JP3518137B2 - 非水電解質二次電池及びその製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池及びその製造方法

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JP3518137B2 JP04803196A JP4803196A JP3518137B2 JP 3518137 B2 JP3518137 B2 JP 3518137B2 JP 04803196 A JP04803196 A JP 04803196A JP 4803196 A JP4803196 A JP 4803196A JP 3518137 B2 JP3518137 B2 JP 3518137B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム含有複合
酸化物を含有する正極と、リチウムイオンをドープ且つ
脱ドープし得る炭素材料を含有する負極と、リチウム塩
電解質を非水媒体に溶解又は分散させてなる非水電解質
とを備えた非水電解質二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子技術の進歩により電子機器の
高性能化、小型化、ポータブル化が進み、これら携帯用
電子機器に使用される高エネルギー密度電池の要求が強
まっている。従来、これらの電子機器に使用される二次
電池としては、ニッケル・カドミウム電池や鉛電池等が
挙げられるが、これらの電池では放電電位(約1.2
V)が低く、電池重量および電池体積が大きく、エネル
ギー密度の高い電池の要求には十分には応えられていな
いのが実情である。
【0003】最近、これらの要求を満たす電池システム
として、金属リチウムやリチウム合金を負極とする非水
電解質二次電池が注目され、盛んに研究が行われてい
る。しかし、金属リチウムなどを負極とする非水電解質
二次電池の場合、金属リチウムの溶解、折出時のデンド
ライト生成や析出リチウムの微細化のために、サイクル
寿命や急速充電特性が実用上十分な特性を示さないとい
う問題がある。
【0004】そこで、これらの問題を解決するために、
リチウムイオンをドープ且つ脱ドープ可能な物質、例え
ば炭素材料を負極とするリチウムイオン非水電解質二次
電池の研究開発が活発化している。このような負極を使
用する非水電解質二次電池は、リチウムが金属状態で存
在しないため、金属リチウム負極に起因するサイクル特
性の低下や急速充電特性の低下等に関する問題はなく、
優れた電池特性を示す。また、ニッケル・カドミウム電
池に比較しても、二次電池として必要とされる低自己放
電性も改善されており、しかもメモリー効果もないとい
う利点を有する。更に、正極に酸化還元電位の高いリチ
ウム含有複合酸化物を用いることにより、電池の電圧
(約4.2V)が高くなるため、高エネルギー密度の電
池を実現できるという利点も有する。
【0005】ところで、このようなリチウムイオン非水
電解質二次電池の代表的な形態の一つとして、図1に示
すようなコイン型のものが知られている。このコイン型
の電池は、ディスク形状の負極1ペレットと正極2ペレ
ットとを、例えばプロピレンカーボネートとジメチルカ
ーボネートとの混合溶媒(1:1(体積比))にLiP
6 を1mol/1の割合で溶解させた電解液を含浸さ
せたポリプロピレン不織布からなるセパレータ3を介
し、それぞれ負極電池缶4と正極電池缶5とに収納し、
それらを封口ガスケット6を介してかしめた構造を有す
る。
【0006】この場合、負極1ペレットは、前述したよ
うなリチウムイオンをドープ且つ脱ドープ可能な炭素材
料の粉体とバインダー樹脂であるポリフッ化ビニリデン
(PVDF)とを、PVDFを溶解することのできるN
−メチルピロリドン中に投入して負極合剤スラリーを調
製し、それをバットに広げて220℃程度の熱風で乾燥
したものを粉砕して得られた負極合剤粉体から加熱圧縮
成形法により作製されている。また、正極2ペレット
