JP3551855B2 - 車両用制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両内の制御対象を制御する車両用制御装置に関し、特に、制御処理に用いるデータのうち、恒久的に更新して保存しておく必要がある特定のデータを、EEPROMやフラッシュROM等、電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性の書換可能ROMに保存するようにした車両用制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の車両用制御装置として、例えば特開平10−252546号公報及び特開平10−252547号公報や特開平4−336351号公報に記載されているように、車両に搭載されたバッテリから常時給電されるスタンバイRAM(バックアップRAMとも呼ばれる)を用いて、車両内の制御対象を制御するための制御処理を行うと共に、その制御処理により算出されるスタンバイRAM内のデータのうちで、学習値や車両の累積走行距離データなど、恒久的に更新して保存しておく必要がある特定のデータを、電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性の書換可能ROMにコピーして保存する保存処理を行い、更に、バッテリ外れ等によってスタンバイRAM内のデータが異常になっていることを検出した場合には、書換可能ROM内の上記特定のデータをスタンバイRAMへコピーして、その特定のデータを復元するようにしたものがある。
【0003】
そして、上記従来の車両用制御装置では、制御処理と並行して上記保存処理(スタンバイRAM内の特定のデータを書換可能ROMにコピーする処理)を行い、また、当該装置が動作を開始してから制御処理に先立ち最初に実行される処理にて、スタンバイRAM内のデータの良否をパリティチェックやミラーリング等の手法によってチェックし、スタンバイRAM内のデータが異常であると判定した場合には、書換可能ROM内の特定のデータをスタンバイRAMへコピーして、その後、スタンバイRAMを用いた制御処理を開始するようにしている。尚、ミラーリングとは、同じデータを記憶媒体の異なる領域に夫々記憶させておき、その各領域のデータが同じ値であれば、正常と判定するものである。
【0004】
このため、バッテリの電圧低下やバッテリ外れ等によってスタンバイRAM内のデータが破壊されたとしても、上記保存処理によって書換可能ROM内にバックアップされていた特定のデータ(バックアップデータ)がスタンバイRAMに転送されて、それまでの経緯を継承した制御処理を行うことができるようになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の車両用制御装置では、以下の問題がある。
まず、一般に、この種の装置において、書換可能ROMとしては、シリアルデータラインを介してデータの読み出し及び書き込みが行われるEEPROMが用いられるが、このような書換可能ROMは、RAMやデータの書き換えが不能な通常のROM(書換不能ROM)と比較すると、データの読み出し及び書き込みに時間がかかる。
【0006】
そして、上記従来の装置では、動作を開始してから制御処理に先立ち最初に実行される処理にて、書換可能ROM内のデータをスタンバイRAMへコピーし、その後、制御処理を開始するようにしている。
このため、上記従来の装置では、バッテリ外れ等によってスタンバイRAM内のデータが破壊された状態で動作を開始した場合に、制御処理が開始されるまでの遅れ時間が長くなってしまい、その結果、制御対象を作動させることができるようになるまでの時間が通常時よりも長くなってしまう。
【0007】
そこで、本発明者は、動作を開始してから制御処理に先立ち最初に実行される処理Aにて、スタンバイRAM内のデータが異常であると判定した場合には、とりあえず、通常の書換不能ROMからスタンバイRAMへ制御対象の制御に支障を来さない固定の初期値データを書き込んで該スタンバイRAM内のデータを正常化させる初期化だけを行い、その後、制御処理と並行して定期的に実行される処理Bにて、上記処理AによりスタンバイRAMの上記初期化が行われたか否かを判定し、その判定により肯定判定すると、書換可能ROM内の特定のデータをスタンバイRAMへコピーする、といったプログラム構成を考えた。
【0008】
つまり、スタンバイRAM内のデータが異常であった場合には、とりあえず、制御対象の制御に最低限必要な初期値データをスタンバイRAMに書き込んで制御処理を開始させ、その後で、書換可能ROM内の本来のバックアップデータをスタンバイRAMへコピーするようにし、これにより、動作を開始してから制御処理を開始するまでの遅れ時間及び制御対象を作動させることができるようになるまでの時間を最小限にするのである。
