JP3494583B2 - 電子放出素子の製造方法 - Google Patents

電子放出素子の製造方法

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JP3494583B2
JP3494583B2 JP00706199A JP706199A JP3494583B2 JP 3494583 B2 JP3494583 B2 JP 3494583B2 JP 00706199 A JP00706199 A JP 00706199A JP 706199 A JP706199 A JP 706199A JP 3494583 B2 JP3494583 B2 JP 3494583B2
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啓介 古賀
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    • HELECTRICITY
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    • H01J1/00Details of electrodes, of magnetic control means, of screens, or of the mounting or spacing thereof, common to two or more basic types of discharge tubes or lamps
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
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  • Cold Cathode And The Manufacture (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子を効率的に放
出する電子放出材料及び電子放出素子に関する。また、
このような電子放出材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、平面型ディスプレイ用の電子線源
や、高速動作が可能な微小真空デバイスのエミッタ部と
して、加熱を必要とする熱陰極型電子源に代わる冷陰極
型微小電子源が注目されている。このような冷陰極型電
子源のタイプとしては様々なものがあるが、電界放出型
(FE型)やトンネル注入型(MIM型、MIS型)、表面伝導型(S
C型)などが知られている。
【0003】FE型電子源は、微細加工により形成された
シリコン(Si)やモリブデン(Mo)などの円錐状突起物(電
子放出部)に対して電界を印加することにより、その先
端部分から電子を電界放出させるものである。またMIM
型及びMIS型電子源は、金属、絶縁体、金属(半導体)な
どの積層構造を形成し、金属側より電子を注入すること
により、注入電子の一部を電子放出部より外部に取り出
すものである。またSC型電子源は、基板上に形成された
薄膜の面内方向に電流を流すことにより、予め形成され
た薄膜亀裂部(電子放出部)から導電電子の一部を外部に
取り出すものである。
【0004】これらの素子構造は、微細加工技術を用い
ることによって小型化、集積化が可能であると共に、熱
陰極型電子源のような加熱を必要としないなどの特徴を
有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般的に、電子放出材
料及びこれを用いた電子放出素子に望まれる特性は、
(1)低電力で電子放出が可能であること、すなわちその
物質の電子放出能力が高いこと、(2)安定な電子放出特
性を維持できること、すなわちエミッタ部が化学的/物
理的に安定なこと、(3)耐摩耗性や耐熱性に優れている
ことなどが挙げられる。
【0006】そのような観点で従来技術を見た場合、FE
型電子源やSC型電子源では放出電流量の電子放出部形状
依存性が大きく、その作製、制御が非常に困難であっ
た。また一般的に電子放出部材料として良く用いられる
SiやMoなどは表面安定性の点で課題があった。
【0007】またMIM型やMIS型電子源は、一般的に大電
流量を素子に印加する必要があるので素子の発熱が起こ
り、そのため電子放出特性が不安定になったり素子寿命
が短くなったりするといった問題点があった。また電子
放出を容易にするために、エミッタ部表面にセシウム(C
s)層などが設けられることもあるが、このようなCs層は
化学的に不安定であるため表面状態が安定でない、すな
わち電子放出特性が安定でないといった問題点もあっ
た。
【0008】上記のような素子構造に関する取り組みに
加えて、電子放出部に用いる電子放出材料の検討もなさ
れている。中でも炭素系材料は、低電界下でも電子放出
が可能な材料として注目されている。例えば、カーボン
・ファイバーは仕事関数が比較的高いにもかかわらず、
電界放出エミッタとして機能することが示されている。
また黒鉛構造の基礎構造である炭素の六員環ネットを円
筒状に巻いた構造を持つカーボン・ナノ・チューブは最
