JP3540417B2 - 液中の溶存ガスの除去方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、液中に溶解している溶存ガスの除去、特に半導体の洗浄用水、清涼飲料水用水中の溶存酸素や、配管を腐食させる大きな要因となっているボイラー用水等の溶存酸素の除去、あるいは水道水や井戸水に溶存する揮発性の有機物(特にクロロホルム、ジクロロブロモホルム等のトリハロメタンや1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の揮発性の有機ハロン)を除去する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶存ガスの除去方法としては、液の入った容器を減圧にする方法や、薬品処理により溶存ガスを除去する方法が知られている。また、このような方法では、溶存ガスの完全除去が困難でかつ除去時間が長いなどの問題があるために、最近では疎水性の多孔質膜を用いた溶存ガス除去装置が提案されている(特開昭62−42707号公報)。また、均質層をその両側から多孔質層で挟み込んだ三層構造の複合中空糸膜を用いて溶存ガスを除去する方法も知られている(特開平3−7908号、特開平3−169303号公報)。更に、溶存揮発性有機物の除去方法として、中空糸膜を用い液流路とは膜面で隔てられた気相空間を換気することにより除去する方法が知られれている(特開平6−63536号公報、特開平6−47369号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の中空糸膜を用いた方法では、溶存ガス除去の開始直後は、優れた溶存ガス除去性能が発揮できるものの、中空糸膜を透過した水蒸気が中空糸膜気相側に凝縮し、中空糸膜を閉塞し溶存ガス除去性能の維持に困難をきたす場合がある。また、凝縮水が吸気装置に流入すると吸気装置の故障の原因となる可能性がある。また、透過水蒸気量以上の排気量を有する吸気装置を使用する方法もあるが、その場合は吸気装置が大型になる問題点があった。
【0004】
本発明の目的は、長時間使用しても溶存ガスの除去性能が低下することなく、高い除去効率が維持でき、かつ大型の装置が不要な溶存ガスの除去方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の液中の溶存ガスの除去方法は、容器内に中空糸膜を内蔵してなる溶存ガス除去モジュールを吸気装置に接続して、該モジュール内の気相空間を減圧または換気してモジュール内へ導入された液体から溶存ガスを除去する方法において、該モジュールからの排気ガスを、吸気装置のモーターの発熱を加熱源とする加熱室を通過させた後、吸気装置へ導くことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の液中の溶存ガスの除去装置は、液流入口、液流出口および排気口を有する容器内に、中空糸膜を配設し、中空糸膜の膜面によって隔てられた液流路と、減圧または換気用の気相空間とを形成してなる溶存ガス除去モジュールを、吸気装置に接続してなる液中の溶存ガスの除去装置において、該排気口と吸気装置とを結ぶ排気ガス流路上に、吸気装置のモーターの発熱を加熱源とする加熱室を配設したことを特徴とする。
【0007】
本発明の方法は、溶存ガス除去モジュールの少なくとも一つの排気口を、排気口が連通するモジュール内の気相空間の最下方に位置させて排気を行うことが好ましい。
【0008】
【作用】
溶存ガス除去モジュールからの排気ガスを吸気装置のモーターの発熱を熱源とする加熱室へ導くと、モジュール内で中空糸膜を透過した水蒸気が凝縮水やミストとして排気ガス中含まれていてもこれを蒸発させた後に吸気装置へ導くので、吸気装置が順調に運転できる。
【0009】
以下、図面に基づき本発明を説明する。図1は、本発明の溶存ガスの除去装置の一例を示す模式図である。
【0010】
溶存ガス除去モジュール1は、容器2内に多数本の中空糸膜3がほぼ平行に配列され、その両端部がポッティング剤4により支持固定されて構成され、容器1の内部は、ポッティング剤と中空糸膜によって二つの空間に仕切られている。この例では、中空糸膜の外表面に臨む第1の空間に、この空間内の気体を排気するための排気口5および換気のための外気をこの空間内に吸い込む吸気口6が設けられている。一方、中空糸膜の中空部と連通する第2の空間に、溶存ガスを含む液体を導入する導入口7と処理された液体を導出する導出口8が設けられている。排気口5の数には特に制限はないが、少なくとも一つの排気口は、溶存ガス除去モジュールが使用される状態において、排気口が設けられる第1の空間の最下方に位置することが好ましい。最下方の排気口は、第1の空間内で凝縮する液体の排出口9をも兼ねることができる。この例とは逆に、中空糸膜の外表面に臨む空間側に液体を流し、中空糸膜の中空部を気相側(排気側)とすることもできるが、凝縮液により中空糸膜が閉塞する可能性があるので、中空糸膜の外表面に臨む空間を気相側とすることが好ましい。
