JP7446516B2 - 遠心クラッチ、及びストラドルドビークル - Google Patents
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Description
しかし、特許文献1の遠心クラッチは、摩耗の程度に応じて遠心クラッチ内部のねじを調整することが求められる。
例えば、ウェイトは、回転速度の上昇に伴い遠心力を受け外方へ移動することで、各摩擦板を係合させる。ウェイトが接続位置へ移動すると、摩擦板の係合が完成する。
本発明者は、摩擦板が係合する接続位置にあるウェイトが、更に外方へ移動可能な余裕を有するような構成を考えた。この構成の場合、接続位置のウェイトは、更に大きな遠心力を受けることによって接続位置よりも外方へ移動する。各摩擦板に摩耗が生じても、ウェイトが接続位置よりも外方へ移動する途中で、各摩擦板の係合が完成する。これによって、摩耗が生じても、ねじ等の操作でなく遠心力によって各摩擦板の係合が完成する。
なお、遠心クラッチが例えば電動アクチュエータの操作力によって動作する場合、上記の変位量は、電動アクチュエータが所定の接続位置まで動作した場合における摩擦板の係合状態の完成度の変化として表れる。
これによって遠心クラッチは、ねじ等の調整操作やアクチュエータによる調整機構の追加無しに、摩耗によるクラッチレバーの接続位置の変化を自ら抑えることができる。
前記遠心クラッチは、
前記動力源の回転駆動力を受ける第1回転部材(111)と一体に回転する第1摩擦板(113)と、
第2回転部材と一体に回転する第2摩擦板(114)と、
前記第1摩擦板及び前記第2摩擦板のうち一方の摩擦板を他方の摩擦板に回転軸線と平行な押付方向に押し付け前記第1摩擦板および前記第2摩擦板を相互に係合させる第1プレッシャプレート(115)と、
前記第1プレッシャプレートと前記第1摩擦板及び前記第2摩擦板との間に介在せずに、前記第1プレッシャプレートを前記押付方向とは逆のリリース方向へ付勢するように配置された第1弾性体(119)と、
前記回転軸線上において前記第1プレッシャプレートと互いに相対移動可能に配置された第2プレッシャプレート(117)と、
前記第2プレッシャプレートを前記押付方向へ付勢する第2弾性体(116)と、
前記第2プレッシャプレートの前記押付方向への移動の範囲を規制する移動範囲規制部(118)と、
前記遠心クラッチをリリースするための操作力を受けることにより、前記リリース方向へ前記第2プレッシャプレートを押すことにより、前記第2プレッシャプレートを前記第2弾性体の付勢力に抗して前記リリース方向へ変位させる操作力伝達部材(121)と、
前記回転軸線の方向における前記第2プレッシャプレートと前記第1プレッシャプレートの間に配置され、前記第1回転部材の回転の遠心力を受け前記回転軸線の径方向の外方に移動する第1のウェイト(123)と、
前記第1のウェイトの前記外方への移動に応じて、前記第1プレッシャプレートを前記押付方向に押し付けるように構成された第1プレッシャプレート駆動部(122)と
を備えた遠心クラッチ(10,30)であって、
次のことを特徴とする:
前記第1のウェイト(123)は、前記遠心力を受け前記第1弾性体(119)の付勢力に抗して前記第1プレッシャプレートを前記押付方向に移動させながら前記外方へ移動することで、更に前記外方へ移動可能な余裕を有しつつ前記第1摩擦板および前記第2摩擦板の係合を完了する接続位置へ移動し、更に大きな前記遠心力を受けることによって前記接続位置よりも前記外方へ移動することで前記第2弾性体(116)の付勢力に抗して前記第2プレッシャプレートを前記リリース方向へ移動させ、
前記遠心クラッチは、前記第1のウェイト(123)が前記接続位置よりも前記外方に移動することによって前記第2プレッシャプレート(117)を前記リリース方向へ移動させるときに、前記操作力伝達部材と前記第2プレッシャプレートの間に生じる隙間を小さく又は無くすように前記操作力伝達部材を前記第2プレッシャプレートに対し相対的にアクチュエータによらずに移動させる相対移動機構(130,330)を更に備える、
遠心クラッチ。
遠心クラッチは、例えば、動力源の出力軸以外の駆動力伝達部品を介して出力軸と接続されてもよい。遠心クラッチは、例えば、トランスミッション以外の駆動力伝達部品を介してトランスミッションと接続されてもよい。
