JP2725312B2 - 多孔質中空糸膜型気液接触装置 - Google Patents

多孔質中空糸膜型気液接触装置

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JP2725312B2
JP2725312B2 JP25736488A JP25736488A JP2725312B2 JP 2725312 B2 JP2725312 B2 JP 2725312B2 JP 25736488 A JP25736488 A JP 25736488A JP 25736488 A JP25736488 A JP 25736488A JP 2725312 B2 JP2725312 B2 JP 2725312B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は膜を介して液体と気体を接触せしめ、液体中
への気体の溶解もしくは液体中に含有する気体の放出も
しくはこれらの溶解と放出とを同時に行なわしめること
を目的とした気液接触装置に関するものである。
本発明は、例えば医薬品、食品産業に於る酵母や好気
性菌といつた微生物の培養に於る酸素供給、好気性菌に
よる肺水処理に於る酸素供給、化学工業、医薬品工業に
於る空気酸化、オゾン酸化、養魚、魚類の運搬に於る酸
素供給、水耕栽培に於る培養液への酸素供給、美顔用、
健康飲料用の高酸素水の製造、また気体中の一種以上の
成分を液体へ溶解させる事により除去する用途として例
えば廃ガス浄化に於るSOx、NOx、H2S等の除去、発酵メ
タンガスよりのCO2除去、また液体の脱ガスの用途とし
て例えばボイラー供給水や逆浸透膜への供給液の脱酸
素、半導体洗浄用超純水の脱酸素、配管や冷却装置の防
錆を目的とした、水や海水の脱酸素、脱炭酸ガス、微生
物培養液からのCO2除去、廃水中の有機溶剤の除去また
気体の溶解と放出を同時に行なう用途として例えば微生
物培養に於るO2供給とCO2除去等の産業分野に利用でき
るる [従来の技術] 中空糸膜型気液接触装置に用いられる膜としては、従
来シリコンゴムチユーブ(特公昭58−20261)、ポリプ
ロピレン多孔質中空糸(特開昭55−1816)、ポリ四フツ
化エチレン(PTFE)多孔質チユーブ、ポリスルホン多孔
質中空糸(H.YASUDA等;Journal of Applied Polymer Sc
ience、16、595−601(1972))等が知られている。し
かるに、シリコンゴムチユーブは気体の透過速度が遅
く、かつ細い中空糸の製造が困難な為、装置がかさば
る、耐圧が小さく(特に中空糸外部を加圧する場合)加
圧による透過速度の増加を計れない等の欠点を有してい
た。一方多孔質膜は耐圧や、膜を透して液体中へ気体を
溶解させる速度(気液系での気体透過速度)に於てシリ
コンゴムチユーブより優れる事や、透過する気体の種類
の選ばない等の特長を有している。しかしながらこれま
での多孔質膜は、膜両面が気体であつて、圧力差により
膜を透過する系(気・気系)での気体透過速度(例えば
ASTMF−316Dry法)から期待される程、気液系での溶解
速度が高くなく、シリコンゴムチユーブと大差ないレベ
ルに停つていた。また従来のポリプロピレン、ポリエチ
レン、PTFE、ポリスルホン等から成る多孔質膜は、期待
されるほど、液体への気体溶解速度が大きくないことが
分つてきた。その期待ほどでない理由としては、細孔へ
の液体の侵入による境膜抵抗の増加や、膜表面の細孔開
口面積が全表面積の高々40%である事による有効表面積
の効果等が推定されている。従つて、これの解決を目的