【0011】
吸気口6を配設し、外気をこの空間内に吸い込みつつ換気を行なうと、低真空下で排気することが可能となり、トルクの小さな小型の吸気装置の適用が可能になる。しかし、吸気口を設けずに排気を行い、モジュール内の気相空間を減圧にして溶存ガスを除去してもよい。
【0012】
排気口5(凝縮液体排出口9を含む)から排出されるガス、水蒸気、凝縮水(凝縮液体)は、ダイヤフラム型の真空ポンプ10のモーター部に接して設けられた凝縮水蒸発室(加熱室)11へ導かれる。凝縮水蒸発室は、凝縮水が流入しやすいように、凝縮液体排出口9より下方に位置することが好ましい。ここに導かれたガスおよび水蒸気はそのままダイヤフラム型の真空ポンプへ導かれ排気される。また、凝縮水やミストは、凝縮水蒸発室内でダイヤフラム型の真空ポンプのモーター部の発する熱により蒸発して水蒸気となった後、ダイヤフラム型の真空ポンプへ送気されて排気される。
【0013】
本発明に用いる中空糸膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン;テトラフルオロエチレンやフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;ポリスチレン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトン;等の疎水性高分子よりなる多孔質中空糸膜が好ましい。この場合中空糸膜の細孔内部に水が侵入するのを防ぐために表面の水の濡れ特性として接触角が大きいほど良く、90°より大きいことが好ましい。また、多孔質中空糸膜の細孔径が小さいほど表面張力により孔内に水が侵入しにくいことから、細孔径が0.05μm以下のものが好ましい。
【0014】
このような疎水性の多孔質中空糸膜を用いても長時間連続して使用すると水蒸気が疎水性中空糸膜細孔内部に凝縮して細孔内部が完全に水に埋もれてしまい、その結果水が中空糸膜からもれてしまう危険性がある。したがって、多孔質中空糸膜の膜構造としては、均質層をその両側から多孔質層で挟み込んだ三層構造のものがより好ましい。この場合、均質層を構成する素材の酸素透過速度が0.8×10-5cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg以上の性能を有するものであることが好ましい。複合中空糸膜の場合には均質層が存在するため、水の濡れ特性および細孔径が疎水性の多孔質膜において好ましい条件外であっても長時間使用による水漏れの心配はない。しかし、酸素透過速度が0.8×10-5cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg未満では溶存酸素等の溶存ガスの均質膜を透過する速度が遅く効率的に溶存ガスを除去することができない。
【0015】
このような複合中空糸膜は、例えば多重円筒型の紡糸ノズルを用いて均質層を形成するポリマーと多孔質層を形成するポリマーとを交互に配置し溶融紡糸し、次いで均質層を多孔質化することなく多孔質層となる部分だけを多孔質化する条件で延伸する方法により製造される。
【0016】
均質層を構成するポリマー素材としては、ガス透過性の優れたシリコンゴム系ポリマーを始めとして、ポリジメチルシロキサン、シリコンとポリカーボネートの共重合体等のシリコンゴム系ポリマー、ポリ−4−メチルペンテン−1、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系ポリマー、パーフルオロアルキル系ポリマー等のフッ素含有ポリマー、エチルセルロース等セルロース系ポリマー、ポリフェニレンオキサイド、ポリ−4−ビニルビリジン、ウレタン系ポリマー及びこれらポリマー素材の共重合体あるいはブレンド体等の各種ポリマーをあげることができる。また、多孔質層を構成するポリマー素材としては、前述したポリオレフィン等の疎水性高分子が用いられる。
【0017】
均質層を構成するポリマー素材と、多孔質層を構成するポリマー素材との組み合わせについては特に限定されず、異種のポリマーはもちろん同種のポリマーであってもよい。この複合中空糸膜は、均質層が多孔質層で物理的に挟み込まれたサンドイッチ構造を有しているので、両膜間の接着性が悪くても実用上の弊害は生じない。
【0018】