【0009】
しかしながら、本発明者は、上記構成を採ったとしても、更に以下の問題があることに気付いた。
即ち、書換可能ROM内にバックアップされているデータを確実にスタンバイRAMへコピーして制御処理に反映させるためには、上記処理Bにおいて、書換可能ROM内のデータをスタンバイRAMへコピーしようとする場合、まず、スタンバイRAMに供給されている電圧がデータの書き込みを正常に行うことが可能な電圧値であるか否かを判定し、その電圧判定により肯定判定した場合にのみ、書換可能ROM内のデータをスタンバイRAMへコピーする、といった手順を踏む必要がある。
【0010】
ところが、この種の装置において、スタンバイRAM内の特定のデータを書換可能ROMにコピーする保存処理は、制御処理と並行して行われるため、上記処理AでスタンバイRAMの上記初期化が行われた後に、上記処理Bにおける電圧判定で否定判定され続けた場合には、書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピー(本来のバックアップデータのコピー)が完了する前に、上記保存処理によってスタンバイRAM内のデータが書換可能ROMにコピーされてしまう可能性がある。
【0011】
そして、このような事態が起こると、それまでの経緯を継承していないスタンバイRAM内のデータが、書換可能ROMへコピーされてしまうこととなり、その結果、データを復元させるための最後の砦である書換可能ROM内の本来のバックアップデータを失ってしまうこととなる。
【0012】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、動作を開始してから制御処理を開始するまでの遅れ時間を最小限にすることができると共に、制御処理で用いるデータの保存及び復元を確実に行うことができる車両用制御装置を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段、及び発明の効果】
上記目的を達成するためになされた本発明の車両用制御装置は、車両に搭載されたバッテリから常時給電されるスタンバイRAMを用いて、車両内の制御対象を制御するための制御処理を行うと共に、その制御処理によって算出される前記スタンバイRAM内の特定のデータを電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性の書換可能ROMにコピーして保存する保存処理を行い、更に、スタンバイRAM内のデータが異常であると判定した場合には、書換可能ROM内の前記特定のデータをスタンバイRAMへコピーすることにより、前記特定のデータを復元するものである。
【0014】
ここで特に、本発明の車両用制御装置においては、以下に説明する第1の処理と第2の処理とを行うと共に、上記保存処理が以下のように行われる。
まず、第1の処理は、少なくとも当該装置が動作を開始して前記制御処理を開始する前に実行される。そして、この第1の処理では、スタンバイRAM内のデータが異常か否かを判定し、異常であると判定した場合には、データの書き換えが不能な不揮発性の書換不能ROM(通常のROM)からスタンバイRAMへ初期値データを書き込んで該スタンバイRAM内のデータを正常化させる初期化を行い、更に、前記書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピーが完了しているか否かを示すスタンバイRAMの所定領域内の履歴データを、未完了を示す内容に設定する。
【0015】
また、第2の処理は、前記制御処理と並行して定期的に実行される。そして、この第2の処理では、スタンバイRAM内のデータが正常で且つ前記履歴データが未完了を示す内容であるか否かを判定し、該判定により肯定判定すると、前記第1の処理によりスタンバイRAMの上記初期化が行われたと判断して、更に、スタンバイRAMに供給されている電圧がデータの書き込みを正常に行うことが可能な電圧値であるか否かを判定し、その電圧判定により肯定判定した場合に、書換可能ROM内の前記特定のデータをスタンバイRAMへコピーすると共に、前記履歴データを、前記書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピーが完了したことを示す内容に設定し直す。
【0016】
そして、保存処理では、スタンバイRAM内のデータが正常で且つ前記履歴データが書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピーが完了したことを示す内容に設定されているか否かを判定し、該判定により肯定判定した場合にのみ、スタンバイRAM内の前記特定のデータを書換可能ROMにコピーする。
【0017】
