JP3547849B2 - 遠心クラッチ - Google Patents

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  • One-Way And Automatic Clutches, And Combinations Of Different Clutches (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、遠心クラッチに関し、特に、入力部材に連なるクラッチアウタと、出力部材に連なり、クラッチアウタに囲繞されるクラッチインナと、クラッチアウタの内周にスプライン係合する駆動摩擦板と、クラッチインナの外周にスプライン係合して駆動摩擦板に重ねられる被動摩擦板と、入力部材の回転数の上昇に応じて駆動及び被動摩擦板相互を圧接させる遠心機構と、出力部材に連結され、出力部材からの逆負荷に応動して駆動及び被動摩擦板相互を圧接させる逆負荷伝達機構と、遠心機構及び逆負荷伝達機構の駆動及び被動摩擦板に対する圧接力を任意に回避し得るクラッチオフ機構とを備えた遠心クラッチの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝる遠心クラッチは、特公昭36−4606号公報に開示されているように、自動クラッチ機能を有する外、エンジンのキック始動や押しかけを可能にし、又いつでもマニュアル操作によるクラッチオフを可能にする多様の機能を有するもので、多段変速機付の小型自動二輪車に広く採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かゝる遠心クラッチにおいては、例えば走行中、変速直前にクラッチオフ機構を作動させて該クラッチをオフ状態にし、変速後クラッチオフ機構を不作動状態に戻すと、直ちに逆負荷伝達機構が作動してオン状態となり、逆負荷がエンジン側に急激に伝達して伝動系にショックが生じ、車両の乗心地を損じることがある。
【0004】
本発明は、かゝる点に鑑みてなされたもので、走行中の変速後はクラッチオフ機構を不作動状態に戻しても、伝動系に逆負荷によるショックを生じさせないような前記遠心クラッチを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、前記遠心クラッチにおいて、逆負荷伝達機構に、出力部材の回転数が所定値以上になることに応動して該機構の作動を制御する逆負荷伝達制御機構を連結したことを特徴とする。
【0006】
【作用】
上記特徴によれば、出力部材が所定値以上の回転数で回転するとき、即ち車両の走行中では、逆負荷伝達制御機構により逆負荷伝達機構の作動が拘束もしくは制限されるので、変速後、クラッチオフ機構を不作動状態に戻しても、遠心機構の作動が再開されない限り、遠心クラッチはオフ状態もしくは半クラッチ状態に保持される。したがって伝動系に逆負荷によるショックは生じない。
【0007】
【実施例】
以下、図面により本発明の一実施例について説明する。
【0008】
図1において、エンジンのクランクケース1の一側壁と、これに接合されるサイドカバー2との間に画成されるクラッチ室3に本発明の遠心クラッチ4が配設される。この遠心クラッチ4は、クランクケース1にベアリング5を介して支持されたエンジンのクランク軸6(入力部材)に取付けられる。またクランク軸6の出力トルクが該クラッチ4を介して伝達される駆動ギヤ7はクランク軸6に回転自在に支承され、この駆動ギヤ7と噛合する大径の減速ギヤ8は、クランクケース1にベアリング9を介して支持される多段変速機の入力軸10に固着される。
【0009】
遠心クラッチ4は、その駆動板11の大径ボス11aをクランク軸6の端部にスプライン嵌合してナット12で固着することにより、クランク軸6に取付けられる。上記大径ボス11aの外周には、前記駆動ギヤ7に連結した出力リング13(出力部材)が回転可能且つ軸方向移動不能に支承され、この出力リング13の外周にクラッチインナ14が回転及び摺動可能に装着される。
【0010】
また駆動板11は、前記ナット12を囲繞するように一側面から突出する案内筒11bと、外周部一側面から突出する複数の小径ボス11c(図にはそのうちの一つを示す)とを有し、その案内筒11bには、駆動板11及びクラッチインナ14を囲繞するドラム状クラッチアウタ15の端壁15aが摺動自在に嵌合される。また小径ボス11cは、上記端壁15aの透孔16を貫通するように配置され、その外端には、端壁15aの外側面に対向するストッパ板17が固着される。そして上記端壁15aをストッパ板17に当接させるように付勢するクラッチばね18が小径ボス11cに装着される。
【0011】
