JP3548211B2 - 微生物の選別回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、液相での電気泳動を利用して複数種の微生物を選別回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、遺伝子工学の発展と共に、従来の化学的な方法とは異なる、微生物や酵素を使った有用物質の生産や有害物質の分解の可能性が盛んに検討されるようになってきた。また、既存の化学工学的な生産の長所を保ちつつ遺伝子工学的な生産を行うために、高温・低温・高アルカリ・高水圧といった特殊な環境の中で生息し活動する微生物の研究も盛んになってきた。
【0003】
土壌や下水・廃水処理槽の活性汚泥や川・湖・海の底泥にはこのような有用な機能を有するが未だ単離されていない微生物が多数棲息していると考えられており、そのような微生物を単離し、その機能に関する情報が書き込まれたDNAを抽出する技術が、遺伝子工学の基礎的な研究のみならず、応用技術分野の更なる発展に大変重要になってきた。
【0004】
現在主に用いられている土壌などからの微生物の獲得方法は、土壌等のサンプルの懸濁液を調製し、それを必要に応じて希釈した後、目的とする微生物の単離に合った成分を含む寒天培地上に塗布し、目的微生物の増殖に合った環境に培地を数日間静置して培養し、増殖してきた微生物のコロニーを選抜して、さらに集積培養して濃度を高めてから遠心などで沈澱させて回収する方法である。
【0005】
しかし、土壌中などに棲息する多種多様な微生物のほとんどについてはその分離培養条件さえ不明で、上述の方法で調製された懸濁液中の微生物の99〜99.9%については、それらを寒天培地上で増殖させ分離することは困難であると言われている。このため、サンプルの懸濁液の中にいくら有用な微生物がいたとしても大部分は回収不可能である。また、比較的培養条件を推定し易い廃水処理槽内の活性汚泥にしても、実際の槽内の条件と実験室の培地内の条件の微妙な差のために、微生物種の比率が変わってしまう可能性が高く、活性汚泥内の優先種を培地内の優先種として回収できない可能性がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のべたような観点から、土壌・活性汚泥・底泥などの懸濁液から直接微生物を分離し回収できる方法が必要とされてきている。
【0007】
しかし、上記の従来法で得た懸濁液は、微生物以外の様々な固形物を含有しており、その多くは、通常のろ過や遠心沈澱などの方法を単に用いただけでは、微生物と分離することが困難なものである場合が多い。このような固形物が混入した試料からの微生物の分離には、微妙な遠心条件の設定や孔径の異なる数種の濾紙による濾過を繰返すなどの煩雑で労力のかかる操作が必要となる。更に、微生物が粒子状の固形物に付着して棲息している場合、それをそのままろ過や遠心にかけて微生物を分離することは極めて困難であるので、濾過や遠心分離の前処理としてブレンダーやホモジナイザーで攪拌して微生物の固形物からの剥離を試みる必要があり、処理工程は更に複雑なものとなってしまう。
【0008】
一方、回収した微生物からのDNAの取得において、得られたDNAの質や純度がその後の酵素消化、PCR、ハイブリダイゼーションといった処理にとって大変重要な要素となってくる。しかし、微小粒子や固定化担体には腐植のような有機物などが微生物と同様多量に含まれており、微生物と微小粒子や固定化担体の分離が不十分だと、これらの有機物が微生物と共に回収される。従って、このようなDNA等の核酸の回収微生物からの取得においても、微生物とその他の不用な物質とを分離することが重要である。さらに、上記のような遠心や濾過の技術を駆使して微生物と他の不用な物質と分離できた場合でも、多種類の微生物が混合された状態で目的とする微生物が取得されると、例えば、得られた微生物試料からDNAを抽出してPCR増幅を行って、ハイブリダイゼーション法で目的の微生物からのDNAの検出を行う場合、目的の微生物以外のDNAも増幅されて混入するので、正確な分析結果が得られにくくなるという問題がある。このような問題は、寒天培地等を用いた目的の微生物のスクリーンングのための培養を行うことで解決できる。しかしながら、上述のような微生物が寒天培地等の培地では増殖しないものである場合には、このようなスクリーニングによる他の微生物との分離は不可能であり、またその増殖が遅いものである場合にはスクリーニングに時間がかかり効率的とはいえない。