も、リチウム含有複合酸化物の粉体と導電材料であるカ
ーボンブラックとバインダー樹脂であるポリフッ化ビニ
リデン(PVDF)とを、負極1の作製の場合と同様
に、PVDFを溶解することのできるN−メチルピロリ
ドン中に投入して正極合剤スラリーを調製し、それをバ
ットに広げて乾燥したものを粉砕して得られた正極合剤
粉体から加熱圧縮成形法により作製されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
熱風乾燥して粉砕することにより調製された負極合剤粉
体及び正極合剤粉体の個々の微粒子の形状は、真球から
かけ離れたいびつなものが多く、このため負極合剤粉体
及び正極合剤粉体の流動性が十分でなく、成形性を向上
させることに限界をきたしていた。従って、簡便な方法
により、真球に近い負極合剤粉体と正極合剤粉体とを調
製できるようにすることが求められていた。
【0008】また、負極ペレットあるいは正極ペレット
中の活物質の含有量を増加させて電池容量を増大させる
ことが求められているが、従来の熱風乾燥して粉砕する
ことにより調製された負極合剤粉体及び正極合剤粉体の
場合には、成形時に割れを生じないようにするためにバ
インダー樹脂(PVDF)を、それぞれ固形分中に約9
重量%(負極合剤の場合)及び約3重量%(正極合剤の
場合)配合する必要があり、バインダー樹脂の使用量を
それらの数値未満とすることが実質的に不可能であると
いう問題があった。また、バインダー樹脂として使用す
るPVDFは活物質に比べ高価であるので、その使用量
を低減できないということは正極又は負極の製造コスト
を低減させることの障害となっていた。
【0009】本発明は、以上の従来の技術の課題を解決
しようとするものであり、非水電解質二次電池の正極又
は負極を作製する際に使用する負極合剤粉体又は正極合
剤粉体を簡便な方法により略真球状に調製できるように
し、しかもバインダー樹脂の使用量を低減しても負極合
剤粉体又は正極合剤粉体の成形性の低下を生じないよう
にすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、負極合剤ス
ラリー又は正極合剤スラリーをスプレードライ乾燥する
と、実質的に真球状の負極合剤粉体又は正極合剤粉体が
得られること、しかも、そのようにして得られた粉体の
個々の微粒子においては、バインダー樹脂が微粒子内部
に比べ表面に偏在しており、そのため従来と同程度の成
形性を維持する場合にはバインダー樹脂の使用量を低減
させることができることを見出し、本発明を完成させる
に至った。
【0011】即ち、本発明は、リチウム含有複合酸化物
を含む正極と、リチウムイオンをドープ且つ脱ドープし
得る炭素材料を含む負極と、リチウム塩電解質を非水媒
体に溶解又は分散してなる非水電解質とを備えた非水電
解質二次電池において、正極又は負極が、それぞれ該リ
チウム含有複合酸化物又は該炭素材料と、フッ素系バイ
ンダー樹脂とをバインダー樹脂溶解用溶媒中で混合して
正極合剤スラリー又は負極合剤スラリーを調製し、その
スラリーをスプレードライ乾燥して球状の正極合剤粉体
又は負極合剤粉体とし、その粉体を成形することにより
得られたものであることを特徴とする非水電解質二次電
池を提供する。
【0012】また、本発明は、リチウム含有複合酸化物
を含む正極と、リチウムイオンをドープ且つ脱ドープし
得る炭素材料を含む負極と、リチウム塩電解質を非水媒
体に溶解又は分散してなる非水電解質とを備えた非水電
解質二次電池の製造方法において、リチウム含有複合酸
化物又はリチウムイオンをドープ且つ脱ドープし得る炭
素材料と、フッ素系バインダー樹脂とを、バインダー樹
脂溶解用溶媒中で混合して正極合剤スラリー又は負極合
剤スラリーとし、そのスラリーをスプレードライ乾燥し
て球状の正極合剤粉体又は負極合剤粉体とし、その球状
粉体を成形することによりそれぞれ正極又は負極を作製