本発明において、溶存ガス除去モジュールからの排気ガスを導く加熱室は、その熱源として少なくとも吸気装置のモーターの発熱を利用し、その内部で排気ガス中の凝縮水を蒸発させた後、排気ガスを吸気装置へ送気するものである。好ましい加熱室の一例としては、モーターの発熱が排気ガス中の凝縮水やミストの蒸発に最大限利用できるように発熱部から延びる多数の放熱板が配設されるとともに、この放熱板が未蒸発の凝縮水が吸気装置へ流出するのを防止する遮断板としても機能するものが例示できる。
【0019】
本発明に用いる吸気装置としては、真空ポンプ、吸気ブロワー等が挙げられるが、小型で吸引力の高い真空ポンプが好ましく、真空ポンプの中でも真空オイルの必要がなく、騒音の小さいダイヤフラム型真空ポンプが好ましい。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0021】
参考例1
同心円状に配置された3つの吐出口を有する中空糸製造用ノズルに対し、内層と外層に供給するポリマー素材として高密度ポリエチレン(三井石油化学工業(株)社製 Hizex2200J)を、中間層に供給するポリマー素材としてセグメント化ポリウレタン(Thermedics Inc.製 TecoflexEG80A)を用い、吐出温度165℃、巻き取り速度180m/minで紡糸した。
【0022】
得られた中空糸未延伸糸を100℃で1時間アニール処理をした。次いでアニール処理糸を室温下で80%延伸し、引き続き105℃に加熱された加熱炉中で熱延伸倍率が130%になるまで熱延伸を行って、複合中空糸膜を得た。
【0023】
得られた複合中空糸膜は、図2に示されるように最内層から順次多孔質層、均質層、多孔質層の三層構造であり、内径が200μm、厚みが最内層から25μm、1μm、25μmの同心円状であった。この複合中空糸膜の多孔質層表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、幅0.06〜0.09μm、長さ0.1〜0.5μmのスリット状の孔が形成されていた。また、この中空糸膜の酸素透過速度は1.2×10-5cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHgであった。
【0024】
実施例
参考例の中空糸膜を用いて、図1に示されるような構造の膜面積3m2 の溶存ガス除去モジュールを作成した。このモジュールを図1に示すようなモーターの発熱を加熱源として利用する加熱室を有するダイヤフラム型真空ポンプ(10w)に接続した。クロロホルムを50ppb含む25℃の水を1リットル/分の流速でモジュールに導入し、真空ポンプを排気量15Nリットル/分で作動させた。モジュールから放出された処理水中のクロロホルムの除去率、モジュール内の凝縮水の量および真空ポンプのダイヤフラムの状態を、処理開始当初と50m3 通水後にそれぞれ測定しその結果を表1に示した。
【0025】
比較例
参考例の中空糸膜を用いて、図3に示されるような構造の膜面積3m2 の溶存ガス除去モジュールを作成した。このモジュールを図3に示すようにダイヤフラム型真空ポンプに普通に接続した。この装置を用いて実施例1と同じ条件でクロロホルム含有水を処理した結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、凝縮水が真空ポンプに流入することがないので、非常に長期間安定して溶存ガスの除去性能を維持することができ、ダイヤフラム型真空ポンをメンテナンスフリーとすることができる。また、本発明は小型の真空ポンプが使用できるため、家庭用の溶存揮発性有機ハロンの除去装置として構成することができる。
【0028】
更に、モジュール内の凝縮水を効率よく系外に排出できるモジュールと併用することにより、溶存ガスの除去性能の長期維持が増進される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法で用いる溶存ガス除去装置の例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例で用いた三層構造の複合中空糸膜を示す模式断面図である。
【図3】比較例で用いた溶存ガス除去装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 溶存ガス除去モジュール
2 容器
3 中空糸膜
4 ポッティング剤
5 排気口
6 吸気口
7 液体導入口
8 液体導出口
9 凝縮水排出口
10 真空ポンプ
11 凝縮水蒸発室(加熱室)
12 多孔質膜
13 均質膜
【産業上の利用分野】
