JP3775204B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等に適用されるトロイダル型無段変速機の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
自動車に搭載される変速機のうち変速比が無段階に変化する無段変速機は、その滑らかさ、運転のしやすさ及び燃費向上の期待もあって近年研究開発が進められていて、ベルト式無段変速機に続いて、油膜のせん断によって動力を伝達するトラクションドライブ式トロイダル型無段変速機(以下、トロイダル型CVT)が既に実用化されている。
【0003】
トロイダル型CVTは、エンジン効率最良点での運転が可能であり、燃費と動力性能の大幅な向上が可能な技術として注目されていて、例えば、実開昭62−199557号公報に記載のものが知られている。
【0004】
この従来公報には、図13に示すように、パワーローラを、図外の入出力ディスクに油膜を介して動力を伝達する内輪と、図外のトラニオン(パワーローラ支持部材)に支持された外輪と、外輪に対して内輪を回転自在に支持するスラスト玉軸受とを有して構成し、このスラスト玉軸受は、複数のボールと、それらボールを保持する保持器と、内輪及び外輪の対向面にそれぞれ形成された内輪軌道溝及び外輪軌道溝により構成され、両軌道溝は、断面が円弧状で、全体が円環状であるものが記載されている。なお、内輪軌道溝の曲率半径riと外輪軌道溝の曲率半径roとは同じは半径であり、内輪軌道溝のピッチ径φdiと外輪軌道溝のピッチ径φdoも同じ径である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のトロイダル型無段変速機にあっては、スラスト玉軸受のボールの自転軸角度を規定する設定となっていないため、ボールと内輪軌道溝とのスピン角速度が大きい状態のままで長時間運転されると、ボールと内輪軌道溝との転がり接触部の発熱によって内輪の温度が上昇し、内輪の温度が上昇すると動力伝達部の油膜の温度も上昇する。この結果、動力伝達能力が低下するという問題がある。以下、その理由について詳しく説明する。
【0006】
一般に知られているように、スラスト玉軸受の軌道溝とボールはスピンと呼ばれる滑りを伴って転動する。このスピンがあると、動力損失を発生し、それに伴う発熱を起こすため、スピンの大きさを知ることは重要である。
【0007】
内輪側及び外輪側のスピン角速度は、「転がり軸受工学」(1978年:養賢堂発行)の第119頁に記載されているように、軸断面におけるボールの自転軸がどのような角度をとるかによって決定される。
【0008】
また、ボールの自転軸が、ボールと内輪の接触点における接線となす自転軸角度をγとすると、内輪側スピン角速度ωsiと外輪側スピン角速度ωsoは、次式で表される。
ωsi=(ωi−ωc)sinα+ωbsin(−γ) (1)
ωso=ωcsinα+ωbsinγ (2)
ωi:内輪角速度
ωc:ボールの公転角速度
ωb:ボールの自転角速度
α:接触角(ボールの内外輪との接触点を結ぶ線とパワーローラ の回転軸の垂線となす角度)
なお、自転軸角度γは、図14で右下がりに傾いているとき、つまり、自転軸がパワーローラの回転軸に近づくほど、入出力ディスクの回転軸側に傾斜しているとき(接線に近づくとき)は+、図14で右上がりに傾いているとき、つまり、自転軸がパワーローラの回転軸に近づくほど、入出力ディスクの回転軸から離れる側に傾斜しているとき(接線から離れるとき)は−、接線と平行なときは0とする。
【0009】
通常のスラスト玉軸受には、ボールの自転軸を規制する手段が設けられていないので、自転軸の角度はボールに働く負荷のバランスによって決定される。この点を検討したものに、「Transactions of the ASME Vol 110:OCTOBER 1988」の第696頁に記載されたものが知られている。この文献によると、軸断面におけるボールの自転軸角度は、ボールの中心からx、y、z軸をとって、各軸方向の荷重、および、各軸まわりのモーメントの釣り合いにより決定される。そのうち、スピンモーメントに関する式を簡略化すると、次式で表される。
Msi−Mso−Mgscosα=0 (3)
Msi:ボールに働く内輪のスピンモーメント
Mso:ボールに働く外輪のスピンモーメント
Mgs:ボールに働く第二ジャイロモーメント
すなわち、ボールに働く内外輪それぞれのスピンモーメントMsi,Msoと第二ジャイロモーメントMgsのスピン方向成分が釣り合うように決定される。
【0010】
しかし、通常のトロイダル型無段変速機におけるパワーローラの回転数は、最高でも数千rpm程度であり、また、ボールの慣性モーメントも小さいため、第二ジャイロモーメントMgsは、スピンモーメントMsi,Msoに比べて無視でき、上記(3)式は次式のように書き換えられる。
Msi≒Mso (4)
したがって、ボールの自転軸は、内輪側スピンモーメントMsiと外輪側スピンモーメントMsoの釣り合いにより決定されることになる。