する工程を含むことを特徴とする製造方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】本発明の非水電解質二次電池においては、
正極及び負極の少なくともいずれか一方、好ましくは双
方が、それぞれ正極活物質(リチウム含有複合酸化物)
及び負極活物質(リチウムイオンをドープ且つ脱ドープ
可能な炭素材料)と、フッ素系バインダー樹脂とをバイ
ンダー樹脂溶解用溶媒中で混合して正極合剤スラリー及
び負極合剤スラリーを調製し、それらのスラリーをスプ
レードライ法により乾燥して球状の正極合剤粉体及び負
極合剤粉体とし、その球状粉体から成形されたものであ
る。
【0015】本発明において利用するスプレードライ法
は、公知の種々の噴霧乾燥装置を使用して実施すること
ができ、例えば、ディスク式噴霧乾燥装置、並向流型加
圧ノズル式噴霧乾燥装置、並流型加圧ノズル式噴霧乾燥
装置、あるいは向流型加圧ノズル式噴霧乾燥装置等を使
用して実施することができる。
【0016】本発明において、スプレードライ乾燥時の
温風温度は、バインダー樹脂の融点以下の温度とするこ
とが好ましい。バインダー樹脂の融点を超える温度の温
風でスプレードライ乾燥すると、バインダー樹脂が溶融
あるいは分解していびつな形状の粉体が形成されてしま
うことが懸念されるので好ましくない。
【0017】ここで、温風温度をバインダー樹脂の融点
以下に設定する場合、バインダー樹脂溶解用溶媒の乾燥
を促進するために、融点に近い温度、例えば融点の2〜
5℃程度低い温度とすることが好ましい。例えば、フッ
素系バインダー樹脂として、融点が154℃程度の柔軟
なPVDFを使用した場合には、温風温度を約150℃
とすることが好ましい。また、融点が184℃程度のP
VDFを使用した場合には、温風温度を約180℃とす
ることが好ましい。このように、融点の異なるフッ素系
バインダー樹脂を使用する場合には、その融点に従って
温風温度を変化させることが好ましい。
【0018】また、バインダー樹脂溶解用溶媒の沸点
は、温風温度よりも50℃高い温度を超えない温度とす
ることが好ましい。溶媒の沸点が温風温度よりも50℃
を超える高い温度であると、溶媒を十分に乾燥できなく
なって造粒が困難となるので好ましくない。従って、温
風温度が150℃の場合には、バインダー樹脂溶解用溶
媒としては、沸点が200℃以下のものを使用すること
が好ましい。このように、温風温度の変化に応じて沸点
の異なるバインダー樹脂溶解用溶媒を使用することが好
ましい。
【0019】スプレードライ乾燥により調製する負極合
剤粉体又は正極合剤粉体の個々の真球状の微粒子の平均
粒径としては、取扱性や成形性等を考慮すると、好まし
くは50〜500μm、より好ましくは50〜300μ
mである。
【0020】以上のように、スプレードライ乾燥により
得られる正極合剤粉体又は負極合剤粉体をそれぞれ正極
又は負極に成形する場合、従来より公知の加熱圧縮成形
法により行うことができる。正極又は負極の形状として
は特に限定はなく、ペレット形状、短冊形状等の形状と
することができる。
【0021】次に、正極又は負極を構成する各成分につ
いて説明する。
【0022】正極合剤に配合する正極活物質としてのリ
チウム含有複合酸化物としては、従来よりリチウムイオ
ン二次電池の正極活物質として用いられているものを使
用することができ、特に式(1)
【0023】
【化1】Lix MO2 (1) (式中、Mは遷移金属、好ましくはCo、Ni及びMn
の少なくとも一種であり、xは0.05≦x≦1.10
を満足させる数である。)で表される化合物を好ましく
使用することができる。式中xの値は、充放電状態によ
り0.05≦x≦1.10の範囲内で変化する。ここ
で、遷移金属MがMnである場合、Lix Mn2 4
Lix MnO2 のいずれも使用することができる。
【0024】このようなリチウム複合酸化物は、例えば
リチウム及び遷移金属Mのそれぞれの塩、例えば、炭酸
塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物