に多孔質膜の液と接する側の表面に、コーテイング等に
よつて非多孔質層を形成したいわゆる複合膜を用いる試
みもなされたが、複合膜は最良の場合でも多孔質膜の最
高値と大差無く、工業的に用いられるに到つていないの
が現状である。
一方気液接触装置の構造面に於ては、装置の作り易さ
の点から、中空糸内側に液体を流す、いわゆる内部潅流
型が主流である。しかしながら内部潅流型は液側境膜抵
抗が大きくなり、膜に気体透過速度の高い物を用いて
も、装置としてのガス交換速度は低いレベルに停り、必
要膜面積が大きくても、装置が高価格にならざるを得な
かつた。また液体側の圧力損失も大きくなり、ポンプの
大型化や運転電力費の増大を招いていた。
一方外部潅流型は、圧力損失が小さくなる利点の他
に、液体の撹拌効果によつてガス交換効率が増大し、必
要膜面積が少なくて済む事が期待されるが、現実には中
空糸の充填ムラなどの原因による液体の偏流が生じて、
液体と膜との実質的な接触面積が少なくなるため、やは
り必要面積の増大を招いていた。
さらに、流体からガスを除去する用途、例えば水の脱
酸素に用いられる中空糸膜気液接触装置に於ては、ガス
を除去すべき流体を中空糸外部に流すタイプ(ガスを除
去すべき流体が液体の場合は外部潅流型)では、残存ガ
ス量を一定レベル以下にまで除く事は困難であり、中空
糸外部に流すタイプは実用化されていなかつた。
[発明が解決しようとする課題] 本発明者等は、多孔質膜としての長所は保持しつつ、
上記の欠点が除かれた、コンパクトで高性能な気液接触
装置、特に流体からの気体の除去に当つても高い性能を
発揮する膜型気液接触装置を実現するために、隔膜およ
び装置構造の双方について鋭意検討し、本発明に到達し
た。
[課題を解決する手段] 即ち、本発明の要旨とするところは、液体と気体とを
ガス交換膜を介して接触させ、夫々に含有されるガス
を、膜を通過して移動または相互に交換させる気液接触
装置において、 ガス交換膜が、ポリ(4−メチルペンテン−1)を実
質的主要成分とする材料より成る多孔質中空糸膜であつ
て、多孔質を形成する細孔の平均径が0.005〜1.0μm、
膜の酸素透過速度が1.0×10-4[cm3(STP)/cm2・sec・
cmHg]以上であり、該中空糸が、中空糸同士または他の
糸条とによつて組織されたシート状物の重畳体または集
束体の状態で、ケース内に組み込まれていることを特徴
とする多孔質中空糸膜型気液接触装置に存する。
そして、本発明の多孔質中空糸膜型気液接触装置は、
中空糸膜の外側に接して液体が流通し、中空糸膜内側へ
ガス透過される外部潅流型の、液体からの脱ガスに用い
られるものであり、または中空糸膜の外側に接して混合
気体が流通し、中空糸膜内側を流れる液体へ特定種のガ
スが分別移行される内部潅流型のものであり、更にま
た、中空糸のシート状物が、並行に配列された中空糸
を、それとほぼ直角となる他の糸条で、簾状に編組した
ものでもある。
本発明はその要部についてみると、先ずガス交換膜に
関する。本発明に用いる多孔質中空糸膜はポリ(4−メ
チルペンテン−1)から成る事を第一の特徴とするもの
である。
中空糸膜をポリ(4−メチルペンテン−1)で構成す
る事により、酢酸セルロース、ポリアミド等の親水性ポ
リマーは勿論のこと、ポリプロピレン、ポリエチレン等
のポリオレフイン、PTFEやPVDF等のフツ素系ポリマー、
それにポリスルホンその他の疎水性ポリマーで構成され
た同様の構造を持つ多孔質膜に比べて気液系に於て30%
以上透過速度が向上する事が判明した。これは従来の膜
に比べ装置を80%以下にコンパクト化でき、又製品コス
トも安価になる事を意味する。