すなわち、内外輪のそれぞれのスピンは、自転軸角度γを変えたときのスピン角速度よりスピンモーメントを求めることで得られる。
【0011】
田中らは、「日本機械学会講演論文,No.89−0148B(1989),512B」において、トロイダル型無段変速機におけるスラスト玉軸受のスピンモーメントを、弾塑性モデルを用いて求めている。図15はこの方法により求めた、自転軸角度γに対する、内外輪それぞれのスピンモーメントMsi,Msoと、スピン角速度ωsi,ωsoと、それらを掛け合わせて合計した動力損失(=Msi・ωsi+Mso・ωso)を示している。
【0012】
この図15において、スピンモーメントMsi,Msoが等しくなる自転軸角度γは、γ=γ1とγ=0とγ=γ2との3点ある。しかしながら、γ=0の点は他の2点に比べて動力損失が大きいので、γ=0を保つことができない。したがって、自転軸角度γはγ1とγ2のいずれかの値をとる。このとき、内輪と外輪でスピンモーメントMsi,Msoは等しいが、スピン角速度ωsi,ωsoは大きく異なるため、それらの積に比例する発熱も大きく異なってくる。
すなわち、γ=γ2では、図14(イ)に示すように、内輪スピン角速度ωsi<外輪スピン角速度ωsoとなり、内輪に比べて外輪の発熱が大きくなる。これに対し、γ=γ1では、図14(ロ)に示すように、内輪スピン角速度ωsi>外輪スピン角速度ωsoとなり、外輪に比べて内輪の発熱が大きくなる。
【0013】
図16は運転中の内輪と外輪の温度を実際に測定したものであるが、温度が大きく異なっており、また、どちらが高温になるかは運転中に入れ替わっている。すなわち、従来例においては、内外輪のどちらが高温になるかは、50%の確率であり、これを制御するはできない。
【0014】
一方、図17に示すように、内輪はトラクションドライブによって入出力ディスクと動力の伝達を行うが、この時のトラクション係数は油膜温度上昇と共に低下し、動力伝達能力が低下する。内輪軌道溝での発熱によって内輪の温度が上昇すると、動力伝達部の油膜の温度も上昇するため、動力伝達能力が低下する。
【0015】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的は、保持器がボール自転軸を規制せずに保持する構成において、ボールと内輪軌道溝との転がり接触部での発熱を小さく抑えることで、動力伝達部の油膜温度の上昇による動力伝達能力の低下を防止することができるトロイダル型無段変速機を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、同軸に対向配置された入力ディスク及び出力ディスクと、
前記入力ディスクを入力トルクに比例した荷重で押し付けるローディングカムと、
前記入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成されたトロイド状の円弧面に動力伝達可能に挟持されるパワーローラと、
該パワーローラを入出力ディスクの円弧中心に対して傾転可能に支持するパワーローラ支持部材とを備え、
前記パワーローラを、入出力ディスクに油膜を介して動力を伝達する内輪と、パワーローラ支持部材に支持された外輪と、外輪に対して内輪を回転自在に支持するスラスト玉軸受とを有して構成し、
前記スラスト玉軸受は、複数のボールと、それらボールをボールの自転軸を規制せずに保持する保持器と、内輪及び外輪の対向面にそれぞれ形成された内輪軌道溝及び外輪軌道溝により構成され、両軌道溝は、断面が円弧状で、全体が円環状であるトロイダル型無段変速機において、
前記スラスト玉軸受のボールと内外輪軌道溝との転がり接触部で相対的に旋回する滑りをスピンといい、そのモーメントをスピンモーメントというとき、
前記スラスト玉軸受は、内輪軌道溝の曲率半径を外輪軌道溝の曲率半径よりも小さくし、かつ、内輪軌道溝のピッチ径を外輪軌道溝のピッチ径よりも小さくすることにより、内輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積よりも大きく設定し、
前記ボールと内輪軌道溝との内輪側スピンモーメントと、ボールと外輪軌道溝との外輪側スピンモーメントとの釣り合いにより決定されるボールの自転軸角度を、内輪側のスピン角速度が外輪側のスピン角速度に比べて小さくなる角度に設定したことを特徴とする。
【0021】
請求項2記載の発明では、同軸に対向配置された入力ディスク及び出力ディスクと、
前記入力ディスクを入力トルクに比例した荷重で押し付けるローディングカムと、
前記入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成されたトロイド状の円弧面に動力伝達可能に挟持されるパワーローラと、
該パワーローラを入出力ディスクの円弧中心に対して傾転可能に支持するパワーローラ支持部材とを備え、
前記パワーローラを、入出力ディスクに油膜を介して動力を伝達する内輪と、パワーローラ支持部材に支持された外輪と、外輪に対して内輪を回転自在に支持するスラスト玉軸受とを有して構成し、