等を原料として製造することができる。例えば、所望の
組成に応じてリチウム塩原料及び遷移金属M塩原料をそ
れぞれ計量し、十分に混合した後に酸素存在雰囲気下6
00℃〜1000℃の温度範囲で加熱焼成することによ
り製造することができる。この場合、各成分の混合方法
は、特に限定されるものでなく、粉体状の塩類をそのま
ま乾式の状態で混合してもよく、あるいは粉体状の塩類
を水に溶解して水溶液の状態で混合してもよい。
【0025】負極合剤に配合する負極活物質としての炭
素材料としては、リチウムイオンをドープ且つ脱ドープ
可能なものを使用する。このような炭素材料としては2
000℃以下の比較的低い温度で焼成して得られる低結
晶性炭素材料や、結晶化しやすい原料を3000℃近く
の高温で処理した高結晶性炭素材料等を使用することが
できる。例えば、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコ
ークス、ニードルコークス、石油コークス等)、人造黒
鉛類、天然黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物
焼成体(フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化した
もの)、炭素繊維、活性炭などを使用することができ
る。中でも、(002)面の面間隔が3.70オングス
トローム以上、真密度が1.70g/cc未満、且つ空
気気流中における示差熱分析で700℃以上に発熱ピー
クを持たない低結晶性炭素材料や、負極合剤充填性の高
い真比重が2.10g/cc以上の高結晶性炭素材料を
好ましく使用することができる。
【0026】負極合剤又は正極合剤に配合するバインダ
ー樹脂としては、充放電時に分解せず安定な点からフッ
素系バインダー樹脂を使用する。このようなフッ素系バ
インダー樹脂としては、前述したPVDFの他に、ポリ
六フッ化プロピレン、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリ
五フッ化プロピレン等を使用することができる。
【0027】なお、正極合剤には、導電材料としてカー
ボンブラックなどの公知の材料を配合することが好まし
い。
【0028】バインダー樹脂溶解用溶剤としては、上述
したようなフッ素系バインダー樹脂を溶解することので
きる種々の極性溶媒を使用することができ、例えばジメ
チルホルムアミド(沸点153℃)、ジメチルアセトア
ミド(沸点166℃)、メチルホルムアミド(沸点18
0〜185℃)、N−メチルピロリドン(沸点20
2)、ジメチルアミン等を使用することができる。又、
加温すればアセトン等も使用可能である。
【0029】正極合剤粉体中におけるフッ素系バインダ
ー樹脂の含有量としては、少な過ぎると成形性が低下
し、多過ぎると相対的に活物質の含有量が低下して電池
特性が低下することが懸念されるので、0.3〜7重量
%、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは0.
5〜4重量%である。
【0030】また、負極合剤粉体中におけるフッ素系バ
インダー樹脂の含有量としては、少な過ぎると成形性が
低下し、多過ぎると相対的に活物質の含有量が低下して
電池特性が低下することが懸念されるので、1.0〜2
0重量%、好ましくは1.5〜15重量%、より好まし
くは1.5〜12重量%である。
【0031】本発明において使用する非水電解質として
は、リチウム塩電解質を非水媒体に溶解又は分散したも
のである。より具体的には、リチウム塩電解質を非水溶
媒に溶解した非水電解液や、リチウム塩電解質をイオン
導電性ポリマー(ポリエチレンオキサイド等)に分散さ
せた非水固体電解質等を挙げることができる。これらの
うち、コスト面や電池特性の面から、非水電解液を使用
することが好ましい。
【0032】非水電解液において使用する非水溶媒とし