つまり、本発明の車両用制御装置では、少なくとも動作開始直後に制御処理に先立って実行される第1の処理にて、スタンバイRAM内のデータが異常であると判定した場合には、とりあえず、通常の書換不能ROMからスタンバイRAMへ制御対象の制御に最低限必要な初期値データを書き込んで該スタンバイRAM内のデータを正常化させる初期化だけを行うと共に、書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピー(即ち、書換可能ROM内の特定のデータをスタンバイRAMへコピーすることであり、特定のデータの復元である)が完了しているか否かを示すスタンバイRAM内の履歴データを、未完了を示す内容に設定するようにしている。
【0018】
そして、その後、制御処理と並行して定期的に実行される第2の処理にて、スタンバイRAM内のデータが正常で且つ前記履歴データが未完了を示す内容であると肯定判定すると、上記第1の処理によりスタンバイRAMの上記初期化が行われたと判断し、スタンバイRAMに供給されている電圧がデータの書き込みを正常に行うことが可能な電圧値であることを確認した上で、書換可能ROM内の特定のデータをスタンバイRAMへコピーすると共に、スタンバイRAM内の前記履歴データを、書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピーが完了したことを示す内容に設定し直すようにしている。
【0019】
このため、本発明の車両用制御装置によれば、スタンバイRAM内のデータが異常であった場合には、とりあえず書換不能ROM内の初期値データをスタンバイRAMに書き込んで制御処理を開始させ、その後で、書換可能ROM内の本来のバックアップデータをスタンバイRAMへコピーすることとなる。よって、バッテリ外れ等によってスタンバイRAM内のデータが破壊された状態で動作を開始した場合でも、制御処理が開始されるまでの遅れ時間が長くならず、制御対象を作動させるまでの時間を最小限にすることができる。
【0020】
しかも、本発明の車両用制御装置では、第1の処理にて、スタンバイRAM内のデータが異常と判定して上記初期化を行った際に、スタンバイRAM内の履歴データを未完了を示す内容に設定し、第2の処理にて、書換可能ROM内の特定のデータをスタンバイRAMへコピーした際に(データの復元が完了した時に)、上記履歴データを完了を示す内容に設定し直し、更に、保存処理では、スタンバイRAM内のデータが正常で且つ上記履歴データが完了を示す内容に設定されている場合にのみ、スタンバイRAM内の特定のデータを書換可能ROMにコピーするようにしている。
【0021】
このため、仮に、第1の処理でスタンバイRAMの上記初期化が行われた後に、第2の処理における電圧判定で否定判定されて、書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピーが完了していない状況が発生しても、その状況下において、保存処理によりスタンバイRAM内のデータが書換可能ROMにコピーされてしまうことが確実に防止される。
【0022】
つまり、バッテリ外れ等によってスタンバイRAM内のデータが異常となった場合には、「第1の処理によるスタンバイRAMの初期化」→「第2の処理による書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピー」→「保存処理によるスタンバイRAMから書換可能ROMへのデータコピー」というデータ転送順序が確実に守られることとなり、書換可能ROM内の本来のバックアップデータを失ってしまうことが確実に防止されるのである。
【0023】
よって、本発明の車両用制御装置によれば、「発明が解決しようとする課題」で述べた全ての問題を解決して、動作を開始してから制御処理を開始するまでの遅れ時間を最小限にすることができると共に、制御処理で用いるデータの保存及び復元を確実に行うことができるようになる。
【0024】
また更に、本発明の車両用制御装置によれば、上記履歴データをスタンバイRAM内に格納しているため、例えば仮に、第1の処理で上記初期化が行われてから、第2の処理で書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピーが行われるまでの間に、当該装置への動作電圧が遮断されたとしても、次回に動作電圧が供給されて当該装置が動作を開始した際に、第2の処理によって書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピーを確実に行うことができると共に、その第2の処理によるデータコピーが完了するまでは、保存処理によってスタンバイRAMから書換可能ROMへデータがコピーされてしまうことが無い。
【0025】
よって、当該装置への動作電圧が断続されても、上記データ転送順序を常に確実に守ることができ、データの保存及び復元を確実に行うことができる。
