JP3552794B2 - 低損失酸化物磁性材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、低損失酸化物磁性材料の製造方法に関し、特に、スイッチング電源等の各種電源用トランス材として使用されるMn−Zn系フェライトの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種電子機器の小型化、軽量化に伴い、スイッチング電源の小型化が図られ、これに伴いトランス材に使用されるMn−Zn系フェライトの高性能化も著しく進んでいる。又、同時に安価な製品を供給するための低コスト化の検討も盛んに進められている。
【0003】
一般に、フェライトは、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛の各粉末原料をアトライターあるいはボールミル等で混合した後、ロータリーキルン、トンネル炉等で仮焼し、得られた仮焼粉をアトライター、パールミル、ボールミル等で解砕し、その後、スプレードライヤー等で乾燥、造粒して得られた粉末を成形、焼成をして得られる。
【0004】
そして、このフェライトの特性は、含有する不純物組成に大きく依存する。中でも、P2O5を多量に含有する場合、特に顕著な異常粒成長を引き起こし、その結果、磁気特性が著しく劣化する。又、Cr2O3,PbO,CuO等に関しても、多量に含有していると、フェライトの高性能化は困難となる。このため、フェライトの高性能化を図るためには、使用する各種酸化物原料は高純度の原料が使用されることが多く、特に、酸化鉄原料は、フェライト全体の約7割を重量比で占めることから、高純度の原料を使用するのが一般的である。
【0005】
しかし、一般に市販されている安価な酸化鉄原料には、SiO2,CaO,P2O5,Cr2O3,PbO,CuO等の不純物が多量に含有しているため、従来は、これらの安価な酸化鉄原料を使用して高性能のMn−Zn系フェライトを製造することはできなかった。このため、高性能のMn−Zn系フェライトの製造においては、高純度で高価格の酸化鉄原料を使用せざるを得ない状況にあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、これらの欠点を解決し、不純物含有量の多い安価な酸化鉄原料を使用しても、高性能で、かつ低コストの低損失酸化物磁性材料の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、不純物として五酸化リン(P2O5)を0.01〜0.1wt%含有する酸化鉄原料粉末を使用し、スピネル型Mn−Zn系フェライトを製造する方法において、主成分として、52〜54mol%の酸化第二鉄(Fe2O3)、33〜37mol%の酸化マンガン(MnO)及び残部の酸化亜鉛(ZnO)からなり、副成分として、0.005〜0.025wt%の酸化珪素(SiO2)及び0.020〜0.085wt%の酸化カルシウム(CaO)を含有する基本組成に、更に副成分として、ジルコン酸カリウム(K2ZrO3)を0〜0.12wt%(0を含まず)含有させることを特徴とする低損失酸化物磁性材料の製造方法である。
【0008】
又、本発明は、不純物として五酸化リン(P2O5)を0.01〜0.1wt%含有する酸化鉄原料粉末を使用し、スピネル型Mn−Zn系フェライトを製造する方法において、主成分として52〜54mol%の酸化第二鉄(Fe2O3)、33〜37mol%の酸化マンガン(MnO)及び残部酸化亜鉛(ZnO)からなり、副成分として、0.005〜0.025wt%の酸化珪素(SiO2)及び0.020〜0.085wt%の酸化カルシウム(CaO)を含有する基本組成に、更に副成分として、バナジン酸カリウム(KVO3)を0〜0.08wt%(0を含まず)含有させることを特徴とする低損失酸化物磁性材料の製造方法である。
【0009】
又、本発明は、不純物として五酸化リン(P2O5)を0.01〜0.1wt%含有する酸化鉄原料粉末を使用し、スピネル型Mn−Zn系フェライトを製造する方法において、主成分として52〜54mol%の酸化第二鉄(Fe2O3)、33〜37mol%の酸化マンガン(MnO)及び残部の酸化亜鉛(ZnO)からなり、副成分として、0.005〜0.025wt%の酸化珪素(SiO2)及び0.020〜0.085wt%の酸化カルシウム(CaO)を含有する基本組成に、更に副成分として、ジルコン酸カリウム(K2ZrO3)とバナジン酸カリウム(KVO3)を総量で0〜0.1wt%(0を含まず)含有させることを特徴とする低損失酸化物磁性材料の製造方法である。
