JP3551532B2 - アルデヒド類の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ロジウム−ホスファイト系錯体触媒の存在下に、オレフィン系不飽和化合物をヒドロホルミル化反応させてアルデヒド類を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
第8族金属錯体触媒の存在下に、オレフィン系不飽和化合物を一酸化炭素及び水素と反応させることによりアルデヒド類を製造するプロセスは広範に工業化されている。このヒドロホルミル化反応における触媒としては、ロジウム等の第8族金属を3価のリンの化合物ような配位子で修飾した錯体触媒が用いられており、ヒドロホルミル化反応の活性や選択性を向上させるために、種々の配位子についての研究がなされている。
【0003】
例えば、特公昭45−10730号には、トリアリールホスフィンやトリアリールホスファイト等の3価リン配位子で修飾されたロジウム触媒が有効であることが開示されている。中でも、ホスファイト配位子で修飾された触媒は、ヒドロホルミル化反応において高い活性と優れた選択性を示すことが知られている。
しかしながら、特開昭59−51229号に開示されているように、トリフェニルホスファイト等のホスファイト配位子では、ヒドロホルミル化反応系中で配位子が比較的速やかに分解し、それに伴い触媒活性が低下することが知られており、ホスファイト配位子を連続的に補給することが必要である。したがって、単に触媒の活性及び選択性を改良するためだけでなく、ホスファイト配位子の減損による触媒活性の低下を小さくするために、各種のホスファイト配位子が提案されている。
【0004】
例えば、特開昭59−51228号及び特開昭59−51230号には橋頭部にリン原子を含有する環式ホスファイト配位子を用いる方法が開示されている。また、特開昭57−123134号には、ベンゼン環の特定部位に置換基を有するトリアリールホスファイト配位子を用いる方法が、また、特開平4−288033号には、ナフチル環の特定部位に置換基を有するトリアリールホスファイト配位子を用いる方法が開示されている。また、特表昭61−501268号には、分子内にリン原子を含む環状構造を有するジオルガノホスファイト配位子を用いる方法が開示されている。
【0005】
更に、ビスホスファイト配位子及びポリホスファイト配位子の例として、特開昭62−116535号及び特開昭62−116587号にジオルガノホスファイト配位子を用いる方法が開示されており、特開平4−290551号には環状構造を有するビスホスファイト配位子を用いる方法が開示されている。また、特開平5−178779号には環状構造を有しないビスホスファイト配位子及びポリホスファイト配位子を用いる方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようにホスファイト配位子は、ヒドロホルミル化反応において高い活性及び優れた選択性を示すにもかかわらず、工業的に有利にアルデヒド類を製造するためには、前述したようなホスファイト配位子自体の安定性が問題であり、このようなホスファイト配位子の急速な分解は、単に触媒の活性や安定性に悪影響を与えるのみならず、新たなホスファイト配位子を連続的に追加しなければならないという問題があった。
【0007】
前記した特開昭59−51229号の他に、例えば特表昭61−501268号には、トリフェニルホスファイトがロジウムの非存在下においても室温下でアルデヒドと速やかに反応することが記載されている。トリオルガノホスファイトを用いる際のこの欠点は、ホスファイトがアルデヒドと反応する親和力が非常に高いことによるものと考えられ、その反応により得られる生成物は容易に加水分解して、対応するヒドロキシアルキルホスホン酸になることが示されている。
【0008】
このようなヒドロキシアルキルホスホン酸は、自己触媒プロセスにより生成し、特にホスファイト配位子とアルデヒド生成物との接触が長期にわたる連続的な触媒再循環プロセスにおいて生成しやすくなる。このヒドロキシアルキルホスホン酸は、通常の液体ヒドロホルミル化反応媒質に不溶性であるため、急速に蓄積されてゼラチン状副生物が沈澱し、連続的なヒドロホルミル化反応系の循環管路を閉塞又は汚染する恐れがある。かかる沈澱物を任意の適当な方法、例えば重炭酸ナトリウム等の弱塩基による酸の抽出等の方法によって除去するためには、定期的にプロセスの運転を停止又は休止することが必要であった。
【0009】
これらの現象は、従来工業的に用いられているトリフェニルホスフィン等のホスフィン系配位子においてはみられない、ホスファイト系配位子独自の特徴といえる。
一方、ロジウム錯体触媒を工業的に使用する場合には、ロジウムが高価であるために、触媒を連続的に再循環して使用することが不可欠である。触媒を再循環するためには反応生成物と触媒液とを分離することが必須であるが、この触媒分離方法としては、一般的には蒸留が用いられる。例えば特開昭55−159841号には、ロジウム−ホスフィン系錯体は、約20〜350℃の蒸留温度範囲においてもなんら活性の低下を起こさないことが開示されている。ところが、ロジウム−ホスファイト系錯体では、160℃のヒドロホルミル化反応条件下においても分解することが知られている。
【0010】
また、オキソガスの共存しないオキソ反応工程以降の分離工程では、更にホスファイト系配位子が分解しやすいことも分かっている。
