JPH07203965A - 微生物試料の調製方法および微生物dnaの回収方法 - Google Patents

微生物試料の調製方法および微生物dnaの回収方法

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JPH07203965A
JPH07203965A JP389194A JP389194A JPH07203965A JP H07203965 A JPH07203965 A JP H07203965A JP 389194 A JP389194 A JP 389194A JP 389194 A JP389194 A JP 389194A JP H07203965 A JPH07203965 A JP H07203965A
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JP
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dna
suspension
tank
microbial
microorganism
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Akira Kuriyama
朗 栗山
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 微生物懸濁液を電解質の存在下で電気泳動さ
せ、電極間に設けたフィルタにより、該懸濁液中に存在
するフリーの未分解DNA画分を微生物懸濁液から分離
させ、得られた微生物試料を溶菌処理し、該微生物のD
NAを分離・回収する。 【効果】 フリーの未分解DNAのみを除去することが
できるので、溶菌処理で微生物由来のDNAのみを高収
率および高純度で回収することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、土壌懸濁液や下水・廃
水処理槽の活性汚泥や川・湖・海などの底泥から回収さ
れ得る種々の有用微生物を研究するための微生物試料の
調製技術、更に微生物の機能に関する情報が書き込まれ
たDNAを抽出するための微生物DNA回収技術に関
し、特に、微生物と起源の不明なフリーの未分解DNA
が混在した系から、フリーの未分解DNAを効率的に分
離・除去する微生物試料の調製方法および該方法を利用
して微生物由来のDNAのみを高収率および高純度で直
接回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、遺伝子工学の発展と共に、従来の
化学的な方法とは異なる、微生物や酵素を使った有用物
質の生産や有害物質の分解の可能性が盛んに検討される
ようになるにつれ、既存の化学工学的な生産の長所を保
ちつつ遺伝子工学的な生産を行うことを目的として微生
物の研究が盛んになり、例えば高温、低温、高アルカ
リ、高水圧といった特殊な環境の中で生息し活動する微
生物も研究されている。
【0003】このような状況下において、非常に多種多
様な微生物が生息し、上記のような性質を持つ微生物も
存在している可能性がある、土壌懸濁液や下水・廃水処
理槽の活性汚泥や川・湖・海などの底泥から種々の微生
物を単離してその能力について研究したり、その機能に
関する情報が書き込まれたDNAを抽出する技術が、遺
伝子工学の基礎的な研究のみならず、応用技術分野の更
なる発展に大変重要になってきた。
【0004】現在おもに用いられているDNAを抽出す
る方法には、以下の様な物がある。
【0005】1つは微生物を含む懸濁液を希釈して目的
に合った成分を含む寒天培地上に塗布し、目的にあった
環境に培地を数日間静置して培養し、増殖してきた微生
物のコロニーを選抜して、更に集積培養して濃度を高め
てから遠心などで沈殿させて微生物を回収しDNAを抽
出する培養回収法である。
【0006】この方法は1種類の微生物のDNAを高純
度で回収できる利点があるが、分離培養条件の不明な微
生物ではまったく使えない、という問題点がある。一般
に、土壌中の微生物の99〜99.9%は寒天培地上で
増殖させ分離する事は困難であると言われている。この
ため、サンプリングした懸濁液の中にいくら有用な微生
