JP3528889B2 - グラウンドアンカー及びその施工方法並びに同アンカーを用いた地山掘削工法 - Google Patents

グラウンドアンカー及びその施工方法並びに同アンカーを用いた地山掘削工法

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JP3528889B2
JP3528889B2 JP04046396A JP4046396A JP3528889B2 JP 3528889 B2 JP3528889 B2 JP 3528889B2 JP 04046396 A JP04046396 A JP 04046396A JP 4046396 A JP4046396 A JP 4046396A JP 3528889 B2 JP3528889 B2 JP 3528889B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、グラウンドアンカー及
びその施工方法並びに同アンカーを用いた地山掘削工法
に係り、特に地中に施工したグラウンドアンカーにより
地中構造物を保持できるようにしたグラウンドアンカー
及びその施工方法並びに同アンカーを用いた地山掘削工
法に関する。
【0002】
【従来の技術】グラウンドアンカーは地中に形成したア
ンカー体に引張荷重を伝達する構造材で、アンカー孔内
の先端地中部においてセメント系グラウト等により造成
されたアンカー体と、このアンカー体から孔口まで延設
されたPC鋼線ケーブル等からなる引張鋼材と、地表部
分の構造物に反力をとり、引張鋼材に所定の緊張力を加
えることができるようにしたアンカー頭部とを主要部と
して構成されている。
【0003】従来よりグラウンドアンカーは、たとえ
ば、掘削に伴うアンカー式山留め工、斜面・のり面等の
地すべり防止工、擁壁等の補強工のように、多くの抗土
圧構造物の安定化手段として利用されている。前述した
ようにグラウンドアンカーは地中に形成された先端定着
部たるアンカー体と、地表部分のアンカー頭部との間に
配置された引張鋼材を所定の緊張力で緊張しているた
め、アンカー頭部の定着作業は地上作業として行われる
のが一般的である。アンカー頭部における定着は油圧ジ
ャッキ等の緊張装置を用いて行うが、導入された緊張力
が加わっても変形したり破損したりしない程度の強度を
有する台座、定着具等をアンカー頭部に設ける必要があ
る。
【0004】開削工事等における多段アンカー支保によ
る土留め工では、所定の掘削盤まで掘削された段階で対
応する段でのアンカー建込みが行われ、土留め壁の応力
をチェックしながら、順次盤下げ掘削とアンカーによる
支保とを繰り返すようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】このように、従来のグラウンドアンカー工
法ではアンカー頭部の定着は地上部分で行われる。この
ため、すでに地中に構築された地中構造物の周囲を掘削
するような場合に、グラウンドアンカー等で地中構造物
を支持地盤に定着させて構造物の安定を図る場合などに
は、構造物が一旦、地表に露出するまで掘削を行い、そ
の後、グラウンドアンカーを施工しなければならない。
したがって、地中構造物の掘削進行過程では、構造物が
一時的に無支保状態に置かれ、部材応力が過大になり、
構造物が破壊に至るおそれもある。
【0007】また、従来の土留壁等のグラウンドアンカ
ーでは、本設構造物が構築される掘削エリア側壁面の定
着部に所定のアンカー台座を設け、定着具によりアンカ
ー頭部の定着を行う必要がある。このため、定着部が壁
面から本設構造物側に所定量だけ突出し、構築予定の本
設構造物と土留壁の壁面との間に所定のクリアランスを
とらなけらばらないという問題がある。
【0008】そこで、本発明の目的は上述した従来の技
術が有する問題点を解消し、あらかじめ地中において定
着状態を保持できるようにしたグラウンドアンカー及び
その定着方法並びに同アンカーを用いた地山掘削工法を
提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、第1の発明は地山に削孔されたアンカー孔内に挿入
された引張鋼材の先端位置に、該引張鋼材を心材として
第1のアンカー体を造成して前記引張鋼材先端を前記地
山中にあらかじめ定着するようにした第1の定着長部
と、該第1の定着長部から所定長さの範囲をアンカー自
由長部とするために前記引張鋼材を覆うように設けられ
た第1の遮断被覆体と、該第1の遮断被覆体と所定の離
れをとって前記引張鋼材を覆うようにアンカー孔口部側