【0010】
【作用】
副成分のSiO2,CaOは、結晶粒界の粒界相形成に不可欠であり、電気抵抗を高め、渦電流損失を低減せしめる効果を有するが、その量と種類を適度に選択して、その効果を最大限利用することが不可欠である。この条件に対して、P2O5を多量に含有する酸化鉄原料を使用した場合、P2O5はCaOと反応して、複合酸化物を形成して組織中の三重点に遍在する。このため、粒界相中のCaO量が激減することにより、粒界相の形成度の低下、そして、電気抵抗の低下によって、渦電流損失の著しい増大を招く。又、P2O5が存在することによって、焼結体組織中に異常粒成長が発生する等、組織不整が生じ、ヒステリシス損失が著しく劣化する。以上のことより、P2O5を多量に含有する酸化物原料を使用して高性能のフェライトを製造することは、非常に困難であった。
【0011】
本発明者らは、K2Oを添加することで、上述した酸化鉄中のP2O5の悪影響を除外できることを見い出した。即ち、本発明者らは、K2O,KCl,K2CO3等によるK2O添加でも、P2O5含有に伴うフェライトへの悪影響を除外できることを確認したが、焼成過程において、蒸発、揮散してしまう等の問題を生じ、安定した特性及び品質の確保が困難であるとの知見を得た。
【0012】
本発明において、カリウム複合酸化物であるK2ZrO3及びKVO3を用いたのは、上述した問題点を解決できる上、粒成長挙動の制御が極めて容易となり、異常粒成長等の組織不整のない結晶粒径の均一な組織が得られるため、ヒステリシス損失の低減が可能となり、更に、K2ZrO3及びKVO3中に含有されるZrO2とV2O5の効果により、粒界相の形成度も向上し、渦電流損失の改善が容易となるためである。このため、P2O5を多量に含有した酸化鉄原料を使用した場合においても、これまで達成できなかった高性能の特性を得ることができるものである。
【0013】
通常、電源用トランス材は、60〜100℃程度の環境下で使用されるが、この温度範囲における損失は負の温度特性を持つことが要求される。この損失の温度特性は、主成分であるFe2O3及びMnOの組成に強く依存するが、本発明におけるFe2O3=52〜54mol%、MnO=33〜37mol%の組成範囲においては、上述した特性条件を満足し、かつ、低損失のMn−Zn系フェライトが得られる。
【0014】
更に、SiO2を0.005〜0.025wt%、CaOを0.020〜0.085wt%としたのは、下限値以下では、粒界相がほとんど形成されず、渦電流損失が著しく増大するためであり、又、上限値を越えた領域においては、焼結体の組織制御が困難となり、損失が大きくなって、好ましくないためである。
【0015】
カリウム複合酸化物であるK2ZrO3を0〜0.12wt%(0を含まず)、KVO3を0〜0.08wt%(0を含まず)とした理由は、各添加物共に上限値を越えて添加した場合には、粒成長の制御が困難となり、渦電流損失及びヒステリシス損失が共に増大するためである。又、K2ZrO3とKVO3を複合添加した場合の総量を0〜0.1wt%(0を含まず)とした理由は、0.1wt%を越えた領域では、上述の単独添加の場合と同じく、粒成長の制御が困難であり、低損失化が図れないためである。
【0016】
酸化鉄原料に含有されるP2O5量を0.01〜0.1wt%としたのは、0.01wt%以下の原料は、他の元素の不純物含有量も少ないため、フェライトの高性能化に適してはいるが、一般的に高価格であり、低価格原料を使用するという本発明の目的にそぐわないためである。又、0.1wt%を越えた領域では、組織制御が困難となり、低損失化が図れず、又、低損失化のためには、焼成条件の複雑化を招く等、弊害があるためである。
【0017】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0018】
(実施例1)
市販されている酸化鉄原料で、P2O5の含有量が0.012,0.022,0.030,0.035,0.051,0.081,0.097,0.12(wt%)の原料を使用して、52.8Fe2O3−36.0MnO−11.2ZnO(mol%)となるよう、Mn3O4及びZnOの原料粉末と共にボールミルで混合し、得られた各混合粉末を950℃の大気中で2時間仮焼した。
