JP3550498B2 - セラミック粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ABOで表されるペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末とその製造方法に関し、特にセラミック主原料成分としてABOで表されるペロブスカイト型構造セラミック粒子、このセラミック粒子の製造方法及び同ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面に添加物成分をコーティングしたセラミック粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、積層セラミックコンデンサなどに使用されるBaTiO等のベロブスカイト型構造セラミックを主成分とする誘電体磁器は、BaTiOにMg、Mn、Ca、Sr等を添加し、その特性の改善を図っている。
より具体的には、セラミック原料粉末にセラミック添加物を添加する目的は大きく分けて二つある。一つは温度特性の改善で、このような目的で添加される添加剤としては、母材となる誘電体のキュリー点を変化させるシフタやキュリー点付近の誘電率を抑制するデフ°レッサ等として作用する金属化合物をあげることができる。このような添加物はセラミックの電気的特性を著しく変化させるものとなる。もう一つは、複合粉末の低温での焼結性を向上させることで、このような目的で添加される添加剤としては、シリカ等の低融点化合物をあげることができる。
【0003】
近年、積層セラミックコンデンサ等のセラミクス電子部品は小型化、高性能化が著しい。例えば、積層セラミックコンデンサの場合、小形化と大容量化が著しい。これに伴い、積層セラミックコンデンサの素地を形成する誘電体層の厚みが著しく薄くなってきている。
このような状況下において、誘電体層の中の添加物成分の分散が不均一であると、誘電体層の電気的特性が局部的に異なって不均一化し、積層セラミックコンデンサの温度特性、品質、信頼性を著しく低下させる。このため、積層セラミックコンデンサの特性、品質、信頼性を保持するためには、誘電体層の中の添加物成分の均一な分散が不可欠である。
【0004】
従来、このような誘電体磁器を製造するためには、主原料成分粉末と添加成分粉末とを湿式混合にすることによって、前記主原料成分粉末に対し、添加物成分粉末を分散していた。この方法は主原料成分粉末と添加物成分粉末とを、酸化物や炭酸化物の原料粉末として分散媒に添加し、これを粉砕メディアと共に湿式混合するものである。
【0005】
しかしこの方法では機械的な分散のため分散装置及びメディア径によって自ずと分散限界が決まり、ミクロンレベルでの均一な混合は不可能であった。
分散状態が不均一になると、個々の主原料成分粒子に対する添加物成分のドーピング効果に差が生じ、焼結体としたときの不均一性が高まり、電気特性、信頼性、機械的強度の低下をもたらす。
そこでさらなる高分散化のため、添加物を溶媒に可溶な形で添加し、主原料表面で析出させるコーティング法が検討されてきた。例えば主原料成分粉末に加水分解可能な金属有機化合物を添加し、有機溶媒中でコーティングを行う方法が特開平−87039号公報に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとしている課題】
しかし、混合、分散中のセラミックスラリのpH調整にアンモニア等を用いる場合、分散後の加熱乾燥時にアンモニアが蒸発し、セラミックスラリのpHが低下し、化学吸着のみによりコーティングされた添加物が再溶解して、添加物の分散性が悪化することがあった。またコーティングを行った後に分散を行うと、コーティング層の剥離強度が弱いためコーティング層が容易に欠落し分散を悪化させるという課題があつた。
【0007】
そこで、本発明は前記従来のセラミック原料粉末の製造方法の課題に鑑み、セラミックスラリ乾燥時におけるpHの低下を有効に抑え、セラミック原料粉末におけるセラミック主成分原料粉末に対する添加剤の分散の偏析を防止し、添加剤が均一に分散したセラミック原料粉末を得ることができるセラミック粉末とその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明では、ABOで表されるペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面に均一に添加剤成分を被覆するため、ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面と粒子内部とで前記A元素とB元素の密度の比(以下「A/B比」という。)が異なり、粒子表面が粒子内部に比べてA元素の密度が小さいこと、すなわちAサイトプアになるようなペロブスカイト型構造セラミック粒子の構造とし、これをセラミック主原料粉末として使用するものである。
【0009】
すなわち、本発明によるセラミック粉末は、ABOで表されるペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末において、前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面と粒子中心部とで前記ABOのA元素とB元素の密度の比が異なり、表面が内部に比べてA元素の密度が小さいことを特徴とするものである。
