JP3498909B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
トロイダル型無段変速機Info
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Description
るトロイダル型無段変速機の技術分野に属する。
が無段階に変化する無段変速機は、その滑らかさ、運転
のしやすさ及び燃費向上の期待もあって近年研究開発が
進められていて、ベルト式無段変速機に続いて、油膜の
せん断によって動力を伝達するトラクションドライブ式
トロイダル型無段変速機(以下、トロイダル型CVT)
が既に実用化されている。
点での運転が可能であり、燃費と動力性能の大幅な向上
が可能な技術として注目されている。ただし、その特徴
を最大限に活かすには、動力伝達効率を高めておくこと
が必要であり、フルトロイダル型CVTに比べて動力伝
達部の動力損失が小さく高い効率が得られるという理由
によりハーフトロイダル型CVTが選択されている。
入出力ディスクとパワーローラとの2つの接触点に引い
た接線が交点を持ち、その交点の軌跡が全変速範囲にお
いてディスク回転軸の近傍にあることから、スピン損失
がフルトロイダル型CVTに比べて小さい。
損失を小さく抑える先行技術としては、特公平6−72
653号公報に記載のものが知られている。
入力ディスク及び出力ディスクとパワーローラの接触点
における法線と、パワーローラの回転軸がなす角が等し
く、その開き角をθとし、また、入出力ディスクの円弧
半径をR0とし、円弧中心から入出力ディスク回転軸ま
での距離とR0の差をeとして、その比であるキャビテ
ィアスペクト比kをe/R0とし、入力ディスク及び出
力ディスクとパワーローラの接触面内におけるそれぞれ
の速度分布の差によって生じる相対滑りの角速度、すな
わちスピン角速度をωsとし、入力ディスクの角速度を
ω1とし、その比であるωs/ω1をスピンSとしたと
き、開き角θを50°以上とし、キャビティアスペクト
比kを0.6以上とし、さらにスピンSを±0.3の範
囲内になるように設定したものが記載されている。
トロイダル型無段変速機にあっては、スピンSが0未満
となるロー側変速比域とハイ側変速比域において、動力
損失が増加するという問題点があり、この結果、ロー側
変速比域の使用頻度が高い市街地走行時や、ハイ側変速
比域の使用頻度の高い高速道路走行時において、トロイ
ダル型無段変速機の特徴を最大限引き出しての高い燃費
性能や動力性能を望めない。以下、その理由について詳
しく説明する。
産技術センター発行)の219頁に記載されているよう
に、接触点にスピンがある状態で動力伝達を行うと、ス
ピンの方向、すなわち、スピンSの値の正負にかかわら
ず動力損失を発生する。ここで、動力損失u1は、スピ
ンSによって接触点に発生するトルクをTsとすると、 u1=|ωs|・Ts …(1) となる。
からの距離rの位置にある微少面積dAにおける接触応
力をp、摩擦係数をμとすると、これらの積を接触面積
内について積分したもの、すなわち、 Ts=∫pμrdA …(2) となる。
入出力ディスクとパワーローラの接触点は油膜を介して
動力伝達を行う。よって、μを求めるには接触面内の各
位置における油膜の摩擦係数を、滑り速度や油温や面圧
等を考慮して求める必要があるが、ここでは簡単にする
ために一定とする。また、pはヘルツの接触理論によ
り、半楕円体状の分布をするが、簡単にするため接触面
内で一定とする。さらに、接触楕円の面積Aは接触点へ
の荷重Fcの大きさによって変化するが、ここでは一定
とすると、 Ts∝p∝Fc …(3) となる。
式は、 u1∝|S|・Fc …(5) となる。
で、動力損失を小さく抑えることを目的としており、パ
ワーローラの傾転角度φに対してスピンSが、図13の
ような値となる例を示している。ここで、スピンSは、
下記の式で与えられる。 S={sinθ・sinφ−(1+k−cosφ)・cosθ}/sinθ …(6) また、接触点荷重Fcは、ローディングカムが入力ディ
スクを押し付ける力をFa、パワーローラの数をnとし
たとき、 Fc=Fa/(n・sinφ) …(7) で与えられるが(日本機械学会論文講演抜刷;論文N
