JP3542082B2 - 舞茸栽培装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は舞茸の栽培装置に関し、詳細には、瓶形容器あるいは円筒状容器を用いた舞茸専用栽培容器におけるキャップの新規な構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本願の発明者は、先に特開2001−169660号に記載されているような舞茸栽培装置を提案している。この様な従来公知の舞茸栽培用容器について図4及び図5によって概略を説明する。
例えばポリエチレン等により成型されたキノコ類栽培用の容器B内には、培養基Aが充填され、容器Bの口部にはキャップCが設けられている。そして、培養基Aに舞茸の菌を植付けた後、室温約18〜25℃、湿度70〜80%の室内で生育させることによって、培養基Aの表面に形成された原基からキノコが生長を開始する。
【0003】
この様な生育過程において、例えば広葉樹のオガクズに米糠、フスマ、コーン、オカラ等を混合した一般的な培養基Aは、発酵のために約25℃となり、詰込水分量は約63〜68%を必要とすると共に、発熱と蒸散を伴うと同時に炭酸ガスを発生し、一方で、外部より酸素の供給を必要とするものである。このために、後述するごとくキャップCの一部にはフィルターFを有し、水蒸気や酸素、炭酸ガスの移動を自由にしている。
【0004】
本発明者は、舞茸の栽培においてはなるべく一個所の芽、すなわち一個所に集中した原基から一個の子実体を生育させることが舞茸の増収につながることを見出し、更にこの様な原基の集中的発生は、培養基の表面部分の微妙な湿度バランスの中で、その最適位置に生ずることを見出し、上述のような舞茸栽培容器を提案している。
また、このような舞茸栽培容器によって、容器内への培養基Aの充填、舞茸菌の植付け、最適期におけるキャップの取り外し、温度及び湿度管理、舞茸の収穫等を自動化するための最適な構造の舞茸栽培装置を研究している。
【0005】
図4及び図5は、上記従来例に係るキャップCを用いた、キャップ構造及び舞茸子実体の生長状況をを示している。
従来例にあっては図4に示すようなキャップCを、図5に示すように容器Bの開口部に被嵌させる。キャップCを構成するキャップ本体20は、図4(イ)〜(ハ)から明らかな様に、外周筒部21によって容器の口部に嵌挿されるキャップ本体20の、蓋部22の上方に通気空所である小部屋24を有している。
すなわち、通常の蓋部22の一側上方に平面視略矩形の小部屋24を形成し、本来の開口23は、該小部屋24の上方に傾斜して設けられた屋根部25に開口されている。そして、この場合の開口23は例えば円形穴としている。フィルターFは該屋根部25の上面に貼着又は挾着することとし、該開口23の全面を覆っている。従って、図示実施例の場合にはフィルターの通気口部F0が開口23と同一形状の円形とされている。
【0006】
図5から明らかなように、傾斜した屋根部25に設けられた開口23からフィルターFを介して、炭酸ガス、水蒸気等が矢印方向に排出されると同時に、容器外から必要な酸素が供給される。この場合、容器B内は発酵すると温度がより上昇すると共に水蒸気も多く発生するが、上記開口部23を有する小部屋24の内壁面が垂直であるために水蒸気の上昇が容易となり、該小部屋内部の特に培養基Aの表面での面的湿度勾配が発生し難い構造となっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のごとき舞茸栽培容器におけるキャップ構造は、その小部屋部分の構造が複雑であって、製造工程にやや困難な点があるのみならず、小部屋内における湿度分布が一定し、小部屋内が全体的に乾燥する傾向にあった。その理由は、小部屋部分を形成する側壁が垂直状であって、小部屋部分の下方から発生した水蒸気がそのまま上方のフィルター口を通して蒸散するためで、このため、芽の誘導及び発育の初期における最も重要な時期に、発育に最適な湿度状態を保存することが可成り困難である欠点を有していた。
【0008】
また、小部屋部分がキャップCの周縁部に設けられ、小部屋の側壁が垂直であるために、キャップの構造が複雑となる問題点も有していた。
更に、このような小部屋の内壁面が垂直な構造のキャップCを用いる場合、舞茸の子実体(芽)が大きく生長して該小部屋内を満たし、該キャップCを容器Bの口部から取り外す時点で、小部屋の内壁面に接触した子実体をキャップと一緒に取り去ってしまう頻度が高く、舞茸栽培の機械化の障害となっていた。