【0019】
次に、これら各仮焼粉末に対して、SiO2を0.016wt%、CaOを0.05wt%添加し、更に、K2ZrO3を0〜0.14wt%の範囲で添加した後、ボールミルにて更に微粉砕(解砕)を行った。更に、ポリビニルアルコール(PVA)をバインダーとして0.5wt%添加し、スプレードライヤーで乾燥、造粒した。
【0020】
得られた造粒粉末をφ30×φ20×t10(mm)のトロイダル形状に加圧成形した後、焼成温度1200〜1400℃の窒素と酸素の混合気流中で、酸素分圧:PO2=0.5〜10%で焼成した。そして、この焼成したトロイダルを測定試料としてコアロス(PCV)特性を測定した。なお、コアロス(PCV)特性の測定条件は、100KHz−2000G−100℃である。
【0021】
図1に、K2ZrO3の含有量をパラメータとして、Fe2O3原料中のP2O5含有量とコアロス(PCV)との関係を示す。図1より、P2O5含有量が0.01〜0.1wt%のFe2O3原料を使用した場合には、0.12wt%以下の範囲でK2ZrO3を添加することにより、コアロス(PCV)特性が改善されることがわかる。
【0022】
(実施例2)
実施例1のP2O5を0.035wt%含有する酸化鉄原料を使用して得られた仮焼粉末に、CaOを0.05wt%、KVO3を0.04wt%添加し、そして、SiO2を0.003〜0.028wt%の範囲で含有させた試料を実施例1と同一の製造方法により作製し、測定試料とした。又、実施例1と同一測定条件でコアロス(PCV)特性を測定した。
【0023】
図2に、SiO2含有量を変化させた時のコアロス(PCV)特性を示す。図2より、SiO2含有量が0.005〜0.025wt%の範囲で優れたコアロス(PCV)特性を示すことがわかる。
【0024】
(実施例3)
実施例2で使用した仮焼粉末に、SiO2を0.016wt%、KVO3を0.04wt%添加し、CaOを0.008〜0.10wt%の範囲で含有させた試料を、実施例2と同一の製造方法により作製し、又、同一の測定条件でコアロス(PCV)特性を測定した。
【0025】
図3に、CaO含有量を変化させた時のコアロス(PCV)特性を示す。図3より、CaO含有量が0.020〜0.085wt%の範囲で優れたコアロス(PCV)特性を示すことがわかる。
【0026】
(実施例4)
実施例2で使用した仮焼粉末に、SiO2を0.016wt%、CaOを0.05wt%添加し、更に、K2ZrO3を0〜0.14wt%、KVO3を0〜0.10wt%の範囲で各々添加した試料を、実施例2と同一の製造方法により作製し、又、同一の測定条件でコアロス(PCV)特性を測定した。
【0027】
図4に、K2ZrO3及びKVO3含有量とコアロス(PCV)特性の関係を示す。図4より、K2ZrO3では0.12wt%以下、KVO3では0.08Wt%以下の範囲で含有するように、K2ZrO3及びKVO3を添加することにより、優れたコアロス(PCV)特性を示すことがわかる。
【0028】
(実施例5)
実施例2で使用した仮焼粉末に、SiO2を0.012wt%、CaOを0.055wt%添加し、更に、K2ZrO3を0〜0.10wt%、KVO3を0〜0.10wt%の範囲で添加した試料を、実施例2と同一の製造方法により作製し、又、同一の測定条件でコアロス(PCV)特性を測定した。表1に、K2ZrO3及びKVO3含有量を変化させた時のコアロス(PCV)特性との関係を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1より、K2ZrO3とKVO3の総含有量が0.1wt%以下では、優れたコアロス(PCV)特性を示すことがわかる。
【0031】
【発明の効果】
以上、述べたように、P2O5を多量に含有する安価な酸化鉄原料を使用してMn−Zn系フェライトを製造する場合において、カリウム複合酸化物であるK2ZrO3とKVO3を所定の範囲で添加、含有せしめることにより、優れたコアロス(PCV)特性を有するMn−Zn系フェライトを得ることができる。即ち、本発明によれば、通常の粉末冶金法でも、従来では、ほとんど使用されなかった安価な酸化鉄原料を使用することが可能となり、大幅なコスト削減が図れるので、工業的にも極めて有益な低損失酸化物磁性材料の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるK2ZrO3 含有量をパラメータとした時のFe2O3原料中のP2O5含有量とコアロス(PCV)との関係を示す図。