トランスミッションは、例えば、運転者の操作力を受け、変速比を切替えるマニュアルトランスミッションである。トランスミッションは、運転者の足で操作される。トランスミッションは、運転者の足から受ける操作力で変速比を切替える。
しかし、移動範囲規制部によって、第2プレッシャプレートの押付方向への移動の範囲が規制される。また、第1弾性体が、第1プレッシャプレートをリリース方向へ付勢する。このため、第1プレッシャプレートは、第1摩擦板および第2摩擦板を相互に係合する位置まで移動していない。つまり、第1摩擦板および第2摩擦板は係合していない。
第1回転部材が動力源の回転駆動力を受け回転すると、第1のウェイトが第1回転部材と共に回転する。第1のウェイトは、回転の遠心力を受け第1プレッシャプレート駆動部に沿って外方に移動する。外方は、回転軸線から遠ざかる方向である。
第2プレッシャプレートと第1プレッシャプレートの互いに対面する面の一方又は両方には第1プレッシャプレート駆動部が設けられている。第1プレッシャプレート駆動部は、例えば斜面部である。第1プレッシャプレート駆動部は、径方向における外方ほど第2プレッシャプレートおよび第1プレッシャプレートの間隔が小さくなるように形成されている。
第1のウェイトは、第1プレッシャプレート駆動部に沿って外方へ移動することで、第1弾性体の付勢力に抗して、第1プレッシャプレートを押付方向に移動させる。第1プレッシャプレートは、第1摩擦板及び第2摩擦板のうちの一方の摩擦板を他方の摩擦板に押付方向に押し付ける。これによって、第1摩擦板および第2摩擦板が相互に係合する。
第1のウェイトは、遠心力を受け、まず、接続位置へ移動する。接続位置は、第1摩擦板および第2摩擦板の係合を完了する位置である。第1のウェイトが接続位置まで移動すると、遠心クラッチが接続状態となる。接続位置は、また、第1のウェイトが更に外方へ移動可能な余裕を有する位置である。
第1のウェイトは、更に大きな遠心力を受けることによって、次に、接続位置よりも外方へ移動する。これによって、第1のウェイトは、第2弾性体の付勢力に抗して第2プレッシャプレートをリリース方向へ移動させる。
しかし、(1)の構成によれば、第1のウェイトは、接続位置では、更に外方へ移動可能な余裕を有する。このため、第1摩擦板および第2摩擦板が摩耗した場合、第1のウェイトは、初期の接続位置よりも外方へ移動する。これによって、第1摩擦板および第2摩擦板が係合を完了できる。従って、摩耗が生じても、ねじ等の調整操作無しに、遠心力によって接続状態が実現する。
このようにして、遠心クラッチにおいて、遠心力に起因した接続状態と、操作力によるリリース状態が実現する。
これによって、遠心クラッチは、ねじ等の調整操作やアクチュエータによる調整機構の追加無しに、摩耗に起因する操作位置の変化を自ら抑えることができる。
前記相対移動機構(130)は、前記第2プレッシャプレート(117)と前記操作力伝達部材(121)の間に介在し、第2のウェイト(131)と、第1カム部(132)とを有し、
前記第2のウェイト(131)は、前記回転軸線(Ax)周りに回転し、回転の遠心力によって前記外方へ移動し、
前記第1カム部(132)は、前記第2のウェイト(131)と接触することで、前記第2のウェイト(131)の前記外方への移動によって、前記操作力伝達部材(121)から前記第2プレッシャプレート(117)までの間の前記相対移動機構(130)の前記回転軸線(Ax)の方向での長さを延長する、
遠心クラッチ。
従って、遠心力を受けた第1のウェイトが初期の接続位置よりも外方へ移動することにより生じた第2プレッシャプレートの回転軸線の方向の変位の影響が、遠心力を受ける第2のウェイトとカムとによって吸収されやすい。そのため、走行開始時と走行中とにおける接続位置の変化を、2つのウェイトに共通に作用する遠心力を利用して抑えることができる。従って、例えば走行開始時と走行中とにおける接続位置の変化が、抑えられやすい。
前記相対移動機構(130)は、前記第2プレッシャプレート(117)及び第2のウェイトと共に回転しつつ、前記第2プレッシャプレート(117)に対し前記回転軸線(Ax)の方向に相対的に変位可能な変位部材(134)を有し、
前記第1カム部(132)は、前記第2プレッシャプレート(117)及び前記変位部材(134)の少なくとも何れかに設けられる、