物がいたとしても大部分は回収不可能である。また、比
較的培養条件を推定し易い廃水処理槽内の活性汚泥にし
ても、実際の槽内の条件と実験室の培地内の条件の微妙
な差のために、微生物種の比率が変わってしまう可能性
が高く、活性汚泥内の優先種を培地内の優先種として回
収できない可能性がある。
【0007】もう1つは微生物を含む懸濁液から遠心分
離などで夾雑物を除去して、微生物のみを分離回収しD
NAを抽出する菌体回収法である。
【0008】この方法は懸濁液中の多種多様な微生物の
DNAを回収できる利点があるが、懸濁液によって回収
率が土壌1gあたり1μgを越えたり、逆に10ng程
度に低下したりする。この様に回収率が大きく変化する
のは微生物が懸濁液中でどの程度夾雑物に付着している
か、また凝集しやすいかが異なるためである。このた
め、安定した回収率でDNAが回収できない。
【0009】また、純度の高いDNAを得るには微生物
と夾雑物の分離操作を強力に行う必要が有り、必然的に
微生物とDNAの回収率は低下してしまう。特に微生物
が夾雑物に付着している場合は、回収率は0%に近いも
のになってしまう。逆に回収率を高めようとすると夾雑
物の混入を許すことになり、回収したDNAの純度が低
下して、消化酵素で切断したりPCRで増幅したりとい
った回収DNAを用いた作業ができなくなってしまう、
という問題点が生じる。
【0010】これらの方法に対して、微生物を含む懸濁
液に細胞膜溶解酵素・SDS・フェノールなど溶菌液を
添加して微生物を溶かしてしまい、直接DNAを抽出す
ることで回収率を100%に近づけようとしたのが直接
溶菌法である。
【0011】この方法は、土壌・活性汚泥・底泥などの
懸濁液中の多種多様な微生物を初めにすべて溶かしてし
まい、懸濁液中にDNAが浮遊した状態にし、その後D
NA抽出方法を用いて回収するため、夾雑物を除去する
際に微生物も失われてしまうといった損失が無く、DN
Aの回収量は例えば土壌1gあたり10μgと菌体回収
法より高い収率で回収できる利点がある。
【0012】しかし、上記のような微生物懸濁液は、微
生物を培養した液体培地と違い、目的の微生物以外に過
去に死滅した微生物や植物や動物の死骸など起源の不明
なフリーの未分解DNAが混在するため、直接溶菌法を
用いるとこれらのフリーの未分解DNAと溶菌処理をし
て得られた目的の微生物由来のDNAとが混合されてし
まう、という問題点がある。
【0013】これでは、せっかく高収率でDNAを回収
しても、ライブラリを作成することができず、またPC
R増幅等の作業をする際に微生物とはまったく関係ない
DNAが増幅されるといった問題が起こる不安がある。
これらのフリーの未分解DNAは土壌粒子などの固形物
に付着しているため、懸濁液を洗浄して可溶性の物を除
去してもほとんど効果が無い。
【0014】この様な欠点があるため、従来直接溶菌法
はDNAを回収して利用するためよりも、回収率が高い
ことを利用して回収DNA量から土壌中の生物量を推定
することに使われる程度であった。
【0015】更に、回収した微生物からDNA等の核酸
を回収する場合、回収DNAの質や純度がその後の酵素
消化、PCR、ハイブリダイゼーションといった処理に
とって大変重要である。しかし、土壌粒子のような微生
物担持担体には腐植のような有機物などが微生物と同様
多量に付着しており、微生物の精製が不充分であると、
これらの有機物が微生物と共に回収される。このため、
回収した微生物DNAから腐植などの不純物を除去する
ために、塩化セシウム平衡密度勾配法やハイドロキシア
パタイトカラムクロマトなどゲル濾剤を用いた精製が必
要になってくる(これらについては、"Molecular Cloni
ng, A LABORATORY MANUAL, SECOND EDITION"、J. Sambr
ookら著、Cold Spring Harbor Laboratory Press、p
1.40〜1.48および『生物化学実験法11、ゲル
濾過法』、志村憲助ら著、学会出版センター、p181
〜195参照)。しかしながら、これらの方法は、操作
自体や前処理が煩雑な上に、超遠心機で24〜48時間
と長時間遠心する必要がある、発ガン物質であるエチジ