に設けられた第2の遮断被覆体と、前記第1の遮断被覆
体と第2の遮断被覆体との間に位置する前記引張鋼材部
位を心材として第2のアンカー体を造成し、該第2のア
ンカー体を、前記引張鋼材に所定の張力が導入された際
に、該導入張力を前記引張鋼材内に保持するための地山
内定着端とした第2の定着長部とを備えたことを特徴と
するものである。
【0010】また、地山に削孔されたアンカー孔内に挿
入された引張鋼材の先端位置に、該引張鋼材を心材とし
て第1のアンカー体を造成して前記引張鋼材先端を前記
地山中にあらかじめ定着するようにした第1の定着長部
と、該第1の定着長部から所定長さの範囲をアンカー自
由長部とするために前記引張鋼材を覆うように設けられ
た遮断被覆体と、該遮断被覆体と地表面との間に位置す
る前記引張鋼材部位を心材として第2のアンカー体を造
成し、該第2のアンカー体を、前記引張鋼材に所定の張
力が導入された際に、該導入張力を前記引張鋼材内に保
持するための地山内定着端とした第2の定着長部とを備
えたことを特徴とするものである。
【0011】施工方法の発明として、地山にアンカー孔
を削孔し、該アンカー孔内に、所定範囲をアンカー自由
長部とするための第1の遮断被覆体と該第1の遮断被覆
体と所定の離れをとってアンカー孔口部側に位置した第
2の遮断被覆体とで一部が覆われた引張鋼材を挿入埋設
し、該引張鋼材の先端位置で該引張鋼材を心材として第
1のアンカー体を造成して該引張鋼材の先端部を前記地
山中に定着し、さらに前記第1の遮断被覆体と前記第2
の遮断被覆体との間で前記アンカー孔内に露出している
前記引張鋼材を心材として第2のアンカー体を造成し、
前記第2のアンカー体が固化する前に前記引張鋼材に所
定の張力を導入し、固化した状態の前記第2のアンカー
体を第2の定着長部として前記導入張力を前記引張鋼材
内に保持するようにしたことを特徴とするものである。
【0012】また、地山にアンカー孔を削孔し、該アン
カー孔内に、所定範囲をアンカー自由長部とするための
遮断被覆体で一部が覆われた引張鋼材を挿入埋設し、該
引張鋼材の先端位置で該引張鋼材を心材として第1のア
ンカー体を造成して該引張鋼材の先端部を前記地山中に
定着し、さらに前記遮断被覆体と地表面との間で前記ア
ンカー孔内に露出している前記引張鋼材を心材として第
2のアンカー体を造成し、前記第2のアンカー体が固化
する前に前記引張鋼材に所定の張力を導入し、固化した
状態の前記第2のアンカー体を第2の定着長部として前
記導入張力を前記引張鋼材内に保持したことを特徴とす
るものである。
【0013】地山の掘削工法の発明として、周辺地山を
グラウンドアンカーで支保しながら所定地山範囲の掘削
を行う地山掘削工法であって、前記所定地山範囲の掘削
に先立ち、第2の遮断被覆体の埋設範囲が前記掘削され
る地山範囲に相当するように原地盤位置から掘削される
地山範囲の周辺の地山に向けて、請求項1記載のグラウ
ンドアンカーを施工してあらかじめ掘削予定範囲の地山
の安定を図り、その後、前記第2の遮断被覆体の埋設範
囲の地山部分を掘削し、該地山部分に埋設された前記第
2の遮断被覆体と前記引張鋼材とを除去し、前記グラウ
ンドアンカーの第2の定着長部位置以深の範囲で、掘削
後の周辺地山の安定を図るようにしたことを特徴とする
ものである。
【0014】前記第1の遮断被覆体及び第2の遮断被覆
体は、管状体シースで被覆するか、前記引張鋼材に塗布
されたグリースを防食テープで被覆することが好まし
い。
【0015】また、前記アンカー体は、前記アンカー孔
内にセメント系グラウト材を加圧注入して造成すること
が好ましい。
【0016】さらに、前記第2の定着長部は、グラウン
ドアンカーを施工する際、あるいはグラウンドアンカー
の支保により地山を掘削する際に、あらかじめ地盤改良
が施された地山範囲内に設けられるようにすることが好
ましい。
【0017】
【実施の態様】以下、本発明によるグラウンドアンカー
の構成及びその施工方法の一実施の態様について添付図
面を参照して説明する。図1は、本発明に用いられるグ
ラウンドアンカー1のテンドン10(本明細書では、所
定長さのアンカー用引張材を所定本数に束ね、アンカー
孔に挿入できるようにユニット化したものをテンドンと
呼ぶ)及びこのテンドン10を地山内に施工した状態の
グラウンドアンカー1の断面を示したものである(以
下、地中に完成したアンカーをグラウンドアンカー1、
引張材ユニットの状態をテンドン10と表す)。
【0018】同図(a)に示したテンドン10は、所定
の長さのアンカー長分の引張鋼材11と、この引張鋼材
