JP3550716B2 - エポキシ化触媒 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、無機バナジウム化合物よりなるエポキシ化触媒に関するものである。特に、有機ヒドロペルオキシド類を用いてアリルアルコールのエポキシ化反応によりグリシドールを製造する際に好適に使用されるオキソバナジウム化合物よりなるエポキシ化触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機ヒドロペルオキシド類を用いたオレフィン類、不飽和アルコール類などの不飽和化合物のエポキシ化反応は、工業的に極めて重要な反応であり、今までに多くの研究がなされてきた。特に、少量で高選択率・高転化率を達成できる金属触媒の開発や改質に多大な努力が払われてきた。
【0003】
触媒開発にはジョン・コラーの先駆的な研究がある。例えば、特公昭40−26184号公報には、バナジウム、モリブデン、タングステン、セレニウムなどの金属の溶解性化合物が低級オレフィン類のエポキシ化に優れていることが開示されている。また、特公昭44−16887号公報には、アリルアルコールをエポキシ化する際に、数ある金属触媒のなかでバナジウム化合物が特に優れていることが開示されている。さらに、特公昭53−38273号公報には、多量のアルコールに溶解された可溶性のバナジン酸アルキル(オキソバナジウムアルコキシドと同意語)からなる触媒が、アリルアルコールのエポキシ化によるグリシドールの製造に好適な触媒であることが開示されている。加えて、特開昭62−266141号公報には、五酸化バナジウムをメチルアルコール中で加熱処理して得られた非有機性化合物がグリシドール製造用触媒として高選択性を有することが開示されている。
【0004】
上述のような高活性な触媒の開発と共に、高濃度化や貯蔵安定性の向上など既存のエポキシ化触媒の改質や触媒製造方法の改良も同時に進められている。例えば、米国特許第4009122号明細書には、オキソモリブデン化合物とアルキレングリコール類およびアミン類、特に好ましくは第三級アミン類とを高温で反応させることにより、高濃度な触媒溶液が得られることが開示されている。また、特開平1−175985号公報には、プロピレングリコールと、それに溶解するオキソバナジウム化合物との反応生成物であるオキソバナジウム錯体が、良好な貯蔵安定性およびエポキシ化触媒として高活性を示すことが開示されている。しかも、特公平5−17234号公報には、水酸化アンモニウムおよび水の存在下に反応して得られる反応溶液から水およびアンモニアを除去したモリブデン−アルカノール錯体が、良好な貯蔵安定性を示すことが開示されている。
【0005】
このように、アミン類や水酸化アンモニウムなどの窒素化合物は、触媒を製造する際に効果的であるばかりでなく、エポキシ化反応の際にもエポキシ化合物の選択性を高めるのに顕著な効果を示すことが報告されている。例えば、特開昭56−133279号公報には、モリブデン、バナジウム、タングステンなどの金属触媒と共に、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族アミン類、アニリンなどの芳香族アミン類、ピリジン、ピコリンなどの環状アミン類からなる有機アミン系化合物を併用することにより、高選択率・高収率でエポキシ化合物が得られることが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、エポキシ化合物の1つであるグリシドールは、反応性の高いエポキシ基と水酸基とを一分子中に有しており、かつ両者の官能基の反応が少量の酸および塩基によって触媒作用を受けることから、エポキシ化合物のなかでも特別に不安定で反応性の高い物質に属するものである。
【0007】
従って、上述の触媒を用いても、アリルアルコールのエポキシ化によりグリシドールを製造する場合には十分満足な結果が得られず、より優れた触媒の開発が望まれている。例えば、固体の無機バナジウム化合物をそのままエポキシ化触媒として用いる場合には、反応原料への溶解性が低い上に、グリシドールの選択性は著しく低下する。また、多量のアルコールで溶解したオキソバナジウム錯体をエポキシ化触媒として用いる場合には、過剰のアルコールと生成するグリシドールとの副反応が問題となる。
【0008】