尚、本発明の車両用制御装置において、通常時には、スタンバイRAM内のデータが正常であると共に、スタンバイRAM内の上記履歴データが完了を示す内容に設定されているため、第1の処理では上記初期化が行われず、また、第2の処理では、書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピーが行われない。そして、制御処理と並行して行われる保存処理により、スタンバイRAM内の特定のデータが書換可能ROMにコピーされて、スタンバイRAM内のデータが破壊された場合に備えることとなる。
【0026】
次に、請求項2に記載の車両用制御装置では、上記請求項1の車両用制御装置において、前記制御処理では、前記履歴データが書換可能ROMからスタンバイRAMへのデータコピーが完了したことを示す内容に設定されている場合にのみ、スタンバイRAM内の前記特定のデータを更新する。
【0027】
つまり、履歴データが完了を示す内容に設定されていない場合には、書換可能ROMからスタンバイRAMへ、それまでの経緯を継承した本来のデータが未だコピーされていないため、その時点でスタンバイRAM内の特定のデータを制御処理によって更新しても意味が無いためである。そして、このような請求項2の車両用制御装置によれば、制御処理を効率的に進めることができ有利である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
まず、図1は、車両に搭載されたエンジンを制御する実施形態の車両用制御装置(以下、ECUという)1の構成を表わすブロック図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態のECU1は、エンジンを制御するための様々な処理を実行するCPU3、CPU3により実行されるプログラムや該プログラムの実行時に参照されるデータが格納されたROM5、CPU3による演算結果を記憶するRAM6とスタンバイRAM(以下、S−RAMと記す)7、及び入出力インターフェース(I/O)9などを内蔵したマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)11と、電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性の書換可能ROMとしてのEEPROM13とを備えている。そして、マイコン11とEEPROM13は、シリアルデータライン15を介してデータ転送可能に接続されている。
【0030】
尚、RAM6とS−RAM7とのうち、S−RAM7の方には、車両に搭載されたバッテリ27から常時給電される。また、ROM5は、データの書き換えが不能な不揮発性の読出専用メモリである。
そして更に、ECU1は、車両の走行速度(車速)を検出する車速センサ17や、エンジンの回転数を検出する回転センサ19などの各種センサからの信号を、マイコン11へ入力させると共に、マイコン11から出力される制御信号に応じて、インジェクタ21やイグナイタ23などのアクチュエータを駆動する入出力回路25と、バッテリ27から車両のイグニッションスイッチ29を介して供給されるイグニッション電圧VIGを受けて、マイコン11やEEPROM13等へ動作電圧VD を供給するメイン電源回路31と、バッテリ27からイグニッションスイッチ29を介さずに直接供給されるバッテリ電圧VBBを受けて、マイコン11内のS−RAM7へデータ保持用のスタンバイ電圧VS を供給するサブ電源回路33とを備えている。
【0031】
このようなECU1においては、イグニッションスイッチ29がオンされると、メイン電源回路31からマイコン11やEEPROM13等に動作電圧VD が供給される。そして、マイコン11のCPU3が、ROM5に格納されたプログラムに従いエンジンを制御するための制御処理を実行して、各種センサからのセンサ信号に基づき上記アクチュエータを作動させることにより、エンジンの制御を行う。
【0032】
ここで、マイコン11のCPU3は、S−RAM7を用いて制御処理を行うと共に、その制御処理で算出するS−RAM7内の各種制御用データのうち、制御上の学習値データや車両の累積走行距離データなど、恒久的に更新して保存しておく必要がある特定のデータ(以下、保存対象データという)については、EEPROM13にもコピーして保存するようにしている。そして、S−RAM7内のデータが異常であると判定した場合には、EEPROM13内の保存対象データをS−RAM7へコピーすることにより、バッテリ27が車両から外される等してS−RAM7内のデータが破壊されたとしても、その保存対象データを失わないようにしている。また、ROM5には、上記保存対象データを含む各種制御用データの初期値(固定の初期値データに相当)が予め格納されている。
【0033】