o.86−1182A「トロイダル形無段変速機に関す
る研究」参照)、入力トルクを一定、すなわち、Faを
一定とした場合、パワーローラ傾転角度φに対して、図
14に示すように、パワーローラ傾転角度φが小さくな
るほど、すなわちロー側ほど接触点荷重Fcは大きくな
る。
がロー側で負の値を取るので、φ=θ(変速比i=1)
からロー側に向かって途中まではスピン絶対値|S|が
小さくなるが、S=0よりもロー側ではパワーローラ傾
転角度φが小さいほどスピン絶対値|S|が大きくな
る。したがって、これらの積に比例する動力損失u
1は、最ロー付近で極端に大きくなる。
単純に計算しているが、これらの値を厳密に求めても同
じことが言える。図15は田中らの手法(上記文献及び
日本機械学会論文講演抜刷;論文No.89−0148
B「スラスト玉軸受のトラクション油中のスピンモーメ
ント」参照)により入出力ディスクとパワーローラの接
触点における動力損失u1(以下、接触点動力損失u1
という)及びパワーローラ軸受の動力損失u2を(以
下、軸受動力損失u2という)それぞれ求め、足し合わ
せた総動力損失Uを示している。この厳密な計算による
と、ロー側だけでなく、ハイ側の総動力損失Uも増大し
ている。これは、接触点荷重Fcの低下がスピン絶対値
|S|の増大を相殺しきれなかった結果である。したが
って、S<0の範囲のすべてで、総動力損失Uが増加す
る。
もので、その目的とするところは、ロー側変速比域及び
ハイ側変速比域における総動力損失を低減することがで
きるトロイダル型無段変速機を提供することにある。
に、請求項1記載の発明では、同軸に対向配置された入
力ディスク及び出力ディスクと、前記入力ディスクを入
力トルクに比例した荷重で押し付けるローディングカム
と、前記入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成された
トロイド状の円弧面に動力伝達可能に挟持されるパワー
ローラと、該パワーローラを入出力ディスクの円弧中心
に対して傾転可能に支持するパワーローラ支持部材と、
前記パワーローラをパワーローラ支持部材に対して回転
可能に支持するパワーローラ軸受とを備えたトロイダル
型無段変速機において、前記入力ディスク及び出力ディ
スクとパワーローラの接触点での相対滑り角速度、すな
わちスピン角速度をωsとし、入力ディスクの角速度を
ω1とし、その比ωs/ω1をスピンSとし、このスピ
ンSを下記の式で与えたとき、 上記式にて、キャビティアスペクト比kを定数とし、入
力ディスク及び出力ディスクとパワーローラの接触点に
おけるスピンSが、ロー側変速比からハイ側変速比まで
の変速比範囲において0以上になるようにθ,φを設定
したことを特徴とする。
のトロイダル型無段変速機において、 キャビティアス
ペクト比kを定数とする入力ディスク及び出力ディスク
とパワーローラの接触点におけるスピン特性が、変速比
が1からロー側またはハイ側に変化したときに、スピン
絶対値|S|は単調減少する曲線特性にて与えられると
き、ロー側変速比からハイ側変速比までの変速比範囲に
て正の値をとるようにθ,φを設定したことを特徴とす
る。
は請求項2に記載のトロイダル型無段変速機において、
前記キャビティアスペクト比kを定数とし、前記入出力
ディスクに最大入力トルクが作用したときにも入力ディ
スク及び出力ディスクとパワーローラの接触点における
スピンSが、ロー側変速比からハイ側変速比までの変速
比範囲において0以上になるようにθ,φを設定したこ
とを特徴とする。
は請求項2に記載のトロイダル型無段変速機において、
前記キャビティアスペクト比kを定数とし、前記パワー
ローラの傾転範囲をハイ変速比側にだけ大きく設定し、
かつ、入力ディスク及び出力ディスクとパワーローラの
接触点におけるスピンSが、変速幅を拡大したハイ側変
速比領域を除く変速比範囲において0以上になるように
θ,φを設定したことを特徴とする。
し請求項4に記載のトロイダル型無段変速機において、
前記キャビティアスペクト比kを定数とし、前記パワー
ローラが全変速範囲にわたって傾転したときの入力ディ
スク及び出力ディスクとパワーローラの接触点における
スピンSの最小値が0.1以下になるようにθ,φを設