エポキシ化反応前に、溶解に用いた過剰のアルコールを除去しようとすれば、余分な工程が増えることによるコスト・アップと熱履歴による触媒の劣化が問題となる。また、触媒の改質の際に用いる水、アルカリ性物質、有機アミン化合物などの塩基性物質は、グリシドールの反応性を著しく高める(但し、副反応を起こす)場合があるため特別な注意が必要であるばかりでなく、エポキシ化反応前にこれらの物質を除くには多大な労力を必要とする。さらにまた、触媒の改質の程度は、触媒を構成する金属原子の種類によって大きく影響し、エポキシ化される不飽和化合物の種類によっても顕著に異なる。そのうえ、モリブデン系触媒の改質に用いられた方法がそのままバナジウム系触媒の改質に適用できるとは限らない。
【0009】
この発明は、上記のような従来技術の問題に鑑みてなされたものである。その目的とするところは、バナジウム化合物に対する溶解性およびエポキシ化反応の原料に対する溶解性に優れたエポキシ化触媒を提供することにある。また、他の目的とするところは、エポキシ化合物、特にグリシドールを高選択率でかつ高収率で得ることができるとともに、比較的簡便に得られるエポキシ化触媒を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の問題点につき鋭意研究を重ねてきた結果、特定な有機アミン化合物と特定なグリコール類とを併用することにより、固体の無機バナジウム化合物の溶解性を高めることができ、得られた触媒がエポキシ化の際に用いる反応原料への溶解性が優れ、かつ高選択率・高収率でグリシドールを生成させることができることを見出しこの発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、請求項1に記載のエポキシ化触媒の発明では、原料化合物をエポキシ化してエポキシ化合物を得る際に使用されるエポキシ化触媒であって、無機バナジウム化合物を、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、および炭素数1ないし8の第1級または第2級の脂肪族アミン類から選ばれた少なくとも1種の有機アミン化合物と、2個の水酸基がそれぞれ隣接する炭素原子に結合した炭素数2ないし5のグリコール類とを併用した溶剤に溶解したものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1の発明において、無機バナジウム化合物がメタバナジン酸アンモニウムまたは五酸化バナジウムであり、グリシドール製造用に用いられるものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明では、請求項2の発明において、有機アミン化合物がモノエタノールアミンであり、グリコール類がエチレングリコールであるものである。
【0014】
以下に、この発明について詳細に説明する。
この発明に用いられる固体の無機バナジウム化合物としては、例えば、五酸化バナジウム、二酸化バナジウム、三酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウムおよびその水和物、隣バナジン酸のようなヘテロ多重酸もしくはその他のバナジウム含有ヘテロ多重無機化合物およびそれらの塩などが挙げられる。これらの化合物のうち、安価で容易に工業製品を入手できるメタバナジン酸アンモニウムまたは五酸化バナジウムが最も好ましい。
【0015】
この発明に用いられる有機アミン化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよび炭素数1ないし8の第1級および第2級の脂肪族アミン類、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n−プロピルアミン、sec-プロピルアミン、ジ-n- プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどが挙げられる。これらの中で、モノエタノールアミンが最も好ましい。その理由は、少量で無機バナジウム化合物を溶解でき、濃縮の際に不必要なアミンを除去し易く、かつ高選択率でグリシドールが得られ、しかも副反応が少ないためである。このような機能が発揮されるのは、モノエタノールアミンが分子中に水酸基とアミノ基を有していることから、窒素原子が錯体中心のバナジウム原子に好ましい形で配位できるためと考えられる。
【0016】
