JP4925687B2 - 高純度無機酸の回収方法 - Google Patents
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Description
本発明の他の目的は、フッ酸に限らず、他の無機酸についても金属イオン濃度を著しく低減し得る高純度無機酸の回収方法を提供することにある。
(1)バイポーラ膜の間を複数のアニオン交換膜によって仕切り、前記正極側室と負極側室との間に少なくとも一つの中間室を形成された電気透析装置を使用すること、
(2)前記処理液中のフッ酸濃度を0.25mol/L以上の濃度に維持しながら電気透析を行うこと、
(3)前記フッ酸濃度を0.25〜10mol/Lの範囲に維持して電気透析を行うこと、
が好適である。
図1は、本発明に用いる電気透析装置の概略構造を示す図であり、
図2は、本発明に用いる電気透析装置の他の態様を示す概略構造を示す図であり、
更に、図3は、図1の電気透析装置により行われる電気透析の原理を説明するための模式図である。
即ち、処理液として、Feイオン(Fe2+)を含むフッ酸排液を使用し、且つ回収媒体液としてFeイオンを含まないフッ酸水溶液を用いた場合を例にとると、電圧の印加により、例えばバイポーラ膜Bは水溶液中の水(H2O)を取り込んで、アニオン交換膜面側にアニオン(OH−)を放出し、バイポーラ膜Bのカチオン交換膜面側にプロトン(H+)を放出する。そしてバイポーラ膜Bはアニオン交換膜Aで仕切られているため、負極側室11の処理液中の共役塩基(F−)が負極側室11からアニオン交換膜Aを通って正極側室12に移動することとなる。このときには、Feイオンは、そのまま負極側室11内に止まる。従って、このような電気透析を継続して行うことにより、負極側室11の処理液中のフッ酸濃度は次第に低下し、正極側室12内の回収媒体液のフッ酸濃度は次第に上昇することとなる。かくして、ある程度の時間、電気透析を行うことにより、回収媒体液を、より高濃度の高純度のフッ酸水溶液として回収することが可能となるのである。
HF=H++F−
(解離定数K1=[H+][F−]/[HF]=7.4×10−4)
F−+HF=HF2 −
(解離定数K2=[HF2 −]/[HF][HF−]=4.7)
尚、解離定数K1、K2は25℃での測定値である。
即ち、フッ酸水溶液中には、3種の解離イオン種、H+、F−、HF2 −が存在している。このような形態において、フッ酸濃度が0.25mol/Lより低い低濃度領域では、HF2 −が少なく、H+とF−との単純解離の状態に近くなる。このため、共役塩基はほとんどF−の形で移動することとなり、電流効率は約100%程度となる。一方、フッ酸濃度が0.25mol/L以上の高濃度領域では、HF2 −が支配的となり、2mol/L以上になると、ほとんどの共役塩基がHF2 −となる。このため、電流効率は、フッ酸濃度の増大に伴って200%に近づいていき、2mol/L以上では約200%に達することとなるのである。かくして、本発明においては、フッ酸濃度が上記範囲にあるフッ酸排液を処理液として使用し、電気透析の進行に伴ってフッ酸濃度が低下したときには、適宜処理液(或いはフッ酸)を補給し、処理液中のフッ酸濃度を上記の範囲に維持しながら電気透析を続行することにより、高い電流効率で電気透析を行うことが可能となるのである。
HF+H2O=H3O++Fー
HF+HF=H2F++Fー
カチオン交換膜とアニオン交換膜とをポリエチレンイミン−エピクロルヒドリンの混合物で貼り合わせて硬化接着する方法(特公昭32−3962号)、カチオン交換膜とアニオン交換膜とをイオン交換性接着剤で接着する方法(特公昭34−3961号)、カチオン交換膜とアニオン交換膜とを、微粉のイオン交換樹脂、アニオン又はカチオン交換樹脂と熱可塑性物質とのペースト状混合物の塗布層を挟んで圧着する方法(特公昭35−14531号)、カチオン交換膜の表面にビニルピリジンとエポキシ化合物とからなる糊状物質を塗布し、これに放射線を照射する方法(特公昭38−16633号)、アニオン交換膜の表面にスルホン酸型高分子電解質とアリルアミン類を付着させた後、電離性放射線を照射して架橋させる方法(特