遠心クラッチ。
前記第2のウェイト(131)が受ける遠心力と前記第2のウェイト(131)の移動を抑える第3弾性体(133)の付勢力が釣り合う前記第2のウェイト(131)の回転速度は、前記第2プレッシャプレート(117)が受ける遠心力と前記第2弾性体(116)の付勢力が釣り合う回転速度よりも小さい、
遠心クラッチ。
前記相対移動機構(330)は、
前記第2プレッシャプレート(117)と前記操作力伝達部材(121)の間に介在し、前記第2プレッシャプレート(117)が前記第1プレッシャプレート(115)に押され前記リリース方向(R)へ移動する場合の伸長が自在であり、前記操作力伝達部材(121)が前記操作力を受け前記リリース方向(R)に移動する場合の収縮が規制される一方向スライド機構(340)を有する、
遠心クラッチ。
従って、広い動作範囲において、走行開始時と走行中とにおける接続位置の変化が、抑えられやすい。
前記第2のウェイト(131)は、前記第2プレッシャプレート(117)からトルクの伝達を受けて回転を加速及び減速し、
前記第2プレッシャプレート(117)は、前記第2のウェイト(131)に減速のトルクを伝達するとともに前記第2のウェイト(131)を前記径方向の内方に移動させるように形成された第2カム部(141)を有する、
遠心クラッチ。
前記鞍乗型車両は、
動力源と、
トランスミッションと、
前記動力源の回転駆動力を前記トランスミッションに伝達する(1)から(6)のいずれか1つの遠心クラッチと、を備える
鞍乗型車両。
鞍乗型車両とは、ライダーがサドルに跨って着座する形式の車両をいう。鞍乗型車両は、ライダーの体重移動によって走行乃至旋回を行うように構成されている。鞍乗型車両は、ライダーにより把持されるハンドルバーを備える。鞍乗型車両は、ライダーが、走行乃至旋回時に、両手でハンドルバーを把持しながら体重移動による姿勢制御を行うように構成されている。鞍乗型車両は、駆動輪を備えている。鞍乗型車両としては、特に限定されず、例えば、モータサイクル(自動二輪車や自動三輪車等)、ATV(All-Terrain Vehicle)が挙げられる。鞍乗型車両は、例えば、旋回時に左右における旋回中心の方向へリーンするように構成されたリーン車両である。
クラッチレバーの操作力を操作力伝達部材に伝達する手段は、回転カム部に限定されず、例えば、回転を直線運動に変えるスクリュー、又は、油圧で動作するピストンでもよい。また、操作力伝達部材は、第2プレッシャプレートをリリース方向へ押すプッシュロッドに限定されない。操作力伝達部材は、例えば、第2プレッシャプレートを引っ掛けてリリース方向へ引くプルロッドでもよい。
図1は、本発明の第一実施形態に係る遠心クラッチを概略的に示す断面図である。図1には、遠心クラッチの回転軸線Axを含む断面が示されている。図1には、エンジンEGの一部、トランスミッションMTの一部、及びクラッチレバーLVも示されている。図1では、各部の動作を分かりやすくするため、共に一体となって動く複数の部材の境界線の一部は省略され、共通のハッチングが付されている。
遠心クラッチ10は、エンジンEGの回転駆動力の一部を伝達する、いわゆる半クラッチ状態も有する。但し、本明細書では、分かりやすさのため、特に明示しない限り、摩擦板の係合が完了した状態を「接続状態」として説明する。
遠心クラッチ10は、第1回転部材111と、第2回転部材112と、複数の第1摩擦板113と、複数の第2摩擦板114と、第1プレッシャプレート115と、第2弾性体116と、第2プレッシャプレート117とを備える。遠心クラッチ10は、また、移動範囲規制部118と、第1弾性体119と、操作力伝達部材121と、第1プレッシャプレート駆動部122と、第1のウェイト123と、相対移動機構130とを備える。
第1摩擦板113及び第2摩擦板114のそれぞれは、環状のプレートである。第1摩擦板113及び第2摩擦板114は、交互に並んで配置されている。
第1プレッシャプレート115は、第1摩擦板113及び第2摩擦板114を押付方向Pに押し付ける。これによって、第1摩擦板113及び第2摩擦板114が相互に押付け合うように接触する。第1摩擦板113と第2摩擦板114の摩擦によって、第1摩擦板113の回転駆動力が第2摩擦板114に伝達される。即ち、第1摩擦板113及び第2摩擦板114が相互に係合する。