そこで、本発明はこの様な小部屋部分の構造を更に改良することで、キャップ自体の製造を容易にすると同時に、小部屋内での湿度の分布状態を改良することによって、該小部屋内のやや外周寄りに、常に最適湿度域を容易に形成することができ、これによって舞茸栽培における芽の発育時における成育環境を向上させ、集中した一個の子実体を容易に形成させることを目的とした舞茸栽培装置を提供するものである。
そして、容器内への培養基の充填から舞茸の収穫までの一連の作業を、全て機械化するために便利な構造の舞茸栽培装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は培養基を収容する剛性のある容器と、該容器の口部に被嵌されるキャップとで構成される舞茸栽培装置であって、該キャップの上部中央に小部屋を有し、該小部屋の形状が略円錐台形であって、該小部屋の頂面に開口を有し、該開口はフィルターで覆われていることを特徴とするものである。
また、上記キャップの上部面と上記小部屋の傾斜側面とのなす角度が約30°〜70°とし、小部屋の頂面開口を覆うフィルターは、フィルター押えリングにより係止することができる舞茸栽培装置である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1乃至図3によって説明する。
図1は、本発明に係るキャップCを用いた舞茸栽培容器における、舞茸子実体の発芽状態を示している。従来同様の瓶等の容器B内には、通常の培養基Aが充填され、容器Bの口部には本発明に特有の構造を有するキャップCが嵌挿されている。そして、培養基Aの表面に植付けられた舞茸菌は増殖を続け、該表面全体に生じたマット状の原基Dが盛り上り、特にその湿度状態が最適な位置において子実体を形成するべく発育する。
【0011】
図2は、上記本発明にかかるキャップC部分の好適な形状を示す、一部断面を含む側面図(イ)及び平面図(ロ)である。キャップ本体10は、その本来の蓋部の外周に必要に応じてフランジ部をもつ蓋部12と、その下方には容器Bの口部を被嵌する外周筒部11を有し、該蓋部12の上方に円錐台形の小部屋13を有している。
【0012】
小部屋13の上部には屋根部14があり、この屋根部14の中央に円形の通気孔15が開口している。また、該屋根部14の上方にはこれと一体的に形成された筒状部である、フィルター装着部16が形成され、該フィルター装着部16には通常の水蒸気や炭酸ガス、酸素などの透過を許容するフィルターを装着することにより、雑菌の侵入を防止している。
【0013】
小部屋13を含むキャップ本体10の構造が本発明の最も特徴的構成であって、蓋部12が形成する水平面と小部屋13を形成する壁面13aとのなす角αが約30°〜70°であり、しかも該小部屋13は蓋部12の中央に形成された円錐台形であって、その頂部である屋根部14の中央には通気孔15が形成されている。
また、屋根部14の上方であって上記通気孔15を囲むように設けられたフィルター装着部16は、該通気孔15の外径より少し大きな円筒壁により、フィルターFを装着するための凹部を形成している。
【0014】
符号30で示すフィルター押えは、全体としてリング状をしており、上記フィルター装着部16の凹部に嵌入するように筒状部32を有し、その上方にはフィルター装着部16の円筒壁上端によって係止される外向きフランジ33と、同じく筒状部32の下方に一体的に続く内向きフランジ31とよりなっており、該内向きフランジ31によってフィルターFを、通気孔15を覆うように屋根部14の上面に挾圧可能である。
【0015】
上記フィルター押え30の下部内向きフランジ31には開口34が設けられており、該開口34の内径は屋根部14に設けられた通気孔15の内径よりもやや大きいことが望ましい。そして、この発明におけるフィルターFは屋根部14の上面であってフィルター装着部16の凹部内に接着固定することが出来るが、上記フィルター押え30の単独で挾圧固定することも、これらを併用することも可能である。
【0016】
図3には、本発明に係る舞茸栽培装置における特にキャップの特徴的構造と、これにより良好に成長を開始する子実体Eとの関係を示している。図2において説明するように、キャップCの蓋部12上方に設けた小部屋13は、その円錐状側壁13aと蓋部12の面とのなす角度αが30°〜70°とされており、培養基Aの上表面より発生する水蒸気はそのまま上方に向って立ち昇る。このとき、上記小部屋13は全体で円錐台形の構成を有しており、円錐状側壁13aが、30°〜70°の角度で内方に傾斜しているために、該小部屋内下部に一率に発生した水蒸気は、傾斜した側壁部分によって内方に収束させられることとなる。
この結果として、本発明のごときキャップを用いる場合には、容器Bの開口部又はキャップCの小部屋13下方部において、培養基Aの表面における各部位の湿度は、その外周部が中心部より高湿度の状態となる。すなわち、原基Aの上表面において、その中心部から外周部に向けて湿度が高くなる、面的湿度勾配が発生することとなる。
