JP3542759B2 - 座部の高さ調整可能な車椅子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、座部の高さを調節できる車椅子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車椅子使用者が車椅子に座ったまま、リフト等によってワンボックスカーに乗り込むことができれば、車椅子使用者及び介護者の労力が省ける。
しかし、現状の一般のワンボックスカーでは、使用者を車椅子に座らせたまま、ワンボックスカーに載せると、使用者の頭がワンボックスカーの天井に当たってしまう。
ワンボックスカーの天井を高くすることは、ホディサイズのランクアップにより自動車税の負担増を招来する。
車椅子の座部を低くすることは、手回しホイールの操作性、足載せ台との関係上、大きな制約を受けるため、実現できない。
【0003】
図6、図7は、上記問題を解決できる手かがりとなる座部(60)の高さが調節できる車椅子である(実用新案登録第3065317号)。
これは、座部(60)を支持した4節リンク(9)の上リンク板(91)の後方延長部を、後車輪(7)と同心に設けた手回し駆動板(90)の偏心位置に枢軸(92)にて連結し、前リンク板(93)の下向き延長部に前車輪(8)を具えている。
4節リンク(9)の対角には前車輪(8)を後方に引っ張る方向にバネ(94)が張設されている。
【0004】
使用者が駆動板(90)を回すことによって枢軸(92)の位置を変えることができ、図6の如く、枢軸(92)の位置が高いとき、平行リンク(6)が起立状態となって、座部(60)の位置も高くなり、図7に示す如く、枢軸(92)の位置が低いとき、平行リンク(6)が扁平に畳まれ、座部(60)の位置も低くなるとしている。
従って、車椅子を道路上で使用する時は座部(60)を高くし、使用者を座らせたままワンボックスカーへ載せるときは座部(60)を低くすることによって、前記問題は解消されそうである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記高さ調節可能な車椅子は、枢軸(92)の位置をどの様にして所望の高さ位置に保持するのかは不明である。又、座部昇降用の駆動板(90)とは別個に、後車輪(7)を回転駆動するための手回しホィールが必要であり、この手回しホィールを駆動板の外側或いは内側に設けると、車椅子の全幅が大きくなり過ぎて、幅狭の通路では使用できない等、走行に支障を来す。
本発明は、上記問題を一挙に解決できる車椅子を明らかにするものである。
【0006】
【課題を解決する手段】
本発明は、主フレーム(1)の前部と後部に一対の支持軸(2)(3)を互いに平行配備し、前部の支持軸(2)上に、第1レバー(21)、第2レバー(22)及び第3レバー(23)を一体に回転可能に支持し、後部の支持軸(3)上に第1レバー(31)及び第2レバー(32)を一体に回転可能に支持し、前後の第1レバー(21)(31)の自由端を、座部(60)を具えた可動フレーム(6)に枢支連結し、前後の第2レバー(22)(32)の自由端側間をリンク(4)で枢支連結し、第3レバー(23)と主フレーム(1)の後部をロック機能を具えたガススプリング(5)で枢支連結し、該ガススプリング(5)には、遠隔操作によって該ガススプリング(5)のプッシュロッド(51)を突き込んでガススプリング(5)の長さ保持のロックを解除するロック解除手段(56)を連繋して構成されている。
【0007】
【作用及び効果】
車椅子で道路を移動する際には、車椅子の可動フレーム(6)、即ち座部(60)を高くした状態で使用する。
通常の車椅子と同じ様に使用者が手回しホィール(71)を回して走行できる。
使用者を車椅子に載せたまま、ワンボックスカーに載せるには、先ず介護者が遠隔操作によってガススプリング(5)のロックを解除する。使用者の体重がガススプリング(5)を縮める様に作用してガススプリング(5)は縮む。