前記スラスト玉軸受は、複数のボールと、それらボールをボールの自転軸を規制せずに保持する保持器と、内輪及び外輪の対向面にそれぞれ形成された内輪軌道溝及び外輪軌道溝により構成され、両軌道溝は、断面が円弧状で、全体が円環状であるトロイダル型無段変速機において、
前記スラスト玉軸受のボールと内外輪軌道溝との転がり接触部で相対的に旋回する滑りをスピンといい、そのモーメントをスピンモーメントというとき、
前記スラスト玉軸受は、内輪軌道溝の曲率半径を外輪軌道溝の曲率半径よりも小さくし、かつ、内輪軌道溝のピッチ径を外輪軌道溝のピッチ径よりも小さくすることにより、内輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積よりも大きく設定し、
前記ボールと内輪軌道溝との内輪側スピンモーメントと、ボールと外輪軌道溝との外輪側スピンモーメントとの釣り合いにより決定されるボールの自転軸角度を、内輪側のスピン角速度が外輪側のスピン角速度に比べて小さくなる角度に設定したことを特徴とする。
【0023】
【発明の作用および効果】
請求項1記載の発明にあっては、まず、スラスト玉軸受のボールの自転軸角度が、内輪側スピンモーメントと外輪側スピンモーメントとの釣り合いにより決定されるということを認識した上で、内輪側のスピン角速度が外輪側のスピン角速度に比べて小さくなる角度に設定されている。この内輪側のスピン角速度が外輪側のスピン角速度に比べて小さくなる自転軸角度とは、パワーローラの回転軸に近づくほど、入出力ディスクの回転軸側に傾斜している角度をいう。
【0024】
そして、例えば、一定の変速比を保っての運転中における動力伝達は、入力ディスク→油膜→パワーローラの内輪→油膜→出力ディスクという伝達経路により行われる。このうち、パワーローラの内輪は、パワーローラ支持部材に支持された外輪に対し、スラスト玉軸受により回転自在に支持され、油膜を介したトラクションドライブによって入出力ディスクと動力の伝達を行うが、このとき、ボールの自転軸角度が、積極的に内輪側のスピン角速度が外輪側のスピン角速度に比べて小さくなる角度に設定されていることで、運転状況にかかわらず常に内輪スピン角速度<外輪スピン角速度という関係が維持され、ボールと内輪軌道溝との転がり接触部での発熱が小さく抑えられる。
【0025】
よって、内輪の温度の上昇に伴う動力伝達部の油膜温度の上昇が抑えられ、油膜温度上昇に伴うトラクション係数の低下も抑えられることになり、スラスト玉軸受のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0026】
加えて、スラスト玉軸受は、内輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積よりも大きくされる。
【0027】
すなわち、内輪側のヘルツ接触面積が大きくなったことにより、内輪側のスピンモーメントが大きくなる。そして、内外輪のスピンモーメントが釣り合う3点の自転軸角度における動力損失を比較すると、内輪スピン角速度が小さい自転軸角度のポイントで動力損失が最も小さくなり、運転中に内輪スピン角速度が小さい自転軸角度に保たれる。
【0028】
したがって、保持器がボール自転軸を規制せずに保持する構成でありながら、内輪のスピンによる発熱が小さい状態で常に運転することが可能となり、動力伝達能力の低下を防ぐことができる。
【0031】
加えて、請求項1記載の発明にあっては、スラスト玉軸受は、内輪軌道溝のピッチ径を、外輪軌道溝のピッチ径よりも小さくすることにより、内輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積が、外輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積よりも大きく設定される。
【0032】
すなわち、内輪軌道溝のピッチ径を外輪軌道溝のピッチ径よりも大きくしたので、接触角は内輪側からみて90°より大きくなり、内輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積は、外輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積よりも大きく設定されたことになる。
【0033】
よって、内輪軌道溝と外輪軌道溝のピッチ径の大小という簡単な設定により、スラスト玉軸受のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0034】
さらに、請求項1記載の発明にあっては、スラスト玉軸受は、内輪軌道溝の曲率半径が外輪軌道溝の曲率半径よりも小さくされ、かつ、内輪軌道溝のピッチ径が外輪軌道溝のピッチ径よりも小さくされることにより、内輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積が、外輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積よりも大きく設定される。