本発明は、液中に溶解している溶存ガスの除去、特に半導体の洗浄用水、清涼飲料水用水中の溶存酸素や、配管を腐食させる大きな要因となっているボイラー用水等の溶存酸素の除去、あるいは水道水や井戸水に溶存する揮発性の有機物(特にクロロホルム、ジクロロブロモホルム等のトリハロメタンや1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の揮発性の有機ハロン)を除去する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶存ガスの除去方法としては、液の入った容器を減圧にする方法や、薬品処理により溶存ガスを除去する方法が知られている。また、このような方法では、溶存ガスの完全除去が困難でかつ除去時間が長いなどの問題があるために、最近では疎水性の多孔質膜を用いた溶存ガス除去装置が提案されている(特開昭62−42707号公報)。また、均質層をその両側から多孔質層で挟み込んだ三層構造の複合中空糸膜を用いて溶存ガスを除去する方法も知られている(特開平3−7908号、特開平3−169303号公報)。更に、溶存揮発性有機物の除去方法として、中空糸膜を用い液流路とは膜面で隔てられた気相空間を換気することにより除去する方法が知られれている(特開平6−63536号公報、特開平6−47369号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の中空糸膜を用いた方法では、溶存ガス除去の開始直後は、優れた溶存ガス除去性能が発揮できるものの、中空糸膜を透過した水蒸気が中空糸膜気相側に凝縮し、中空糸膜を閉塞し溶存ガス除去性能の維持に困難をきたす場合がある。また、凝縮水が吸気装置に流入すると吸気装置の故障の原因となる可能性がある。また、透過水蒸気量以上の排気量を有する吸気装置を使用する方法もあるが、その場合は吸気装置が大型になる問題点があった。
【0004】
本発明の目的は、長時間使用しても溶存ガスの除去性能が低下することなく、高い除去効率が維持でき、かつ大型の装置が不要な溶存ガスの除去方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の液中の溶存ガスの除去方法は、容器内に中空糸膜を内蔵してなる溶存ガス除去モジュールを吸気装置に接続して、該モジュール内の気相空間を減圧または換気してモジュール内へ導入された液体から溶存ガスを除去する方法において、該モジュールからの排気ガスを、吸気装置のモーターの発熱を加熱源とする加熱室を通過させた後、吸気装置へ導くことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の液中の溶存ガスの除去装置は、液流入口、液流出口および排気口を有する容器内に、中空糸膜を配設し、中空糸膜の膜面によって隔てられた液流路と、減圧または換気用の気相空間とを形成してなる溶存ガス除去モジュールを、吸気装置に接続してなる液中の溶存ガスの除去装置において、該排気口と吸気装置とを結ぶ排気ガス流路上に、吸気装置のモーターの発熱を加熱源とする加熱室を配設したことを特徴とする。
【0007】
本発明の方法は、溶存ガス除去モジュールの少なくとも一つの排気口を、排気口が連通するモジュール内の気相空間の最下方に位置させて排気を行うことが好ましい。
【0008】
【作用】
溶存ガス除去モジュールからの排気ガスを吸気装置のモーターの発熱を熱源とする加熱室へ導くと、モジュール内で中空糸膜を透過した水蒸気が凝縮水やミストとして排気ガス中含まれていてもこれを蒸発させた後に吸気装置へ導くので、吸気装置が順調に運転できる。
【0009】
以下、図面に基づき本発明を説明する。図1は、本発明の溶存ガスの除去装置の一例を示す模式図である。
【0010】
溶存ガス除去モジュール1は、容器2内に多数本の中空糸膜3がほぼ平行に配列され、その両端部がポッティング剤4により支持固定されて構成され、容器1の内部は、ポッティング剤と中空糸膜によって二つの空間に仕切られている。この例では、中空糸膜の外表面に臨む第1の空間に、この空間内の気体を排気するための排気口5および換気のための外気をこの空間内に吸い込む吸気口6が設けられている。一方、中空糸膜の中空部と連通する第2の空間に、溶存ガスを含む液体を導入する導入口7と処理された液体を導出する導出口8が設けられている。排気口5の数には特に制限はないが、少なくとも一つの排気口は、溶存ガス除去モジュールが使用される状態において、排気口が設けられる第1の空間の最下方に位置することが好ましい。最下方の排気口は、第1の空間内で凝縮する液体の排出口9をも兼ねることができる。この例とは逆に、中空糸膜の外表面に臨む空間側に液体を流し、中空糸膜の中空部を気相側(排気側)とすることもできるが、凝縮液により中空糸膜が閉塞する可能性があるので、中空糸膜の外表面に臨む空間を気相側とすることが好ましい。
【0011】
吸気口6を配設し、外気をこの空間内に吸い込みつつ換気を行なうと、低真空下で排気することが可能となり、トルクの小さな小型の吸気装置の適用が可能になる。しかし、吸気口を設けずに排気を行い、モジュール内の気相空間を減圧にして溶存ガスを除去してもよい。
【0012】