近発見された炭素系の新しい材料であり、その端面から
電子放出が起こり易いことが報告されている。しかし通
常、カーボン・ナノ・チューブなどの炭素系材料は粉体
状であったり、脆いといった点で電子放出材料として取
り扱うことが困難であった。さらに電子放出が起こりや
すいと考えられるカーボン・ナノ・チューブ端面の方向
を制御して配置することも困難であった。
【0009】以上のように、これまで用いられてきた電
子放出素子および電子放出材料は、要求される特性を十
分に満たすものではなかったり、取り扱いが困難である
といった問題があった。
【0010】 そこで本発明は、前記問題を解決するた
め、取り扱いが容易であり、かつ電子放出能力の高い電
子放出材料の製造方法を提供することを目的とする
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の電子放出素子の製造方法は、カソード電極と、
前記カソード電極に対向して配置されたアノード電極
と、前記カソード電極上に配置された電子放出部材とを
備える電子放出素子の製造方法であって、難電子放出物
質からなる略円筒状体に、前記難電子放出物質とは異な
る易電子放出物質を充填したのち、前記略円筒状体を延
伸して前記略円筒状体の径を小さくする工程、および前
記径を小さくした略円筒状体を切断することによって、
貫通孔を有する難電子放出物質と、前記貫通孔に充填さ
れ前記難電子放出物質よりも電子を放出しやすい易電子
放出物質とを備える電子放出部材を形成する工程を含む
ことを特徴とする。
【0012】 前記易電子放出物質はカーボン・ナノ・
チューブを含むことが好ましい。
【0013】 前記電子放出部材を形成する工程のの
ち、前記難電子放出物質の端部を除去することによっ
て、前記電子放出部材に、前記易電子放出物質からなる
凸部を形成する工程をさらに含むことが好ましい。
【0014】 前記略円筒状体を延伸することにより前
記易電子放出物質を略一方向に配列させることが好まし
い。
【0015】 前記易電子放出物質がカーボン・ナノ・
チューブを含むことが好ましい。
【0016】また、上記電子放出材料においては、易電
子放出物質からなる部分の形状が、円柱形、円錐台およ
び円錐形から選択されるいずれかであることが好まし
い。
【0017】また、上記電子放出材料においては、易電
子放出物質が、炭素(C)を主成分とする材料を含むこと
が好ましい。この場合、炭素(C)を主成分とする材料
が、少なくとも炭素の六員環構造からなるグラフェン構
造を構成要素に持つことが好ましい。
【0018】さらに上記の場合、炭素の六員環構造から
なるグラフェン構造を構成要素に持つ材料が、少なくと
もカーボン・ナノ・チューブを含んでいることが好まし
い。易電子放出物質におけるカーボン・ナノ・チューブ
の含有量は、1vol%以上であることが好ましい。
【0019】また、易電子放出物質は、カーボン・ナノ
・チューブと、黒鉛、フラーレン、ダイヤモンドおよび
ダイヤモンド・ライク・カーボンから選ばれる少なくと
も1つの炭素系物質とを含むことが好ましい。あるいは
易電子放出物質は、カーボン・ナノ・チューブと、タン
グステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タンタル
(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Z
r)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ホウ素(B)およびシリ
コン(Si)から選ばれる少なくとも1つの炭化物とを含む
ことが好ましい。
【0020】また、上記電子放出材料においては、難電
子放出物質が、金属からなることが好ましい。この場
合、難電子放出物質を構成する金属が、実質的に炭化物
を形成しない金属、または前記金属の合金であることが
好ましい。
【0021】本発明の別の電子放出材料は、組織構造の
異なる複数の物質から構成される電子放出材料におい
て、繊維構造物質が非繊維構造物質からなる部材の孔部
分に充填されていることを特徴とする。
【0022】本発明のさらに別の電子放出材料は、組織
構造の異なる複数の物質から構成される電子放出材料に
おいて、繊維構造物質が非繊維構造物質からなる部材の
孔部分に充填されており、かつ前記繊維構造物質が前記
非繊維構造物質からなる部材より突起状に突出している
ことを特徴とする。
【0023】このような繊維構造物質を含む電子放出材
料においても、易電子放出物質を含む上記電子放出材料
と同様の上記形態が好ましい。
【0024】すなわち、上記電子放出材料においては、
非繊維構造物質からなる部材に存在する孔が、貫通孔で
あることが好ましい。
【0025】また、上記電子放出材料においては、非繊
維構造物質からなる部材に存在する孔が、単一または複
数の孔であることが好ましい。
【0026】また、上記電子放出材料においては、非繊
維構造物質からなる部材の形状が、円筒形であることが
好ましい。
【0027】また、上記電子放出材料においては、繊維
構造物質からなる部分の形状が、円柱形、円錐台および