そこで次に、このようなECU1のマイコン11で実行される処理について、図2及び図3のフローチャートに沿って説明する。
まず、マイコン11のCPU3は、イグニッションスイッチ29のオンに伴い動作を開始(イニシャルスタート)すると、制御処理を開始する前に、図2(A)に示す第1の処理を実行する。尚、本実施形態において、この第1の処理は、こうしたイニシャル時(即ち、ECU1の動作開始時)に実行されるだけではなく、その後は、一定時間毎(本実施形態では65ms毎)に繰り返し実行される。
【0034】
そして、図2(A)に示すように、この第1の処理の実行を開始すると、まずステップ(以下「S」と記す)110にて、S−RAM7内のデータが異常であるか否かをパリティチェックやミラーリング等の手法によってチェックし、S−RAM7内のデータが異常ではない(即ち正常である)と判定した場合には、そのまま当該第1の処理を終了して、S−RAM7を用いた制御処理を開始する。
【0035】
これに対し、上記S110にて、S−RAM7内のデータが異常であると判定した場合には、S120に進んで、S−RAM7内のデータ状態を示すS−RAM状態変数を、“異常”を示す内容に設定する。尚、このS−RAM状態変数は、RAM6の所定領域に格納されているデータであり、その初期値は、RAM6に対するイニシャル処理(図示省略)によって“正常”に設定されている。
【0036】
次に、続くS130にて、サブ電源回路33からS−RAM7に供給されているスタンバイ電圧VS がS−RAM7へのデータ書き込みを正常に行うことが可能な正常電圧値であるか否かを判定し、正常電圧値であれば、S−RAM7への書込禁止状態ではないと判断して、S140に進む。
【0037】
そして、このS140にて、ROM5からS−RAM7へ各種制御用データの初期値(初期値データ)を書き込んでS−RAM7内のデータを正常化させる初期化を行い、続くS150にて、EEPROM13からS−RAM7への保存対象データのコピーが完了しているか否かを示す履歴データDRを、“未完了”を示す内容に設定する。尚、この履歴データDRは、S−RAM7の所定領域に格納されているデータである。
【0038】
そして更に、続くS160にて、上記S−RAM状態変数を、“正常”を示す内容に設定し直し、その後、当該第1の処理を終了する。
また、上記S130にて、S−RAM7への書込禁止状態であると判断した場合(つまり、スタンバイ電圧VS が正常電圧値ではないと判定した場合)には、そのまま当該第1の処理を一旦終了する。そして、この場合には、当該第1の処理が次に実行された時に、上記S110でS−RAM7内のデータが異常であると再び判定されて、S120以降の処理が再度行われることとなる。
【0039】
次に、マイコン11のCPU3は、イニシャル時に上記第1の処理を行ってから制御処理の実行を開始することとなるが、その制御処理と並行して、図2(B)に示す第2の処理と図2(C)に示す保存処理とを、一定時間毎(本実施形態では16ms毎)に繰り返し実行する。尚、保存処理は、S−RAM7内の保存対象データをEEPROM13にコピーして保存するための処理であるが、その実質的な保存用の処理は、後述する保存条件が成立した場合にのみ行われる。
【0040】
まず、図2(B)に示すように、CPU3が第2の処理の実行を開始すると、最初のS210にて、RAM6内のS−RAM状態変数を参照することにより、S−RAM7内のデータが正常であるか否かを判定する。そして、S−RAM状態変数が“正常”を示す内容に設定されていれば、S−RAM7内のデータが正常であると判断して、S220に進み、今度は、S−RAM7内の上記履歴データDRが“未完了”を示す内容に設定されているか否かを判定する。
【0041】
このS220にて履歴データDRが“未完了”を示す内容に設定されていると判定した場合には、前述した第1の処理によってS−RAM7の初期化が行われたと判断して、S230に進む。
S230では、第1の処理におけるS130と同様に、スタンバイ電圧VS がS−RAM7へのデータ書き込みを正常に行うことが可能な正常電圧値であるか否かを判定し、正常電圧値であれば、S−RAM7への書込禁止状態ではないと判断して、S240に進む。そして、このS240にて、EEPROM13内の保存対象データをS−RAM7へコピーし、続くS250にて、S−RAM7内の上記履歴データDRを、“完了”を示す内容(即ち、EEPROM13からS−RAM7へのデータコピーが完了したことを示す内容)に設定し直す。そして、その後、当該第2の処理を終了する。
【0042】
また、S210にて、S−RAM7内のデータが正常ではないと判定した場合(即ち、S−RAM状態変数が“異常”を示す内容に設定されていた場合)、或いは、S220にて、上記履歴データDRが“未完了”を示す内容に設定されていないと判定した場合、或いは、S230にて、S−RAM7への書込禁止状態であると判断した場合(即ち、スタンバイ電圧VS が正常電圧値ではないと否定判定した場合)には、そのまま当該第2の処理を一旦終了する。
