JP3543940B2 - 回転ダンパ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、機器本体とこれに回転自在に支持された回転体との間に設けられ、回転体の一の位置側から他の位置側へ向っての急速回転を阻止する一方、他の位置側から一の位置側への急速回転を許容する回転ダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の回転ダンパとしては、特開平10−311359号公報に記載のものがある。この回転ダンパは、一端が開口した有底円筒状をなすケーシングと、このケーシングの開口側端部に回転自在に設けられたロータと、ケーシング内にその軸線方向へ移動自在に設けられ、ケーシングの底部とロータとの間の内部を第1の室と第2の室とに区分するピストンと、このピストンをロータに突き当てる付勢手段とを備えており、第1、第2の室には粘性体が充填されている。また、ロータとピストンとの互いに突き当たる端面にはカム部が形成されている。このカム部と付勢手段とにより、ピストンがロータの回転に追随してケーシングの軸線方向へ移動するようになっている。
【0003】
ロータが一方向へ回転してピストンが底部側へ移動するときには、第1の室内の粘性体がピストンに形成されたオリフィスを通って第2の室に流入する。したがって、このときにはロータの回転に対して大きな抵抗力が作用し、ロータの急速回転が阻止される。逆に、ロータが他方向へ回転してピストンがロータ側へ移動するときには、ピストンの外周に装着されたV形リングが第2の室内の粘性流体の圧力によって縮径される。その結果、ピストンの外周面とケーシングの内周面との間に形成された環状の連通部が開かれる。そして、第2の室内の粘性体が連通部を通って第1の室にほぼ自由に流入する。したがって、このときは、ロータは抵抗をほとんど受けることがなく、急速回転することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の回転ダンパにおいては、V形リングがピストンから外れないようにするために、ピストンの外周に環状の装着溝を形成し、その装着溝にV形リングを装着している。しかし、そのようにして装着する場合には、装着時にV形リング一旦拡径させなければならず、装着に多くの手間を要するという問題があった。また、V形リングの外径がケーシングの内径より大径であるため、V形リングが装着されたピストンをケーシングに挿入しにくいという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の問題を解決するために、一端部が開口し、他端部に底部を有する筒状のケーシングと、このケーシング内に回転自在に設けられたロータと、このロータと上記底部との間のケーシング内にその軸線方向へ移動可能に配置され、上記ケーシングの内部を上記底部側の第1の室と上記ロータ側の第2の室とに区画するピストンと、上記第1および第2の室に充填された粘性体と、上記第1の室と上記第2の室とを連通し、上記粘性体をほぼ抵抗なく流通させる連通部と、この連通部を開閉する弁体とを備え、上記ロータと上記ピストンとの間には、上記ロータの回転を上記ケーシングの軸線方向への上記ピストンの直線移動に変換する変換機構が設けられた回転ダンパにおいて、上記ケーシングが一端側に形成された円筒部と、他端側に形成され、両端部に互いに平行な一対の平坦部が形成された扁平筒部とを有し、上記ロータが上記円筒部に回転自在に嵌合され、上記ピストンが上記扁平筒部にその軸線方向へ摺動可能、かつ回転不能に嵌合され、上記弁体が上記第1室と上記第2の室とのいずれか一方の室内に上記ケーシングの軸線方向へ移動可能に設けられており、上記弁体は、上記連通部を一方向へ流れようとする粘性体によって同方向へ移動させられたときには上記連通部を閉じ、上記連通部を他方向へ流れようとする粘性体によって同方向へ移動させられたときには上記連通部を開くことを特徴としている。
この場合、上記ピストンの第1の室に臨む端面には突起が形成され、この突起に付勢手段が押圧接触することにより、ピストンの第1の室に臨む端面と上記付勢手段との間に隙間が形成され、この隙間の範囲内を上記弁体が移動可能であることが望ましい。
上記変換機構が、上記ピストンを上記第1の室から第2の室側へ付勢して上記ロータに押圧接触させる付勢手段と、上記ロータと上記ピストンとの接触面間に形成され、上記ロータの回転を上記ピストンの直線移動に変換するカム部とを有していることが望ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の望ましい実施の形態について図1〜図11を参照して説明する。