ガススプリング(5)が縮むと、前部の第1レバー(21)、第2レバー(22)、第3レバー(23)が可動フレーム(6)を下げる方向に回転し、該第2レバー(22)にリンクで連結された後部の第2レバー(32)及び該レバーと同軸の第1レバー(31)も回転し、可動フレーム(6)即ち座部(60)は下がる。
上記状態で使用者を載せたまま車椅子をワンボックスカーに載せても、使用者の頭がワンボックスカーの天井に当たることはない。
【0008】
目的地に到着すれば、使用者を載せたまま車椅子をワンボックスカーから下ろし、介護者がガススプリング(5)のロックを解除し、可動フレーム(6)を引き上げる方向に力を加える。ガススプリング(5)のガス圧と、介護者の引き上げ力によって可動フレーム(6)が持ち上がり、座部(60)は元の高さに復帰する。
【0009】
上記の如く、車椅子を道路上で使用する時は座部(60)を高くして、使用者が手回しホィール(71)を回転操作し易くでき、又、車椅子ごとワンボックスカーに乗り込むときは、車椅子の座部(60)を低くして、ワンボックスカーの天井に頭が当たらぬ様にできる。
又、過去に提案された高さ調節可能な車椅子の様に、手回しホィールの外、又は内側に、高低操作用の駆動板を設けることによって、車椅子全体の幅長さが大きくなる問題は生じない。
【0010】
【発明の実施の形態】
図3に示す如く、車椅子の主フレーム(1)は、2本の平行サイド杆(11)(11)の前部間と後部間を前ステー(12)(13)で連結して枠状に形成されている。
主フレーム(1)の両サイド杆(11)(11)の前部と後部に前支持片(14)(14)と後支持片(15)(15)を夫々上向きに突設し、両後支持片(15)(15)に主フレーム(1)の外側に位置して後車輪(7)(7)を枢軸(70)(70)にて支持している。
後車輪(7)(7)の外側には該後車輪(7)と一体に回転する手回しホィール(71)が取り付けられている。
【0011】
主フレーム(1)のサイド杆(11)(11)の前端には、キャスター式の前車輪(8)(8)が設けられ、前車輪(8)と後車輪(7)が地面に接地することにより、主フレーム(1)は地面と略平行となる。
主フレーム(1)上に、座部(60)を具えた可動フレーム(6)を昇降可能に配備する。
【0012】
可動フレーム(6)は、主フレーム(1)のサイド杆(11)(11)と平行な2本のサイド杆(61)(61)を2本のステー(69)(69)にて連結して形成され、サイド杆(11)(11)に跨って座部(60)が取り付けられている。
可動フレーム(6)の各サイド杆(61)(61)は前部に下向き延長部(62)、後部に上向き延長部(63)を有し、下向き延長部(62)(62)の先端部に折り畳み式の足載せ台(66)(66)を備え、上向き延長部(63)(63)に跨って背凭れ(65)を設けている。
【0013】
サイド杆(61)(61)の上向き延長部(63)(63)の先端は介護者が車椅子を押すための取手(64)(64)となっている。
各サイド杆(61)に肘掛け杆(67)が設けられ、肘掛け杆(67)上にアームレスト(68)が固定されている。
サイド杆(61)(61)の前後に短い脚片(61a)(61b)、(61a)(61b)が下向きに突設されている。
前後の脚片(61a)(61b)間の距離は、前記主フレーム(1)の前後の前支持片(14)(15)間の距離とほぼ同じである。
【0014】
主フレーム(1)に対する可動フレーム(6)の昇降機構は下記の如く構成される。図1に示す様に座部(60)が上昇した状態において、昇降機構の構成を説明する。
主フレーム(1)の前記前支持片(14)(14)及びサイド杆(11)(11)の後部間にサイド杆(11)と直交して支持軸(2)(3)を回転可能に支持し、図3に示す如く、支持軸(2)(3)の夫々端部に第1レバー(21)(21)、(31)(31)を軸(2)(3)に直交し軸(2)(3)と一体回転可能に突設している。
前側の第1レバー(21)よりも後側の第1レバー(31)の方が長い。
【0015】
上記第1レバー(21)(21)、(31)(31)は、先端を少し斜め上向きにして前方を向いており、該先端を夫々前記可動フレーム(6)の前後の脚片(61a)(61a)、(61b)(61b)に枢軸(21a)(31a)によって枢支連結している。