11が内部に挿通され所定位置に固定されたシース1
2、13と、金属製先端キャップ14とから構成されて
いる。このうち引張鋼材11の鋼線本数及び断面積は設
計アンカー力が許容アンカー引張力を越えないような範
囲で設計されている。引張鋼材11にはPC鋼線、異形
PC鋼線、PC鋼より線、PC鋼棒等、耐久性に富む種
々の線材、棒材を使用することができる。また、本実施
の形態では、第1の遮断被覆体及び第2の遮断被覆体と
して管状体たるシース12、13が使用されている。こ
のシース12、13は、テンドン10が挿入されたアン
カー孔内にグラウト材を充填した際に、グラウト材とテ
ンドン10との縁を切る役割を果たし、この部分がアン
カー自由長部21、余剰自由長部23を構成する。シー
ス12、13はポリエステル等の合成樹脂製管からな
り、このシース内には防錆オイル等が充填されている。
これによりシース位置内に挿通されている引張鋼材11
はアンボンド部材として機能する。本発明では、第2の
遮断被覆体としてのシース13のシース長は、同図
(b)に示したようにグラウンドアンカー1を施工した
後の地盤掘削作業によって現地盤から掘削盤まで除去さ
れる掘削部分の地山深さに相当するように設定されてい
る。この区間は、グラウト材が充填された際に余剰自由
長部23を構成する。シース12,13には防錆加工を
施した金属製管を使用してもよい。
【0019】シース位置から先端側の引張鋼材11部分
は周囲にグラウト材が加圧注入された場合に、アンカー
体定着長部20を構成するようになっている。このアン
カー体定着長部は本発明でいう第1定着長部として機能
する。また、第1の遮断被覆体12と第2のシース13
との間には、引張鋼材11が露出し、この部分が第2定
着長部22を構成するようになっている。
【0020】擁壁、土留壁のような抗土圧構造物では、
第1定着長部20はグラウンドアンカー1によって支持
される構造物等の外的安定を考慮して決定することが好
ましく、少なくとも構造物背面の主働すべり面より深い
位置にアンカー先端が定着されるようにアンカー長を設
定することが好ましい。
【0021】次に、図1(b)を参照して地山中に施工
されたグラウンドアンカー1の構成について説明する。
グラウンドアンカー1の先端周囲のアンカー孔内にはセ
メント系グラウトが加圧注入されており、引張鋼材11
を心材としたアンカー体が造成されている。このアンカ
ー体が第1定着部20として機能する。さらに第1の遮
断被覆体としてのシース12の周辺のアンカー孔内には
グラウト材が無加圧注入されている。これにより、地山
とシースとの一体化が図られ、かつシース内の引張鋼材
と地山とは確実に遮断されて縁が切られている。これに
より、アンカー自由長部21が形成される。シース12
のアンカー孔口側端には、内部にセメントミルクが注入
されて膨張固化した状態の布パッカー15が位置してい
る。この布パッカー15には注入用ホース16が接続さ
れており、この注入用ホース16を介して布パッカー1
5内にセメントミルクが供給される。さらに、シース1
2とシース13との間の引張鋼材11が露出した部分に
第2定着長部22が形成されている。この第2定着長部
22も第1定着長部20と同様にグラウト材の加圧注入
により所定のアンカー体が形成されたものである。シー
ス13の周辺には地山とシース13の一体化を図るため
に、無加圧グラウトが注入されている。これにより、第
2定着長部22と地表面との間に余剰自由長部23が形
成される。この余剰自由長部23では、グラウト部分と
引張鋼材11との縁が切れているため、原地盤から所定
深さの掘削盤までの掘削作業において、グラウトを破砕
して、容易に引張鋼材11を撤去することができる。
【0022】なお、アンカー体部分を造成するグラウト
材はテンドン緊張時及び設計地山荷重作用時において、
モルタルあるいはセメントペーストの圧縮強度が所定の
設計強度以上になるように配合することが好ましい。ま
た、第1定着長部20と第2定着長部22では、テンド
ン10とグラウト材とが直接付着するため、この部分に
おける所定の付着強度が発揮できるようにグラウト強度
を設定することと、周辺地山の地盤改良を図ることが重
要である。
【0023】図1(c)は、グラウンドアンカー1のテ
ンドン10の他の実施の態様として、シース12、13
に代えて、引張鋼材11の表面に十分粘性の高いグリー
ス5を所定厚さに塗布し、さらにその周囲を防食テープ
6で巻回して被覆し、第1の遮断被覆体及び第2の遮断
被覆体とした例を示した全体図である。同図に示した第
