JP3545698B2 - 衝撃緩和装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中間で衝撃作用を緩和するように設けられる一方側部材と他方側部材とを有する衝撃緩和装置に関し、特に複数種類の衝撃力が作用する対象物に好都合に利用される。
【0002】
【従来の技術】
例えば水上又は水中を航行する船舶類では、船体が水から種々の衝撃力を受けることがあるため、搭載されている電子機器等に対して従来から種々の衝撃緩和対策が採られている。このような対策としては、船体に対してそれぞれ機器を防振ゴム等で単独に防振支持する装置、それぞれの機器を防振支持された筐体に入れてより完全に防振支持する装置、更にこれらの機器を一括して防振するために架台としての甲板を防振支持する装置(特開平11−139393号公報参照)、等が知られている。
【0003】
この場合、上記甲板支持装置では、第1の固有振動数を持つバネとダンパとから成る第1の防振機構と、通常時には作動しないように一定のギャップを設けて第1の防振機構とは異なった第2の固有振動数を持つバネとダンパとから成る第2の防振機構とによって甲板を支持するようにしている。しかしながら、このような装置では、2組の防振機構を設けているため、構造が複雑になると共に設備コストが高くなるという問題がある。
【0004】
又、甲板を支持するためには、第1のバネで相当大きい荷重を初期荷重として常時支えておく必要があるが、上記の第1防振機構のようなバネでは、初期荷重を許容しつつ効果的に減衰力を発生させることができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来技術に於ける上記問題を解決し、簡単な構造で小形軽量で低コストで振動抑止効果の大きい衝撃緩和装置を提供することを課題とする。又、通常程度の揺れや振動に対する不要な応答を防止できると共に、例えば海中で爆発が生じた場合に船体から電子機器等を搭載した甲板に伝達される極めて大きい衝撃力を含む広い周波数範囲の衝撃力に対して、振動緩和の対象となる機器等を含む構造物の加速度応答を緩和させ且つその後に発生する残留振動を速やかに減衰させることができる衝撃緩和装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、請求項1の発明は、中間で衝撃作用を緩和するように設けられ水上又は水中を航行する船舶類の船体に取り付けられる一方側部材と甲板に取り付けられる他方側部材とを有する衝撃緩和装置において、
バネとダンパとを有し、
前記バネはガススプリングからなりバネ作用をするピストン及びシリンダからなるバネ部の一方側及び他方側であって第1一方側と第2一方側及び第1他方側と第2他方側を備え、
前記ダンパは緩衝作用をする緩衝部の両側に緩衝部一方側及び緩衝部他方側を備え前記衝撃作用によって動く速さが一定の速さになるまでは前記速さが速くなるとそれに対応して大きくなる減衰力を発生させ速さが前記一定の速さを越えると前記大きくなる量が少なくなるように前記減衰力を発生させるように構成されていて、
前記一方側部材と前記緩衝部一方側が結合され、
前記他方側部材と前記緩衝部他方側が結合され、
前記一方側部材の前記中間の側の面と前記第1一方側とが前記バネ作用をする方向に接離可能なように接触し前記他方側部材の前記中間の側の面と前記第1他方側とが前記のように接触し前記一方側部材の前記中間の反対側の面と前記第2他方側とが前記のように接触し前記他方側部材の前記中間の反対側の面と前記第2一方側とが前記のように接触するときに前記バネ部に前記甲板にかかる重量と前記船体の動揺によって付加される重量とに耐えるための目的とする設定圧縮力が生ずるように構成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明を適用した衝撃緩和装置の構成例を示すモデル図である。
衝撃緩和装置は、中間で衝撃作用を緩和するように設けられる一方側部材として、船体100に取り付けられる甲板200を吊り下げて支持するための支持部1と、他方側部材として例えば海中を航行する船内に装備される電子機器201等を搭載する前記甲板200を吊り下げて支持するように甲板に取り付けられる取付部2とを備えていて、バネ3とダンパ4とを有する。