まず、図1〜図8に示すこの発明の第1の実施の形態について説明すると、図1〜図4に示すように、この実施の形態の回転ダンパAは、有底筒状をなすケーシング1とこのケーシング1に回転自在に挿入されたロータ2とを備えている。ケーシング1とロータ2とのいずれか一方が、便器本体等の機器本体に回転不能に連結され、他方が便座等の機器本体に回転自在に設けられた回転体に回転不能に連結される。そして、回転ダンパAは、回転体が一方向へ回転するとき、例えば便座が便器本体側へ回転するときには、大きな抵抗力を発生し、その急速回転を阻止する。回転体が他方向へ回転するときには、抵抗力をほとんど発生することがなく、回転体をほぼ自由に回転させる。
【0007】
上記ケーシング1は、図1〜図4および図5に示すように、一端部が円筒部11とされ、他端部が平行な平坦部12a,12aを有する扁平筒部12とされている。両筒部11,12は、互いの軸線を一致させて形成されている。円筒部11の開口部には、複数のスリット13が周方向に等間隔に配置形成されている。扁平筒部12は、機器本体または回転体に回転不能に連結されるものであり、全体が円筒部11と同一の断面形状をなす素材の端部を両側からプレスして平坦部12a、12aを形成することによって成形されている。扁平筒部12の円筒部11と逆側の端部には、ケーシング1全体の底となる底部14が形成されている。この底部14の中央部には、ケーシング11内に突出する断面円形の支持突出部15が形成されている。
【0008】
上記ロータ2は、図1〜図4および図6に示すように、軸線を互いに一致させて順次形成された連結軸部21、ロータ部22および小径軸部23を有している。連結軸部21の基端部(ロータ部22側の端部)は、ケーシング1の円筒部11の開口側端部に軸受3を介して回転自在に支持されている。連結軸部21の先端部は、ケーシング1から外部に突出しており、そこには互いに平行な二つの平坦面21a,21aが形成されている。この平坦面21a,21aが形成された連結軸部21の先端部に、機器本体または回転体が回転不能に連結される。ロータ部22は、円筒部11に回転自在に嵌合されている。小径軸部23の先端面中央部には、支持凹部23aが形成されており、この支持凹部23aには、支持突出部15が相対回転自在に嵌合されている。これにより、小径軸部23がケーシング1に回転自在に支持されている。そして、小径軸部23および連結軸部21がケーシング1に回転自在に支持されることにより、ロータ2全体がケーシング1に回転自在に支持されている。小径軸部23の先端部については、底部14に凹部を形成し、この凹部に回転自在に嵌合させることによって、ケーシング1に回転自在に支持させるようにしてもよい。
【0009】
なお、軸受3は、図4に示すように、その外周面に形成された突条31がスリット13にそれぞれ嵌め込まれることによって回り止めされている。しかも、軸受3は、ケーシング1に挿入された後、スリット13の中間部から先端側の円筒部11の先端部が径方向内側へ折り曲げて加締められることにより、ケーシング1から抜け止めされている。この軸受3にロータ部22が突き当たることにより、ロータ2も抜け止めされている。しかも、ロータ2は、支持突出部15の先端部が支持凹部23aの底面に突き当たることにより、図1の左方への移動も阻止されており、ほぼ位置固定されている。軸受3の外周面と円筒部11の内周面との間、および軸受3の内周面と連結軸部21の外周面との間は、Oリング等のシール部材S1,S2によって封止されている。
【0010】
図1〜図4に示すように、底部14とロータ部22との間のケーシング1の内部には、ピストン4が配置されている。このピストン4は、図7にも示すように、断面形状が扁平筒部12とほぼ同一である基部41を有しており、この基部41が扁平筒部12に摺動自在に嵌合されることにより、ケーシング1に対して回動不能に、かつ軸線方向へ移動可能になっている。ピストン4には、その中央部を貫通する貫通孔42が形成されている。この貫通孔42には、小径軸部23が挿通されている。貫通孔42の内径は小径軸部23の外径より大径であり、貫通孔42の内周面と小径軸部23の外周面との間には、環状の隙間が形成されている。この環状の隙間が後述する第1の室16と第2の室17とを連通する連通部43になっている。この連通部43の断面積は、粘性体をほとんど抵抗なく流すのに十分が大きさに設定されている。