【0035】
すなわち、曲率半径とピッチ径との相乗作用により、内輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積は、外輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積よりも大きく設定され、しかも、ヘルツ接触面積の差を大きくとることができる。
【0036】
よって、大きなヘルツ接触面積の差により内輪スピンが小さい自転軸角度の維持がより確実になり、スラスト玉軸受のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、第一実施例及び第一参考例〜第五参考例により説明する。
【0041】
(第一参考例)
第一参考例のトロイダル型無段変速機について説明する。
【0042】
図1はデュアルキャビティによるハーフトロイダル型無段変速機(以下、トロイダル型CVT)の機械的構成を示すスケルトン図であり、このトロイダル型CVTは、エンジン1の出力軸2にトーショナルダンパ3を介して連結されたインプットシャフト4と、該シャフト4の外側に遊嵌合された中空シャフト5を有し、これらのシャフト4,5の軸線上には、第1トロイダルCVT6及び第2トロイダルCVT7と、入力ディスク61,71を入力トルクに比例した荷重で押し付けるローディングカム8とが配設されている。
【0043】
上記第1,第2トロイダルCVT6,7は、ほぼ同一の構成であり、いずれも、対向面がトロイド状の円弧面とされた入力ディスク61,71と出力ディスク62,72とを有し、これらの対向面間に、両ディスク61,62間と両ディスク71,72間でそれぞれ動力を伝達するパワーローラ63,73が2つづつ介設されている。
【0044】
そして、エンジン1から遠い方に配置された第1トロイダルCVT6は、入力ディスク61が反エンジン側に、出力ディスク62がエンジン側に配置され、また、エンジン1に近い方に配置された第2トロイダルCVT7は、入力ディスク71がエンジン側に、出力ディスク72が反エンジン側に配置されており、かつ、両トロイダルCVT6,7の入力ディスク61,71は中空シャフト5の両端部にそれぞれ摺動可能に結合され、また、出力ディスク62,72(以下、「一体化出力ディスク60」と記す)は一体化されて、該中空シャフト5の中間部に回転自在に支持されている。
【0045】
前記パワーローラ63,73は、入出力ディスク71,72に油膜を介して動力を伝達する内輪64,74と、トラニオン65,75(パワーローラ支持部材)に支持された外輪66,76と、該外輪66,76に対して内輪を回転自在に支持するスラスト玉軸受67,77とを有して構成されている。
【0046】
前記第1,第2トロイダルCVT6,7の一体化出力ディスク60の外周には出力ギア9が設けられ、この出力ギア9がディファレンシャル装置11のドライブギア10と噛み合い、ディファレンシャル装置11から左右に延びる駆動軸12a,12bを介して左右の駆動輪に動力を伝達するようになっている。
【0047】
図2はトロイダル型CVTの変速を管理する油圧系の機械的構成図であり、第1トロイダルCVT6の変速系について説明する。第1トロイダルCVT6での変速は、パワーローラ63を支持するトラニオン65を平衡点から上下に変位させることにより行い、この変位により内輪64と入出力ディスク61,62の回転方向ベクトルに差異が発生してパワーローラ63は傾転する。
【0048】
前記トラニオン65は、油圧サーボ30のサーボピストン31とつながっており、油圧サーボ30のHi側シリンダ30a内の油とロー側シリンダ30b内の油の差圧で変位する。Hi側シリンダ30aの油圧とロー側シリンダ30bの油圧はシフトコントロールバルブ46で制御する。
【0049】
前記シフトコントロールバルブ46は、バルブ内のスプール46Sが変位することにより、ライン圧ポート46Lから供給される油をHi側ポート46Hi又はロー側ポート46Lowの一方に流し、他方のロー側ポート46Low又はHi側ポート46Hiからドレーンポート46Dへ油を流出させることで油圧サーボ30内の差圧を変化させる。
【0050】
また、前記トラニオン65の一つには、プリセスカム35が取り付けられており、プリセスカム35には溝が切ってある。プリセスカム35の溝はLリンク38の片端に接しており、Lリンク38の片端はIリンク37の片端に自由支持されている。そのためトラニオン45の変位と傾転角がIリンク37にフィードバックされる。Iリンク37のもう片端はステップモータ36につながっており、先ほどのシフトコントロールバルブ46のスプール46SはIリンク37上に自由支持されている。従って、ステップモータ36の変位とプリセスカム35からのフィードバックとからスプール46Sの変位は決まる。
【0051】