【0009】
バネ3は、バネ作用をするバネ部の一方側31及び他方側32を備えていて、それぞれの側は、第1一方側31a、第2一方側31b、及び、第1他方側32a、第2他方側32bを備えている。このようなバネ3としては、コイルバネ、板バネ、皿バネ等の金属性バネやガススプリング等の各種バネを使用することができる。
【0010】
ダンパ4は緩衝作用をする緩衝部の両側に緩衝部一方側41及び緩衝部他方側42を備えている。そして、支持部1と緩衝部一方側41が結合され、取付部2と緩衝部他方側42が結合されている。ダンパ4としては、通常オイルダンパが使用されるが、摩擦ダンパや空気ダンパやゴムダンパ等も使用目的によっては採用可能である。
【0011】
又、支持部の中間の側の面1aと第1一方側31aとが接触し、取付部の中間の側の面2aと第1他方側32aとが接触し、支持部の中間の反対側の面1bと第2他方側32bとが接触し、取付部の中間の反対側の面2bと第2一方側31bとが接触するときに、バネ部に目的とする設定圧縮力である初期荷重F0 が生ずるように構成されている。即ち、上記の接触関係の下にバネ部が予圧されている。
【0012】
図2は、以上のような衝撃緩和装置において、バネ3を2組のガススプリングとしその中間にダンパ4としてオイルダンパを介在させた構造のものあり、本例の用途に特に好都合に使用される。
【0013】
この衝撃緩和装置では、バネ3は、バネ作用をするピストン31及びシリンダ32から成るバネ部の一方側であるピストン31側及び他方側であるシリンダ32側を備えていて、それぞれの側は、第1一方側としてのピストン31の軸端31a、第2一方側として本例ではピストン31からその反対側に延設された延長軸31cの延長軸端31b、第1他方側としてのシリンダ32の後端32a、及び、第2他方側として本例ではシリンダ32からその反対側に延設された延長部32cの延長部端32bを備えている。
【0014】
ダンパ4はシリンダ41とピストン42とピストンに設けられたオリフィス状の通油孔43とで構成されていて、緩衝作用をする緩衝部の両側に緩衝部一方側である前記シリンダ41及び緩衝部他方側である前記ピストン42を備えている。そして、支持部1とシリンダ41が結合され、取付部2とピストン42が結合されている。
【0015】
又、支持部1の中間の側の面1aと軸端31aとが接触し、取付部2の中間の側の面2aと後端32aとが接触し、支持部1の中間の反対側の面1bと延長部端32bとが接触し、取付部2の中間の反対側の面2bと延長軸端31bとが接触するときに、バネ部に目的とする設定圧縮力F0 が生ずるように構成されている。そして、この設定圧縮力F0 を発生させるために、シリンダ32の容積部32dに通常不活性ガスとして窒素を例えば10MPa程度の圧力で封入し、ピストン31を図示の如くシリンダ容積部の上端位置にしている。
【0016】
船体100は、例えば、支持部1の上端を穴明き脚部1cとし、これに支持軸102を介して船体100側の穴明きブラケット103を取り付けることにより、支持部1と結合される。甲板200と取付部2との結合状態も同様である。
【0017】
以上のような衝撃緩和装置(以下では「防振機M」という)は、次のように作動してその作用効果を発揮する。
甲板200には電子機器201等が搭載され、これらを含む諸設備及び甲板200の構造体としての自重等の総重量は例えば約400KNとなる。この重量は、図2に示す防振機Mを例えば4個配設することにより、船体100によって支持されている。このときの防振機Mの1台当たりの支持静荷重は100KNである。
【0018】
防振機Mは、ガススプリングから成るバネ3によって少なくともこの静荷重を支持する必要があるが、本例では、前記初期荷重F0 を、船がある程度動揺したときに甲板200が受ける動揺加速度と重力の加速度との合計加速度が2Gになったときの重量としている。即ち、F0 =200KNに対応して窒素ガス圧及びピストン31の面積を定めている。従って、単に自重だけがかかった状態では、ピストン31はシリンダ容積部32dから予圧力を受けている。なお、後述するようにシリンダのこれ以上の膨張工程を使用しないので、既述の如く図2ではピストン31の上端位置を規制しているが、余裕を設けるようにしてもよい。
【0019】