このようにロジウム−ホスファイト配位子系錯体触媒を連続的な再循環プロセスで使用する場合、反応後の分離工程において、ホスファイト配位子の安定性が低いことは、重大な問題である。これらの安定性の問題に対する解決方法としては、例えば前記特表昭61−501268号には、弱塩基性アニオン交換樹脂で処理することにより分解を最小限に抑える方法が開示されている。特公平5−48215号には、特定の極性官能基を有する有機重合体の存在下に蒸留を行うことにより、ロジウムのメタル化が抑制されることが開示されており、また、ロジウム−ホスファイト系錯体触媒を含有する生成物溶液からのアルデヒド生成物の蒸留分離を150℃未満、好ましくは140℃未満の温度で実施するのがよいことが開示されている。
【0011】
特に、特開昭60−156636号には、環式ホスファイト配位子を含むヒドロホルミル化反応区域に3級アミンを存在させて、配位子の安定化を図る方法が開示されている。また、特開昭60−156636号の明細書中には、3級アミンをトリフェニル亜リン酸塩等の非環状の亜リン酸塩配位子を含むヒドロホルミル化反応媒体に加えると、配位子の分解は止まらず、触媒は数時間を超えると安定性が失われること、更に、実験の結果、3級アミンの配位子安定化効果は環式亜リン酸塩配位子の場合にだけ表れ、非環状の亜リン酸塩では効果がないことが記載されている。
【0012】
このように、従来技術においてはリン原子を含む環状構造を分子内に持たないホスファイト化合物(以下、非環式ホスファイトという)を配位子として有するロジウム−ホスファイト系錯体触媒を用いた再循環プロセスの分離工程において、ホスファイト配位子の分解を抑制する有効な方法は見出されていなかった。
【0013】
本発明の目的は、ロジウム−ホスファイト系錯体を触媒とする液体再循環プロセスの分離工程において、リン原子を含む環状構造を分子内に持つホスファイト化合物(以下、環式ホスファイトという)に比べてはるかに分解性の高い非環式ホスファイト配位子を使用する際においても、ヒドロホルミル化反応により得られる反応生成液からアルデヒド生成物や高沸物等を、ホスファイト配位子の分解を抑制して分離することのできる方法を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討を重ねた結果、非環式ホスファイトのなかでも、酸素原子に結合する炭素原子の隣接炭素原子上に炭化水素置換基を有する芳香族アルコールが燐原子に結合しているホスファイトを配位子とするロジウム錯体触媒を用いてヒドロホルミル化反応を行い、かつ得られた反応生成液からアルデヒド生成物や高沸点物等を分離する分離工程において、アミンを存在させることにより、従来非常に分解性が高いとされていた非環式ホスファイト配位子であっても、その減損を抑制できることを見出した。そして分離操作として水蒸気蒸留を用いる際においても、アミンを存在させることにより、ホスファイト配位子の減損を効果的に抑制し得ることを見出した。
【0015】
即ち本発明の要旨は、リン原子を含む環状構造を分子内に持たないホスファイト化合物を配位子として有するロジウム−ホスファイト系錯体触媒の存在下、オレフィン系不飽和化合物を一酸化炭素及び水素とヒドロホルミル化反応させることにより得られる、ロジウム−ホスファイト系錯体触媒及びアルデヒド生成物を含む反応生成液から、分離操作によって未反応オレフィン系不飽和化合物、アルデヒド生成物、溶媒、中沸点副生物及び高沸点副生物から選ばれる少なくとも1つの成分を分離するアルデヒド類の製造方法において、ホスファイト化合物として、その少なくとも1つのアルコール成分が、酸素原子に結合する炭素原子の隣接炭素原子に炭化水素置換基を有する芳香族アルコールであり、かつ該少なくとも1つの成分の分離操作においてアミンを存在させることを特徴とするアルデヒド類の製造方法、に存する。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ホスファイト化合物の中でも、特に、非環式ホスファイトを配位子として有するロジウム−ホスファイト系錯体触媒の存在下で、オレフィン系不飽和化合物を一酸化炭素及び水素とヒドロホルミル化反応させ、得られるロジウム−ホスファイト系錯体触媒及びアルデヒド生成物を含む反応生成液から、分離操作によって未反応オレフィン系不飽和化合物、アルデヒド生成物、溶媒、中沸点副生物及び高沸点副生物から選ばれる少なくとも1つの成分を分離してアルデヒド類を製造する方法であり、該非環式ホスファイト配位子を含むロジウム触媒を連続的に再循環して使用する液体触媒再循環プロセスに適用可能である。 ヒドロホルミル化反応により得られる反応生成液から未反応オレフィン系不飽和化合物、アルデヒド生成物、溶媒、中沸点副生物及び高沸点副生物から選ばれる少なくとも1つの成分を分離する分離操作とは、慣用の液体触媒再循環プロセスで用いられるあらゆる分離操作を指し、具体的には、単蒸留、減圧蒸留、薄膜蒸留、水蒸気蒸留等の蒸留操作の他、気液分離、蒸発(エバポレーション)、ガスストリッピング、ガス吸収及び抽出等の分離操作が挙げられる。各分離操作は、各々独立の工程で行ってもよく、2つ以上の成分の分離を同時に行ってもよい。
【0017】