第2弾性体116と第1プレッシャプレート115の間には第2プレッシャプレート117及び第1のウェイト123が介在している。
第2プレッシャプレート117は、第2弾性体116に付勢される。第2プレッシャプレート117は、第2弾性体116からの押付方向Pの付勢力を第1プレッシャプレート115へ伝達する。
第1弾性体119は、クランク軸CLの回転速度がアイドリング速度といった比較的低い速度範囲にある場合に、遠心クラッチ10をリリース状態にするように構成される。第1弾性体119は、例えば、コイルバネで構成される。
図1は、エンジンEGの停止状態またはアイドリング状態を示している。エンジンEGが停止状態の場合、第1のウェイト123は回転していない。第1のウェイト123には遠心力が生じない。また、エンジンEGがアイドリング状態の場合、第1のウェイト123はアイドリング状態に応じた回転速度で回転する。この場合、第1のウェイト123には遠心力が生じる。しかし、第1弾性体119の力に抗して第1プレッシャプレート115を押付方向Pに移動させる程度の遠心力は生じない。このため、エンジンEGの停止状態またはアイドリング状態において、第1のウェイト123は、図1に示すように、初期位置L1に配置されている。
相対移動機構130は、操作力伝達部材121をアクチュエータによらずに移動させる機構である。
相対移動機構130は、第1のウェイト123が第2プレッシャプレート117をリリース方向Rへ移動させるときに、操作力伝達部材121を第2プレッシャプレート117に対し相対的に移動させるように構成されている。より詳細には、相対移動機構130は、操作力伝達部材121と第2プレッシャプレート117の間に生じる隙間を小さく又は無くすように操作力伝達部材121を第2プレッシャプレート117に対し相対的に移動させる。図1に示す例において、第1のウェイト123が第2プレッシャプレート117をリリース方向Rへ移動させるときに、相対移動機構130は、操作力伝達部材121を第2プレッシャプレート117に対し相対的に押付方向Pへ移動させる。
第2のウェイト131は、第2プレッシャプレート117から回転駆動力を受け、回転軸線Ax周りに、第1回転部材111及び第2プレッシャプレート117と一体に回転する。第2のウェイト131は、第2プレッシャプレート117に対し、径方向へ移動可能に設けられている。第2のウェイト131は、回転の遠心力によって外方へ移動するように構成されている。第1カム部132は、第2のウェイト131と接触することで、第2のウェイト131の外方への移動によって、操作力伝達部材121から第2プレッシャプレート117までの間の相対移動機構130の回転軸線Axの方向での長さを延長する。
図1は、エンジンEGが停止状態、又はアイドリング動作状態における遠心クラッチ10の状態を示している。即ち、図1は、車両の停止状態における遠心クラッチ10の状態を示している。図1は、遠心クラッチ10に外部からの力が作用しない場合を示している。
第2弾性体116は、第2プレッシャプレート117を押付方向Pへ付勢する。第2プレッシャプレート117は、第1のウェイト123を押付方向Pへ押す。第1のウェイト123は、第1プレッシャプレート115を押付方向Pへ押す。
第2プレッシャプレート117が押付方向Pへ移動できる範囲は、移動範囲規制部118によって規制される。また、第1のウェイト123に、第1弾性体119及び第2弾性体116の付勢力に抗して外方へ移動する程度の遠心力は、作用していない。この場合、第1のウェイト123は、初期位置L1にある。
また、第1弾性体119が、第1プレッシャプレート115をリリース方向Rへ付勢する。このため、第1プレッシャプレート115は、第1摩擦板113および第2摩擦板114を相互に係合する位置まで移動していない。つまり、遠心クラッチ10に外部からの力が作用しない場合、第1摩擦板113および第2摩擦板114は相互に係合していない。つまり、遠心クラッチ10は、リリース状態である。
移動範囲規制部118は、第1のウェイト123が初期位置L1にある場合に、第2プレッシャプレート117が第1摩擦板113および第2摩擦板114を相互に係合する位置まで移動しないように規制している。
図2における各部は、図1の各部と同じである。従って、ここでは、主に図1と異なる部分が符号を付して説明され、その他の部分については符号が省略される。
