JP3555732B2 - 純水製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、半導体デバイス製造工程で使用される洗浄用純水の製造方法に関し、詳しくは、フッ酸と鉱酸の混合酸性水を電気式脱イオン水製造装置で処理して、フッ酸を効率的に除去する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体デバイス製造工場では、水利用率の向上と環境保護のため、排水を回収することにより排水量の低減を図っている。すなわち、半導体デバイス製造工場で使用する超純水製造装置には、半導体デバイス製造工程で発生する排水を該超純水製造装置の原水と合流させる排水回収系を備えることが一般的となっている。この半導体デバイス製造工程から最も多量に発生する排水は、硫酸などの鉱酸及びフッ酸を含むpH2〜4の希薄酸性水である。したがって、この希薄酸性水をそのまま原水に合流させて超純水製造系に供給すると、フッ酸とカルシウムなどの硬度成分とが反応して不溶性の塩を生成し、これが貯槽底部に析出し、後段のポンプや逆浸透膜装置を汚染する。このため、回収排水中のフッ酸濃度は、例えば0.5ppm 以下とする必要がある。
【0003】
一方、従来から、純水を製造するにはイオン交換樹脂が利用されているが、このイオン交換樹脂は、通常薬剤による再生を必要とする。このため、近年、該イオン交換樹脂を利用した脱イオンと電気透析作用を組合せ、薬剤による再生が不要で、高度な純水を得る電気式脱イオン水製造装置の利用が進んでいる。
【0004】
そこで、前記鉱酸及びフッ酸を含有する希薄酸性水を電気式脱イオン水製造装置で処理し、フッ酸を除去する方法が試みられている。しかし、この場合、鉱酸は除去されるものの、フッ酸は除去されることなく漏出してしまう。これを解決するものとして、例えば、被処理水(例えば、回収排水)を逆浸透膜装置に供給して、硫酸などの鉱酸を除去し、次いで、その後段に設置した電気式脱イオン水製造装置でフッ酸を除去する方法が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法は、2つの装置の設置が必要であり、設備投資が増える他、ランニングコストが上昇するという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、特に半導体デバイス製造工程から排出される硫酸などの鉱酸及びフッ酸を含む希薄混合酸性水を、実質的に単独の電気式脱イオン水製造装置で処理することにより、効率よくフッ酸を除去する方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、鉱酸及びフッ酸を含む希薄混合酸性水が、例えばpH4以下であると、電気式脱イオン水製造装置でこれを処理しても、強電解質である鉱酸は解離するものの、弱電解質であるフッ酸はイオンに解離せずそのまま漏出してしまうこと、したがって、フッ酸が解離するpH領域となるまでアルカリ添加して該希薄酸性水を処理すれば、鉱酸は中和されるためフッ酸を容易に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、フッ酸及び鉱酸を含有する混合酸性水を電気式脱イオン水製造装置で処理する方法において、前記混合酸性水に、フッ酸が解離するpH値までアルカリを添加して、その後、該処理を行う純水製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明の純水製造方法によれば、フッ酸が解離するpH領域となるまでアルカリを添加し、その後、電気式脱イオン水製造装置で処理するため、少なくとも鉱酸は中和されると共に、フッ酸はイオンに解離するため電気式脱イオン水製造装置単独での除去が可能となる。したがって、電気式脱イオン水製造装置の前段部に逆浸透膜装置を設置する必要はなくなる。また、従来の半導体デバイス製造工場における排水回収系では、高濃度の酸性排水が排出され、これを放流するためにアルカリ添加による中和を行っていたが、本発明の方法によれば、被処理水を予めpH6.5以上にするため、これらの排水は中性又は弱アルカリであり、貯槽などで自然に溶解する炭酸ガスによって放流可能なpH領域となる。このため、新たな中和設備を必要とすることがない等の利点がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態における純水製造方法について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態における純水製造方法を説明するブロック図である。フッ酸と硫酸などの鉱酸の混合酸性水である被処理水は、電気式脱イオン水製造装置(以下、EDI装置ともいう)2に供給される前に、予めpH調整装置1によりアルカリ溶液が添加される。これにより、硫酸などは中和されてpH値は6.5以上となる。pH調整された被処理水は、EDI装置2に流入される。EDI装置2は、イオン交換樹脂、イオン交換繊維などのイオン交換体が充填された脱塩室と、この脱塩室とイオン交換膜を介して仕切られた濃縮室と、これら脱塩室及び濃縮室に電圧を印加する一対の電極を有している。そして、脱塩室に被処理水を、また、濃縮室に濃縮水を流通する。被処理水はフッ酸がイオンに解離するpH領域に調整されているため、フッ素イオンはイオン交換膜を介して濃縮水を流れる濃縮水中に移動される。これによって、フッ酸が除去された処理水を得ると共に、塩類が濃縮された濃縮水を濃縮室に得ることができる。従って、一対の電極を収納する電極室にも濃縮水(電極水)を流通する。従って、該電極室からは電極水が排出される。
