JP3509566B2 - 乳飲料 - Google Patents

乳飲料

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、0.8%以上1.
8%未満の乳脂肪分及び乳脂肪分の80%以上の乳蛋白
を含有する乳飲料に関する。詳しくは、保存中に変敗や
乳化状態の不良を招く惧れがなく、安定した粒径分布を
保ち、保存安定性に優れた乳飲料に関する。
【0002】
【従来の技術】ミルクコーヒー、ミルク紅茶等の中性乳
飲料は、缶飲料等として、近年需要が増大している飲料
である。これらの飲料は、製品化の過程で、通常レトル
ト殺菌が施されるが、耐熱性の強い高温芽胞菌の一部は
殺菌工程を経ても生存し、保存中或いは流通段階で飲料
の変敗を引き起こすことがある。この対策として、特開
平8−228676は、ポリグリセリン脂肪酸エステ
ル、特にグリセリンの重合度が2であるジグリセリン脂
肪酸エステルを添加することにより耐熱芽胞菌の増殖を
抑えて変敗を防止することを提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】乳飲料中ではミルク由
来の脂質、蛋白質や、コーヒー豆等に由来する多糖類、
脂質、その他固形分等が乳化された状態で存在する。こ
れらは乳飲料中の蛋白質の乳化力や、乳化剤、乳化安定
剤等により乳化状態を保っている。この様な、乳化状態
の良否は乳化物の粒径で評価されることが多い。一般的
に、乳化物の粒径が小さく、粒径の分布が狭い方が乳化
が安定である。乳飲料を長期に保存すると、乳化粒子が
互いに凝集し、経時的に粒径が増大し、最後には沈殿等
を起こし、製品の品質を悪くする。本発明者等の検討に
依れば、この様な粒径の増大は、乳化剤の乳化能力の不
足や、飲料の殺菌等の熱履歴による乳化破壊、乳化剤の
蛋白変性防止能力の不足などにも起因するが、抗菌の目
的で、ジグリセリン脂肪酸エステル等のポリグリセリン
脂肪酸エステルを乳飲料に添加した場合に、保存中に粒
径が増大し製品の安定性が低下する現象が見られた。本
発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、その目
的は、高温芽胞菌に依る変敗や、乳化状態不良に依る品
質低下の惧れのない保存安定性に優れた乳飲料の提供に
ある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の様
な問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、乳飲料
の処方を検討すると共に、ポリグリセリン脂肪酸エステ
ルとショ糖脂肪酸エステルを併用することにより、上記
目的を達成し安定な乳飲料が得られることを見出し、本
発明を達成した。即ち、本発明の要旨は、乳脂肪分が
0.8%以上、1.8%未満で、かつ乳蛋白が乳脂肪分
の80%以上である乳成分を含有し、且つ、0.025
%〜0.3%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び、
0.015%〜0.3%のショ糖脂肪酸エステルを含有
する乳飲料に存する。
【0005】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。飲
料中の乳成分としては、乳脂肪分含量が0.8%以上、
1.8%未満の範囲であり、かつ乳蛋白含量が乳脂肪分
含量の80%以上の範囲である。好ましくは、乳脂肪分
が0.9%〜1.6%の範囲であり、かつ乳蛋白含量が
乳脂肪分含量の90%以上の範囲である。当該範囲以上
の乳脂肪分含量では、乳脂肪に伴って増加する乳蛋白の
働きにより、乳脂肪の乳化が安定となり、本発明を適用
する意味はない。また、乳蛋白の含量が、当該範囲以下
の場合、乳化が不安定となる。なお、本明細書におい
て、「%」は特記しない限り、「重量%」を意味する。
【0006】本発明に使用するポリグリセリン脂肪酸エ
ステルとしては、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成
するグリセリンの重合度が2〜4であり、その構成脂肪
酸がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステア
リン酸から選ばれる1種類以上であり、且つ、モノエス
テルの含量が50%以上であるようなポリグリセリン脂
肪酸エステルである。なお、ポリグリセリン脂肪酸エス
テルは、重合度、エステル化度等の異なるエステルが混
合した組成物であり、例えば、ジグリセリンエステルと
は平均重合度が2のポリグリセリン脂肪酸エステルの組
成物である。抗菌性の観点から、好ましくは、ジグリセ
リンパルミチン酸モノエステルを70%以上含むポリグ
