JP3547079B2 - 法面の保護・緑化工法および法面保護・緑化用法枠 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、法面の崩壊を防止し、さらに植生により自然景観の復元を図ることができる法面の保護・緑化工法および法面保護・緑化用法枠に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、法面を法枠により保護・緑化する方法としては、法面に配設された法枠により区画された各枠内に客土を吹付けた後に植物苗を植栽し、または客土と共に植物種子を吹付け、あるいは法枠により区画された各枠内に、植物種子入り土のう袋、または植物苗を植栽した土のう袋を充填していた。
【0003】
また、養分を吸収するための植物の根系は地表面に沿って土中を発育し、植物を支持するための根系は土中下方に発育することが知られている(図7参照)。
【0004】
なお、図7中12は法面、42は植物、44は養分吸収するための根系、46は植物を支持するための根系、48は土中を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来は前記の通り、植物種子を利用する場合、植物種子が発芽するまでの間、法面が浸食され、また厳しい自然環境の元では、植物種子が発芽しない恐れがあることが問題となっていた。
【0006】
また、例え種子が発芽しても、または植物苗を使用しても、法枠により地表面および土中の地表面近部が区画されているため、養分を吸収するための植物の根系の地表面近部への発育が抑制され、植物が発育しないことが問題となっていた。
【0007】
また、降雨量が多い場合には法枠により区画された各枠内に滞留した雨水が排水されず、この滞留した過剰の雨水により植物に根腐れ現象が生じたり、各枠内の客土(土砂)が流出し、法面が不安定となり、法面を保護(安定)、緑化できないことが問題となっていた。
【0008】
また、法枠により区画された各枠内が仕切板により複数に分割されてないため、客土、土のう袋が各枠内の下部に流動し、各枠内上部の法面が露出し、この法面が露出した部分には植物が繁茂することがなく、各枠内全域を植物により保護(安定)、緑化できないことが問題となっていた。
【0009】
本発明は、このような欠点に鑑み、植物の成育性、雨水の排水性に優れ、法面を確実に保護する(安定させる)と共に、緑化することができる法面の保護・緑化工法および法面保護・緑化用法枠を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、法面に法枠を格子状に施工後、法枠により区画された各枠内に植物を植栽することにより、法面を保護・緑化する工法および法枠において、法面に枠部材を格子状に所定幅で配設させ、枠部材の下方の少なくとも一部に幅方向にわたり、空間形成体を被設させると共に、枠部材の外周に型枠を配設させた後、各型枠および各空間形成体間にコンクリートを打設し、養生硬化させて法枠を構築させると共に、空間形成体の一部または全部を排除することにより、法枠により区画された隣接する各枠内間を、空間形成体により形成された空間部を介して連通させ、各枠内に植生材を充填させ、この植生材内に根系を十分発育させた植物苗を植栽させることにより、法面を保護・緑化することを特徴とするもの、または法枠構築時に、各枠内の両側に位置する法枠側面に仕切板用係止部を形成させ、この仕切板用係止部に仕切板を装着させて各枠内を複数に分割させ、各枠内に充填させた植生材の下方への流動を防止することを特徴とするもの、または枠部材を法枠用金網とし、この法枠用金網を法面に配設させた後、法枠用金網にモルタルまたはコンクリートを吹付け、養生硬化させることにより法枠を構築することを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る法面の保護・緑化工法は、図1〜図5に示すように、以下の工程からなるものである。
【0012】
まず、法面12に枠部材14を多数、所定幅で格子状に配設する。
【0013】
この際、法面12の土質を事前に調査して、枠部材14の打込み幅、深さを定めておくことが必要である。
【0014】
また、法面12が崩壊し易い場合、所定個所の周囲に補助資材として鉄筋、鉄網等を配設させることが望ましい。
【0015】
本例において、枠部材14は鉄筋枠であり、打込み式により法面12に配設させてある。
【0016】
次に、枠部材14の下方の少なくとも一部に幅方向にわたり、空間形成体16を被設させる。
【0017】