前側の第1レバー(21)の枢軸(21a)は長孔(61b)に嵌まっており、前後に少し動き得る余裕がある。
【0016】
支持軸(2)の中央部に、1つの第2レバー(22)と2つの第3レバー(23)(23)が先端を少し前方に傾けて下向きに突設されている。
第2レバー(22)と第3レバー(23)の位相は同じで、第2レバー(22)よりも第3レバー(23)の方が長い。
後側の支持軸(3)の中央部に、2本の第2レバー(32)(32)が、先端を少し下向きにして前方に突設されている。
前側の第2レバー(22)と後側の第2レバー(32)は同程度の長さであり、両レバー(22)(32)の先端をリンク(4)で枢支連結している。
【0017】
主フレーム(1)の後ステー(13)の中央部に突片(16)(16)を下向きに突設し、該突片(16)と前側の第3レバー(23)とをロック機能を具えたガススプリング(5)にて枢支連結している。
ガススプリングは、事務椅子の高さ調節用、医療ベッドの傾斜角度調節用等に使用されて公知のものであって、実施例では図5に示すガスオイルタイプのものを用いた。
ガススプリング(5)は、スプール弁(54)によって第1オイル室(52)と第2オイル室(53)のオイルの流通を遮断してロック状態となり、ガススプリング(5)の長さが固定される。
【0018】
プッシュロッド(51)を押し込むと、スプール弁(54)が第1オイル室(52)側に移動して、第1オイル室(52)と第2オイル室(53)間の流通が許され、ロックが解除され、ガス室(50)のガス圧によりピストン(55)が押され、ピストンロッド(55a)が伸びる。但し、ピストンロッ(55a)にガス圧よりも強い押し込み力が作用するとピストンロッド(55a)は縮む。
プッシュロッド(51)の押圧を解除するとガス圧力によってスプール弁(54)が閉じられて再びロック状態となる。
【0019】
上記ガススプリング(5)に、ロック解除手段(56)が連繋される。
ロック解除手段(56)は、ガススプリング(5)の取り付けブラケット(56a)に外部入力ロッド(57)をプッシュロッド(51)の先端に対向してスライド可能に配備し、
前記車椅子の取手(64)に設けた操作レバー(59)と外部入力ロッド(57)とを遠隔操縦索(58)にて連繋して構成される。
取手(64)と操作レバー(59)を一緒に握り、バネ(図示せず)に抗して操作レバー(59)を取手(64)に引っ張ると、外部入力ロッド(57)が前進してプッシュロッド(51)を押し込み、ガススプリング(5)のロックを解除できる。
操作レバー(59)を開放すると、外部入力ロッド(57)が後退してガススプリング(5)はロック状態に復帰する。
【0020】
然して、車椅子で道路を移動する際には、図1に示す如く、車椅子の座部(60)を高くした状態で使用する。
通常の車椅子と同じ様に使用者が手回しホィール(71)を回して走行できる。
介護者が車椅子を押す場合も、取手(64)(34)の位置が高いため、無理なく押すことができる。
【0021】
使用者を車椅子に載せたまま、ワンボックスカーに載せるには、先ず介護者がロック解除手段(56)を操作してガススプリング(5)のロックを解除する。車椅子使用者の体重がガススプリング(5)を縮める様に作用するためガススプリング(5)は縮む。
ガススプリング(5)が縮むと、図1の状態から前部の第1レバー(21)、第2レバー(22)、第3レバー(23)が座部(60)を下げる方向、図面では反時計方向に回転し、該第2レバー(22)にリンクで連結された後部の第2レバー(32)及び該レバーと同軸の第1レバー(31)も回転し、可動フレーム(6)は下がる。
【0022】
後部の第1レバー(31)は、前部の第1レバー(21)よりも長く、回動角度が同じであっても、後部の第1レバー(31)の上下動幅は、前部の第1レバー(21)の上下よりも大きいため、可動フレーム(6)は後方の下向き傾斜を大きくして下がる。
可動フレーム(6)上の座部(60)に座っている使用者は、後方へ大きく凭れた姿勢となり、使用者の頭の位置は一層低くなる。