第1のウェイト123は、第1プレッシャプレート駆動部122に沿って外方へ移動することで、第1弾性体119の付勢力に抗して、第1プレッシャプレート115を押付方向Pに移動させる。第1のウェイト123が接続位置L2にある時、第1プレッシャプレート115は、第1摩擦板113、又は第2摩擦板114を押付方向Pに押し付ける。これによって、第1摩擦板113、及び第2摩擦板114が相互に係合する。第1のウェイト123が接続位置L2まで移動することで、遠心クラッチ10が接続状態となる。
接続位置L2は、摩耗していない第1摩擦板113および第2摩擦板114が係合を完了する時の、第1のウェイト123の位置である。接続位置L2にある第1のウェイト123は、更に外方へ移動可能な余裕Mを有する。
第1のウェイト123が接続位置L2よりも外方へ移動する場合、第1プレッシャプレート115は移動できない。このため、第1のウェイト123は、第1プレッシャプレート115を押す反力によって、第2プレッシャプレート117をリリース方向Rへ押す。第1のウェイト123は、第2弾性体116の付勢力に抗して第2プレッシャプレート117をリリース方向Rへ移動させる。第1のウェイト123は、第1プレッシャプレート115を押付方向Pに押し付けつつ、第2プレッシャプレート117をリリース方向Rへ移動させる。従って、遠心クラッチ10の接続状態が維持される。
操作力伝達部材121は、クラッチレバーLVからの操作力によって、第2プレッシャプレート117を第2弾性体116の押付力に抗して変位させる。これによって、第1プレッシャプレート115は、第1のウェイト123及び第2プレッシャプレート117による押付けから開放される。従って、第1摩擦板113と第2摩擦板114の係合が解除される。従って、遠心クラッチ10はリリース状態になる。つまり、クラッチレバーLVの操作によって、遠心クラッチ10はリリース状態になる。
このようにして、遠心クラッチ10において、遠心力に起因した接続状態と、クラッチレバーLVの操作によるリリース状態が実現する。
第2のウェイト131が第1カム部132に沿って外方へ移動すると、相対移動機構130は、操作力伝達部材121を第2プレッシャプレート117に対し相対的に押付方向Pへ移動させる。より詳細には、相対移動機構130の第2のウェイト131が外方へ移動すると、変位部材134が第2のウェイト131により第2プレッシャプレート117に対し相対的に押付方向Pへ押し出される。これにより、相対移動機構130の変位部材134は、操作力伝達部材121を押付方向Pへ押し出す。これによって、操作力伝達部材121から第2プレッシャプレート117までの回転軸線方向Aにおける長さが延長される。
図5に示す状態で、第1のウェイト923は、図3の状態と等しい遠心力を受けることによって、位置L3まで移動する。この場合、第2プレッシャプレート917は、第1のウェイト923に押され、リリース方向Rへ移動する。この結果、第2プレッシャプレート917と操作力伝達部材921との間には、隙間Sが生じる。
第1のウェイト923が接続位置(図2のL2参照)にある場合、隙間Sは無いか、又は隙間Sの大きさは、本発明の実施形態の場合と実質的に等しい。図5の参考例の構成において、隙間Sは、第1のウェイト923が接続位置(図2のL2参照)よりも外方へ移動するほど増大する。
図5の参考例の構成において、第1のウェイト923が接続位置(図2のL2参照)にある場合の隙間Sの大きさと、第1のウェイト923が位置L3まで移動した場合の隙間Sの大きさは異なる。
つまり、第1のウェイト923が接続位置(図2のL2参照)にある場合と、位置L3にある場合とで、クラッチレバーLVの遊びの量が異なる。
クラッチレバーLVの遊びは、接続位置L2のみでなく、クラッチレバーLVを操作する場合に、第2弾性体916の付勢力による反発力が生じる位置でもある。つまり、クラッチレバーLVの操作途中で、第2弾性体916による手応えが生じる位置は、第1のウェイト923が接続位置(図2のL2参照)にある場合と、位置L3にある場合とで、異なる。
このため、クラッチレバーLVの接続位置の、回転速度による変化を抑えることができる。
図6は、本発明の第二実施形態に係る遠心クラッチの第1回転部材の回転速度と、第1のウェイトの変位量との関係を示すグラフである。
