JP3543476B2 - 架橋共重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、架橋共重合体の製造方法及び得られた共重合体をベースとするアニオン交換樹脂の製造方法に関する。
特に、本発明は、特定の不純物の含有量の少ないハロアルキルスチレンと架橋剤との懸濁重合により得られた共重合体を常法によりアルキルアミンと反応させることにより、物理的強度且つ機械的強度に優れたアニオン交換樹脂を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アニオン交換樹脂は、例えば、ボイラー用水の脱塩、発電所における復水処理等の水処理分野、糖液精製、アミノ酸精製等の食品分野、抗生物質精製等の医薬分野、半導体製造用の超純水分野等広く各種の産業分野で用いられている。
最も一般的なアニオン交換樹脂の製造方法としては、スチレンとジビニルベンゼン等の架橋剤の架橋共重合体に、ルイス酸の存在下にクロロメチルメチルエーテルを反応させる等してハロアルキル化を行い、次いでアルキルアミンと反応させる方法がある(北条舒正編、キレート樹脂・イオン交換樹脂127〜206頁、講談社(1977))。また、この他にも、予めハロアルキル基が導入された置換スチレンと架橋剤との反応による架橋共重合体をアルキルアミンと反応させる方法もある。そして、この方法は、ハロアルキル基をスチレンのベンゼン環に定量的に導入できるため、一般にアニオン交換樹脂の交換容量を高くするには後者の方法が望ましい。
また、特開平4−349941号公報には、耐熱性アニオン交換体として炭素数3以上のアルキレンスペーサーを有する樹脂が提案されているが、かかる樹脂の製造にもハロアルキルスチレンが用いられることがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ハロアルキルスチレンを架橋剤と懸濁重合させて架橋共重合体を製造する場合、得られた共重合体中に液胞が生じることがある。そして、この液胞は、共重合体をアルキルアミンと反応させアニオン交換樹脂とした時にも、そのまま残存し、樹脂の物理的強度を低下させる。しかも、外観が不透明なアニオン交換樹脂はその商品価値も低くなるという問題もある。
本発明の課題は、ハロアルキルスチレンと架橋剤との懸濁重合の際に液胞のない共重合体を製造する方法及び得られた共重合体をベースとして物理的強度が高く且つ透明性の高いアニオン交換樹脂を製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ハロアルキルスチレンと架橋剤との懸濁重合の際に、ヒドロキシ(アルキル)スチレンを1重量%以上含むハロアルキルスチレンを用いると共重合体中に液胞が生成すること、そして、この不純物の含有量を1重量%未満に抑えることにより共重合体中の液胞の生成を抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表わされるモノビニル単量体の含有量が1重量%未満である下記一般式(II)で表わされるモノビニル単量体と不飽和二重結合を二個以上有する架橋性ポリビニル単量体とを、重合開始剤の存在下、水性媒体中で懸濁重合させることを特徴とする架橋共重合体の製造方法にある。
【0005】
【化3】
Figure 0003543476
【0006】
(式中、Aは炭素数0〜6の直鎖状、環状又は分岐状アルキレン基を表わす。)
【0007】
【化4】
Figure 0003543476
【0008】
(式中、Bは炭素数0〜6の直鎖状、環状又は分岐状アルキレン基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす。)
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の態様】
(1) 架橋重合体の製造
本発明に用いられるモノビニル単量体は、前記式(I)で表わされるモノビニル単量体の含有量が1重量%未満である前記式(II)で表わされるモノビニル単量体である。
式(I)で表わされる不純物としてのモノビニル単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、ヒドロキシエチルスチレン、ヒドロキシプロピルスチレン、ヒドロキシブチルスチレン等が挙げられる。
【0010】
また、式(II)で表わされるモノビニル単量体の具体例としては、例えば、クロロスチレン、ブロモスチレン等のハロスチレン、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン、クロロエチルスチレン、ブロモエチルスチレン、クロロプロピルスチレン、ブロモプロピルスチレン、クロロブチルスチレン、ブロモブチルスチレン等のハロアルキルスチレンが挙げられる。