クラッチアウタ15の内周面には複数枚の駆動摩擦板19が摺動可能にスプライン嵌合され、これら駆動摩擦板19と交互に重なるように配置される複数枚の被動摩擦板20が前記クラッチインナ14の外周面に摺動可能にスプライン嵌合される。またクラッチアウタ15には、最内側位置の被動摩擦板20に対面する加圧板21が摺動可能にスプライン嵌合され、さらに最外側位置の駆動摩擦板19に対向する受圧環22が係止される。
【0012】
駆動板11には、その円周上等間隔置きに配置される複数の遠心ウエイト23(図にはそのうちの一個を示す)がリング状の枢軸24を介して取付けられる。この遠心ウエイト23は、遠心力の作用により半径方向外方へ揺動するとき加圧板21を押圧する作動腕23aを有する。さらに駆動板11には、遠心ウエイト23の半径方向外方への最大揺動量を規制するストッパリング25が固設される。
【0013】
加圧板21及び最外側の駆動摩擦板19の外周には、クラッチアウタ15内周面の軸方向溝26に臨む突片27,28が形成されており、一方の突片27には他方の突片28を摺動可能に貫通する支持ピン29が固着され、この支持ピン29に加圧板21及び最外側の駆動摩擦板19間を離反方向へ付勢するフリースプリング30が装着される。
【0014】
図2ないし図4において、出力リング13及びクラッチインナ14間には、出力リング13からクラッチインナ14に逆負荷が作用したときクラッチインナ14にスラストを与えるカム機構31が設けられる。この機構31は、出力リング13の外周面に突設された複数の突起32と、これら突起32をそれぞれ受容すべくクラッチインナ14の内周面に設けられた複数の軸方向溝33とを有する。軸方向溝33は、一端をクラッチインナ14の内側面に開放し、他端を閉じており、その閉塞端面と、これに対向する突起32の端面とは、互いに摺接する斜面34,35に形成されており、逆負荷により出力リング13がクラッチインナ14に対してクラッチ回転方向Rへ回転したとき、斜面34,35の相互摺動によりクラッチインナ14が外側方へ押動するスラストF(図3(B)参照)が発生するようになっている。
【0015】
このようなスラスト発生時には、最内側の被動摩擦板20を受圧環22に向って押圧し得る加圧フランジ36(図1)がクラッチインナ14の内端に一体に形成される。
【0016】
上記出力リング13及びクラッチインナ14の相対回転は、軸方向溝33の相対向する第1及び第2内側面33a,33bに突起32が当接することにより一定角度θに規制される。
【0017】
以上において、出力リング13、クラッチインナ14、カム機構31及び加圧フランジ36は逆負荷伝達機構37を構成する。
【0018】
また出力リング13及びクラッチインナ14間には、出力リング13の高速回転時、出力リング13及びクラッチインナ14の相対回転を拘束もしくは制限する逆負荷伝達制御機構38が設けられる。この機構38は、出力リング13に前記突起32を避けて放射状に設けられた複数の案内孔39と、これら案内孔39にそれぞれ摺動自在に嵌合するストッパピン40と、クラッチインナ14の内周面に前記軸方向溝33を避けて設けられた複数の凹溝41と、各凹溝41に装着されてストッパピン40を案内孔39内に没入させるように常時付勢する板ばねからなる戻しばね42とからなっている。
【0019】
ストッパピン40の重量及び戻しばね42のセット荷重は、出力リング13の回転数が所定値以上になると、ストッパピン40が遠心力の作用により外端を凹溝41へ突出するように設定される。その際、ストッパピン40の突出限界は、戻しばね42の可動端の屈曲部42aが凹溝41の底壁に当接することにより規制される。またストッパピン40の内端には、案内孔39から突出する付加ウエイト43が連設され、この付加ウエイト43を受容するように環状溝44が前記大径ボス11aの外周面に設けられる。
【0020】
凹溝41の、クラッチ回転方向R側の側面41aは、案内孔39から突出したストッパピン40と当接するストッパ面となっている。
【0021】
而して、これらピン40及びストッパ面41aの当接により出力リング13及びクラッチインナ14の相対回転が拘束、もしくは制限され、突起32は軸方向溝33の第1内側面33aとの当接位置又はその近傍に保持される。
【0022】