リセリン脂肪酸エステルが好適である。飲料中のポリグ
リセリン脂肪酸エステルの含量は、十分な抗菌力を示す
量であることが必要である。この量は、飲料中の乳脂肪
分の量に応じて増加し、また、ポリグリセリン脂肪酸エ
ステルの種類、乳飲料の種類によっても異なり、200
ppm程度の量でも変敗の発生を見ない場合もあるが、
通常、300〜400ppmの含量では抗菌力は十分と
はいえず、保存、流通の段階で変敗する惧れがあるとの
報告もある。従って、ポリグリセリン脂肪酸エステルの
含量は0.025%以上、好ましくは0.05%以上、
さらに好ましくは0.06%以上である。一方、ポリグ
リセリン脂肪酸エステルの含量は多くとも0.3%以
下、好ましくは0.15%以下である。含量が多いと、
コストが高くなるばかりでなく、飲料の風味を損ねるの
で好ましくない。
【0007】本発明に使用されるショ糖脂肪酸エステル
としては、構成脂肪酸がミリスチン酸、パルミチン酸、
ステアリン酸から選ばれる1種類以上、好ましくはパル
ミチン酸とステアリン酸の含量合計が80%以上であ
り、うちステアリン酸の含量が50%以上のものであ
る。ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、3以上7以下、
好ましくは4以上6以下であることが好ましい。飲料中
のショ糖脂肪酸エステルの含量は、0.015%以上、
好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.025
%以上の範囲が好適である。当該範囲外では、粒径を制
御する効果が低い。ショ糖脂肪酸エステルの含量は多く
とも0.3%以下、好ましくは0.1%以下である。含
量が多いと、コストが高くなるばかりでなく、飲料の風
味を損ねるので好ましくない。
【0008】本発明の乳飲料の調製法は特に限定される
ものではない。例えば、ミルクコーヒーの場合を例に挙
げると、所定の乳脂肪分、乳蛋白となる量の乳成分、コ
ーヒーエキス、甘味料、香料等の飲料成分と、ポリグリ
セリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及び水を
配合し、ホモジナイザー等により均質化し、容器に充填
する。以上の他、乳飲料に添加される各種成分を添加し
てもよく、また必要に応じて、他の食品乳化剤、安定剤
を加えることもできる。乳飲料としては、ミルク入り、
中性もしくは弱酸性飲料が挙げられる。特にミルクコー
ヒー、ミルク入り紅茶が好ましく、なかでもミルクコー
ヒーにおいて顕著な効果がある。なお、必要に応じて、
その他食品用乳化剤、安定剤を加えることができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説
明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の
実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比
較例においては、以下のポリグリセリン脂肪酸エステル
及びショ糖脂肪酸エステルを使用した。 ポリグリセリン脂肪酸エステル 構成脂肪酸組成 パルミチン酸 100% モノエステル含量 70% 重合度 2 ショ糖脂肪酸エステル 構成脂肪酸組成 ステアリン酸 70%、パルミチン酸 30% HLB 5
【0010】参考例(ポリグリセリン脂肪酸エステルの
抗菌試験) コーヒーエキス3.7g、全脂粉乳1.8g、グラニュ
ー糖8g、所定量のポリグリセリン脂肪酸エステル、重
曹0.05gに水を混合して全量を100gとした後、
バルブホモゲナイザーを用いて60℃にて20kgf/
cm2 で均質化してミルクコーヒーを得た(乳脂肪分
0.48%)。これに、クロストリジウム・サーモアセ
チカム(Clostridium thermaceticum)芽胞懸濁液(濃度
1×105個/ml)を0.1ml接種し、ガラスチュ
ーブに各2ml×5本ずつ採り、火炎にて開口端を密封
し、121℃で20分間加熱殺菌した。これを55℃で
4週間保存した後、変敗の有無を判定した。判定は外観
及び菌無接種区とのpHの差異により行った。結果を下
記表−1に示した。
【0011】
【表1】
【0012】実施例1 コーヒーエキス37g、全脂粉乳34g、グラニュー糖
80g、重曹1.3g、ポリグリセリン脂肪酸エステル
を0.3g、ショ糖脂肪酸エステルを0.3g、および
水を混合し全量を1000gとして、高圧ホモジナイザ
ーを用いて60℃にて150kg/50kgの圧力で均
質化後、30g試験管に各27gずつ分注した。この試
験管をレトルト殺菌機で121℃、20分の条件で殺菌
してミルクコーヒー(乳蛋白量0.8%、乳脂肪分0.
