JP3578795B2 - シリンダブロックの内面焼入れ方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、シリンダブロックの内周表面を分割して加熱焼入れ処理する内面焼入れ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の円筒状被加熱部材の内周壁を全周にわたって焼入れする際に利用される加熱コイルとしては、例えば、本出願人により先に出願された特開昭58−73990号公報に記載された「誘導加熱コイル」等がある。
【0003】
この誘導加熱コイルでは、被加熱部材となる小径筒体の内周壁に等間隔で横縞条焼入層を形成するように各巻回導体部を交互に巻回方向を変更するように形成するとともに、その各巻回導体部において発生する交番磁束が対向する被加熱部材となる小径筒体の所定内周壁にのみ集中するように、各巻回導体部に磁性体からなるコアを付加している。
【0004】
したがって、この誘導加熱コイルを利用して加熱焼入れ処理される小径筒体内壁には、従来の全周焼入れによる歪みを発生させることなく、横縞状焼入層を形成して、被加熱部材となる小径筒体の所定内壁に耐摩耗性を付与している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような上記従来の誘導加熱コイルにあっては、被加熱部材となる小径筒体の内周壁に等間隔で横縞条焼入層を形成するように複数の巻回導体部を交互に巻回方向を変更するように形成するとともに、その各巻回導体部において発生する交番磁束が対向する被加熱部材となる小径筒体の所定内周壁にのみ集中するように、各巻回導体部に磁性体からなるコアを付加するという構成となっていたため、内周壁の任意の箇所を部分分割して加熱焼入処理ができないという問題点があった。
【0006】
〔目的〕
本発明は、シリンダブロックの内周壁の任意の箇所を斑模様に部分分割して一括加熱焼入する処理を容易にするをシリンダブロックの内面焼入れ方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の手段は次の通りである。
【0008】
本発明は、
略円筒状導体部材により形成された誘導子を利用し、この誘導子に所定間隔をおいて設置したシリンダブロックの内周壁に誘導電流を発生させ、当該シリンダブロックの内周壁に焼入層を形成するシリンダブロックの内面焼入れ方法であって、
複数の凹部を、前記誘導子を形成する円筒状導体部材の内周壁の周方向に一定角度をおいて前記円筒状導体部材の内周壁に形成し、前記円筒状導体部材を前記シリンダブロックの円筒軸方向に移動させるとともに前記円筒状導体部材を所定角度回転させ、電流が前記円筒状導体部材を周方向に流れて前記誘導電流を発生させることによって前記円筒状被加熱部材の内周壁における前記各凹部に対向する部分に焼入層を一括形成する焼入工程を繰り返し行うことを特徴とする。
【0009】
【作用】
本発明によれば、
前記誘導子を形成する円筒状導体部材の内周壁の周方向に一定角度をおいて、部分的に複数の凹部が前記円筒状導体部材の内周壁に形成され、当該誘導子を前記シリンダブロックの内周壁と一定間隔をおいて一定の回転角で割出しながら前記誘導電流を発生させることにより、当該各凹部に対向する前記シリンダブロックの内周壁への磁束強さを制御することができ、当該回転角の間隔で分割加熱され、当該シリンダブロックの内周壁に斑模様の部分分割焼入層が形成される。
【0010】
したがって、シリンダブロックの内周壁の周方向の任意の位置を部分分割して加熱焼入れする処理を一括して行うことができ、より多くの焼入れパターンの要求に容易に対応することができる。
【0011】
また、その構造が単純であるため、電源装置からの供給電流量を少なくし、かつ供給電流量の制御も容易にでき、電源装置における電力負担及び制御負担を軽減することができ、この誘導加熱コイルを利用するシステムの低コスト化を図ることができる。このため、誘導加熱コイル自身の消耗度合も低減し、長寿命化を実現することができ、メンテナンスコストも低減することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を図を参照して説明する。
【0013】
図1〜図8は、本発明に係るシリンダブロックの内面焼入れ方法を適用した誘導加熱コイルの一実施例を示す図である。
【0014】
図1は、誘導加熱コイル1(以下、加熱コイル1という)の外観斜視図である。図1において、加熱コイル1は、円筒状導体部材2により形成され、その内周壁3に、当該円筒状導体部材2の肉厚を部分的に薄くする凹部4,4,…が周方向に、約30゜づつ間隔をおいて12箇所に形成されるとともに、加熱コイル1に外部のインバータ電源装置(図示せず)との間に接続される供給電流用ケーブルを接続するためのケーブル接続部5a,5bが形成されている。
【0015】