円錐形から選択されるいずれかであることが好ましい。
【0028】また、上記電子放出材料においては、繊維
構造物質が、炭素(C)を主成分とする材料を含むことが
好ましい。この場合、炭素(C)を主成分とする材料が、
少なくとも炭素の六員環構造からなるグラフェン構造を
構成要素に持つことが好ましい。
【0029】さらに上記の場合、炭素の六員環構造から
なるグラフェン構造を構成要素に持つ材料が、少なくと
もカーボン・ナノ・チューブを含んでいることが好まし
い。繊維構造物質におけるカーボン・ナノ・チューブの
含有量は、1vol%以上であることが好ましい。
【0030】また、繊維構造物質は、カーボン・ナノ・
チューブと、黒鉛、フラーレン、ダイヤモンドおよびダ
イヤモンド・ライク・カーボンから選ばれる少なくとも
1つの炭素系物質とを含むことが好ましい。あるいは繊
維構造物質は、カーボン・ナノ・チューブと、タングス
テン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タンタル(T
a)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、
チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ホウ素(B)およびシリコン
(Si)から選ばれる少なくとも1つの炭化物とを含むこと
が好ましい。
【0031】また、上記電子放出材料においては、非繊
維構造物質が、金属からなることが好ましい。この場
合、非繊維構造物質を構成する金属が、実質的に炭化物
を形成しない金属、または前記金属の合金であることが
好ましい。
【0032】本発明の別の電子放出材料は、炭素(C)を
主成分とする材料と導電性または非導電性材料とから構
成される電子放出材料において、炭素を主成分とする材
料が導電性または非導電性材料からなる部材の孔部分に
充填されていることを特徴とする。
【0033】本発明のさらに別の電子放出材料は、炭素
(C)を主成分とする材料と導電性または非導電性材料と
から構成される電子放出材料において、炭素を主成分と
する材料が導電性または非導電性材料からなる部材の孔
部分に充填されており、かつ前記炭素を主成分とする材
料が前記導電性または非導電性材料からなる部材より突
起状に突出していることを特徴とする。
【0034】このような炭素を主成分とする材料におい
ても、易電子放出物質を含む上記電子放出材料と同様の
上記形態が好ましい。
【0035】すなわち、上記電子放出材料においては、
導電性または非導電性材料からなる部材に存在する孔
が、貫通孔であることが好ましい。
【0036】また、上記電子放出材料においては、導電
性または非導電性材料からなる部材に存在する孔が、単
一または複数の孔であることが好ましい。
【0037】また、上記電子放出材料においては、導電
性または非導電性材料からなる部材の形状が、円筒形で
あることが好ましい。
【0038】また、上記電子放出材料においては、炭素
(C)を主成分とする材料からなる部分の形状が、円柱
形、円錐台および円錐形から選択されるいずれかである
ことが好ましい。
【0039】また、上記電子放出材料においては、炭素
(C)を主成分とする材料が、少なくとも炭素の六員環構
造からなるグラフェン構造を構成要素に持つことが好ま
しい。
【0040】さらに上記の場合、炭素の六員環構造から
なるグラフェン構造を構成要素に持つ材料が、少なくと
もカーボン・ナノ・チューブを含んでいることが好まし
い。炭素(C)を主成分とする材料におけるカーボン・
ナノ・チューブの含有量は、1vol%以上であることが
好ましい。
【0041】また、炭素(C)を主成分とする材料は、
カーボン・ナノ・チューブと、黒鉛、フラーレン、ダイ
ヤモンドおよびダイヤモンド・ライク・カーボンから選
ばれる少なくとも1つの炭素系物質とを含むことが好ま
しい。あるいは炭素(C)を主成分とする材料は、カーボ
ン・ナノ・チューブと、タングステン(W)、モリブデン
(Mo)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジ
ウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ニッケル(N
i)、ホウ素(B)およびシリコン(Si)から選ばれる少なく
とも1つの炭化物とを含むことが好ましい。
【0042】また、上記電子放出材料においては、導電
性または非導電性材料からなる部材が、金属からなるこ
とが好ましい。この場合、導電性または非導電性材料か
らなる部材を構成する金属が、実質的に炭化物を形成し
ない金属、または前記金属の合金であることが好まし
い。
【0043】本発明の電子放出材料の製造方法は、電子
放出能力の異なる複数の物質から構成される電子放出材
料の製造方法において、易電子放出物質を内部に充填し
た難電子放出物質部材を延伸処理する工程を含むことを
特徴とする。
【0044】本発明の別の電子放出材料の製造方法は、
電子放出能力の異なる複数の物質から構成される電子放
出材料の製造方法において、易電子放出物質を被覆して