この中、ハロアルキルスチレンが好ましく、イオン交換樹脂としての耐熱性の面からはクロロブチルスチレン等が好ましい。
【0011】
ヒドロキシアルキルスチレンは、ハロアルキルスチレンが加水分解されることによって生成する。また、ハロアルキルスチレンを合成する際、ハロゲノスチレンを出発原料とした場合、その加水分解物であるヒドロキシスチレンが不純物として含まれる可能性がある。従って、ヒドロキシ(アルキル)スチレンは、ハロアルキルスチレン中の不純物として含まれ易い化合物である。実際、市販のクロロメチルスチレン中にも、ヒドロキシメチルスチレンが不純物として含まれる場合が多い。
【0012】
本発明者等の検討の結果、ハロアルキルスチレンと架橋剤との懸濁重合法による共重合の際、ハロアルキルスチレンが不純物としてヒドロキシ(アルキル)スチレンを1重量%以上含むと架橋共重合体中に液胞が生成することが明らかとなった。即ち、前記共重合体中の液胞は、モノマー中にヒドロキシ(アルキル)スチレンが不純物として含まれていたため、懸濁重合の際の水性媒体中の水を重合体粒子内に取り込み生成したものと考えられる。
【0013】
共重合体中に液胞が存在すると、官能基化した際アニオン交換樹脂の物理的、機械的強度を下げ、また、アニオン交換樹脂の商品価値を下げる。本検討の結果、液胞の生成を抑えるためにハロアルキルスチレン中のヒドロキシ(アルキル)スチレンの含有率を1重量%未満、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下にすることが必要であることが判明した。
【0014】
ハロアルキルスチレン中のヒドロキシ(アルキル)スチレンの除去方法については単蒸留による方法、吸着剤の添加による方法が挙げられる。
蒸留によるヒドロキシ(アルキル)スチレンの除去は、ヒドロキシ(アルキル)スチレンとハロアルキルスチレンの沸点差によるものであり、沸点差が大きければ容易に行える。しかし、沸点差が小さい場合は、蒸留による除去は困難である。
【0015】
一方、吸着剤による除去は、ヒドロキシ(アルキル)スチレンを含むハロアルキルスチレン中に吸着剤を添加し、ヒドロキシ(アルキル)スチレンを吸着除去するものである。吸着剤としては種々のものが使用できるが、好ましくは、活性アルミナ、或いはシリカゲルが利用できる。活性アルミナ、シリカゲルは極性の高い化合物を選択的に吸着するため、ハロアルキルスチレン中のヒドロキシ(アルキル)スチレンを選択的に除去できる。
【0016】
吸着剤の添加量、吸着時間は、ヒドロキシ(アルキル)スチレンの含有量、吸着剤種によって異なるが、通常ヒドロキシ(アルキル)スチレンの含有量の10倍から20倍の重量の吸着剤を添加し、30分程度振盪させればよい。
蒸留、或いは吸着剤によりヒドロキシ(アルキル)スチレンを1.0重量%未満としたハロアルキルスチレンは、公知の方法によって懸濁重合法による架橋剤との共重合により、架橋共重合体を得ることが出来る。
【0017】
一般的な方法としては、モノマーと架橋剤を重合開始剤の存在下、水性媒体中、懸濁重合することによって得られる。架橋剤としては、不飽和二重結合を2個以上有する架橋性ポリビニル不飽和単量体を用いることができ、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンのようなポリビニルベンゼン、ジビニルトルエンのようなアルキルジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレートのような(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ビスビニルフェニルエタン等が挙げられ、好ましくはジビニルベンゼンが用いられる。架橋剤は、全単量体に対して、0.1から80重量%の範囲で添加する。好ましくは、0.5から10重量%添加する。
【0018】
重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル(BPO)、過酸化ラウロイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン(パーヘキサMc)等の過酸化物系重合開始剤、アゾイソブチロニトリル(AIBN)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤等が用いられる。その使用量は、全単量体に対して0.05〜3重量%である。
【0019】
