JP3551015B2 - グロープラグ - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,内燃機関,例えばディーゼルエンジン等の燃焼室内を予熱するために使用されるグロープラグに関し,特にヒータケースの先端側に形成する小径部を軸芯方向に延長させたグロープラグに関する。
【0002】
【従来技術】
グロープラグには,2種類の材料からなるコイルを用いた自己温度制御型と言われるものがある。該自己温度制御型グロープラグは,抵抗体である発熱コイルと制御コイルとを有すると共に,制御コイルから発熱コイルへ直列に通電する構造を有する。上記制御コイルは,発熱コイルより正の抵抗温度係数の大きな材料で形成されている。
【0003】
また,上記グロープラグにおいては,ヒータケースの先端側を小径化するなどして,速熱型として機能させると共に,エンジン始動後のアフターグロー時に発熱温度を最高温度よりも低い温度で一定時間発熱させるという,オーバーシュート特性を得られるタイプがある。
【0004】
また,近年ではディーゼルエンジンのエンジン出力向上,排ガス規制への対応に伴って,給気弁,排気弁を大径化,多数化する傾向にある。そのため,エンジンヘッドのグロープラグ取付孔の孔径を小さく,かつその長さを長くする必要があり,グロープラグの小径化,延長化が望まれている。
これに対応するために,特開平9−257251号のように,ヒータケースの先端側に形成する小径部を軸芯方向に延長させてオーバーシュート特性を得るグロープラグが知られている。このようグロープラグの一例を以下に示す。
【0005】
従来のグロープラグ9は,エンジンのエンジンヘッド(図示略)におけるグロープラグ取付ネジ(図示略)に螺着して使用するものであり,図3に示すごとく,発熱体90を内蔵したヒータケース91と,該ヒータケース91を取り付けるハウジング92とを有する。
上記ヒータケース91は,図3に示すごとく,上記ハウジング92の先端側に位置すると共に,上記ハウジング92の内径よりも小さい外径dを有する小径部911と,後端側に位置し上記小径部911の外径dよりも大きい外径Dを有する大径部912と,上記小径部911と大径部912との境界に位置するテーパ部913とよりなる。
【0006】
上記発熱体90は,上記小径部911内の先端側に配置された発熱コイル901と,上記小径部911内から大径部912内にかけて配置された制御コイル902とよりなる。また,上記発熱体90には,中軸931を介して外部接続端子932が接続されている。なお,上記発熱体90には,上記中軸931,外部接続端子932を介して通電する。また,上記ヒータケース91と上記発熱体90,及び上記ヒータケース91と上記中軸931との間には,短絡防止のため電気絶縁用にマグネシア粉末938が入れられている。
【0007】
なお,上記ハウジング92の後端部922は,六角形状であり,絶縁ブッシュ951,金属ナット952を介して上記中軸931,外部接続端子932を固定している。
【0008】
また,上記グロープラグ9を製造するにあたっては,図4に示すごとく,上記テーパ部913を形成するために,4つ割りのダイス4を用いて,上記マグネシア粉末938と発熱体90とを内蔵した上記ヒータケース91に対してスェージングを行う。スェージングの方法は様々であるが,その一例を以下に示す。
【0009】
スェージングを行うにあたっては,図5(A)に示すごとく,上記ヒータケース91よりも外径がひとまわり大きな素管チューブ910を用意する。この段階では,上記素管チューブ910の一端側の外径は,上記ヒータケース91の大径部912の外径Dと等しい。また,該素管チューブ910内には,上記発熱体90である発熱コイル901と制御コイル902,及びマグネシア粉末938が入っている。
【0010】
次いで,図5(B)に示すごとく,上記ダイス4を用いて上記素管チューブ910の他端側を半径方向から押圧する。次いで,図5(C)に示すごとく,上記と同様に上記素管チューブ910の一端側を半径方向から押圧する。そして,この2段階の押圧によって,上記素管チューブ910の一端側が小径部911となり,他端側が大径部912となり,両者の間がテーパ部913となって上記ヒータケース91が形成される。
【0011】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来のグロープラグにおいては,次の問題がある。