この2Gまでの荷重状態では、面1aと軸端31a等の4箇所のそれぞれの部分が当接していて、甲板200と船体100とは剛接されたときと同じ安定な状態を保っている。その結果、船が多少動揺した程度では防振機Mが作動せず、不必要な防振作用による小揺動の多発が防止され、電子機器等を操作する人に悪影響が及ばないようにされている。なお、このときには、電子機器等に2Gまでの加速度がかかることになるが、電子機器等は通常10G程度まで耐えられるようになっているため、その程度の加速度で故障等の起こるおそれは全くない。
【0020】
図2の初期荷重状態から、船体100が水中の衝撃波等を受けることによって2G以上の加速度で動くと、船体100を介して甲板200がそのような加速度で動こうとするが、このとき防振機Mが作動し、船体100と甲板200との間の相対距離を減少させつつ、且つ時間遅れを生じさせることにより、甲板200に伝達される衝撃を緩和する作用をなす。
【0021】
図3は2G以上の加速度が作用して防振機Mが作動したときの状態を示す。
海中の圧力波によって例えば船体100が上の矢印で示す如く下向きの衝撃加速度を受け、瞬時に一点鎖線で示す通常支持状態である初期位置L0 から下方にδだけ動いてL1 の位置になったとすると、面1aと軸端31a及び面2aと後端32aとが接触した状態でシリンダ32の容積部32dがδだけ圧縮されると共に、ダンパ4のシリンダ41が通油穴43による抵抗力を受けつつ同じδだけ変位する。
【0022】
なお、図ではシリンダの容積部32dが最小になる位置を制限してピストン31がその限界位置になった状態を示しているが、この限界位置は、実際には変位δのうちの想定される最大変位δmaxに対してある程度余裕を持つように設計される。
【0023】
図4は変位δによって船体100と甲板200との間に防振機Mを圧縮する作用が生じたときにこれに発生する力の状態を示し、(a)はバネ3による部分で(b)はダンパ4による部分である。
バネ3はガススプリングであるが、圧縮比の小さい範囲ではある程度リニアーなバネ特性が得られる。即ち、図2に示す初期設定の変位0であるピストン31の上端位置では、バネ力は2Gに相当する力F0 という十分大きい力であり、ピストン31がδだけ動いて容積部32d内の窒素ガスを圧縮すると、それに対応してピストンにかかる力がF1 だけ大きくなる。この間にF1 δ/2の歪みエネルギーがバネ3に蓄えられる。
【0024】
このF0 からF1 に至る力は、船体100がδだけ変位する微小時間に発生するため、図3において上側の下向き矢印で示す船体100側からの力と、下側の上向き矢印で示す甲板200側の総重量に基づく静止慣性力によって発生する。このようなバネ3は、変位0で力だけが生じる原点Oから点P1 までの特性と、その後ほぼ変位に対応して直線的に力が大きくなるP1 からP2 までの特性とから成るバイリニアー特性を持つことになる。
【0025】
このようなバイリニアー特性を有するバネを採用することにより、通常時における不必要な防振作用による小動揺の多発を防止できると共に、バネ剛性を低くすることによってP1 からP2 までのバネ力F1 を小さ目にすることにより、広い周波数範囲の衝撃力に対応した振動緩和作用を生じさせることができる。
【0026】
一方、ダンパ4では、船体100に加わる衝撃力によって船体が最大の初速度で変位するため、図4(b)のようなF2 までの抵抗力が発生する。この力によって発生した仕事F2 δ/2によるエネルギーは、F2 が余り大きくならない範囲では、上記支持力と慣性力によって生ずる力になる。そして熱エネルギーとして発散される。なおこのときの仕事は船体100の制振作用に寄与する。
【0027】
以上のようなバネ3とダンパ4との組合せにより、極めて良好に衝撃力を緩和することができる。即ち、まずバネ3によれば、ピストン31の面積と容積部32dの圧力とを適当な値にすることによって大きい初期荷重F0 を発生させ、ピストン31の面積と容積部32dの容積との関係を適当に定めることにより、ある程度バネ定数の小さい柔らかいバネにし、甲板にかかる大きな重量や船の揺動に耐えるための初期荷重F0 を得ることができる共に、衝撃変位が発生したときに、比較的小さいバネ力F1 と歪みエネルギーF1 δ/2の発生に止めることができる。
【0028】