炭素数が少ない脂肪族アミン類の場合には、固体の無機バナジウム化合物の溶解作業の際に揮発し易い。一方、炭素数の大きい脂肪族アミン類、特に炭素数8を越える脂肪族アミン類の場合には、蒸発除去が困難で触媒中に残存したものがエポキシ化反応に悪影響を及ぼすなどの問題が生じる。また、トリエチルアミンのような第3級アミン類の場合には、均一な触媒溶液にならない。
【0017】
この発明に用いられるグリコール類は、2個の水酸基がそれぞれ隣接する炭素原子に結合した炭素数2ないし5のグリコール類である。このグリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。これらのうち、固体の無機バナジウム化合物への溶解性およびエポキシ化の際に用いられる反応原料への溶解性の高いエチレングリコールが最も好ましい。
【0018】
エポキシ化触媒中の各成分の割合は、無機バナジウム化合物中の金属バナジウムのグラム当量に対する有機アミン化合物のモル数の比で、1:0.5〜1:20の範囲が好ましく、1:1〜1:10の範囲がさらに好ましい。この範囲よりも有機アミン化合物のモル数が少ない場合には、無機バナジウム化合物が溶解し難く、また得られた触媒がエポキシ化の際の反応原料への溶解性に乏しく好ましくない。前記範囲よりも多い場合には、エポキシ化反応に悪影響を及ぼすために好ましくない。
【0019】
また、無機バナジウム化合物中の金属バナジウムのグラム当量に対するグリコール類のモル数の比は、1:1〜1:45が好ましく、1:2〜1:30がさらに好ましい。この範囲よりもグリコール類のモル数が少ない場合には、無機バナジウム化合物が溶解し難く、また得られた触媒がエポキシ化の際の反応原料への溶解性に乏しく好ましくない。前記範囲よりも多い場合には、エポキシ化反応に悪影響を及ぼすために好ましくない。従って、メタバナジン酸アンモニウムをモノエタノールアミンとエチレングリコールよりなる溶剤に溶解したエポキシ化触媒の場合、好ましい触媒の濃度は、前記モル比の下限と上限に基づいて金属バナジウム換算で1〜17重量%の範囲である。
【0020】
この発明のエポキシ化触媒は、無機バナジウム化合物に前記濃度範囲内の有機アミン化合物およびグリコール類を混合し、50〜80℃の温度範囲内で、0.5〜3時間の間加熱処理し、溶解または予め前記条件下に有機アミン化合物で溶解した後、次いでグリコール類を加えることによって得ることができる。前記溶解工程は減圧下に行なうことができる。溶解工程中または溶解後に濃縮することは、水、アンモニア、過剰の有機アミン化合物およびグリコール類などエポキシ化に悪影響を及ぼす物質を除くこと、または少なくすることができ好ましいものである。
【0021】
モノエタノールアミンおよびエチレングリコールを用い、上述のようにして得られたエポキシ化触媒のIRスペクトルの差スペクトルから、920cm-1にV=Oの吸収が見られ、オキソバナジウム化合物であることが示されている。この吸収は、通常のアルコールエステルの吸収よりも79cm-1程度低波数になっていることから、金属錯体の配位には窒素原子が関与していることがわかる。このように配位した窒素原子はグリシドールの副反応にははとんど影響を及ぼさないものである。
【0022】
この発明のエポキシ化触媒は、有機ヒドロペルオキシド類を用いたアリルアルコールのエポキシ化反応によるグリシドールの製造に好適な触媒である。エポキシ化反応、例えば、グリシドールの製造に用いることのできる有機ヒドロペルオキシド類は、−OOH基を有する如何なる有機ヒドロペルオキシドをも利用することができる。工業的に比較的容易に入手できるものとしては、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、1−メチル−1−シクロヘキシルエチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシドなどが挙げられる。
【0023】
これらのなかで、炭化水素の酸素酸化により容易に合成でき、安価な有機ヒドロペルオキシド類として、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドおよびt−ブチルヒドロペルオキシドがあるが、他の副生物からのグリシドールの精製分離のし易さを考えると、t−ブチルヒドロペルオキシドが最も好ましい。これらの有機ヒドロペルオキシド類には、その前駆体であるエチルベンゼン、クメン、イソブタンまたはその他の炭化水素、あるいは酸化副生物である1−フェニルエタノール、クミルアルコール、t−ブタノールなどが含まれていてもよく、エポキシ化反応に供する有機ヒドロペルオキシド類の濃度も特に限定されるものではない。一般に、有機ヒドロペルオキシド類の濃度は5重量%以上であればよいが、5重量%以上の水を含まないものが好ましい。