【0009】
従って、土壌、活性汚泥、河川等の底泥などの種々の場所から直接微生物を分離回収し、そのDNAの情報を調べるためには、目的とする微生物を純度高く、すなわちできるだけ単一株に近い状態で、しかも簡便に回収できる方法の確立が求められている。
【0010】
本発明の目的は、土壌、活性汚泥、底泥などの多種多用な固形物を含む系等からそこに棲息する微生物を選別回収するための方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の微生物の選別回収方法は、直流電圧により微生物を液相中を移動させる電気泳動による方法である。以下、この方法について詳述する。
【0012】
参考としての比重勾配遠心法による方法は、微生物の比重が種類によって異なることに着目し、複数の微生物が混在した高濃度懸濁液を比重1以上の所定の範囲内での比重勾配を持った溶液の上に重層した後遠心分離操作を行い、目的の比重の部分に集まった微生物のみを回収することによって、目的とする微生物を選別回収できる方法である。
【0013】
この比重勾配遠心法を用いる方法は、試料中に混在する複数の微生物を選別する方法において、比重勾配遠心により各微生物を比重に応じて分画し、回収することを特徴とする。
【0014】
従来においては、微生物混合液を適当に希釈して寒天培地上に塗布しコロニーを形成させるまで数日から数週間必要である、またコロニーを形成しない微生物の分離回収は不可能である、という不都合があった。これに対して、この方法では、比重勾配遠心を用いて直接微生物の選別が可能であり、長時間の寒天培地での培養を省略でき、また寒天培地で増殖しない微生物の選別も可能となる。
【0015】
この方法における微生物の分離対象としては、複数の微生物が混在している系、例えば、土壌、下水・廃水処理槽の活性汚泥、川・湖・海などの底泥、動物の消化管の内容物等を挙げることができる。
【0016】
これらの場所からサンプリングした試料を適当な溶液に懸濁して比重勾配遠心で処理することで微生物の選別回収方法を行うことができる。なお、試料懸濁液の調製においては、不用な固形分等を濾過や遠心等の各種分離法によって除去する前処理を必要に応じて行うことができる。
【0017】
比重勾配は、例えば、溶液に溶質を種々の濃度で添加して得た異なる比重の高密度水溶液を遠心管等の中に重層することで形成できる。比重の勾配は、遠心の際に遠心力のかかる方向に段階的に変化するものでも連続的に変化するものであってもよい。
【0018】
この時用いられる溶質としては、DNAの比重遠心分離などで用いられる、ショ糖、塩化セシウム、硫酸セシウム、エトリザマイド、フィコールなどが利用でき、水に大量に溶解し1.1から1.5程度の比重になる物が望ましい。これらは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
段階的比重勾配を作成する場合は、比重は1.1から1.5の間で適当な比重の水溶液を数種類用意して、重い物から順にお互いに混じって均一化しないように注意しながら遠心管に重層していけばよい。また、連続比重勾配の作成には、例えば、市販のグラジェントメーカーがそのまま使用できる。すなわち、比重1.1と1.5の水溶液をタンパク質の電気泳動用グラジェントゲルを作成する際に使われる市販のグラジェントメーカーの2本の円筒にそれぞれ入れて、スターラー等で攪拌しながらポンプで遠心管に充填してゆけばよい。このメーカーによれば、遠心管中に最初に比重1.5のものが入り、次に2つの溶液の混合比によって連続的に比重が変化して最後に比重1.1のものが入るようになる。
【0020】
サンプルの懸濁液を比重勾配の最上層の上にのせ、遠心をかけることで比重勾配遠心をおこなうことができる。
【0021】
遠心機での遠心条件は、目的の微生物が一層に集まるために必要な遠心時間と回転数が選択され、例えば1〜2時間数万回転程度の遠心条件が利用できる。なお、この遠心条件やどの層に目的の微生物が集まるかは、あらかじめいくつかの条件で予備検討しておくと良い。遠心後、予備検討の結果に基づいて、目的の微生物が層を作っている部分のみをピペットなどで回収し、体積比で10倍程度の蒸留水に希釈させて比重を低下させた後、再度10分程度遠心すれば目的の微生物が回収できる。