この様に、気体が細孔内を体積流で移動する事により
膜を透過すると考えられていた多孔質膜に於て、膜素材
としてポリ(4−メチルペンテン−1)を用いた場合
に、特異的に気液系での気体透過速度が増加する事は予
想されざる驚くべきことである。その理由は現在の所不
明ではあるが、ポリ(4−メチルペンテン−1)が高い
気体透過係数を持つため、膜表面のポリマー部分(細孔
の開口部以外の部分)をも気体が透過し有効表面積が大
きい事や、ポリ(4−メチルペンテン−1)の示す低い
表面エネルギー(約24dyne/cm)による液体側の境膜抵
抗の低下等がその理由として考えられる。しかし本発明
がこの様な理論的推察に拘束されるものでない事は言う
までもない。
本発明に用いられる膜の素材は、ポリ(4−メチルペ
ンテン−1)を実質的に主要成分とすれば良く、ポリ
(4−メチルペンテン−1)を共重合、ブレンドその他
の形で70体積%以上含むものである。含有できる物質と
してはポリマー、有機物質、無機物質、液体、固体等何
であつても良く、無秩序な混入であつても何らかの構造
を持つた複合体であつても良い。
本発明に用いるポリ(4−メチルペンテン−1)の多
孔質膜は平均細孔径が0.005〜1.0μmのものである。平
均細孔径は、液体に接する側の膜表面の走査型電子顕微
鏡(SEM)観察により求める事ができる。細孔の形状が
真円で無い場合は長径と短径の平均とする。細孔径が0.
005μmより小さい膜は、孔の開口面積が小となり、ま
た独立気泡型となり易く、多孔質型のガス交換膜として
の特長が失われる。例えば透過ガスに選択性が現れて、
気体(蒸気を含む)の種類によつてはガス交換膜として
の性能が低下する。一方細孔径が1.0μmより大の時は
液体が細孔内に貫入し易くなり、圧力条件等の使用条件
が極めて限定されたものになる。
本発明に用いる膜の気−気系に於る気体透過速度(例
えばASTM F−316、Dry法)は、酸素透過速度Q(O2
で1.0×10-4(cm3(STP)/cm2・sec・cmHg)以上、酸素
/窒素の分離係数α(O2/N2)(=Q(O2)/Q(N2))
が1.1未満のものである。酸素透過速度がQ(O2)がこ
れより小さいと気−液系に於る気体交換速度も小さくな
り、大きな膜面積を必要とする。又酸素が/窒素の分離
係数が1.1以上の膜は、気体が溶解・拡散機構で膜素材
中を透過する割合が無視できない量になつている事を意
味しており、細孔径が0.005μmより小さい場合と同様
に、多孔質膜としての特長が失われる。
本発明に用いる中空糸の内径は70〜500μmである事
が好ましい。70μm以下では中空糸の内側に流す気体又
は液体の圧力損失が大きく、動力費がかさむ。500μm
以上では透過速度の大きな膜を製造する事が困難になる
と共に、装置体積当りの膜表面積が小さくなり装置のコ
ンパクト化の面で利点が無くなる。内径は装置の寸法や
目的に応じて選ぶ事ができる。
膜厚は、中空率にして30〜90%にする事が好ましい。
ここに 中空率が30%以下では内径に比し表面積が小さく効率が
悪い。90%以上では直径に比し膜厚が薄く力学的強度が
低下し、破損を生じる確率が高くなると共に耐圧も低下
する。
本発明に用いる事のできる膜は多孔質膜製造の一般的
な方法、即ち粉末練込延伸法、可溶物練込溶出法、溶融
・延伸法(例えば特開昭59−199808)、湿式法、半乾式
法等により製造する事ができる。溶融・延伸法について
はまた、特開昭59−229320の比較例にも記載されてい
る。
本発明はまた、気液接触装置の構造に関する。これま
でに知られている中空糸型気液接触装置の代表的な構造