【0011】
ケーシング1の内部にピストン4が配置されることにより、底部14とロータ部22との間のケーシング1の内部が、底部14側の第1の室16とロータ部22側の第2の室17とに区画されている。第1および第2の室16,17には粘性体(図示せず)が充填されている。また、第1、第2の室16、17内は、上記連通部43を介して連通されている。したがって、第1、第2の室16,17内の粘性体は、連通部43を通って互いに流入、流出することができる。
【0012】
なお、各室16,17内の粘性体は、扁平筒部12の内周面とピストン4の外周面との間の微小隙間、あるいは後述する弁体6の内周面と小径軸部23の外周面との間の微小隙間(この微小隙間を通る際には連通部43をも通ることになる)を通って僅かずつではあるが流通可能である。これは、オリフィスとして機能するものである。したがって、そのような微小隙間による流通に代えて、ピストン4またはケーシング1に第1の室16と第2の室17とを連通するオリフィスを形成してもよい。
【0013】
ピストン4は、それと底部14との間に配置されたコイルばね(付勢手段)5によって第1の室16側から第2の室17側へ向って付勢されており、ロータ部22の第1の室16に臨む端面に突き当たっている。ロータ部22に突き当たるピストン4の端面には、一対の突出部44,44が周方向に180°離れて配置形成されている。各突出部44には、カム面(カム部)が45が形成されている。一方、ロータ部22の第1の室16に臨む端面には、同様の突出部24,24およびカム面45,45に対応するカム面(カム部)25,25が形成されており、各カム面25,25がコイルばね5の付勢力によりカム面45,45にそれぞれ突き当てられている。
【0014】
カム面25,45は、ロータ2が一方向へ回転すると、ピストン4をコイルばね5の付勢力に抗して第2の室17側から第1の室16側へ移動させる。ロータ2が他方向へ回転すると、カム面25,45はピストン3が第1の室16側から第2の室17側へ移動するのを許容するようになり、コイルばね5がピストン4を第1の室16側から第2の室17側へ移動させる。これから明らかなように、カム面25,45およびコイルばね5によってロータ2の回転をピストン4の直線移動に変換する変換機構が構成されている。
なお、ロータ部22とピストン4との互いに突き当たる端面にカム面25,45をそれぞれ形成する必要はなく、いずれか一方の端面にのみカム面を形成し、他方の端面には一方の端面に形成されたカム面に押圧接触する突起を形成してもよい。
【0015】
ピストン4が第1の室16側へ移動すると、第1の室16の内部容積が減少し、第2の室17の内部容積が増大する。したがって、第1の室16内の粘性体が連通部43を通って第2の室17に向って流れるようとする。ただし、実際には、後述する弁体6によって連通部43が閉じられるので、第1の室16内の粘性体が連通部43を通って第2の室17へ流入することはない。ピストン4が第2の室17側へ移動すると、第2の室17内の粘性体が連通部43を通って第1の室16に流入する。
【0016】
上記第1の室16内には、ピストン4の第1の室16に臨む端面に対して接触離間することにより、上記連通部43を開閉する弁体6が配置されている。この弁体6のピストン4からの離間範囲は、コイルばね5によって規制されている。すなわち、図1〜図4および図7に示すように、ピストン4の第1の室16に臨む端面には、複数(この実施の形態では4個)の突起46が形成されている。各突起46は、ピストン4の周方向に互いに離れ、かつ貫通孔42から径方向外側に離れて配置されている。各突起46の先端面に上記コイルばね5が突き当たっている。したがって、ピストン4の端面とコイルばね5との間には、突起46の高さHに等しい間隙が形成されている。
【0017】
弁体6は、図1〜図4および図8に示すように、長さの短い断面円形の筒部61を有している。この筒部61の内径は、小径軸部23の外径とほぼ同一であり、小径軸部23に摺動自在に嵌合している。筒部61の外径は、ピストン4の貫通孔42の内径より小径であり、貫通孔42に環状の隙間をもって挿入されている。この隙間は、粘性体がほとんど抵抗を受けることなく流れることができるような大きさに設定されている。
【0018】