ウムブロマイドを使用する、DNAの回収効率が低い
等、問題があった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の実情に鑑み、微生物を培養により回収したり、微生
物のみを物理的に分離回収したりせずに、微生物懸濁液
からフリーの未分解DNAを選択的に分離・除去できる
特定手段を用いることにより、微生物由来DNA回収用
の微生物試料を調製することを目的とする。
【0017】また、本発明の他の目的は、上記の調製方
法を利用して、試料中の微生物を直接溶菌してもフリー
の未分解DNAの混入がなく微生物由来のDNAを高効
率および高純度で分離回収することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成する本
発明は、微生物懸濁液を電解質の存在下で電気泳動させ
ることにより、該懸濁液中に存在するフリーの未分解D
NAを微生物懸濁液から分離させることを特徴とする微
生物試料の調製方法である。DNAはマイナスに荷電し
ているので、起源の不明なフリーの未分解DNAと微生
物が混在している微生物懸濁液に電極を挿入して電圧を
かけることにより、プラス極にフリーの未分解DNAが
移動させ分離することが可能で、微生物由来のDNAを
回収する等の目的のための微生物試料を容易に調製する
ことができる。このような簡便な方法で有効な分離除去
が可能であることは予想を越えるものであった。
【0019】また、本発明は、上記微生物の調製方法に
おいて、電気泳動槽の電極間に、DNAは透過するが微
生物は透過しないフィルターを設けることにより、未分
解DNA画分を微生物懸濁液から分離・除去する微生物
試料の調製方法である。電気泳動する際に微生物は透過
せずDNAは透過するフィルターを設けることで、電気
泳動で同時に移動する微生物を失うことなく、起源の不
明なフリーの未分解DNAをプラス極側に効率的に泳動
除去することができる。かかるフィルターとしては、孔
径によりDNAと微生物とを分離するものが簡便であり
かつ効率的で好ましく、また、該フィルターが、ゲルの
薄膜からなるものであれば、一定の孔径を設定し易く保
形性があり、電気泳動槽中で電気の良導体として機能す
るので好ましい。
【0020】また、本発明は、上記いずれかの微生物の
調製方法において、微生物懸濁液が、土壌懸濁液、下水
・廃水処理槽の活性汚泥、川・湖・海の底泥のいずれか
である微生物試料の調製方法である。土壌懸濁液や下水
・廃水処理槽の活性汚泥や川・湖・海などの底泥から回
収され得る種々の有用微生物を研究することは実用上重
要であり、これらのサイトから微生物試料を調製するこ
とは極めて有意義である。
【0021】また、本発明は、上記いずれかの微生物の
調製方法により未分解DNAを分離・除去した微生物試
料から、該微生物DNAを回収することを特徴とする微
生物DNAの回収方法である。未分解DNAが除去され
た微生物試料を用いることにより、微生物由来のDNA
を高収率および高純度で回収することが可能となる。
【0022】また、本発明は、上記の微生物DNAの回
収方法において、未分解DNAを分離・除去した微生物
試料を溶菌処理し、該微生物のDNAを分離・回収する
微生物DNAの回収方法である。起源の不明なフリーの
未分解DNAと微生物が混在している懸濁液から直接微
生物を溶菌してDNAを回収すると、微生物由来のDN
Aとフリーの未分解DNAが混合されて分離できなくな
るという不都合な問題を、上記の微生物試料の調製方法
を採用することにより、簡単にフリーの未分解DNAの
みを除去することができるので、溶菌処理で微生物由来
のDNAのみを高収率および高純度で回収することがで
きる。回収されたDNAには起源の不明なフリーの未分
解DNAが混入している心配がないので、微生物由来の
DNAのPCR増幅やDNAライブラリの作成に極めて
有効である。
【0023】以下、本発明を詳述する。
【0024】本発明の対象になる微生物懸濁液は、土壌
懸濁液や下水・廃水処理槽の活性汚泥や川・湖・海の底
泥等の懸濁液や固形物から種々の目的で採取・調製され
る様々な微生物懸濁液であり、特に制限なく対象とする