定したことを特徴とする。
は、キャビティアスペクト比kを定数とし、入力ディス
ク及び出力ディスクとパワーローラの接触点におけるス
ピンSが、ロー側変速比からハイ側変速比までの変速比
範囲において0以上になるようにθ,φが設定される。
スピンSがロー側変速比からハイ側変速比までの変速比
範囲にて正の値をとるため、常にS=|S|となり、変
速比が1からロー側またはハイ側に変化したときに、ス
ピン絶対値|S|は単調減少する。
数とするトロイダル型無段変速機において、スピン絶対
値|S|と入出力ディスクとパワーローラの接触点荷重
Fcの増減がほぼ打ち消し合うため、|S|とFcの積
に比例する接触点動力損失特性をみると、ロー側変速比
域及びハイ側変速比域における接触点動力損失u1の増
大が無い特性となり、この結果、ロー側変速比域及びハ
イ側変速比域における総動力損失Uを低減することがで
きる。さらに、キャビティアスペクト比kは何ら変更す
ることがないため、変速機寸法を従来例と同じにするこ
とができる。つまり、周辺部材との寸法関係を含めた大
幅な設計変更を要することがなく、容易に置き換えて採
用することができる。
ティアスペクト比kを定数とし、入出力ディスクに最大
入力トルクが作用したときにも入力ディスク及び出力デ
ィスクとパワーローラの接触点におけるスピンSが、ロ
ー側変速比からハイ側変速比までの変速比範囲において
0以上になるようにθ,φが設定される。
ーローラの接触点荷重Fcが大きくなると、入出力ディ
スクやパワーローラ支持部材等の変形量が大きくなり、
これに伴って、入出力ディスクとパワーローラの接触点
がずれてスピンSが小さくなる。
数とするトロイダル型無段変速機において、この入力ト
ルクによるスピンSの低下を見越してスピンSの最小値
を0より少し大きな値となるように設定しておくこと
で、入力トルクが大きく、変速比がロー側またはハイ側
の条件においても、スピンSが負の値をとることがな
く、接触点動力損失u1の増大を防止することができ
る。
ティアスペクト比kを定数とし、パワーローラの傾転範
囲がハイ変速比側にだけ大きく設定され、かつ、入力デ
ィスク及び出力ディスクとパワーローラの接触点におけ
るスピンSが、変速幅を拡大したハイ側変速比領域を除
く変速比範囲において0以上になるようにθ,φが設定
される。
変速比側とロー変速比側に拡大することで変速幅を大き
くし、かつ、スピンSを全変速比域において0以上にな
るように設定すると、変速比1におけるスピンSが大き
くなって接触点動力損失u1が増大する。また、スピン
Sが負である場合、ハイ変速比に向かうにしたがって接
触点荷重Fcが低下するため、ハイ変速比側での接触点
動力損失u1の増大はロー変速比側での接触点動力損失
u1の増大より小さい。
数とするトロイダル型無段変速機において、傾転範囲を
ハイ側のみに大きくすることで、ロー側での接触点動力
損失u1の増大を抑えつつ、ハイ側の変速幅を拡大する
ことができる。
ティアスペクト比kを定数とし、パワーローラが全変速
範囲にわたって傾転したときの入力ディスク及び出力デ
ィスクとパワーローラの接触点におけるスピンSの最小
値が0.1以下になるようにθ,φが設定される。
ディスク及び出力ディスクとパワーローラの接触点にお
ける油膜の温度が高くなり、動力伝達能力が低下する。
ちなみに、変速比ローにおける油膜の温度特性をみる
と、スピンSが0.1を超えるとスピン増加に対する油
膜温度温度上昇の割合が大きくなる。
数とするトロイダル型無段変速機において、スピンSの
最小値が0.1以下になるようにθ,φを設定すること
で、使用頻度の高い最ロー変速比側及び最ハイ変速比側
での、入力ディスク及び出力ディスクとパワーローラの
接触点における油膜の温度上昇を抑えることができる。
例〜第五実施例により説明する。
に記載された発明に対応するトロイダル型無段変速機で
ある。
ロイダル型無段変速機(以下、トロイダル型CVT)の
機械的構成を示すスケルトン図であり、このトロイダル
型CVTは、エンジン1の出力軸2にトーショナルダン
パ3を介して連結されたインプットシャフト4と、該シ
ャフト4の外側に遊嵌合された中空シャフト5を有し、
これらのシャフト4,5の軸線上には、第1トロイダル
CVT6及び第2トロイダルCVT7と、入力ディスク