【図2】実施例2におけるMn−Zn系フェライトコアのSiO2含有量とコアロス(PCV)との関係を示す図。
【図3】実施例3におけるMn−Zn系フェライトコアのCaO含有量とコアロス(PCV)との関係を示す図。
【図4】実施例4におけるMn−Zn系フェライトコアのK2ZrO3及びKVO3の各含有量とコアロス(PCV)との関係を示す図。
【符号の説明】
1 K2ZrO3含有量が0.14wt%の曲線
2 K2ZrO3含有量が0wt%(無添加)の曲線
3 K2ZrO3含有量が0.12wt%の曲線
4 K2ZrO3含有量が0.10wt%の曲線
5 K2ZrO3含有量が0.02wt%の曲線
6 K2ZrO3含有量が0.04wt%の曲線
7 K2ZrO3含有量が0.07wt%の曲線
8 K2ZrO3含有量を示す曲線
9 KVO3 含有量を示す曲線
【産業上の利用分野】
本発明は、低損失酸化物磁性材料の製造方法に関し、特に、スイッチング電源等の各種電源用トランス材として使用されるMn−Zn系フェライトの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種電子機器の小型化、軽量化に伴い、スイッチング電源の小型化が図られ、これに伴いトランス材に使用されるMn−Zn系フェライトの高性能化も著しく進んでいる。又、同時に安価な製品を供給するための低コスト化の検討も盛んに進められている。
【0003】
一般に、フェライトは、酸化鉄、酸化マンガン、酸化亜鉛の各粉末原料をアトライターあるいはボールミル等で混合した後、ロータリーキルン、トンネル炉等で仮焼し、得られた仮焼粉をアトライター、パールミル、ボールミル等で解砕し、その後、スプレードライヤー等で乾燥、造粒して得られた粉末を成形、焼成をして得られる。
【0004】
そして、このフェライトの特性は、含有する不純物組成に大きく依存する。中でも、P2O5を多量に含有する場合、特に顕著な異常粒成長を引き起こし、その結果、磁気特性が著しく劣化する。又、Cr2O3,PbO,CuO等に関しても、多量に含有していると、フェライトの高性能化は困難となる。このため、フェライトの高性能化を図るためには、使用する各種酸化物原料は高純度の原料が使用されることが多く、特に、酸化鉄原料は、フェライト全体の約7割を重量比で占めることから、高純度の原料を使用するのが一般的である。
【0005】
しかし、一般に市販されている安価な酸化鉄原料には、SiO2,CaO,P2O5,Cr2O3,PbO,CuO等の不純物が多量に含有しているため、従来は、これらの安価な酸化鉄原料を使用して高性能のMn−Zn系フェライトを製造することはできなかった。このため、高性能のMn−Zn系フェライトの製造においては、高純度で高価格の酸化鉄原料を使用せざるを得ない状況にあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、これらの欠点を解決し、不純物含有量の多い安価な酸化鉄原料を使用しても、高性能で、かつ低コストの低損失酸化物磁性材料の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、不純物として五酸化リン(P2O5)を0.01〜0.1wt%含有する酸化鉄原料粉末を使用し、スピネル型Mn−Zn系フェライトを製造する方法において、主成分として、52〜54mol%の酸化第二鉄(Fe2O3)、33〜37mol%の酸化マンガン(MnO)及び残部の酸化亜鉛(ZnO)からなり、副成分として、0.005〜0.025wt%の酸化珪素(SiO2)及び0.020〜0.085wt%の酸化カルシウム(CaO)を含有する基本組成に、更に副成分として、ジルコン酸カリウム(K2ZrO3)を0〜0.12wt%(0を含まず)含有させることを特徴とする低損失酸化物磁性材料の製造方法である。
【0008】