このケーブル接続部55a,5bの間に絶縁部材6を挟むことによって、1ターンの加熱コイルが形成されている。
【0016】
本実施例の加熱コイル1は、円筒状のシリンダブロックの内壁を一括して加熱焼入れするためのものであり、図2に示す平面図のように、円筒状のシリンダブロック11の内周壁12から所定間隔をおいた位置に加熱コイル1が設置される。この図2では、加熱コイル1の平面上でシリンダブロック11をカットした断面を示しており、加熱コイル1の各凹部4が形成された位置に対向するシリンダブロック11の内周壁12に焼入層が形成される様子を示している。
【0017】
すなわち、図2の一部を拡大して示す図3において、シリンダブロック11と加熱コイル1の凹部4が形成されていない凸部1aとのA−A線矢視断面図と、シリンダブロック11と加熱コイル1の凹部4とのB−B線矢視断面図を図3に示して着目すると、円筒状導体部材を流れる高周波電流は、高周波電流の特徴である近接効果によりシリンダブロックにより近い側を流れる性質がある。このため、図4に示すように円筒状導体部材の外側を流れる電流路として流れる。
【0018】
ここで、円筒状導体部材の電流路を図4に示す仮想的な電流路O1と考えた場合、円筒状導体部材に流れる電流により発生する磁束Φは、図3に示したようになる。但し、図3において、磁束Φの添え字番号は、A−A、B−B断面では等間隔である。この時、円筒状導体部材のA−A線に沿った厚さをt a とし、B−B線に沿った厚さをt b とした場合、"tb <ta "となっている。
【0019】
高周波電流O1により発生する磁束Φは、それぞれの導体面上に示すと図4のようになるが、図3の磁束Φ5、磁束Φ6の場合、B−B断面の厚さt b は、導体部材の一方端よりはずれるが、A−A断面の厚さt a の場合は、導体部材を導体厚み方向で切るように発生することになる。これは磁束Φ5、磁束Φ6は、A−A断面の厚さt a の場合、導体部材の一部を自己加熱(ローカルヒーティング)する結果となり、得られる磁束Φの強さは、B−B断面の厚さt b の場合に比べ弱くなる。このため、シリンダブロックに流れる誘導電流の近接効果が弱くなり、B−B断面の厚さt b に比べA−A断面の厚さt a の加熱効果は弱くなる。
【0020】
これに対し、B−B断面の厚さt b の磁束は強くなり、誘導電流の近接効果が強くなり、結果として円筒状導体部材凹部に対応する部分のシリンダブロックの内周壁は、より強く加熱され、図2に示すように、シリンダブロック11の内周壁12の周方向に部分的に焼入層12aを一括して形成することが可能となる。また、その加熱焼入処理されたシリンダブロック11の内周壁12の表面を、図5(a)に示すように展開すると、その焼入層12aが、内周壁12の周方向を部分分割するように形成されている。
【0021】
また、加熱コイル1をシリンダブロック11の軸上を移動しながら加熱焼入処理を繰り返し行うことによって、図5(b)に示すように、2条に部分分割焼入層を形成することもできるし、さらに、その軸上を移動する際に、加熱コイル1を所定角度回転させることによって、図5(c)に示すように、2条の部分分割焼入層を千鳥状に形成することもできる。
【0022】
本実施例の加熱コイル1による筒体のシリンダブロック11の内周壁12に対する焼入れパターンは、この図5(b)及び図5(c)に示すように2条にわたって形成する場合に限らず、より多くの複数条にわたって形成することが可能であることは勿論である。また、加熱コイル1に形成する凹部4の間隔は、その加熱焼入れ間隔が重ならない程度に任意に変更可能であり、顧客の要求する多くの部分加熱焼入れパターンに充分に応じることができる。
【0023】
また、加熱コイル1の各凹部4,4,…にコア21,21,…を取り付けた場合の外観図を図6に示す。
【0024】
このように、各凹部4にコア21を取り付けることによって、凹部4に対向するシリンダブロック11の内周壁12との間に発生する交番磁束Φ3は、前方に集中するようになり、その内周壁12に形成する部分分割焼入層12aをより深く形成することができる。
【0025】
したがって、より深い部分分割焼入層の形成を望む顧客に対しては、コア21を取り付けることで容易に対応することができる。
【0026】
但し、コア21を取り付けた場合は、加熱の進行する速度が早まり、部分焼入層を形成する間隔が狭すぎると、各部分焼入層がつながってしまう可能性があるため、コア21を取り付けない場合に比べて凹部4を形成する間隔を広げる必要がある。
【0027】
以上のように、本実施例の加熱コイル1は、その円筒状導体部材2により形成され、その内周壁3に、当該円筒状導体部材2の肉厚を部分的に薄くする凹部4,4,…を周方向に、所定間隔をおいて複数箇所に形成するようにしただけであるため、加熱コイル1の構造が単純化されて従来の誘導加熱コイルに比べて低コストで製作することができる。
【0028】