即ち,上記グロープラグ9においては,図4に示すごとく,上記テーパ部913内におけるマグネシア粉末938の充填密度が,上記小径部911,大径部912内に比べて低くなっている場合がある。この原因は,明確ではないが次のように推測される。
【0012】
図5(B)に示すごとく,上記ヒータケース91の大径部912においては,1回目の押圧によって,その内部のマグネシア粉末938の充填密度が高くなる。また,図5(C)に示すごとく,上記ヒータケース91の小径部911においては,2回目の押圧によって,その内部のマグネシア粉末938の充填密度が高くなる。
しかし,上記ヒータケース91のテーパ部913においては,上記ダイス4の押圧回数が減ったり,押圧力が軸芯方向へ逃げてしまい上記マグネシア粉末938がハウジング92側に移動してしまう等,マグネシア粉末938にかける押圧力が不十分であることが充填密度を低下させる原因であると考えられる。
【0013】
そして,上記のごとく,マグネシア粉末938の充填密度が低くなる場合には,上記テーパ部913において,熱伝導率が低くなる。
さらに,この熱伝導率の低い上記テーパ部913内には,上記小径部911との境界から上記大径部912との境界に至るすべての間に,発熱体である制御コイル902が内臓されている。
そのため,例えば12V(ボルト)系グロープラグに対して,アフターグロー時の印加電圧である14Vという比較的高い電圧を印加する場合には,上記テーパ部913において局部発熱を引き起こし,上記グロープラグ9の寿命を短くするおそれがある。
【0014】
また,上記グロープラグ9の使用が長期にわたる場合には,印加する電圧が例えば予熱時の印加電圧である11Vと比較的低くても上記テーパ部913内におけるマグネシア粉末938の充填密度が低いので,特に上記テーパ部913内において上記制御コイル902が酸化しやすい。そのため,上記制御コイル902の抵抗が増加し,局部発熱を促進させてしまう。それ故,上記グロープラグ9の耐久性を向上させることは困難である。
【0015】
なお,上記テーパ部913におけるマグネシア粉末938の充填密度低下は,図5に示したスェージングの方法に限らず,テーパ部を形成するヒータケースであれば,程度の差はあるが生じる問題である。
【0016】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,ヒータケースのテーパ部における局部発熱を防止できると共に,耐久性に優れたグロープラグを提供しようとするものである。
【0017】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,発熱コイルと,該発熱コイルの抵抗温度係数よりも大なる正の抵抗温度係数を有すると共に上記発熱コイルの一端側に接続された制御コイルと,該制御コイルと直接接続される中軸と,一端側が閉塞され,閉塞された一端側より上記発熱コイル及び上記制御コイルを内蔵するヒータケースと,該ヒータケース内に充填される電気絶縁用の耐熱絶縁粉末とからなり,上記ヒータケースの他端側を把持するハウジングによって,上記ヒータケースの一端側が上記ハウジングの一端面より突出するように固定されているグロープラグにおいて,
上記ヒータケースの一端側は上記ヒータケースの他端側の径よりも小なる径を有する小径部を有し,上記ヒータケースの他端側は上記小径部の径よりも大なる径を有する大径部を有し,上記小径部と大径部との境界にはテーパ部を有しており,
かつ上記制御コイル側に接続した中軸の先端面は上記テーパ部内に位置していることを特徴とするグロープラグにある。
【0018】
本発明において最も注目すべきことは,制御コイル側に接続した中軸の先端面はテーパ部内に位置すると共に,上記制御コイルは後端側の一部分だけが上記テーパ部内に位置することである。
【0019】
次に,本発明の作用効果につき説明する。
本発明のグロープラグにおいては,上記ヒータケースに対してスェージング完了後の段階で,上記制御コイル側に接続した中軸の先端面はテーパ部内に位置する。
【0020】
そのため,上記制御コイル側に接続した中軸の先端面は,上記ヒータケース内の耐熱絶縁粉末がハウジング側に移動することを妨げるので,ダイスの押圧力が軸芯方向へ逃げてしまうこともない。そのため,耐熱絶縁粉末に十分な押圧をかけることができ,充填密度の低下を抑制することができる。
【0021】
そのため,上記テーパ部において,充填密度の低下を原因とする熱伝導率の低下を防止することができる。
さらに,上記制御コイルは,後端側の一部分だけが上記テーパ部内に内蔵されるので,上記テーパ部において発熱する部分を少なくすることができる。
