JP3920084B2 - 切土補強面における植生構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切土補強面に植物を植付け可能にした植生用PC板(プレキャストコンクリート板の略称)と、該植生用PC板を使用した切土補強面における植生構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、切土法面を補強する工法にあっては、例えば特公平7ー26402号公報に記載の「切土法面等の補強工法」がある。
具体的には、形成しようとする切土補強面の上端から下に向けて一段目のPC板を据付け出来る高さの装着面を掘削した段部を形成し、該装着面と一定の間隔をおいて装着面にPC板を並列配置し、ついで夫々のPC板に透設された取付孔から装着面側に削孔して取付孔から該削孔部に鉄筋等の棒状補強材を挿入した後、該削孔部内及びPC板の裏側間隙にモルタルを注入し、夫々補強材の突出端部を取付孔部で固着してPC板に一体連結しPC板を装着面に定着させた後、上から二段目のPC板を据付け出来る高さの取付面を掘削した段部を形成し、装着面側との間に間隙をおいて夫々一段目のPC板の下端部に二段目のPC板を連結し、二段目のPC板に透設された取付孔から削孔して取付孔から該削孔部に棒状補強材を挿入した後、該削孔部内及びPC板の裏側間隙にモルタルを注入し、夫々補強材の突出端部を取付孔部で固着してPC板に一体連結し、これを繰り返すことで、複数段にPC板を備えた切土補強面を形成する様にしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記工法で形成された切土補強面はコンクリート剥き出しで極めて無機的であることから、例えば山間部を切り開いて通した道路の場合、周囲は自然のままであるが、道路及びその側方に形成された切土補強面は自然に溶け込まず、自然との調和に欠けてしまう等解決せねばならない課題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記従来技術に基づく、PC板からなる切土補強面では周囲の自然に合わない課題に鑑み、切土法面に設置、定着させたPC板を、少なくとも1隅部に大きい面取部を形成した植生用PC板と矩形PC板とで構成し、植生用PC板の面取部でPC板の境界部に植生凹部を形成し、該植生凹部内に植生土嚢を収容すると共に、該植生土嚢に植物を植え付け、PC板の裏面と切土法面間に、PC板の配列方向に長く吸水性を有する背面排水材を、該背面排水材の端部が植生凹部内に位置する様に横設した切土補強面を構築することによって、切土補強面に植物を植え付けることを可能にすると共に、植生土嚢により植物を確実に育成出来る様にして、上記課題を解決する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る植生用PC板の正面図であり、図2は、図1の平面図であり、図3は、図1の植生用PC板の設置状態を示す横断面図であり、図4は、図1の植生用PC板を千鳥状に配置した切土補強面の正面図であり、図5は、図4の要部拡大図であり、図6は、図5のXーX断面図であり、図7は、図6の他の実施例を示す断面図であり、図8は、背面排水材の配置位置を示す切土補強面の要部正面拡大図であり、図9は、植生用PC板を碁盤目状に配置した切土補強面の正面図であり、図10は、植生用PC板の他の実施例を示す正面図であり、図11は、登攀網を設けた切土補強面の正面図である。
図4、5、9に示す様に、切土補強面1は、複数枚のPC板2、2a…を千鳥状又は碁盤目状規則的に配列、設置して構成している。
【0006】
各PC板2、 2a の中央に取付孔3を形成し、該取付孔3は、図1〜3に示す様に、PC板2、2a…の中央に、前面側が大径な段付孔部4を貫設すると共に、該段付孔部4の段部に埋込金具5の外周部を固設一体化して形成し、埋込金具5の中央に挿通孔6を貫設している。
又、図6、7に示す様に、各PC板2、2a…の取付孔3より地山W側に連続形成された削孔部Hに鉄筋等の棒状補強材Pが挿入され、削孔部H内及びPC板2、2a…の裏側間隙にモルタルMを注入し、各補強材Pの突出端部に嵌設したナット等の締結具Tを取付孔3における埋込金具5に固着している。
又、各PC板2、2a…の上下部に連結金具7、7a、8、8aを設けると共に、一側部に受承金具9、9aを設けている。
【0007】
PC板2、2a…には、四隅部の少なくとも1箇所に大きい面取部13、13a …が形成された複数種類の植生用PC板11、11a …と、一般的な矩形PC板12があり、これらを適宜組み合わせることで、PC板2、2a…の境界部の複数箇所に植生凹部14、14a …を形成した切土補強面1を構成する様にしている。
つまり、植生用PC板11、11a …は、面取部13、13a …の形成位置の組み合わせで14種類あり、その中から適宜選択して使用する様にしている。
【0008】