これらの分離操作のうち、代表的なものとして蒸留と蒸発(エバポレーション)がある。まず、液体触媒再循環プロセスにおける蒸留分離の例を説明する。一般に反応溶媒としては、アルデヒド生成物よりも高沸点のものを用い、この溶媒に触媒と配位子を溶解させて触媒液として使用する。この触媒液とオレフィン系不飽和化合物(以下、単にオレフィンということもある。)及びオキソガスを通常の連続反応器に供給し、所定温度及び所定圧力でヒドロホルミル化反応させる。反応器から取り出された反応生成液は、蒸留により未反応オレフィン及びアルデヒド生成物と触媒液とに分離される。ホスファイト錯体を含む触媒液は反応器に再循環(リサイクル)される。また、触媒液の一部は、失活触媒と高沸副生物の蓄積を防ぐために廃触媒液として連続的又は間欠的に反応系からパージされる。そして対応する量のフレッシュな触媒と配位子が反応系に供給される。
【0018】
次に、蒸発の例を説明する。生成アルデヒドの回収はエバポレーションにより行われる。反応溶媒としては、通常アルデヒド生成物の重合物や縮合物から成る高沸点有機化合物が用いられ、この溶媒に触媒と配位子を溶解させて触媒液として使用する。この触媒液が入った反応器にオレフィン及びオキソガスを供給し所定温度及び所定圧力でヒドロホルミル化反応を行う。生成したアルデヒドは例えば、未反応オレフィン、一酸化炭素及び水素を含む未反応ガスでストリッピングすることにより反応器より取り出される。同時に生成した高沸副生物の一部も未反応ガスとともに反応器から取り出される。高沸副生物の全量が反応器から取り出されるのが好ましく、その場合廃触媒とともに反応系からパージされる高沸副生物の量は生成する量とほぼ等しい。生成量よりはるかに多くの高沸副生物が未反応ガスとともに反応器から取り出されるならば、取り出された高沸副生物の一部は触媒液の量を一定に保つために反応器にリサイクルされる。
【0019】
この蒸発による方法では、ヒドロホルミル化反応器中の触媒液量は一定に保たれる。反応器から取り出されたガス混合物中の液体物質(主としてアルデヒド)は、冷却又は凝縮により未反応ガスと分離される。未反応ガスの一部は、主としてパラフィンのような水添副生物の蓄積を防ぐためにパージされ、残りは反応器にリサイクルされる。また反応器内の触媒液の一部は失活触媒と高沸副生物の蓄積を防ぐために廃触媒として連続的又は間欠的にパージされ、それらのロスを補うのに必要な量のフレッシュな触媒と配位子は反応系に供給される。
【0020】
本発明は、ヒドロホルミル化反応により得られる反応生成液から未反応オレフィン系不飽和化合物、アルデヒド生成物、溶媒、中沸点副生物及び高沸点副生物から選ばれる少なくとも1つの成分を分離する分離操作において、アミンを存在させることを特徴とし、その結果、非環式ホスファイト配位子の減損や副生物の生成、反応活性の低下を再小限に抑制することができるという効果を奏する。
【0021】
存在させるアミンとしては特に制限されないが、具体的には、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン、トリエチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の3級アミン、スチレンアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン等のジアミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミン、グリコールアミン等のアルカノールアミン類、ピリジン等の複素環式アミン等が挙げられる。
【0022】
上記のアミンの中でも3級アミンが好ましく、好ましい3級アミンの例としては、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、N,N−ジ−n−ブチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジイソブチル−2−エチルヘキシルアミン、N−プロピル−N−ブチル−n−ブチルアミン、N−プロピル−N−ブチル−2−エチルヘキシルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン等が挙げられる。
【0023】
また、工業的なヒドロホルミル化工程においては、アルデヒド生成物と触媒との分離は通常蒸留により行われることが多いため、そのような場合添加したアミンがアルデヒド生成物側に留出するよりも触媒液側に分離されるほうが好ましい。従って、用いるアミンとしてはアルデヒド生成物よりも高沸点物であるのが好ましく、比較的炭素数の大きいアミンが好ましい。
【0024】
アミンの存在量としては、通常触媒液中のロジウムのモル数に対して0.1〜100倍モル比の範囲内であり、好ましくは1〜20倍モル比の範囲内で存在させるのがよい。また、アミンは各分離操作の間の工程やヒドロホルミル化反応工程に添加してもよいが、本発明では上記分離操作において上記した量のアミンを存在させている状態に維持すればよい。本発明においては、特に上記分離操作の際にアミンを添加するのが、ホスファイト配位子の分解の抑制に効果的であるという点で好ましい。
【0025】