それ故,上記テーパ部における局部発熱を防止することができる。
【0022】
また,上記グロープラグの使用が長期にわたる場合においても,上記テーパ部内における耐熱絶縁粉末の充填密度は十分であるので,上記テーパ部内における上記制御コイルの酸化を防止することができる。そのため,上記制御コイルの電気抵抗が増加することもなく,局部発熱を促進させることもない。それ故,上記グロープラグの耐久性を向上させることができる。
【0023】
また,上記発熱コイルの材料としては,ニッケルクロム合金,鉄クロム合金等,上記制御コイルの材料としては,コバルト鉄合金,低炭素鋼等が好ましい。
【0024】
上述のごとく,本発明によれば,ヒータケースのテーパ部における局部発熱を防止できると共に,耐久性に優れたグロープラグを提供することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかるグロープラグについて,図1〜図2を用いて説明する。
本例のグロープラグ1は,図1〜図2に示すごとく,発熱コイル21と,該発熱コイル21の抵抗温度係数よりも大なる正の抵抗温度係数を有すると共に上記発熱コイル21の一端側に接続された制御コイル22とを有する。また,該制御コイル22と直接接続される中軸61と,一端側36が閉塞され,閉塞された一端側36より上記発熱コイル21及び上記制御コイル22を内蔵するヒータケース3と,該ヒータケース3内に充填される電気絶縁用の耐熱絶縁粉末としてのマグネシア粉末38とを有する。
【0026】
また,上記グロープラグ1は,上記ヒータケース3の他端側39を把持するハウジング5によって,上記ヒータケース3の一端側36が上記ハウジング5の一端面51より突出するように圧入固定されている。
上記ヒータケース3の一端側36は上記ヒータケース3の他端側39の径Dよりも小なる径dを有する小径部31を有し,上記ヒータケース3の他端側39は上記小径部の径dよりも大なる径Dを有する大径部32を有し,上記小径部31と大径部32との境界にはテーパ部33を有している。
また,上記制御コイル22側に接続した中軸61の先端面611は上記テーパ部33内に位置している。
【0027】
以下,詳説する。
上記ヒータケース3の一端側36は,上記ヒータケース3と同材料からなるリベット(図示略)によって閉塞されており,上記ハウジング5の一端面51より突出するように圧入固定されている。
なお,上記ヒータケース3とハウジング5との固定は,上記圧入の他,ろう付けによるものでもよい。また,上記リベット(図示略)は発熱コイル21と溶接接続されている。
【0028】
また,上記ヒータケース3のテーパ部33は,従来と同様にスェージング等の絞り加工により,スェージングの絞り治具であるダイス4(図2)によって形成される。なお,上記ヒータケース3のテーパ部33の傾斜角度αは,軸芯方向に対して7.5°程度である。また,上記小径部31の外径dは3.5mm,大径部32の外径Dは5.0mmである。
【0029】
次に,上記制御コイル22はコバルト鉄合金(Co92重量%−Fe8重量%)からなり,上記発熱コイル21の抵抗温度係数よりも大なる正の抵抗温度係数を有する。なお,上記発熱コイル21の抵抗温度係数としては,正又は負のいずれであってもよい。
また,上記制御コイル22は,例えばプラズマアーク溶接,レーザ溶接等によって上記発熱コイル21の一端側29に接続されている(図1)。
【0030】
次に,上記発熱コイル21はニッケルクロム合金(Ni80重量%−Cr20重量%)からなり,図1に示すごとく,ヒータケース3の小径部31内にのみ配置されている。また,上記制御コイル22は,上記小径部31内にその大部分を配置され,テーパ部33内には上記制御コイル22の後端側の一部分だけが配置されている。
上記発熱コイル21は小径部31内における一端側(先端側)36に内蔵し,上記制御コイル22は上記小径部31内における他端側(後端側)39,及びテーパ部33内における一端側36に内蔵する。
【0031】
また,図1に示すごとく,上記ヒータケース3の内部には,上記発熱コイル21,制御コイル22,及び中軸61の周辺に,電気絶縁用の耐熱絶縁粉末であるマグネシア粉末38が充填されている。
なお,上記ヒータケース3の他端側39と中軸61との間は,シリコンゴム(図示略)によって封止されている。
【0032】
