JP3554900B2 - 蚊取線香 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、蚊取線香に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に蚊取線香は木粉末、茎葉粉末、除虫菊抽出粕粉末等の燃焼基剤と、椨粉、コーンスターチ等の糊剤と、マラカイトグリーン等の色素にピレスロイド系殺虫剤を殺虫成分として配合し、それに適量の水を加え練り合わせた後に所定の形状に成型、乾燥または所定の形状に打抜き・乾燥させたものである。
そして、蚊取線香の大きさは、断面形状が厚さ約3.5mm、幅約6mmとほぼ一定であり、長さは必要な使用時間に応じて調節している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
かかる蚊取線香は燃焼させることで殺虫成分を加熱揮散させて使用するもので、混合した殺虫成分を効率良く揮散させて有効利用することが重要である。
しかしながら、蚊取線香の燃焼温度は最高約800℃に達することから殺虫成分が熱分解を起し易く、殺虫成分を効率良く揮散することは大変困難であり、混合した殺虫成分を有効利用することができないのが実情である。
【0004】
一般に蚊取線香の殺虫成分、例えばアレスリンの揮散率は約30〜36%(日本農芸化学会誌42683(1968))、又は約53〜65%(防虫化学誌4122(1976))と報告されており、殺虫成分の多くが無駄になっている。
【0005】
このようなことから、殺虫成分の揮散率を向上した蚊取線香が種々提案されている。
例えば特公昭35−2299号公報、特公昭46−28119号公報に示すように殺虫成分を蚊取線香の表面に添着し揮散し易くしたもの。
特開昭49−446号公報、特開昭49−1730号公報に示すようにマイクロカプセル化した殺虫成分を蚊取線香中に配合し、殺虫成分自身の安定化を計って揮散させたもの。
特開昭48−72336号公報、特開昭51−118836号公報、特公昭58−26721号公報に示すように燃焼基剤に鉱物質微粉末等を配合し燃焼温度を下げて揮散率を向上したもの。
実公昭33−3600号公報、実公昭49−28210号公報、特開昭51−19134号公報に示すように蚊取線香を菱形にする、蚊取線香に無数の小孔を設ける、蚊取線香の表面に凹凸を形成すること等により揮散表面積を大きくすることで揮散し易くしたもの。
【0006】
しかしこれらの蚊取線香は製造方法が繁雑になったり、価格が高くなったり、立ち消え、折れ易い、経時分解等品質上の問題がある。
又、揮散率についても特公昭35−2299号に示すものは約8%が約18%、特開昭48−72336号に示すものは約19%が約25%、特開昭51−118836号に示すものは約18〜26%が約26〜30%、特開昭51−19134号に示すものは約10〜14%が約40〜50%、特公昭58−26721号に示すものは約19%が約23〜28%に向上するだけであり、これらの蚊取線香ではまだ50%以上の殺虫成分が無駄になっていることからも、今だ実用化に至っていないのが実情である。
【0007】
そこで、本発明は前述の課題を解決できるようにした蚊取線香を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の従来の蚊取線香により得た事実を見極め殺虫成分の揮散率を向上するためには殺虫成分の熱分解を小さくすること、殺虫成分が熱分解を受けずに蚊取線香中から揮散することが重要である点に着目して蚊取線香の大きさ、燃焼速度等さまざまな基本的なところから検討したところ、断面積、燃焼速度を変えることで殺虫成分の揮散率が変化することを見い出した。
【0009】
最近、線香の原料が不足し、そのため価格が上昇し、しかもその供給が外国からの輸入にたよらざるを得ないのが現状である。
更に近年、森林の伐採による自然破壊及び資源の節約が高まる中で、その使用は最少必要量に留めることが望まれている。
また、蚊取線香の製造は一般に練り込み方法又は塗布方法で行われ、現在はその殆んどが練り込み方法で製造されている。
この各方法で製造された線香について、殺虫成分の揮散率は一般に塗布線香が10〜15%高いことも既知の通りである。
しかし、この方法は塗布、溶媒回収等の余分な工程、又吸収量による選別、そのロス等の問題が多く、その結果揮散率が悪くても練り込み方法が採用されているのが実情である。
また、蚊取線香の燃焼原料は多くあるがその中で素灰を使用すると殺虫成分の揮散率は一般に低下すると言われている。