グラフの縦軸は、第1のウェイト123の変位量を示す。縦軸には、図1から3に示す第1のウェイト123の位置L1,L2,L3が示されている。
また、グラフには、操作力伝達部材121から第2プレッシャプレート117までの回転軸線方向Aにおける長さも示されている。この長さは、例えば、回転軸線方向Aにおける、操作力伝達部材121と第2プレッシャプレート117の最短距離で代表される。長さは、例えば、回転軸線方向Aにおける最長距離で代表されることも可能である。
速度N1は、第1のウェイト123が受ける遠心力と第1弾性体119の付勢力が釣り合う速度である。
従って、広い速度範囲において、隙間(例えば図5のS)が生じ難い。
図7は、本発明の第三実施形態に係る遠心クラッチを概略的に示す断面図である。
一方向スライド機構340は、第2プレッシャプレート117と操作力伝達部材121の間に介在する。一方向スライド機構340は、第2プレッシャプレート117が第1プレッシャプレート115に押されリリース方向Rへ移動する場合、伸長が自在であるように構成される。また、一方向スライド機構340は、操作力伝達部材121が操作力を受け、リリース方向Rに移動する場合の収縮が規制されるように構成される。
スライドハウジング341は、軸受350を介して第2プレッシャプレート117に回転自在に支持される。スライドハウジング341は第2プレッシャプレート117と共に回転軸線方向Aに移動する。しかし、第2プレッシャプレート117が回転しても、スライドハウジング341は回転しない。
スライドハウジング341は、有底の筒状である。伝達部材延長部345は、スライドハウジング341に収容されている。伝達部材延長部345は、操作力伝達部材121から延長するように延びる部材である。
スライドハウジング341の内側面と操作力伝達部材121との間には、くさび状のラチェット342が設けられている。ラチェット342は、ラチェットばね343に付勢されることで、スライドハウジング341と操作力伝達部材121との間に押し込まれている。スライドハウジング341に対する操作力伝達部材121の移動が阻止されている。
本実施形態におけるその他の構成は、図1に示す第一実施形態と同一である。従って、共通の要素には第一実施形態と同一の符号が付され、第一実施形態と異なる点を主に説明される。
一方向スライド機構340が押付方向Pへ移動すると、ラチェット342が解除部112aに当たる。ラチェット342が解除部112aに当たることで、ラチェット342による規制が解除される。
図9は、本発明の第四実施形態に係る遠心クラッチを概略的に示す断面図である。
本実施形態におけるその他の構成は、図1に示す第一実施形態と同一である。従って、共通の要素には第一実施形態と同一の符号が付され、第一実施形態と異なる点を主に説明される。
図10(a)~(d)は図9の遠心クラッチのI-I’における断面図である。図10(a)~(d)は、本実施形態における遠心クラッチの動作を説明する図である。
図10(a)は、エンジンEGが停止状態における状態を示している。本実施形態の遠心クラッチ10の第2のウェイト131は、2つのウェイト131a及び131bから構成される。2つのウェイト131a及び131bは、第3弾性体133により結合され、第3弾性体133の付勢力C2により内方向に付勢されている。回転が停止している状態では、第2のウェイト131(131a、131b)には、遠心力は生じていない。この時、第1のウェイト123は、図1に示すように初期位置L1にある。第2プレッシャプレート117には、第2カム部141及び壁142が形成される。
クランク軸CLの回転速度が増加すると、図10(b)に示すように、第2のウェイト131が受ける遠心力C1が大きくなる。この時、第2のウェイト131を構成する2つのウェイト131a及び131bは、第3弾性体133の付勢力C2に抗してそれぞれ壁142に沿って外方へ移動する。クランク軸CLの回転速度が更に上昇し、例えば、第1のウェイト123が図1に示したように初期位置L1から図3に示したように位置L3まで移動すると、第2のウェイト131が第1カム部132に沿って更に外方へ移動する。そうすると、第2のウェイト131は、変位部材134を介して操作力伝達部材121を第2プレッシャプレート117に対し相対的に押付方向Pへ押し出す(図9参照)。この時、第2のウェイト131と、第1カム部132及び変位部材134との間に摩擦力が生じる。