また、その加熱コイル1の構造上、シリンダブロックである筒体内周壁との間隔を周方向で一定に保つように調整することが容易にでき、筒体内周壁の周方向の任意箇所を加熱焼入する処理を一括して容易にできる。
【0029】
このため、例えば、フランジ付シャフトの一発焼きにおいて、本発明の誘導加熱コイルを利用すれば、従来の誘導加熱コイルのようにコアを使用しなくても、焼入れ深さを容易に調整することができる。
【0030】
さらに、本実施例の加熱コイル1は、1ターン構成であるため、外部の電源装置からの供給電流量を少なくし、かつ供給電流量の制御も容易にでき、インバータ電源装置における電力負担及び制御負担を軽減することができる。このため、加熱コイル1自身の消耗度合も低減し、長寿命化を実現することができ、メンテナンスコストも低減することができる。
【0031】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記加熱コイル1に形成する凹部4の間隔を、その加熱焼入層が重ならない程度に任意に変更可能である。
【0032】
【発明の効果】
本発明の誘導加熱コイルによれば、シリンダブロック内周壁の周方向の任意の位置を部分分割して加熱焼入れする処理を一括して行うことができ、より多くの焼入れパターンの要求に容易に対応することができる。
【0033】
また、その構造が単純であるため、電源装置からの供給電流量を少なくし、かつ供給電流量の制御も容易にでき、電源装置における電力負担及び制御負担を軽減することができ、この誘導加熱コイルを利用するシステムの低コスト化を図ることができる。このため、誘導加熱コイル自身の消耗度合も低減し、長寿命化を実現することができ、メンテナンスコストも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の誘導加熱コイルの一実施例の外観斜視図。
【図2】図1の誘導加熱コイルにシリンダブロックをセットした場合の平面図。
【図3】図4のA−A線及びB−B線矢視断面図。
【図4】図2の誘導加熱コイルとシリンダブロックの内周壁との間に発生する交番磁束の状態を示す図。
【図5a】図2のシリンダブロックの内周壁を展開して焼入層の形成パターンを示す図。
【図5b】本発明の誘導加熱コイルによるその他の焼入層の形成パターンを示す図。
【図5c】本発明の誘導加熱コイルによるその他の焼入層の形成パターンを示す図。
【図6】図1の誘導加熱コイルにコアを取り付けた場合の外観斜視図。
【符号の説明】
1 誘導加熱コイル
2 円筒状導体部材
3 内周壁
4 凹部
5a,5b ケーブル接続部
6 絶縁部材
7 外周壁
11 シリンダブロック
12 内周壁
12a 焼入層
21 コア
Claims (1)
- 略円筒状導体部材により形成された誘導子を利用し、この誘導子に所定間隔をおいて設置したシリンダブロックの内周壁に誘導電流を発生させ、当該シリンダブロックの内周壁に焼入層を形成するシリンダブロックの内面焼入れ方法であって、
複数の凹部を、前記誘導子を形成する円筒状導体部材の内周壁の周方向に一定角度をおいて前記円筒状導体部材の内周壁に形成し、前記シリンダブロックの内側に前記円筒状導体部材を所定間隔をおいて設置し、前記円筒状導体部材を前記シリンダブロックの円筒軸方向に移動させるとともに前記円筒状導体部材を所定角度回転させ、電流が前記円筒状導体部材を周方向に流れて前記誘導電流を発生させることによって前記円筒状被加熱部材の内周壁における前記各凹部に対向する部分に焼入層を一括形成する焼入工程を繰り返し行うことを特徴とするシリンダブロックの内面焼入れ方法。
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JP05922994A JP3578795B2 (ja) | 1994-03-29 | 1994-03-29 | シリンダブロックの内面焼入れ方法 |
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DE4442821A DE4442821C2 (de) | 1993-12-13 | 1994-12-01 | Induktionsheizspulenanordnung zur Härtung einer Innenoberfläche |
Applications Claiming Priority (1)
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-
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- 1994-03-29 JP JP05922994A patent/JP3578795B2/ja not_active Expired - Lifetime
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