1の遮断被覆体及び第2の遮断被覆体においても引張鋼
材11とグラウト材との縁切りが確実に実現するので、
この部分がアンカー自由長部21、余剰自由長部23を
構成することができる。
【0024】次に、図1に示したグラウンドアンカー1
を地山に施工する手順について図2を参照して説明す
る。まず、同図(a)に示したように設計アンカー長に
相当するアンカー孔30を地盤に削孔する。このアンカ
ー孔30の削孔は、地上部に設置されたクローラータイ
プのベースマシーンに搭載された削孔機(図示せず)を
用いて行う。この削孔機により削孔ロッドが内部に収容
されたケーシングパイプ31に回転と押し込み力とを加
えて地中に圧入し、ケーシングパイプ31で孔壁が支保
された所定長さのアンカー孔30を構築する。ケーシン
グパイプ31の直径は設計アンカーの本数、断面積に適
した径に設定することが好ましい。
【0025】アンカー孔30の削孔において、地下水位
より深い位置までアンカー孔30を削孔する場合には、
地下水が逆流して地盤が乱れるのを防止するために、被
圧下削孔として所定の対策工をとることが好ましい。た
とえば、地下水の逆流を防止することができるクローネ
ンビットや、逆止弁がついたビットを使用して削孔した
り、アンカー孔30の口元位置に止水ボックスを設け、
孔口からの地下水の噴出を防止することが好ましい。所
定の深さまでアンカー孔30を削孔したら、アンカー孔
30内を水洗浄し、孔底に残った土砂と孔壁に付着した
スライムとを除去する。
【0026】次に、同図(b)に示したように引張鋼材
11の所定の位置にシース12、13が固定されたテン
ドン10(一例として図1(a)参照)をアンカー孔3
0内に挿入する。このときシース12の孔口端には公知
の布パッカー15が折り畳んだ状態で装着されている。
そして、この布パッカー15に接続された注入用ホース
16もテンドン10に沿ってアンカー口元32まで導か
れている。引き続き、アンカー定着部にグラウト材充填
による1次注入を行う。このグラウト材を注入する注入
管(図示せず)は、あらかじめ孔底部まで挿入してお
き、グラウト材がシース12の先端位置まで満たされる
ように注入する。このときヘッド加圧を行うための止水
ボックス33を、アンカー口元位置に設けることが好ま
しい。
【0027】さらに、この状態でアンカー口元位置32
にケーシング引抜き用ジャッキ(図示せず)を配置し、
ケーシングパイプ31の引き抜き作業を行う。1回の引
き抜きでケーシングパイプ1本分(通常1.5m)を引
き抜き、所定本数のケーシングパイプ31を取りはずし
た後に、ケーシング引抜き用ジャッキの後端に加圧ヘッ
ドを取付け、ポンプ34により加圧力P=2〜5kg/cm2
で加圧注入(2次注入)を行う。このときアンカー先端
位置の第1定着長部20には、加圧注入によって地山に
密着したアンカー体が造成される(図2(c)参照)。
【0028】次いで、シース12が配置された位置の周
囲に無加圧グラウトを施しながら、ケーシングパイプ3
1をシース上端位置まで引き抜く。ケーシングパイプ3
1がシース12の孔口側端位置まで引き抜かれた段階
で、布パッカー15内にセメントミルクを加圧注入し、
アンカー孔30の閉塞を行う(図2(d)参照)。
【0029】この布パッカー15にセメントミルク注入
作業を行うとともに、第1定着長部20及びアンカー自
由長部21のグラウト強度が所定の圧縮強度に達するま
で約1日程度の養生期間をおくことが好ましい。また、
布パッカー15位置で止水されたアンカー孔30の水洗
い洗浄を行い、孔内のスライム及び孔壁、引張鋼材11
の表面の汚れを除去し、第2定着長部22でセメントミ
ルクが固化しないようにする。さらに、2期注入として
シース12とシース13との間に位置する第2定着長部
22に、第1定着長部20と同様にの加圧注入を行い、
さらにシース13の周囲の注入を続けて行い、地表面位
置までのアンカー孔30のグラウト注入を行って余剰自
由長部23を形成し、グラウンドアンカーの打設を完了
する。このグラウト注入が完了すると同時に、地上のア
ンカー孔口付近に反力架台40を構築する。この反力架
台40上に緊張ジャッキ41を装備する。緊張ジャッキ
41により所定の緊張力が加えられた際に、反力架台4
0の部材が変形、変位せずにジャッキ反力が得られるよ
うにすることが必要である。また、同時に地山部分に十
分な部材強度を有するリング状鋼製反力基礎42を設け
ることが好ましい(図2(e)参照)。
【0030】そして、第2定着長部22のグラウト材が
固化する前に、緊張ジャッキ41によって所定の緊張力