その結果、周知の運動方程式F=mαによって甲板200側に時間が遅れて発生する加速度を小さい値にして、電子機器への影響を回避することができる。又ダンパ4では、そのピストン42の上方への変位により、バネの蓄えた歪みエネルギーによって次に甲板200に発生する変位及び振動加速度の抑制動作が可能になる。
【0029】
図5は防振機Mに引っ張りの作用が発生したときの状態を示す。
以上のように蓄えられた歪みエネルギーの発散によって衝撃発生時から時間遅れで下方に甲板200が動く時、圧力波によって初めから船体100を上方側に動かす力が作用した時、その他の外力又はこれらが複合して発生した時等には、防振機Mは図5に示す引っ張り状態になる。
【0030】
図3の圧縮状態から、例えば、シリンダの容積部32dが圧縮されて昇圧し、それに伴ってピストン31が上方に伸びた後引っ張り状態になるときには、まず面1aと軸端31a及び面2aと後端32aが接触した状態でシリンダ容積部32dが膨張してピストン31が上端位置になる図5左側の状態の初期設定位置に復帰し、この間に甲板200が下方に動く。仮に船体100が前述のようにδだけ下に動いた状態になっていたとすれば、初期位置になると甲板200もδだけ動くことになる。
【0031】
しかし、この動きにおいては、バネ3が圧縮されたときの最大反撥力F1 が小さいこと及びバネ3に蓄えられた歪みエネルギーF1 δ/2が小さいことから、甲板200をF=mα(mは甲板200部分の全質量)の式で動かすときの加速度αが大きくならない。又、圧縮時にダンパ4のピストン42がシリンダに対して相対的に上方に動いているため、今度は反対の下方に動くことができ、図4(b)に示す如くその動きが今度はバネ3の伸びに対する最大抵抗力−F3 を持つマイナス仕事として有効になり、上記加速度を一層低下させる。その結果、船体100に大きな衝撃加速度が生じても、これを十分緩和し、甲板200上の電子機器等への悪影響を防止することができる。
【0032】
防振機Mが初期位置に復帰すると、バネ3の歪みエネルギーは消費されて0になるが、この間の甲板200の動きにより、ダンパ4のブレーキ作用はあっても、甲板200の運動エネルギーが残存していて上記の如くバネ3は引っ張り側に変位する。この場合、防振機Mの初期位置は図4(a)の原点Oにあるが、バネ3において2Gに相当する初期荷重を設定しているため、通常のバネ支持方法によるとすれば、図において二点鎖線で示すように原点Oからバネ3のバネ力が0になる真の原点O´までバネに甲板200の下方への動きを抑制する力が発生しない。
【0033】
しかしながら、本発明の適用により、初期状態から防振機Mが引っ張り側に転じると、甲板200と船体100との間隔が開くことにより、圧縮時とは反対に、図5右側の状態のように、防振機Mの4箇所の接触点のうち面1aと軸端31a及び面2aと後端32aの間が開き面2bと延長軸端31bの間及び面1bと延長部端32bの間が接触状態を維持し、ピストン31は直ちにシリンダ容積部32dを圧縮する。この圧縮力では、シリンダ内圧が同じ初期荷重時の圧力であるから最初の圧縮時と同じ大きさの力F0 が初期値である。
【0034】
この圧縮時に、甲板200側の支持部1は初期位置から更にδ1 だけ引っ張られた状態になる。なお、図ではピストン31が下端まで圧縮された状態を示しているが、実際にはピストン31は下端に至るまでの中間位置で停止する。そして、ダンパーの減衰力が作用するため、δ1 はδより小さくなる。
【0035】
即ち、防振機Mの引っ張り時においても、図4(a)に示す如く、引っ張り方向のマイナス(圧縮方向をプラスにしたときの)変位に対してマイナス側即ちブレーキ作用をする側に実線で示す−F0 を起点としたF4 までの減衰力が直ちに作用する。又、このときにも、ダンパ4は継続して減衰作用をする。従って上記の如くδ1 が小さくなる。
【0036】
なお、ダンパ4の減衰作用はバネ3の動きに対応してその範囲内で起こるので、ダンパ4に減衰作用が生じても、バネ3には更に図示のようなF4 及びF4 δ1 /2のバネ力及び歪みエネルギーが残存する。しかし、ダンパ4による減衰作用によってこれらは十分小さい値になる。
【0037】