筒部61の外周の底部14側の端部には、これと直交する円板部62が形成されている。この円板部62の外径は、4つの突起46の内接円の直径とほぼ同一か若干小径に設定さている。したがって、円板部62は、4つの突起46の間に入り込んでピストン4の第1の室16に臨む端面に接触可能であり、接触した状態では連通部43を閉じる。その一方、円板部62がピストン4の端面から離れると、連通部43が開かれる。
【0019】
円板部62の外周面には、係合突起63が形成されている。各係合突起63は、周方向に隣接する二つの突起46,46の間に嵌り込むことができるような形状寸法に形成されている。しかも、各係合突起63は、弁体6がピストン4から離れて底部14側へ移動したとき、コイルばね5に突き当たるようになっている。したがって、弁体6の移動範囲は、ピストン4の端面とコイルばね5との間の範囲に規制されおり、弁体6の移動可能な距離は、突起46の高さHから円板部62の厚さ(=係合突起63の厚さ)Tを差し引いた距離になっている。このように、コイルばね5によって弁体6の移動範囲を規制すると、規制部材を別途設ける必要がなく、その分だけ回転ダンパAの製造費を低減することができる。
【0020】
上記構成の回転ダンパAにおいて、いま図1に示すように、ピストン4が最も第2の室17側に位置しているものとする。この状態からロータ2が一方向へ回転すると、ピストン4がコイルばね5の付勢力に抗して第2の室17側から第1の室16側へ移動する。すると、第1の室16内の粘性体が、弁体6とピストン4との間を通り、さらに連通部43を通って第2の室17に流れようとする。しかるに、第1の室16内の粘性体が第2の室17に流れ込もうとすると、弁体6が粘性体により第1の室16側から第2の室17側へ向って押され、図2および図3に示すように、ピストン4の第1の室16に臨む端面に突き当たる。これにより、連通部43が閉じられる。したがって、第1の室16内の粘性体は、連通部43を通ることができなくなり、ピストン4の外周面とケーシング1の内周面との間の微小隙間、および弁体6の内周面と小径軸部23の外周面との間の微小隙間を通ることになり、大きな流通抵抗を受ける。それにより、ロータ2に対する抵抗力が発生し、ロータ2は一方向への急速回転が阻止される。
【0021】
ピストン4が図3に示す最も第2の室17側へ移動した位置、あるいは図2に示す中間の位置に移動した状態において、ロータ2が他方向へ回転すると、ピストン4がコイルばね5の付勢力により第1の室16側から第2の室17側へ移動させられる。その結果、第2の室17内の粘性体が連通部43を通って第1の室16側へ流れるようとする。このときには、連通部43を通る粘性体により、弁体6が第1の室16側へ押され、ピストン4の端面から離れる。この結果、連通部43が開かれる。したがって、第2の室17内の粘性体は、連通部43、ピストン4の貫通孔42の内周面と弁体6の筒部61の外周面との間の隙間、ピストン4の端面と弁体6の円板部62との間の隙間、および円板部62の外周面(突起63の外周面)と扁平筒部12の内周面との間の隙間を通って第1の室16にほぼ自由に流入する。したがって、ロータ2はほとんど抵抗力を受けることなく他方向へ自由に急速回転することができる。
【0022】
また、上記構成の回転ダンパAを組み立てる場合には、ロータ2の小径軸部23にピストン4、弁体6およびスプリング5を順次外挿する。このとき、弁体6については、各係合突起63をピストン4の突起64,64間に嵌め込んでおく。また、ロータ2の連結軸部21に軸受3を外挿する。その後、ロータ2およびそれに組み付けられたピストン4、弁体6、スプリング5および軸受3をケーシング1に挿入する。軸受3は、ロータ2、ピストン4、弁体6およびスプリング5をケーシング1に挿入した後、ケーシング1に挿入すると同時に連結軸部21に外挿してもよい。その後、ケーシング1の開口側の端部を折り曲げて加締めることにより、組立を完了する。
【0023】
このように、回転ダンパAを組み立てるに際しては、弁体6を拡径させてピストン4の外周に外挿する必要がなく、弁体6ケーシング1に順次挿入するだけでよい。したがって、弁体6の装着に要していた手間を省くことができる。また、ピストン4は、その外周に弁体が装着されないので、ケーシング1に容易に挿入することができる。よって、回転ダンパA全体の組立を容易にかつ短時間で行うことができる。
【0024】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において上記実施の形態と同様な構成部分については同一符合を付してその説明を省略し、上記実施の形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0025】
