JP3541167B2 - 作業機の機体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンバインや運搬車といった乗用型作業機の機体構造に係り、詳しくは、運転部に配置されるボンネット内部の点検・整備作業がより詳細に行えるとか、楽な姿勢で実施できるようにして、エンジンルームのメンテナンス性を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、機体の左右一端側に配置されたフロアステップの後方に、上部に運転座席が配置されたボンネットを配備してある作業機としては、実開昭61−120349号公報や、実開昭61−172871号公報等で開示されているように、ボンネットを、機体横外側下部に設定した前後軸心回りの揺動開閉により、エンジンを覆う閉じ姿勢と、機体横外側方に開いて倒伏した開き姿勢とに切換自在に構成してあった。これにより、ボンネットを開き姿勢に切換えて、エンジンやその周りの機器等に対するメンテナンスが行えるようになっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のボンネット開閉構造では、開き揺動されたボンネットがエンジンルームの真横に存在しているので、エンジン等のメンテナンスは、フロアステップ上の限られた搭乗空間、若しくは、エンジンの横外側斜め前方箇所や斜め後方箇所からしか行えないので、ボンネットが大きく開く割にはメンテナンス作業が行い難い傾向があった。又、エンジン下部やその周りの機器に対するメンテナンスの際には、フロアステップや開き移動されたボンネットが邪魔になるので、エンジンルーム下部のメンテナンス性は芳しくないというのが実情であった。
【0004】
本発明の目的は、ボンネットの支持構造の見直しにより、エンジンやその周りの機器に対するメンテナンス性を向上できる機体構造を提供する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔構成〕
請求項1の構成は、作業機の機体構造において、機体の左右一端側に配置されたフロアステップの後方に、上部に運転座席が配置されたボンネットを配備してある作業機の機体構造であって、
ボンネットを、その下端部における機体左右方向で外側端に設けた前後軸心回りで揺動開閉自在に機体側の中間部材に支持するとともに、中間部材を、前記ボンネット下部の高さ位置に配設し、その前端部又は後端部に設けた上下軸心回りで旋回揺動自在に機体に支持してあることを特徴とする。
【0006】
請求項2の構成は、機体の左右一端側に配置されたフロアステップの後方に、上部に運転座席が配置されたボンネットを配備してある作業機の機体構造であって、
前記ボンネットを、その下端部における機体左右方向で外側端に設けた前後軸心回りで揺動開閉自在に機体側の中間部材に支持するとともに、前記中間部材を、前記ボンネットの前端位置よりも前方に延出してその前端部に設けた上下軸心回りで旋回揺動自在に機体に支持してあることを特徴とする。
【0007】
請求項3の構成は、請求項1又は2の構成において、中間部材における上下軸心が設けられていない側の端部に、中間部材を開き旋回揺動した状態において接地作動可能なスタンドを装備してあることを特徴とする。
【0008】
請求項4の構成は、請求項1〜3の構成において、ボンネットの機体左右方向で外側に位置する外側面の外側に、前後向きのライン下部とこれに続くライン湾曲部を備えた湾曲ラインカバー部を含んで成る側面カバーを配備するとともに、湾曲ラインカバー部と中間部材とが側面視において一続きのラインを呈するように、ライン下部と中間部材とを左右方向で重ねてあることを特徴とする。
【0009】
〔作用〕
請求項1の構成によれば、前後軸心回りで機体の横外側方に倒し揺動されたボンネットを、その倒した状態で支持する中間部材の前端部又は後端部の上下軸心周りで旋回揺動移動できるから、ボンネットをエンジンルームの横側方の位置から、さらに横外側方に遠ざけ移動することができ、エンジンやその周りの機器をフロアステップ上等の限られた場所だけでなく、エンジンルームの真横で、かつ、至近位置からメンテナンスすることが可能になる。
【0010】
請求項2の構成によれば、機体の横外側方に倒し揺動移動されたボンネットを、ボンネットの前端位置よりも前方に延出した中間部材前端の上軸心周りで前方に旋回揺動させることになるので、露出されたエンジンルームの横側方及び後方側にはボンネットが存在しない。故に、コンバインのようにエンジンルームの直後に、後部の上下支点周りで揺動開閉可能なグレンタンクが配置されているような場合には、旋回揺動されたボンネットが邪魔になることなくグレンタンクの揺動移動が行えるという、好都合なものにすることができる。