をアンカーに導入し、グラウンドアンカーとしての緊張
を行う(図2(f)参照)。さらに、この状態からグラ
ウト材が所定の強度を発揮した段階で、緊張ジャッキ4
1を取り外し、地上部に露出しているアンカー余長分を
切断する(図2(g)参照)。最終的に、グラウト注入
及びアンカー緊張作業の後、所定の養生期間をあけた後
に、同図(g)に示した余剰自由長部23に相当する地
山部分43の掘削を行う。このときグラウンドアンカー
1の導入張力により地山を所定の3軸応力状態におくこ
とができ、地山の安定化を図ることができる。また、余
剰自由長部23にはシース13が装着され、引張鋼材1
1とグラウト材とが縁切りされているため、引張鋼材1
1の除去を容易に行える。
【0031】図3は、余剰自由長部を有せず、地表面位
置に直接、第2定着長部の定着端を形成したグラウンド
アンカーのテンドン10を示した全体図である。このテ
ンドン10は、図1(b)に示したシース13に相当す
る第2の遮断被覆体を設けない構造になっている。たと
えば、グラウンドアンカーを打設した後に掘削を行うこ
となく、原地盤がそのままグラウンドアンカーの定着端
となるような場合には、余剰自由長部を設ける必要がな
い。したがって、この場合にはグラウンドアンカーの定
着に必要なアンカー長が得られるように第2定着長部2
2を、地表面近傍まで形成すればよい。
【0032】図4の各図は、図3に示したグラウンドア
ンカーの施工手順を示した施工フロー図である。その施
工順序は図2に示した場合とほぼ同じである。このとき
グラウンドアンカーを施工した部分では。余剰に注入を
行った地表面近くの掘削を行わないので、原地盤近くの
地山位置43まで第2定着長部22が形成される。
【0033】次に、このグラウンドアンカーを用いて所
定範囲の地山掘削を行うようにした地山掘削工法の施工
例について図5〜図7を参照して説明する。図5(a)
〜(e)は、すでに供用されている下水幹線の下水管の
一部が露出する程度に上方地盤を掘削する工事を想定
し、そのときの下水管防護工に前述のグラウンドアンカ
ーを適用し、地山掘削を行うようにした例を示した概略
施工順序図である。本例では、図5(a)に示したよう
に現地盤より所定のかぶり深さ位置に埋設された下水管
50の上部が露出するまでの地山掘削作業が予定されて
いる。
【0034】まず、この上方掘削によって下水管50が
地表に露出した際の上部防護工となる地盤改良ブロック
51を、コラム・ジェット・グラウト工法等を用いて下
水管の上部及び側面を覆うように門型に形成する(図5
(b)参照)。このコラム・ジェット・グラウト工法
は、地山をセメント系固結材と置換して地盤内の所定範
囲に円柱状固結体を連続的に造成する公知の地盤改良工
法である。次いで、図5(c)に示したように、コラム
・ジェット・グラウトで防護された地盤改良ブロック5
1部分を貫通するようにして下水管50を挟んで対称位
置となるような両側位置に所定本数のアンカー孔を削孔
し、所定長さのテンドン10を設置する。アンカー孔3
0の削孔深さは、アンカー定着部が下水管50以深の支
持層に到達ような長さに設定することが好ましい。そし
て、先端アンカー部にグラウト材を注入してアンカー体
を造成し、第1定着長部20を造成する。このとき地盤
改良ブロック51の下端において図5(d)に示したよ
うに布パッカー15を膨張させ、その上部と下部との縁
を切り、上部は水洗い洗浄等してスライム等が固化しな
いようする。第1定着長部20の固化強度が確認された
後、地盤改良ブロック51内にグラウト材の加圧注入を
行い、第2定着長部を造成する。さらに、グラウト材が
固化する前に地上位置に設置した緊張ジャッキ(図示せ
ず)によってアンカー第2定着長部22に所定の緊張力
を加え、アンカー先端の支持地盤内に第1定着長部20
を、さらに地盤改良ブロック51内に第2定着長部22
を形成する。このように掘削前に地盤改良ブロック51
内のアンカー定着部にプレロードを加えることにより、
図5(e)に示したように現地盤から所定位置の掘削盤
までの掘削を行った際にも、アンカーを介して支持層に
定着された地盤改良ブロック51により下水管50のリ
バウンド現象(浮き上がり現象)を確実に阻止すること
ができる。このように、対象となる地盤を掘削する前に
あらかじめ所定の防護工を地中に構築することができ、
掘削における既設構造物に対する影響を最小限にするこ
とができる。
【0035】図6は、地盤内に図6(b)に示したよう
な大断面トンネルをグラウンドアンカーで支保し、トン
ネル掘削を行うようにした施工例の説明図である。図6