ことができる。例えば、種々の微生物の機能に関する情
報が書き込まれたDNAを抽出するために調製される微
生物試料を目的として採取された微生物懸濁液である。
また、対象が土壌のような固形物の場合は蒸留水や以下
に挙げるような電解質の水溶液を添加して懸濁液にすれ
ばよい。このような微生物懸濁液は通常、起源の不明な
フリーの未分解DNAと微生物が混在している系であ
り、かかる未分解DNAは微生物由来のDNAを研究す
る上での支障となる。ここで、フリーの未分解DNAと
は、目的とする微生物DNA以外のDNAを総称であ
り、例えば、過去に死滅した微生物、植物や動物の死骸
等、起源や未同定、同定の別を問わず包含する。ここ
で、微生物には、細菌、放線菌、酵母、かび、きのこ、
微細藻類、原生動物等、天然に存在するもの、バイオテ
クノロジー技術の応用により得られたものを含むもので
ある。
【0025】電気泳動に付する微生物懸濁液の固形物濃
度は、最大でも50%、好ましくは20%程度以下とす
るのが泳動を効率よく実施する上でよく、また、懸濁液
のpHは3〜9、好ましくは4〜8程度であると電気泳
動を迅速に実施でき、また微生物が溶菌したり失活しな
いのでよい。また、数千rpmで10〜30秒間遠心沈
澱をする等により、微生物懸濁液からあらかじめ大きめ
の夾雑物を除去しておいてもよし、この他、ブレンダ
ー、ミキサー、ホモジナイザー等で土壌粒子を細かく粉
砕しておくと、微生物の回収率が更に良くなる。
【0026】次に、微生物懸濁液には電気泳動を実施す
るため電解質を溶解させる必要がある。DNAやタンパ
ク質の電気泳動で用いられる緩衝液のような何らかの電
気を通す電解質の水溶液を加えるか、または適当な電解
質を添加して電解質溶液にする。電気泳動を長時間行う
場合には緩衝液を用いるとよく、例えば、リン酸緩衝
液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の中性から弱酸性の
もの等を挙げることができ、好ましくはTAE、TP
E、TBEといったDNA電気泳動用緩衝液等である。
また、電解質を添加する場合は、pHを極端に低下させ
たり上昇させたりして微生物を溶菌させたり失活させた
りする物はふさわしくない。電解質としては、リン酸、
酢酸、クエン酸等やこれらとナトリウム、カリウム等を
組合せたものを挙げることができ、好ましくは、トリス
・EDTAと酢酸、リン酸、ホウ酸等を混合したもので
ある。
【0027】得られた懸濁電解液は電気泳動槽に装填し
て電圧を掛ける。ここで、微生物と未分解DNAを分離
する手段としては、電解液の粘度を調整しその中で電気
泳動させ移動速度差で未分解DNAを分離するか、また
は電極間にフィルターを設けて未分解DNAを選択的に
分離する等が挙げられる。粘性電解液中で電気泳動する
態様で用いる粘性物質としては、20〜50%程度のシ
ョ糖水溶液等を挙げることができる。しかし、微生物と
DNAのサイズは大幅に相違するので、分子篩効果を利
用するよりは、フィルターを用いて2画分に分けるのが
操作が容易であり、また迅速、効率的であるので好まし
い。即ち、電気泳動槽のプラス極側には微生物がDNA
と同時に泳動流出してしまうのを避けるためのフィルタ
ーを設置し、未分解DNA画分を透過させ分離するとよ
い。
【0028】かかるフィルターとしては、微生物を透過
させず未分解DNAを透過させる機能を有するものであ
れば制限なく用いることができるが、フィルターの材質
は水に浸しても形状を維持し、かつ電解質水溶液がしみ
こむと電気の良導体になる物でなければならない。用い
ることのできるものとしては、ニトロセルロース、ポリ
ビニリデンディフロライド等の孔径の均一なメンブレン
フィルタやセルロース、ガラス、シリカ等のファイバー
フィルタを挙げることができる。フィルターの孔径は回
収する微生物のサイズより小さい物を、実際に市販され
ているものの中から選ぶとよい。例えば、細菌とDNA
を分離するためには、1μm以下、好ましくは0.2μ
m以下の孔径のものがよい。また、DNAは通すが微生
物サイズの物は通さない分子篩効果を有するアガロー
ス、アクリルアミド、ゼラチンなどのゲルの薄膜も適し
ている。ゲルの厚みは通常1〜10mm程度である。ま