図3は第一参考例におけるトロイダル型CVTのパワーローラ63を示す拡大断面図で、図3において、63はパワーローラ、64は内輪、66は外輪、67はスラスト玉軸受であり、スラスト玉軸受67は、複数のボール67aと、それらボール67aを保持する保持器67bと、内輪64及び外輪66の対向面にそれぞれ形成された内輪軌道溝67c及び外輪軌道溝67dにより構成され、両軌道溝67c,67dは、断面が円弧状で、全体が円環状である。
【0052】
そして、前記内輪軌道溝67cの曲率半径riを、外輪軌道溝67dの曲率半径roよりも小さくすることにより、内輪軌道溝67cとボール67aのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝67dとボール67aのヘルツ接触面積よりも大きく設定し、ボール67aと内輪軌道溝67cとの内輪側スピンモーメントMsiと、ボール67aと外輪軌道溝67dとの外輪側スピンモーメントMsoとの釣り合いにより決定されるボール67aの自転軸角度γを、内輪側のスピン角速度が外輪側のスピン角速度に比べて小さくなる自転軸角度γ2に設定している。具体的に、スラスト玉軸受67の自転軸は、パワーローラ63の回転軸に近づくほど、入出力ディスク61,62の回転軸側に傾斜する角度に設定される。
【0053】
ここで、スラスト玉軸受67のボール67aと内外輪軌道溝67c,67dとの転がり接触部で相対的に旋回する滑りをスピンといい、そのモーメントをスピンモーメントという。また、パワーローラ73についても、パワーローラ63と同様にボール67aの自転軸角度γを、内輪側のスピン角速度が外輪側のスピン角速度に比べて小さくなる自転軸角度γ2に設定している。
【0054】
次に、作用を説明する。
【0055】
まず、内輪軌道溝67cの曲率半径riを、外輪軌道溝67dの曲率半径roよりも小さくすることにより、後述する理由により、内輪軌道溝67cとボール67aのヘルツ接触面積が、外輪軌道溝67dとボール67aのヘルツ接触面積よりも大きく設定される。
【0056】
そして、スピンモーメントは、ヘルツ接触面積の大きさ(モーメントスパン)に比例する関係にあるため、ヘルツ接触面積が大きな内輪側のスピンモーメントMsiのほうが、ヘルツ接触面積が小さい外輪側のスピンモーメントMsoより大きくなる。
【0057】
図4は上述の弾塑性モデルを用いて計算した第一参考例及び従来例の内輪側スピンモーメントMsiの特性と、外輪側スピンモーメントMsoの特性と、動力損失特性である。
【0058】
この図4において、ボール67aの自転軸角度γは、内輪側スピンモーメントMsiと外輪側スピンモーメントMsoとの釣り合いにより決定されるとの認識に基づき、内外輪のスピンモーメントMsi,Msoが釣り合う3点の自転軸角度γ0,γ1,γ2における動力損失を比較すると、内輪のスピンが小さい自転軸角度γ2で最も小さくなり、瞬間的に他のポイントに自転軸角度γがあっても動力損失が最も小さい自転軸角度γ2の方向に移動し、運転中は動力損失が最も小さい自転軸角度γ2が保たれる。
【0059】
例えば、一定の変速比を保っての運転中における動力伝達は、入力ディスク61,71→油膜→内輪64,74→油膜→一体化出力ディスク60という伝達経路により行われる。このうち、パワーローラ63,73の内輪64,74は、トラニオン65,75に支持された外輪66,76に対し、スラスト玉軸受67,77により回転自在に支持され、油膜を介したトラクションドライブによって入出力ディスクと動力の伝達を行うが、このとき、ボール67aの自転軸角度γが、積極的に内輪側のスピンが外輪側のスピンに比べて小さくなる自転軸角度γ2に設定されていることで、運転状況にかかわらず常に内輪スピン角速度ωsi<外輪スピン角速度ωsoという関係が維持され、ボール67aと内輪軌道溝67cとの転がり接触部での発熱が小さく抑えられる。
【0060】
よって、内輪64,74の温度の上昇に伴う動力伝達部の油膜温度の上昇が抑えられ、油膜温度上昇に伴うトラクション係数の低下も抑えられることになり、スラスト玉軸受67,77のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0061】
ここで、内輪側のヘルツ接触面積が大きくなる理由を説明する。
【0062】
内外輪64,66とボール67aの接触部における主曲率ρ(曲率半径Rの逆数を示す。つまり、ρ=1/Rである。)は、
ρ11i=ρ12i=ρ11o=ρ12o=2/Da
ρ21i=−1/ri
ρ21o=−1/ro
ρ22i=ρ22o=0
Da;ボール径
よって、内外輪64,66のヘルツ接触面積を比較するには、ρ21iとρ21oを比較すれば良い。簡単のため、曲率ρ21iと曲率ρ21oの円筒内面が、曲率半径Rの円筒と接触する場合を考えると、それぞれの合成曲率Σρi,Σρoは、
Σρi=(1/R)−(1/ri)
Σρo=(1/R)−(1/ro)
ここで、合成曲率Σρとは、円筒と円筒の接触を、円筒と平面の接触に置き換えたときの曲率になる。
【0063】
よって、上式により、Σρi<Σρoであるから、曲率ρ21iのほうが接触面積が大きくなる。よって、溝とボールの接触においても、内輪側のほうが接触面積が大きくなる。
【0064】
