5は水素または炭素数1〜5のアルキル基、R3,R4は炭素数が1〜5のアルキル基、mは1〜5、nは1〜3を示す]
(3)前記(1)記載の一般式(1)で表される有機ケイ素化合物を有効成分とする表面処理剤。
【0013】
(4)前記(1)記載の一般式(1)で表される有機ケイ素化合物を有効成分とする樹脂添加剤にある。
【0014】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0015】
上記一般式(1)におけるR1,R2,R5は水素または炭素数が1〜5のアルキル基であれば樹脂の硬化剤または硬化促進剤としてイミダゾールが効果的に作用し、本発明の効果を十分発揮する。R3,R4は炭素数が1〜5のアルキル基であるが、特には合成の容易性やシランの加水分解、縮合のし易さの点からメチル基またはエチル基が好適である。また、nは1〜3であるが、金属、無機物質や樹脂との反応性や架橋性の高い方が接着特性が向上するため、nは2または3が好適である。また、mは1〜5である。
【0016】
本発明の上記新規有機ケイ素化合物(1)は下記反応式(4)で表される反応により合成される。すなわち、たとえば1−ビニルイミダゾール、メルカプトシラン、アゾビスイソブチロニトリルを入れた容器を40〜100℃に加熱して反応させることにより製造することができる。
【0017】
【化5】
【0018】
[ただし、反応式(4)において、各記号は前記と同義]
上記反応に使用されるビニルイミダゾール化合物として好ましいのは、1−ビニルイミダゾール等である。
【0019】
また、メルカプトシランとして好ましいのは、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン等である。
【0020】
上記ビニルイミダゾールとメルカプトシランとの反応モル比は、ビニルイミダゾール1モルに対して、0.1〜10モルのメルカプトシランを反応させることにより製造することができるが、反応中にビニルイミダゾールの重合も副反応として起こるため、メルカプトシランを過剰量、すなわち、ビニルイミダゾール1モルに対して、1モル以上加えることが好ましい。また、上記反応は、ラジカル開始剤の存在下で行われるが、開始剤はとくに制限はなく、たとえばクメンヒドロパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ第三ブチルパーオキシド、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどを使用することができる。ラジカル開始剤は、ビニルイミダゾール1モルに対して、0.001〜1モル添加する。反応時間は、数時間程度で十分である。この反応は特には溶媒を必要としないが、トルエン、クロロホルム、ジオキサン、メタノール、エタノール等の有機溶剤を反応溶媒として用いてもよい。なおこの反応は、水分を嫌うので水分が混入しないように、乾燥した窒素、アルゴン等の水分を含まない気体の雰囲気下で行うことが好ましい。
【0021】
これらの新規有機ケイ素化合物は、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の既知の手段によって単離されうるが、表面処理剤や樹脂の添加剤として用いる場合には、これらの化合物は必ずしも単離する必要がなく、反応混合物のまま用いることもできる。
【0022】
上記、新規有機ケイ素化合物を金属または無機物質の表面処理剤として用いる場合、その金属または無機物質にはとくに制限がない。例えば、金属では、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛等またはそれらの合金、無機物質ではガラス繊維、シリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、タルク等である。表面処理は、そのまま塗布してもよいが、水、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、トルエン等の溶剤で0.001〜20重量%になるように希釈して噴霧するか、この液に金属または無機物質を浸漬させる方法で塗布することが簡便で好ましい。
【0023】
なおこの新規有機ケイ素化合物は単独で用いてもよいが、他のシランまたはチタネートカップリング剤、防錆剤と混合して用いてもよい。
【0024】
上記、本発明の新規有機ケイ素化合物を樹脂添加剤として用いる場合、その樹脂には特に制限がなく、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、特にはエポキシ樹脂に添加すると硬化剤または硬化促進剤として効果的に作用し、本発明の効果を十分に発揮することができる。本発明の有機ケイ素化合物は樹脂中にそのまま添加しても、アルコール系、芳香族系、脂肪族系有機溶剤等に溶解して添加してもよい。添加量は樹脂100に対して0.001〜50添加すれば本発明の効果を十分発揮できる。なお本発明の新規有機ケイ素化合物は、一般的に樹脂に添加する硬化剤、シランカップリング剤、可塑剤等の添加剤等と併用してもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
実施例1