又、本発明は、不純物として五酸化リン(P2O5)を0.01〜0.1wt%含有する酸化鉄原料粉末を使用し、スピネル型Mn−Zn系フェライトを製造する方法において、主成分として52〜54mol%の酸化第二鉄(Fe2O3)、33〜37mol%の酸化マンガン(MnO)及び残部酸化亜鉛(ZnO)からなり、副成分として、0.005〜0.025wt%の酸化珪素(SiO2)及び0.020〜0.085wt%の酸化カルシウム(CaO)を含有する基本組成に、更に副成分として、バナジン酸カリウム(KVO3)を0〜0.08wt%(0を含まず)含有させることを特徴とする低損失酸化物磁性材料の製造方法である。
【0009】
又、本発明は、不純物として五酸化リン(P2O5)を0.01〜0.1wt%含有する酸化鉄原料粉末を使用し、スピネル型Mn−Zn系フェライトを製造する方法において、主成分として52〜54mol%の酸化第二鉄(Fe2O3)、33〜37mol%の酸化マンガン(MnO)及び残部の酸化亜鉛(ZnO)からなり、副成分として、0.005〜0.025wt%の酸化珪素(SiO2)及び0.020〜0.085wt%の酸化カルシウム(CaO)を含有する基本組成に、更に副成分として、ジルコン酸カリウム(K2ZrO3)とバナジン酸カリウム(KVO3)を総量で0〜0.1wt%(0を含まず)含有させることを特徴とする低損失酸化物磁性材料の製造方法である。
【0010】
【作用】
副成分のSiO2,CaOは、結晶粒界の粒界相形成に不可欠であり、電気抵抗を高め、渦電流損失を低減せしめる効果を有するが、その量と種類を適度に選択して、その効果を最大限利用することが不可欠である。この条件に対して、P2O5を多量に含有する酸化鉄原料を使用した場合、P2O5はCaOと反応して、複合酸化物を形成して組織中の三重点に遍在する。このため、粒界相中のCaO量が激減することにより、粒界相の形成度の低下、そして、電気抵抗の低下によって、渦電流損失の著しい増大を招く。又、P2O5が存在することによって、焼結体組織中に異常粒成長が発生する等、組織不整が生じ、ヒステリシス損失が著しく劣化する。以上のことより、P2O5を多量に含有する酸化物原料を使用して高性能のフェライトを製造することは、非常に困難であった。
【0011】
本発明者らは、K2Oを添加することで、上述した酸化鉄中のP2O5の悪影響を除外できることを見い出した。即ち、本発明者らは、K2O,KCl,K2CO3等によるK2O添加でも、P2O5含有に伴うフェライトへの悪影響を除外できることを確認したが、焼成過程において、蒸発、揮散してしまう等の問題を生じ、安定した特性及び品質の確保が困難であるとの知見を得た。
【0012】
本発明において、カリウム複合酸化物であるK2ZrO3及びKVO3を用いたのは、上述した問題点を解決できる上、粒成長挙動の制御が極めて容易となり、異常粒成長等の組織不整のない結晶粒径の均一な組織が得られるため、ヒステリシス損失の低減が可能となり、更に、K2ZrO3及びKVO3中に含有されるZrO2とV2O5の効果により、粒界相の形成度も向上し、渦電流損失の改善が容易となるためである。このため、P2O5を多量に含有した酸化鉄原料を使用した場合においても、これまで達成できなかった高性能の特性を得ることができるものである。
【0013】
通常、電源用トランス材は、60〜100℃程度の環境下で使用されるが、この温度範囲における損失は負の温度特性を持つことが要求される。この損失の温度特性は、主成分であるFe2O3及びMnOの組成に強く依存するが、本発明におけるFe2O3=52〜54mol%、MnO=33〜37mol%の組成範囲においては、上述した特性条件を満足し、かつ、低損失のMn−Zn系フェライトが得られる。
【0014】
更に、SiO2を0.005〜0.025wt%、CaOを0.020〜0.085wt%としたのは、下限値以下では、粒界相がほとんど形成されず、渦電流損失が著しく増大するためであり、又、上限値を越えた領域においては、焼結体の組織制御が困難となり、損失が大きくなって、好ましくないためである。
【0015】
カリウム複合酸化物であるK2ZrO3を0〜0.12wt%(0を含まず)、KVO3を0〜0.08wt%(0を含まず)とした理由は、各添加物共に上限値を越えて添加した場合には、粒成長の制御が困難となり、渦電流損失及びヒステリシス損失が共に増大するためである。又、K2ZrO3とKVO3を複合添加した場合の総量を0〜0.1wt%(0を含まず)とした理由は、0.1wt%を越えた領域では、上述の単独添加の場合と同じく、粒成長の制御が困難であり、低損失化が図れないためである。