61,71を入力トルクに比例した荷重で押し付けるロ
ーディングカム8とが配設されている。
は、ほぼ同一の構成であり、いずれも、対向面がトロイ
ド状の円弧面とされた入力ディスク61,71と出力デ
ィスク62,72とを有し、これらの対向面間に、両デ
ィスク61,62間と両ディスク71,72間でそれぞ
れ動力を伝達するパワーローラ63,73が2つづつ介
設されている。
た第1トロイダルCVT6は、入力ディスク61が反エ
ンジン側に、出力ディスク62がエンジン側に配置さ
れ、また、エンジン1に近い方に配置された第2トロイ
ダルCVT7は、入力ディスク71がエンジン側に、出
力ディスク72が反エンジン側に配置されており、か
つ、両トロイダルCVT6,7の入力ディスク61,7
1は中空シャフト5の両端部にそれぞれ摺動可能に結合
され、また、出力ディスク62,72(以下、「一体化
出力ディスク60」と記す)は一体化されて、該中空シ
ャフト5の中間部に回転自在に支持されている。
ン65,75(パワーローラ支持部材)により、入出力
ディスク61,62の円弧中心と入出力ディスク71,
72の円弧中心に対しそれぞれ傾転可能に支持されてい
る。また、パワーローラ63,73とトラニオン65,
75との間には、パワーローラ63,73をトラニオン
65,75に対して回転可能に支持するパワーローラ軸
受64,74が設けられている。
一体化出力ディスク60の外周には出力ギア9が設けら
れ、この出力ギア9がディファレンシャル装置11のド
ライブギア10と噛み合い、ディファレンシャル装置1
1から左右に延びる駆動軸12a,12bを介して左右
の駆動輪に動力を伝達するようになっている。
る油圧系の機械的構成図であり、第1トロイダルCVT
6の変速系について説明する。第1トロイダルCVT6
での変速は、パワーローラ63を支持するトラニオン6
5を平衡点から上下に変位させることにより行い、この
変位によりパワーローラ63と入出力ディスク61,6
2の回転方向ベクトルに差異が発生してパワーローラ6
3は傾転する。
サーボピストン31とつながっており、油圧サーボ30
のHi側シリンダ30a内の油とロー側シリンダ30b
内の油の差圧で変位する。Hi側シリンダ30aの油圧
とロー側シリンダ30bの油圧はシフトコントロールバ
ルブ46で制御する。
ルブ内のスプール46Sが変位することにより、ライン
圧ポート46Lから供給される油をHi側ポート46Hi
又はロー側ポート46Lowの一方に流し、他方のロー側
ポート46Low又はHi側ポート46Hiからドレーンポ
ート46Dへ油を流出させることで油圧サーボ30内の
差圧を変化させる。
リセスカム35が取り付けられており、プリセスカム3
5には溝が切ってある。プリセスカム35の溝はLリン
ク38の片端に接しており、Lリンク38の片端はIリ
ンク37の片端に自由支持されている。そのためトラニ
オン45の変位と傾転角がIリンク37にフィードバッ
クされる。Iリンク37のもう片端はステップモータ3
6につながっており、先ほどのシフトコントロールバル
ブ46のスプール46SはIリンク37上に自由支持さ
れている。従って、ステップモータ36の変位とプリセ
スカム35からのフィードバックとからスプール46S
の変位は決まる。
の諸元設定を説明する図で、図3において、6は第1ト
ロイダルCVT、8はローディングカム、61は入力デ
ィスク、62は出力ディスク、63はパワーローラ、6
4はパワーローラ軸受、CPはパワーローラ接触点、O
は円弧中心、PAはパワーローラ回転軸、DAはディス
ク回転軸、CRは2つの接触点CP,CPに引いた接線
の交点、Sはスピン、ωsはスピン角速度、ω1は入力
ディスク角速度、θはパワーローラ接触点CPにおける
法線とパワーローラ回転軸PAがなす開き角、φはパワ
ーローラ傾転角度、R0は入出力ディスク61,62の
円弧半径、eは円弧中心Cからディスク回転軸DAまで
の距離とR0の差、R22はパワーローラ曲率半径、Fa
はローディングカム8が入力ディスク61を押し付ける
力、Fcは接触点荷重、Ftはパワーローラ軸受64に
働くスラスト荷重である。なお、図示しないが第2トロ
イダルCVT7も同様の設定となっている。
襲し、スピンS(=ωs/ω1)を下記の式で与えたと