【0012】
前記被処理水としては、硫酸などの鉱酸及びフッ酸を含有する混合酸性液であれば、特に制限されないが、例えば半導体デバイス製造工程から排出される水酸化アンモニウム、硫酸、硝酸、フッ酸などを含有するpH2〜4の希薄酸性排水が挙げられる。
【0013】
前記pH調整装置1は、被処理水にアルカリ溶液を添加する装置であり、例えばアルカリ溶液貯槽と注入ポンプで構成されるものである。また、pH調整装置1は、被処理水のアルカリ添加前後のpHを検出するpH計と、該pH計の出力に基づいて、注入ポンプの吐出量を制御する調整器を設置して、所定のpHを維持する構造とするこのが好ましい。アルカリとしては、アルカリ金属、アミン類など水に溶解した時にアルカリ性を示す物質を任意に選択でき、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、このうち、水酸化ナトリウムが工業的使用上、安価で入手し易いなどの点で好ましい。アルカリを添加してフッ酸が解離するpH値としては、pH6.5以上、好ましくはpH6.5〜9.5である。pHが9.5を越えるとアルカリの漏洩が多量になることから好ましくない。
【0014】
本発明の実施の形態における純水製造方法によれば、pH調整装置1により、フッ酸が解離するpH領域となるまでアルカリ溶液を添加し、その後、電気式脱イオン水製造装置で処理するため、少なくとも鉱酸は中和されフッ酸はイオンに解離するため、EDI装置2単独での除去が可能となる。したがって、EDI装置2の前段部分に逆浸透膜装置を設置する必要はない。
【0015】
【実施例】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
下記仕様のEDI装置を用いて、90日間の処理実験を行った。アルカリ添加前の被処理水は、半導体デバイス製造工程で発生する回収排水であり、フッ酸15mg/L、硫酸50mg/L、硝酸1mg/L、アンモニア1mg/Lを含有し、pH3.0及び導電率500μS/cmの水であった。また、アルカリは水酸化ナトリウムを使用し、これを前記回収排水に添加して、pH6.5の被処理水とした。評価は90日間経過後の処理水のフッ酸濃度を測定することにより行った。結果は、処理水の組成はフッ酸0.5mg/L以下、硫酸0.1mg/L以下、硝酸0.1mg/L以下、アンモニア0.1mg/L以下であり、フッ酸はそのほとんどが除去されていた。また、処理水の導電率は2μS/cmであった。
【0016】
Figure 0003555732
【0017】
比較例1
被処理水をアルカリ無添加とする以外は、実施例1と同様の方法により行った。結果は、処理水中のフッ酸濃度は14mg/Lであり、被処理水のフッ酸のほとんどが漏出していた。
【0018】
【発明の効果】
本発明の純水製造方法によれば、フッ酸が解離するpH領域となるまでアルカリを添加し、その後、電気式脱イオン水製造装置で処理するため、少なくとも鉱酸は中和されると共に、フッ酸はイオンに解離するため電気式脱イオン水製造装置単独での除去が可能となる。したがって、電気式脱イオン水製造装置の前段部に逆浸透膜装置を設置する必要はなくなる。また、従来の半導体デバイス製造工場における排水回収系では、高濃度の酸性排水が排出され、これを放流するためにアルカリ添加による中和を行っていたが、本発明の方法によれば、被処理水を予めpH6.5以上にするため、これらの排水は中性又は弱アルカリであり、貯槽などで自然に溶解する炭酸ガスによって放流可能なpH領域となる。このため、新たな中和設備を必要とすることがない等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における純水製造方法を説明するブロック図を示す。
【符号の説明】
1 pH調整装置
2 電気式脱イオン水製造装置

Claims (1)

  1. フッ酸及び鉱酸を含有する混合酸性水を電気式脱イオン水製造装置で処理する方法において、前記混合酸性水に、フッ酸が解離するpH値までアルカリを添加して、その後、該処理を行うことを特徴とする純水製造方法。
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