その原因は定かでないが原料の成分吸着能、燃焼温度等が考えられる。しかし、素灰は煙が出ないので、使用し易く、その結果揮散率が悪くても燃料基剤として採用されているのが実情である。
【0010】
これらの点を鑑み、解決するべく鋭意研究した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明の蚊取線香は、殺虫成分としてピナミンフォルテを用い、燃焼基剤として除虫菊抽出粕粉、茶粉、ココナッツ粉等の植物乾燥粉末20〜60重量%、木粉10〜30重量%を含有し、糊剤、色素を含有した所定形状で
断面積が7.0mm2〜16.0mm2で、燃焼速度が断面積に応じて20分/10cm〜40分/10cmの範囲であることを特徴とする蚊取線香である。
この蚊取線香によれば、殺虫成分の揮散率が約70%以上とすることができる。
【0011】
本発明の蚊取線香としては、除虫菊抽出粕粉約20〜50重量%、木粉10〜30重量%を燃焼基剤、椨粉20〜30重量%を糊剤、殺虫成分としてピナミンフォルテを0.3重量%として、また各種燃焼速度を素灰5〜30重量%、α−スターチ1〜10重量%、助燃剤0.5〜5重量%を使用し、その他マラカイトグリーン、乳化剤等を加え、混合し、約等量の温水を加えて練り、これを押出機にかけ、断面積7.0mm2で燃焼速度が30分/10cmとしたものであり、この蚊取線香によれば揮散率が83.5%となった。
【0012】
【実 施 例】
次に本発明の実施例を説明するが、この実施例に限るものではない。
試験例1(線香の大きさ:各種断面積による有効成分の揮散率)
除虫菊抽出粕粉約40重量%、木粉約20重量%、茶粉約20重量%を燃焼基剤、椨粉約20重量%を糊剤、殺虫成分としてピナミンフォルテを0.3重量%その他マラカイトグリーン、乳化剤等を加え混合し、約等量の温水を加えて、練り、これを押出機にかけ、各種の大きさ断面積Xの棒状を押し出し、一定の長さに切り風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。
この蚊取線香について、殺虫成分の揮散率を測定したところ下記表1の結果を得た。
なお、殺虫成分の揮散率は蚊取線香を燻煙し、気化した有効成分を吸着剤(シリカゲル)で吸着し、吸着された有効成分量をガスクロマトグラフィーで定量して測定した。
【0013】
【表1】
【0014】
表1の考察
市販の蚊取線香の大きさは断面積約20〜25mm2 であり、それを基準に考えると、その大きさより小さくなるに従い揮散率が上昇する傾向を示した。
断面積7mm2 付近で最も高い揮散率を示した。またその大きさを中心として、断面積が小さくなるに従い又、断面積が大きくなるに従い揮散率の低下する傾向を示した。
結果として、現行品より高い揮散率を示すその大きさは断面積20mm2 以下〜0.5mm2 以上の範囲であり、好ましくは断面積0.75mm2 〜18mm2 更に実用性を考えると断面積1.0mm2 〜16.0mm2 の範囲が好ましい。
【0015】
試験例2(各種断面積について燃焼速度の違いによる有効成分の揮散率)
除虫菊抽出粕粉約20〜50重量%、木粉10〜30重量%を燃焼基剤、椨粉20〜30重量%を糊剤、殺虫成分としてピナミンフォルテを0.3重量%として、また各種燃焼速度を素灰5〜30重量%、α−スターチ1〜10重量%、助燃剤0.5〜5重量%を使用し、その他マラカイトグリーン、乳化剤等を加え、混合し、約等量の温水を加えて練り、これを押出機にかけ、各種燃焼速度X分/10cmの各種大きさの棒状体を押し出し、一定の長さに切り、風乾にて乾燥したものを蚊取線香とした。
この蚊取線香について殺虫成分の揮散率を測定したところ下記表2の結果を得た。
【0016】
【表2】
【0017】
表2の考察
市販の蚊取線香の燃焼速度は約50〜60分/10cmであり、その速度を遅らすと立ち消えの問題を生じ、その速度を早めると極端に揮散率が低くなる。
蚊取線香の各大きさによる燃焼速度と揮散率の関係を見ると断面積1.0、3.0、7.0、13.0、16.0mm2 について、その燃焼速度が20分、25分、30分、35分、40分/10cmで最高の揮散率を示した。
また、その燃焼速度が各断面積の最高速度に対して±10分/10cm以内の範囲で現行品より高い揮散率を示した。
【0018】
試験例3(製造方法の違いによる有効成分の揮散率)
ピナミンフォルテ0.3%の各種大きさの蚊取線香を木粉約20重量%、除虫菊抽出粕粉約35重量%、ココナツ粉約20重量%を燃焼基剤、椨粉約25重量%を糊剤、その他適量の色素、防腐剤等を使用し、公知の練り込み方法及び塗布方法の二つの異なる製造方法で蚊取線香を得た。
この蚊取線香について殺虫成分の揮散率を測定したところ下記表3の結果を得た。
【0019】