図9および図10は、この発明の第2の実施の形態を示すものであり、この実施の形態の回転ダンパBにおいては、ピストン4のロータ部22側を向く端面に、平坦面48A,48Bが周方向へ180°離れて配置されている。平坦面48Bは平坦面48Aよりロータ部22側に配置されており、両平坦面48A,48B間には、平坦面48Aから平坦面48Bに向って上り勾配をなすカム面(カム部)47,47が形成されている。一方、ロータ部22の第1の室16に臨む端面にはカム面47,47に対応したカム面26,26が形成されている。
【0026】
この回転ダンパBにおいては、ピストン4が第2の室17側へ最も移動した状態からロータ2を回転させると、ロータ2を正逆いずれの方向へ回転した場合であっても、ピストン4が第2の室17側から第1の室16側へ移動する。したがって、ロータ2の急速回転が阻止される。逆に、ピストン4が第1の室16側へ最も移動した状態では、ロータ2を正逆いずれの方向へ回転させた場合であっても、ピストン4が第1の室16側から第2の室17側へ移動する。したがって、ロータ2はほとんど自由に回転することができる。よって、ロータ2を正逆いずれかの方向へ回転させ続けると、ロータ2が急速回転し得る状態と急速回転を阻止された状態とが180°毎に交互に現れることになる。
なお、弁体6の筒部61が第1の室16内を延びているが、上記実施の形態と同様に、第2の室17側へ向かって延ばし、弁体4の貫通孔42に挿入するようにしてもよい。
【0027】
図11は、この発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態の回転ダンパCにおいては、連結軸部21がケーシング1の円筒部11に直接回転自在に嵌合させられている。また、ケーシング1の支持突起15の外周面に雄ねじ部15aが形成されるとともに、ロータ2の支持凹部23aの内周面に雄ねじ部15aに螺合する雌ねじ部23bが形成されている。両ねじ部15a,23bが螺合されることにより、ロータ2がケーシング1から脱出不能に連結されている。したがって、この回転ダンパCにおいては、ロータ2を抜け止めするためにケーシング1の先端部を折り曲げて加締める必要がなく、その分だけ組み立て容易に行うことができる。
【0028】
なお、この回転ダンパCにおいては、仮にロータ2を正逆いずれかの方向へ回転させ続けると、ねじ部15a,23bが締め付けられてロータ2が回転し得なくなったり、ねじ部15a,23bが外れてロータ2がケーシング1から抜け出てしまう。しかし、通常、ロータ2はほぼ180°より小さい角度、例えば120°〜160°程度の角度範囲を正逆方向へ回転するだけであり、ねじ部15a,23bは、ロータ2がその程度回転しても締め付けられることがなく、かつ抜け出ることがないように余裕をもって螺合されている。したがって、そのような事態を招くことはない。
【0029】
図12および図13は、この発明の第4の実施の形態を示すものである。この実施の形態の回転ダンパDにおいては、ピストン4の第2の室17に臨む端面に、ガイド孔49が貫通孔42と同軸に形成されている。このガイド孔49には、単なるリング状をなす弁体6がガイド孔49の軸線方向へ移動可能に配置されている。勿論、弁体6の内周面は、ロータ2の小径軸部23に摺動自在に嵌合している。したがって、弁体6がガイド孔49の底面(ピストン4の端面)に突き当たると、連通部43が閉じられ、ガイド孔49の底面から離れると、連通部43が開かれて第1、第2の室16,17が連通する。ガイド孔49の開口部は、ピストン4に着脱可能に設けられたストッパ7によって閉じられている。このストッパ7によって弁体6がガイド孔49から抜け止めされている。また、ピストン4は、ストッパ7を介してコイルばね5に付勢されている。
【0030】
なお、この発明は上記の実施の形態に限定されるものでなく、適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、弁体6をピストン4に対して第1の室16側に配置しているが、第2の室17側に配置してもよい。
また、ピストン4の貫通孔42の内周面と、ロータ2の小径軸部23の外周面との間に形成された連通部43に代えて、ピストン4を貫通する孔を形成し、これを連通部としてもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の回転ダンパによれば、弁体およびピストンの組み付けに要する手間を最小限に抑えることができ、それによって回転ダンパの製造費を低減することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態についてピストンを第2の室側へ最も移動させた状態で示す断面図である。
