JP3515642B2 - 誘導加熱コイル - Google Patents

誘導加熱コイル

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幸弘 岩崎
裕昭 間瀬
秀男 小島
靖士 中田
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、車両の変速装置を
構成する駆動側または従動側プーリ機構のベルト摺動面
を、高周波焼入れを行うために高周波加熱する誘導加熱
コイルに関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、製品の耐久性を向上させるた
めに、該製品の摺動部分並びに摩耗部分等を加熱した
後、急速に冷却して硬化させる熱処理が用いられてお
り、この熱処理として、高周波焼入れ方法が広く採用さ
れている。この高周波焼入れ方法では、ワークに対応し
て種々の形状を有するコイルに高周波電流を供給し、前
記高周波電流により発生する誘導電流によってワークを
高周波加熱した後、冷却水を用いて前記加熱部分を急速
に冷却することにより、該ワークの表面に硬化層を形成
している。 【0003】ところで、前記ワークとして車両の変速装
置を構成する駆動側または従動側プーリ機構のベルト摺
動面に対して高周波焼入れを施す場合、半径外方向に向
かって連続して周回する渦巻き状コイルが用いられてい
る。具体的には、この渦巻き状コイルと前記ベルト摺動
面とを所定距離離間させた状態で両者を位置決めして固
定し、前記渦巻き状コイルに高周波電流を供給してベル
ト摺動面を加熱した後、前記加熱部分を冷却水供給手段
によって冷却することにより、プーリシャフトおよびプ
ーリのベルト摺動面に硬化層を形成している。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来技術に係る渦巻き状コイルを用いて高周波焼入れを行
った場合、渦巻き状コイルを中心としてベルト摺動面の
反対側に冷却水供給手段が設けられ、各隣接する渦巻き
状コイルの外周間の狭小な間隙を介して冷却水がベルト
摺動面に導出されることから、プーリシャフトおよびプ
ーリのベルト摺動面を均一に冷却することができないと
いう問題がある。 【0005】さらに、プーリシャフトでは、ベルト摺動
面の反対側の周縁に前記プーリシャフトの回転速度を検
出するために複数のドグ( 突起部)が形成されている。
従って、ベルト摺動面の周縁側が厚肉なものとなってお
り、この周縁部分が有効に加熱されない場合が多い。 【0006】この結果、ベルト摺動面に加熱ムラや冷却
ムラが発生してしまい、前記ベルト摺動面全体にわたっ
て所望の硬度を得ることができないという問題が指摘さ
れている。 【0007】本発明は、この種の問題を解決するもので
あり、プーリシャフトおよびプーリのベルト摺動面を均
一に加熱および冷却することができ、所望の硬度を確実
に得ることが可能な誘導加熱コイルを提供することを目
的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めに、本発明の誘導加熱コイルは、第1〜第N円弧部
と、隣接する前記第1〜第N円弧部の端部をそれぞれ連
結する第1〜第(N−1)段部とを有しており、この誘
導加熱コイルと駆動側または従動側プーリ機構のベルト
摺動面を相対的に回転変位させた状態において、前記第
1〜第N円弧部および前記第1〜第(N−1)段部に供
給された高周波電流によって誘導電流が発生し、前記誘
導電流によって該ベルト摺動面全体が高周波加熱され
る。 【0009】その際、ベルト摺動面の反対側の周縁に設
けられた突起部に対応する最外周の第N円弧部の分割角
度が、第1〜第(N−1)円弧部のそれぞれの分割角度
よりも大きな角度に設定されている。このため、ベルト
摺動面の周縁部分を有効に加熱することができ、前記ベ
ルト摺動面全体を均一加熱することが可能になる。 【0010】また、第1〜第(N−1)段部によって連
結される第1〜第N円弧部は、ベルト摺動面に対する占
有面積が小さく、かつ隣接するコイル間の空間を大きく
することができ、冷却水がベルト摺動面の全体に行き渡
る。これにより、ベルト摺動面全体を均一かつ効率的に
冷却することが可能になる。 【0011】 【発明の実施の形態】図1は、本実施形態に係る誘導加
熱コイルの斜視図を示す。この誘導加熱コイルによって
高周波加熱されるプーリシャフトは、車両の変速装置に
組み込まれている。 【0012】図4に示すように、変速装置10は、高周
波加熱されるプーリシャフトである駆動側および従動側
プーリシャフト12、14を備え、この駆動側および従
動側プーリシャフト12、14は、それぞれプーリ部1
6、18とシャフト部20、22とから一体的に形成さ
れる。プーリ部16、18の一面側には、Vベルト2
4、26と接触するベルト摺動面28、30が形成され
る一方、前記プーリ部16、18の他面側周縁には、複
数のドグ(突起部)32、34が所定間隔離間して設け
られる(図3参照)。 【0013】駆動側および従動側プーリシャフト12、
14のシャフト部20、22には、軸線方向に沿って変
位自在な駆動側および従動側プーリ36、38がそれぞ