ては、従来よりリチウムイオン二次電池において用いら
れている非水溶媒を使用することができ、例えば高誘電
率溶媒である炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチ
レン、γ−ブチロラクトン等や、低粘度溶媒である1,
2−ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラ
ン、炭酸ジメチル、炭酸メチルエチル、炭酸ジエチル等
を挙げることができる。
【0033】また、以上のような非水溶媒やイオン導電
性ポリマーに溶解又は分散させて非水電解質を調製する
際に使用するリチウム塩電解質としては、一般に、リチ
ウム電池用として使用されるLiClO4 、LiAsF
6 、LiPF6 、LiBF4、LiCl、LiBr、C
3 SO3 Li、CF3 SO3 Li等を挙げることがで
きる。これらは単独でも2種類以上を混合しても用いる
ことができる。
【0034】本発明の非水電解質二次電池のセパレー
タ、電池缶等の他の構成については、従来のリチウムイ
オン非水電解質二次電池と同様とすることができる。
【0035】また、本発明の非水電解質二次電池は、正
極又は負極を以下に示すように作製する工程を経る以外
は従来と同様の工程により製造することができる。
【0036】(正極又は負極の作製工程)まず、リチウ
ム含有複合酸化物又はリチウムイオンをドープ且つ脱ド
ープし得る炭素材料と、フッ素系バインダー樹脂とを、
バインダー樹脂溶解用溶媒中で混合して正極合剤スラリ
ー又は負極合剤スラリーを調製する。次に、そのスラリ
ーをスプレードライ乾燥して球状の正極合剤粉体又は負
極合剤粉体とする。そして、得られた球状粉体を加熱圧
縮成形法などにより種々の形状に成形することによりそ
れぞれ正極又は負極を作製することができる。
【0037】この作製工程において、スプレードライ乾
燥時の温風温度を、バインダー樹脂の融点以下とするこ
とが好ましい。しかも、バインダー樹脂溶解用溶媒の沸
点を温風温度よりも50℃高い温度を超えない温度とす
ることが好ましい。このように温度管理をすることによ
り、略真球状の正極合剤粉体又は負極合剤粉体を作製す
ることができる。
【0038】以上説明した本発明の非水電解質二次電池
の電池形状については特に限定されず、必要に応じて円
筒型形状、角型形状、コイン型形状、ボタン型形状等の
種々の形状とすることができる。
【0039】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。
【0040】実施例1 (正極の作製)正極活物質としてLiCoO2 91重量
部と、導電材としてのグラファイト6重量部と、バイン
ダーとして融点177℃のポリフッ化ビニリデン(PV
DF)3重量部とを混合し、更にジメチルホルムアミド
(沸点153℃)を分散剤として加えて混合して正極合
剤スラリーを調製した。
【0041】このスラリーを、温風温度150℃の有機
溶媒用スプレードライヤー(坂本技研製,直径1.9
m)に投入して乾燥し、平均粒径100μmのほぼ真球
状の正極合剤粉体を得た。
【0042】得られた正極合剤粉体を、5トン/cm2
の圧力で圧縮成形することにより直径15.5mm、厚
さ0.8mmのペレット状の正極(体積密度(d)=
3.5g/ml)を作製した。
【0043】(負極の作製)負極活物質として平均粒径
33μmのピッチコークス粉体90重量部と、バインダ
ーとして融点177℃のポリフッ化ビニリデン(PVD
F)9重量部とを混合し、更にジメチルホルムアミドを
分散剤として加えて混合して負極合剤スラリーを調製し
た。
【0044】このスラリーを、温風温度150℃の有機
溶媒用スプレードライヤー(坂本技研製,直径1.9
m)に投入して乾燥し、平均粒径200μmのほぼ真球
状の負極合剤粉体を得た。
【0045】得られた負極合剤粉体を、5トン/cm2
の圧力で圧縮成形することにより直径16mm、厚さ
0.7mmのペレット状の負極(体積密度(d)=1.