た、金属線等で作られた網や焼結ガラスなどの表面をゲ
ルで固めたものをフィルタとして用いると機械的強度な
どの点で有利である。
【0029】電気泳動に付する態様としては、フィルタ
ーで懸濁液槽とDNA槽に仕切った電気泳動用ラックを
用いて、懸濁液槽に試料となるべき微生物懸濁液を充填
し、DNA槽には電気泳動用の緩衝液を充填し、これを
電気泳動槽に浸漬して電圧を印加するのが、簡便でまた
微生物の回収も容易であるので好ましい。このような電
気泳動用ラックを図1に示す。このラックはフィルター
4で懸濁液槽1とDNA槽2に仕切られており、懸濁液
槽側の壁面は懸濁液の流出を防止する濾紙3、DNA槽
側の壁面はDNAが透過できない半透膜5からなってい
る。
【0030】泳動槽を懸濁電解液で満たした後、泳動槽
の電極に10〜1000ボルト、通常20〜200ボル
トの直流電圧をかけて1〜2時間放置する(温度は20
〜50℃程度)。この時、電圧と時間の関係は反比例す
るが、電圧が極端に高いと電圧と懸濁液の発熱のために
微生物の細胞膜が破れて溶菌し、内部のDNAが溶出し
てしまったりするので、あらかじめ、何ボルト程度まで
微生物が溶菌しないで形状を維持するかを予備検討して
おくと良い。泳動後、フリーのDNAはフィルターを通
過して除去されるが、微生物もフィルターに付着してい
るので、約1分間プラス極とマイナス極を逆にして電圧
をかけたり、フィルターの懸濁液側の面を丁寧にこすっ
て付着物を剥離した後にフィルター周辺の懸濁液を回収
すればフリーのDNAが除去された微生物懸濁液が高収
率で回収できる。
【0031】回収した微生物試料は、リゾチームなどの
細胞膜溶解酵素、SDS、フェノールなどを添加して微
生物を溶かす通常の溶菌処理を行い、更にDNAを抽出
等すれば目的の微生物由来DNAが採取できる。好まし
い溶菌処理条件としては、リゾチームの場合、その至適
温度である37℃で試料を処理し、SDSの場合に処理
時間を短くしたい場合は70℃程度にする等であり、ま
たDNAの抽出、回収はエタノール沈澱、イソプロパノ
ール沈澱、PEG沈澱して行うと好ましい。得られたD
NAは高純度であるので、PCR増幅やハイブリダイゼ
ーション等、またライブラリ作成が高い信頼性をもって
行うことができる。なお、未分解DNAを除去した微生
物試料から、溶菌処理せずに、前述した培養回収法や菌
体回収法を利用して微生物のDNAを回収することも可
能である。
【0032】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。
【0033】[実施例1]E.coliを表1のLB液
体培地に入れ37℃の恒温室内で1晩振とう培養して増
殖させた後濃縮し表2の電気泳動用緩衝液2ccに懸濁
させて、更にあらかじめ別に調製しておいた約2kbp
のDNA断片を約10ng混入させて微生物懸濁液3c
c(約107個/cc)を作成した。この懸濁液を図1
の電気泳動用ラックの懸濁液槽(容積約4cc)に入
れ、一方、孔径0.2μmのニトロセルロース製メンブ
ランフィルター(アドバンテック東洋社製)と半透膜で
挟まれたDNA槽(容積約4cc)に約3ccの電気泳
動用緩衝液を入れた。あらかじめ約200ccの電気泳
動用緩衝液を入れた電気泳動槽(約20℃)に図2のよ
うにこのラックをセットして、200V(約50mA)
の直流電圧をかけた。
【0034】1時間後に、フィルタに付着した微生物を
剥離し易くするために、約1分間プラス極とマイナス極
を逆にして電圧をかけた後、懸濁液槽の液(以下「A
液」という)とDNA槽の液(以下「B液」という)を
それぞれ2cc回収した。A液に200μlの10%S
DS溶液を加え、70℃で1時間加熱し液中の微生物を
溶菌した。この溶菌液から、フェノールクロロホルム溶
液を使ってDNAを抽出し、エタノールで沈澱させて回
収した。このDNAを10μlの蒸留水に溶解させてD
NA溶液Aとした。また、B液はA液と同様にフェノー
ルクロロホルム溶液を使ってDNAを抽出し、エタノー
ルで沈澱させて回収し、10μlの蒸留水に溶解させて
DNA溶液Bとした。
【0035】DNA溶液A、Bをそれぞれ10μlをア
ガロースゲルで電気泳動しエチジウムブロマイドで染色