重合温度は、重合開始剤の半減期温度、使用量、単量体の重合性等により異なるが、40℃〜150℃、好ましくは50℃〜100℃で使用される。重合時間は1時間から30時間、好ましくは1時間から15時間である。懸濁媒体としては水性媒体が用いられ、通常水が用いられるが、水には、キサンタンガム、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合物の加水分解物、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン等の分散剤を溶解させる。また、pHを適正に維持するためにアルカリやホウ酸塩等の各種の塩を添加してもよい。
モノマー溶液と懸濁媒体との比率(容積比)は、通常1/10から1/2である。懸濁媒体の比が小さくなりすぎると懸濁状態が不安定となり、逆にこの比が大きくなると生産性が低下するので、いずれも好ましくない。
【0020】
(2) アニオン交換樹脂の製造
以上のようにして得られる架橋共重合体は、公知の方法に従ってアルキルアミンと反応させ、アニオン交換樹脂を得ることができる。例えば、上記の架橋共重合体を溶媒中に懸濁し、一般式(III)
【0021】
【化5】
NR1 2 3 (III)
【0022】
(式中、R1 、R2 及びR3 は、それぞれ水素原子、アルキル基、又はアルカノール基を表わす。但し、R1 、R2 及びR3 が、同時に水素原子であることはない。)で表わされるアミンと反応させる方法が挙げられる。通常用いられるアミンとしてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。この反応の際に用いられる溶媒としては、例えば水、トルエン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジクロロエタン等が単独で、或いは混合して用いられる。
【0023】
イオン交換樹脂として使用する場合、用途によってアニオン交換樹脂の粒径は多少異なるが、その平均粒子径は100μmから2mmの範囲である。
本発明で得られたアニオン交換樹脂は、透明性の高い外観を持ち、商品価値が高いと共に、優れた押漬強度を有し、イオン交換樹脂としての長期使用に耐えることができる。「押漬強度」とは、個々の樹脂ビーズの破壊に必要な機械的荷重を約60回の試験の数平均として示したものであり、イオン交換樹脂の物理的強度を示す指標として一般に用いられるものである。本発明で得られたアニオン交換樹脂は、液胞の存在する従来法の樹脂よりも高い押漬強度を有している。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
参考例1 (4−クロロブチルスチレンの合成)
窒素ガス導入管、ジムロー冷却管、枝管付き等圧滴下ロート、撹拌羽根を備えた1000mlの分液ロート型四つ口フラスコに金属マグネシウム19.7g、メチラール36gを添加し溶液を5〜10℃に設定した。このフラスコに滴下ロートを用いてp−クロロメチルスチレン(CHS)115g、メチラール324gの混合溶液を内温が10℃以上にならないように2時間かけて滴下し、4−クロロブチルスチレンのグリニヤール試薬を得た。
【0025】
上記の反応器の下に、窒素ガス導入管、枝管付き等圧滴下ロート、撹拌羽根を備えた2000mlの四つ口フラスコを連結した。この中へ、ブロモクロロプロパン495g(4.0当量/CMS)、テトラヒドロフラン(THF)92g、カップリング触媒Li2 CuCl4 4.31g(2.5モル%/CMS)を加え、溶液を調製した。このフラスコに上記で調製したCMSのグリニヤール溶液を5〜10℃で1時間で滴下した。終了後、溶液を水にあけ、分液し、水相を除去した。有機相を減圧下で留去し、ブロモクロロプロパン、未反応のクロロメチルスチレンを留去し、4−クロロブチルスチレンを得た。
【0026】
この段階の4−クロロブチルスチレンの純度は91.5重量%であり副生成物としてヒドロキシメチルスチレン(HMS)を3.0重量%含んでいた。純度は、inertsil ODS−2(4.6×150mm)カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより評価した。検出は波長254nmのUV計を用い、メタノール/水混合液(80:20)を流速2ml/分で展開した。
この4−クロロブチルスチレンを更に単蒸留することにより、4−クロロブチルスチレン純度96.0重量%、HMS 0.4重量%の精製モノマーを得た。このモノマー溶液をlot 01とする。
また、このlot 01のモノマーにHMSを加え、HMS濃度を1.0重量%としたモノマーを調製した。このモノマー溶液をlot 02とする。
【0027】
実施例1
(共重合体の製造)