本発明で使用するロジウム触媒と錯体を形成するホスファイト配位子及び遊離ホスファイト配位子は、リン原子を含む環状構造を分子内に持たないホスファイト化合物、即ち非環式ホスファイトである。一方、前述したようにトリフェニルホスファイト等の化合物は、室温でもアルデヒド化合物と容易に反応し、配位子の減損が見られる。従って、ホスファイト化合物のうち、本発明の目的のため好ましい化合物としては、分子構造中の立体障害等によりアルデヒドや水との反応が抑制され、安定性を向上させたホスファイト化合物が挙げられる。例えば、ホスファイト化合物の少なくとも1つのアルコール成分が、芳香環に直接結合する水酸基を有し、該水酸基の結合する炭素原子の隣接炭素原子に炭化水素置換基を有する芳香族アルコールであるものを用いるのが好ましい。
【0026】
具体的には、次の一般式(1)で表わされるホスファイト化合物等が挙げられる。
【0027】
【化6】
P(OR1)(OR2)(OR3) ・・・(1)
[式中、R1,R2及びR3は互いに独立して有機基を表わし、その少なくと1つは、下記一般式(2)
【0028】
【化7】
【0029】
(式中、R4は一般式C(R9)(R10)(R11)で表わされる基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R9,R10及びR11は互いに異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭化水素基又はフッ素化炭化水素基を表し、R5,R6,R7及びR8は互いに異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は有機基を表す。)で表される置換フェニル基を表す。]
【0030】
好ましくは一般式(2)中のR4が全体としてイソプロピル基以上の嵩高さを持つものがよい。これらの化合物の具体例としては、ジフェニル(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニル(2−イソプロピルフェニル)ホスファイト、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)フェニルホスファイト等が挙げられる。
【0031】
このうち、一般式(1)においてR1,R2及びR3のすべてが一般式(2)で表される置換フェニル基である化合物が更に好ましい。
これらの化合物の具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスファイト、トリス(o−フェニルフェニル)ホスファイト、トリス(o−メチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0032】
また、リン原子を含む環状構造を分子内に持たないホスファイト化合物の好ましい別の例としては、次の一般式(1’)のホスファイト化合物等が挙げられる。
【0033】
【化8】
P(OR1)(OR2)(OR3) ・・・(1’)
[式中、R1,R2及びR3は、互いに独立して有機基を表わし、その少なくとも1つは、下記一般式(3)
【0034】
【化9】
【0035】
(式中、R4は一般式C(R9)(R10)(R11)で表わされる基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R9,R10及びR11は互いに異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭化水素基又はフッ素化炭化水素基を表し、R12,R13,R14,R15,及びR16は互いに異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は有機基を表す。)で表される置換−2−ナフチル基を表す。]
好ましくは、一般式(3)中のR4が全体としてイソプロピル基以上の嵩高さをもつものがよい。これらの化合物の具体例としては、ジフェニル(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト等が挙げられる。
【0036】
このうち、一般式(1’)においてR1,R2及びR3が互いに異なっていてもよく、それぞれ置換されていてもよい2−ナフチル基であり、且つ、R1,R2及びR3のうち少なくとも1つの2−ナフチル基の置換基R4が上記一般式(3)で定義したものである化合物がより好ましい。
これらの化合物の具体例としては、ビス(2−ナフチル)(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト等が挙げられる。
【0037】
このうち、一般式(1’)において、R1,R2及びR3の少なくとも1つが一般式(3)で表される置換−2−ナフチル基であって、他の置換基が一般式(2)で表される置換フェニル基であるものが更に好ましい。
これらの化合物の具体例としては、ビス(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0038】
このうち、一般式(1’)においてR1,R2及びR3のすべてが一般式(3)で表される置換−2−ナフチル基である化合物が最も好ましい。
これらの化合物の具体例としては、トリス(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト、トリス(3,6−ジ−t−アミル−2−ナフチル)ホスファイト等が挙げられる。
【0039】
更に、好ましい配位子の別の例としては、一般式(1’)においてR1及びR2がそれぞれ少なくともその3位、6位および8位が互いに異なっていてもよい炭化水素基で置換されており、且つ、他に置換基を有していてもよい2−ナフチル基を示し、R3がアルキル基、シクロアルキル基またはm位および/またはp位にのみ置換基を有していてもよいフェニル基であるホスファイト化合物がある。