【0024】
エポキシ化反応に用いられる不飽和化合物、例えば、アリルアルコールに対する有機ヒドロペルオキシド類の割合は、モル比で1:0.2〜1:3、好ましくは1:0.5〜1:1.2である。有機ヒドロペルオキシド類の割合が少な過ぎると、未反応アリルアルコールを回収再利用の際の損失が問題となり、多過ぎると有機ヒドロペルオキシド類の回収再利用のみならずグリシドールの選択率が大幅に低下し、好ましくない。
【0025】
エポキシ化反応に用いられる触媒の使用量は、特に制限されず、幅広い範囲で設定される。しかし、一般に反応混合物に対し、金属バナジウムに換算して0.01〜7重量%の範囲が好適で、0.05〜2重量%の範囲がさらに好適である。使用量が少なくなり過ぎると、エポキシ化反応の反応速度が遅くなって実用性がなくなり、多くなり過ぎると初期の反応速度が著しく増加し、制御が困難となる上に、副反応が増加して好ましくない。
【0026】
エポキシ化の反応温度は、通常、50〜130℃、好ましくは、70〜120℃の範囲である。50℃未満の反応温度では反応速度が遅くなり、130℃を越える温度ではグリシドールの副反応や有機ヒドロペルオキシド類自身の分解をも誘起するので好ましくない。
【0027】
エポキシ化の反応形式は、触媒を含む不飽和化合物中に有機ヒドロペルオキシド類、または不飽和化合物中に触媒を含む有機ヒドロペルオキシド類を添加する回分式反応が採用される。また、触媒、不飽和化合物および有機ヒドロペルオキシド類を同時に仕込む、またはこれらの混合溶液を徐々に温度を上げながら反応させる回分式反応や、複数の撹拌槽を有する多段式の連続反応など規模や条件に応じて任意の形式が採用される。グリシドールの製造には、アリルアルコールに触媒を含む有機ヒドロペルオキシド類を添加して反応させる形式か、触媒、アリルアルコールおよび有機ヒドロペルオキシド類を同時に仕込み反応させる形式が、選択率を高めるのに好都合である。
【0028】
【作用】
この発明においては、有機アミン化合物およびグリコール類に含まれる−NH−基と−OH基との相互作用によりアルコール部分が活性化され、固体の無機バナジウム化合物の溶解性を高め、かつ得られた触媒がオキソバナジウム錯体としてエポキシ化反応に好都合な形態になる。従って、従来のエポキシ化触媒に比較して次のような利点を有する。
【0029】
(1) 比較的簡単な溶解作業により高濃度なエポキシ化触媒が調製され、また減圧下に容易に濃縮されるため、エポキシ化の際に過剰な有機アミン化合物およびグリコール類による副反応が少ない。
【0030】
(2) 得られたエポキシ化触媒は、エポキシ化の際の反応原料に対する溶解性が高いため、エポキシ化の活性が高く副反応が少ない。
(3) 不安定で反応性の高いグリシドールの製造に好適な触媒であり、高選択率・高収率でグリシドールが生成される。
【0031】
(4) エポキシ化触媒が液体になり、連続エポキシ化反応プロセスにおける触媒の連続仕込みが可能となる。
(5) エポキシ化触媒は無機バナジウム化合物が溶剤に実質上均一に溶解して安定な錯体を形成し、凝集による沈澱が起こらないため、貯蔵安定性が良く、長期間の保存に優れている。
【0032】
(6) オキソバナジウム錯体の配位子が高沸点物質であるため、エポキシ化反応により得られる製品の分離精製に特別な配慮を必要としない。
【0033】
【実施例】
以下に、実施例、比較例、参考例および比較参考例によってこの発明をさらに具体的に説明する。なお、各例に用いた分析法について以下に示す。
[エポキシ化触媒の分析]
・金属バナジウム含有量( 重量%) ・・・メタバナジン酸アンモニウムの仕込み量を基礎にして次式より求めた。
【0034】
金属バナジウム含有量( 重量%) ={( 触媒溶液中の金属バナジウム原子のグラム原子量) /( 触媒溶液の重量(g) }×100
・濃縮率(%)・・・仕込み量と濃縮後の触媒溶液の重量より、それぞれの金属バナジウム含有量を計算し、次式より求めた。
【0035】
濃縮率(%)={( 濃縮後の金属バナジウム含有量) −( 仕込み時の金属バナジウム含有量) }/( 濃縮後の金属バナジウム含有量) ×100