【0043】
次に、図2(C)に示すように、CPU3が保存処理の実行を開始すると、まず最初のS305にて、保存条件が成立しているか否かを判定する。
この保存条件は、EEPROM13へのデータ書き込み回数を減らすために設けられている条件であり、本実施形態では、例えば下記▲1▼及び▲2▼の条件が共に満たされている場合に、保存条件が成立していると判定する。
【0044】
▲1▼:当該ECU1が継続して動作している期間中に、車速が20km/h以上でエンジン回転数が2000rpm以上という運転状態があった。
▲2▼:当該ECU1が継続して動作している期間中に、後述するS330の処理によってS−RAM7内の保存対象データがEEPROM13に未だ1回もコピーされていない。
【0045】
つまり、本実施形態では、当該ECU1が継続して動作している期間中に、上記▲1▼の条件が成立すると、1回だけS−RAM7内の保存対象データをEEPROM13へコピーするようにしており、これにより、EEPROM13へのデータ書き込み回数を必要最小限に抑えている。
【0046】
そして、S305にて、上記保存条件が成立していないと判定した場合には、そのまま当該保存処理を終了するが、上記保存条件が成立していれば、S310に進んで、RAM6内のS−RAM状態変数を参照することにより、S−RAM7内のデータが正常であるか否かを判定する。
【0047】
ここで、S−RAM状態変数が“正常”を示す内容に設定されていれば、S−RAM7内のデータが正常であると判断して、S320に進み、今度は、S−RAM7内の上記履歴データDRが“完了”を示す内容に設定されているか否かを判定する。
【0048】
そして、S320にて履歴データDRが“完了”を示す内容に設定されていると判定した場合には、S330に進んで、S−RAM7内の保存対象データをEEPROM13にコピーし、その後、当該保存処理を終了する。
また、S310にて、S−RAM7内のデータが正常ではないと判定した場合(即ち、S−RAM状態変数が“異常”を示す内容に設定されていた場合)、或いは、S320にて、上記履歴データDRが“完了”を示す内容に設定されていないと判定した場合には、そのまま当該保存処理を終了する。
【0049】
尚、バッテリ27のプラス端子とメイン電源回路31との間に、マイコン11によって制御されるメインリレーを設け、マイコン11が、イグニッションスイッチ29がオフされた後も上記メインリレーをオンさせ続けて動作を継続できるように構成した場合には、上記保存条件として、イグニッションスイッチ29がオン状態からオフされた、という条件を加えるようにしても良い。つまり、この場合には、通常、イグニッションスイッチ29がオン状態からオフされて、当該ECU1が動作を停止する前に一回だけ、S−RAM7内の保存対象データをEEPROM13にコピーすることとなる。
【0050】
一方、マイコン11のCPU3は、制御処理によってS−RAM7内の保存対象データを逐次最新の内容へと更新しているが、その制御処理では、S−RAM7内の上記履歴データDRを参照して、その履歴データDRが“完了”を示す内容に設定されている場合にのみ、S−RAM7内の保存対象データを更新するようにしている。
【0051】
例えば、図3は、制御処理のうち、車両の走行距離を累積して算出するために一定時間T毎に実行される走行距離算出処理を表すフローチャートであるが、この処理では、まずS410にて、その時の車速から一定時間T内の走行距離Δを算出し、続くS420にて、S−RAM7内の上記履歴データDRが“完了”を示す内容に設定されているか否かを判定する。そして、履歴データDRが“完了”を示す内容に設定されている場合にのみ、次のS430に進んで、S−RAM7内の累積走行距離データに上記S410で算出した走行距離Δを加算して、その累積走行距離データを更新する。
【0052】
以上のように、本実施形態のECU1では、少なくとも動作開始直後に制御処理に先立って実行される第1の処理にて、S−RAM7内のデータが異常であるか否かを判定し(S110)、異常と判定した場合には(S110:YES)、とりあえず、通常のROM5からS−RAM7へ各種制御用データの初期値を書き込んで該S−RAM7内のデータを正常化させる初期化だけを行うと共に(S140)、EEPROM13からS−RAM7への保存対象データのコピーが完了しているか否かを示すS−RAM7内の履歴データDRを、“未完了”を示す内容に設定するようにしている(S150)。
【0053】