【0022】
本発明にかかる電気泳動による微生物の選別回収方法は、一対の電極から微生物を移動させるための直流電圧を印加し得る液相内に、試料が添加される試料領域と、該試料領域の前記微生物の移動方向に微生物選別用の第1のフィルターを介して連通し、かつ微生物を誘引する電極側に微生物物捕獲用の第2のフィルターを有する回収領域とを設け、前記試料領域に複数種の微生物が混在する試料を分散させた状態で、前記一対の電極から直流電圧を前記液相内に印加し、前記第1のフィルターを通過できる微生物を前記試料領域から前記回収領域に移動させた後、前記試料領域に残された微生物または前記回収領域に移動した微生物を回収することを特徴とする。
【0023】
この電気泳動による方法は、微生物の表面が荷電しているため、微生物が浮遊している懸濁液に電極を挿入して電圧をかけると、どちらかの極に移動するという特性があること、及び微生物の大きさが種類によって異なることに着目し、微生物の移動経路中に微生物を選別するためのフィルターを設け、該フィルターの孔径に応じて該フィルターを通過した微生物をその大きさによって選別し、回収する方法である。
【0024】
この方法によれば、先の比重勾配を利用する方法と同様に、従来における長時間の寒天培地での培養が省略でき、また寒天培地上でコロニーを形成しない微生物の分離回収も可能となる。
【0025】
以下図面を参照しつつこの電気泳動を利用する方法の一例について説明する。
【0026】
図1は、本発明の微生物選別用装置の一例の要部を示す断面図である。この装置は直流電圧印加用の一対の電極2、3を設けた水槽(泳動槽)1の内部に、微生物選別用の第1のフィルター4で仕切られた試料領域(試料懸濁液領域)6と回収領域7とが設けられた構造を有する。試料領域6と回収領域7は第1のフィルターを介して連通しており、電極2、3に直流電圧が印加された際に移動する微生物の移動方向(電極2から3への方向)に配置されている。なお、図1の場合は、電極3が微生物を誘引する電極であるが、電極2方向に移動する微生物がある場合には、電極2側にも微生物選別用のフィルターを介した第2の回収領域を設けても良い。
【0027】
第1のフィルター4は、回収領域で回収すべき目的微生物が通過でき、それよりも大きな微生物や土壌粒子といった大型の不純物が通過できない孔径を有するように設定される。第2のフィルターは、回収領域7内に移動した微生物を該領域内に捕獲するためのもので、微生物が通過できないが、電解液や微小粒子等の微小な不純物などが通過できるものである。また、フィルター8もまた微生物が通過できないが電解液等が通過できるものであり、電極2の配置領域9と試料領域6とを仕切っている。図1の構成において、水槽1の区分された各領域はフィルターのみで連通する。
【0028】
第1のフィルター4は目的とする微生物の通過が可能な孔径を有するもので、ニトロセルロースのような水に浸しても形状を維持し、かつ電解質水溶液がしみ込むと電気の良導体になる物が利用され、例えば市販の0.2μm以上の孔径の物の中から適宜選択して用いることができる。また、電極2、3側に設けられたフィルター5、8としては、微生物サイズの物は通さない0.2μm未満の孔径のものや半透膜やアガロースなどのゲルの薄膜が適している。また、フィルター8は試料が電極2側の領域9の電解液と混合するのを防ぐためのものなので、かかる目的を達成できる普通の濾紙やグラスファイバー濾紙でもよい。
【0029】
第1のフィルター4と第2のフィルター5の間隔は余り長いと分離効率が低下するため、接触しない限り短いほど良く、例えば0.5〜1cm程度とされる。
【0030】
本発明の微生物選別用装置においては、回収領域を更に1以上のフィルターで2以上の区画に区分し、より細かな微生物の大きさに応じた選別を行うことができる。図2(a)に示す装置は、回収領域7を区分用のフィルター10によって2つの区画7−1、7−2に区分されているもので、区分用フィルター10は、第1のフィルター4よりも小さな孔径のもので、回収領域7に移動した微生物はこの区分用フィルター10によって、その大きさに応じて2種に選別される。すなわち、回収領域7−1に移動した微生物のうち区分用フィルター10よりも大きな微生物は回収領域7−1に残され、区分用フィルター10を通過した微生物は回収領域7−2に捕獲される。