【0040】
これらの化合物の具体例としては、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)フェニルホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)(p−トリル)ホスファイト等が挙げられる。
また、本発明で使用しうるホスファイト化合物のうち、リン原子を含む環状構造を分子内に持たないホスファイト化合物の中で、好ましい化合物の別の例としては、次の一般式(4)で示されるビスホスファイト化合物及びポリホスファイト化合物等が挙げられる。
【0041】
【化10】
A1[−O−P(OR17)(OR18)]n ・・・(4)
(式中、R17及びR18は互いに異なっていてもよい芳香族炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基の少なくとも1つは、酸素原子に結合する炭素原子の隣接炭素原子に炭化水素基を有し、A1は、それぞれ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素又は芳香族炭化水素の部分構造を含有するn価の有機基を表す。また、各[−O−P(OR17)(OR18)]基は互いに異なっていてもよく、nは2〜4の整数を表す。)
【0042】
好ましくは、一般式(4)において、R17又はR18の少なくとも1つが、前記一般式(2)で表される置換フェニル基、又は前記一般式(3)で表される置換−2−ナフチル基であるホスファイト化合物を用いるのがよい。
【0043】
このうち、一般式(4)において、R17及びR18のいずれもが前記一般式(2)で表される置換フェニル基であるホスファイト化合物を用いるのが更に好ましい。これらの化合物の具体例としては、以下の式に示すような化合物が挙げられる。
【0044】
【化11】
【0045】
【化12】
【0046】
本発明においては、上述したようなアミンを存在させることに加えて、分離操作における操作条件、特に温度と滞留時間とを特定の関係式の範囲内で操作することにより、非環式ホスファイト配位子の減損や副生物の生成、反応活性の低下を更に抑制することができる。
【0047】
分離操作として蒸留を用いた場合には、蒸留条件として50〜130℃の範囲が好ましいことが特公平5−48215号に記載されているが、本発明者らの検討によると、上記のような温度範囲においても蒸留工程に長時間を費やせば副生物の生成やホスファイト配位子の実質的な分解が観察されることが分かった。また逆に、150℃を超える温度においても極めて短時間で蒸留を行えば、ホスファイト配位子の減損がなんら観察されないことが明らかになった。これらのことは、ホスファイトの損失が起こらない分離条件が単に温度だけで決定されるのではなく、少なくとも温度と滞留時間とが関与することを示している。
【0048】
一般的に、低い温度と短い滞留時間、低い触媒濃度及び低いアルデヒド濃度における操作は、ホスファイト配位子とアルデヒドからの副生物の生成やホスファイトの分解を抑制する。このうち、本発明者らの検討によると、非環式ホスファイト配位子を含むロジウム−ホスファイト触媒系においては、温度Tと滞留時間θTが他の因子に比べてはるかに大きな影響を及ぼすことが分かった。従って、上記した温度Tと滞留時間θTの両因子は組み合わされて非環式ホスファイト配位子の安定性に関係し、またそれらの相関関係から非環式ホスファイトの安定性を予想することができる。ホスファイトの減損、副生物の生成及び活性の低下を最小限に抑制する相関関係は次の式(5)で算出されるP値が1以下となるような範囲から選定することが好ましい。
【0049】
【数4】
P=5.0×103×exp[−5000/(T1+273)]×θT1・・・(5)
(式中、T1は該分離操作における最高の温度(℃)であり、θT1は該分離操作における液の滞留時間(分)を示す。)
また、該分離操作における温度と滞留時間とを下記式(6)で算出されるP値が1以下となるような範囲内から選定することが更に好ましい。
【0050】
【数5】
P=9.6×103×exp[−5000/(T1+273)]×θT1・・・(6)
(式中、T1は該分離操作における最高の温度(℃)であり、θT1は該分離操作における液の滞留時間(分)を示す。)
【0051】
そして、該分離操作における温度T1を好ましくは30〜160℃、更に好ましくは110℃以下、最も好ましくは90℃以下の範囲内から選定するのがよく、滞留時間θT1を0.01秒〜180分、P値を1.0×10−7〜1の範囲内から選定するのがよい。
【0052】
また、高沸点である触媒液を分離する分離操作、例えば薄膜蒸発器を使用する場合においても、上記関係式の範囲内で条件をコントロールするならば、安定して触媒をリサイクルすることが可能である。
そして、前述した分離操作のうち、特に未反応オレフィン系不飽和化合物又はアルデヒド生成物を蒸留により分離する操作において、上記関係式の範囲内で条件をコントロールすることが好ましい。
【0053】