次に、効果を説明する。
【0065】
(1)内輪側スピンモーメントMsiと外輪側スピンモーメントMsoとの釣り合いにより決定されるボール67aの自転軸角度γを、内輪側のスピンが外輪側のスピンに比べて小さくなる自転軸角度γ2、つまり、パワーローラ63の回転軸に近づくほど、入出力ディスク61,62の回転軸側に傾斜する角度に設定したため、スラスト玉軸受67,77のボールスピンを原因とする動力伝達部の油膜温度の上昇による動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0066】
(2)スラスト玉軸受67は、内輪軌道溝67cとボール67aのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝67dとボール67aのヘルツ接触面積よりも大きく設定し、内輪側スピンモーメントMsiと外輪側スピンモーメントMsoとの釣り合いにより決定されるボール67aの自転軸角度γを、内輪側のスピンが外輪側のスピンに比べて小さくなる自転軸角度γ2に設定したため、内輪64のボールスピンによる発熱が小さい状態で常に運転することが可能となり、動力伝達能力の低下を防ぐことができる。
【0067】
(3)スラスト玉軸受67は、内輪軌道溝67cの曲率半径riを、外輪軌道溝67dの曲率半径roよりも小さくすることにより、内輪軌道溝67cとボール67aのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝67dとボール67aのヘルツ接触面積よりも大きく設定したため、曲率半径ri,roの大小という簡単な設定により、スラスト玉軸受67のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0068】
ちなみに、後述する第一実施例では、自転軸を確実に設定するため(内外輪の接触面積差を十分大きくする)には、ピッチ径差を大きくする必要がある。つまり、接触角αをできるだけ大きくする必要があるが、ボールへの荷重は、パワーローラに働くスラスト荷重とボール数とsinαにより決まるため、接触角αを大きくすると、ボールへの荷重が大きくなり、寿命の低下を招く恐れがある。これに対し、第一参考例では、軌道溝の曲率半径を変えるだけであるため、荷重を大きくすることなく、スラスト玉軸受67の耐久信頼性を確保しながら自転軸を設定することができる。
【0069】
(第二参考例)
第二参考例のトロイダル型無段変速機について説明する。
【0070】
構成を説明すると、図5は第二参考例におけるトロイダル型CVTのパワーローラ63を示す拡大断面図で、スラスト玉軸受67は、内輪軌道溝67cの曲率半径と外輪軌道溝67dの曲率半径は同じrとし、内輪軌道溝67cのピッチ径φdiを、外輪軌道溝67dのピッチ径φdoよりも小さくすることにより、内輪軌道溝67cとボール67aのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝67dとボール67aのヘルツ接触面積よりも大きく設定している。なお、他の構成は第一参考例と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
作用を説明すると、内外輪のピッチ径di,doの関係により、接触角αは内輪64側からみて90°より大きくなる。このとき、内外輪64,66とボール67aの接触部における主曲率ρは、
ρ11i=ρ12i=ρ11o=ρ12o=2/Da
ρ21i=ρ21o=1/r
ρ22i=−2cosα/(dm−Dacosα)
ρ22o=−2cosα/(dm−Dacosα)
r;溝の曲率半径
α;接触角
Da;ボール径
dm;ボールピッチ径
よって、ρ22i<ρ22o
となるため、第一参考例と同じように、内輪側のヘルツ接触面積は外輪側のヘルツ接触面積よりも大きくなる。
【0072】
図6は上述の弾塑性モデルを用いて計算した第二参考例の内輪側スピンモーメントMsiの特性と、外輪側スピンモーメントMsoの特性と、動力損失特性で、ボール67aの自転軸角度γは、内輪側スピンモーメントMsiと外輪側スピンモーメントMsoとの釣り合いにより決定されるとの認識に基づき、内外輪のスピンモーメントMsi,Msoが釣り合う3点の自転軸角度γ0,γ1,γ2における動力損失を比較すると、内輪のスピンが小さい自転軸角度γ2で最も小さくなり、瞬間的に他のポイントに自転軸角度γがあっても動力損失が最も小さい自転軸角度γ2の方向に移動し、運転中は動力損失が最も小さい自転軸角度γ2が保たれる。
【0073】
効果を説明すると、第二参考例にあっては、第一参考例の上記(1),(2)の効果に加え、内輪軌道溝67cと外輪軌道溝67dのピッチ径φdi,φdoの大小という簡単な設定により、スラスト玉軸受67のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0074】
(第一実施例)
第一実施例は請求項1に記載された発明に対応するトロイダル型無段変速機である。
【0075】