【0017】
この為に、通常は容器内の詰込み水分量を約63〜68%に設定し、培養室内の湿度を70〜80%に管理する栽培環境において、上記小部屋13内の湿度がその外周域においてより高い状態で維持され、このために、該湿度のより高い外周部内から中心部、すなわち通気孔15又はフィルターFの直下域に渡るいずれかの部位で、常に最適の湿度域を形成することが出来るものである。
【0018】
このようにして、舞茸栽培室内における管理湿度の多少の変動(70〜80%の範囲)にもかかわらず、培養基A表面に発生した原基Dの特定部位(最適湿度域)において、子実体Eが極めて良好に成長することを可能としている。そして、このようにして一点に集中した子実体Eは、その初期において該小部屋13内に成長を続け、キャップ取り外し後は該子実体Eからより大形の舞茸を収穫することが可能となったものである。
【0019】
次に、上記小部屋13を形成する円錐状側壁13aからなる、略円錐台形の小屋部を有するキャップ構造について説明する。
図1及び図3から明らかなように、増殖を開始した舞茸菌は次第に培養基Aの表面全体にマット状の原基Dを盛り上げ、その一部に子実体Eを生長させる。そして、この子実体Eが更に生長を続けると、例えば図3において子実体EがキャップCの小部屋13の内壁部に密着して、該小部屋13内部一杯になるけれども、通常その寸前にキャップCを栽培容器Bより抜き取ることによって舞茸の生長を促すものである。
【0020】
この様なキャップCの抜き取り時において、上記小部屋13内に生長した子実体がキャップに密着しているけれども、本願発明の上記略円錐台形を有する小部屋13にあっては、生長した子実体に無理な横方向の力が掛かることがないので、該子実体を傷付けることなく容易にキャップを抜き取ることができるものである。
すなわち、小部屋13に円錐状側壁13aを採用することにより、キャップ抜き取り時の子実体へのダメージを回避することによって、キャップ抜き取り作業をも機械化することに成功したのである。
【0021】
【発明の効果】
本発明は上述のごとく、キャップ本体と一体に形成された小屋部の形状を略円錐台形としており、かつキャップ本体の中央部に形成しているために、キャップの構造が単純化され、その製造が容易となった。
また、中央部分に円錐台形の小屋部を設けたことにより、該小屋部内に子実体の発生に極めて良好な湿度域を容易にかつ確実に形成できることとなり、舞茸栽培における湿度管理を容易にすることができた。
そして、キャップ抜き取り時における小部屋と子実体との離脱が容易となり、子実体に与えるダメージを軽減できるので、キャップ抜き取り作業を含む全栽培工程において機械が可能となった。
更に、キャップの中央部に位置する通気孔に対する、フィルターの装着が容易となると共に、フィルター押えリングを用いることで、フィルター装着の作業性も向上できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の舞茸栽培装置の概略説明図である。
【図2】キャップ構造の断面図及び平面図である。
【図3】本発明のキャップ構造に係る作用説明図である。
【図4】従来公知のキャップ構造の平面図、底面図及び断面図である。
【図5】図4に示すキャップ構造を有する舞茸栽培装置による生育状態説明図である。
【符号の説明】
10 キャップ本体
12 蓋部
13 小部屋
13a 壁面
14 屋根部
15 通気孔
16 フィルター装着部
30 フィルター押え
34 開口
A 培養基
B 容器
C キャップ
D 原基
E 子実体
F フィルター
Claims (3)
- 培養基を収容する剛性のある容器と、該容器の口部に被嵌されるキャップとで構成される舞茸栽培装置であって、該キャップの上部中央に小部屋を有し、該小部屋の形状が略円錐台形であって、該小部屋の頂面に開口を有し、該開口はフィルターで覆われていることを特徴とする舞茸栽培装置。
- 上記キャップの上部面と上記小部屋の傾斜側面とのなす角度が約30°〜70°である請求項1記載の舞茸栽培装置。
- 上記小部屋の頂面開口を覆うフィルターは、フィルター押えリングにより係止されていることを特徴とする請求項1又は2記載の舞茸栽培装置。
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2001
- 2001-11-13 JP JP2001346978A patent/JP3542082B2/ja not_active Expired - Lifetime
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