・水分量(重量%)・・・カール・フィッシャー法で測定した。
・触媒溶液の溶解状態・・・室温において目視で判断した。
・触媒の0.34モル%t−ブチルヒドロペルオキシド−t−ブタノール(70 重量部:30重量部) 溶液の溶解状態・・・触媒溶液をt−ブチルヒドロペルオキシドに対して0.34モル%になるようにt−ブチルヒドロペルオキシド−t−ブタノール(70 重量部:30重量部) 溶液に混合し、室温で10分間撹拌後の沈澱の析出状態を目視で観察した。
[グリシドールの製造]
内部標準法を用い、反応溶液のガスクロ分析を行ない、次式に従い転化率(%)、選択率(%)および収率(%)を計算した。
・転化率(%)={( 反応により消費されたt−ブチルヒドロペルオキシドのモル数) /( 仕込みのt−ブチルヒドロペルオキシドのモル数) }×100
・選択率(%)={( 生成したグリシドールのモル数) /( 反応により消費されたt−ブチルヒドロペルオキシドのモル数) }×100
・収率(%)=転化率(%)×選択率(%)/100
(実施例1ないし8)
50mlナス型フラスコに、1.177g( 0.01モル) のメタバナジン酸アンモニウムと、表1に示すメタバナジン酸アンモニウムに対するモル比として表わした所定量のモノエタノールアミンおよびエチレングリコールを仕込み、50℃で30分加熱溶解し、表1に示す金属バナジウム含有量の触媒溶液を調製した。そして、得られた触媒溶液および前記触媒の0.34モル%t−ブチルヒドロペルオキシド−t−ブタノール(70 重量部:30重量部) 溶液の溶解状態を調べ、実施例1ないし8として表1に示した。
(比較例1ないし3)
実施例1に準じて触媒溶液を調製し、触媒溶液および触媒の0.34モル%t−ブチルヒドロペルオキシド−t−ブタノール(70 重量部:30重量部) 溶液の溶解状態を調べ、比較例1ないし3として表1に示した。なお、表1において、MEA はモノエタノールアミン、EGはエチレングリコール、NH4VO3はメタバナジン酸アンモニウム、TBHPはt−ブチルヒドロペルオキシド、TBA はt−ブタノールを表す。また、溶解状態における○は完全に溶解、△は微量の沈澱が析出、×は不溶を表す。
【0036】
【表1】
Figure 0003550716
【0037】
(参考例1ないし8)
ジムロート冷却管、温度計、塩化カルシウム管および撹拌装置を備えた200ml四ツ口フラスコに、41.82 g (0.72モル) のアリルアルコール、76.48 g (0.60モル) のt−ブチルヒドロペルオキシド−t−ブタノール(70重量部:30重量部)溶液、および金属バナジウム原子に換算して0.00204グラム当量(金属バナジウム換算で反応混合物に対して0.09重量%)の実施例1ないし8で調製した触媒溶液を仕込み、89〜96℃の還流状態で4時間エポキシ化反応を行ない、グリシドールを得た。反応溶液のガスクロ分析を行ない、転化率、選択率および収率を求め、参考例1ないし8として表2に示した。
(比較参考例1ないし3)
比較例1ないし3で得られた触媒溶液を用い、参考例1に準じてエポキシ化反応を行ない、転化率、選択率および収率を求め、比較参考例1ないし3として表2に示した。
【0038】
【表2】
Figure 0003550716
【0039】
表1および表2に示したように、実施例1〜8では、メタバナジン酸アンモニウムに対するモノエタノールアミンのモル比が0.5〜20の範囲内であり、メタバナジン酸アンモニウムに対するエチレングリコールのモル比が1〜45の範囲内であり、かつ金属バナジウムの含有量が1〜17重量%の範囲内である。このため、触媒の溶解状態に優れているとともに、エポキシ化反応により得られるグリシドールの選択率、収率が良好である。一方、メタバナジン酸アンモニウムのみの場合(比較例1)および溶剤としてモノエタノールアミンのみを用いた場合(比較例2)では、触媒の溶解状態が不良である。また、溶剤としてエチレングリコールのみを用いた場合(比較例3)では、エポキシ化反応の選択率や収率が低下する。
(実施例9ないし22)