の概略を第1図に示した。
それを図に沿つて説明すると、ケース(1)の内部に
中空糸膜(2)が繊維束状に挿入され、両端の樹脂封止
部(3)で樹脂により封止されており、膜の中空部分は
両端面で開口している。中空糸膜の中空部に液体を流す
場合には、液体は導入口(4)より入り、中空糸膜の中
空部を流れた後排出口(5)よりモジユールの外へ出
る。気体は導入口(6)よりモジユールに導かれ、中空
糸外部を流れた後排出口(7)よりモジユールの外へ出
る。一方中空糸膜外部空間に液体を流す場合は導入口
(6)より液体を導入し排出口(7)より排出する。気
体は導入口(4)より導入し中空糸膜の中空部を通過し
排出口(5)より排出される。
中空糸膜型気液接触装置を用いて、ある流体から特定
種のガスを除去する場合(この代表的な例は、水の脱酸
素である。以下説明の便宜上、水の脱酸素に適用する場
合について説明する)、ガスを除去しようとする流体、
即ち水を中空糸の内側へ流す方法(内部潅流)しか実用
化されていない(例えば特開昭60−255120)。その理由
は種々あろうが、例えば、前記の代表的な構造の中空糸
膜型気液接触装置に於て、水を中空糸の外側に流す(外
部潅流)と、中空糸束の充填ムラや中空糸の疎水性によ
つて生じる中空糸のかたよりに起因する水のチヤンネリ
ング(偏流)が生じ、これが原水入口と脱気水出口とを
短絡することとなつて、水中溶存酸素濃度がある値(例
えば0.5ppm)以下にならないのである。即ち、水の流量
を減じ、水と膜との接触時間をいかに長くしても、高脱
酸素水は得られない。これは脱気を目的とした気液接触
装置に於ては致命的であり、そのため、圧損の増大や膜
面積当りのガス交換効率の低さにもかかわらず流路の短
絡のない内部潅流型の水の脱気装置しか実用化されてい
ないのであろう。また、ガスを除去すべき流体が気体の
場合の例として、空気や廃ガスからのNOxの除去が挙げ
られる。この例では、空気に含まれるNOxを隔膜気液接
触装置を通して水もしくはアルカリに吸収させ除去する
が、この場合にも、排出ガス中のNOx残留濃度をある値
以下(例えば0.6ppm以下)にするには、水の脱酸素と同
じ理由により中空糸内側に廃ガスを流すタイプである必
要があつた。
本発明に於ては、中空糸を中空糸同士もしくは他の糸
条とによつて組織されたシート状物(以下、中空糸シー
トと言う)の重畳物または集束体の状態でケースに組み
込む事によつて、中空糸外部を流れる流体の偏流と流路
の短絡を防ぎ、ガスを除去すべき流体が中空糸の外側に
接して流れる構造をとつてもガスの残留濃度を極めて少
なくできるものであり、本発明に用いる中空糸膜の特性
を気液接触装置の構造で損ねる事無く、十分発揮させる
事ができる。
中空糸シートの形状としては、中空糸同士が角度3゜
〜90゜の角度で交叉した織物や、中空糸を緯糸とし、通
常の糸条を経糸として編まれ、もしくは織れらた簾状の
ものが本発明に使用し得る。簾の中空糸間隙は用途、使
用条件に応じて任意に設定することができるが、中空糸
外径の1/50〜10倍程度が好ましく、1/5〜2倍がさらに
好ましい。装置体積当りの膜の充填効率を上げるため、
また中空糸外側の境膜抵抗を減じる事により膜面積当り
の処理量を上げるためには、間隙を小さくする事が好ま
しい。しかし、間隙を小さくすると、中空糸間隔のムラ
の影響が大きくなつて、かえつて効率が低下するため、
中空糸間隔のムラの程度にもよるが間隙は0.1mm以上に
とるのが効果的である。中空糸外部に流す流体が水の場
合には中空糸間隙は0.1〜0.3mmが最も好ましい。一方、
中空糸外部を流れる流体の流量を上げたい場合や圧力損