このように区分用フィルター10は第1のフィルター4と同様に微生物をその大きさに応じて選別する機能を有するもので、ニトロセルロースのような水に浸しても形状を維持し、かつ電解質水溶液がしみ込むと電気の良導体になる物が利用され、例えば市販の0.2μm以上の孔径の物の中から適宜選択して用いることができる。また、フィルター4、10及び5の間隔もあまり大きいと分離効率が悪くなるので、なるべく小さい方が良く、例えば0.5〜1cm程度とされる。なお、図1、2の装置において、試料領域と回収領域を有する部分をラックとして水槽1に着脱自在に設けても良い。図2(b)は電気泳動用ラック11として構成した場合の例を示す。
【0031】
次に、図2の構成の装置を用いた微生物の選別回収方法の一例について以下に説明する。
【0032】
先ず、試料領域6に、目的微生物を含む試料を懸濁させる。試料としては、例えば複数の微生物群が存在する水溶液または固形物が用いられ、具体的には複数の微生物群が増殖している培地、土壌、活性汚泥、底泥などの懸濁液、動物の消化管の内容物などが挙げられる。なお、試料懸濁液の調製においては、不用な固形分等を濾過や遠心等の各種分離法によって除去する前処理を必要に応じて行うことができる。
【0033】
この試料を、DNAやタンパク質の電気泳動で用いられる緩衝液のような電気を通す電解質の水溶液に懸濁させるか、もともと懸濁液の場合は適当な電解質を添加して電気を通す水溶液にして試料領域6に注入する。あるいは、試料領域6に電解質の溶液を満たしておいて、これに試料を添加して懸濁させてもよい。この時用いられる電解質としては、pHを極端に低下させたり上昇させたりして微生物を溶菌させたり失活させたりする物はふさわしくない。
【0034】
試料領域6に懸濁させる微生物の量は、10個/ml以下と少なすぎると回収の際の効率が悪くなるが、逆に余り高すぎるとフィルターが目詰まりを起してしまう。このため、フィルター1cmあたり1010個以下になるようにする方が望ましい。
【0035】
試料領域に試料が懸濁された電解液を満たし、また水槽のその他の領域に電解質の溶液を満たした状態で、目的とする微生物の選別回収が可能な条件で、電極2、3から直流電圧を印加する。電圧は、例えば数十〜数百ボルトの範囲から選択し、数時間印加する。この時、電圧と時間の関係は反比例するが、電圧が極端に高いと電圧と懸濁液の発熱のために微生物が死んでしまったり溶菌してしまったりするので、あらかじめ、何ボルト程度まで微生物の活性が失われてしまわないかを予備検討しておくと良い。また、マイナス荷電した土壌粒子などの夾雑物が懸濁液中に大量に存在する場合には、懸濁液を10分程度試料領域6で静置して夾雑物を沈澱させた後、泳動を始めれば、フィルターの目詰りを防げる。泳動後、微生物は各フィルターに付着しているのでフィルターのマイナス電極側の面を丁寧にこすったり、数分間逆電圧をかけたりして付着物を剥離した後に、回収領域6に残された微生物、回収領域7−1、7−2に移動した微生物のなかから目的とする微生物を回収する。
【0036】
【実施例】
以下、参考例及び実施例より本発明を説明する。
参考例
Escherichia coliを下記表1の組成のLB液体培地に入れ37℃の恒温室内で1晩振とう培養して増殖させた後、培養物を濃縮して乳白色の懸濁液を作成した。これを図3の▲1▼のように比重1.20、1.25及び1.30と3段階の濃度のショ糖水溶液を重層した容積5mlの超遠心用チューブの最上部に入れ、5万rpm20℃で4時間遠心した。
【0037】
その結果、図3の▲2▼のように1.25と1.30の境界のところにcoliの集積した乳白色の懸濁した帯が生じた。
【0038】
【表1】
Figure 0003548211
参考例
参考例1と同様にLB液体培地に37℃でPseudomonas cepacia KK01株(FERM BP−4235)を培養した培養物を濃縮して得た乳白色の懸濁液を参考例1と同様にショ糖比重勾配遠心処理した。
【0039】
その結果、図3の▲3▼のように1.20と1.25の境界のところにcepacia KK01株の集積した乳白色の懸濁した帯が生じた。
参考例
参考例1と同様にLB液体培地に37℃でMethylosinus trichosporiumを培養した培養物を濃縮して得たオレンジ色の懸濁液を参考例1と同様にショ糖比重勾配遠心処理した。