本実施形態における第2のウェイト131は、図10(c)に示すように、第2カム部141から反力F3を受ける。これにより、2つのウェイト131a及び131bはそれぞれ第2カム部141に沿って内方に移動する。そうすると、図10(d)に示すように、2つのウェイト131a及び131bは、第1カム部132及び変位部材134との間に生じた摩擦力から解放され、第3弾性体133の付勢力により内方へ移動する。
図11は、上述した実施形態の遠心クラッチの実施例を示す図である。図11(a)は、回転軸線方向の断面図であり、図11(b)は、図11(a)における相対移動機構130を押付方向Pに見た図である。本実施例では、主に相対移動機構130の動作が説明される。図11の遠心クラッチの各要素には、第一実施形態から第4実施形態と共通の符号が付される。
本実施例における第1カム部132は、変位部材134に設けられている。より詳細には、変位部材134のワッシャ部134bの周縁の一部が肉厚に形成されている。第1カム部132は、ワッシャ部134bの肉厚部分の斜面で構成されている。
また、第2カム部141は、第2プレッシャプレート117に設けられている。より詳細には、第2プレッシャプレート117に、回転軸線方向Aに貫通する穴143が設けられている。穴143に、第2カム部141及び壁142が設けられている。
第2のウェイト131は、突出部131cを有する。突出部131cは、第2プレッシャプレート117の穴143に受容されている。突出部131cは、第2カム部141の作用を受けるカムフォロワとして機能する。
図11(b)において、外方に移動した第2のウェイト131(131a,131b)の位置X1が細線で示されている。この状態における突出部131cの位置X2も細線で示される。
この時、第2のウェイト131の突出部131cは、第2カム部141に接触して、第2カム部141に沿って内方に移動する。また、第2のウェイト131は、第3弾性体133の付勢力により内方に移動する。第2のウェイト131が第2カム部141の作用を受けることで、内方への移動が促進される。
図11(b)において、内方に移動した第2のウェイト131(131a)の位置X3が二点鎖線で示され、突出部131cの位置X4も二点鎖線で示される。
図12は、実施形態の遠心クラッチの適用例である鞍乗型車両を示す側面図である。
図12に示す鞍乗型車両1は、本発明の一実施形態でもある。
鞍乗型車両1は、エンジンEGと、トランスミッションMTと、遠心クラッチ(10,30)とを備える。
遠心クラッチ(10,30)は、エンジンEGの回転駆動力をトランスミッションMTに伝達する。トランスミッションMTは、鞍乗型車両1の運転者の足に依って操作される。
トランスミッションMTは、回転駆動力を駆動輪5に伝達する。鞍乗型車両1は、駆動輪5の駆動により、走行する。
5 駆動輪
10,30 遠心クラッチ
111 第1回転部材
112 第2回転部材
113 第1摩擦板
114 第2摩擦板
115 第1プレッシャプレート
117 第2プレッシャプレート
118 移動範囲規制部
121 操作力伝達部材
122 第1プレッシャプレート駆動部
123 第1のウェイト
130,330 相対移動機構
131 第2のウェイト
132 第1カム部
133 第3弾性体
134 変位部材
141 第2カム部
340 一方向スライド機構
Claims (7)
- 動力源の回転駆動力をトランスミッションに伝達する操作可能な遠心クラッチであって、
前記遠心クラッチは、
前記動力源の回転駆動力を受ける第1回転部材と一体に回転する第1摩擦板と、
第2回転部材と一体に回転する第2摩擦板と、
前記第1摩擦板及び前記第2摩擦板のうち一方の摩擦板を他方の摩擦板に回転軸線と平行な押付方向に押し付け前記第1摩擦板および前記第2摩擦板を相互に係合させる第1プレッシャプレートと、
前記第1プレッシャプレートと前記第1摩擦板及び前記第2摩擦板との間に介在せずに、前記第1プレッシャプレートを前記押付方向とは逆のリリース方向へ付勢するように配置された第1弾性体と、
前記回転軸線上において前記第1プレッシャプレートと互いに相対移動可能に配置された第2プレッシャプレートと、