ペロブスカイト型構造のセラミック粒子の表面のA元素とB元素の密度の比は、少なくとも粒径の5%までの深さにおいて、中心部より5/1000以上小さいことが好ましい。このようなペロブスカイト型構造のセラミック粒子の表面は、粒子の中心に比べてA元素が疎らであって、これにより表面に凹凸を有する。
【0010】
このようなセラミック粉末では、その主原料成分であるペロブスカイト粒子の表面が活性化され、凸凹による表面積が増大し、添加物成分の物理的吸着が促進される。このため、コーティング後の機械的剥離強度を増大させることが出来る。またこのようなペロブスカイト型構造セラミック粒子では、その表面におけるA元素の密度が小さく、希薄であるため、添加物成分の化学的な吸着が促進され、また表面状態が凸凹になることによつて物理的な吸着がより良好となる。これによって、より強固な添加物成分のコーティングが可能となり、コーティング層の剥離強度が向上し、乾燥工程等での添加物成分の分散悪化を防ぐことが出来、分散性が改善される。
【0011】
このようなペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末を製造する本発明による製造方法は、ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面を化学的にエッチングして同粒子表面の前記ABO のA元素を除去することを特徴とするものである。また、他の製造方法は、水中でペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面を機械的に摩擦し、その表面の前記ABO のA元素を除去することを特徴とするものである。
【0012】
このようなセラミック粉末の製造方法において、化学的エッチングまた機械的な摩擦の前後におけるペロブスカイト型構造セラミック粒子の比表面積の変化率が1.5〜3.0倍であることが好ましい。
さらに、ペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末に添加剤を分散させたセラミック粉末は、表面のA元素が希薄な前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子を分散媒に分散してセラミックスラリとすると共に、セラミックスラリ中に添加物を添加し、この添加物成分を前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面にコーティングし、その後セラミックスラリを乾燥し、セラミック粒子を析出させることにより得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
既に述べた通り、本発明によるセラミック粉末に含まれる主原料成分粉末は、例えば、BaTiO、PbTiO、PbZrO、YFeOのように、ABOで表されるペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面に均一に添加剤を成分を被覆し、分散させるため、主原料成分粉末であるペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面と同粒子内部との前記A元素とB元素の濃度を比較した場合、粒子表面が粒子内部よりA元素の濃度が希薄であること、すなわちAサイトプアになるようなペロブスカイト型構造セラミック粒子を使用する。
【0014】
このようなペロブスカイト粒子を作製するために、一つには主原料表面を硝酸等でエッチングすることによつて化学的な表面改質を行う。これにより主原料表面に微細な凹凸をつけることが出来、主原料表面を活性化させるため、添加物成分を前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面にコ−テイングする際、化学的な吸着だけではなく、物理的な吸着を促進し、コーティング後の機械的剥離強度を向上させることが出来る。
【0015】
また通常A元素は、水に溶けやすい性質があるため、エッチングによつて粒子表面からA元素が溶出し、ペロブスカイト粒子の表面におけるA元素の濃度が希薄な状態となり、化学的な吸着が促進されるため、コーティングの強度が向上する。
また前記のように、粒子の表面におけるA元素の濃度が希薄なペロブスカイト粒子を作製する他の手段としては、コーティング前の主原料であるペロブスカイト粒子を、予め機械的に粉砕することにより、物理的な表面改質を行うことである。つまりセラミック主原料成分である前記ペロブスカイト粒子の新生面を増大させ、表面を凸凹にする。
【0016】
これにより主原料成分であるペロブスカイト粒子の表面が活性化され、物理的吸着が促進される。このため、コーティング後の機械的剥離強度を増大させることが出来る。また機械的粉砕により、ペロブスカイト粒子の表面からA元素が溶出し、ペロブスカイト粒子の表面において、A元素が希薄な状態となり、化学吸着が促進される。このため、コーティングの強度が向上する。