構成を説明すると、図7は第一実施例におけるトロイダル型CVTのパワーローラ63を示す拡大断面図で、スラスト玉軸受67は、内輪軌道溝67cの曲率半径riを、外輪軌道溝67dの曲率半径roよりも小さくし、かつ、内輪軌道溝67cのピッチ径φdiを、外輪軌道溝67dのピッチ径φdoよりも小さくすることにより、内輪軌道溝67cとボール67aのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝67dとボール67aのヘルツ接触面積よりも大きく設定している。なお、他の構成は第一参考例と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
作用を説明すると、基本的には第二参考例と同じであるが、内輪軌道溝67cの曲率半径riを、外輪軌道溝67dの曲率半径roよりも小さくしているため、内輪側のヘルツ接触面積が更に大きくなり、図8に示すように、第二参考例の内輪側スピンモーメントMsiに比べて内輪側スピンモーメントMsiが大きくなる。その結果、外輪側のスピンが小さい状態(自転軸角度γ1)と、内輪側のスピンが小さい状態(自転軸角度γ2)との動力損失の差が大きくなり、確実に内輪のスピンが小さい状態で運転することができる。
【0077】
効果を説明すると、第一実施例にあっては、第一参考例の上記(1),(2)の効果に加え、大きなヘルツ接触面積の差により内輪スピンが小さい自転軸角度γ2の維持がより確実になり、スラスト玉軸受27のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0078】
(第三参考例)
第三参考例のトロイダル型無段変速機について説明する。
【0079】
構成を説明すると、図9は第三参考例におけるトロイダル型CVTのパワーローラ63を示す拡大断面図で、スラスト玉軸受67は、内輪軌道溝67cの曲率半径ri'を、第一参考例の内輪軌道溝67cの曲率半径riよりも小さくし、外輪軌道溝67dの曲率半径roは第一参考例と同じにすることで、内輪軌道溝67cとボール67aのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝67dとボール67aのヘルツ接触面積よりも大きく設定している。なお、他の構成は第一参考例と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
作用を説明すると、内輪側スピンモーメントMsiが第一参考例よりも更に大きくなるため、図10に示すように、内外輪のスピンモーメントMsi,Msoが釣り合う自転軸角度γ2は、内輪側スピンモーメントMsiが小さい側の1点だけになるため、確実に内輪のスピンが小さい状態で運転することができる。
【0081】
効果を説明すると、第三参考例にあっては、第一参考例の上記(1),(2)の効果に加え、大きなヘルツ接触面積の差により内輪スピンが小さい自転軸角度γ2が運転状態にかかわらず確実に維持され、スラスト玉軸受27のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0082】
(第四参考例)第四参考例のトロイダル型無段変速機について説明する。
【0083】
構成を説明すると、図11は第四参考例におけるトロイダル型CVTのパワーローラ63を示す拡大断面図で、スラスト玉軸受67は、ボール67aに貫通軸67eを圧入し、貫通軸67eの両端部を保持器67bに設けた支持穴67fに挿入することで、ボール67aの自転軸規制手段としている。そして、自転軸規制手段により、ボール67aの自転軸角度γが、内輪側のスピンが外輪側のスピンに比べて小さくなる自転軸角度γ2に設定される。
【0084】
作用を説明すると、ボール67aの自転軸が、貫通軸67eにより内輪側のスピンが外輪側のスピンに比べて小さくなる自転軸角度γ2に固定される。
【0085】
効果を説明すると、第四参考例にあっては、あらゆる運転状態で確実に内輪軌道溝での発熱を小さく抑えるという作用により、スラスト玉軸受67のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0086】
(第五参考例)
第五参考例のトロイダル型無段変速機について説明する。
【0087】
構成を説明すると、図12は第五参考例におけるトロイダル型CVTのパワーローラ63を示す拡大断面図で、スラスト玉軸受67は、ボール67aに互いに平行な平面部67g,67gを形成し、保持器67bに平面部67g,67gに対向する案内面67h,67hを形成することで、ボール67aの自転軸規制手段としている。そして、自転軸規制手段により、ボール67aの自転軸角度γが、内輪側のスピンが外輪側のスピンに比べて小さくなる自転軸角度γ2に設定される。
【0088】
作用を説明すると、保持器67bの案内面67h,67hによりボール67aの平面部67g,67gの位置を変えないままでボール67aを転動案内する作用により、ボール67aの自転軸が、内輪側のスピンが外輪側のスピンに比べて小さくなる自転軸角度γ2に固定される。