即ち、本発明によれば、引っ張り時にも、バネ3の圧縮方向への転換作用による減衰力とダンパの減衰力との総合作用を効果的に組み合わせることにより、防振機Mに圧縮時と同等の十分な減衰効果を発生させることができる。このときに残存した力及び歪みエネルギーは、更に圧縮方向に二次的変位を与えるが、これらはδ1 よりも一層小さい値になる。その結果、最初の船体100への衝撃によって発生する甲板200の振動を早く減衰させて早く消滅させることができる。又、二次的変位以下の振動が電子機器等に悪影響を及ぼさないことは勿論である。
【0038】
なお図3乃至図5では、船体100の最初の圧縮方向変位によって生じた防振機Mの圧縮変位による甲板200の振動について本発明の防振機Mの作用を原理的に説明したが、実際には船体100も継続して振動し、この振動と甲板200の振動とは複雑な振幅及び位相の関係になる。
【0039】
しかし、何れの場合においても、バネ3に十分大きい初期荷重を設定することにより、通常時には運用上支障が生じないように甲板重量を静的に支持できると共に、バネ係数を小さ目に選定することにより、大きな衝撃力を含む広い周波数範囲の衝撃力に対する甲板の加速度応答を緩和し、電子機器等の安全性を確保することができ、更にダンパ作用との組合せにより、甲板200側に発生する残留振動による加速度応答を速やかに低下させ、振動を早期に減衰させ、甲板を早期に静止的状態に戻せるという、総合的作用効果を得ることができる。
【0040】
又、本発明のような防振機Mをもうければ、従来の個々の電子機器に対する防振装置を設ける場合や、バネとダンパとを二重に設ける構造のものに較べて、装置を簡素化し、作動の信頼性を良くし、更にコスト低減を図ることができる。
【0041】
図6はダンパ4の特性を示す。
図において実線は、ダンパ4が図1に示すような通常のオイルダンパである場合の特性を示す。ダンパ4は、作動するときの速度によって作動させるための抵抗力が異なり、図の実線で示すように、衝撃作用を大きくして早く動かすときには大きな抵抗力従って大きな減衰力を発生させるようになっている。
【0042】
バイリニアーダンパは、図の実線の途中までの部分のように、衝撃作用によって動く速さが一定の速さV1 になるまでは、速さが速くなるとそれに対応して大きくなる減衰力を発生させ、速さが一定の速さV1 を越えると、図の二点鎖線の部分のように、大きくなる量が少なくなるように減衰力を発生させるように構成されている。即ち、動作速度に対する減衰力の勾配の大きい実線で示す特性と、これに連続して勾配が十分小さくなる一点鎖線で示す特性とから成るバイリニアー特性を備えている。このようなバイリニアーダンパは、詳細説明を省略するが、一般に、圧縮側及び伸び側の減衰弁、リリーフ弁及びチェック弁やアキュームレータピストン等をピストン部分に仕組んだ構造になっている。
【0043】
防振機Mの使用条件として、通常受ける加振力と最大加振力とに極端な差がないときには、ダンパ4として通常のものを使用できるが、例えば突発的に海中爆発に遭遇したような場合に、最大加速度が通常時よりも大幅に大きな値になるときには、バイリニアーダンパを採用することになる。
【0044】
即ち、例えば水中爆発が起こったときには、図7に示す如く、最初に数mmsec 程度の極めて短時間に強い圧力のショックパルスが発生し、僅かに時間間隔をおいて数10mmsec 程度で最初の時より長い時間で低下した圧力のバブルパルスが発生する。特に最初のショックパルスでは、船体100が極めて強い衝撃力を受る。この力は一瞬作用するだけであるため、船体100は例えば10mm程度の変位で止まり大きな変位にはならないが、極めて大きな衝撃加速度が生じてこの変位は速い初速度で発生する。
【0045】
このとき、ダンパ4が動作速度に対応した抵抗力として大きな力を発生させる通常のものであれば、図8の二点鎖線で示す如く、船体の速い初速度によってダンパの最大抵抗力R´が大きくなり過ぎて、船体100にかかった大きな加速度をバネ3が吸収してもダンパ4の方で直接的に甲板200に伝達し、甲板200に大きな衝撃加速度を与えることになる。その結果、電子機器等が故障したり破損するおそれが生ずる。
【0046】