したところDNA溶液Aからは数十kbpのジェノムの
DNAが、DNA溶液Bからは約2kbpのDNA断片
が検出された。つまり、はじめ微生物懸濁液中にあった
別途添加したDNA断片は、DNA溶液Aには含まれて
おらず分離、除去されたことが確かめられた。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】 [比較例1]約1kbpのDNA断片10ngとE.c
oliを混在させた懸濁液を2cc用意し、これを実施
例1と同様に溶菌処理し、濃縮してDNAを抽出した。
これを実施例1と同様にアガロースゲルで電気泳動した
ところ数十kbpのジェノムのDNAと約1kbpのD
NA断片の2つのバンドが検出され分離されていないこ
とが確かめられた。
【0038】[実施例2]約2kbpのインサートとp
UC19(宝酒造(株)製)を接合して作成したプラス
ミドを導入したE.coliを実施例1と同様に増殖し
濃縮した物に、約1kbpのインサートとpUC19を
接合したプラスミドを約1ng混入させた懸濁液を作成
した。これらのプラスミドは同じプライマ1(M4とR
Vの組合せ:宝酒造(株)製)でPCR増幅することが
できる。これを実施例1と同様に電気泳動し、懸濁液槽
内の液とDNA槽内の液を回収し、DNA溶液A、Bを
作成した。
【0039】このDNA溶液A、Bを100倍に希釈し
たものを用意し、PCR用の酵素などを表3のように添
加した後、表4のような温度条件でPCR増幅を行っ
た。増幅後、反応液をアガロースゲルで電気泳動したと
ころ図3ののようにDNA溶液AからはE.coli
内に導入されていた約2kbpのDNAが、またのよ
うにDNA溶液Bからは懸濁液に混入させた約1kbp
のDNAが検出された。つまり、はじめ懸濁液中に混在
していた約1kbpのインサートを含むプラスミドは、
電気泳動除去処理後にはDNA溶液Aには含まれておら
ず分離、除去されたことが確かめられた。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】 [比較例2]実施例2と同様の約2bpのインサートを
接合したプラスミドを導入したE.coliと、約1b
pのインサートを接合したプラスミドを混在させた懸濁
液を10cc用意し、これを実施例1と同様に溶菌処理
し、濃縮してDNAを抽出した。これを実施例2と同様
に100倍希釈してPCRしたところそれぞれのプラス
ミドに対応した約1kbpと約2kbpの2つのDNA
が検出され、分離されていないことが確かめられた。
【0042】[実施例3]シロアリ腸内細菌P.cep
aciaKK01株(FERM BP−4235)の1
6sリボソーマルRNAの塩基配列をあらかじめ決定
し、この部分を非特異的にPCR増幅して約400bp
のDNA断片を合成するプライマ2をDNAシンセサイ
ザ(ABI社製)にて合成し準備した。
【0043】約1kbpのインサートを含みプライマ1
でPCR増幅するプラスミドを導入したE.coli
実施例1と同様に増殖し濃縮した物に、先ほどのP.c
epaciaのジェノムのDNAを約10ng混入させ
たものを1cc用意し、採集したばかりで滅菌や乾燥等
の処理をまったく行っていないローム層の土壌10g
(生重量)に混ぜ込んで室温15℃湿度60%の恒温恒
湿室に静置した。
【0044】約3週間後、この土壌に0.1Mリン酸ナ
トリウム緩衝液(pH5)を20cc加え、ブレンダー
を用いて懸濁させた。この懸濁液を実施例1と同様に電
気泳動し、懸濁液槽内の液とDNA槽内の液を回収し、
DNA溶液A、Bを作成した。
【0045】このDNA溶液A、Bを100倍に希釈し
たものを用意し、表5のようにA、Bとプライマ1、2
を組み合わせて実施例2と同様にPCR増幅を行い、反
応液をアガロースゲルで電気泳動した。その結果、か
らはE.coli内に導入されていたプラスミドを鋳型
とした約1kbpのDNA断片が、またからは懸濁液
に混入させたP.cepaciaのジェノムDNAを鋳
型とした約400bpのDNA断片が検出された。ま
た、とは鋳型となるプラスミドまたはジェノムのD
NAが存在しないためにDNA断片のバンドは検出され
なかった。つまり、はじめ懸濁液中に混在していたP.