【0011】
請求項3の構成によれば、中間部材における旋回揺動軸心とは反対側の端部にスタンドを設けたので、中間部材を開き方向に旋回揺動した状態において、ボンネットの重量をスタンドに分散させることができ、ボンネットの全重量を片持ち状に支持する旋回揺動軸心の負担する荷重を減らすことができ、その軸支部分に過度の強度を持たせることがないとか、ふらつくことなく支持するといったことが可能になる。
【0012】
請求項4の構成によれば、ボンネットの横外側面に装備される側面カバーに、側面視において中間部材と一続きのラインを呈する湾曲ラインカバー部を含ませてあるので、ボンネットを旋回揺動させる為の機能部品である中間部材を、ボンネット外側面の保護や外観向上を図る側面カバーと一体のデザイン部とすることができる。
【0013】
〔効果〕
請求項1に記載の作業機の機体構造では、ボンネット下部の高さ位置に旋回揺動する中間部材を設けてボンネットを2段揺動式に開閉させる工夫により、ボンネットを大きくするとか、周囲との干渉を避ける特別な改造を行うといったことなく、開き状態ではエンジンルームから大きく離すことができ、エンジン及びその周囲機器のメンテナンス性を飛躍的に改善することができた。
【0014】
請求項2に記載の作業機の機体構造では、ボンネットの前端位置よりも前方に延出した旋回揺動する中間部材を設けてボンネットを2段揺動式に開閉させる工夫により、ボンネットを大きくするとか、周囲との干渉を避ける特別な改造を行うといったことなく、開き状態ではエンジンルームから大きく離すことができ、エンジン及びその周囲機器のメンテナンス性を飛躍的に改善することができ、ボンネットの開閉とグレンタンクの開閉とが、互いに干渉なく行えるようにすることができるので、ボンネットの後方に横側方に開閉自在なグレンタンクを備えたコンバイン好適なものとすることができた。
【0015】
請求項3に記載の作業機の機体構造では、請求項1又は2の発明による効果を奏するとともに、ボンネットを片持ち支持する中間部材を、その開き姿勢においてはバランスの良い両持ち支持状態とすることができ、ボンネットを安定的に開き姿勢に維持できる利点がある。
【0016】
請求項4に記載の作業機の機体構造では、ボンネットに装備される側面カバーのデザインを中間部材の形状を考慮したものにすることにより、機能部品として付設される中間部材をデザイン部品に兼用でき、機能だけでなく外観向上にも寄与し得る合理的なものにできた。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1にコンバインAの全体側面図が示されており、運転部Bの前方に刈取部Cが配備され、後方に脱穀部DやグレンタンクFが配備され、下方にクローラ式の走行装置Gを配備している。
【0018】
図1、図2に示すように、運転部Bは、運転座席1を上部に備え、かつ、内部にエンジンEを備えたボンネット2の前側に位置するフロアステップ3と、このフロアステップ3の前方に配置された操縦塔4と、フロアステップ3の左側(刈取部Cの搬送装置存在側)に立設された操作パネル5等から構成されている。これら操縦塔4、操作パネル5、ボンネット2は連結されて一体化されているので、フロアステップ3の右端部、即ち操縦塔4右端部とボンネット2右端部との前後間は開放されていて、運転部Bの乗降部6に設定されている。
【0019】
ボンネット2は、運転座席1を載置する上面2a、フロアステップ3側の縦向き面である前面2b、グレンタンクFに面する縦向き面である後面2c、機体左側の縦面である外側面2dとを有して構成されているとともに、外側面2dの外側面を覆い、かつ、運転座席1の右横の手摺部8を一体に有した側面カバー7を備えている。
【0020】
図2〜4,7,8,11に示すように、ボンネット2は、その下端部における機体左右方向で外側端に設けた前後軸心X回りで揺動開閉自在に機体側の中間部材9に支持してあり、その中間部材9は、その前端部に設けた上下軸心Y回りで旋回揺動自在に機体に枢支してある。そして、中間部材9を閉じ姿勢に固定維持する旋回ロック機構Rと、ボンネット2を閉じ姿勢に固定維持する開閉ロック機構(図示せず)とを設けてある。
【0021】
中間部材9は、上下長さが長く横幅の狭い偏平な断面形状を呈する角パイプで構成されており、閉じ旋回揺動した収納姿勢では、フロアステップ3の右端部と、フロアフレーム10との上下間に丁度嵌合され、かつ、外側面9aがフロアステップ3の右外側面3aとフロアフレーム10の右外側面10aと面位置となる状態に設定してある。図5に示すように、中間部材9の前端部は、フロアフレーム10とフロアステップ3前端外側の支持板11とに亘って架設され、かつ、上下軸心Yを有した縦軸12によって枢支されている。