失を小さくする場合、流体が固体やゲル等を分散する場
合には比較的広くとることが好ましい。間隙を中空糸外
径の10倍以上に広くとると、装置への充填効率が低下
し、装置体積当りの膜面積が小さくなる。
中空糸シートを気液接触装置のケースに充填する形状
としてはシートをスパイラルに巻いた形状、棒や多孔パ
イプに巻きつけて充填した形状、折りたたんで充填した
形状など、採用する気液接触のタイプに合わせて任意の
形状を採用し得る。気液触媒のタイプとしては、パラレ
ルフロー、カウンターフロー、クロスフロー等、目的用
途に応じて任意に選択し得るが、本発明の中空糸の性能
を発揮させ、また中空糸をシート状にする効果を十分に
上げるには、流体が中空糸シート面を貫流する向きに流
すクロスフロータイプが最も好ましい。この様な構造の
実施態様としては、実施例に示す様に角型の箱型ケース
に、中空糸シートを積層して並べた形状や、多孔パイプ
に中空糸シートをスパイラル状に巻きつけ、流体を中心
から外周へ向け、又は外周から中心へ向けて流すタイプ
を例示できる。
本発明が適用できる気体については特に制限は無く、
O2、O3、N2、CO、CO2、NH3、H2S、SOx、NOx、メルカプ
タン、ハロゲン、ハロゲン化水素等、気体一般に用いる
事ができる。本発明はまた、例えばアルコール類、ケト
ン類、炭化水素等の気体(蒸気を含む)にも利用でき
る。装置に導く気体は純粋なものであつても良いし混合
物であつても良い。これらの気体の中で、酸素及びその
混合気体(空気等)が実用上に於て特に重要である。
本発明が適用できる液体についても液が細孔内に入り
込まない限り特に制限は無く、水、酸、アルカリ等であ
つて良いが、産業上、液体で水である場合が特に重要で
ある。水は海水等の溶液であつても良いし、微生物その
他を分散させた分散系であつても良い。特に本発明は膜
が極めて低い表面張力を持つ為、多孔質型の膜でありな
がら界面活性剤を含有する系や、有機溶剤を含有する水
溶液に対しても適用可能である。
本発明の装置はまた、液体中へある気体を供給しつ
つ、液体に溶解している他の気体を取出す事もできる。
この機能は例えば微生物の培養に用い得る。即ち、培養
液に酸素を供給しつつ同時に培養液から二酸化炭素を抜
出す事ができる。本発明の装置はこの機能においても優
れた性能を持つている。
[発明の効果] 本発明は、従来の多孔質膜型気液接触装置に比べ高い
ガス交換能を有する事が第一の特長である。
これまでの多孔質中空糸型隔膜に比べて高いガス交換
能力を持つ中空糸膜をシート状に組織してケースに組込
む事により、気液ガス交換効率を飛躍的に高めている。
この装置構造による気液ガス交換効率の改善効果は、従
来のポリプロピレン、PTFE、ポリスルホンその他の多孔
質膜を隔膜とした場合より高いものである。その理由と
して、本発明の膜は膜自体の、ガス交換速度が高いた
め、装置構造の改善による液側境膜抵抗の減少の効果が
大きく現れるためであろうと推察される。
この特徴は、気体、液体を問わず、ある流体からガス
を除去する用途に適用し、かつ、ガスを除去すべき流体
を中空糸の外側に接して流す場合に特に発揮される。そ
してまた同様に、気体、液体を問わずある液体にガスを
飽和近くまで供給する用途に適用し、かつ、ガスを供給
すべき流体を中空糸の外側に接して流す場合においても
特に本発明の特徴が発揮される。即ち、この様な場合に
は、中空糸をシート状にして組み込む方法を採らなけれ
ば、例えば水の脱酸素において、溶存酸素量を原水の1/
20以下にする事は困難であるし、また例えば水への酸素
供給に於て溶存酸素量を飽和の95%以上にまで高める事