一方、ホスファイト配位子の存在下で比較的高沸点のアルデヒドを蒸留により回収する場合には、蒸留釜の温度を下げる目的で通常水蒸気蒸留が用いられるが、通常の蒸留を行う場合にくらべはるかに激しいホスファイトの減損が観察された。これは、前記したヒドロキシアルキルスルホン酸が生成する副反応が水蒸気により促進されるためと考えられる。本発明は、この現象に対しても水蒸気蒸留操作においてアミンを存在させることで、非環式ホスファイトの分解を最小限に抑制又は防止することが可能となる。
【0054】
本発明者らは、水蒸気蒸留ではホスファイトの加水分解反応がおこるため、温度Tと滞留時間θT以外に水蒸気分率Xがホスファイトの安定性に大きな影響を及ぼし、これら3つの因子を相関させた特定関係式に従って非環式ホスファイト配位子の安定性を予想することができることを見出した。
つまり、水蒸気蒸留において非環式ホスファイトの減損、副生物の生成及び活性の低下を最小限に抑制する相関関係は次の式(3)で算出されるP値が1以下となるような範囲から選定するのが好ましい。
【0055】
【数6】
P=6.5×104×exp[−6000/(T2+273)]×θT2×X・・・(7)
(式中、T2は水蒸気蒸留塔の塔底温度(℃)、θT2は蒸留釜における液の滞留時間(分)、Xは水蒸気量/(フィード量+水蒸気量)で定義される水蒸気分率である。)
【0056】
また、該分離操作における水蒸気蒸留温度と滞留時間と水蒸気分率とを下記式(8)で算出されるP値が1以下となるような範囲内から選定することが更に好ましい。
【0057】
【数7】
P=4.5×105×exp[−6000/(T2+273)]×θT2×X・・・(8)
(式中、T2は水蒸気蒸留塔の塔底温度(℃)、θT2は蒸留釜における液の滞留時間(分)、Xは水蒸気量/(フィード量+水蒸気量)で定義される水蒸気分率である。)
【0058】
そして、該分離操作における温度T2(℃)を好ましくは40〜180℃、更に好ましくは110℃以下、最も好ましくは90℃以下の範囲内から選定するのがよく、滞留時間θT2を0.01秒〜180分、水蒸気分率Xを0.1〜0.9、P値を1.0×10−7〜1の範囲内から選定するのがよい。
【0059】
本発明で用いられるヒドロホルミル化プロセス中に存在する遊離ホスファイト配位子はどんな過剰量存在していてもよく、例えば反応媒体中に存在するロジウム1モル当たり少なくとも1モルであり、100モルまで或いはそれより多くすることができる。一般に、反応媒体中に存在するロジウムに結合(錯形成)したホスファイトの量と遊離(非錯形成)のホスファイトの量との和は、ロジウム1モル当たり約4〜約500モルあれば大部分の用途に適する。また、反応媒体中に所定量の遊離配位子を維持するために、任意の態様で反応媒体中に補給用ホスファイト配位子を供給してもよい。また、ロジウム−ホスファイト系錯体触媒の非環式ホスファイト配位子と遊離ホスファイト配位子とは通常同じ種類の配位子を用いるが、必要によりそれぞれ別のホスファイト配位子を使用してもよく、また、2種以上の異なるホスファイト配位子の混合物を使用することもできる。
【0060】
一方、ロジウム−ホスファイト系錯体触媒のロジウム源としては、ロジウムアセチルアセトナート、[Rh(COD)(OAc)]2等のロジウム錯体、酢酸ロジウム等の有機塩、硝酸ロジウム等の無機塩、酸化ロジウム等の酸化物等が用いられる。(ここで、CODはシクロオクタジエンを、Acはアセチル基をそれぞれ表す。)
【0061】
ロジウム源は直接ヒドロホルミル化反応器に供給して、錯体触媒をヒドロホルミル化反応系内で形成させてもよいが、反応器外で一酸化炭素、水素及びホスファイト化合物と共に、溶媒中で高い温度・圧力の条件下で反応させて、あらかじめロジウム錯体触媒を調製しておくこともできる。触媒調製の際に使用する溶媒は、通常後述する反応溶媒の中から選ばれるが、必ずしも反応溶媒と同一の溶媒でなくてもよい。調製条件は通常、圧力が常圧〜100kg/cm2G、温度が常温〜150℃で行われる。
【0062】
本発明のヒドロホルミル化プロセスの反応媒体中に存在するロジウム−ホスファイト系錯体触媒の量は、使用すべき所定のロジウム濃度をもたらすのに必要な最低量あればよく、少なくとも触媒量のロジウムに関する基準を満たす量であればよい。ヒドロホルミル化反応媒体中のロジウム濃度は、一般に金属ロジウムとして計算して、1ppm〜1000ppmの範囲で十分であり、10〜500ppmを用いることが好ましく、25〜350ppmがより好ましい。
【0063】
本発明で用いられるオレフィン系不飽和化合物は、単品でも混合物としても用いることができ、直鎖状、分岐鎖状又は環状構造でもよい。好適なオレフィン系不飽和化合物は炭素数2〜20のオレフィンであり、2個以上のエチレン性不飽和基を含んでいてもよい。ヒドロホルミル化反応に実質的に悪影響を与えないカルボニル基、カルボニルオキシ基、ヒドロキシ基、オキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、アルキル基、ハロアルキル基等を含有していてもよい。
【0064】