排気口5(凝縮液体排出口9を含む)から排出されるガス、水蒸気、凝縮水(凝縮液体)は、ダイヤフラム型の真空ポンプ10のモーター部に接して設けられた凝縮水蒸発室(加熱室)11へ導かれる。凝縮水蒸発室は、凝縮水が流入しやすいように、凝縮液体排出口9より下方に位置することが好ましい。ここに導かれたガスおよび水蒸気はそのままダイヤフラム型の真空ポンプへ導かれ排気される。また、凝縮水やミストは、凝縮水蒸発室内でダイヤフラム型の真空ポンプのモーター部の発する熱により蒸発して水蒸気となった後、ダイヤフラム型の真空ポンプへ送気されて排気される。
【0013】
本発明に用いる中空糸膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン;テトラフルオロエチレンやフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー;ポリスチレン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトン;等の疎水性高分子よりなる多孔質中空糸膜が好ましい。この場合中空糸膜の細孔内部に水が侵入するのを防ぐために表面の水の濡れ特性として接触角が大きいほど良く、90°より大きいことが好ましい。また、多孔質中空糸膜の細孔径が小さいほど表面張力により孔内に水が侵入しにくいことから、細孔径が0.05μm以下のものが好ましい。
【0014】
このような疎水性の多孔質中空糸膜を用いても長時間連続して使用すると水蒸気が疎水性中空糸膜細孔内部に凝縮して細孔内部が完全に水に埋もれてしまい、その結果水が中空糸膜からもれてしまう危険性がある。したがって、多孔質中空糸膜の膜構造としては、均質層をその両側から多孔質層で挟み込んだ三層構造のものがより好ましい。この場合、均質層を構成する素材の酸素透過速度が0.8×10-5cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg以上の性能を有するものであることが好ましい。複合中空糸膜の場合には均質層が存在するため、水の濡れ特性および細孔径が疎水性の多孔質膜において好ましい条件外であっても長時間使用による水漏れの心配はない。しかし、酸素透過速度が0.8×10-5cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHg未満では溶存酸素等の溶存ガスの均質膜を透過する速度が遅く効率的に溶存ガスを除去することができない。
【0015】
このような複合中空糸膜は、例えば多重円筒型の紡糸ノズルを用いて均質層を形成するポリマーと多孔質層を形成するポリマーとを交互に配置し溶融紡糸し、次いで均質層を多孔質化することなく多孔質層となる部分だけを多孔質化する条件で延伸する方法により製造される。
【0016】
均質層を構成するポリマー素材としては、ガス透過性の優れたシリコンゴム系ポリマーを始めとして、ポリジメチルシロキサン、シリコンとポリカーボネートの共重合体等のシリコンゴム系ポリマー、ポリ−4−メチルペンテン−1、低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系ポリマー、パーフルオロアルキル系ポリマー等のフッ素含有ポリマー、エチルセルロース等セルロース系ポリマー、ポリフェニレンオキサイド、ポリ−4−ビニルビリジン、ウレタン系ポリマー及びこれらポリマー素材の共重合体あるいはブレンド体等の各種ポリマーをあげることができる。また、多孔質層を構成するポリマー素材としては、前述したポリオレフィン等の疎水性高分子が用いられる。
【0017】
均質層を構成するポリマー素材と、多孔質層を構成するポリマー素材との組み合わせについては特に限定されず、異種のポリマーはもちろん同種のポリマーであってもよい。この複合中空糸膜は、均質層が多孔質層で物理的に挟み込まれたサンドイッチ構造を有しているので、両膜間の接着性が悪くても実用上の弊害は生じない。
【0018】
本発明において、溶存ガス除去モジュールからの排気ガスを導く加熱室は、その熱源として少なくとも吸気装置のモーターの発熱を利用し、その内部で排気ガス中の凝縮水を蒸発させた後、排気ガスを吸気装置へ送気するものである。好ましい加熱室の一例としては、モーターの発熱が排気ガス中の凝縮水やミストの蒸発に最大限利用できるように発熱部から延びる多数の放熱板が配設されるとともに、この放熱板が未蒸発の凝縮水が吸気装置へ流出するのを防止する遮断板としても機能するものが例示できる。
【0019】
本発明に用いる吸気装置としては、真空ポンプ、吸気ブロワー等が挙げられるが、小型で吸引力の高い真空ポンプが好ましく、真空ポンプの中でも真空オイルの必要がなく、騒音の小さいダイヤフラム型真空ポンプが好ましい。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0021】