が困難である。一方、本発明の中空糸をシート状にして
装置に組込み、流路長等の構造を用途や使用条件に合わ
せて最適化すれば、これまでに知られていた多孔質膜を
用いるよりも、コンパクトで高性能の装置とする事がで
きる。
本発明の効果は、上記の脱気や給気の例の様に、気液
ガス交換を極限近くまで(平衡点近くまで)行なわせる
場合に顕著であるが、通常の気液ガス交換装置に於て
も、ガス交換効率の改善効果は大きなものである。
本発明の中空糸膜型気液接触装置の他の効果として、
ガス除去を必要とする液体を中空糸外部に流す構造がと
れる事により圧力損失を低くする事が出来、ポンプの小
型化を計る事ができる事、また動力費も小さく抑えられ
る事が挙げられる。
本発明はさらに、膜素材が極めて低い表面エネルギー
を持つ事(約24dyne/cm)に基く特徴、即ち膜表面の汚
れによるガス交換速度の低下が少く、又洗浄による能力
の回復率も高いという長所を有している。
[実施例] 以下実施例に沿つて本発明を更に具体的に説明する
が、本発明はこれらの例によつて限定されない。
実施例1 メルトインデックス(ASTM D1238、260℃、5kg)26
のポリ(4−メチルペンテン−1)を直径6mmの円環型
ノズルを用いて紡糸温度280℃、引取速度135m/分、ドラ
フト225で溶融紡糸を行ない外径330μm、内径265μm
の中空糸を得た。この時ノズル下5〜35cmの範囲を温度
18℃、風速1.0m/1秒の横風で冷却し、長さ4mの紡糸筒を
経た後ノズル下5.5mの位置で巻取つた。得られた中空糸
を定長下に、温度210℃の熱風循環恒温槽中に導入し30
秒間滞留させ熱処理を行なつた。熱処理された糸をさら
にローラー系にて連続的に35℃、延伸倍率(DR)1.3の
冷延伸、150℃、DR1.5の熱延伸および200℃、DR0.9の熱
固定を行なう事により外径255μm、内径205μm、膜厚
25μmの中空糸膜を得た。この中空糸膜は白色を呈して
おり、SEM(走査型電子顕微鏡)観察によれば、中空糸
内外表面共に平均孔径約0.1μmの多数の細孔が観察さ
れた。ASTM F−316ドライ法により測定した気体透過
速度はQ(O2)=6.82×10-3[cm3(STP)/cm2・sec・c
mHg]、Q(N2)=7.30×10-3[単位はQ(O2)と同
じ]、α(O2/N2)=0.935であつた。
この中空糸膜(2)を緯糸とし、30デニール12フイラ
メントのポリエステル糸を経糸(10)として、絡み織り
によつて緯糸密度25本/cm、経糸密度1本/cmの簾状中空
糸シートを形成した。この中空糸シートを第2図に示す
様にスパイラルに巻き、これを第1図の中空糸の束の代
りにケースに挿入し、ポリウレタンで封止する事により
気液接触装置を製造した。このとき、ケースの内径は35
mm、封入した中空糸数は3000本、封止部を除く中空糸の
実効長は20cmであり、中空糸外表面基準の有効膜面積は
0.481m2となる。
この気液接触装置の導入口(6)より中空糸の外側に
接するように温度25℃、溶存酸素量7.8ppmの水道水を1
/分の流速で流し、一方導入口(4)および排出口
(5)をドライ型真空ポンプにて7トルに減圧したとこ
ろ、排出口(7)より流出する水の溶存酸素量をポーラ
ログラフ型酸素濃度計(電気化学計器株式会社製DOL−1
0型)で測定したところ、0.4ppmであつた。
比較例1 簾状中空糸シートの代りに単なる中空糸の束を挿入し
た以外は、中空糸の本数や寸法等は実施例1と全く同様
にして製作した気液接触装置について実施例1と同様の
測定を行なつたところ、流出水の溶存酸素量は3.3ppmで