【0016】
酸化鉄原料に含有されるP2O5量を0.01〜0.1wt%としたのは、0.01wt%以下の原料は、他の元素の不純物含有量も少ないため、フェライトの高性能化に適してはいるが、一般的に高価格であり、低価格原料を使用するという本発明の目的にそぐわないためである。又、0.1wt%を越えた領域では、組織制御が困難となり、低損失化が図れず、又、低損失化のためには、焼成条件の複雑化を招く等、弊害があるためである。
【0017】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0018】
(実施例1)
市販されている酸化鉄原料で、P2O5の含有量が0.012,0.022,0.030,0.035,0.051,0.081,0.097,0.12(wt%)の原料を使用して、52.8Fe2O3−36.0MnO−11.2ZnO(mol%)となるよう、Mn3O4及びZnOの原料粉末と共にボールミルで混合し、得られた各混合粉末を950℃の大気中で2時間仮焼した。
【0019】
次に、これら各仮焼粉末に対して、SiO2を0.016wt%、CaOを0.05wt%添加し、更に、K2ZrO3を0〜0.14wt%の範囲で添加した後、ボールミルにて更に微粉砕(解砕)を行った。更に、ポリビニルアルコール(PVA)をバインダーとして0.5wt%添加し、スプレードライヤーで乾燥、造粒した。
【0020】
得られた造粒粉末をφ30×φ20×t10(mm)のトロイダル形状に加圧成形した後、焼成温度1200〜1400℃の窒素と酸素の混合気流中で、酸素分圧:PO2=0.5〜10%で焼成した。そして、この焼成したトロイダルを測定試料としてコアロス(PCV)特性を測定した。なお、コアロス(PCV)特性の測定条件は、100KHz−2000G−100℃である。
【0021】
図1に、K2ZrO3の含有量をパラメータとして、Fe2O3原料中のP2O5含有量とコアロス(PCV)との関係を示す。図1より、P2O5含有量が0.01〜0.1wt%のFe2O3原料を使用した場合には、0.12wt%以下の範囲でK2ZrO3を添加することにより、コアロス(PCV)特性が改善されることがわかる。
【0022】
(実施例2)
実施例1のP2O5を0.035wt%含有する酸化鉄原料を使用して得られた仮焼粉末に、CaOを0.05wt%、KVO3を0.04wt%添加し、そして、SiO2を0.003〜0.028wt%の範囲で含有させた試料を実施例1と同一の製造方法により作製し、測定試料とした。又、実施例1と同一測定条件でコアロス(PCV)特性を測定した。
【0023】
図2に、SiO2含有量を変化させた時のコアロス(PCV)特性を示す。図2より、SiO2含有量が0.005〜0.025wt%の範囲で優れたコアロス(PCV)特性を示すことがわかる。
【0024】
(実施例3)
実施例2で使用した仮焼粉末に、SiO2を0.016wt%、KVO3を0.04wt%添加し、CaOを0.008〜0.10wt%の範囲で含有させた試料を、実施例2と同一の製造方法により作製し、又、同一の測定条件でコアロス(PCV)特性を測定した。
【0025】
図3に、CaO含有量を変化させた時のコアロス(PCV)特性を示す。図3より、CaO含有量が0.020〜0.085wt%の範囲で優れたコアロス(PCV)特性を示すことがわかる。
【0026】
(実施例4)
実施例2で使用した仮焼粉末に、SiO2を0.016wt%、CaOを0.05wt%添加し、更に、K2ZrO3を0〜0.14wt%、KVO3を0〜0.10wt%の範囲で各々添加した試料を、実施例2と同一の製造方法により作製し、又、同一の測定条件でコアロス(PCV)特性を測定した。
【0027】
図4に、K2ZrO3及びKVO3含有量とコアロス(PCV)特性の関係を示す。図4より、K2ZrO3では0.12wt%以下、KVO3では0.08Wt%以下の範囲で含有するように、K2ZrO3及びKVO3を添加することにより、優れたコアロス(PCV)特性を示すことがわかる。
【0028】
(実施例5)