上記状態で使用者を載せたまま車椅子をワンボックスカーに載せても、使用者の頭がワンボックスカーの天井に当たることはない。
【0023】
目的地に到着すれば、使用者を載せたまま車椅子をワンボックスカーから下ろし、介護者がロック解除手段(56)によってガススプリング(5)のロックを解除し、座部(60)の可動フレーム(6)を引き上げる方向に力を加える。ガススプリング(5)のガス圧と、介護者の引き上げ力によって座部(60)が持ち上がり、元の高さに復帰する。
【0024】上記の如く、車椅子を道路上で使用する時は座部(60)を高くして、使用者が手回しホィール(71)を回転操作し易くでき、又、車椅子ごとワンボックスカーに乗り込むときは、車椅子の座部(60)を低くして、ワンボックスカーの天井に頭が当たらぬ様にできる。
又、過去に提案された図6、図7の高さ調節可能な車椅子の様に、手回しホィールの外、又は内側に、高低操作用の駆動板を設けることによって、車椅子全体の幅長さが大きくなる問題は生じない。
更に、ガススプリング(5)は、任意の長さにロックできるため、座部(60)の高さを使用者の好みに応じて調節できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】座部を高くした状態の車椅子の概略側面図である。
【図2】座部を低くして状態の車椅子の概略側面図である。
【図3】座部を省略した車椅子の概略平面図である。
【図4】車椅子の概略正面図である。
【図5】ガススプリングの断面図である。
【図6】従来例の座部を高くした状態の車椅子の側面図である。
【図7】来例の座部を低くした高くした状態の車椅子の側面図である。
【符号の説明】
(1) 主フレーム
(2) 支持軸
(21) 第1レバー
(22) 第2レバー
(23) 第3レバー
(3) 支持軸
(31) 第1レバー
(32) 第2レバー
(4) リンク
(5) ガススプリング
(56) ロック解除手
(6) 可動フレーム
(60) 座部

Claims (2)

  1. 主フレーム(1)の後部両側に大径後車輪(7)(7)、前部に小径前車輪(8)(8)を支持し、座部(60)具えた可動フレーム(6)の高さ調整可能な車椅子であって、主フレーム(1)の前部と後部に一対の支持軸(2)(3)を互いに平行配備し、前部の支持軸(2)上に、第1レバー(21)、第2レバー(22)及び第3レバー(23)を一体に回転可能に支持し、後部の支持軸(3)上に第1レバー(31)及び第2レバー(32)を一体に回転可能に支持し、前後の第1レバー(21)(31)の自由端を可動フレーム(6)に枢支連結し、前後の第2レバー(22)(32)の自由端側間をリンク(4)で枢支連結し、第3レバー(23)と主フレーム(1)の後部をロック機能を具えたガススプリング(5)で枢支連結し、該ガススプリング(5)には、遠隔操作によって該ガススプリング(5)のプッシュロッド(51)を突き込んでガススプリング(5)の長さ保持のロックを解除するロック解除手段(56)を連繋して構成されており、ガススプリング(5)が伸びると、前部の第1レバー(21)、第2レバー(22)、第3レバー(23)が可動フレーム(6)を持ち上げる方向に回転し、該第2レバー(22)にリンクで連結された後部の第2レバー(32)及び該レバーと同軸の第1レバー(31)が可動フレーム(6)を持ち上げる方向に回転し、ガススプリング(5)が縮むと、上記とは逆方向に各レバー(21)(22)(23)(31)(32)が回転して可動フレーム(6)が下降し、前部と後部のレバー比により、可動フレーム ( ) は上昇位置から下降位置へ移動するに伴って徐々に背凭れ (65) 側が後傾し、座部 (60) は前部より後部の昇降量が大である車椅子。
  2. 支持軸(2)(3)と一体回転可能に各レバー(21)(22)(23)、(31)(32)が突設され、支持軸(2)(3)が主フレーム(1)に回転可能に支持されている請求項1に記載の車椅子。
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