あつた。そこで水の流速を0.1/分まで下げ、気液の
接触時間を10倍にしたが、溶存酸素濃度は1.5ppmまで下
がつたにとどまつた。
比較例2 比較例1と全く同じ気液接触装置を用い、中空糸内側
に水を流し、外側を減圧した他は比較例1と同じ測定を
行つた。流出水の溶存酸素濃度は、流速が1/分のと
き0.4ppm、0.1/分のとき0.1ppmであつた。
実施例2 メルトインデツクス(ASTM D1238による)26のポリ
−4−メチルペンテン−1を、直径6mmの円環型中空繊
維用ノズルを用いて、紡糸温度290℃、引取速度300m/
分、ドラフト270で溶融紡糸し、外径343μm、膜厚34μ
mの中空繊維を得た。この時ノズル口下3〜35cmの範囲
を温度180℃、風速1.5m/秒の風で冷却した。得られた中
空繊維を温度210℃、延伸倍率(DR)1.05で、ローラー
系を用いて連続的に熱風循環型恒温槽中に導入して10秒
間滞留させる事により熱処理を行ない、引続き35℃、DR
1.4の冷延伸、150℃、DR1.4の熱延伸、および200℃、DR
0.9の熱固定を行なつて、外径255μm、膜厚25μmの中
空繊維膜を得た。この膜の内径表面を12000倍のSEMで観
察したところ、内表面には直径約0.1μmの多数の微細
孔が、また外表面には直径約0.2μmの微細孔が多数認
められた。
この中空繊維膜0.5gを長さ約10mmに切つて比重びんに
詰め、真空ポンプで1×10-2トル以下に脱気したのち水
銀を充填し重量を計るピクノメトリーで測定したときの
空孔率は28%であつた。またこの中空繊維をガラス管に
封入し、ASTM D1434圧力法に準拠して25℃にて気体透
過速度を測定したところ、Q(O2)=1.14×10-3(単位
は前出。以下同じ)、Q(N2)=1.12×10-3、α(O2/N
2)=0.9405であつた。
この中空糸を緯糸とし、30デニール12フイラメントの
ポリエステル糸を経糸として、縦編み法にて緯糸密度28
本/cm、経糸密度1.5本/cmの簾状中空糸シートを形成し
た。この中空糸シートを多数の穴の開いた外径20mmの多
孔パイプを芯としてスパイラルに巻き、多孔パイプごと
ケースに装填し、封止する事によつて、第3図に示した
構造の気液接触装置を製作した。
この気液接触装置に組込まれた中空糸膜の有効長さは
30cm、シート積層厚(スパイラルシートの外径マイナス
内径の1/2)は4cmであり、有効膜面積は12.4m2であつ
た。
この気液接触装置の導入口(6)より中空糸の外側に
溶存酸素濃度7.9ppmの25℃の水道水を17/分の流速で
流し、一方、中空糸の内側に通じて導入口(4)および
排出口(5)を真空ポンプにて10トルに減圧した。排出
口(7)より流出する水の溶存酸素濃度を測つたところ
0.2ppmであつた。
実施例3 実施例2で使用したものと同じ中空糸膜を経糸とし、
30デニール12フイラメントのポリエステル糸で三本絡み
織りにて、経糸密度20本/cm、経糸密度2本/cmの簾状中
空糸シートを製作した。この中空糸シートを第4図に示
す様に折り畳んで積層密度が30枚/cm、幅10cm、厚さが6
cmの中空糸シートの重畳体を形成した。この重畳体を8m
m間隔で直系3mmの多数の開孔を穿設した厚さ3.5mmの2
枚のポリプロピレン多孔板で狭持して、角筒状のハウジ
ング内に収容した。そして中空糸の両端をポリウレタン
樹脂の隔壁でハウジング液密に接着し、かつ重畳体の両
端面とハウジングの側面に形成された空隙に接着剤を充
填して第5図に示す気液接触装置を作成した。この気液
接触装置の中空糸有効長は30cmであり、有効膜面積は8.