この場合、ダンパ4がバイリニアーダンパであれば、速い速度で作動してもダンパの動作抵抗が速度に対して殆ど大きくならないので、図8の実線で示す如く、最大抵抗力Rが小さくなり、船体100の動きを甲板200側に直接的に伝達するような不具合が発生しない。従って、このダンパによれば、甲板200はバネ3に蓄えられた歪みエネルギーによって時間をずらして小さい加速度で動くことになる。その結果、ショックパルスのような海中衝撃波を受けた場合でも、電子機器の故障や破損を確実に防止することができる。そして、その後にバネとダンパとが相伴って早く減衰作用をすることはこれまで説明したとおりである。なお、既述の如く本装置は十分広い周波数範囲の衝撃力に対して効果的に作動するので、バブルパルスに対しても衝撃緩和作用及び減衰作用が有効に働くことは勿論である。
【0047】
なお、以上のようにバネ3をガススプリングにすれば、バネ係数や初期設定荷重を目的とする値にする場合に、封入ガス圧力、シリンダ容積部32dの大きさ、ピストン31の断面積等を相互の関係において適切に選定すればよいので、設計的な自由度が大きく使用上好都合である。又、高圧化が可能であるためサイズを十分小形化することができる。但し、サイズは大きくなるが、金属バネ等を使用可能なことは既述のとおりである。
【0048】
なお、金属バネの場合であっても、図1に示す如く、面1aと第1一方側31a及び面2bと第2一方側31bを接触させるときにバネ部を予圧しておくことにより、自重を越える例えば2Gの初期荷重を設定することが可能である。そして、バネ部を自重による圧縮量以上に圧縮することにより、自重だけが作用しているときにバネに反撥力が残存させ、ガススプリングのときと同様に2Gまでバネを不作動の状態にすることができる。
【0049】
なお、図1及び図2では、図において船体100を上側にして甲板200を下側にし、船体から防振機Mを介して甲板を吊り下げる支持状態にした例を示したが、これらを互いに反対方向にし、船体上に防振機を介して甲板を乗せるように支持してもよい。
【0050】
そのような支持方法によれば、甲板の横揺れ方向の支持が必要になるが、図1及び図2の支持状態の場合と全く同様に防振機Mのこれまで説明した作用効果が得られる。なお、船体及び甲板の上下位置に関係なく、防振機Mを図1及び図2の状態の反対にしてもよいことは勿論である。
【0051】
【発明の効果】
以上の如く本発明によれば、請求項1の発明においては、一方側部材(1)と他方側部材(2)との中間で衝撃作用を緩和するようにバネとダンパとを設け、バネにはバネ作用をする第1一方側(31a)と第2一方側(31b)及び第1他方側(32a)と第2他方側(32b)を設け、ダンパには緩衝作用をする緩衝部一方側(41)及び緩衝部他方側(42)を設け、一方側部材及び他方側部材をそれぞれ緩衝部一方側及び緩衝部他方側に結合し、一方側部材の中間の側の面(1a)と31a、他方側部材の中間の側の面(2a)と32a、一方側部材の中間の反対側の面(1b)と(32b)、他方側部材の中間の反対側の面(2b)と31b、のそれぞれが接触するときにバネ部に目的とする設定圧縮力を発生させるように構成したので、例えば外部からの襲撃力によって2bが1bの側即ち圧縮方向に衝撃加速度をもって変位を受けると、1aと31aの間及び2aと32aの間が圧縮されて(1)の側には(2)の変位が直接伝達されず、(1)側に装着される例えば電子機器等に衝撃加速度がかかるのを防止することができる。
【0052】
設定圧縮力のかかっている初期状態で(2)が(1)の反対側に動く引っ張り力を受けると、1bと32bの間及び2bと31bの間が接触した状態で(1)と(2)の間が引っ張られ、結局直ちにバネ部が圧縮される。その結果、バネの予圧部分のストロークを経由することなく、直ちにバネによる緩衝作用を得ることができる。その結果、引っ張り時にも圧縮時と全く同じ作用効果を得ることができる。
【0053】
外部からの衝撃によって圧縮又引っ張りによって縮んだり伸びたバネに対しては、ダンパの41と42の間に引っ張り力や圧縮力が作用し、そのような力が41と42の間で減衰される。
【0054】
その結果、バネの設定圧縮力によって例えば大きな自重等の初期荷重を支持できること、バネを設定位置から直ちに圧縮方向又は引っ張り方向に作動させて両方向に即時に衝撃緩和作用をさせられること、これらの作用によって柔軟なバネの採用を可能にし、大きな衝撃力を含む広い周波数範囲の衝撃力を回避できること、このようなバネの作用に対してダンパの減衰力を組合せて衝撃による振動状態を早期に減衰消滅させられること、等の総合的効果を得ることができる。