例えば、図4に示す様に、PC板2、2a…を千鳥状に配列すると共に、上方隅部の対称位置に面取部13、13a の有る2種類の植生用PC板11、11a を、両方の面取部13、13a で植生凹部14、14a …を形成すべく並べる様に配置して切土補強面1としている。
或いは、図9に示す様にPC板2、2a…を碁盤目状に配列する場合、少なくとも異なる四隅部に面取部13、13a 、13b 、13c がある植生用PC板11、11a 、11b 、11c を、中央に植生凹部14、14a …を形成すべく、上下左右の隣接位置に配置して切土補強面1としている。
【0009】
図5〜9に示す様に、PC板2、2a…の横列において、少なくとも植生用PC板11、11a …の有る列を構成するPC板2、2a…の上部と地山Wの間に背面排水材15、15a …を配置し、該背面排水材15、15a …の端部を上記植生凹部14、14a …内に位置させている。又、背面排水材15、15a …にあっては、不織布筒内にカール状の繊維集合体を充填して形成している。
【0010】
図6、7に示す様に、上記植生凹部14、14a …内の夫々に、該植生凹部14、14a …の外周形状に合致する、不織布で形成した、通水性を有する有底筒状の保護カバー18を収容すると共に、該保護カバー18内に、布袋内に腐葉土等を充填した植生土嚢19を収容し、該植生土嚢19に植物20を植え込んでいる。
又、各植生凹部14、14a …の前部に、例えばラシャ網の様な落下防止網21を設置すると共に、該落下防止網21の外周部を植生用PC板11、11a に適宜固設するのが好ましい。
又、植生土嚢19にあっては、該植生土嚢19を貫通して地山W側に打ち込まれた杭体22により地山Wに固定している。
【0011】
植物20を蔓科植物とした場合、図11に示す様に、切土補強面1の前面に、植物20を巻き付かせるための登攀網23を設置するのが好ましい。
【0012】
尚、6、7、8に示す切土補強面1における植生凹部14、14a …は、隣接する植生用PC板11、11a …の複数の面取部13、13a …で形成されているが、かかる形態に限定せず、図示しないが、隣接するPC板2、2a…の一方が植生用PC板11、11a …であっても、他方が矩形PC板12であったり、或いは境界側に面取部13、13a …が無い植生用PC板11、11a …であっても良い。
又、植生凹部14、14a …の配置位置は、規則的に或いはランダムに設定したり、或いは植生凹部14、14a …の植物20でマーク等を形成する様に設定することを可能にしている。
【0013】
次に本発明に係る切土補強面における植生工法について説明する。
(1)地山WにPC板2、2a…を据付け出来る高さの装着面Aを掘削形成すると共に、該装着面Aの所定箇所に背面排水材15、15a …を固定した後、装着面AにPC板2、2a…を、少なくとも1種類の植生用PC板11、11a …及び複数枚の矩形PC板12を混在させながら、又は全てを2枚1組の植生用PC板11、11a …として並列配置する。
(2)各PC板2、2a…に形成された取付孔3から装着面A(地山W)側に削孔して取付孔3から該削孔部Hに棒状補強材Pを挿入すると共に、植生凹部14、14a …内に、該植生凹部14、14a …の形状に合致する枠板(図示せず)を設置した後、削孔部H内及びPC板2、2a…の裏側間隙にモルタルMを注入し、各補強材Pの突出端部を埋込金具5に固着しPC板2、2a…に一体化させて、PC板2、2a…を装着面Aに定着させる。
(3)(1)〜(2)工程を地山Wの上方より下方へ順次行って複数段のPC板2、2a…を備えた切土補強面1を形成すると共に、モルタルMの養生、硬化後に枠板(図示せず)を取り外すと、植生凹部14、14a …が形成される。
(4)完成した切土補強面1に形成された植生凹部14、14a …の夫々に保護カバー18を収容し、該保護カバー18内に植生土嚢19を収容すると共に、該植生土嚢19を貫通させた杭体22を地山Wに打ち込んで、植生土嚢19を地山Wに固定した後、該植生土嚢19に適宜植物20を植え付けると共に、各植生凹部14、14a …の前面に配置した落下防止網21の外周部をPC板2、2a…に固定する。
【0014】
尚、上記(4)工程の場合、落下防止網21は、図6に示す様に、植生凹部14、14a …の前面開口部の全てを閉鎖して、落下防止網21の網目より植物20を引き出したり、或いは、図7に示す様に、植生凹部14、14a …の前面開口部の上部を若干開けて閉鎖して、その上方隙間より植物20を引き出している。
【0015】
次に本発明に係る切土補強面における植生構造の作用について説明する。
PC板2、2a…の配列方向に長い背面排水材15、15a …を、その端部が植生凹部14、14a …内に位置する様に、地山W側の装着面A、AaとPC板2、2a…間に配置することで、地山Wからの滲出水を背面排水材15、15a …内を通して植生凹部14、14a …内に送ることが可能になる。而も、背面排水材15、15a …は、不織布筒内にカール状の繊維集合体を充填して形成されていることから、地山Wからの滲出水だけが不織布筒を通過して背面排水材15、15a …内に入り込む様に成っている。