【0040】
その結果、図3の▲4▼のように1.20の中央付近にtrichosporiumの集積したオレンジ色の懸濁した帯が生じた。
参考例
下記表2のPYG液体培地に37℃で2日間振とう培養して増殖させたSaccharomyces cerevisiae(酵母)の培養物を濃縮して得た黄土色の懸濁液を参考例1と同様にショ糖比重勾配遠心処理した。
【0041】
その結果、図3の▲5▼のように遠心チューブの底部にcerevisiaeの黄土色の沈殿が生じた。
【0042】
【表2】
Figure 0003548211
参考例
coli(pUC19(宝酒造(株)社製に約1kbpDNA断片をインサートしたものが導入されているもの)、cepacia KK01株、trichosporium及びcerevisiaeのそれぞれを参考例1〜4に記載の各菌種用培地で培養し、得られた培養物をそれぞれ濃縮して混合し、微生物懸濁液を調製し、これを参考例1と同様にショ糖比重勾配遠心処理した。その結果、図3の▲6▼のように3つの懸濁した帯A、B、Cと沈殿Dが生じた。
【0043】
次に、帯A、B、Cの部分をピペットで別々に回収し、蒸留水でショ糖濃度を下げた後、遠心して微生物を沈殿回収しサンプルA、B、Cとした。また、上澄みのショ糖水溶液をすべて捨てた後、沈殿Dを蒸留水に懸濁させ、再び遠心して微生物を沈殿回収し、サンプルDとした。
【0044】
各サンプルを容積1.5ccのマイクロチューブにそれぞれ移し500μlの蒸留水に懸濁した後、LB寒天培地に塗布して37℃の恒温室に放置した。
【0045】
その結果、サンプルAを塗布した寒天培地には2日後trichosporiumと同じ形状のオレンジ色のコロニーのみが形成され、それ以降放置しても他のコロニーは形成されなかった。サンプルBを塗布した寒天培地には2日後cepacia KK01株と同じ形状の乳白色のコロニーのみが形成され、それ以降放置しても他のコロニーは形成されなかった。サンプルCを塗布した寒天培地には1日後coliと同じ形状の乳白色のコロニーのみが形成され、それ以降放置しても他のコロニーは形成されなかった。サンプルDを塗布した寒天培地には5日後cerevisiaeと同じ黄土色のコロニーのみが形成された。これらのことから、サンプルA〜Dはすべて単一の微生物からなるものであることが確かめられた。
【0046】
また、上記と同様の操作を繰返して、サンプルA〜Dを調製し、更に、上記のプラスミドを有するcoliの菌体をサンプルEとした。各サンプルを容積1.5ccのマイクロチューブにそれぞれ移し500μlの蒸留水に懸濁させた物に、10%SDS溶液を10μl添加し70℃で1時間加熱し液中の微生物を溶菌した。次に各液からフェノールクロロホルム溶液を使ってDNAを抽出し、エタノールで沈殿させて回収した。このDNAを50μlの蒸留水に溶解させて微生物DNA溶液A〜Eとした。
【0047】
これらのDNA溶液を100倍に希釈した後、これと上記のプラスミドとアニールして約1kbpのDNA断片を増幅するプライマ(M13プライマM4とM13プライマRV:共に宝酒造(株)製)、PCR用の酵素などを表3の組成となるように混合した後、表4の温度条件(▲1▼〜▲3▼の順の温度サイクル)でPCR増幅を行った。増幅後、反応液をアガロースゲルで電気泳動したところDNA溶液C及びEのみに約1kbpのDNA断片が検出された。つまり、DNA溶液A〜Dの4つの内でEと同じプラスミドを持つcoliがいるのはサンプルCだけで、A、B、Dにはcoliが混入していないことが確かめられた。
【0048】
【表3】
Figure 0003548211
【0049】
【表4】
Figure 0003548211
実施例
coliを先に表1に示した組成のLB液体培地に入れ37℃の恒温室内で1晩振とう培養して増殖させた後濃縮し下記表5の組成の電気泳動用緩衝液20ccに懸濁させて乳白色の懸濁液を作成した。この懸濁液を図2(b)に示す電気泳動用ラック11の試料領域(懸濁液領域)6に入れた。なお、本実施例では、下記の孔径のニトロセルロース製メンブランフィルター(アドバンテック東洋社製)を用いた。
【0050】
第1のフィルター(4)・・・・5.0μm
区分用フィルター(10)・・0.8μm
第2のフィルター(5)・・・・0.2μm
電極2側フィルター(8)・・0.2μm