き、 S={sinθ・sinφ−(1+k−cosφ)・c
osθ}/sinθ 入力ディスク61及び出力ディスク62とパワーローラ
63の接触点CP,CPにおけるスピンSが、ロー側変
速比からハイ側変速比までの変速比範囲(2〜0.5)
において±0.3の範囲内になるようにθ,φ,kを設
定した従来例に対し、開き角θを大きくする変更(5
3.6°→55.9°)することにより、ロー側変速比
からハイ側変速比までの変速比範囲(2〜0.5)にお
いてスピンSが0以上になるように設定したものであ
る。
正の値になる設定とは、パワーローラ63の2つの接触
点CP,CPに引いた接線の交点CRが、図3に示すよ
うに、ディスク回転軸DAよりも遠い位置に存在する設
定と同義である。ちなみに、交点CRがディスク回転軸
DA上に存在する設定がスピンS=0であり、交点CR
がディスク回転軸DAよりも近い位置に存在するとスピ
ンSは負の値となる。
図4に示すように、開き角θを、従来例の53.6°か
ら55.9°へと大きくする設定とし、従来例と同じ変
速比iの範囲を得るためにパワーローラ傾転角度φを、
従来例の27.4°〜79.9°から31°〜81°へ
と範囲を大きい角度側にスライドして設定している。ま
た、k=0.6、i=2〜0.5、R0=40mm、R22
=30mmであり、これらの諸元に関しては、従来例と同
じである。ここで、変速比iは、入力ディスク回転数を
Ni、出力ディスク回転数をNoとしたとき、 i=Ni/No である。
までの全変速比範囲にて正の値をとるため、常にS=|
S|となり、図5のスピン絶対値特性に示すように、変
速比iがi=1からロー側またはハイ側に変化したとき
に、スピン絶対値|S|はいずれの変化に対しても単調
に減少する。
スク61,62とパワーローラ63の接触点荷重Fcの
増減がほぼ打ち消し合うため、|S|とFcの積に比例
する接触点動力損失特性をみると、ロー側変速比域及び
ハイ側変速比域における接触点動力損失u1の増大が無
い特性となり、この結果、図5の総動力損失特性に示す
ように、ロー側変速比域及びハイ側変速比域における総
動力損失Uを従来例の総動力損失Uと比較して低減する
ことができる。
以上に設定していることで、変速比1付近では、図5の
スピン絶対値特性に示すように、スピン絶対値|S|が
従来例のスピン絶対値|S|よりも大きな値となり、|
S|とFcの積に比例する接触点動力損失u1が増加す
る。
考えると、パワーローラ軸受64に働くスラスト荷重F
tは、 Ft=2Fc・cosθ で表されるため、従来例に対して開き角θを大きくする
ことでスラスト荷重Ftは低減する。また、軸受動力損
失u2はスラスト荷重Ftにほぼ比例するため、軸受動
力損失u2は従来例よりも低減する。ちなみに、図6は
開き角θを変えたときの接触点動力損失u1と軸受動力
損失u2と総動力損失Uの特性図であり、例えば、開き
角θをθ1からθ2まで大きくしたとき、接触点動力損
失u1は増大するが、軸受動力損失u2は減少し、総動
力損失Uについては、開き角がθ1のときと開き角がθ
2のときとではほとんど変化しない。
うに、接触点動力損失u1と軸受動力損失u2の和であ
る総動力損失Uは、変速比1付近においても従来例の総
動力損失Uとほとんど変わらない。
のうち、パワーローラ傾転角度φについては、僅かに変
更することで変速比範囲2〜0.5というように従来例
と変わらない変速比範囲を得ることができるし、また、
キャビティアスペクト比k(=e/R0)の変更が無い
ことで変速機の寸法も従来例と変わらないものとなる。
し開き角θの変更設定を行うだけで、スピンSの最大値
は大きくなるが、変速比1付近における総動力損失Uは
従来例とほとんど変わらないまま、ロー側変速比域及び
ハイ側変速比域における総動力損失Uを低減することが
できる。
変更調整により変速比範囲を従来例と同じにすることが
でき、さらに、キャビティアスペクト比kは何ら変更す
ることがないため、変速機寸法を従来例と同じにするこ
とができる。つまり、周辺部材との寸法関係を含めた大
幅な設計変更を要することがなく、容易に置き換えて採
用することができる。
トロイダル型無段変速機である。
一実施例と同様に、開き角θを大きく変更設定(53.
