JP3549130B2 - 植栽用壁体およびこれに利用する植栽容器 - Google Patents

植栽用壁体およびこれに利用する植栽容器 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車専用道路などの側壁に利用し、遮音および防音効果を維持しながら壁面植栽を可能とする技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、道路の側壁などを植栽によって緑化する手段は各種開発されている。例えば出願人の一方は壁体に植栽する構成として「植栽可能な防音壁体構造」(特願平6−93057号)を、また壁体内部に収納する棚として「緑化用植栽ユニット棚」(特願平6−93058号)を既に開示している。これらは自立壁体に防音効果を維持しながら簡易な壁面緑化を目的としたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の技術では、自立壁の壁内に植生層を設けて、この部分に植栽を施すことにより、緑化を行うものである。これらの技術は壁面に対して部分的な緑化を行うことも可能であるが、第一次的には壁面全面の緑化を目的としたものである。
【0004】
ところで、高速道路などのような自動車専用道路では、近隣に対する騒音の防止を主目的として特に都市部などの道路側面には防音壁が設けられることが多い。この場合、一般的なコンクリートパネルで防音壁を構成すれば音が外部に漏洩したり、音の跳ね返りによって道路側の騒音が助長されるという問題があり、これらを解消するために鉄板で構成したパネル内部にグラスウールなどの吸音材を充填した防音壁が開発されている。
【0005】
この防音壁は、内部にグラスウールを充填し、道路側は複数の孔が形成された鉄板、外壁は鉄板で構成されている。そして、外壁鉄板によって外部には騒音を漏洩しない遮音性を達成すると同時に、複数の孔を通してグラスウールに騒音が吸収される吸音性を達成している。従って、外部に対する音の漏洩と内部に対する音の跳ね返りの両者を抑制することができる。
【0006】
この防音壁は、現在では自動車専用道路に広く設けられているが、防音・遮音のみを目的としたものであって、その他の機能は目的としていない。しかし、防音・遮音のために設置した壁体は運転者にとって景観を悪くし、運転中の疲れを助長するうえに、太陽熱による照り返しやコンクリートあるいは鉄板の焼け込みによって道路表面温度がはなはだしく上昇するという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来の課題を解決するものであり、自動車騒音の防音・遮音を達成すると同時に、壁面の緑化によって良好な景観を確保し、さらに道路近傍の温度上昇を抑制することができる壁体構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では上述した目的を達成するために、支柱と、この支柱間に複数段積み上げ可能な緑化用ユニットからなり、それぞれの緑化用ユニットは、背面板と、底板と、天板とからなって前面が開放された本体と、この本体に開放前面より収容する1個以上の植栽容器とからなり、上記底板および天板にはそれぞれ適宜間隔で排水孔および給水孔を形成した植栽用壁体を用いることとした。さらに、緑化用ユニットの底板および天板の前面にはそれぞれ立ち上がりリブおよび立ち下がりリブを設け、これらのリブには収容した植栽容器が脱落しないように押さえ材を固定可能とした。さらにまた、天板の上方に平行して走る樋を設け、この樋は植栽室の幅とほぼ同じピッチで仕切板で区画され、各区画の底には給水用の孔が設けられると同時に、上記仕切板を横切って給水チューブを設けるという手段も採用した。
【0009】
また、この植栽用壁体に用いられる植栽容器は、前面を開放した容器を隔壁で区画して複数の植栽室を設けると共に、両横壁には上記植栽室に対応して隣合う植栽容器の連通孔を設け、さらに天井には給水を貯留する水受けおよび給水孔を、底には排水孔を設けると同時に、上記隔壁に通水、通気または排水用の孔を設け、上記前面には上記植栽室に対応した植栽孔と、この周囲に設けた複数の通気孔を有し、上記植栽孔を通って複数分割可能な蓋によって閉蓋するという手段を用いることとした。底に設けた排水孔からは下方に向かって排水の案内リブが突成され、一方の側壁に設けた連通孔からは、これらの連通孔に沿って嵌合用突起が突成され、隣合う植栽容器が上記連通孔と上記嵌合用突起で連結可能とする手段も選択的に採用している。そして、各植栽室には人工土壌が充填され、この人工土壌に対して予め任意の植栽が施されるという手段も用いている。さらにまた、植栽容器の背面には任意の場所に突起を形成し、背面が直接緑化用ユニットの背面板に接触しないようにしている。