【0022】
図3、図6、図9に示すように、旋回ロック機構Rは、運転部フレームfにおける後端の左右向き後縦板部25の右上角部分にボルト止めされた受け金具13と、この受け金具13に前後向きの支点P回りで回動自在なロックアーム14と、中間部材9の後端に板ブラケット19を介して装備された前後向きのロック軸15とで構成されている。
【0023】
受け金具13には、ロック軸15嵌入用の右横向きに開いた受入れ溝13aが形成され、板材製のロックアーム14には、ロック軸15の受入れ溝13aからの抜け出しを阻止するストップ部14aと、手指による操作部14bと形成されている。又、ストップ部14aの右外側には上部ほど右に寄る傾斜縁14cを形成してあるとともに、操作部14bが水平となる姿勢にロックアーム14を維持するべく、その下方揺動を阻止するピン16を受け金具13から突設してある。
【0024】
つまり、中間部材9を閉じ姿勢から開き姿勢に旋回揺動するには、ロックアーム14を上昇揺動操作してストップ部4aを受入れ溝13aから上方に遠ざけてロック解除することにより可能となる。開き姿勢の中間部材9を閉じ姿勢にするには、単に閉じ旋回揺動するだけで、ロック軸15が傾斜縁14cに接当してロックアーム14を自動的に上昇揺動させて、ロック軸15が受入れ溝13aに嵌まり込み、それによってロックアーム14が下降揺動してのロック状態が現出されるのである。
【0025】
図3、図6、図9に示すように、中間部材9の後端部と前後中間部には、ほぼ中間部材9の下端近くの高さレベルに位置させた前後軸心Xを有するステー17,18を固着してあり、これらステー17,18にボンネット2を前後軸心Xにて枢支してある。そして、ボンネット2の開き限界位置を定めるストップ機構20を設けてある。ストップ機構20は、中間部材9の後端部の内側面に固着された支持プレート21に前後軸心Zで揺動自在に枢支されたガイドプレート22と、これの先端側に形成されたガイド長孔22aに嵌合する状態でボンネット2の後面2c下端部に取付けられたピン軸23とで構成されている。
【0026】
つまり、ボンネット2を前後軸心Xで左横に開き揺動すると、ピン軸23がガイド長孔22a内でスライド移動し、その長孔22aの先端にピン軸23が接当することで開き揺動が阻止されるのであり、図10に示すように、その状態では、ボンネット2は90度近く横に倒れた姿勢となっている。ボンネット2が閉じ姿勢に操作された状態では、ピン軸23はガイド長孔22aの基端近くに位置しており、前述した図外の開閉ロック機構によるボンネット2の閉じロックの妨げとならないようにしてある。
【0027】
図12、図13に示すように、中間部材9における上下軸心が設けられていない側である後端部に、中間部材9を開き旋回揺動した状態において接地作動可能なスタンド24を装備してある。スタンド24は丸棒材で構成されており、基端側を左右向きの支点qで揺動自在に、ブラケット板26を介して中間部材9の内側面9bに支持するとともに、折り曲げによる接地部24aを先端に形成してある。スタンド24を、接地部24aが接地する起立作用姿勢とすることにより、ボンネット2と中間部材9との合計重量を、中間部材9先端の縦軸12とスタンド24とに分散して、バランス良く安定的に両持ち状態で支持することができる。
【0028】
ブラケット板26は、スタンド24の起立作用姿勢を規定するものでもあるとともに、上方に揺動して中間部材9の長手方向に沿った横が姿勢で収納するための収納穴27を内側面9bに形成してある。つまり、スタンド24を一旦収納穴27を通り越すまで上方に持ち上げてから、内側面9bに押え付けるようにしながら下げ揺動すれば、先端の接地部24aを収納穴27に入り込ませることができ、それによって収納状態に維持することが自在である。
【0029】
図1、図7に示すように、外側面2dに配備される側面カバー7は、前後向きのライン下部28aと、これに続くライン湾曲部28bと、縦向きのライン上部28cとを備えた湾曲ラインカバー部28、及び前述の手摺部8を含んだ穴空き状に形成されている。湾曲ラインカバー部28と中間部材9とが側面視において一続きのラインを呈するように、ライン下部28aと中間部材9とが左右方向で重なる状態に配置設定してある。これにより、運転部としての側面視形状におけるデザイン性が豊富になり、シャープな外観の実現に寄与できている。
【0030】