いる難電子放出物質部材の少なくとも一部を除去処理す
る工程を含むことを特徴とする。
【0045】本発明のさらに別の電子放出材料の製造方
法は、組織構造の異なる複数の物質から構成される電子
放出材料の製造方法において、繊維構造物質を内部に充
填した非繊維構造物質部材を延伸処理する工程を含むこ
とを特徴とする。
【0046】本発明のまた別の電子放出材料の製造方法
は、組織構造の異なる複数の物質から構成される電子放
出材料の製造方法において、繊維構造物質を被覆してい
る非繊維構造物質部材の少なくとも一部を除去処理する
工程を含むことを特徴とする。
【0047】本発明のさらに別の電子放出材料の製造方
法は、炭素(C)を主成分とする材料と導電性または非導
電性材料とで構成される電子放出材料の製造方法におい
て、炭素を主成分とする材料を内部に充填した導電性ま
たは非導電性材料部材を延伸処理する工程を含むことを
特徴とする。
【0048】本発明のまた別の電子放出材料の製造方法
は、炭素(C)を主成分とする材料と導電性または非導電
性材料とで構成される電子放出材料の製造方法におい
て、炭素を主成分とする材料を被覆している導電性また
は非導電性材料部材の少なくとも一部を除去処理する工
程を含むことを特徴とする。
【0049】本発明の電子放出素子は、上記に記載の本
発明の電子放出材料により、カソード電極と接する電子
放出部を構成したことを特徴とする。本発明の別の電子
放出素子は、上記に記載の本発明の製造方法により製造
された電子放出材料により、カソード電極と接する電子
放出部を構成したことを特徴とする。このような電子放
出素子においては、電子放出部から電子が放出される空
間に接するように配置された制御電極をさらに備えてい
ることが好ましい。
【0050】本発明の別の電子放出素子は、放電空間に
接するカソード電極、アノード電極および制御電極と、
前記カソード電極に接する電子放出部とを備えた電子放
出素子であって、前記電子放出部が、電子放出能力の異
なる複数の物質から構成されており、易電子放出物質の
周囲の少なくとも一部を難電子放出物質で被覆したこと
を特徴とする。
【0051】本発明のまた別の電子放出素子は、放電空
間に接するカソード電極、アノード電極および制御電極
と、前記カソード電極に接する電子放出部とを備えた電
子放出素子であって、前記電子放出部が、電子放出能力
の異なる複数の物質から構成されており、易電子放出物
質からなる部分の先端が、前記制御電極の位置に対し
て、空間的に同位置または前記アノード電極側に位置す
ることを特徴とする。
【0052】本発明のさらに別の電子放出素子は、放電
空間に接するカソード電極およびアノード電極と、前記
カソード電極に接する電子放出部とを備えた電子放出素
子であって、前記電子放出部が、電子放出能力の異なる
複数の物質から構成されており、易電子放出物質の周囲
の少なくとも一部を難電子放出物質で被覆しており、前
記難電子放出物質からなる部分が絶縁物と導電物との二
層構造を有しており、かつ前記導電物が制御電極である
ことを特徴とする。
【0053】上記の易電子放出物質を含む電子放出素子
においては、電子放出部の易電子放出物質が、難電子放
出物質の孔部分に充填されていることが好ましい。
【0054】また、電子放出部の易電子放出物質が、難
電子放出物質の孔部分に充填されており、かつ前記易電
子放出物質が前記難電子放出物質より突起状に突出して
いることが好ましい。
【0055】本発明の別の電子放出素子は、放電空間に
接するカソード電極、アノード電極および制御電極と、
前記カソード電極に接する電子放出部とを備えた電子放
出素子であって、前記電子放出部が、組織構造の異なる
複数の物質から構成されており、繊維構造物質の周囲の
少なくとも一部を非繊維構造物質で被覆したことを特徴
とする。
【0056】本発明のまた別の電子放出素子は、放電空
間に接するカソード電極、アノード電極および制御電極
と、前記カソード電極に接する電子放出部とを備えた電
子放出素子であって、前記電子放出部が、組織構造の異
なる複数の物質から構成されており、繊維構造物質から
なる部分の先端が、前記制御電極の位置に対して空間的
に同位置または前記アノード電極側に位置することを特
徴とする。
【0057】本発明のさらに別の電子放出素子は、放電
空間に接するカソード電極およびアノード電極と、前記
カソード電極に接する電子放出部とを備えた電子放出素
子であって、前記電子放出部が、組織構造の異なる複数
の物質から構成されており、繊維構造物質の周囲の少な
くとも一部を非繊維構造物質で被覆しており、前記非繊
維構造物質からなる部分が絶縁物と導電物の二層構造を
有しており、かつ前記導電物が制御電極であることを特
徴とする。
【0058】上記の繊維構造物質を含む電子放出素子に
おいても、上記の易電子放出物質を含む電子放出素子と
同様、電子放出部の繊維構造物質が、非繊維構造物質の
孔部分に充填されていることが好ましい。また、電子放
出部の繊維構造物質が、非繊維構造物質の孔部分に充填
されており、かつ前記繊維構造物質が前記非繊維構造物
質より突起状に突出していることが好ましい。