回収領域7−1、7−2に10ccの緩衝液をそれぞれ注入し、あらかじめ約200ccの電気泳動用緩衝液を入れた電気泳動槽1に図2(a)のようにこのラック11をセットして、200V(約50mA)の直流電圧(電極2を−極、電極3を+極とした)をかけた。
【0051】
1時間後にフィルター4、10、5の3枚のフィルターのそれぞれ左側の面に付着した微生物を充分掻き落とした後、試料領域6内のフィルター4よりの位置の液10cc、回収領域7−1、7−2の緩衝液各々約10ccを回収し遠心したところ、回収領域7−1からのサンプルの遠心管底部に乳白色の沈殿物が認められ、coliが回収領域7−1のみに集まっていることが確かめられた。
【0052】
【表5】
Figure 0003548211
実施例
実施例と同様に、LB液体培地に37℃でtrichosporiumを培養した培養液を濃縮し、電気泳動用緩衝液20ccに懸濁させてオレンジ色の懸濁液を作成した。この懸濁液を実施例1と同様に電気泳動した。
【0053】
1時間後に参考例1と同様に液を回収し遠心したところ、回収領域7−2からのサンプルの遠心管底部にオレンジ色の沈殿物が認められ、trichosporiumが回収領域7−2のみに集まっていることが確かめられた。
実施例
先に表2に示したPYG液体培地に37℃で2日間振とう培養して増殖させたcerevisiae(酵母)を濃縮し、表5の組成の電気泳動用緩衝液20ccに懸濁させて黄土色の懸濁液を作成した。この懸濁液を実施例と同様に電気泳動した。
【0054】
1時間後に参考例1と同様に液を回収し遠心したところ、試料領域6からのサンプルの遠心間底部に黄土色の沈殿物が認められ、cerevisiaeが懸濁液槽Aのプラス電極側に集まっていることが確かめられた。
実施例
coli参考例5で用いたのと同様のpUC19に約1kbpのDNA断片をインサートしたものを導入した物)、trichosporium及びcerevisiaeのそれぞれを実施例1〜3に記載の各菌種用培地で培養し、得られた培養物をそれぞれ濃縮して混合し、微生物懸濁液を調製し、これを実施例と同様に電気泳動した。
【0055】
1時間後に参考例1と同様に液を回収し遠心し、生じた沈殿物をサンプルA(試料領域6から回収)、B(回収領域7−1から回収)、C(回収領域7−2から回収)とした。
【0056】
このサンプルA〜Cを個々に容積1.5ccのマイクロチューブに移し500μlの蒸留水に懸濁した後、LB寒天培地に塗布して37℃の恒温室に放置した。
【0057】
その結果、サンプルAを塗布した寒天培地には5日後cerevisia と同じ形状の黄土色ののコロニーのみが形成された。サンプルBを塗布した寒天培地には1日後coliと同じ形状の乳白色のコロニーのみが形成され、それ以降放置しても他のコロニーは形成されなかった。サンプルCを塗布した寒天培地には2日後trichosporiumと同じ形状のオレンジ色のコロニーのみが形成され、それ以降放置しても他のコロニーは形成されなかった。これらのことから、A〜Cはすべて単一の微生物からなるものであることが確かめられた。
【0058】
次に、上記の操作を繰返してサンプルA〜Cを調製し、更に上記のプラスミドを有するcoliの菌体をサンプルDとした。各サンプルを容積1.5ccのマイクロチューブにそれぞれ移し500μlの蒸留水に懸濁させた物に、10%SDS溶液を10μl添加し70℃で1時間加熱し液中の微生物を溶菌した。次に各液からフェノールクロロホルム溶液を使ってDNAを抽出し、エタノールで沈殿させて回収した。このDNAを50μlの蒸留水に溶解させて微生物DNA溶液A〜Dとした。
【0059】
これらのDNA溶液を100倍に希釈した後、PCR用の酵素など混合してPCR増幅を行った。PCRの条件は参考例5と同様の条件とした。増幅後、反応液をアガロースゲルで電気泳動したところDNA溶液BとDのみに約1kbpのDNA断片が検出された。つまり、A〜Dの4つのサンプルの内でDと同じプラスミドを持つcoliがいるのはサンプルBだけで、AとCにはcoliが混入していないことが確かめられた。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、電気泳動法を用いて複数の微生物群を選別回収することにより、以下の効果が得られた。