再び図1において、クラッチアウタ15の端壁15aにはスラスト板45がビス46により固着されており、その中心部にレリーズ板47がレリーズベアリング48を介して支承され、このレリーズ板47にレリーズカム機構49が連結される。レリーズカム機構49は、クランク軸6の軸線上でサイドカバー2に取付けられた調節ボルト50と、この調節ボルト50にボス51aを螺合させた固定カム板51と、そのボス51aに回転自在に支承された可動カム板52と、両カム板51,52の相対向する凹部53,54間に挿入されたスラストボール55とから構成される。固定カム板51は、それに固着された回り止めピン56をサイドカバー2の止め孔57に嵌合させて回転しないようになっており、可動カム板52は、レリーズ板47に重ねられ、且つピン58を介して回転方向に連結される。この可動カム板52の一側には切欠59が設けられ、そこにクラッチレバー60の先端が係合される。このクラッチレバー60は、サイドカバー2に回転自在に支持されたペダル軸61に固着され、ペダル操作されるようになっている。
【0023】
以上において、レリーズ板47、レリーズベアリング48、レリーズカム機構49、固定カム板51、可動カム板52、スラストボール55、クラッチレバー60及びペダル軸61は、クラッチ4を任意にオフ状態にし得るクラッチオフ機構63を構成する。
【0024】
前記調節ボルト50は、サイドカバー2を回転可能に貫通しているが、該ボルト50中間部のフランジ50aと、該ボルト50の外端に螺着されるナット62とによりサイドカバー2に固着される。而して、ナット62を緩めて調節ボルト50を適当に回転することにより、固定カム板51の軸方向位置、延いては受圧環22の軸方向位置が調節され、これによってクラッチ4の接続開始時期を調節することができる。
【0025】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0026】
エンジンの作動停止状態では、クラッチアウタ15はクラッチばね18の弾発力によりストッパ板17に当接した右動位置(図1の状態)に保持され、これに伴いクラッチインナ14も右動位置を占める。一方、図3(A)に示すように、軸方向溝33の斜面34及び突起32の斜面35の相互作用により突起32は軸方向溝33の第1内側面33aとの当接位置又はその近傍に保持される。このとき、駆動及び被動摩擦板19,20間に微小間隙が存在し、クラッチ4はオフ状態となっている。
【0027】
そこで、エンジンを始動すべく、図示しないキックスタータにより駆動ギヤ7を介して出力リング13を図2の矢印R方向へ駆動すれば、図3(B)に示すように出力リング13及びクラッチインナ14間に角度θの範囲で相対回転が生じ、これに伴う突起32の斜面34及び軸方向溝33の底面35の相互作用によりクラッチインナ14に図1で左方向の押圧力が与えられ、加圧フランジ36が最内側の被動摩擦板19を受圧環22に向って押圧し、駆動及び被動摩擦板19,20相互を圧接させつゝクラッチアウタ15を左動させ、クラッチばね18を所定量圧縮する。その結果、クラッチばね18の圧縮荷重に対応する圧接力が駆動及び被動摩擦板19,20に与えられ、クラッチ4はオン状態となる。したがって駆動ギヤ7の始動トルクはクラッチ4を介してクランク軸6に伝達し、これをクランキングし、エンジンを始動することができる。
【0028】
始動後、エンジンがアイドリング状態になると、今度はクラッチインナ14が出力リング13に対してクラッチ回転方向Rへ回転することにより、クラッチ4は再び当初のオフ状態に戻る。
【0029】
次に、車両を発進すべくエンジン回転数、即ちクランク軸6の回転数を上昇させれば、遠心ウエイト23が遠心力により半径方向外方へ揺動して作動腕23aにより加圧板21を受圧環22に向って押圧し、駆動及び被動摩擦板19,20相互を圧接させ、その圧接力は遠心ウエイト23の遠心力に比例するものであるから、クラッチ4はエンジン回転数の上昇に応じて半クラッチ状態を経てオン状態となり、クランク軸6の出力トルクを出力リング13、駆動ギヤ7へとスムーズに伝達していく。
【0030】
そして、エンジンが所定の高速回転域に入ると、遠心ウエイト23は、作動腕23aの押圧力によりクラッチアウタ15を図1で左動させ、クラッチばね18を所定量圧縮したとき、ストッパリング25によりそれ以上の半径方向外方への揺動を阻止されるので、駆動及び被動摩擦板19,20相互の圧接力はクラッチばね18の圧縮荷重以上には増大しない。
【0031】
一方、出力リング13及びクラッチインナ14間に設けられた逆負荷伝達制御機構38では、出力リング13の高速回転に伴いストッパピン40がそれの遠心力により戻しばね42の力に抗して半径方向外方へ案内孔39に沿って摺動して外端を凹溝41に突出させ、凹溝41のストッパ面41aに対向させるようになる(図3(C)参照)。したがって、車両の走行中、駆動ギヤ7から出力リング13に逆負荷が加わると、図3(D)に示すように、ストッパピン40とストッパ面41aとの当接により出力リング13及びクラッチインナ14の相対回転が拘束もしくは制限され、加圧フランジ36の駆動及び被動摩擦板19,20に対する圧接力は抑制もしくは最小に制御される。