5m2であつた。
実施例4 熱固定のDRが0.87である事以外は実施例2と同じ方法
で製造した中空糸膜の気体透過特性は、Q(O2)=2.0
×10-4(単位は前出。以下同じ)、Q(N2)=2.1×10
-4、α=1.05であつた。この中空糸膜を用いて実施例2
と同様にして気液接触装置を製作した。この装置の組込
まれた中空糸の有効長さ、シート積層厚、有効膜面積
も、実施例2と同じであつた。
この気液接触装置の入口(6)より中空糸の外側に溶
存酸素濃度7.9ppmの25℃の水道水を17/分の流速で流
し、一方、中空糸の内側に通じる導入口(4)および排
出口(5)を真空ポンプにて10トルに減圧したところ、
排出口(7)より流出する水の溶存酸素濃度は0.3ppmで
あつた。
この気液接触装置の導入口(6)より中空糸外側に接
する側に溶存酸素濃度7.8ppm、温度25℃の水を10/分
の流速で流し、導入口(4)および排出口(5)から中
空糸内側を真空ポンプにて10トルに減圧したところ、流
出する水の溶存酸素濃度は0.1ppm以下であつた。
【図面の簡単な説明】
第1図は従来知られている中空糸膜型気液接触装置の代
表例を示す部分縦断正面図、第2図は中空糸シートをス
パイラルに巻いた中空糸束の斜視図、第3図は実施例2
に示される中空糸膜型気液接触装置の縦断面図、第4図
は中空糸シートを折り畳んで重畳体を形成する場合の概
念的斜視図、第5図は実施例3に示される本発明装置の
部分破断斜視図である。 図中の符号は以下の通りである。 1……ケース、2……中空糸膜、 3……樹脂封止部、4、6……導入口、 5、7……排出口、8……キャップ、 9……多孔パイプ、9′……多孔板、 10……経糸。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−102714(JP,A) 特開 昭63−264127(JP,A) 特開 昭62−45318(JP,A) 特開 昭61−101227(JP,A) 特開 昭59−229320(JP,A) 特開 昭59−19506(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体と気体とをガス交換膜を介して接触さ
    せ、夫々に含有されるガスを、膜を通過して移動または
    相互に交換させる気液接触装置において、ガス交換膜
    が、ポリ(4−メチルペンテン−1)を実質的主要成分
    とする材料より成る多孔質中空糸膜であつて、多孔質を
    形成する細孔の平均径が0.005〜1.0μm、膜の酸素透過
    速度が1.0×10-4[cm3(STP)/cm2・sec・cmHg]以上で
    あり、該中空糸が、中空糸同士または他の糸条とによつ
    て組織されたシート状物の重畳体または集束体の状態
    で、ケース内に組み込まれていることを特徴とする多孔
    質中空糸膜型気液接触装置。
  2. 【請求項2】中空糸膜の外側に接して液体が流通し、中
    空糸膜内側へガス透過される外部潅流型の、液体からの
    脱ガスに用いられる請求項1に記載の多孔質中空糸膜型
    気液接触装置。
  3. 【請求項3】中空糸膜の外側に接して混合気体が流通
    し、中空糸膜内側を流れる液体へ特定種のガスが分別移
    行される内部潅流型のものである請求項1に記載の多孔
    質中空糸膜型気液接触装置。
  4. 【請求項4】中空糸のシート状物が、並行に配列された
    中空糸を、それとほぼ直角となる他の糸条で簾状に編組
    したものである請求項1、2または3に記載の多孔質中
    空糸膜型気液接触装置。
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