25g/ml)を作製した。
【0046】(コイン型リチウムイオン非水電解質二次
電池の作製)得られた負極1と正極2とをポリプロピレ
ン不織布からなるセパレータ3を介して負極電池缶4に
収納し、次に負極電池缶4内にプロピレンカーボネート
とジメチルカーボネートとの混合溶媒(1:1(体積
比))にLiPF6 を1mol/1の割合で溶解させた
電解液を注入した後に、封口ガスケット6を介して正極
電池缶5をかしめることにより、図1に示すようなコイ
ン型リチウムイオン非水電解質二次電池(直径25m
m、厚さ2.5mm)を作製した。
【0047】実施例2 正極を作製する際のPVDFの使用量を2重量部とし、
且つ負極を作製する際のPVDFの使用量を6重量部と
する以外は、実施例1と同様にしてコイン型リチウムイ
オン非水電解質二次電池を作製した。
【0048】実施例3 正極を作製する際のPVDFの使用量を1重量部とし、
且つ負極を作製する際のPVDFの使用量を3重量部と
する以外は、実施例1と同様にしてコイン型リチウムイ
オン非水電解質二次電池を作製した。
【0049】実施例4 正極を作製する際のPVDFの使用量を0.5重量部と
し、且つ負極を作製する際のPVDFの使用量を1.5
重量部とする以外は、実施例1と同様にしてコイン型リ
チウムイオン非水電解質二次電池を作製した。
【0050】実施例5 正極を作製する際のPVDFの使用量を4重量部とし、
且つ負極を作製する際のPVDFの使用量を12重量部
とする以外は、実施例1と同様にしてコイン型リチウム
イオン非水電解質二次電池を作製した。
【0051】実施例6 正極を作製する際のPVDFの使用量を5重量部とし、
且つ負極を作製する際のPVDFの使用量を15重量部
とする以外は、実施例1と同様にしてコイン型リチウム
イオン非水電解質二次電池を作製した。
【0052】実施例7 ジメチルホルムアミドに代えてジメチルアセトアミド
(沸点166℃)を使用する以外は、実施例1と同様に
してコイン型リチウムイオン非水電解質二次電池を作製
した。
【0053】なお、正極合剤粉体及び負合剤粉体の平均
粒径は150μmであった。
【0054】実施例8 ジメチルホルムアミドに代えてメチルホルムアミド(沸
点180〜185℃)を使用する以外は、実施例1と同
様にしてコイン型リチウムイオン非水電解質二次電池を
作製した。
【0055】なお、正極合剤粉体及び負合剤粉体の平均
粒径は50μmであった。
【0056】実施例9 PVDFに代えて、フッ素ゴムの一種であるポリ六フッ
化プロピレン(VITON、昭和ネオプレン社製)を使
用する以外は、実施例1と同様にしてコイン型リチウム
イオン非水電解質二次電池を作製した。
【0057】なお、正極合剤粉体及び負合剤粉体の平均
粒径は200μmであった。
【0058】比較例1 正極活物質として平均粒径10μmのLiCoO291
重量部と、導電材としてのグラファイト6重量部と、バ
インダーとして融点177℃のポリフッ化ビニリデン
(PVDF)3重量部とを混合し、更にN−メチルピロ
リドン(沸点202℃)を分散剤として加えて混合して
正極合剤スラリーを調製した。
【0059】このスラリーを、平坦なバットにあけて1
50℃の温風を送風することにより乾燥させた。得られ
た正極合剤を粉砕し、実施例1と同様にしてペレット状
の正極(体積密度(d)=3.5g/ml)を作製し
た。
【0060】(負極の作製)負極活物質として平均粒径
33μmのピッチコークス粉体(真密度=2.03g/
cm3,(002)面間隔=3.46オングストロー
ム,C軸方向結晶厚Lc=40オングストローム)90
重量部と、バインダーとして融点177℃のポリフッ化
ビニリデン(PVDF)9重量部とを混合し、更にN−
メチルピロリドンを分散剤として加えて混合して負極合
剤スラリーを調製した。
【0061】このスラリーを、平坦なバットにあけて1
50℃の温風を送風することにより乾燥させた。得られ
た負極合剤を粉砕し、実施例1と同様にしてペレット状
の負極(体積密度(d)=1.25g/ml)を作製し
た。
【0062】比較例2 正極を作製する際のPVDFの使用量を2重量部とし、
且つ負極を作製する際のPVDFの使用量を6重量部と
する以外は、比較例1と同様にしてコイン型リチウムイ
オン非水電解質二次電池を作製した。
【0063】比較例3 正極を作製する際のPVDFの使用量を1重量部とし、
且つ負極を作製する際のPVDFの使用量を3重量部と