【0010】
【作用】
植栽用壁体において、緑化用ユニットは、内部に複数の植栽容器を収容し、1単位の緑化ユニットを構成する。また、緑化用ユニットの底板に設けられた排水孔および天板に設けられた給水孔は、それぞれの植栽容器に対して確実な給水および通水を行う。立ち上がりリブおよび立ち下がりリブは、緑化用ユニットの強度を確保する機能を有しており、さらにリブに固定可能とした押さえ材は、植栽容器を安定して収容する機能を有する。樋に仕切板で区画を形成し、給水チューブを設ける手段では、給水チューブからの水を確実に植栽容器に滴下する。
【0011】
植栽容器においては、隔壁を設けることによって植栽室という1植栽単位を構成している。両側壁に設けた連通孔は、通気性を確保するものであり、一方の側壁の連通孔に嵌合用突起を突成することによって、隣合う植栽容器同士を確実に連結する作用を有している。また、天井に形成される水受けは、給水を確実に取り込んで下部の植栽室に供給する作用を有する。蓋を複数に分割する手段は、植栽した植物を両側から挟み込んで保持すると同時に、人工土壌の流出を防止する作用を行う。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、添付した図面に従って説明する。図1は一実施例を示す壁体を道路側から見た正面図であって、1は壁体の基礎、2・2は基礎1から立ちあげたH鋼などの支柱、3は笠木であり、これらによって枠体を構成している。2本の支柱2・2間には緑化用ユニット4…4が積み重ねられている。本実施例では緑化用ユニットは4段に重ねられる。ただし、この段数は発明の本質に影響を与えるものではなく、3段、あるいは5段など、必要な高さに至るまで任意に積み重ねることが可能である。
【0013】
次に、緑化用ユニット4の単体を図2に示すと、5はユニットの背面板、6は底板、7は立ち上がりリブ、8は上板、9は立ち下がりリブで、これらは溶接などで継ぎ合わせることも可能であるが、一般的には1枚の鉄板を折り曲げ成形する。また、立ち上がりリブ7と立ち下がりリブ9の存在によって、緑化用ユニット4の強度を確保し、ねじれを防止している。鉄板は錆を防ぐために亜鉛鍍金を施している。なおより強い防錆を達成するために、亜鉛鍍金にさらにフッ素樹脂加工を施してもよいし、鉄板に代替してステンレスなどの錆に強い金属で構成することも可能である。10は押さえ材で、立ち下がりリブ9に対して正面からビスなどで固定する。押さえ材10は立ち上がりリブ7にも設けてもよい。底板6および上板8には排水および給水用の孔11…11がそれぞれ複数個設けられている。次に、12…12はそれぞれ植栽容器であり、本実施例の植栽容器は上下方向に3連の植栽室が構成されたものを1単位とし、この植栽容器12…12を1つの緑化用ユニットに対して横方向に密に並べている。
【0014】
植栽容器12は図3に示すように、縦長で正面を開放した直方体が2枚の隔壁13a、13bによって3つの植栽室12a、12b、12cに分割されている。天井部には四周を壁で囲まれた水受け14が設けられている。そして、水受け14および隔壁13a、13bには通水、通気または排水など、植栽に重要な要素を確保するための孔15がそれぞれ形成されている。16は底に設けられた排水孔であり、底から下方に向かって排水の案内リブ17が突成されている。植栽室12a、12b、12cの両側壁にはそれぞれ連通孔18、19が形成されているが、一方の連通孔19には嵌合用突起20が外側に向かって突成されている。そして、横に並べられた2つの植栽容器12は、それぞれの連通孔18と嵌合用突起20を嵌め合わせることによって一体に固定されると同時に連通した通気を確保する。なお、本実施例ではそれぞれの植栽室に対して連通孔18、19はそれぞれ1個ずつ設けられているが、それぞれ上下に並べて2個ずつ設けることもある。ただし連通孔18、19の個数や位置はこの実施例に限定されるものではない。ところで、連通孔18、19の直径外周から容器前面に向かって必要に応じて溝21を形成することもある。この溝21を利用すればカッターナイフなどで壁面が容易に切除できるので、強制的な給水を行うための給水管を正面から押し込み、連通孔18、19の位置に任意に設けることができる。なお、点線で示した部分22は植栽容器12の背面から外部に向かって突成した突起であり、植栽容器12を緑化用ユニットに設置したときにユニットの背面板5に植栽容器12が密着することを回避することを目的としたものである。これによって背面板5と植栽容器12の間には断熱のための空気層が形成され、太陽熱で上昇した平面板5の熱が植栽容器12に直接伝わることを防止する。