cepaciaのジェノムのDNAは、電気泳動除去処
理後には分離、除去され、DNA溶液AにはE.col
のDNAのみが回収されていることが確かめられた。
また、分離、除去されたDNAにはE.coliのもの
は混入しておらず、本法によって目的のDNAが損失さ
れないことも確かめられた。
【0046】
【表5】 [比較例3]実施例3と同様のP.cepaciaのジ
ェノムDNAとプラスミドを導入したE.coliを混
在させた土壌1gを約3週間15℃60%の環境に静置
した後、実施例3と同様にブレンダーで土壌懸濁液を作
成し、これをすぐ実施例1と同様に溶菌処理し、DNA
を抽出した。これを100倍希釈して実施例3と同様に
PCRしたところ、プライマ1を添加したものには約1
kbpのDNA断片が、プライマ2を添加したものには
約400bpのDNA断片が検出され、この回収DNA
水溶液にE.coliのプラスミドとP.cepaci
のジェノムが存在し分離されていないことが確かめら
れた。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、DNAはマイナス
に荷電しているので、起源の不明なフリーの未分解DN
Aと微生物が混在している微生物懸濁液に電極を挿入し
て電圧をかけることにより、プラス極にフリーの未分解
DNAが移動させ分離することが可能で、微生物由来の
DNAを回収する等の目的のための微生物試料を容易に
調製することができる。
【0048】また、電気泳動する際に微生物は透過せず
DNAは透過するフィルターを設けることで、電気泳動
で同時に移動する微生物を失うことなく、起源の不明な
フリーの未分解DNAをプラス極側に効率的に泳動除去
することができる。かかるフィルターとしては、孔径に
よりDNAと微生物とを分離するものが簡便でありかつ
効率的で、また、該フィルターが、ゲルの薄膜からなる
ものであれば、一定の孔径を設定し易く保形性があり、
電気泳動槽中で電気の良導体として機能するので好まし
い。
【0049】また、土壌懸濁液や下水・廃水処理槽の活
性汚泥や川・湖・海などの底泥から回収され得る種々の
有用微生物を研究することは実用上重要であり、これら
のサイトから微生物試料を調製することは極めて有意義
である。
【0050】また、未分解DNAが除去された微生物試
料を用いることにより、微生物由来のDNAを高収率お
よび高純度で回収することが可能となる。
【0051】また、起源の不明なフリーの未分解DNA
と微生物が混在している懸濁液から直接微生物を溶菌し
てDNAを回収すると、微生物由来のDNAとフリーの
未分解DNAが混合されて分離できなくなるという不都
合な問題を、上記の微生物試料の調製方法を採用するこ
とにより、簡単にフリーの未分解DNAのみを除去する
ことができるので、溶菌処理で微生物由来のDNAのみ
を高収率および高純度で回収することができる。回収さ
れたDNAには起源の不明なフリーな未分解DNAが混
入している心配がないので、微生物由来のDNAのPC
R増幅、ハイブリダイゼーションやDNAライブラリの
作成に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微生物試料調製方法で用いることがで
きる電気泳動用のラックの構造を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例1で用いた電気泳動用電気泳動
槽に電気泳動用ラックをセットした状態を示す模式図で
ある。
【符号の説明】
1 懸濁液槽 2 DNA槽 3 濾紙 4 メンブレンフィルター 5 半透膜 6 電気泳動用ラック 7 泳動槽本体 8 白金線電極(マイナス極) 9 白金線電極(プラス極) 10 電気泳動用緩衝液

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物懸濁液を電解質の存在下で電気泳
    動させることにより、該懸濁液中に存在するフリーの未
    分解DNAを微生物懸濁液から分離させることを特徴と
    する微生物試料の調製方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、電気泳動槽の電極間
    に、DNAは透過するが微生物は透過しないフィルター
    を設けることにより、未分解DNA画分を微生物懸濁液
    から分離・除去する微生物試料の調製方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、該フィルタ
    ーが、該微生物よりも小さい孔径を有する微生物試料の
    調製方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2において、該フィルタ
    ーが、ゲルの薄膜からなる微生物試料の調製方法。
  5. 【請求項5】 請求項2乃至4のいずれか一項におい
    て、フィルターで懸濁液槽とDNA槽に仕切り、懸濁液
    槽側の壁面を濾紙、DNA槽側の壁面を半透膜で構成し
    た電気泳動用ラックを用い、該懸濁液槽に微生物懸濁液
    を、該DNA槽に電気泳動用電解質液をそれぞれ充填
    し、該ラックを電気泳動槽にセットして電気泳動を行う
    微生物試料の調製方法。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか一項におい
    て、微生物懸濁液が、土壌懸濁液、下水・廃水処理槽の
    活性汚泥、川・湖・海の底泥のいずれかである微生物試
    料の調製方法。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか一項記載の調
    製方法により未分解DNAを分離・除去した微生物試料
    から、該微生物DNAを回収することを特徴とする微生
    物DNAの回収方法。
  8. 【請求項8】 請求項7において、未分解DNAを分離
    ・除去した微生物試料を溶菌処理し、該微生物のDNA
    を分離・回収する微生物DNAの回収方法。
  9. 【請求項9】 請求項5の調製方法において用いる、フ
    ィルターで懸濁液槽とDNA槽が仕切られ、懸濁液槽側
    の壁面を濾紙、DNA槽側の壁面を半透膜で構成した電
    気泳動用ラック。
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