【0089】
効果を説明すると、第五参考例にあっては、あらゆる運転状態で確実に内輪軌道溝での発熱を小さく抑えるという作用により、スラスト玉軸受67のボールスピンを原因とする動力伝達能力の低下を防止することができる。
【0090】
以上、第一実施例及び第一参考例〜第五参考例について説明してきたが、ボールの自転軸角度γが、ボールと内輪軌道溝との内輪側スピンモーメントMsiと、ボールと外輪軌道溝との外輪側スピンモーメントMsoとの釣り合いにより決定されることを認識した上で、ボールの自転軸角度γを、内輪側のスピンが外輪側のスピンに比べて小さくなる角度γ2に設定するものであれば、第一実施例以外の手法により自転軸角度を設定するものも本発明に含まれる。
【0091】
また、変速比無限大無段変速機(IVT)の無段変速機構として採用されるトロイダル型無段変速機にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一参考例のトロイダル型無段変速機を示すスケルトン図である。
【図2】第一参考例のトロイダル型無段変速機の変速制御系を示す図である。
【図3】第一参考例におけるトロイダル型無段変速機のパワーローラを示す拡大断面図である。
【図4】第一参考例におけるスラスト玉軸受で自転軸角度を横軸にとった場合の内外輪スピンモーメント特性及び動力損失特性を示す図である。
【図5】第二参考例におけるトロイダル型無段変速機のパワーローラを示す拡大断面図である。
【図6】第二参考例におけるスラスト玉軸受で自転軸角度を横軸にとった場合の内外輪スピンモーメント特性及び動力損失特性を示す図である。
【図7】第一実施例におけるトロイダル型無段変速機のパワーローラを示す拡大断面図である。
【図8】第一実施例におけるスラスト玉軸受で自転軸角度を横軸にとった場合の内外輪スピンモーメント特性を示す図である。
【図9】第三参考例におけるトロイダル型無段変速機のパワーローラを示す拡大断面図である。
【図10】第三参考例におけるスラスト玉軸受で自転軸角度を横軸にとった場合の内外輪スピンモーメント特性を示す図である。
【図11】第四参考例におけるトロイダル型無段変速機のパワーローラを示す拡大断面図である。
【図12】第五参考例におけるトロイダル型無段変速機のパワーローラを示す拡大断面図である。
【図13】従来例におけるトロイダル型無段変速機のパワーローラを示す拡大断面図である。
【図14】従来例におけるパワーローラのスラスト玉軸受でボールの自転軸角度による内輪スピンと外輪スピンの変化を示す図である。
【図15】従来のスラスト玉軸受で自転軸角度を横軸にとった場合の内外輪スピンモーメント特性、内外輪スピン角速度特性及び動力損失特性を示す図である。
【図16】従来のパワーローラの内輪温度と外輪温度の変化を示す温度特性図である。
【図17】従来のパワーローラにおいてスラスト玉軸受でのボールスピンにより内輪及び油膜の温度が上昇する場合の温度伝達メカニズムを示す図である。
Claims (1)
- 同軸に対向配置された入力ディスク及び出力ディスクと、
前記入力ディスクを入力トルクに比例した荷重で押し付けるローディングカムと、
前記入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成されたトロイド状の円弧面に動力伝達可能に挟持されるパワーローラと、
該パワーローラを入出力ディスクの円弧中心に対して傾転可能に支持するパワーローラ支持部材とを備え、
前記パワーローラを、入出力ディスクに油膜を介して動力を伝達する内輪と、パワーローラ支持部材に支持された外輪と、外輪に対して内輪を回転自在に支持するスラスト玉軸受とを有して構成し、
前記スラスト玉軸受は、複数のボールと、それらボールをボールの自転軸を規制せずに保持する保持器と、内輪及び外輪の対向面にそれぞれ形成された内輪軌道溝及び外輪軌道溝により構成され、両軌道溝は、断面が円弧状で、全体が円環状であるトロイダル型無段変速機において、
前記スラスト玉軸受のボールと内外輪軌道溝との転がり接触部で相対的に旋回する滑りをスピンといい、そのモーメントをスピンモーメントというとき、
前記スラスト玉軸受は、内輪軌道溝の曲率半径を外輪軌道溝の曲率半径よりも小さくし、かつ、内輪軌道溝のピッチ径を外輪軌道溝のピッチ径よりも小さくすることにより、内輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積を、外輪軌道溝とボールのヘルツ接触面積よりも大きく設定し、
前記ボールと内輪軌道溝との内輪側スピンモーメントと、ボールと外輪軌道溝との外輪側スピンモーメントとの釣り合いにより決定されるボールの自転軸角度を、内輪側のスピン角速度が外輪側のスピン角速度に比べて小さくなる角度に設定したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
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