前記第2プレッシャプレートを前記押付方向へ付勢する第2弾性体と、
前記第2プレッシャプレートの前記押付方向への移動の範囲を規制する移動範囲規制部と、
前記遠心クラッチをリリースするための操作力を受けることにより、前記リリース方向へ前記第2プレッシャプレートを押すことにより、前記第2プレッシャプレートを前記第2弾性体の付勢力に抗して前記リリース方向へ変位させる操作力伝達部材と、
前記回転軸線の方向における前記第2プレッシャプレートと前記第1プレッシャプレートの間に配置され、前記第1回転部材の回転の遠心力を受け前記回転軸線の径方向の外方に移動する第1のウェイトと、
前記第1のウェイトの前記外方への移動に応じて、前記第1プレッシャプレートを前記押付方向に押し付けるように構成された第1プレッシャプレート駆動部と
を備えた遠心クラッチであって、
次のことを特徴とする:
前記第1のウェイトは、前記遠心力を受け前記第1弾性体の付勢力に抗して前記第1プレッシャプレートを前記押付方向に移動させながら前記外方へ移動することで、更に前記外方へ移動可能な余裕を有しつつ前記第1摩擦板および前記第2摩擦板の係合を完了する接続位置へ移動し、更に大きな前記遠心力を受けることによって前記接続位置よりも前記外方へ移動することで前記第2弾性体の付勢力に抗して前記第2プレッシャプレートを前記リリース方向へ移動させ、
前記遠心クラッチは、前記第1のウェイトが前記接続位置よりも前記外方に移動することによって前記第2プレッシャプレートを前記リリース方向へ移動させるときに、前記操作力伝達部材と前記第2プレッシャプレートの間に生じる隙間を小さく又は無くすように前記操作力伝達部材を前記第2プレッシャプレートに対し相対的にアクチュエータによらずに移動させる相対移動機構を更に備える、
遠心クラッチ。 - 請求項1に記載の遠心クラッチであって、
前記相対移動機構は、前記第2プレッシャプレートと前記操作力伝達部材の間に介在し、第2のウェイトと、第1カム部とを有し、
前記第2のウェイトは、前記回転軸線周りに回転し、回転の遠心力によって前記外方へ移動し、
前記第1カム部は、前記第2のウェイトと接触することで、前記第2のウェイトの前記外方への移動によって、前記操作力伝達部材から前記第2プレッシャプレートまでの間の前記相対移動機構の前記回転軸線の方向での長さを延長する、
遠心クラッチ。 - 請求項2に記載の遠心クラッチであって、
前記相対移動機構は、前記第2プレッシャプレート及び第2のウェイトと共に回転しつつ、前記第2プレッシャプレートに対し前記回転軸線の方向に相対的に変位可能な変位部材を有し、
前記第1カム部は、前記第2プレッシャプレート及び前記変位部材の少なくとも何れかに設けられる、
遠心クラッチ。 - 請求項2に記載の遠心クラッチであって、
前記第2のウェイトが受ける遠心力と前記第2のウェイトの移動を抑える第3弾性体の付勢力が釣り合う前記第2のウェイトの回転速度は、前記第2プレッシャプレートが受ける遠心力と前記第2弾性体の付勢力が釣り合う回転速度よりも小さい、
遠心クラッチ。 - 請求項1に記載の遠心クラッチであって、
前記相対移動機構は、
前記第2プレッシャプレートと前記操作力伝達部材の間に介在し、前記第2プレッシャプレートが前記第1プレッシャプレートに押され前記リリース方向へ移動する場合の伸長が自在であり、前記操作力伝達部材が前記操作力を受け前記リリース方向に移動する場合の収縮が規制される一方向スライド機構を有する、
遠心クラッチ。 - 請求項2に記載の遠心クラッチであって、
前記第2のウェイトは、前記第2プレッシャプレートからトルクの伝達を受けて回転を加速及び減速し、
前記第2プレッシャプレートは、前記第2のウェイトに減速のトルクを伝達するとともに前記第2のウェイトを前記径方向の内方に移動させるように形成された第2カム部を有する、
遠心クラッチ。 - 鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、
動力源と、
トランスミッションと、
前記動力源の回転駆動力を前記トランスミッションに伝達する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の遠心クラッチと、を備える
鞍乗型車両。
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