【0017】
化学的エッチングまた機械的な摩擦の前後におけるペロブスカイト型構造セラミック粒子の比表面積の変化率は、1.5〜3.0倍となることが望ましい。そして、このような化学的エッチングまた機械的な摩擦の後におけるペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面のA/B比は、少なくとも粒径の5%までの深さにおいて、中心のA/B比より5/1000以上小さいことが好ましい。
【0018】
このようなペロブスカイト型構造セラミック粒子では、その表面におけるA元素の溶出により、添加物の化学的な吸着が促進され、また表面状態が凸凹になることによつて物理的な吸着がより良好となる。これによって、より強固に添加剤成分をコーティングすることが可能となり、コーティング層の剥離強度が向上する。このため、乾燥過程等での添加物成分の分散悪化を防ぐことが出来、分散性が改善される。
【0019】
【実施例】
次に、本発明の実施例について、具体的数値をあげて詳細に説明する。
(実施例1)
チタン酸バリウムを主原料としたB特性積層セラミックコンデンサによる実施例1とその比較例1について説明する。
まず、主成分原料成分粉末として、純度99%以上のBaTiOを用いた。この主原料成分粉末と3φジルコニアビーズとをボールミルに投入し、これに2.0wt%の硝酸塩水溶液を添加し、l0分間撹拌し、その後乾燥した。また比較例として、硝酸塩水溶液を添加せず、BaTiOを純水でl0分間撹伴し、その後乾燥した。
BaTiOの撹拌前後の比表面積を表1に示す。これより硝酸エッチング処理した実施例1におけるBaTiO比表面積は、処理する前の2.4倍になったことが分かる。他方、硝酸塩水溶液を添加せず、純水で分散した比較例1におけるBaTiOの比表面積は、ほとんど変化していなかった。
【0020】
また、これらのBaTiO粒子の表面と中心部のA/B比を透過電子顕微鏡とEDSによって調べた。ここで粒子の中心部とは輪切りにしたBaTiO粒子のほぼ中心付近のことであり、表面とは輪切りにしたBaTiOの粒子表面から約l0nm(粒径の約5%)までの深さの部分を言う。このようにして測定したBaTiO粒子表面と中心部のA/B比の差を表1に示す。
【0021】
硝酸でエッチング処理した実施例1におけるBaTiO粒子では、その表面のA/B比が中心部のA/B比よりmol比で6/1000だけ小さい、すなわちそれだけ粒子表面におけるA元素の密度が粒子内部に比べて小さく、A元素が希薄となっていることが分かった。他方、硝酸でエッチング処理しなかった比較例1におけるBaTiO粒子では、表面と中心部でA/B比の差は殆ど認められなかつた。撹拌前後の比表面積を表1に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0003550498
【0023】
次にこれらのセラミックスラリをそれぞれボールミルで撹拌した後、酢酸Mg、酢酸Mn、酢酸Caを溶かした溶液をボールミル中のセラミックスラリに投入し、さらにこのセラミックスラリを3時間撹拌した。撹拌終了後、セラミックスラリ中にアンモニアを添加し、pHの調整を行つた。このようにして作成したセラミックスラリの溶出成分をICP(Inductively Coupled
Plasma)にて分析した結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
Figure 0003550498
【0025】
この結果、実施例1及び比較例1の何れにおいても、セラミックスラリ中の添加成分の溶出はほとんど検出されず、添加成分が主原料成分であるBaTiO粒子の表面にほぼ完全にコーティングされていることが分かる。
次にこのようにして作成したセラミックスラリをスプレ乾燥機で乾燥した。乾燥して得られたセラミック粉末における添加物成分の分散をEPMA(Electric Probe Micro Analysis)カラーマッピングを用いて調ペた結果を表2に示す。この表2に示されたように、硝酸溶液中で分散した実施例1におけるセラミック粉末では、良好な分散状態が得られた。これに対し、比較例1におけるセラミック粉末では、添加物成分の偏析が確認され、分散状態は不良であった。
【0026】
これには、次のような原因が考えられる。実施例1の場合も比較例1の場合も、添加成分がセラミックスラリ中では添加成分がBaTiOの表面に完全に吸着していた。しかし、純水中で分散した比較例1におけるセラミック粉末は、熱を加えられて乾燥する過程において、アンモニアの蒸発によりpHが変化し、コーティング成分が溶出し、添加物成分の分散が悪化したものと思われる。一方硝酸中で分散した実施例1におけるセラミック粉末は、BaTiO粒子の表面は酸で侵されているため、その表面が凸凹となつて表面活性が上がり、物理的吸着が促進されていることによるものと推測される。加えて、BaTiO粒子の表面のA元素が希薄になっていることから、化学的吸着が促進され、結果的に強固なコーティングが可能となったと考えられる。これにより、乾燥過程でのpHの変化によらず、コーティング層が剥離しないため、分散が良好だったと推測される。