れ同軸的に支持される。駆動側および従動側プーリ3
6、38の一面側にベルト摺動面40、42が形成さ
れ、このベルト摺動面40、42とプーリ部16、18
のベルト摺動面28、30との間にVベルト24、26
が懸架される。 【0014】図1および図2において、参照数字50
は、誘導加熱コイルを示す。この誘導加熱コイル50
は、180゜以上の中心角を所定の角度毎に分割すると
ともにベルト摺動面28、30の形状に対応して中心O
からの半径が順次大きくなる第1〜第5円弧部52a〜
52eと、隣接する前記第1〜第5円弧部52a〜52
eの端部をそれぞれ連結する第1〜第4段部54a〜5
4dと、前記第1および第5円弧部52a、52eの一
端部に連結され駆動側および従動側プーリシャフト1
2、14のシャフト部20、22を所定の角度だけ周回
する周回コイル部56、58を含む第1および第2誘導
加熱導体部60、62とを備える。 【0015】第1〜第5円弧部52a〜52e、第1〜
第4段部54a〜54d並びに第1および第2誘導加熱
導体部60、62は、それぞれの断面が四角形の略同一
形状に形成されるとともに、それぞれのコイル幅も略同
一に構成される。第1および第2誘導加熱導体部60、
62の端部には、高周波用の一組の入力端子64a、6
4bが設けられ、前記入力端子64a、64bは、リー
ド線を介して図示しない高周波電源に接続される。 【0016】誘導加熱コイル50の内部には、中空状の
連続する管路66が形成され、この管路66に冷却水を
供給することにより、前記誘導加熱コイル50が冷却さ
れる。中心Oからの半径が最も大きな第5円弧部52e
は、プーリ部16、18のベルト摺動面28、30より
外方に向かって突出するように構成されている(図2お
よび図3参照)。 【0017】図1および図2に示すように、第1〜第5
円弧部52a〜52eの中心角は、中心Oに対してそれ
ぞれ角度θ1 、θ2 、θ3 、θ4 およびθ5 に分割され
るとともに、プーリ部16、18のドグ32、34の位
置に対応する最外周の前記第5円弧部52eの分割角度
θ5 が、第1〜第4円弧部52a〜52dのそれぞれの
分割角度θ1 、θ2 、θ3 およびθ4 よりも大きな角度
に設定される(θ5 >θ1 =θ2 =θ3 =θ4 )。具体
的には、θ1 =θ2 =θ3 =θ4 =36゜で、θ5 =4
3゜であり、これにより誘導加熱コイル50全体の中心
角は、187゜になる。 【0018】このように構成される誘導加熱コイル50
の動作について説明する。なお、ワークとしては、駆動
側プーリシャフト12のみを用いて説明する。 【0019】先ず、図5および図6に示すように、誘導
加熱コイル50、駆動側プーリシャフト12および冷却
水供給手段70a、70bが位置決め固定される。すな
わち、誘導加熱コイル50の周回コイル部56、58に
駆動側プーリシャフト12のシャフト部20を挿入する
とともに、第1〜第5円弧部52a〜52eがこの駆動
側プーリシャフト12のベルト摺動面28から所定間隔
離間するように位置決めされる。駆動側プーリシャフト
12は、図示しない回転手段に連結されたホルダ74を
介して矢印方向に回転自在に支持される(図6参照)。 【0020】さらに、誘導加熱コイル50の上方に、所
定間隔離間して略半円状の一対の冷却水供給手段70
a、70bが位置決めされる。冷却水供給手段70a、
70bの底面部には、ベルト摺動面28に向かって複数
の冷却水導出孔部72が形成されている。 【0021】入力端子64a、64bは、リード線を介
して図示しない高周波電源に接続されており、また、誘
導加熱コイル50自体を冷却するために、管路66内に
冷却水が供給されている。 【0022】このような準備段階を経た後、高周波電源
を付勢して誘導加熱コイル50に高周波電流が供給され
るとともに、回転手段を介し中心Oを回転中心にして駆
動側プーリシャフト12が所定方向に回転される。そし
て、高周波電流により誘導電流が発生し、前記誘導電流
によって誘導加熱コイル50と対面する駆動側プーリシ
ャフト12のベルト摺動面28が加熱される。 【0023】この場合、図3に示すように、駆動側プー
リシャフト12のプーリ部16には、ベルト摺動面28
の反対側の周縁に複数のドグ32が形成されている。こ
のため、ベルト摺動面28の周縁部分がこのベルト摺動
面28の他の部分に比べて加熱され難くなっている。 【0024】そこで、本実施形態では、誘導加熱コイル
50を構成する第1〜第5円弧部52a〜52eが、1
80゜以上の中心角を所定の角度毎に分割されるととも
に、ドグ32の位置に対応する最外周の前記第5円弧部
52eの分割角度θ5 が、第1〜第4円弧部52a〜5
2dのそれぞれの分割角度θ1 、θ2 、θ3 およびθ 4
よりも大きな角度に設定されている(θ5 >θ1 =θ2
=θ3 =θ4 )。具体的には、θ1 =θ2 =θ3 =θ4
=36゜で、θ5 =43゜であり、誘導加熱コイル50
全体の中心角は、187゜である。 【0025】このため、ドグ32の位置に対応するベル
ト摺動面28の周縁部分を有効に加熱することができ、
前記ベルト摺動面28全体を均一加熱することが可能に