6°→55.9°)し、パワーローラ傾転角度φを変更
設定(27.4°〜79.9°→31°〜81°)する
と共に、変速比1における動定格寿命(JIS B15
18参照)が従来例と同じになるように、パワーローラ
63の曲率半径R22を小さく変更設定(30mm→28.
9mm)したものである。
ワーローラ63の接触点荷重Fcが低減する。これは、
図4に示すように、変速比1での接触点荷重Fcが39
540Nから38460Nに低下していることからも明
かである。
出力ディスク61,62及びパワーローラ63の転がり
疲労寿命が延長されるが、第一実施例では、開き角θと
パワーローラ傾転角度φ以外の諸元を変更していない。
る動定格寿命が従来例と同じになるように、パワーロー
ラ63の曲率半径R22を小さくした。
率半径R22を小さくすることにより、入出力ディスク6
1,62とパワーローラ63の接触楕円の面積が小さく
なり、これにより、接触点動力損失u1が低減する。
に示すように、従来例に比べロー側及びハイ側における
総動力損失Uの増大も無く、変速比1付近においても第
一実施例に比べさらに総動力損失Uを小さく抑えること
ができる。
載された発明に対応するトロイダル型無段変速機であ
る。
62に最大入力トルクが作用したときにも入力ディスク
61及び出力ディスク62とパワーローラ63の接触点
CPにおけるスピンSが、ロー側変速比からハイ側変速
比までの全変速比範囲において0以上になるようにθ,
φ,kを設定したものである。
に、入力トルクが0におけるスピンSの最小値を0より
も大きく設定している。
り、パワーローラ63の接触点荷重Fcが大きくなる
と、入出力ディスク61,62の変形量やトラニオン6
5の変形量が大きくなり、これに伴って、入出力ディス
ク61,62とパワーローラ63の接触点CPがずれて
スピンSが小さくなる。
低下を見越してスピンSの最小値を0より少し大きな値
となるように設定しておくことで、入力トルクが大き
く、変速比がロー側またはハイ側の条件においても、ス
ピンSが負の値をとることがなく、接触点動力損失u1
の増大を防止することができる。
載された発明に対応するトロイダル型無段変速機であ
る。
転範囲をハイ変速比側にだけ大きく設定し、かつ、入力
ディスク61及び出力ディスク62とパワーローラ63
の接触点CPにおけるスピンSを、図9に示すように、
変速幅を拡大したハイ側変速比領域では負の値になる
が、ハイ側変速比領域を除くロー側変速比範囲において
は0以上の正の値になるようにθ,φ,kを設定したも
のである。
63の傾転範囲をハイ変速比側とロー変速比側に拡大す
ることで変速幅を大きくし、かつ、スピンSを全変速比
域において0以上になるように設定すると、スピン特性
からも明らかなように、変速比全域で上方に移動する特
性となり、最大値となる変速比1におけるスピンSが大
きくなって接触点動力損失u1が増大する。
ーラ63の傾転範囲をハイ側のみに大きくしており、i
<0.5のハイ変速比範囲では、スピンSが0以下の負
の値となり、スピン絶対値|S|が増加してゆくが、こ
れまで説明してきたように、接触点荷重Fcも変速比が
ハイ側になるほど低下するため、ハイ変速比側での接触
点動力損失u1の増大はそれほど大きなものとはならな
い。
イ側のみに大きくすることで、ロー側での接触点動力損
失u1の増大を抑えつつ、ハイ側の変速幅を拡大するこ
とができる。
載された発明に対応するトロイダル型無段変速機であ
る。
変速範囲にわたって傾転したときの入力ディスク61及
び出力ディスク62とパワーローラ63の接触点CPに
おけるスピンSの最小値が0.1以下になるようにθ,
φ,kを設定した例である。
へのスラスト荷重Ftを低減するために開き角θを大き
くすると、スピンSが大きくなるため、入力ディスク6
1及び出力ディスク62とパワーローラ63の接触点C
Pにおける油膜の温度が高くなり、動力伝達能力が低下
する。
の、変速比ローにおける油膜の温度特性を示したもので
ある。図10をみると、スピンSが0.1を超えるとス
ピン増加に対する油膜温度温度上昇の割合が大きくな
る。よって、発進時の動力伝達能力を悪化させないため
には、ロー変速比におけるスピンSを0.1以下にする
必要がある。
なるようにθ,φ,kを設定することで、使用頻度の高
い最ロー変速比側及び最ハイ変速比側での、入力ディス
ク61及び出力ディスク62とパワーローラ63の接触
点CPにおける油膜の温度上昇を抑えることができる。
するようにした第一実施例〜第五実施例について説明し