窒素導入管、冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコに3重量%ポリビニルアルコール溶液25ml、NaCl 5gを溶解させた脱塩水150mlに、参考例1で得られたモノマーlot 01 28.72g、80重量%ジビニルベンゼン1.28g、85重量%パーヘキサMc 0.39gの混合溶液を加え、160rpmで撹拌し懸濁液とした。室温で30分間撹拌後、85℃に昇温し、8時間撹拌した。重合後、ポリマーを取り出し、樹脂を水洗し透明球状の架橋共重合体を得た。この架橋重合体を減圧下50℃で6時間乾燥させた。
【0028】
(アニオン交換樹脂の製造)
200mlのオートクレーブ缶に室温下上記の樹脂10g、メタノール20ml、30%トリメチルアミン水溶液60mlを加え、密閉下80℃まで昇温し、6時間静置した。反応後、ポリマーを取り出し、十分水洗し、アニオン交換樹脂を得た。
このアニオン交換樹脂の押漬強度は590g/粒であった。
【0029】
比較例1
実施例1においてモノマーのlotを02に変えた以外、実施例1と同様の方法でアニオン交換樹脂を得た。このアニオン交換樹脂の押漬強度は360g/粒であった。HMSの含有量が1.0重量%となった系では、押漬強度が低下している。
実施例1及び比較例1の顕微鏡写真を図1及び図2に示す。写真より、比較例1の樹脂は、液胞があり、白濁、不透明であるのに対し、実施例1の樹脂は、液胞のない透明な樹脂であることが分る。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、ハロアルキルスチレンと架橋剤との懸濁重合による架橋共重合体の製造において、液胞のない共重合体を製造することができ、且つ得られた共重合体を常法によりアルキルアミンと反応させることにより、従来品よりも高い押漬強度を有し、その上透明性が高く、従って商品価値の高いアニオン交換樹脂を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたアニオン交換樹脂の粒子構造表面を示す顕微鏡写真(倍率36倍)である。
【図2】比較例1で得られたアニオン交換樹脂の粒子構造表面を示す顕微鏡写真(倍率36倍)である。

Claims (9)

  1. 下記一般式(I)で表わされるモノビニル単量体の含有量が1重量%未満である下記一般式(II)で表わされるモノビニル単量体と不飽和二重結合を二個以上有する架橋性ポリビニル単量体とを、重合開始剤の存在下、水性媒体中で懸濁重合させることを特徴とする架橋共重合体の製造方法。
    Figure 0003543476
    (式中、Aは炭素数0〜6の直鎖状、環状又は分岐状アルキレン基を表わす。)
    Figure 0003543476
    (式中、Bは炭素数0〜6の直鎖状、環状又は分岐状アルキレン基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす。)
  2. 原料として式(I)で表わされるモノビニル単量体の含有量が0.8重量%以下である式(II)で表わされるモノビニル単量体を用いる請求項1に記載の架橋共重合体の製造方法。
  3. 原料として、炭素数1〜6のハロアルキル基を有するスチレンを用いる請求項1又は2に記載の架橋共重合体の製造方法。
  4. 原料として、クロロブチルスチレンを用いる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の架橋共重合体の製造方法。
  5. 原料として、式(I)で表わされるモノビニル単量体の含有量を蒸留処理により1重量%未満とした式(II)で表わされるモノビニル単量体を用いる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の架橋共重合体の製造方法。
  6. 原料として、式(I)で表わされるモノビニル単量体の含有量を吸着処理により1重量%未満とした式(II)で表わされるモノビニル単量体を用いる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の架橋共重合体の製造方法。
  7. 吸着剤として、活性アルミナ又はシリカゲルを用いる請求項6に記載の架橋共重合体の製造方法。
  8. 上記架橋性ポリビニル単量体が全モノビニル単量体に対して0.1〜80重量%である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の架橋共重合体の製造方法。
  9. 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法で得られた架橋共重合体とアルキルアミンとの反応によるアニオン交換樹脂の製造方法。
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