50mlナス型フラスコに、1.177g( 0.01モル) のメタバナジン酸アンモニウムと、表3に示すメタバナジン酸アンモニウムに対するモル比として表わした所定量のモノエタノールアミンおよびエチレングリコールを仕込み、50℃に加熱して常圧から180mmHgまでゆっくり減圧しながら、副生するアンモニアガスおよび水を留去した。さらに濃縮する場合には、80℃まで加熱し、さらに減圧度を3mmHgまで高め、モノエタノールアミンおよびエチレングリコールを留去し、表3に示す金属バナジウム含有量の触媒溶液を調製した。そして、得られた触媒溶液および前記触媒の0.34モル%t−ブチルヒドロペルオキシド−t−ブタノール(70 重量部:30重量部) 溶液の溶解状態を調べ、実施例9ないし22として表3に示した。なお、表3において、溶解状態における「溶解」は、実質的に溶解状態にあったことを示す。
【0040】
【表3】
Figure 0003550716
【0041】
(参考例9ないし22)
実施例9ないし22で得られた触媒溶液を用い、参考例1に準じてエポキシ化反応を行ない、転化率、選択率および収率を求め、参考例9ないし22として表4に示した。
【0042】
【表4】
Figure 0003550716
【0043】
表3および表4に示したように、実施例9〜22のエポキシ化触媒は、いずれも触媒の溶解状態が良好で、エポキシ化反応における良好な選択率、収率が確保される。
(実施例23)
実施例18で得られた触媒溶液のFT−IRスペクトルを測定した。この触媒溶液にはモノエタノールアミンおよびエチレングリコールが含まれているため、これらの物質のFT−IRスペクトルを別途測定し、触媒溶液との差スペクトルを求めたところ、920cm-1にV=Oに基づく吸収を得ることができた。
(比較例4)
オキソバナジウムトリn−ブトキシド(日亜化学(株)製)のFT−IRスペクトルを測定したところ、999cm-1にV=Oに基づく吸収を得ることができた。
【0044】
実施例23と比較例4との比較により、V=O吸収が79cm-1低波数にシフトしているため、触媒溶液におけるオキソバナジウム錯体の形態は、中心のV=Oに窒素原子が何等かの形で配位し、触媒活性を高めているものと思われる。
(参考例23ないし26)
実施例9で得られた触媒溶液を2ケ月間室温に放置したものを、原料仕込み方法を、(1)触媒、アリルアルコールおよびt−ブチルヒドロペルオキシド溶液の同時仕込み、(2)触媒を溶解したt−ブチルヒドロペルオキシド溶液のアリルアルコールへの滴下、(3)触媒とアリルアルコールの混合溶液へのt−ブチルヒドロペルオキシド溶液の滴下、(4)触媒、アリルアルコールおよびt−ブチルヒドロペルオキシドの混合溶液へ残りのt−ブチルヒドロペルオキシド溶液(使用するt−ブチルヒドロペルオキシド溶液の88重量%)を滴下する方法に代えた。
【0045】
そして、表5に示す滴下時間および反応時間にする以外は、参考例1に準じてエポキシ化反応を行ない、反応溶液の転化率、選択率および収率を求め、それぞれを参考例23ないし26として表5に示した。なお、表5において、V+A+Tは上記(1)の方法、V+T→Aは(2)の方法、T→V+Aは(3)の方法、T→V+A+Tは(4)の方法を示す。
【0046】
【表5】
Figure 0003550716
【0047】
表5に示したように、参考例2と参考例23との比較より、触媒を室温で長期間放置するとわずか触媒活性が低下するが十分利用できることがわかる。また、グリシドールの選択率を上げるためには、同時仕込みか、触媒をt−ブチルヒドロペルオキシドに溶解した後、アリルアルコールに滴下するほうがより好ましいことがわかる。
(実施例24ないし28)
表6の有機アミン化合物を使用する以外は、実施例9に準じて触媒溶液を調製し、得られた触媒溶液および前記触媒の0.34モル%t−ブチルヒドロペルオキシド−t−ブタノール(70 重量部:30重量部) 溶液の溶解状態を調べ、実施例24ないし28として表6に示した。
【0048】
【表6】
Figure 0003550716
【0049】
(参考例27ないし31)
実施例24ないし28で調製した触媒溶液を用いる以外は、参考例1に準じてエポキシ化反応を行ない、転化率、選択率および収率を求め、参考例27ないし31として表7に示した。
【0050】
【表7】
Figure 0003550716
【0051】
表6および表7に示したように、実施例24〜28で用いたアミンはいずれも触媒溶液の溶解状態に優れ、エポキシ化反応の選択率、収率が良いが、モノエタノールアミンの選択率、収率が最も良いことがわかる。
(比較例5)
有機アミン化合物として、トリエチルアミンを使用する以外は、実施例9に準じて触媒溶液を調製したが、メタバナジン酸アンモニウムを溶解することはできなかった。
【0052】