【0032】
そこで、走行中、変速を行うべく、ペダル軸61によりクラッチレバー60を作動させると同時にエンジンのスロットルをアイドリング開度に絞ったとする。
【0033】
クラッチレバー60の作動によれば、可動カム板52が回動され、スラストボール55が両カム板51,52の凹部53,54の斜面を登りつゝ可動カム板51を図1で左方へ押動するので、その押圧力を受けてレリーズ板47がレリーズベアリング48及びスラスト板45を介してクラッチアウタ15を左動させ、受圧環22を駆動及び被動摩擦板19,20から離間させるので、クラッチ4はオフ状態となるから、エンジンはスロットルの絞りにより直ちに回転数を下げていき、これに応じて遠心ウエイト23は遠心力の減少により不作動状態となる。
【0034】
したがって変速後、クラッチレバー60を当初の不作動位置に戻すことにより、クラッチアウタ15がクラッチばね18の弾発力をもってストッパ板17との当接位置に向って復動しても、前述のように駆動ギヤ7側からの逆負荷による加圧フランジ36の駆動及び被動摩擦板19,20に対する圧接力が抑制もしくは最小に制御されるため、クラッチ4はオフ状態もしくは半クラッチ状態に保持され、逆負荷によるショックが伝動系に生じることはない。
【0035】
次いで、車両を加速すべくエンジンのスロットルを再び開けば、クランク軸6の回転数の上昇により遠心ウエイト23の作動を得て、クラッチ4は再びオン状態になり、動力伝達が再開される。
【0036】
このように、クラッチ4は、変速後でも、発進時と同様にエンジン回転数を上げることにより半クラッチ状態を経てオン状態となるので、動力伝達の再開をショックなくスムーズに行うことができる。
【0037】
本発明は、上記実施例に限定するものではなく、その要旨を逸脱しない限り種々の設計変更が可能である。例えば遠心ウエイト23を用いた機械式遠心機構に代えて、エンジン回転数の上昇に応じて増加する油圧を発生させ、それにより両摩擦板19,20に圧接力を付与するようにした油圧式遠心機構を用いることもできる。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、逆負荷伝達機構に、出力部材の回転数が所定値以上になることに応動して該機構の作動を制御する逆負荷伝達制御機構を連結したので、車両の走行中では、逆負荷伝達制御機構により逆負荷伝達機構の作動を拘束もしくは制限することができる。したがって変速後、クラッチオフ機構を不作動状態に戻しても、遠心機構の作動が再開されない限り、遠心クラッチをオフ状態もしくは半クラッチ状態に保持して、伝達系に逆負荷によるショックが発生することを防ぐことができ、車両の乗心地の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る遠心クラッチの縦断面図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】図2の3−3線断面図で、(A)は逆負荷伝達機構の不作動状態を示し、(B)は同機構の作動状態を示し、(C)は逆負荷伝達制御機構の作動状態を示し、(D)は同機構により逆負荷伝達機構の作動が制御されている状態を示す。
【図4】上記遠心クラッチの要部の分解斜視図
【符号の説明】
6 クランク軸(入力部材)
13 出力リング(出力部材)
14 クラッチインナ
15 クラッチアウタ
19 駆動摩擦板
20 被動摩擦板
23 遠心ウエイト(遠心機構)
37 逆負荷伝達機構
38 逆負荷伝達制御機構
63 クラッチオフ機構

Claims (1)

  1. 入力部材(6)に連なるクラッチアウタ(15)と、出力部材(13)に連なり、クラッチアウタ(15)に囲繞されるクラッチインナ(14)と、クラッチアウタ(15)の内周にスプライン係合する駆動摩擦板(19)と、クラッチインナ(14)の外周にスプライン係合して駆動摩擦板(19)に重ねられる被動摩擦板(20)と、入力部材(6)の回転数の上昇に応じて駆動及び被動摩擦板(19,20)相互を圧接させる遠心機構(23)と、出力部材(13)に連結され、出力部材(13)からの逆負荷に応動して駆動及び被動摩擦板(19,20)相互を圧接させる逆負荷伝達機構(37)と、遠心機構(23)及び逆負荷伝達機構(37)の駆動及び被動摩擦板(19,20)に対する圧接力を任意に回避し得るクラッチオフ機構(63)とを備えた遠心クラッチにおいて、
    逆負荷伝達機構(37)に、出力部材(13)の回転数が所定値以上になることに応動して該機構(37)の作動を制御する逆負荷伝達制御機構(38)を連結したことを特徴とする遠心クラッチ。
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