【0059】本発明の別の電子放出素子は、放電空間に
接するカソード電極、アノード電極および制御電極と、
前記カソード電極に接する電子放出部とを備えた電子放
出素子であって、前記電子放出部が、炭素(C)を主成分
とする材料と導電性または非導電性材料とから構成され
ており、前記炭素を主成分とする材料の周囲の少なくと
も一部を前記導電性または非導電性材料で被覆したこと
を特徴とする。
【0060】本発明のまた別の電子放出素子は、放電空
間に接するカソード電極、アノード電極および制御電極
と、前記カソード電極に接する電子放出部とを備えた電
子放出素子であって、前記電子放出部が、炭素(C)を主
成分とする材料と導電性または非導電性材料とから構成
されており、前記炭素を主成分とする材料からなる部分
の先端が、前記制御電極の位置に対して空間的に同位置
または前記アノード電極側に位置することを特徴とす
る。
【0061】本発明のさらに別の電子放出素子は、放電
空間に接するカソード電極およびアノード電極と、前記
カソード電極に接する電子放出部とを備えた電子放出素
子であって、前記電子放出部が、炭素(C)を主成分とす
る材料と導電性または非導電性材料とから構成されてお
り、前記炭素を主成分とする材料の周囲の少なくとも一
部を前記導電性または非導電性材料で被覆しており、か
つ前記導電性または非導電性材料からなる部分が絶縁物
と導電物との二層構造を有しており、かつ前記導電物が
制御電極となることを特徴とする。
【0062】上記の炭素(C)を主成分とする材料を含む
電子放出素子においても、上記の易電子放出物質を含む
電子放出素子と同様、電子放出部の炭素を主成分とする
材料が、導電性または非導電性材料の孔部分に充填され
ていることが好ましい。また、電子放出部の炭素(C)
を主成分とする材料が、導電性または非導電性材料の孔
部分に充填されており、かつ炭素(C)を主成分とする材
料が導電性または非導電性材料より突起状に突出してい
ることが好ましい。
【0063】本発明は、さらに電子放出素子を用いた下
記装置を提供する。本発明の電子放出源は、本発明の電
子放出素子を、電子放出量が個別に制御できるように、
平面基板上に複数個配列したことを特徴とする。
【0064】また、本発明の蛍光体発光装置は、本発明
の電子放出源と、蛍光体層と、前記電子放出源および蛍
光体層を封止する容器とを備え、前記電子放出源から照
射される電子線により前記蛍光体層が発光することを特
徴とする。
【0065】また、本発明の画像描画装置は、本発明の
電子放出源と、蛍光体層と、前記電子放出源および蛍光
体層を封止する容器とを備え、前記電子放出源から照射
される電子線により前記蛍光体層が発光して画像を表示
することを特徴とする。
【0066】
【発明の実施の形態】まず図1に本発明に係る電子放出
材料の構成を表す概念的模式図を示す。本電子放出材料
は電子放出能力の異なる複数の物質から構成されてお
り、易電子放出物質1が難電子放出物質2からなる部材
の孔部分に充填されている。この際、易電子放出物質1
で構成される部分や難電子放出物質2からなる部材の形
状は、図1(a)のように円柱充填層/円柱状部材で構成
されてもよいし、図1(b)(c)のような円柱充填物/角
柱状部材、角柱充填物/角柱状部材、あるいは他の形状
の組合せなど特に限定されるものではない。
【0067】また図2は本発明に係る電子放出材料の他
の構成を表す概念的模式図であり、難電子放出物質2か
らなる部材の形状としても柱状(図2(a))に限られるも
のではなく、図2(b)(c)のような錐状構造でもよい。
しかしながら後記のように作製上あるいは使用上の観点
から見ると、図1(a)及び図2(a)に示した円柱充填層
/円柱状部材の構成が最も適している。
【0068】ここで本明細書で用いる「易電子放出物
質」と「難電子放出物質」の意味について若干補足す
る。一般的に、物質に対して何らかの方法でエネルギー
を与えると、物質表面近傍に存在する電子がエネルギー
障壁に打ち勝って真空中に電子を放出することが可能と
なる。エネルギーを与える方法としては、例えば加熱、
電界印加、光入射、高速電子入射などがある。このよう
に物質に対してエネルギーを与えることで外部に電子を
取り出す場合、その物質の電子放出能力を示す物性値の
一つとしては仕事関数(work function)がある。例え
ば、加熱や光入射によるエネルギー印加によって金属な
ど物質から電子を放出させる際には、その物質の仕事関
数値が小さい方が電子放出が容易である。しかしなが
ら、物質の電子放出能力指標はこの限りではない。なぜ
なら電界印加によって電子を放出させる場合には、その
物質に対する電界のかかり方によって電子放出量が異な
り、その物質の形状因子(形、大きさ、組織構造など)や
電子状態などに大きく依存する。故に本発明で用いる電
子放出能力の意味としては、該物質に対して同一条件下
で電界印加の方法でエネルギーを与えた場合において得
られる電子放出量の度合いのことを示すものとする。
【0069】故に易電子放出物質/難電子放出物質と
は、本電子放出材料に用いる物質の電子放出能力を上記
の条件下で比較した際の優劣を示すものであり、絶対的