1)平板培養法のように、想定されるまたは期待する様々な条件の寒天培地を用意して、微生物懸濁液を塗布して数日間培養する、といった操作を行わなくても、懸濁液中の各種微生物を比重にしたがって簡単にかつ数時間で選別回収できる。
2)平板培養法の場合、有用な微生物であるにも関わらず培養条件が合わなかったためにコロニーを形成できず、結果的に回収できなかった微生物を選別回収できる。
3)吸引ろ過法のように、固形物による目詰まりのためにろ紙を頻繁に交換する必要がなく、一度フィルターをセットすれば、後は電圧をかけるだけで微生物を選別回収できる。
4)遠心分離法のように、微生物の種類の違いによる微妙な遠心条件の違いをあらかじめ調べて遠心機を細かくコントロールする必要がなく、適当な孔径のフィルターをセットすれば、後は電圧をかけるだけで微生物を選別回収できる。
5)本方法によって回収した微生物から溶菌抽出したDNAは、更に不純物を取り除くための処理をしなくてもPCR増幅反応などの酵素反応ができる純度である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微生物選別装置の一例の模式的断面図を示す。
【図2】本発明の微生物選別装置の他の例の構造を示し、(a)は水槽全体の模式的断面図を、(b)は電気泳動用ラックの模式的断面図をそれぞれ示す。
【図3】遠心勾配法における操作を説明するための遠心管内の状態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1 水槽(電気泳動槽)
2,3 電極
4 第1のフィルター(微生物選別用)
5 第2のフィルター(微生物捕獲用)
6 試料領域(懸濁液領域)
7,7−1,7−2 回収領域
8 フィルター
9 電極2側領域
10 区分用フィルター(微生物選別用)
11 電気泳動用ラック

Claims (10)

  1. 一対の電極から微生物を移動させるための直流電圧を印加し得る液相内に、試料が添加される試料領域と、該試料領域と前記微生物の移動方向に微生物選別用の第1のフィルターを介して連通し、かつ微生物を誘引する電極側に微生物捕獲用の第2のフィルターを有する回収領域とを設け、前記試料領域に複数種の微生物が混在する試料を分散させた状態で、前記一対の電極から直流電圧を前記液相内に印加し、前記第1のフィルターを通過できる微生物を前記試料領域から前記回収領域に移動させた後、前記試料領域に残された微生物または前記回収領域に移動した微生物を回収することを特徴とする微生物の選別回収方法。
  2. 前記第1のフィルターと第2のフィルター間に1以上の区分用フィルターを設けて前記回収領域を2以上に区分し、これら第1のフィルター及び区分用フィルターの孔径が、選別する微生物の大きさに応じて前記微生物の移動方向において順に小さくなるようにした請求項に記載の微生物の選別回収方法。
  3. 前記微生物を誘引する電極がプラス極である請求項1または2に記載の微生物の選別回収方法。
  4. 前記試料が複数種の微生物の混合培養液である請求項1〜3のいずれかに記載の微生物の選別回収方法。
  5. 前記試料が土壌懸濁液である請求項1〜3のいずれかに記載の微生物の選別回収方法。
  6. 前記試料が下水・廃水処理槽の活性汚泥である請求項1〜3のいずれかに記載の微生物の選別回収方法。
  7. 前記試料が川・湖・海などの底泥である請求項1〜3のいずれかに記載の微生物の選別回収方法。
  8. 前記試料が、動物の消化管の内容物である請求項1〜3のいずれかに記載の微生物の選別回収方法。
  9. 液相を形成し得る槽と、該液相内で微生物を移動させるための直流電圧を印加するための一対の電極と、を有し、前記液相内に、複数種の微生物を含む試料を添加する試料領域と、該試料領域の前記微生物の移動方向に微生物選別用の第1のフィルターを介して連通し、かつ微生物を誘引する電極側に微生物捕獲用の第2のフィルターを有する回収領域と、を有することを特徴とする微生物選別用装置。
  10. 前記第1のフィルターと第2のフィルター間に1以上の区分用フィルターが設けられて前記回収領域が2以上に区分され、これら第1のフィルター及び区分用フィルターの孔径が、選別する微生物の大きさに応じて前記微生物の移動方向において順に小さくなるように設定された請求項に記載の微生物選別用装置。
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