(b)に示したような大断面上半を有するトンネル63
を掘削する場合には、切羽の安定を図るために、細かい
加背割からなる多段ベンチ掘削工法により掘削作業を行
う必要がある。また、上半アーチ部に相当程度大きな部
材断面を有する支保工を建て込まなければならず、大き
な工事機械を投入する必要があるため、多大な工事費を
要する難工事となる。これに対し、本発明によるグラウ
ンドアンカーを使用すれば、トンネルの掘削に先立ち、
掘削周辺地山を高い3軸応力状態におくことができ、地
山強度の向上が図れるため、加背割を大きくとることが
できるようになり、場合によっては全断面掘削も可能に
することができる。
【0036】図6(a)は本発明によるグラウンドアン
カーを施工する全体概要を示した説明図である。同図に
示したようにあらかじめ掘削された先進導坑60からト
ンネル天端及び側壁に向かって所定長さのグラウンドア
ンカー1を施工する。このときトンネル周辺の地山強度
が不足する場合には、第2定着長部22に相当し、本坑
トンネルの掘削予定断面線の外側に位置する地山範囲6
1に地盤改良を施すことが好ましい。引き続き、前述の
方法により、図6(a)に示したようにグラウンドアン
カー先端位置に第1定着長部20を形成するとともに、
地盤改良された地山範囲61に第2定着長部22を形成
する。
【0037】このとき第1定着長部20と第2定着長部
22の間には所定のプレロードが導入されているため、
第1定着長部20と第2定着長部22の間の地山62は
導入された緊張力により高い3軸圧縮応力状態になって
いる。これにより、掘削に先立って周辺地山の強化を図
ることができる。この状態から先進導坑60から天端及
び側壁にかけて本坑トンネル63の切り拡げ作業を行
う。これにより図6(b)に示したような断面の本坑ト
ンネル63を早期かつ安全に掘削することができる。図
6(b)に示したように本坑トンネル63の掘削面位置
には、地山改良部分が位置するためトンネル内面に形成
する吹付コンクリート等の支保工部材は軽度の設計支保
ランクとすることができる。
【0038】図7は本発明によるグラウンドアンカーを
土留壁の支保に適用し、地山掘削を行うようにした施工
例を示した概略断面図である。同図に示したように所定
の掘削範囲70を支保するために側壁位置に3段からな
る所定の傾角をなすグラウンドアンカー1A、1Bが施
工され、また底盤位置にも3本の鉛直グラウンドアンカ
ー1Cが施工されている。この各グラウンドアンカー1
A、1B、1Cの施工手順について簡単に説明する。ま
ず、掘削範囲の周囲地盤に地盤改良ブロック71を構築
する。この地盤改良ブロック71は前述したコラム・ジ
ェット・グラウトでも良いし、公知の各種の柱列式連続
壁等の地中連続壁を採用しても良い。この地盤改良が完
了した後に、地上部分から所定傾角をなし、深さ方向に
所定間隔をあけて2段分のグラウンドアンカー1Aを施
工する。このときアンカー孔30の深さは、地上から支
持地盤位置までのアンカー長さに設定することが必要で
ある。そして第1定着長部20をアンカー先端位置に形
成するとともに、壁状をなす地盤改良ブロック71内に
第2定着長部22を形成する。これにより地上から中間
盤72位置までの掘削を山留め工なしに掘削することが
可能になる。
【0039】さらに中間盤72位置まで盤下げを行った
際に、3段アンカー1Bと底盤アンカー1Cの施工を行
う。3段アンカー1Bは1段、2段アンカー1Aと同様
な手順で施工することができ、また底盤アンカー1Cは
中間盤72から鉛直方向にグラウンドアンカーを設置す
る。このグラウンドアンカー1の施工後、中間盤72か
ら最終掘削盤73までの掘削を一度に行うことができ
る。このように、図7に示した施工方法では、通常のア
ンカー式山留め工の場合に3段の盤下げ掘削が必要にな
る掘削工を1段の盤下げ掘削のみで早期に完了すること
ができる。このように、グラウンドアンカーによる支保
では、あらかじめ掘削を行う前に対象となる構造物を支
保するようになっているため、掘削等が進行した場合に
地中の構造物に付加的な応力や変形が加わらないという
利点がある。また、図7に示した山留め工のような場合
には、構造物を構築する側の面に台座や定着金具等の突
起物がなくなるため、掘削断面をより小さくすることが
でき、また本体構造物の構築作業を容易に行うことがで
きる。
【0040】以上の説明では定着長部は先端の第1定着
長部20と柱間の第2定着長部22のみについて説明し
たが、定着長部の箇所数及びその定着位置は予定する構
造物の形状、地山の地盤状況によって任意に設定できる