又、植生凹部14、14a …の夫々に収容した保護カバー18内に植生土嚢19を収容することで、背面排水材15、15a …及び地山Wからの水分は保護カバー18を通過して植生土嚢19に吸収されるが、植生土嚢19の土壌は地山W側へ流出しない。
又、植生凹部14、14a …の前部を落下防止網21で塞ぐことで、該落下防止網21が植物20の成長の邪魔をせずに植生土嚢19の落下を防止することが可能になる。
【0016】
【発明の効果】
要するに本発明は、切土法面に設置、定着させたPC板2、2a…を、少なくとも1隅部に大きい面取部13、13a …を形成した植生用PC板11、11a …と矩形PC板12とで構成し、植生用PC板11、11a …の面取部13、13a …でPC板2、2a…の境界部に植生凹部14、14a …を形成し、該植生凹部14、14a …内に植生土嚢19を収容すると共に、該植生土嚢19に植物20を植え付けたので、無機的な切土補強面1に植物20を植え付けることが出来るため、周囲環境に馴染ますことが出来る。
又、地山Wは粘土質で栄養分が少なく、植物の根が張り難いことから、植え付けた植物が育ち難く寿命が短いが、植生凹部14、14a …に収容した植生土嚢19に植物20を植え付けたので、植生土嚢19内で植物20が張って豊富な栄養分を吸収することが出来るため、植物20を充分に成長させ、寿命を延ばすことが出来る。
又、隣接する植生用PC板11、11a …の境界部側に形成した両方の面取部13、13a …で植生凹部14、14a …を形成したので、大きい植生凹部14、14a …を形成することが出来るため、大きい植生土嚢19を収容出来、よって植物20の寿命を更に延ばすことが出来る。
【0017】
PC板2、 2a の裏面と切土法面間に、PC板2、 2a …の配列方向に長く吸水性を有する背面排水材 15 15a …を、該背面排水材 15 15a …の端部が植生凹部 14 14a …内に位置する様に横設したので、地山Wからの滲出水を背面排水材15、15a …内を通して植生凹部14、14a …内に送ることが出来るため、植物20が略自然の状態で、手間を掛けずに成長させることが出来る。
又、植生凹部14、14a …内に収容した、通水性を有する保護カバー18内に植生土嚢19を収容したので、背面排水材15、15a …及び地山Wからの水分を植生土嚢19に吸収させることは出来るが、植生土嚢19の土壌を地山W側へ流出しない様にすることが出来るため、植生凹部14、14a …内に植生土嚢19中の土壌を長期間保持することが出来る。
又、植生凹部14、14a …の前方に落下防止網21を設けたので、植生凹部14、14a …からの植生土嚢19の落下事故を防止することが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る植生用PC板の正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の植生用PC板の設置状態を示す横断面図である。
【図4】図1の植生用PC板を千鳥状に配置した切土補強面の正面図である。
【図5】図1の他の実施例の要部拡大図である。
【図6】図5のXーX断面図である。
【図7】図6の他の実施例を示す断面図である。
【図8】背面排水材の配置位置を示す切土補強面の要部正面拡大図である。
【図9】植生用PC板を碁盤目状に配置した切土補強面の正面図である。
【図10】植生用PC板の他の実施例を示す正面図である。
【図11】登攀網を設けた切土補強面の正面図である。
【符号の説明】
2、2a… PC板
11、11a 植生用PC板
12 矩形PC板
13、13a 面取部
14、14a … 植生凹部
15、15a … 背面排水材
19 植生土嚢
20 植物

Claims (4)

  1. 切土法面に設置、定着させたPC板を、少なくとも1隅部に大きい面取部を形成した植生用PC板と矩形PC板とで構成し、植生用PC板の面取部でPC板の境界部に植生凹部を形成し、該植生凹部内に植生土嚢を収容すると共に、該植生土嚢に植物を植え付け、PC板の裏面と切土法面間に、PC板の配列方向に長く吸水性を有する背面排水材を、該背面排水材の端部が植生凹部内に位置する様に横設したことを特徴とする切土補強面における植生構造
  2. 隣接する植生用PC板の境界部側に形成した両方の面取部で植生凹部を形成したことを特徴とする請求項1記載の切土補強面における植生構造。
  3. 植生凹部内に収容した、通水性を有する保護カバー内に植生土嚢を収容したことを特徴とする請求項1又は2記載の切土補強面における植生構造。
  4. 植生凹部の前方に落下防止網を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の切土補強面における植生構造。
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