本例において、空間形成体16は箱型(抜型)であり、枠部材14により区画された各枠内18の枠部材14の各側面、計4個所にそれぞれ被設させてある。
【0018】
次に、枠部材14の外周に型枠20を配設させる。
【0019】
本例において、枠部材14により区画された各枠内18の左右両側に仕切板係止部22を形成させるため、各枠内18の左右両側に位置させる型枠20には一側面に係止部用突部24が形成されたものを使用する。
【0020】
次に、各型枠20および各空間形成体16間にモルタルまたはコンクリート26を打設し、養生硬化させた後、型枠20を脱型させて格子状の法枠28を構築させる。
【0021】
次に、空間形成体16を排除することにより、法枠28により区画された隣接する各枠内18間を、空間形成体16により形成された空間部30を介して連通させる。
【0022】
次に、各枠内18の型枠20の係止部用突部24により形成された仕切板係止部22に仕切板32を係止させ、各枠内18を複数に分割する。
【0023】
本例において、仕切板用係止部22は、各枠内18の左右両側に上下二段に形成され、この上下二段の仕切板用係止部22にそれぞれ仕切板32を係止させ、各枠内18を三分割させてある。
【0024】
この際、バックホウ(ショベル系掘削機)またはブレーカー(破砕機)等により、各枠内18の法面12の土をほぐしておくことが望ましい。
【0025】
次に、各枠内18に植生材34を充填させ、この植生材34内に植物苗36を植栽させる。
【0026】
本例において、植生材34中の土壌改良材としては、ピートモス、バーミキュライト、ヤシ粉末(ヤシの実の皮から発生する粉末)、鹿沼土等を混合し、また植生材34中の肥料としては、醗酵させた樹皮(バーク堆肥)、緩効性肥料等を使用し、後述の植物苗36の発育促進を促す。
【0027】
また、植物苗36は、根系38を十分に発育させたものであり、法面12の土地の自然条件に合致した草本類、木本類を適宜採択して使用することが望ましい。
【0028】
このように、法面12に構築させた法枠28の下部に空間部30が形成され、法枠28により区画された各枠内18を仕切板32により複数に分割させ、この分割させた各枠内18に充填された植生材34に植物苗36を植栽させるため、植栽させた直後から、植物苗36の養分を吸収するための根系38が空間部30を介して地表面に沿って植生材34および法面の土中に伸長し、各枠内18および隣接する各枠内18間において植物苗36の根系38が互いに交絡し合い、各枠内18に繁茂し、雨水が空間部30を介して各枠内18へ浸透、排水され、仕切板32により各枠内18の植生材34の下方への流動が抑制され、早期に法面12を保護(安定)、緑化することができる。
【0029】
なお、図中40は植生材34表面の水分蒸発、温度上昇、を防止するために被覆される藁等のマルチング材を示す。
【0030】
また、図6に別の例が示してある。
【0031】
本例は、前例の枠部材14である鉄筋枠に代えて、法枠用金網を使用するものであり、法面12に配設させた後、型枠によるコンクリート打設作業に代えて、この法枠用金網にモルタルまたはコンクリート26を吹付け、養生硬化させて法枠28を構築するものであり、他の工程、構成要素は全て前例と同様であるため、説明は省略する。
【0032】
なお、両例において、空間形成体16は箱型(抜型)であるが、箱型の硬質外包体内に植生材を充填させた構成とし、コンクリート打設後、空間形成体16を全部取除くことなく、硬質外包体のみを取り除くことにより、内部の植生材が空間部30に残留した状態となり、空間部30への植生材の充填作業を省くことができ、また空間形成体16である硬質外包体を取り除くことなく、内部に充填させた植生材と共にそのまま放置しておいても、植物苗の植生材中の養分吸収、雨水等の流水により自然に空間部30が形成される。
【0033】
また、法枠28下部の空間部30を形成するための空間形成体16として箱型(抜型)を使用しているが、チューブ、管等の筒体を枠部材14間に装着させ、コンクリート打設後コンクリート内に埋設させ、筒体をそのままを空間部30として利用することも可能であり、その他の空間部を形成させるための構造物であればよい。
【0034】
また、仕切板係止部22は各枠内18に突設させたものであるが、各枠内18の側壁である法枠28内に溝型に凹設させることも可能である。
【0035】
また、法枠28の各枠内18を仕切板32により複数に分割させてあるが、仕切板32を省略しても、本発明の特徴である植物の成育性、雨水の排水性には何ら影響を与えることがない。
【0036】
また、枠部材14として鉄筋枠、法枠用金網を使用しているが、他の素材を使用することは自由である。
【0037】