する以外は、比較例1と同様にしてコイン型リチウムイ
オン非水電解質二次電池を作製した。
【0064】比較例4 PVDFに代えてポリビニルアルコール(PVA,分子
量6000)を使用し、且つN−メチルピロリドンに代
えて水を使用する以外は、実施例1と同様にしてリチウ
ムイオン非水電解質二次電池を作製した。
【0065】なお、正極合剤粉体及び負合剤粉体の平均
粒径は100μmであった。
【0066】(評価)各実施例及び比較例において、正
極又は負極の作製時のスプレードライ乾燥の際の造粒の
程度並びに正極合剤粉体又は負極合剤粉体の成形性を目
視にて観察して評価し、その結果を表1に示す。
【0067】また、各実施例及び比較例の非水電解質二
次電池に対し、温度23℃において充電終止電圧4.2
0V及び充電電流1mAで充電を行い、続いて放電電流
1mA又は5mAで終止電圧3.0Vまでの定電流放電
を行った。この時の放電容量(mAh/セル)を表1に
示す。
【0068】
【表1】 乾燥方法 溶剤沸点 造粒 ハ゛インタ゛ー(wt%) 成形性 放電容量 (℃) 正極/負極 1mA 5mA 実施例 1 スフ゜レート゛ライ 153 良好 3/9 良好 45 40 2 スフ゜レート゛ライ 153 良好 2/6 良好 47 42 3 スフ゜レート゛ライ 153 良好 1/3 良好 49 44 4 スフ゜レート゛ライ 153 良好 0.5/1.5 良好 51 46 5 スフ゜レート゛ライ 153 良好 4/12 良好 43 38 6 スフ゜レート゛ライ 153 良好 5/15 良好 41 37 7 スフ゜レート゛ライ 166 良好 3/9 良好 45 40 8 スフ゜レート゛ライ 180-185 良好 3/9 良好 45 40 9 スフ゜レート゛ライ 153 良好 3/9 良好 46 40 比較例 1 温風送風 202 − 3/9 良好 45 35 2 温風送風 202 − 2/6 不可能 − − 3 温風送風 202 − 1/3 不可能 − − 4 スフ゜レート゛ライ 100 良好 3/9 良好 31 24
【0069】実施例1〜9の二次電池の場合、スプレー
ドライ乾燥の温風温度が150℃である。また使用した
フッ素系バインダー樹脂の融点が177℃である(実施
例1〜8)。従って、温風温度がフッ素系バインダー樹
脂の融点よりも27℃低くなっている(実施例1〜
8)。また、溶剤の沸点がいずれも温風温度より50℃
高い温度より低くなっている。このため、実施例1〜9
の二次電池は、表1から良好な造粒性を示していること
がわかる。加えて、バインダー樹脂の含有量が従来の1
/3以下(例えば実施例3及び4)となっても、良好な
成形性を保っていることがわかる。
【0070】一方、比較例1はスプレードライ乾燥では
なく従来の温風送風乾燥により正極合剤粉体と負極合剤
粉体とを調製した例であり、成形性が好ましいことがわ
かるが、バインダー樹脂の含有量を低減した場合(比較
例2及び3)には、成形できなくなることがわかる。従
って、従来の温風送風乾燥では、バインダー樹脂の使用
量を低減させることができないことがわかる。
【0071】比較例4の電池はバインダー樹脂としてP
VAを使用した例であり、造粒可能で成形性も良好であ
ることがわかるが、実施例1〜9の電池に比べ放電特性
が大きく低下していることがわかる。従ってバインダー
樹脂としてフッ素系バインダー樹脂を使用することが必
要であることがわかる。
【0072】
【発明の効果】本発明によれば、非水電解質二次電池の
正極又は負極を作製する際に使用する負極合剤粉体又は
正極合剤粉体を簡便な方法により略真球状に調製でき
る。しかもバインダー樹脂の使用量を低減しても負極合
剤粉体又は正極合剤粉体の成形性の低下を生じさせない
ようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非水電解質二次電池の断面図である。
【符号の説明】
1 負極、 2 正極、 3 セパレータ、 4 負極
電池缶、5 正極電池缶、 6 封口ガスケット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 厚美 吉則 福島県郡山市日和田町高倉字下杉下1番 地の1 株式会社ソニー・エナジー・テ ック内 (56)参考文献 特開 平1−151158(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/00 - 4/62 H01M 6/00 - 6/22 H01M 10/36 - 10/40