な電子放出能力指標を指し示すものではない。また易/
難電子放出物質の比較に際しては、単体物質のみを対象
とするのではなく、複数物質からなる混合物間の比較も
含まれる。
【0070】以上のような観点で判断した場合、本発明
に適用可能な易電子放出物質グループに含まれる代表的
な材料例としては、低仕事関数金属/酸化物、窒化ホウ
素(BN)などの窒化物、ダイヤモンドやグラファイト、カ
ーボン・ナノ・チューブなどに代表される炭素系材料ま
たはそれらの混合物が、また難電子放出物質グループに
含まれる材料例としては、通常の金属などが挙げられる
が、この限りではない。
【0071】上記のような易/難電子放出物質を組み合
わせた、図1及び図2のような構成の電子放出材料には
次のような利点が挙げられる。まず第1に、従来単独で
は使用が困難であった易電子放出物質を部材に充填する
ことによって、電子放出材料としての取り扱いを容易に
することができる。また第2に、うまく易/難電子放出
物質を選択することによって、易電子放出物質の端面、
すなわち電子放出部分に対して印加電界を集中させるこ
とが可能となる。言い換えれば、形状効果によって効率
的に易電子放出物質に電界を印加できるので、低い引き
出し電圧でも電子を外部に取り出すことが可能となる。
【0072】以上本発明者らは、易電子放出物質を部材
の孔部分に充填することで、それら材料を電子放出材料
として容易に取り扱いできることを見いだした。また本
発明者らは、前記構成によって易電子放出物質から効率
的に電子を放出させることが可能であることを見いだし
た。すなわち、単独では使用困難であった易電子放出物
質を難電子放出物質からなる部材の孔部分に充填するこ
とにより、安定性に高くかつ高効率に電子を放出するこ
とが可能な電子放出材料を提供することができる。
【0073】なお該電子放出材料の作製は、特に限定さ
れるものではないが、孔部が形成された難電子放出物質
からなる部材に粉体状の易電子放出物質を充填して押し
固めてもよいし、バインダーに混ぜられたインク状の易
電子放出物質を孔部に充填した後、バインダー成分を除
去してもよい。また予め成型された易電子放出物質を難
電子放出物質からなる部材の孔部に圧入してもよい。
【0074】また図1及び図2のような構成の場合、難
電子放出物質からなる部材は基本的に導電性のものが好
適である。故に前記本発明の構成において、図3に示す
ように難電子放出物質2からなる部材に存在する孔が貫
通孔であれば、部材として用いる難電子放出物質2の選
択性を高めることができる。またこの構成の場合、パイ
プ状の難電子放出物質部材に易電子放出物質を充填した
後、所望のサイズに裁断することによって、簡便に該電
子放出材料を作製することもできる。さらに後記のよう
に裁断前に前記パイプ状難電子放出物質部材を延伸加工
することによって、微細な径を持つ該電子放出材料が作
製可能となるとともに、電子放出能力を高めることがで
きる。
【0075】以上のように本発明の構成において、難電
子放出物質からなる部材に存在する孔が貫通孔であると
いう好ましい例によれば、より簡便で選択性の高い高効
率電子放出材料を提供することができる。
【0076】また該電子放出材料は、部材孔部に充填さ
れた易電子放出物質端面が電子放出部として有効に作用
する領域である。故に、孔数によって電子放出総量や電
子放出位置を制御することができる。図4は難電子放出
物質2からなる部材に存在する単一孔(図4(a))及び複
数孔(三個;図4(b))に易電子放出物質1を充填した構
成の概念的模式図であるが、図4(b)のような構成は図
4(a)の単一孔部材を複数本束ねて延伸加工処理すれば
容易に実現することができる。
【0077】以上のように本発明の構成において、難電
子放出物質からなる部材に存在する孔が単一孔または複
数孔であるという好ましい例によれば、電子放出量や電
子放出領域の自由度が高い高効率電子放出材料を提供す
ることができる。
【0078】また前記のように該電子放出材料における
難電子放出物質2からなる部材の形状は任意であるが、
作製上または使用上の観点から見ると円筒状部材の構成
が容易である。故に本発明の構成において、難電子放出
物質からなる部材の形状が円筒形であるという好ましい
例によれば、安価にかつ生産性高く高効率電子放出材料
を提供することができる。
【0079】これまで易電子放出物質を部材の孔部に充
填した電子放出材料に関して記載したが、さらに図5に
示すように易電子放出物質1からなる部分の先端を難電
子放出物質2部材より突起状に突出させることによっ
て、より効率的に電子を放出させることが可能であるこ
とを本発明者らは見いだした。なぜなら、この構成によ
り前記記載の電界集中形状効果をより強く作用させるこ
とができるためである。すなわち、単独では使用困難で
あった易電子放出物質を難電子放出物質からなる部材の
孔部分に充填し、かつ易電子放出物質の先端部を部材よ
り突起状に突出させることにより、安定性に高くかつよ
り高効率に電子を放出することが可能な電子放出材料を
提供することができる。
【0080】なお該電子放出材料の作製は、特に限定さ