また、植物苗に代えて、植物種子を使用することは自由である。
【0038】
【発明の効果】
本発明に係る法枠による法面保護・緑化工法および法枠によれば、法枠構築時に法枠下部に空間部を形成し、各枠内に充填された植生材に植物苗を植栽させるため、植栽させた直後から、植物苗の養分を吸収するための根系が空間部を介して植生材および地表面に沿って土中に伸長し、各枠内および隣接する各枠内間において植物苗の根系が互いに交絡し合い、各枠内に繁茂し、雨水が空間部を介して各枠内へ浸透、排水され、早期に法面を保護(安定)、緑化し、自然景観の復元を図ることができる。
【0039】
また、法枠により区画された各枠内を仕切板により複数に分割させ、この分割させた各枠内に植生材を充填させることにより、仕切板により各枠内の植生材の下方への流動が抑制され、各枠内全域に植物が繁茂し、植物の成育性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る法枠の施工完了状態を示す斜視図。
【図2】同、縦断面図。
【図3】同、施工過程を示す平面図。
【図4】同、側面図。
【図5】同、コンクリート打設工程を示す斜視図。
【図6】別の例のコンクリート吹付工程を示す斜視図。
【図7】植物の根系の発育状態を示す正面図。
【符号の説明】
12 法面
14 枠部材
16 空間形成体
18 枠内
20 型枠
22 仕切板用係止部
26 モルタルまたはコンクリート
28 法枠
30 空間部
32 仕切板
34 植生材
36 植物苗
38 根系

Claims (6)

  1. 法面(12)に法枠(28)を格子状に施工後、法枠(28)により区画された各枠内(18)に植物苗(36)を植栽することにより、法面を保護・緑化する工法において、
    法面(12)に枠部材(14)を格子状に所定幅で配設させ、枠部材(14)の下方の少なくとも一部に幅方向にわたり、空間形成体(16)を被設させると共に、枠部材(14)の外周に型枠(20)を配設させた後、各型枠(20)および各空間形成体(16)間にコンクリート(26)を打設し、養生硬化させて法枠(28)を構築させると共に、空間形成体(16)の一部または全部を排除することにより、法枠(28)により区画された隣接する各枠内(18)間を、空間形成体(16)により形成された空間部(30)を介して連通させ、各枠内(18)に植生材(34)を充填させ、この植生材(34)内に根系(38)を十分発育させた植物苗(36)を植栽させることにより、法面を保護・緑化することを特徴とする法面保護・緑化工法。
  2. 法枠(28)構築時に、各枠内(18)の両側に位置する法枠(28)の側面に、仕切板用係止部(22)を形成させ、この仕切板用係止部(22)に仕切板(32)を装着させて各枠内(18)を複数に分割させ、各枠内(18)に充填させた植生材(34)の下方への流動を防止することを特徴とする請求項1記載の法面の保護・緑化工法。
  3. 枠部材(14)を法枠用金網とし、この法枠用金網を法面(12)に配設させた後、法枠用金網にモルタルまたはコンクリート(26)を吹付け、養生硬化させることにより法枠(28)を構築することを特徴とする請求項1または請求項2記載の法面の保護・緑化工法。
  4. 法面(12)を保護・緑化するための法枠において、
    法面(12)に枠部材(14)を格子状に所定幅で配設させ、枠部材(14)の下方の少なくとも一部に幅方向にわたり、空間形成体(16)を被設させると共に、枠部材(14)の外周に型枠(20)を配設させた後、各型枠(20)および各空間形成体(16)間にコンクリート(26)を打設し、養生硬化させて構築させると共に、空間形成体(16)の一部または全部を排除することにより、法枠により区画された隣接する各枠内(18)間を、空間形成体(16)により形成された空間部(30)を介して連通させてなる法面保護・緑化用法枠。
  5. 法枠構築時に、各枠内(18)の両側に位置する法枠(28)の側面に、仕切板用係止部(22)を形成させ、この仕切板用係止部(22)に仕切板(32)を装着させて各枠内(18)を複数に分割させ、各枠内(18)に充填させた植生材(34)の下方への流動を防止することを特徴とする請求項4記載の法面保護・緑化用法枠。
  6. 枠部材(14)を法枠用金網とし、この法枠用金網を法面(12)に配設させた後、法枠用金網にモルタルまたはコンクリート(26)を吹付け、養生硬化させることにより法枠を構築することを特徴とする請求項4または請求項5記載の法面保護・緑化用法枠。
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