なるという効果が得られる。 【0026】ところで、プーリ部16のベルト摺動面2
8が一様に加熱されて所定の焼入れ温度に到達した後、
冷却水供給手段70a、70bが駆動されて複数の冷却
水導出孔部72から前記ベルト摺動面28の全体にわた
って冷却水76が供給される。その際、必要に応じて、
回転手段を滅勢して駆動側プーリシャフト12を静止さ
せた状態でベルト摺動面28に冷却水76を供給し、あ
るいは前記回転手段を付勢した状態を継続させ、前記駆
動側プーリシャフト12を所定方向に回転させた状態で
ベルト摺動面28に冷却水76を供給してもよい。 【0027】本実施形態に係る誘導加熱コイル50は、
従来技術に係る渦巻き状コイルと異なり、冷却水76を
ベルト摺動面28全体に有効に供給することができる。
この結果、冷却ムラを発生させることがなく、ベルト摺
動面28が均一かつ効率的に冷却される。 【0028】これにより、誘導加熱コイル50を用いる
ことによって、ベルト摺動面28全面を均一に加熱する
ことができるとともに、冷却ムラを発生させることがな
く、該ベルト摺動面28の表面に所望の硬度からなる硬
化層を確実に形成することが可能になる。 【0029】なお、従動側プーリシャフト14、駆動側
および従動側プーリ36、38の各ベルト摺動面30、
40および42は、上記した駆動側プーリシャフト12
と略同様の方法で高周波加熱される。但し、駆動側およ
び従動側プーリ36、38は、中央部に孔部が形成され
ているため、誘導加熱コイル50に代替して、図7に示
す誘導加熱コイル80を用いることができる。 【0030】この誘導加熱コイル80では、駆動側およ
び従動側プーリ36、38の孔部内壁面に沿った半周コ
イル部82を含む第1誘導加熱導体部84を備える他、
誘導加熱コイル50と同様に構成されており、同一の構
成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明は省
略する。これにより、誘導加熱コイル80を使用するこ
とによって、誘導加熱コイル50と同様の効果が得られ
ることになる。 【0031】 【発明の効果】本発明に係る誘導加熱コイルによれば、
以下の効果が得られる。 【0032】車両の変速装置を構成する駆動側または従
動側プーリ機構のベルト摺動面を高周波加熱して高周波
焼入れを行う際、前記ベルト摺動面全体を均一に加熱す
ることができるとともに、該ベルト摺動面全体を均一に
冷却することが可能となる。この結果、ベルト摺動面の
全面を所望の硬度に確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施形態に係る誘導加熱コイルの斜視
図である。 【図2】前記誘導加熱コイルの平面図である。 【図3】前記誘導加熱コイルと高周波焼入れが施される
ワークの側面図である。 【図4】前記ワークが組み込まれる変速装置の縦断説明
図である。 【図5】前記ワークに対し高周波焼入れを施す状態を示
す平面図である。 【図6】前記ワークに対し高周波焼入れを施す状態を示
す縦断面図である。 【図7】他の誘導加熱コイルの斜視図である。 【符号の説明】 10…変速装置 12、14…
プーリシャフト 16、18…プーリ部 28、30…
ベルト摺動面 32、34…ドグ 36、38…
プーリ 50、80…誘導加熱コイル 52a〜52
e…円弧部 54a〜54d…段部 56、58…
周回コイル部 60、62、84…誘導加熱導体部 64a、64
b…入力端子 66…管路 70a、70
b…冷却水供給手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中田 靖士 埼玉県狭山市新狭山1−10−1 ホンダ エンジニアリング株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−283862(JP,A) 特開 平8−283861(JP,A) 特許3096212(JP,B2) 特許2841169(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/00 - 9/44,9/50 C21D 1/00 - 1/84 H05B 6/00 - 6/10 H05B 6/14 - 6/44

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】車両の変速装置を構成する駆動側または従
    動側プーリ機構において、反対側の周縁に突起部を有し
    たベルト摺動面を、高周波焼入れを行うために高周波加
    熱する誘導加熱コイルであって、 180゜以上の中心角を所定の角度毎に分割するととも
    に、前記ベルト摺動面の形状に対応して半径が順次大き
    くなる第1〜第N円弧部と、 隣接する前記第1〜第N円弧部の端部をそれぞれ連結す
    る第1〜第(N−1)段部と、 を有し、 前記突起部の位置に対応する最外周の前記第N円弧部の
    分割角度が、第1〜第(N−1)円弧部のそれぞれの分
    割角度よりも大きな角度に設定されることを特徴とする
    誘導加熱コイル。
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