れるものではないが、易電子放出物質の成型物を圧入す
る際、その先端部が部材より突出するようにしてもよい
し、前記記載の電子放出材料(図1〜図4参照)を作製
後、易電子放出物質を被覆している難電子放出物質部分
を一部除去することで形成してもよい。
【0081】その突出部の形状は特に限定されるもので
はないが、作製上または使用上の観点から見ると円柱状
が一般的である。しかしながら、さらにその形状効果を
促進するために図5(c)のように円錐台や円錐状にして
もよい。故に本発明の構成において、易電子放出物質か
らなる部分の形状が円柱形、円錐台または円錐形のいず
れかより選択されるという好ましい例によれば、より効
率的な電子放出材料を提供することができる。
【0082】ここで易電子放出物質1として用いる材料
としては、炭素(C)を主成分とする材料を含むことが望
ましい。なぜならば、炭素系材料は前記のように電界印
加による電子放出が比較的容易であると共に、加工性に
富んでいるため部材に充填する易電子放出材料として適
しているからである。故に本発明の構成において、易電
子放出物質が炭素(C)を主成分とする材料を含むという
が好ましい例によれば、容易に電子放出能力の高い易電
子放出部を有する電子放出素子を提供することができ
る。
【0083】中でもとりわけ炭素を主成分とする材料と
して、少なくとも炭素の六員環構造からなるグラフェン
構造を構成要素に持つ材料を選択し、部材に充填するこ
とで電子放出能の高い電子放出材料を容易に作製できる
ことを本発明者らは見いだした。具体的には、金属など
比較的強電界下でしか電子を放出することのできない難
電子放出物質からなる円筒状部材に粉末状のグラファイ
トを充填することで、本来取り扱いが困難であった前記
材料を容易に操作することが可能な高効率電子放出材料
とすることができた。故に本発明の構成において、炭素
を主成分とする材料が少なくとも炭素の六員環構造から
なるグラフェン構造を構成要素に持つという好ましい例
によれば、容易に電子放出能力の高い易電子放出部を有
する電子放出素子を提供することができる。
【0084】さらに本発明の構成において、炭素の六員
環構造からなるグラフェン構造を構成要素に持つ材料が
少なくともカーボン・ナノ・チューブを含むという好ま
しい例によれば、より電子放出能力の高い電子放出材料
を構成することができる。具体的な充填例としては、カ
ーボン・ナノ・チューブ含有物の一般的な製法であるア
ーク放電法において得られた陰極部堆積物をそのまま充
填してもよいし、その粉砕物を充填してもよい。さらに
カーボン・ナノ・チューブ成分を精製する目的で前記陰
極堆積物をエタノールなどの溶媒中で粉砕し、その上澄
み液を回収・乾燥することにより得られたものを充填し
てもよい。しかしながら用いる材料はこの限りではな
く、カーボン・ナノ・チューブを含む物質と黒鉛粒、粉
末、金属炭化物粉末などを混合して、部材の孔部に充填
してもよい。
【0085】また上記のようにして得られた電子放出材
料はそのままでも使用可能であるが、400〜700℃程度の
温度での加熱加工処理や延伸加工処理を施すことによ
り、さらに電子放出能力を高めることも可能である。例
えば、カーボン・ナノ・チューブを含んだ材料を内側に
詰めた円筒部材を延伸加工処理して全体を細く延ばした
場合、延伸処理過程で円筒部材内部に配置されたカーボ
ン・ナノ・チューブを含む物質は細く延ばされる。その
結果、中に含まれているカーボン・ナノ・チューブの配
列方向を一方向に配向させることができるので、電子放
出が起こりやすいと考えられるカーボン・ナノ・チュー
ブ端面を電子放出部端面に制御して配置することができ
る。このような手法で電子放出材料を製造することによ
り、低引き出し電圧下においても電子放出が可能であ
り、かつ電界放射電子の方向が揃った応用上有利な電子
放出材料を提供することができる。上記のような効果が
顕著に現れるのは、カーボン・ナノ・チューブ含有量が
1vol%以上の場合である。故に本発明の構成におい
て、カーボン・ナノ・チューブの含有量が1vol%以上
であるという好ましい例によれば、実用性の高い電子放
出材料を提供できる。
【0086】電子放出材料に適したカーボン・ナノ・チ
ューブを用いて該電子放出材料を形成する場合、当然の
ことながらその含有量が高いに越したことはない。しか
しながら、上記のように実用上、数vol%もあれば充分
である。その際、カーボン・ナノ・チューブと同時に充
填される混合物によってカーボン・ナノ・チューブが変
質したり分解したりする度合いが変化することが考えら
れる。故に本発明の構成において、易電子放出物質がカ
ーボン・ナノ・チューブと黒鉛、フラーレン、ダイヤモ
ンド、ダイヤモンド・ライク・カーボンから選ばれる炭
素系物質、またはそれらの混合物を構成要素に有する、
あるいは易電子放出物質がカーボン・ナノ・チューブと
タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、タン
タル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、ジルコニウム