公昭51−4113号)、イオン交換膜の表面に反対電荷を有するイオン交換樹脂の分散系と母体重合体との混合物を沈着させる方法(特開昭53−37190号)、ポリエチレンフィルムにスチレン、ジビニルベンゼンを含浸して重合させたシート状物をステンレス製の枠に挟みつけ、一方の側をスルホン化させた後、シートを取り外して残りの部分に、クロロメチル化処理し、次いでアミノ化処理する方法(米国特許第3562139号明細書)、特定の金属イオンを、アニオン交換膜及びカチオン交換膜の表面に塗布し、両イオン交換膜を重ね合わせてプレスする方法(エレクトロケミカアクタ31巻、1175〜1176頁、1986年)など。
尚、実施例及び比較例において、用いた電気透析装置4室セルの仕様は以下の通りである。
バイポーラ膜B;株式会社アストム製、ネオセプタBP−1E
アニオン交換膜:株式会社アストム製、AHA
カチオン交換膜:株式会社アストム製、CMB
4室セルを使用し、下記表1に示すフッ酸濃度のフッ酸水溶液(金属イオン含量:0ppm)を負極側室11に100ml供給した。また、正極側室12にも同液を100ml供給し、さらに陽極室3及び陰極室7には、それぞれ1mol/l水酸化ナトリウムを供給した。
この状態で、表1に示す条件で通電して電気透析を行い、F−についての電流効率を求めた。その結果を表1に併せて示し、またフッ酸濃度と電流効率との関係を図4に示した。尚、電流効率は、以下のようにして求めた。
(通電後の12室のHF量[meq]−通電前の12室のHF量[meq])/(通電によって流した全クーロン量)
電気透析装置として4室セルを使用した。
処理液として、4.82mol/Lのフッ酸水溶液(FeCl2の形で1.22ppmのFe含有)を負極側室11に100mL供給し、正極側室12には、Feを含有していない4.82mol/Lのフッ酸水溶液(即ち、Fe含量が0ppm)のフッ酸水溶液100mLを回収媒体液として供給した。さらに、実験例1と同様に、陽極室3及び陰極室7に水酸化ナトリウムを供給した。尚、処理液、回収媒体液及び極液の循環供給量は、実験例1と全く同様とした。
また、このときのFeの拡散リーク率(処理液から回収媒体液へのFeの移行割合)は約6%であり、電流効率は約200%であった。
電気透析装置として、カチオン交換膜がバイポーラ膜の間に設けられている4室セルを使用した。
処理液として、4.78mol/Lのフッ酸水溶液(FeCl2の形で1.22ppmのFe含有)100mLを正極側室12に供給し、負極側室12には、同じ濃度であるがFeを含有していないフッ酸水溶液100mLを供給した。さらに、実験例1と同様に、陽極室3及び陰極室7に水酸化ナトリウムを循環供給した。尚、電流、通電時間は実験例1と全く同様とした。
尚、このときのFeについての電流効率は約0.03%であった。
A:カチオン交換膜
11:負極側室
12:正極側室
13:中間室
Claims (4)
- 正極と負極との間にバイポーラ膜とアニオン交換膜とが配置され、上記バイポーラ膜の間をアニオン交換膜によって仕切ることにより形成された、バイポーラ膜をそれぞれ片壁とする、正極側室と負極側室とを備えた電気透析装置を使用し、該負極側室に、金属イオン含有のフッ酸排液を処理液として供給し、該正極側室に水または高純度フッ酸水溶液からなる回収媒体液を供給し、この状態で電気透析を行うことにより、負極側室から正極側室に共役塩基を選択的に移行させて回収媒体液中のフッ酸濃度を上昇させ、正極側室から回収媒体液を高純度のフッ酸水溶液として回収することを特徴とする高純度フッ酸の回収方法。
- 電気透析装置が、バイポーラ膜の間を複数のアニオン交換膜によって仕切り、前記正極側室と負極側室との間に少なくとも一つの中間室を形成した請求項1記載の高純度フッ酸の回収方法。
- 前記処理液中のフッ酸濃度を0.25mol/L以上の濃度に維持しながら電気透析を行う請求項1に記載の高純度フッ酸の回収方法。
- 前記フッ酸濃度を0.25〜10mol/Lの範囲に維持して電気透析を行う請求項3に記載の高純度フッ酸の回収方法。
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