実施例24ないし28と比較例5との比較から、この発明に用いる有機アミン化合物としては第3級アミン類は好ましくないことがわかる。
(比較例6)
メタバナジン酸アンモニウムに対して20倍モルのジエチルアミンを用いる以外は、比較例2に準じて触媒溶液の調製を行なったが、均一な溶液を得ることができなかった。
【0053】
比較例2と比較例6との比較およびエチレングリコールのみで溶解しようとすると多量のアルコールを必要とする(比較例3)とから、効率よく均一な触媒溶液を得るには、有機アミン化合物およびグリコール類に含まれる−OH基と−NH−基との相互作用によってアルコール部分を活性化する必要のあることがわかる。
(実施例29ないし31および比較例7ないし10)
表8のアルコール類を用いる以外は、実施例9に準じて触媒溶液を調製し、得られた触媒溶液および前記触媒の0.34モル%t−ブチルヒドロペルオキシド−t−ブタノール(70 重量部:30重量部) 溶液の溶解状態を調べ、実施例29ないし31および比較例7ないし10として表8に示した。
【0054】
【表8】
Figure 0003550716
【0055】
表8の実施例と比較例との比較より、均一な触媒溶液を得るためにはアルコール類としては1,2−ジオール類、すなわち、2個の水酸基が隣接する炭素原子に結合した炭素数2〜5のグリコール類を用いる必要がある。
(参考例32ないし34)
実施例29ないし31で調製した触媒溶液を用いる以外は、参考例1に準じてエポキシ化反応を行ない、転化率、選択率および収率を求め、参考例31ないし34として表9に示した。
【0056】
【表9】
Figure 0003550716
【0057】
(実施例32)
メタバナジン酸アンモニウムの代わりに五酸化バナジウムを用いる以外は、実施例9に準じて触媒溶液を調製し、得られた触媒溶液および前記触媒の0.34モル%t−ブチルヒドロペルオキシド−t−ブタノール(70 重量部:30重量部) 溶液の溶解状態を調べ実施例31として表10に示した。
【0058】
【表10】
Figure 0003550716
【0059】
(参考例35)
実施例32で調製した触媒溶液を用いる以外は、参考例1に準じてエポキシ化反応を行ない、転化率、選択率および収率を求め、参考例35として表11に示した。
【0060】
【表11】
Figure 0003550716
【0061】
表10および表11に示したように、無機バナジウム化合物として五酸化バナジウムを用いた場合にも、触媒溶液の溶解状態に優れ、エポキシ化反応の選択率、収率が良好である。
【0062】
なお、前記実施態様より把握される請求項以外の技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(1)無機バナジウム化合物に有機アミン化合物とグリコール類を混合して加熱するエポキシ化触媒の製造方法。この方法により、無機バナジウム化合物の溶解性を高め、エポキシ化反応の触媒作用を向上できるエポキシ化触媒を容易に製造することができる。
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明のエポキシ化触媒によれば、バナジウム化合物に対する溶解性およびエポキシ化反応の原料に対する溶解性に優れている。しかも、エポキシ化合物、特にグリシドールを高選択率でかつ高収率で得ることができるとともに、比較的簡便に得ることができる。

Claims (3)

  1. 原料化合物をエポキシ化してエポキシ化合物を得る際に使用されるエポキシ化触媒であって、
    無機バナジウム化合物を、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、および炭素数1ないし8の第1級または第2級の脂肪族アミン類から選ばれた少なくとも1種の有機アミン化合物と、2個の水酸基がそれぞれ隣接する炭素原子に結合した炭素数2ないし5のグリコール類とを併用した溶剤に溶解したエポキシ化触媒。
  2. 前記無機バナジウム化合物がメタバナジン酸アンモニウムまたは五酸化バナジウムであり、グリシドール製造用に用いられる請求項1に記載のエポキシ化触媒。
  3. 前記有機アミン化合物がモノエタノールアミンであり、グリコール類がエチレングリコールである請求項2に記載のエポキシ化触媒。
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