【0015】
23は植栽容器12の開放面に対する蓋であり、縦方向に2分割されてた蓋部材23a、23bからなっている。24はそれぞれ蓋部材23a、23bを閉じたときに形成される植栽孔であり、各植栽室12a、12b、12cに対応して設けられたものである。各植栽孔24の周囲の小孔25…25は通気孔である。蓋23は、植栽容器12の開放面に嵌め合わせられるが、嵌め合わせ構造は、例えば嵌め殺しであっても、リブを適当な孔に嵌合させてもよい。必要なことは、多少の振動が加わっても容易に蓋が脱落しない構造、好ましくは水密構造であれば、公知のどのような嵌め合わせ構造であってもその目的を達成できる。そして、各植栽室12a、12b、12cに必要な植栽を行った後に、蓋23で植物を両側から挟むようにして植栽容器12に嵌め合わせれば、作業が完了する。なお、各植栽室12a、12b、12cには植栽用の人工土壌が充填されることはいうまでもない。人工土壌としては、たとえば不織布を積層したり、バーク材を充填したり、粒状に加工した綿を充填したり、さらにはこれらを適宜組み合わせることができる。ただし人工土壌の選定や配分比などは、設置する地域の気候などを考慮して採用されるものであって、本発明では何ら限定するものではない。
【0016】
なお、植栽容器12と蓋23の素材は本発明の基本的構成には影響するものではないが、断熱性や重量、あるいはコストや量産性などを考慮すれば合成樹脂で成形することが好ましい。強度を維持しつつ断熱効果を重視しようとすれば、低発泡率の発泡樹脂で植栽容器や蓋を構成することもある。このようにすれば総重量を軽減することができるので、さらなる強度保証が可能になる。発泡樹脂は太陽光による劣化を防ぐために、耐光塗装などを施すことがある。なお、植栽容器12と蓋23の素材は一致させる必要はない。
【0017】
次に、これらの組み立て手順の一例について説明すると、先ず基礎1に立設された支柱2・2間に緑化用ユニット4…4を必要な段数だけ積み重ねる。本実施例では4段に積み重ねている。この状態では、押さえ板10は固定されていない。そして、この状態において予め植栽が施された植栽容器12を正面から収納し、かつ隣合う植栽容器12・12を嵌合用突起20で連結する。続いて、容器自体に給水管を配管するのであれば必要な部分の溝21を切り欠いた後に配管を行う。なお、緑化用ユニット4の底板には排水孔11が設けられているので、植栽容器12を設置した場合には図4のように収まりよく収納することができる。そして、必要に応じて灌水装置(図示せず)から延長された給水管を配管して一連の設備ができる。なお、緑化用ユニット4の全てに植栽容器12を設置して植栽を施すこともあるが、図1の4段の緑化用ユニットのうち上2段にのみ植栽を施し、下2段は植栽容器12を設置せず、従来のようにグラスウールなどの吸音材を充填して表面をスリット板で封止することも可能である。また、植栽容器12に対しては全てに植栽を施すだけでなく、部分的に植栽し、植物を用いて任意の模様を創作してもよい。
【0018】
ところで、灌水装置からは給水管などを延長し、H鋼上に架橋した笠木内に給水管に接続した給水チューブを走らせることがある。即ち、図5のように樋30に植栽室と同ピッチで仕切板31…31を設けて、横一列に切り欠いた切り欠き32に給水チューブ33をはめれば、給水チューブ33から滴下した水は仕切単位に確実に受けられることになるので、全体が傾斜しているときでも給水は容易である。なお、樋30を仕切っている区画の各底には給水滴下用の孔が設けられていることはいうまでもない。また、本実施例では給水チューブは2本の配管としたが、1本でも可能である。
【0019】
なお、本実施例は緑化ユニットをH鋼間に積み上げる例として説明したが、堀割り部に設ける場合にはH鋼を省略して壁面に直接張り付けることもある。
【0020】
【発明の効果】
本発明は上記構成としたので、緑化用ユニットを適宜段数だけ支柱間に積み重ね、これに対して予め任意の植物を植栽した植栽容器を収容するだけで壁面の緑化を行うことができるようになった。従って、施工が簡単であるだけでなく、従来と同様の防音および遮音を達成でき、緑化によって壁面の焼け込みも抑制することができるようになった。
【0021】
また、緑化用ユニットの底板および天板の前面にはリブを形成したので、ねじれなどに対する強化を行うことができたと同時に、立ち下がりリブには押さえ板を固定することとしたので、植栽容器が脱落することも防止でき、また植栽容器の取り外しが可能となった。