実施例2で使用した仮焼粉末に、SiO2を0.012wt%、CaOを0.055wt%添加し、更に、K2ZrO3を0〜0.10wt%、KVO3を0〜0.10wt%の範囲で添加した試料を、実施例2と同一の製造方法により作製し、又、同一の測定条件でコアロス(PCV)特性を測定した。表1に、K2ZrO3及びKVO3含有量を変化させた時のコアロス(PCV)特性との関係を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1より、K2ZrO3とKVO3の総含有量が0.1wt%以下では、優れたコアロス(PCV)特性を示すことがわかる。
【0031】
【発明の効果】
以上、述べたように、P2O5を多量に含有する安価な酸化鉄原料を使用してMn−Zn系フェライトを製造する場合において、カリウム複合酸化物であるK2ZrO3とKVO3を所定の範囲で添加、含有せしめることにより、優れたコアロス(PCV)特性を有するMn−Zn系フェライトを得ることができる。即ち、本発明によれば、通常の粉末冶金法でも、従来では、ほとんど使用されなかった安価な酸化鉄原料を使用することが可能となり、大幅なコスト削減が図れるので、工業的にも極めて有益な低損失酸化物磁性材料の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるK2ZrO3 含有量をパラメータとした時のFe2O3原料中のP2O5含有量とコアロス(PCV)との関係を示す図。
【図2】実施例2におけるMn−Zn系フェライトコアのSiO2含有量とコアロス(PCV)との関係を示す図。
【図3】実施例3におけるMn−Zn系フェライトコアのCaO含有量とコアロス(PCV)との関係を示す図。
【図4】実施例4におけるMn−Zn系フェライトコアのK2ZrO3及びKVO3の各含有量とコアロス(PCV)との関係を示す図。
【符号の説明】
1 K2ZrO3含有量が0.14wt%の曲線
2 K2ZrO3含有量が0wt%(無添加)の曲線
3 K2ZrO3含有量が0.12wt%の曲線
4 K2ZrO3含有量が0.10wt%の曲線
5 K2ZrO3含有量が0.02wt%の曲線
6 K2ZrO3含有量が0.04wt%の曲線
7 K2ZrO3含有量が0.07wt%の曲線
8 K2ZrO3含有量を示す曲線
9 KVO3 含有量を示す曲線
Claims (3)
- 不純物として五酸化リン(P2O5)を0.01〜0.1wt%含有する酸化鉄原料粉末を使用し、スピネル型Mn−Zn系フェライトを製造する方法において、主成分として、52〜54mol%の酸化第二鉄(Fe2O3)、33〜37mol%の酸化マンガン(MnO)及び残部の酸化亜鉛(ZnO)からなり、副成分として、0.005〜0.025wt%の酸化珪素(SiO2)及び0.020〜0.085wt%の酸化カルシウム(CaO)を含有する基本組成に、更に副成分として、ジルコン酸カリウム(K2ZrO3)を0〜0.12wt%(0を含まず)含有させることを特徴とする低損失酸化物磁性材料の製造方法。
- 不純物として五酸化リン(P2O5)を0.01〜0.1wt%含有する酸化鉄原料粉末を使用し、スピネル型Mn−Zn系フェライトを製造する方法において、主成分として52〜54mol%の酸化第二鉄(Fe2O3)、33〜37mol%の酸化マンガン(MnO)及び残部の酸化亜鉛(ZnO)からなり、副成分として、0.005〜0.025wt%の酸化珪素(SiO2)及び0.020〜0.085wt%の酸化カルシウム(CaO)を含有する基本組成に、更に副成分として、バナジン酸カリウム(KVO3)を0〜0.08wt%(0を含まず)含有させることを特徴とする低損失酸化物磁性材料の製造方法。
- 不純物として五酸化リン(P2O5)を0.01〜0.1wt%含有する酸化鉄原料粉末を使用し、スピネル型Mn−Zn系フェライトを製造する方法において、主成分として52〜54mol%の酸化第二鉄(Fe2O3)、33〜37mol%の酸化マンガン(MnO)及び残部の酸化亜鉛(ZnO)からなり、副成分として、0.005〜0.025wt%の酸化珪素(SiO2)及び0.020〜0.085wt%の酸化カルシウム(CaO)を含有する基本組成に、更に副成分として、ジルコン酸カリウム(K2ZrO3)とバナジン酸カリウム(KVO3)を総量で0〜0.1wt%(0を含まず)含有させることを特徴とする低損失酸化物磁性材料の製造方法。
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