【0055】
又、大きな初期荷重を設定できるので、一方側部材又は他方側部材の何れかで例えば電子機器等の耐衝撃性の要求される機器を全て支持でき、従来のように個々に防振装置を設ける場合に較べて、装置を簡素化し、小形軽量化し、信頼性を向上し、更に大幅なコスト低減を図ることができる。又、従来のバネとダンパとを二重に設けて甲板を支持する構造のものに較べても、装置の簡素化、小形化、信頼性の向上及びコスト低減を図ることができる。
【0056】
又、ダンパを、衝撃作用によって動く速さが一定の速さになるまでは速さが速くなるとそれに対応して大きくなる減衰力を発生させ速さが一定の速さを越えると大きくなる量が少なくなるように減衰力を発生させるように構成するので、衝撃による最大加速度が通常時よりも大幅に大きくなるときには、それによって一方側部材又は他方側部材が大きな速度で動くことなるが、そのような速い速度のときには速度に対応して大きくなる減衰力増加の程度を少なくするので、ダンパを介して例えば一方側部材の動きを他方側部材に直接的に伝達することがない。
【0057】
その結果、例えば水中爆発が起こったときのように、一方側部材に、短時間の極めて強い衝撃又はこれよりも十分長い時間である程度低下した衝撃のうちの何れの衝撃が加わった場合でも、これを他方側部材に伝えず、支持している電子機器等への衝撃を十分回避することができる。即ち、バネとダンパとのダブルバイリニアー特性の採用により、各種衝撃に良好に対応できる装置にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した衝撃緩和装置の機構を示す説明図である。
【図2】ガススプリングとオイルダンパを使用した上記装置の基本構成を示す説明図である。
【図3】上記装置の圧縮時の作用の説明図である。
【図4】(a)及び(b)は上記装置のバネ力及びダンパ抵抗の状態を示す説明図である。
【図5】上記装置の引っ張り時の作用の説明図である。
【図6】上記装置のダンパ特性の説明図である。
【図7】上記装置の装備される船体にかかることがある圧力波の一例を示す説明図である。
【図8】上記装置が大きな衝撃を受けたときのダンパ抵抗の説明図である。
【符号の説明】
1 支持部、一方側部材
1a 支持部の中間の側の面
1b 支持部の中間の反対側の面
2 取付部、他方側部材
2a 取付部の中間の側の面
2b 取付部の中間の反対側の面
3 バネ
4 ダンパ
31 ピストン、一方側
32 シリンダ、他方側
31a 軸端、第1一方側
31b 延長軸端、第2一方側
32a 後端、第1他方側
32b 延長部端、第2他方側
41 シリンダ、緩衝部一方側
42 ピストン、緩衝部他方側
Claims (1)
- 中間で衝撃作用を緩和するように設けられ水上又は水中を航行する船舶類の船体に取り付けられる一方側部材と甲板に取り付けられる他方側部材とを有する衝撃緩和装置において、
バネとダンパとを有し、
前記バネはガススプリングからなりバネ作用をするピストン及びシリンダからなるバネ部の一方側及び他方側であって第1一方側と第2一方側及び第1他方側と第2他方側を備え、
前記ダンパは緩衝作用をする緩衝部の両側に緩衝部一方側及び緩衝部他方側を備え前記衝撃作用によって動く速さが一定の速さになるまでは前記速さが速くなるとそれに対応して大きくなる減衰力を発生させ速さが前記一定の速さを越えると前記大きくなる量が少なくなるように前記減衰力を発生させるように構成されていて、
前記一方側部材と前記緩衝部一方側が結合され、
前記他方側部材と前記緩衝部他方側が結合され、
前記一方側部材の前記中間の側の面と前記第1一方側とが前記バネ作用をする方向に接離可能なように接触し前記他方側部材の前記中間の側の面と前記第1他方側とが前記のように接触し前記一方側部材の前記中間の反対側の面と前記第2他方側とが前記のように接触し前記他方側部材の前記中間の反対側の面と前記第2一方側とが前記のように接触するときに前記バネ部に前記甲板にかかる重量と前記船体の動揺によって付加される重量とに耐えるための目的とする設定圧縮力が生ずるように構成されている、
ことを特徴とする衝撃緩和装置。
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