9%)を得た。得られたミルクコーヒーを55℃で2週
間、および4週間静置した後、乳化粒子の粒径分布を測
定した。4週間後の粒径分布は図1の通りで、メジアン
粒径は、0.46μmであった。なお、粒径測定は、H
OLIBA製、LA−500を用いた。メジアン粒径
(粒径の出現頻度の合計が50%となる粒径)によっ
て、製品の安定性を6段階で評価し表−2に示した。
【0013】実施例2 レトルト殺菌機の条件を121℃、50分とした以外
は、実施例1と同様にしてミルクコーヒーを得、その粒
径分布を測定し、評価結果を表−2に示した。 実施例3 ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を0.6g、シ
ョ糖脂肪酸エステルの添加量を0.25gとした以外
は、実施例1と同様にしてミルクコーヒーを得、その粒
径分布を測定し、評価結果を表−2に示した。 実施例4 レトルト殺菌機の条件を121℃、50分としたこと以
外は実施例3と同様にしてミルクコーヒーを得、その粒
径分布を測定し、評価結果を表−2に示した。
【0014】比較例1 ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を0.6gと
し、ショ糖脂肪酸エステルの添加量を0.1gとした以
外は、実施例1と同様にしてミルクコーヒーを得、実施
例1と同様にその粒径分布を測定した。4週間後の粒径
分布は図1の通りで、メジアン粒径は、1.86μmで
あった。メジアン粒径の評価結果を表−2に示した。 比較例2 レトルト殺菌機の条件を121℃、50分としたこと以
外は比較例1と同様にしてミルクコーヒーを得、その粒
径分布を測定し、評価結果を表−2に示した。
【0015】
【表2】 表−2 乳化粒子の安定性評価 製造直後 2週間後 4週間後 実施例1 ◎ ◎ ◎ 実施例2 ◎ ◎ ◎ 実施例3 ○ ○ ○ 実施例4 ○ ○ △ 比較例1 △ × × 比較例2 △ △ ×××
【0016】尚、安定性の評価基準は以下の通りであ
る。
【0017】
【表3】
【0018】以上の実施例、比較例のミルクコーヒー
は、4週間後の外観観察で変敗は認められなかった。
【0019】実施例5 ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を1.5g、シ
ョ糖脂肪酸エステルの添加量を0.25gとした以外
は、実施例1と同様にしてミルクコーヒーを調製し、そ
の粒径分布を測定した。評価結果を表−3に示した。 比較例3 ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を3.2g、シ
ョ糖脂肪酸エステルの添加量を0.25gとした以外
は、実施例1と同様にしてミルクコーヒーを調製し、そ
の粒径分布を測定し、評価結果を表−3に示した。
【0020】
【表4】
【0021】実施例6 ショ糖脂肪酸エステルの添加量を1.5gとした以外
は、実施例1と同様にしてミルクコーヒーを得た。得ら
れたミルクコーヒーを25℃とし、表−4の基準に従い
官能評価を行った。6人のパネラーの採点の平均値をと
り、小数点第一位を四捨五入した結果を表−5に示し
た。
【0022】
【表5】表−4 官能評価基準 0:異味なし 1:異味をわずかに感じる 2:異味を感じる 3:異味を強く感じる 4:異味を不快な程に感じる
【0023】実施例7 ポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量を1.5gとし
た以外は、実施例6と同様にミルクコーヒーを調製して
官能評価を行い、結果を表−5に示した。
【0024】比較例4 ショ糖脂肪酸エステルの添加量を3.2gとした以外
は、実施例6と同様にミルクコーヒーを調製して官能評
価を行い、結果を表−5に示した。
【0025】
【表6】
【発明の効果】本発明の乳飲料は、保存中に乳化粒子の
安定した粒径分布を保ち、品質の安定な乳飲料である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1で得られたミルクコーヒ
ーの4週間後の乳化粒子の粒径分布を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01J 1/00 - 27/04 A23C 1/00 - 23/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乳脂肪分が0.8%以上、1.8%未満
    で、かつ乳蛋白が乳脂肪分の80%以上であり、0.0
    25%〜0.3%のポリグリセリン脂肪酸エステル及び
    0.015%〜0.3%のショ糖脂肪酸エステルを含有
    する乳飲料。
  2. 【請求項2】 ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成す
    るグリセリンの重合度が2〜4であり、その構成脂肪酸
    がラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリ
    ン酸から選ばれ、且つ、モノエステルの含量が50%以
    上であることを特徴とする請求項1記載の乳飲料。
  3. 【請求項3】 ポリグリセリン脂肪酸エステルがジグリ
    セリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項2
    に記載の乳飲料。
  4. 【請求項4】 ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、
    ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ば
    れ、そのHLBが、3〜7であることを特徴とする請求
    項1乃至3の何れかに記載の乳飲料。
  5. 【請求項5】 ポリグリセリン脂肪酸エステルの含量
    が、0.05%〜0.15%であることを特徴とする請
    求項1乃至4の何れかに記載の乳飲料。
  6. 【請求項6】 ショ糖脂肪酸エステルの含量が0.02
    5%〜0.1%であることを特徴とする請求項1乃至5
    の何れかに記載の乳飲料。
  7. 【請求項7】 乳脂肪分が0.9%以上、1.6%以下
    で、かつ乳蛋白が乳脂肪分の90%以上であり、下記A
    のポリグリセリン脂肪酸エステルを0.05〜0.15
    %、及び下記Bのショ糖脂肪酸エステルを0.02〜
    0.1%含有する乳飲料。 A:グリセリンの重合度が2〜4であり、構成脂肪酸が
    ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリ
    ン酸より成る群から選ばれるものであり、且つモノエス
    テルの含量が50%以上であるポリグリセリン脂肪酸エ
    ステル。 B:構成脂肪酸がミリスチン酸、パルミチン酸及びステ
    アリン酸より成る群から選ばれるものであり、HLBが
    3以上、7以下であるショ糖脂肪酸エステル。
  8. 【請求項8】 ポリグリセリン脂肪酸エステルがジグリ
    セリンパルミチン酸モノエステルを70%以上含むもの
    であり、ショ糖脂肪酸エステルが構成脂肪酸がパルミチ
    ン酸とステアリン酸の合計含量が80%以上であり、う
    ちステアリン酸の含量が50%以上のものであることを
    特徴とする請求項7に記載の乳飲料。
  9. 【請求項9】 乳飲料がミルクコーヒーであることを特
    徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の乳飲料。
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