オレフィン系不飽和化合物の例としては、α−オレフィン、内部オレフィン、アルケン酸アルキル、アルカン酸アルケニル、アルケニルアルキルエーテル、アルケノール等が挙げられ、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、オクタデセン、シクロヘキセン、プロピレン二量体混合物、プロピレン三量体混合物、プロピレン四量体混合物、ブテン二量体混合物、ブテン三量体混合物、スチレン、3−フェニル−1−プロペン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、3−シクロヘキシル−1−ブテン、アリルアルコール、1−ヘキセン−4−オール、1−オクテン−4−オール、酢酸ビニル、酢酸アリル、酢酸−3−ブテニル、プロピオン酸アリル、酢酸アリル、メタクリル酸メチル、酢酸−3−ブテニル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、n−プロピル−7−オクテノエート、3−ブテンニトリル、5−ヘキセンアミド等が挙げられる。
【0065】
ヒドロホルミル化反応の溶媒としては、原料オレフィン自体を用いてもよく、2種以上の混合物を用いることもできる。一般に、アルデヒド生成物及び/又は反応系中で形成される高沸点のアルデヒド液体縮合副生物を用いることが好ましい。例えば、連続プロセスの開始時には任意の一次溶剤を用いた場合でも、連続プロセスという性質上、一次溶剤は通常最終的には、アルデヒド生成物と高沸点のアルデヒド液体縮合副生物とからなる。所望により、このアルデヒド縮合副生物は予備形成させてもよい。溶剤の使用量は本発明にとって重要な問題でなく、所定プロセスに望まれる特定のロジウム濃度を維持し、且つ反応媒体としての役割を果たすのに十分な量であればよい。一般に、溶剤量は、反応媒体の総重量に対し約5重量%〜約95重量%が用いられる。
【0066】
ヒドロホルミル化反応条件としては、水素、一酸化炭素及びオレフィン系不飽和化合物の総気体圧力が500kg/cm2G未満でヒドロホルミル化プロセスを作動させることが好ましく、200kg/cm2G未満がより好ましい。最低限の総気体圧力は、反応の初期速度を達成するのに必要な反応体量により限定される。更に、本発明のヒドロホルミル化反応における一酸化炭素分圧は、好ましくは0.1〜100kg/cm2、より好ましくは1〜7kg/cm2であり、た水素分圧は好ましくは0.1〜100kg/cm2、より好ましくは1〜8kg/cm2である。一般に、水素と一酸化炭素ガスのモル比(H2:CO)は1:10〜100:1であり、より好ましくは1:1〜10:1である。
【0067】
また、反応は通常常温〜150℃の温度で実施でき、反応温度50℃〜120℃の範囲内が多くのオレフィン出発原料に対して好ましい。120℃を大幅に上回る反応温度では、実質的な利益は観察されず、また、特表昭61−501268号に開示されているように、触媒活性の減退が見込まれるために一般に好ましくない。
【0068】
オレフィンのヒドロホルミル化反応は、通常連続式の反応器に原料であるオレフィン系不飽和化合物、オキソガス及び触媒液を連続的に供給し、上記ヒドロホルミル化反応条件下にて実施される。
上記ヒドロホルミル化反応で副生する中沸点の副生物は、本発明で配位子として使用するホスファイト化合物よりも沸点の低い化合物を意味し、主としてヒドロホルミル化反応で生成するアルデヒドの2次的副反応により生成するものである。例えば、プロピレンのヒドロホルミル化反応においては、直鎖状のn−ブチルアルデヒドと分岐鎖状のイソブチルアルデヒドとが生成するが、これらのアルデヒド生成物は反応性に富み、それ自体、触媒の不存在下で、しかも比較的低温においてもゆっくりと重合反応又は縮合反応を起こし、中沸点の重縮合生成物を生成する。
【0069】
これらの中沸点の重縮合生成物としては、n−ブチルアルデヒドについては、その自己重合物である二量体及び三量体、縮合二量体である2−エチルヘキセナール、その水素化物である2−エチルヘキサナール及び2−エチルヘキサノール、n−ブチルアルデヒドの水素化物であるn−ブタノール、あるいはn−ブチルアルデヒドのジブチルアセタール等が挙げられる。また、イソブチルアルデヒドからもn−ブチルアルデヒドと同様な反応で自己縮合物である二量体、三量体が生成し、さらにn−ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドとの交互重合生成物である二量体、三量体及びそれらの誘導体も生成する。
【0070】
また、ヒドロホルミル化反応においては、上記した中沸点副生物以外にも、本発明で配位子として使用するホスファイト化合物よりも沸点の高い高沸点副生物も副生する。
【0071】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
本発明者らは、ロジウム−ホスファイト系錯体触媒を使用する連続的液体再循環ヒドロホルミル化プロセスにおいて、ホスファイトの分解を最低限に抑制するのにアルデヒド生成物等の分離条件が影響を及ぼすことを立証する促成ホスファイト減損テスト法を利用した。この方法は、極めて短時間で有為な結果を得るべく、実際のプロセスにおいてアルデヒド生成物等の分離の際に経験されるよりはるかに過酷な条件下にロジウム−ホスファイト系錯体触媒溶液を存在させることから成る。例えば、ホスファイト配位子の減損速度は通常1日当たり数%程度なので、標準的アルデヒド分離法では定量に何日もかかるが、上記の促成ホスファイト減損テスト法は、一酸化炭素及び水素(オキソガス)を共存させずに触媒溶液をアルデヒド分離温度に連続保持させることによって数時間で完了しうる。以下の実施例の一部において、この促成ホスファイト減損テスト法が触媒の安定性を評価するのに用いられた。
【0072】
実施例1及び比較例1〜3