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リチウム含有複合酸化物を含む正極と、
    リチウムイオンをドープ且つ脱ドープし得る炭素材料を
    含む負極と、リチウム塩電解質を非水媒体に溶解又は分
    散してなる非水電解質とを備えた非水電解質二次電池に
    おいて、正極又は負極が、それぞれ該リチウム含有複合
    酸化物又は該炭素材料と、フッ素系バインダー樹脂とを
    バインダー樹脂溶解用溶媒中で混合して正極合剤スラリ
    ー又は負極合剤スラリーを調製し、そのスラリーをスプ
    レードライ乾燥して球状の正極合剤粉体又は負極合剤粉
    体とし、その粉体を成形することにより得られたもので
    あることを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 【請求項2】 正極及び負極の双方がスプレードライ乾
    燥して得られた球状の正極合剤粉体及び負極合剤粉体を
    それぞれ成形したものである請求項1記載の非水電解質
    二次電池。
  3. 【請求項3】 スプレードライ乾燥時の温風温度がバイ
    ンダー樹脂の融点以下であり、バインダー樹脂溶解用溶
    媒の沸点が温風温度よりも50℃高い温度を超えない温
    度である請求項1又は2記載の非水電解質二次電池。
  4. 【請求項4】 フッ素系バインダー樹脂が融点が154
    〜184℃のポリフッ化ビニリデンである請求項1〜3
    のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
  5. 【請求項5】 スプレードライ乾燥時の温風温度が15
    0℃である請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質
    二次電池。
  6. 【請求項6】 バインダー樹脂溶解用溶媒が沸点153
    ℃のジメチルホルムアミドである請求5記載の非水電解
    質二次電池。
  7. 【請求項7】 リチウム含有複合酸化物を含む正極と、
    リチウムイオンをドープ且つ脱ドープし得る炭素材料を
    含む負極と、リチウム塩電解質を非水媒体に溶解又は分
    散してなる非水電解質とを備えた非水電解質二次電池の
    製造方法において、リチウム含有複合酸化物又はリチウ
    ムイオンをドープ且つ脱ドープし得る炭素材料と、フッ
    素系バインダー樹脂とを、バインダー樹脂溶解用溶媒中
    で混合して正極合剤スラリー又は負極合剤スラリーと
    し、そのスラリーをスプレードライ乾燥して球状の正極
    合剤粉体又は負極合剤粉体とし、その球状粉体を成形す
    ることによりそれぞれ正極又は負極を作製する工程を含
    んでなることを特徴とする製造方法。
  8. 【請求項8】 正極及び負極の双方を、スプレードライ
    乾燥して得られた球状の正極合剤粉体及び負極合剤粉体
    をそれぞれ成形することにより作製する工程を含む請求
    項7記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 スプレードライ乾燥時の温風温度がバイ
    ンダー樹脂の融点以下であり、バインダー樹脂溶解用溶
    媒の沸点が温風温度よりも50℃高い温度を超えない温
    度である請求項7又は8記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 フッ素系バインダー樹脂が融点が15
    4〜184℃のポリフッ化ビニリデンである請求項7〜
    9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 スプレードライ乾燥時の温風温度が1
    50℃である請求項7〜10のいずれかに記載の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 バインダー樹脂溶解用溶媒が沸点15
    3℃のジメチルホルムアミドである請求11記載の製造
    方法。
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