図1に示すように、グレンタンクFは、その後部に設けた縦軸芯P2回りで、機体右側方側に回動しての開閉が自在に構成されており、グレンタンクFを開き移動すれば、運転部Bの後部を開放することができ、エンジンボンネット2の後側が露出状態となる。従って、このグレンタンクFを開き、かつ、ボンネット2開き揺動してから前方に旋回揺動すれば、エンジンE部分(エンジンルーム)が前後及び右方に対して丸出し状態にすることができる。これにより、エンジンE及びその周辺機器を良好に修理やメンテナンスすることができる。
【0031】
[別実施形態]
中間部材9の旋回揺動支点Yを、中間部材9の後端部に設けても良い。この場合には、スタンド24は中間部材9の前端部に装備する。
【0032】
図14に示すように、フロアステップ3を、操作ペダル(図示せず)が配置される前部ステップ3fと後部ステップ3rとに、左右方向に延びる湾曲線wで分割し、後部ステップ3rのみがボンネット2と共に旋回揺動するように構成したものでも良い。湾曲線wは、ボンネット2の開き方向に行くに従って旋回軸心Yの半径よりも内側によるものに設定されており、旋回揺動移動の妨げとなることが無い。
【0033】
これにより、ペダルを固定側に配置したときのペダル逃げ溝をどうするとか、ペダルを旋回揺動側に配置したときの連動構造をどうする、といった問題を一掃でき、支障無くボンネット2の旋回揺動移動を実現できる。尚、本実施形態におけるフロアステップ3は、フロアフレーム10に対して着脱自在に装備されており、ステップ3を外すことにより、支障なくボンネット2を旋回揺動させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】運転部の平面図
【図3】運転部の背面図
【図4】中間部材の枢支部付近を示す斜視図
【図5】中間部材の枢支構造を示す拡大断面図
【図6】ロック機構の動作状態を示す背面図
【図7】ボンネットの倒れ方向を示す運転部の斜視図
【図8】倒れたボンネットの旋回移動方向を示す運転部の斜視図
【図9】旋回ロック機構のロック状態を示す背面図
【図10】旋回ロック機構のロック解除状態を示す背面図
【図11】ボンネットが旋回移動された状態の運転部を示す平面図
【図12】ボンネットが旋回移動された状態の運転部を示す斜視図
【図13】スタンドの支持構造を示す部分図
【図14】前後分割構造のフロアステップを有した運転部の平面図
【符号の説明】
1 運転座席
2 ボンネット
2d 外側面
3 フロアステップ
7 側面カバー
9 中間部材
28 湾曲ラインカバー部
28a ライン下部
28b ライン湾曲部
X 前後軸心
Y 上下軸心
Claims (4)
- 機体の左右一端側に配置されたフロアステップ(3)の後方に、上部に運転座席(1)が配置されたボンネット(2)を配備してある作業機の機体構造であって、
前記ボンネット(2)を、その下端部における機体左右方向で外側端に設けた前後軸心(X)回りで揺動開閉自在に機体側の中間部材(9)に支持するとともに、前記中間部材(9)を、前記ボンネット(2)下部の高さ位置に配設し、その前端部又は後端部に設けた上下軸心(Y)回りで旋回揺動自在に機体に支持してある作業機の機体構造。 - 機体の左右一端側に配置されたフロアステップ(3)の後方に、上部に運転座席(1)が配置されたボンネット(2)を配備してある作業機の機体構造であって、
前記ボンネット(2)を、その下端部における機体左右方向で外側端に設けた前後軸心(X)回りで揺動開閉自在に機体側の中間部材(9)に支持するとともに、前記中間部材(9)を、前記ボンネット(2)の前端位置よりも前方に延出してその前端部に設けた上下軸心(Y)回りで旋回揺動自在に機体に支持してある作業機の機体構造。 - 前記中間部材(9)における前記上下軸心(Y)が設けられていない側の端部に、前記中間部材(9)を開き旋回揺動した状態において接地作動可能なスタンド(24)を装備してある請求項1又は2に記載の作業機の機体構造。
- 前記ボンネット(2)の機体左右方向で外側に位置する外側面の外側に、前後向きのライン下部(28a)とこれに続くライン湾曲部(28b)を備えた湾曲ラインカバー部(28)を含んで成る側面カバー(7)を配備するとともに、前記湾曲ラインカバー部(28)と前記中間部材(9)とが側面視において一続きのラインを呈するように、前記ライン下部(28a)と前記中間部材(9)とを左右方向で重ねてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機の機体構造。
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