【0027】
(実施例2)
次に機械的なセラミック粉末の粉砕の効果を確認するための実施例2とその比較例2について説明する。
前記と同様にして、主成分原料成分粉末として、純度99%以上のBaTiOを用い、この主原料成分粉末と3φジルコニアビーズとをボールミルに投入し純水中でl0時間撹拌し、その後乾燥した。他方、これと比較するため、比較例2として、ジルコニアビーズを使用せずに、純水中にBaTiOを投入し、同じ時間撹拌し、その後乾燥した。
【0028】
BaTiOの撹拌前後の比表面積を表3に示す。これよりジルコニアビーズと共にボールミルで撹拌した実施例2におけるBaTiO比表面積は、処理する前の2.6倍になつたことが分かる。他方、ジルコニアビーズを使用せずに、水だけで分散した比較例2におけるBaTiOの比表面積は、ほとんど変化していなかった。
【0029】
また、前述の実施例1と同様にして、これらのBaTiO粒子の表面と内部のA/B比を透過電子顕微鏡とEDSによって調べた。ジルコニアビーズと共にボールミルで撹拌した実施例2におけるBaTiO粒子は、その表面が中心部よりmol比で7/1000だけA/B比が小さくなっており、粒子表面におけるA元素の密度が粒子内部に比べて小さく、A元素が希薄となっていることが分かった。他方、ジルコニアビーズを使用せずに、水だけで分散した比較例2におけるBaTiO粒子では、表面と中心部でA/B比の差は殆ど認められなかつた。撹拌前後の比表面積を表3に示す。
【0030】
【表3】
Figure 0003550498
【0031】
次にこれらのセラミックスラリに酢酸Mg、酢酸Mn、酢酸Caを溶かした溶液を投入し、さらにこのセラミックスラリをボールミル中で3時間撹拌した。撹拌終了後、セラミックスラリ中にアンモニアを添加し、pHの調整を行つた。このようにして作製したセラミックスラリの溶出成分をICPにて分析した結果を表4に示す。
【0032】
この結果、実施例2及び比較例2の何れにおいても、セラミックスラリ中の添加成分の溶出はほとんど検出されず、添加成分が主原料成分であるBaTiO粒子の表面にほぼ完全にコーティングされていることが分かる。
次にこのようにして作成したセラミックスラリをスプレ乾燥機で乾燥した。乾燥して得られたセラミック粉末における添加物成分の分散をEPMAカラーマッピングを用いて調べた結果、表4に示すように、ジルコニアビーズを用いて分散した実施例2におけるセラミック粉末では、良好な分散状態が得られた。これに対し、比較例2におけるセラミック粉末では、添加物成分の偏析が確認され、分散状態は不良であった。
【0033】
【表4】
Figure 0003550498
【0034】
この原因は、予めジルコニアビーズでBaTiOを撹拌しなかった比較例2におけるセラミック粉末は、熱を加えられて乾燥する過程において、アンモニアの蒸発によりpHが変化し、コーティング成分が溶出し、分散が悪化したものと思われる。一方、予めジルコニアビーズでBaTiOを撹拌した実施例2におけるセラミック粉末は、機械的粉砕によりBaTiO粒子の表面からA元素が溶出し、その表面が凸凹となつて表面活性が上がり、物理的吸着が促進されていることによるものと推測される。加えて、BaTiO粒子の表面のA元素が希薄になっていることから、化学的吸着が促進され、結果的に強固なコーティングが可能となったと考えられる。これにより、乾燥過程でのpHの変化によらず、コーティング層が剥離しないため、分散が良好だったと推測される。
【0035】
(実施例3)
次にセラミック粒子の表面改質の効果を確認するための実施例3〜5とその比較例3、4について説明する。
まず硝酸の濃度を変えることで、表5に示すように、主原料であるBaTiO粒子の比表面積と、その表面のA元素の濃度を変化させたものを作製し、これからセラミックスラリを得た。これらBaTiOのセラミックスラリ粉末を、3φジルコニアビーズと共にボールミルに投入し、このセラミックスラリに酢酸Mg、酢酸Mn、酢酸Caを溶かした溶液を添加した後、ボールミルで3時間撹拌した。撹拌終了後、アンモニアを添加し、セラミックスラリのpHを調整した。
【0036】
【表5】
Figure 0003550498
【0037】
このようにして作製したセラミックスラリの溶出成分をICPにて分析した結果を表6に示す。この表6から、どの場合も添加成分の溶出はほとんど検出されず、添加成分がほぼ完全にコーティングされていることが分かる。
次にこのようにして作成したセラミックスラリをスプレ乾燥機で乾燥した。乾燥後のセラミック粉末における添加物成分の分散をEPMAカラーマッピングを用いて調べた結果を表6に示す。また、撹拌前後のBaTiOの比表面積、その比及び得られたBaTiO粒子末の表面と中心部とのA/B比を前記の表5に示した。
【0038】
【表6】
Figure 0003550498
【0039】
比表面積の増加が1.2倍で、BaTiO粒子の表面のA/B比が中心部に比べて3/l000だけ小さな比較例3は、添加物成分の分散性が悪かった。しかし比表面積の増加が1.5倍以上で、BaTiO粒子の表面のA/B比が中心部に比べて5/l000以上小さい実施例3では、添加物成分の分散性が良好だった。