そして、その後、制御処理と並行して定期的に実行される第2の処理にて、S−RAM7内のデータが正常で且つ上記履歴データDRが“未完了”を示す内容であると肯定判定すると(S210及びS220:YES)、上記第1の処理によってS−RAM7の上記初期化が行われたと判断し、S−RAM7に供給されているスタンバイ電圧VS が正常電圧値であることを確認した上で(S230:NO)、EEPROM13内の保存対象データをS−RAM7へコピーすると共に(S240)、S−RAM7内の上記履歴データDRを、“完了”を示す内容に設定し直すようにしている(S250)。
【0054】
このため、本実施形態のECU1によれば、S−RAM7内のデータが異常であった場合には、とりあえず固定の初期値データをS−RAM7に書き込んで制御処理を開始させ、その後で、EEPROM13内の本来のバックアップデータをS−RAM7へコピーすることとなる。よって、バッテリ外れ等によってS−RAM7内のデータが破壊された状態で動作を開始した場合でも、制御処理が開始されるまでの遅れ時間が長くならず、制御対象を作動させるまでの時間を最小限にすることができる。
【0055】
しかも、本実施形態のECU1では、第1の処理にて、S−RAM7内のデータが異常と判定して上記初期化を行った際に、S−RAM7内の履歴データDRを“未完了”を示す内容に設定し(S150)、第2の処理にて、EEPROM内の保存対象データをS−RAM7へコピーした際に(データの復元が完了した時に)、上記履歴データDRを“完了”を示す内容に設定し直し(S250)、更に、定期的に実行される保存処理では、S−RAM7内のデータが正常で且つ上記履歴データDRが“完了”を示す内容に設定されている場合にのみ(S310及びS320:YES)、S−RAM7内の保存対象データをEEPROM13にコピーするようにしている(S330)。
【0056】
このため、仮に、第1の処理におけるS140でS−RAM7の初期化が行われた後に、第2の処理におけるS230の電圧判定でスタンバイ電圧VS が正常電圧値ではないと否定判定されて(書込禁止状態であると判定されて)、EEPROM13からS−RAM7へのデータコピーが完了していない状況が発生しても、その状況下において、保存処理によりS−RAM7内のデータがEEPROM13にコピーされてしまうことが、確実に防止される。
【0057】
つまり、バッテリ外れ等によってS−RAM7内のデータが異常となった場合には、「第1の処理によるS−RAM7の初期化」→「第2の処理によるEEPROM13からS−RAM7へのデータコピー」→「保存処理によるS−RAM7からEEPROM13へのデータコピー」というデータ転送順序が確実に守られることとなり、EEPROM13内の本来のバックアップデータを失ってしまうことが確実に防止されるのである。
【0058】
よって、本実施形態のECU1によれば、動作を開始してから制御処理を開始するまでの遅れ時間を最小限にすることができると共に、制御処理で用いるデータの保存及び復元を確実に行うことができる。
そして更に、本実施形態のECU1によれば、上記履歴データDRをS−RAM7内に格納しているため、仮に、第1の処理でS−RAM7の初期化が行われてから、第2の処理におけるS240でEEPROM13からS−RAM7へのデータコピーが行われるまでの間に、イグニッションスイッチ29がオフされてメイン電源回路31からの動作電圧VD が遮断されたとしても、次回に動作電圧VD が供給されて当該ECU1が動作を開始した際に、第2の処理によってEEPROM13からS−RAM7へのデータコピーを確実に行うことができ、しかも、EEPROM13からS−RAM7へのデータコピーが完了するまでは、保存処理によってS−RAM7からEEPROM13へデータがコピーされてしまうことが無い。よって、動作電圧VD が断続されても、上記データ転送順序を常に確実に守ることができ、データの保存及び復元を確実に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態のECU1では、制御処理において、S−RAM7内の上記履歴データDRを参照し、その履歴データDRが、EEPROM13からS−RAM7へのデータコピーが完了したことを示す内容に設定されている場合にのみ、S−RAM7内の保存対象データを更新するようにしている。よって、制御処理を効率的に進めることができる。つまり、履歴データDRが“未完了”を示す内容に設定されている場合には、EEPROM13からS−RAM7へ、それまでの経緯を継承した本来の保存対象データが未だコピーされていないため、その時点でS−RAM7内の保存対象データを制御処理によって更新しても意味が無いためである。
【0060】