トリス(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト(以下DBNOとする。)で錯化されたロジウムより本質的になるロジウム錯体触媒及び遊離ホスファイトの存在下に、ブテンの二量化により得られたオクテン混合物(以下、混合オクテンという)を一酸化炭素及び水素と反応させて炭素数9のアルデヒド(以下、ノニルアルデヒドという)を生成する連続的ヒドロホルミル化反応を行った。ヒドロホルミル化条件は、Rh濃度50mg/L,ホスファイト/Rh(モル比)=10、反応温度130℃、反応圧力50kg/cm2Gであった。このヒドロホルミル化反応生成液を凝縮器を備え真空ポンプに連結された500mlの蒸留フラスコに仕込んだ後、フラスコ内の圧力を約40mmHgに徐々に下げた。次いで、熱を加えて反応生成液を約90℃の温度で連続的に蒸留し、未反応オクテンと大部分のノニルアルデヒドを留去した。そして、蒸留残渣に表−1に示した添加物を加えて得られた反応液の水蒸気蒸留を行い、ノニルアルデヒドを留去した後の蒸留残渣を液体クロマトグラフィーにより分析し、配位子の定量を行った。水蒸気蒸留の蒸留条件は、蒸留釜温度90℃、滞留時間1.0hr、水蒸気分率0.5であり、前述した式(7)のP値を算出すると0.129であった。添加物の種類と添加量及び配位子の分解率(%)を表−1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例2〜10及び比較例4〜6
分離操作におけるアミンの添加効果を明確にするため、以下の実験を行った。[Rh(COD)(OAc)]2をロジウム濃度で250mg/Lとなるようにトルエンに溶解し、更に次式(A)で表されるホスファイト化合物をロジウムに対して4倍モル加えて触媒液を調製した。この触媒液を用いてプロピレンのヒドロホルミル化反応をオキソガス圧3kg/cm2G、反応温度90℃で3時間実施した。このヒドロホルミル化反応生成液を20段のオールダーショウ型蒸留塔を用いて、圧力250mmHg、蒸留釜温度80℃で連続的に蒸留し、アルデヒド生成物と触媒とを分離した。この触媒液を誘導攪拌式オートクレーブに仕込み、密閉下、90℃で8時間処理した。この熱処理液を更に常温、窒素下で2カ月保存した。2カ月後に触媒液を分析したところ、触媒液中のホスファイト配位子(A)はすべて分解していた。この触媒液にヒドロホルミル化反応に用いたのと同じホスファイト配位子(A)をロジウムに対して4倍モル添加し(この時、液中のロジウム濃度は250mg/Lであった)、更に、表−2に示した添加物を加えた液を誘導攪拌式オートクレーブに仕込み、密閉下、90℃で2時間処理を行った。その後、液を抜き出して液体クロマトグラフィーにより配位子の定量を行った。添加物の種類と添加量及び配位子の分解率(%)を表−2に示した。
【0075】
【化13】
【0076】
【表2】
【0077】
【発明の効果】
本発明によりアルデヒド類を製造することにより、特に非環式ホスファイト配位子の減損や高沸物等の副生物の生成を最低限に抑制することができ、高い活性と優れた選択性を示す非環式ホスファイト配位子を使用する液体再循環プロセスにおいて、工業的に有利にアルデヒド類を製造することができる。
Claims (15)
- リン原子を含む環状構造を分子内に持たないホスファイト化合物を配位子として有するロジウム−ホスファイト系錯体触媒の存在下、オレフィン系不飽和化合物を一酸化炭素及び水素とヒドロホルミル化反応させることにより得られる、ロジウム−ホスファイト系錯体触媒及びアルデヒド生成物を含む反応生成液から、分離操作によって未反応オレフィン系不飽和化合物、アルデヒド生成物、溶媒、中沸点副生物及び高沸点副生物から選ばれる少なくとも1つの成分を分離するアルデヒド類の製造方法において、ホスファイト化合物として、その少なくとも1つのアルコール成分が、酸素原子に結合する炭素原子の隣接炭素原子に炭化水素置換基を有する芳香族アルコールであり、かつ該少なくとも1つの成分の分離操作においてアミンを存在させることを特徴とするアルデヒド類の製造方法。
- ロジウム−ホスファイト系錯体触媒の配位子が、下記一般式(1′)で表されるホスファイト化合物からなる請求項1に記載のアルデヒド類の製造方法。
- 分離操作が未反応オレフィン系不飽和化合物又はアルデヒド生成物を蒸留により分離する操作である請求項1〜5のいずれかに記載のアルデヒド類の製造方法。
- 分離操作が水蒸気蒸留である請求項1〜4のいずれかに記載のアルデヒド類の製造方法。
- 分離操作がアルデヒド生成物を分離する操作である請求項7〜9のいずれかに記載のアルデヒド類の製造方法。
- 分離操作における温度T2(℃)を180℃以下の範囲内から選定する請求項7〜10の何れかに記載のアルデヒド類の製造方法。
- アミンがアルデヒド生成物よりも高沸点物である請求項1〜11のいずれかに記載のアルデヒド類の製造方法。
- アミンが3級アミンである請求項1〜12のいずれかに記載のアルデヒド類の製造方法。
- アミンの存在量が、ロジウム1モル当たり1〜20モルである請求項1〜13のいずれかに記載のアルデヒド類の製造方法。
- オレフィン系不飽和化合物が、プロピレン、ブテン類、オクテン類又はノネン類から選ばれたものである請求項1〜14のいずれかに記載のアルデヒド類の製造方法。
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