ことは言うまでもない。また、第2定着長部22は上述
したように地盤改良等を施し地盤強度を増加させ、第1
定着長部20の付着強度と第2定着長部22の付着強度
とが等しくなるように設計することが好ましいが、両者
の付着強度に差が生じている場合には、いずれかの定着
長部のうち、付着強度の小さい方をアンカー定着強度と
して決定することが好ましい。
【0041】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、地中構造物の安定のためのアンカー支保を地
表位置から容易に行え、安全な状態で地山の掘削を行う
ことができるという効果を奏する。また、設計アンカー
としての定着部の箇所、定着長の長さ設定をきわめて柔
軟性をもって行うことができる。さらに、掘削に先立
ち、対象となる地中構造物のアンカー定着による支保を
行うことができるので、地山掘削の際、地中構造物に余
分な応力や変形等が生じないという効果を期待できる。
加えて、アンカー頭部での定着に、定着金具や支保工等
の材料が不要になるという効果もある。さらに掘削エリ
ア内に構築される本設構造物側面に突起物等が現れない
ので、後工程がスムースに行えるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるグラウンドアンカーの構造の一実
施の態様を示した説明図。
【図2】図1に示したグラウンドアンカーの施工フロー
を示した施工順序説明図。
【図3】本発明によるグラウンドアンカーの構造の他の
実施の態様を示した説明図。
【図4】図3に示したグラウンドアンカーの施工フロー
を示した施工順序説明図。
【図5】本発明によるグラウンドアンカーを用いた地山
掘削工法の一例の構築手順を示した施工順序図。
【図6】本発明によるグラウンドアンカーを用いた地山
掘削工法の一例の構築手順を示した施工順序図。
【図7】本発明によるグラウンドアンカーを用いた地山
掘削工法の一例の構造例を示した断面図。
【符号の説明】
1 グラウンドアンカー 5 グリース 6 防食テープ 10 テンドン 11 引張鋼材 12,13 シース 15 布パッカー 20 第1の定着長部 21 アンカー自由長部 22 第2の定着長部 23 余剰自由長部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−257145(JP,A) 特開 昭51−21326(JP,A) 実開 平3−125834(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E02D 5/80 E21D 9/04 E21D 20/00

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】地山に削孔されたアンカー孔内に挿入され
    た引張鋼材の先端位置に、該引張鋼材を心材として第1
    のアンカー体を造成して前記引張鋼材先端を前記地山中
    にあらかじめ定着するようにした第1の定着長部と、 該第1の定着長部から所定長さの範囲をアンカー自由長
    部とするために前記引張鋼材を覆うように設けられた第
    1の遮断被覆体と、 該第1の遮断被覆体と所定の離れをとって前記引張鋼材
    を覆うようにアンカー孔口部側に設けられた第2の遮断
    被覆体と、 前記第1の遮断被覆体と第2の遮断被覆体との間に位置
    する前記引張鋼材部位を心材として第2のアンカー体を
    造成し、該第2のアンカー体を、前記引張鋼材に所定の
    張力が導入された際に、該導入張力を前記引張鋼材内に
    保持するための地山内定着端とした第2の定着長部とを
    備えたことを特徴とするグラウンドアンカー。
  2. 【請求項2】地山に削孔されたアンカー孔内に挿入され
    た引張鋼材の先端位置に、該引張鋼材を心材として第1
    のアンカー体を造成して前記引張鋼材先端を前記地山中
    にあらかじめ定着するようにした第1の定着長部と、 該第1の定着長部から所定長さの範囲をアンカー自由長
    部とするために前記引張鋼材を覆うように設けられた遮
    断被覆体と、 該遮断被覆体と地表面との間に位置する前記引張鋼材部
    位を心材として第2のアンカー体を造成し、該第2のア
    ンカー体を、前記引張鋼材に所定の張力が導入された際
    に、該導入張力を前記引張鋼材内に保持するための地山
    内定着端とした第2の定着長部とを備えたことを特徴と
    するグラウンドアンカー。