参考例1
同心円状に配置された3つの吐出口を有する中空糸製造用ノズルに対し、内層と外層に供給するポリマー素材として高密度ポリエチレン(三井石油化学工業(株)社製 Hizex2200J)を、中間層に供給するポリマー素材としてセグメント化ポリウレタン(Thermedics Inc.製 TecoflexEG80A)を用い、吐出温度165℃、巻き取り速度180m/minで紡糸した。
【0022】
得られた中空糸未延伸糸を100℃で1時間アニール処理をした。次いでアニール処理糸を室温下で80%延伸し、引き続き105℃に加熱された加熱炉中で熱延伸倍率が130%になるまで熱延伸を行って、複合中空糸膜を得た。
【0023】
得られた複合中空糸膜は、図2に示されるように最内層から順次多孔質層、均質層、多孔質層の三層構造であり、内径が200μm、厚みが最内層から25μm、1μm、25μmの同心円状であった。この複合中空糸膜の多孔質層表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、幅0.06〜0.09μm、長さ0.1〜0.5μmのスリット状の孔が形成されていた。また、この中空糸膜の酸素透過速度は1.2×10-5cm3 (STP)/cm2 ・sec・cmHgであった。
【0024】
実施例
参考例の中空糸膜を用いて、図1に示されるような構造の膜面積3m2 の溶存ガス除去モジュールを作成した。このモジュールを図1に示すようなモーターの発熱を加熱源として利用する加熱室を有するダイヤフラム型真空ポンプ(10w)に接続した。クロロホルムを50ppb含む25℃の水を1リットル/分の流速でモジュールに導入し、真空ポンプを排気量15Nリットル/分で作動させた。モジュールから放出された処理水中のクロロホルムの除去率、モジュール内の凝縮水の量および真空ポンプのダイヤフラムの状態を、処理開始当初と50m3 通水後にそれぞれ測定しその結果を表1に示した。
【0025】
比較例
参考例の中空糸膜を用いて、図3に示されるような構造の膜面積3m2 の溶存ガス除去モジュールを作成した。このモジュールを図3に示すようにダイヤフラム型真空ポンプに普通に接続した。この装置を用いて実施例1と同じ条件でクロロホルム含有水を処理した結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、凝縮水が真空ポンプに流入することがないので、非常に長期間安定して溶存ガスの除去性能を維持することができ、ダイヤフラム型真空ポンをメンテナンスフリーとすることができる。また、本発明は小型の真空ポンプが使用できるため、家庭用の溶存揮発性有機ハロンの除去装置として構成することができる。
【0028】
更に、モジュール内の凝縮水を効率よく系外に排出できるモジュールと併用することにより、溶存ガスの除去性能の長期維持が増進される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法で用いる溶存ガス除去装置の例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例で用いた三層構造の複合中空糸膜を示す模式断面図である。
【図3】比較例で用いた溶存ガス除去装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 溶存ガス除去モジュール
2 容器
3 中空糸膜
4 ポッティング剤
5 排気口
6 吸気口
7 液体導入口
8 液体導出口
9 凝縮水排出口
10 真空ポンプ
11 凝縮水蒸発室(加熱室)
12 多孔質膜
13 均質膜
Claims (3)
- 容器内に中空糸膜を内蔵してなる溶存ガス除去モジュールを吸気装置に接続して、該モジュール内の気相空間を減圧または換気してモジュール内へ導入された液体から溶存ガスを除去する方法において、該モジュールからの排気ガスを、吸気装置のモーターの発熱を加熱源とする加熱室を通過させた後、吸気装置へ導くことを特徴とする液中の溶存ガスの除去方法。
- 溶存ガス除去モジュールの少なくとも一つの排気口を、排気口が連通するモジュール内の気相空間の最下方に位置させて排気を行う請求項1記載の液中の溶存ガスの除去方法。
- 液流入口、液流出口および排気口を有する容器内に、中空糸膜を配設し、中空糸膜の膜面によって隔てられた液流路と、減圧または換気用の気相空間とを形成してなる溶存ガス除去モジュールを、吸気装置に接続してなる液中の溶存ガスの除去装置において、該排気口と吸気装置とを結ぶ排気ガス流路上に、吸気装置のモーターの発熱を加熱源とする加熱室を配設したことを特徴とする溶存ガスの除去装置。
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