尚、本実施形態のECU1において、通常時には、S−RAM7内のデータが正常であると共に、S−RAM7内の上記履歴データDRが“完了”を示す内容に設定されているため、第1の処理ではS−RAM7の初期化が行われず、また、第2の処理ではEEPROM13からS−RAM7へのデータコピーが行われない。そして、制御処理と並行して行われる保存処理により、S−RAM7内の保存対象データがEEPROM13にコピーされて、S−RAM7内のデータが破壊された場合に備えることとなる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態では、第2の処理のS210と保存処理のS310とにおいて、RAM6内のS−RAM状態変数を参照することにより、S−RAM7内のデータが正常であるか否かを判定するようにしたが、そのS210とS310では、S110と同様に、S−RAM7内のデータが正常であるか否かをパリティチェックやミラーリング等の手法によってチェックするようにしても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、図2に示したように、第2の処理と保存処理とが別々に分かれていたが、図2(B)の第2の処理に続いて図2(C)の保存処理が行われるようにしても、全く同様の効果を得ることができる。
一方、上記実施形態のECU1は、車両のエンジンを制御するものであったが、例えば自動変速機など、他の制御対象を制御する装置についても全く同様に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の車両用制御装置(ECU)の構成を表すブロック図である。
【図2】実施形態のECUのマイコンで実行される第1の処理と第2の処理と保存処理とを表すフローチャートである。
【図3】実施形態のECUのマイコンで実行される制御処理の一部内容を表すフローチャートである。
【符号の説明】
1…ECU(車両用制御装置) 3…CPU 5…ROM
7…S−RAM(スタンバイRAM) 11…マイコン
13…EEPROM 15…シリアルデータライン 17…車速センサ
19…回転センサ 21…インジェクタ 23…イグナイタ
25…入出力回路 27…バッテリ 29…イグニッションスイッチ
31…メイン電源回路 33…サブ電源回路

Claims (2)

  1. 車両に搭載されたバッテリから常時給電されるスタンバイRAMを用いて、前記車両内の制御対象を制御するための制御処理を行うと共に、該制御処理によって算出される前記スタンバイRAM内の特定のデータを電気的にデータの書き換えが可能な不揮発性の書換可能ROMにコピーして保存する保存処理を行い、更に、前記スタンバイRAM内のデータが異常であると判定した場合には、前記書換可能ROM内の前記特定のデータを前記スタンバイRAMへコピーすることにより、前記特定のデータを復元するように構成された車両用制御装置において、
    少なくとも当該装置が動作を開始して前記制御処理を開始する前に実行される処理であって、前記スタンバイRAM内のデータが異常か否かを判定し、異常であると判定した場合には、データの書き換えが不能な不揮発性の書換不能ROMから前記スタンバイRAMへ初期値データを書き込んで該スタンバイRAM内のデータを正常化させる初期化を行い、更に、前記書換可能ROMから前記スタンバイRAMへのデータコピーが完了しているか否かを示す前記スタンバイRAMの所定領域内の履歴データを、未完了を示す内容に設定する第1の処理と、
    前記制御処理と並行して定期的に実行される処理であって、前記スタンバイRAM内のデータが正常で且つ前記履歴データが未完了を示す内容であるか否かを判定し、該判定により肯定判定すると、更に、前記スタンバイRAMに供給されている電圧がデータの書き込みを正常に行うことが可能な電圧値であるか否かを判定して、該電圧判定により肯定判定した場合に、前記書換可能ROM内の前記特定のデータを前記スタンバイRAMへコピーすると共に、前記履歴データを、前記書換可能ROMから前記スタンバイRAMへのデータコピーが完了したことを示す内容に設定し直す第2の処理とを行い、
    更に、前記保存処理では、前記スタンバイRAM内のデータが正常で且つ前記履歴データが前記書換可能ROMから前記スタンバイRAMへのデータコピーが完了したことを示す内容に設定されているか否かを判定し、該判定により肯定判定した場合にのみ、前記スタンバイRAM内の前記特定のデータを前記書換可能ROMにコピーすること、
    を特徴とする車両用制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両用制御装置において、
    前記制御処理では、前記履歴データが前記書換可能ROMから前記スタンバイRAMへのデータコピーが完了したことを示す内容に設定されている場合にのみ、前記スタンバイRAM内の前記特定のデータを更新すること、
    を特徴とする車両用制御装置。
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