【表3】
【0020】
表3の考察
現行蚊取線香が製造方法の違いによって10%以上の揮散率の相違を示すに比べ、本発明品はその差が約5%以下と非常に小さくなり、又、練り込み線香でも塗布線香より高い揮散率を示した。
【0021】
試験例4(殺虫成分の効き目について)
ピナミンフォルテ0.3重量%、除虫菊抽出粕粉、木粉、椨粉、マラカイトグリーン等の線香基剤99.7重量%を公知の練り込み方法によって、大きさが断面積7mm2 、13mm2 及び現行寸法の蚊取線香を製造した。
この蚊取線香について、ガラスシリンダー法にてアカイエカを入れたシリンダーに所定時間シリンダーの底部で蚊取線香を殺虫成分が同じ揮散量となる長さを燻煙し、その時のノックダウン率及び致死率を観察したところ下記表4の結果を得た。
【0022】
【表4】
【0023】
表4の考察
本発明の各蚊取線香は現行の大きさの場合に比べ、ノックダウン率、致死率ともに向上した。
【0024】
試験例5(燃焼基剤の種類による揮散率)
ピナミンフォルテ0.3重量%、素灰20〜60重量%を木粉、椨粉、α−スターチ、マラカイトグリーン等の線香基剤で100重量%とし、公知の練り込み方法によって、大きさが断面積10mm2 及び現行寸法の蚊取線香を製造し、殺虫成分の揮散率を測定した。
【0025】
その結果、現行の大きさの蚊取線香は素灰を使用した場合通常の燃焼基剤に比べ、10%以上のダウンで48±5%の揮散率を示した。この場合素灰が増えると揮散率が低くなる傾向であった。
これに比べ、本発明の蚊取線香は素灰を使用した場合10%以下のダウンに留まり、現行の大きさの蚊取線香よりも高い70±3%の揮散率を示した。また素灰が増えると同様に揮散率が低くなる傾向であった。
【0026】
実施例1
エトック0.1重量%を除虫菊抽出粕粉、素灰、椨粉、マラカイトグリーン等の蚊取基剤99.9重量%と公知の練り込み方法によって大きさ断面積7mm2 の蚊取線香を製造した。この一巻(60cm)を吊り下げ式線香皿に入れ腰に下げて約4時間庭の手入れを行ったが、蚊にさされることはなかった。
【0027】
実施例2
実施例1の蚊取線香及び比較として、市販の蚊取線香を使用し、4.5畳の部屋で燻煙し、におい、刺激等の官能評価を5名ので比較した。その結果明らかに有意差があり、実施例1の蚊取線香はにおい、刺激が非常に少なかった。
【0028】
実施例3
実施例1の蚊取線香及び比較として、市販の蚊取線香を1シーズンの使用量を想定した約50枚と線香皿で使用し、そのヤニ等の付着物量、汚れを観察した。その結果、明らかに有意差があり、実施例1の蚊取線香が1/5以下の付着物量で汚れも非常に少なかった。
【0029】
実施例4
ピナミンフォルテ0.45重量%を除虫菊抽出粕粉、木粉、椨粉、α−スターチ、マラカイトグリーン等の線香基剤99.7重量%と公知の練り込み方法によって大きさ断面7mm2 の蚊取線香7.6gを製造した。本発明品は現行品に比べ殺虫成分が約12%、及び燃焼原料が約42%少ない使用量で製造したものでこの一巻を6畳の部屋で燻煙時間約6時間半にかけて使用した。その間、蚊にさされることはなかった。
【0030】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、殺虫成分としてピナミンフォルテを用い、燃焼基剤として植物乾燥粉末20〜60重量%、木粉10〜30重量%を含有し、7.0mm2〜16.0mm2の範囲の断面積とすると共に、その断面積に応じて燃焼速度を20分/10cm〜40分/10cmの範囲内の燃焼速度とすることで、殺虫成分の揮散率が約70%以上とすることができる。
したがって、殺虫成分の揮散率が約70%以上の蚊取線香となり、殺虫成分を有効的に揮散して十分な殺虫効果が得られる。
また製造方法の種類に関係なく高い揮散率の蚊取線香を得ることができる。
また燃料原料の種類に関係なく高い揮散率の蚊取線香を得ることができる。
更に蚊取線香が細小となり、少ない原料使用量で良いし、小型になると共に、コストダウンとなる。
また、市販の蚊取線香に比べて燻燃した際のにおい、刺激が非常に少ないし、ヤニ等の付着物量、汚れも非常に少なくなる。
Claims (1)
- 殺虫成分と燃焼基剤と糊剤と色素を含有し、所定形状の蚊取線香であって、
前記殺虫成分はピナミンフォルテで、
前記燃焼基剤として植物乾燥粉末20〜60重量%、木粉10〜30重量%を含有し、
断面積が7.0mm2〜16.0mm2で、燃焼速度が断面積に応じて20分/10cm〜40分/10cmの範囲であることを特徴とする蚊取線香。
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