  3. 【請求項3】地山にアンカー孔を削孔し、該アンカー孔
    内に、所定範囲をアンカー自由長部とするための第1の
    遮断被覆体と該第1の遮断被覆体と所定の離れをとって
    アンカー孔口部側に位置した第2の遮断被覆体とで一部
    が覆われた引張鋼材を挿入埋設し、該引張鋼材の先端位
    置で該引張鋼材を心材として第1のアンカー体を造成し
    て該引張鋼材の先端部を前記地山中に定着し、さらに前
    記第1の遮断被覆体と前記第2の遮断被覆体との間で前
    記アンカー孔内に露出している前記引張鋼材を心材とし
    て第2のアンカー体を造成し、前記第2のアンカー体が
    固化する前に前記引張鋼材に所定の張力を導入し、固化
    した状態の前記第2のアンカー体を第2の定着長部とし
    て前記導入張力を前記引張鋼材内に保持するようにした
    ことを特徴とするグラウンドアンカーの施工方法。
  4. 【請求項4】地山にアンカー孔を削孔し、該アンカー孔
    内に、所定範囲をアンカー自由長部とするための遮断被
    覆体で一部が覆われた引張鋼材を挿入埋設し、該引張鋼
    材の先端位置で該引張鋼材を心材として第1のアンカー
    体を造成して該引張鋼材の先端部を前記地山中に定着
    し、さらに前記遮断被覆体と地表面との間で前記アンカ
    ー孔内に露出している前記引張鋼材を心材として第2の
    アンカー体を造成し、前記第2のアンカー体が固化する
    前に前記引張鋼材に所定の張力を導入し、固化した状態
    の前記第2のアンカー体を第2の定着長部として前記導
    入張力を前記引張鋼材内に保持したことを特徴とするグ
    ラウンドアンカーの施工方法。
  5. 【請求項5】周辺地山をグラウンドアンカーで支保しな
    がら所定地山範囲の掘削を行う地山掘削工法であって、
    前記所定地山範囲の掘削に先立ち、第2の遮断被覆体の
    埋設範囲が前記掘削される地山範囲に相当するように原
    地盤位置から掘削される地山範囲の周辺の地山に向け
    て、請求項1記載のグラウンドアンカーを施工してあら
    かじめ掘削予定範囲の地山の安定を図り、その後、前記
    第2の遮断被覆体の埋設範囲の地山部分を掘削し、該地
    山部分に埋設された前記第2の遮断被覆体と前記引張鋼
    材とを除去し、前記グラウンドアンカーの第2の定着長
    部位置以深の範囲で、掘削後の周辺地山の安定を図るよ
    うにしたことを特徴とするグラウンドアンカーを用いた
    地山掘削工法。
  6. 【請求項6】前記第1の遮断被覆体及び第2の遮断被覆
    体は、管状体シースからなることを特徴とする請求項1
    記載のグラウンドアンカー。
  7. 【請求項7】前記第1の遮断被覆体及び第2の遮断被覆
    体は、前記引張鋼材に塗布されたグリースを防食テープ
    で被覆してなることを特徴とする請求項1記載のグラウ
    ンドアンカー。
  8. 【請求項8】前記遮断被覆体は、管状体シースからなる
    ことを特徴とする請求項2記載のグラウンドアンカー。
  9. 【請求項9】前記遮断被覆体は、前記引張鋼材に塗布さ
    れたグリースを防食テープで被覆してなることを特徴と
    する請求項2記載のグラウンドアンカー。
  10. 【請求項10】前記アンカー体は、前記アンカー孔内に
    セメント系グラウト材を加圧注入して造成するようにし
    たことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のグラウ
    ンドアンカー。
  11. 【請求項11】前記アンカー体は、前記アンカー孔内に
    セメント系グラウト材を加圧注入して造成するようにし
    たことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のグラウ
    ンドアンカーの施工方法。
  12. 【請求項12】前記第2の定着長部は、あらかじめ地盤
    改良が施された地山範囲内に設けられるようにしたこと
    を特徴とする請求項3又は請求項4記載のグラウンドア
    ンカーの施工方法。
  13. 【請求項13】前記第2の定着長部は、あらかじめ地盤
    改良が施された地山範囲内に設けられるようにしたこと
    を特徴とする請求項5記載のグラウンドアンカーを用い
    た地山掘削工法。
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