また,上記中軸61は,図2に示すごとく,上記テーパ部33内に先端面611を配設している。該先端面611は上記ヒータケース3の軸方向と垂直に形成されている。また,上記先端面611を有する先端部612の外周には,抵抗溶接によって上記制御コイル22の後端が直接に接続されている。
【0033】
なお,上記制御コイル22には,図1に示すごとく,上記中軸61を介して外部接続端子62が接続されており,該外部接続端子62を介して通電する。
また,上記中軸61と上記外部接続端子62とは上記グロープラグ取付ネジ18の内側において溶接接合されており,両者の接合部は上記グロープラグ取付ネジ18の内側に位置する。これは,上記ハウジング5の中軸収容部512(図1)の強度(肉厚)を確保するためであり,上記グロープラグ取付ネジ18の内側に位置するハウジング5の内径を上記中軸収容部512の内径より大きくして,上記中軸61と上記外部接続端子62の接合部との間に絶縁隙間を確保するためである。
【0034】
また,上記ハウジング5の後端部52は,六角形状であり,絶縁ブッシュ71,金属ナット72を介して上記中軸61,外部接続端子62を固定している。
【0035】
次に,本例の作用につき説明する。
本例のグロープラグ1においては,図2に示すごとく,上記ヒータケース3に対してスェージングの完了後の段階で,上記制御コイル22側の中軸61の先端面611は,上記ヒータケース3のテーパ部33内に位置する。また,中実状の上記中軸61の先端部612が上記テーパ部33内に位置する。
【0036】
そのため,図2に示すごとく,ダイス4により上記ヒータケース3に押圧力をかける場合には,上記制御コイル22側の中軸61の先端面611は,上記ヒータケース3内のマグネシア粉末38がハウジング5側に移動することを妨げるので,上記ダイス4の押圧力が軸芯方向へ逃げてしまうこともない。そのため,マグネシア粉末38に十分な押圧をかけることができ,充填密度の低下を抑制することができる。
【0037】
そのため,上記テーパ部33において,マグネシア粉末38の充填密度の低下を原因とする熱伝導率の低下を防止することができる。
さらに,上記制御コイル22は,後端側の一部分だけが上記テーパ部33内に内蔵されるので,上記テーパ部33において発熱する部分を少なくすることができ,発熱量を抑えることができる。
それ故,上記テーパ部33における局部発熱を防止することができる。
【0038】
また,上記グロープラグ1の使用が長期にわたる場合においても,上記テーパ部33内におけるマグネシア粉末38の充填密度は十分であるので,上記テーパ部33内における上記制御コイル22の酸化を防止することができる。そのため,上記制御コイル22の電気抵抗が増加することもなく,局部発熱を促進させることもない。それ故,上記グロープラグ1の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1にかかる,グロープラグの断面図。
【図2】実施形態例1にかかる,テーパ部内のマグネシア粉末の充填状態を説明する断面図。
【図3】従来例にかかる,グロープラグの断面図。
【図4】従来例にかかる,テーパ部内のマグネシア粉末の充填状態を説明する断面図。
【図5】従来例にかかる,スェージングの方法の一例を説明する説明図。
【符号の説明】
1...グロープラグ,
21...発熱コイル,
22...制御コイル,
3...ヒータケース,
31...小径部,
32...大径部,
33...テーパ部,
5...ハウジング,
51...一端面,
61...中軸,
611...先端面,

Claims (1)

  1. 発熱コイルと,該発熱コイルの抵抗温度係数よりも大なる正の抵抗温度係数を有すると共に上記発熱コイルの一端側に接続された制御コイルと,該制御コイルと直接接続される中軸と,一端側が閉塞され,閉塞された一端側より上記発熱コイル及び上記制御コイルを内蔵するヒータケースと,該ヒータケース内に充填される電気絶縁用の耐熱絶縁粉末とからなり,上記ヒータケースの他端側を把持するハウジングによって,上記ヒータケースの一端側が上記ハウジングの一端面より突出するように固定されているグロープラグにおいて,
    上記ヒータケースの一端側は上記ヒータケースの他端側の径よりも小なる径を有する小径部を有し,上記ヒータケースの他端側は上記小径部の径よりも大なる径を有する大径部を有し,上記小径部と大径部との境界にはテーパ部を有しており,
    かつ上記制御コイル側に接続した中軸の先端面は上記テーパ部内に位置していることを特徴とするグロープラグ。
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