【0022】
植栽容器の構成を請求項3、4または5のように特定したために、給水は確実にそれぞれの植栽容器に供給されると共に、底に設けた排水孔から排水されるので、植物に最適な給水条件を維持することができる。また、連通孔や蓋に設けた通気孔によって人工土壌に対する通気性が確保できるので、根の生育に不可欠といわれる通気に関しても良好な条件を維持することができる。さらに、隣合う植栽容器同士を連通孔に形成した嵌合用の突起で連結することもできるので、がたつきなく密に収容することができると同時に、底に設けた案内リブが緑化用ユニットの底面に設けた排水孔に嵌合するので施工時の位置決めも容易に行うことができ施工性が向上すると共に、排水孔より排出された水は外部に漏れることなく下段の緑化ユニットの植栽容器中へ供給されることになり、給水効率を高めることができる。
【0023】
さらに、植栽容器の背面に形成した突起によって、緑化用ユニットの背面板に直接植栽容器が接触することを防止したので、背面板が極端に温度上昇した場合であっても空気層によって断熱することができ、植物に対する温度的な植栽環境を良好に保つことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の植栽用壁体を示す正面図、
【図2】同、緑化用ユニットを示す斜視図、
【図3】同、植栽容器を示す斜視図、
【図4】同、植栽容器と緑化用ユニットの嵌合状態を示す断面図、
【図5】同、給水チューブおよび樋の実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 基礎
2 支柱
3 笠木
4 緑化用ユニット
5 背面板
6 底板
7 立ち上がりリブ
8 上板
9 立ち下がりリブ
10 押さえ材
11 給水用の孔
12 植栽容器

Claims (8)

  1. 支柱と、この支柱間に複数段積み上げ可能な緑化用ユニットからなり、それぞれの緑化用ユニットは、背面板と、底板と、天板とからなって前面が開放された本体と、この本体に開放前面より収容する1個以上の植栽容器とからなり、上記底板および天板にはそれぞれ適宜間隔で排水孔および給水孔を形成したことを特徴とする植栽用壁体。
  2. 底板および天板の前面には、それぞれ立ち上がりリブおよび立ち下がりリブを設け、上記リブには植栽容器の押さえ材を固定可能とした請求項1記載の植栽用壁体。
  3. 植栽容器は、前面を開放した直方体の容器を隔壁で区画して複数の植栽室を設けると共に、両横壁には上記植栽室に対応して隣合う植栽容器の連通孔を設け、さらに天井には給水を貯留する水受けおよび給水孔を、底には排水孔を設けると同時に、上記隔壁に通水、通気または排水用の孔を設け、上記前面には上記植栽室に対応した植栽孔と、この周囲に設けた複数の通気孔を有し、上記植栽孔を通って複数分割可能な蓋を設けた請求項1または2記載の植栽用壁体。
  4. 天板の上方に平行して走る樋を設け、この樋は植栽室の幅とほぼ同じピッチで仕切板で区画され、各区画の底には給水用の孔が設けられると同時に、上記仕切板を横切って給水チューブを設けた請求項1〜3のいずれか記載の植栽用壁体。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の植栽用壁体に用いられる植栽容器であって、前面を開放した容器を隔壁で区画して複数の植栽室を設けると共に、両側壁には上記植栽室に対応して隣合う植栽容器の連通孔を設け、さらに天井には給水を貯留する水受けおよび給水孔を、底には排水孔を設けると同時に、上記隔壁に通水、通気または排水用の孔を設け、上記前面には上記植栽室に対応した植栽孔と、この周囲に設けた複数の通気孔を有し、上記植栽孔を通って複数分割可能な蓋を設けたことを特徴とする植栽容器。
  6. 底に設けた排水孔からは下方に向かって排水の案内リブが突成され、一方の側壁に設けた連通孔からは、これらの連通孔に沿って嵌合用突起が突成され、隣合う植栽容器が上記連通孔と上記嵌合用突起で連結可能とした請求項5記載の植栽容器。
  7. 各植栽室には人工土壌が充填され、この人工土壌に対して予め任意の植栽が施された請求項5または6記載の植栽容器。
  8. 植栽容器の背面には任意の場所に突起を形成し、緑化用ユニットの背面板と植栽容器の背面の間に空気層を介在させるようにした請求項5〜7のいずれか記載の植栽容器。
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