【0040】
またこのセラミック粉末から作られた積層セラミックコンデンサの電気特性を表6に示す。主原料の比表面積が3.3倍の比較例4では、電気特性が悪化した。この電気特性には、BaTiO粒子のA/B比は大きく影響を及ぼさないと思われることから、表面のA/B比が中心部に比べて10/1000以上小さくても、比表面積の増加を伴わなければ電気特性は満足できると考えられる。
【0041】
以上の結果より主原料の表面改質を行う上で、主原料の比表面積の割合が1.5〜3.0倍であることが望ましいことが分かる。またこの時のBaTiO粒の表面のA/B比は中心部に比べて5/1000m以上で小さいことが望ましいことが分かる。
以上のように主原料表面を酸または機械的粉砕により凸凹にすることで、コーティング層の剥離強度が高まり分散を向上させることが出来た。
【0042】
以上の実施例は、何れもBaTiOを用いた積層セラミックコンデンサ用セラミック粉末について説明したが、本発明はBaTiOを用いた積層セラミックコンデンサ用セラミック粉末に限定されるのではなく、他にも例えばPbTiO、PbZrO、YFeOのように、ABOで表されるペロブスカイト型構造を持った粒子を主原料とし、高分散が求められるあらゆる電子部品、機能部品等に用いられるセラミック粉末とその製造においても同様の効果がある。
【0043】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によるセラミック粉末では、ABOで表されるペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面の内部に比べてA元素の密度が小さく、A元素が希薄になっていることにより、添加物の化学的な吸着が促進され、また表面状態が凸凹になることによつて物理的な吸着がより良好となる。これによって、より強固なコーティングが可能となり、コーティング層の剥離強度が上昇するため、乾燥過程等での添加物成分の分散悪化を防ぐことが出来、分散性が改善される。これにより、ABOで表されるペロブスカイト型構造セラミック粒子に対する添加物成分の均一な分散性が得られる。

Claims (7)

  1. ABOで表されるペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末において、前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面と粒子中心部とで前記ABOのA元素とB元素の密度の比が異なり、表面が内部に比べてA元素の密度が小さいことを特徴とするセラミック粉末。
  2. ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面のA元素とB元素の密度の比は、少なくとも粒径の5%までの深さにおいて、中心部より5/1000以上小さいことを特徴とする請求項1に記載のセラミック粉末。
  3. ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面は、粒子の中心に比べてA元素が疎らであって、これにより表面に凹凸を有することを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック粉末。
  4. 前記請求項1〜3の何れかのペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末を製造する方法であって、前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面を化学的にエッチングして同粒子表面の前記ABOのA元素を除去することを特徴とするセラミック粉末の製造方法。
  5. 前記請求項1〜3の何れかのペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末を製造する方法であって、水中でペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面を機械的に摩擦し、その表面の前記ABO のA元素を除去することを特徴とするセラミック粉末の製造方法。
  6. 化学的エッチングまた機械的な摩擦の前後におけるペロブスカイト型構造セラミック粒子の比表面積の変化率が1.5〜3.0倍であることを特徴とする請求項4または5に記載のセラミック粉末の製造方法。
  7. 前記請求項1〜3の何れかのペロブスカイト型構造セラミック粒子を含むセラミック粉末に添加剤を分散させたセラミック粉末を製造する方法であって、表面のA元素が希薄な前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子を分散媒に分散してセラミックスラリとすると共に、セラミックスラリ中に添加物を添加し、この添加物成分を前記ペロブスカイト型構造セラミック粒子の表面にコーティングし、その後セラミックスラリを乾燥し、セラミック粒子を析出させることを特徴とするセラミック粉末の製造方法。
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