てきたが、キャビティアスペクト比kを定数とし、入力
ディスク及び出力ディスクとパワーローラの接触点にお
けるスピンSが、ロー側変速比からハイ側変速比までの
変速比範囲において0以上になるようにθ,φの値を設
定したものであれば本発明に含まれる。
の無段変速機構として採用されるトロイダル型無段変速
機にも本発明を適用することができる。
ケルトン図である。
御系を示す図である。
定を説明する図である。
対比表を示す図である。
におけるスピン絶対値特性と総動力損失特性の対比特性
図である。
開き角を変化させたときの接触点動力損失特性と軸受動
力損失特性と総動力損失特性を示す特性図である。
総動力損失特性を従来例の総動力損失特性及び第一実施
例の総動力損失特性と対比した比較特性図である。
スピン特性図である。
スピン特性図である。
るkとθを変えた場合の変速比ローにおける油膜の温度
特性図である。
を説明する図である。
明する図である。
ピン特性図である。
ピン絶対値特性と接触点動力損失特性と接触点荷重特性
を示す図である。
ピン絶対値特性と総動力損失特性を示す図である。
0の差 k キャビティアスペクト比(=e/R0) R22 パワーローラ曲率半径 Fa 入力ディスク押し付け力 Fc 接触点荷重 Ft スラスト荷重 i 変速比
Claims (5)
- 【請求項1】 同軸に対向配置された入力ディスク及び
出力ディスクと、 前記入力ディスクを入力トルクに比例した荷重で押し付
けるローディングカムと、 前記入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成されたトロ
イド状の円弧面に動力伝達可能に挟持されるパワーロー
ラと、 該パワーローラを入出力ディスクの円弧中心に対して傾
転可能に支持するパワーローラ支持部材と、 前記パワーローラをパワーローラ支持部材に対して回転
可能に支持するパワーローラ軸受とを備えたトロイダル
型無段変速機において、 前記入力ディスク及び出力ディスクとパワーローラの接
触点での相対滑り角速度、すなわちスピン角速度をωs
とし、入力ディスクの角速度をω1とし、その比ωs/
ω1をスピンSとし、このスピンSを下記の式で与えた
とき、 上記式にて、キャビティアスペクト比kを定数とし、入
力ディスク及び出力ディスクとパワーローラの接触点に
おけるスピンSが、ロー側変速比からハイ側変速比まで
の変速比範囲において0以上になるようにθ,φを設定
したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 【請求項2】 請求項1記載のトロイダル型無段変速機
において、キャビティアスペクト比kを定数とする入力ディスク及
び出力ディスクとパワーローラの接触点におけるスピン
特性が、変速比が1からロー側またはハイ側に変化した
ときに、スピン絶対値|S|は単調減少する曲線特性に
て与えられるとき、ロー側変速比からハイ側変速比まで
の変速比範囲にて正の値をとるようにθ,φを設定 した
ことを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載のトロイ
ダル型無段変速機において、前記キャビティアスペクト比kを定数とし、 前記入出力
ディスクに最大入力トルクが作用したときにも入力ディ
スク及び出力ディスクとパワーローラの接触点における
スピンSが、ロー側変速比からハイ側変速比までの変速
比範囲において0以上になるようにθ,φを設定したこ
とを特徴とするトロイダル型無段変速機。 - 【請求項4】 請求項1または請求項2に記載のトロイ
ダル型無段変速機において、前記キャビティアスペクト比kを定数とし、 前記パワー
ローラの傾転範囲をハイ変速比側にだけ大きく設定し、
かつ、入力ディスク及び出力ディスクとパワーローラの
接触点におけるスピンSが、変速幅を拡大したハイ側変
速比領域を除く変速比範囲において0以上になるように
θ,φを設定したことを特徴とするトロイダル型無段変
速機。 - 【請求項5】 請求項1ないし請求項4に記載のトロイ
ダル型無段変速機において、前記キャビティアスペクト比kを定数とし、 前記パワー
ローラが全変速範囲にわたって傾転したときの入力ディ
スク及び出力ディスクとパワーローラの接触点における
スピンSの最小値が0.1以下になるようにθ,φを設
定したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
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