【図2】同実施の形態についてピストンを第1の室と第2の室との中間に移動させた状態で示す断面図である。
【図3】同実施の形態についてピストンを第1の室側へ最も移動させた状態で示す断面図である。
【図4】同実施の形態を示す分解斜視図である。
【図5】同実施の形態において用いられているケーシングを示す図であって、図5(A)はその平面図、図5(B)はその正面図、図5(C)は図5(A)のC−C断面図、図5(D)は図5(B)のD矢視図、図5(E)は図5(C)のE−E断面図である。
【図6】同実施の形態において用いられているロータを示す図であって、図6(A)はその一部切欠き正面図、図6(B)はその側面図、図6(C)はその平面図、図6(D)はその底面図である。
【図7】同実施の形態において用いられているピストンを示す図であって、図7(A)はその正面図、図7(B)はその側面図、図7(C)はその平面図、図7(D)はその底面図である。
【図8】同実施の形態において用いられている弁体を示す図であって、図8(A)はその平面図、図8(B)はその正面図、図8(C)はその底面図である。
【図9】この発明の第2の実施の形態についてピストンを第2の室側へ最も移動させた状態で示す断面図である。
【図10】同実施の形態において用いられているピストンを示す斜視図である。
【図11】この発明の第3の実施の形態についてピストンを第2の室側へ最も移動させた状態で示す断面図である。
【図12】この発明の第4の実施の形態の要部についてピストンを第2の室側へ最も移動させた状態で示す断面図である。
【図13】同実施の形態において用いられているピストン、弁体およびストッパを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
A 回転ダンパ
B 回転ダンパ
C 回転ダンパ
D 回転ダンパ
1 ケーシング
2 ロータ
4 ピストン
5 コイルばね(付勢手段)
6 弁体
16 第1の室
17 第2の室
25 カム面(カム部)
26 カム面(カム部)
43 連通部
45 カム面(カム部)
46 突起
47 カム面(カム部)
Claims (3)
- 一端部が開口し、他端部に底部を有する筒状のケーシングと、このケーシング内に回転自在に設けられたロータと、このロータと上記底部との間のケーシング内にその軸線方向へ移動可能に配置され、上記ケーシングの内部を上記底部側の第1の室と上記ロータ側の第2の室とに区画するピストンと、上記第1および第2の室に充填された粘性体と、上記第1の室と上記第2の室とを連通し、上記粘性体をほぼ抵抗なく流通させる連通部と、この連通部を開閉する弁体とを備え、上記ロータと上記ピストンとの間には、上記ロータの回転を上記ケーシングの軸線方向への上記ピストンの直線移動に変換する変換機構が設けられた回転ダンパにおいて、
上記ケーシングが、一端側に形成された円筒部と、他端側に形成され、両側部に互いに平行な一対の平坦部が形成された扁平筒部とを有し、上記ロータが上記円筒部に回転自在に嵌合され、上記ピストンが上記扁平筒部にその軸線方向へ摺動可能、かつ回転不能に嵌合され、上記弁体が上記第1室と上記第2の室とのいずれか一方の室内に上記ケーシングの軸線方向へ移動可能に設けられており、上記弁体は、上記連通部を一方向へ流れようとする粘性体によって同方向へ移動させられたときには上記連通部を閉じ、上記連通部を他方向へ流れようとする粘性体によって同方向へ移動させられたときには上記連通部を開くことを特徴とする回転ダンパ。 - 上記ピストンの第1の室に臨む端面には突起が形成され、この突起に付勢手段が押圧接触することにより、ピストンの第1の室に臨む端面と上記付勢手段との間に隙間が形成され、この隙間の範囲内を上記弁体が移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の回転ダンパ。
- 上記変換機構が、上記ピストンを上記第1の室から第2の室側へ付勢して上記ロータに押圧接触させる付勢手段と、上記ロータと上記ピストンとの接触面間に形成され、上記ロータの回転を上記ピストンの直線移動に変換するカム部とを有していることを特徴とする請求項1または2に記載の回転ダンパ。
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