1−ビニルイミダゾールと3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとの反応
【0026】
【化6】
【0027】
還流管の付いた100mlのフラスコをアルゴン雰囲気にした後、1−ビニルイミダゾール9.4g(0.1mol)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン19.6g(0.1mol)、アゾビスイソブチロニトリル1.0g入れた。その後、60℃で2時間加熱した後、減圧蒸留により、イミダゾール基を有する有機ケイ素化合物21.7gを得た(収率:75%、沸点:144〜149℃/0.1mmHg)。得られた化合物はガスクロマトグラフィーにより単一成分であることを確認し、1H−NMR,13C−NMR,FT−IRにより同定した。これらの結果を図1〜3に示す。
【0028】
実施例2
表面処理剤としての適用
アルミ合金板または銅合金板(JIS H 4000に規定するA2024PまたはJIS H 3100に規定するC2600、日本テストパネル製、厚さ1.6mm、25×100mm)を上記イミダゾール基を有する有機ケイ素化合物(以下“化合物1”とする)の0.4%メタノール溶液に浸漬した後、ドライヤーで乾燥することにより金属に表面処理した。この表面処理したアルミ合金板2枚または銅合金2枚をそれぞれエポキシ樹脂組成物(エピコート828(エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ製):100部、硬化剤としてジシアンジアミド(味の素製、アミキュアAH154):5部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成製):1部)により100℃で1時間+150℃で1時間の硬化条件で接着し、JIS K 6850に準じて引っ張りせん断接着試験を行った。また比較として未処理の金属板、0.4%3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのメタノール溶液で処理した金属板についても同様に評価した。その結果を表1に併せて示した。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例3
樹脂への添加剤としての適用
エポキシ樹脂組成物(エピコート828:100部、ジシアンジアミド(関東化学製):5部)10.0gに対して、上記有機ケイ素化合物1を0.1g添加してDSCにより硬化反応性を分析した(図4参照)。その結果、150℃付近に発熱ピークが確認された。また、比較として、化合物1を添加しないエポキシ樹脂(エピコート828:100部、ジシアンジアミド(関東化学製):5部)についても同様にDSC分析したところ(図5参照)、190℃付近に発熱ピークが確認された。以上の結果より、化合物1は樹脂に添加した場合、硬化促進作用を有することが確認された。
【0031】
エポキシ樹脂(エピコート828)100gに対して上記有機ケイ素化合物1を10g添加してDSC分析した(図6参照)。その結果、130℃付近に発熱ピークが確認された。また、比較として、有機ケイ素化合物1を添加しないエポキシ樹脂(エピコート828)についても同様にDSC分析したところ、発熱ピークが確認されなかった。以上の結果より、化合物1は樹脂に添加した場合、硬化剤として作用することが確認された。
【0032】
未処理のアルミ合金板2枚をエポキシ樹脂組成物(エピコート828:100部、ジシアンジアミド(関東化学製):5部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成製):1部、上記有機ケイ素化合物1:0.5部、硬化条件は100℃で1時間後、150℃で1時間)により接着し、JIS K 6850に準じて引っ張りせん断接着試験を行った。その結果を表2に示す。また比較としてエポキシ樹脂組成物中の化合物1:0.5部を2−エチル−4−メチルイミダゾール:0.5部に変えて同様に評価した。その結果を表2に併せて示した。
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の有機ケイ素化合物は表面処理剤、樹脂添加剤として硬化反応を促進させる作用を有し、金属と樹脂との接着性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた本発明の有機ケイ素化合物の1H−NMR、
【図2】実施例1で得られた本発明の有機ケイ素化合物の13C−NMR、
【図3】実施例1で得られた本発明の有機ケイ素化合物のFT−IR、
【図4】実施例1で得られた本発明の有機ケイ素化合物とエポキシ樹脂組成物の混合物のDSC分析(実施例3)の結果を示す図、
【図5】実施例1で得られた本発明の有機ケイ素化合物を含まないエポキシ樹脂組成物のDSC分析(実施例3における比較例)の結果を示す図、
【図6】エポキシ樹脂に実施例1で得られた本発明の有機ケイ素化合物を添加した場合のDSC分析(実施例3)の結果を示す図。
Claims (4)
- 請求項1の化合物を有効成分とする表面処理剤。
- 請求項1の化合物を有効成分とする樹脂添加剤。
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