(Zr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ホウ素(B)、シリコ
ン(Si)から選ばれる物質の炭化物、あるいはそれらの炭
化物の混合物を構成要素に有するという好ましい例によ
れば、カーボン・ナノ・チューブの変質あるいは分解を
防止できるため、安定性の高い電子放出材料を提供する
ことができる。
【0087】また本発明の構成において、難電子放出物
質が金属である、さらにその金属が例えば銅(Cu)、銀(A
g)、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)などの炭化物
を形成しない金属、または前記金属の合金により構成す
るという好ましい例によれば、延伸加工などによる加工
性が高く、かつ充填過程や加熱処理、延伸処理などの加
工過程で内部のカーボン・ナノ・チューブと難電子放出
物質が反応を起こしてカーボン・ナノ・チューブが変質
または分解することを防げるため、安定性の高い電子放
出材料を提供することができる。
【0088】次に図6に本発明に係る他の電子放出材料
の構成を表す概念的模式図を示す。本電子放出材料は、
組織構造の異なる複数の物質から構成されており、繊維
構造物質3が非繊維構造物質4からなる部材の孔部分に
充填された構成となっている。この際、繊維構造物質3
で構成される部分や非繊維構造物質4からなる部材の形
状は、図6(a)(b)(c)に示したように円柱充填層/円
柱状部材、円柱充填物/角柱状部材、角柱充填物/角柱
状部材などが挙げられるが、他の形状の組合せでもよ
い。また図7のように、非繊維構造物質4からなる部材
の形状としても柱状(図7(a))や、図7(b)(c)のよう
な錐状構造でもよい。しかしながら作製上または使用上
の観点から見ると、図6(a)及び図7(a)に示した円柱
充填層/円柱状部材の構成が最も適している。
【0089】ここで本明細書で用いる「繊維構造物質」
の意味について若干補足する。理化学辞典増訂版(岩波
書店発行)において「繊維構造とは、多結晶質におい
て、これを構成する小結晶の方位が無秩序でなく、各小
結晶について、ある特定の晶帯軸(結晶軸)が共通の方向
をとっているような構造(抜粋)」とあるが、本発明で用
いる繊維構造物質の意味としては、その物質の構成要素
が縦横のアスペクト比の大きい細長い繊維状形状のもの
を多く含み、その繊維状構造がある程度の方向性を持っ
て集まったものを指す。故に本電子放出材料で用いる繊
維構造物質とは、該物質に含まれる繊維状組織の長手方
向がある程度の割合で一軸方向に揃った領域を有する物
質を示すものであり、結晶学的に配向したような狭義の
意味を指し示すものではない。以上のような観点で判断
した場合、繊維構造物質グループに含まれる代表的な材
料例としてはカーボン・ファイバーやウィスカー状構造
の集合体などが挙げられるが、この限りではない。なお
本電子放出素子においては、図6に示した概念的模式図
の垂直方向に繊維状組織の長手軸方向を配した構成とな
っている。
【0090】上記のような繊維構造物質を用いた、図6
及び図7のような構成の電子放出材料には次のような利
点が挙げられる。まず第1に、従来単独では使用が困難
であった繊維構造物質を部材に充填することによって、
電子放出材料としての取り扱いを容易にすることが出き
る。また第2に、うまく繊維/非繊維構造物質を選択す
ることによって、繊維構造物質の端面、すなわち電子放
出部分に対して印加電界を集中させることが可能とな
る。言い換えれば、形状効果によって効率的に繊維構造
物質に電界を印加できるので、低い引き出し電圧でも電
子を外部に取り出すことが可能となる。
【0091】以上本発明者らは、繊維構造物質を部材の
孔部分に充填することで、それら材料を電子放出材料と
して容易に取り扱いできることを見いだした。また本発
明者らは、前記構成によって電界集中の形状効果が高い
繊維構造物質から効率的に電子を放出させることが可能
であることを見いだした。すなわち、単独では使用困難
であった繊維構造物質を非繊維構造物質からなる部材の
孔部分に充填することにより、安定性に高くかつ高効率
に電子を放出することが可能な電子放出材料を提供する
ことができる。
【0092】なお該電子放出材料の作製は、特に限定さ
れるものではないが、孔部が形成された非繊維構造物質
からなる部材に長手軸方向が揃うように繊維構造物質を
充填して押し固めてもよいし、バインダーに混ぜられた
インク状の繊維構造物質を孔部に充填した後、バインダ
ー成分を除去して長手軸方向がある程度揃うようにして
もよい。また予め成型された繊維構造物質を非繊維構造
物質からなる部材の孔部に圧入してもよい。
【0093】また図6及び図7のような構成の場合、非
繊維構造物質からなる部材は基本的に導電性のものに限
られる。故に前記本発明の構成において、図8に示すよ
うに非繊維構造物質4からなる部材に存在する孔が貫通
孔であれば、部材として用いる非繊維構造物質4の選択
性を高めることができる。またこの構成の場合、パイプ
状の非繊維構造物質部材に繊維構造物質を充填した後、
所望のサイズに裁断することによって、簡便に該電子放
出材料を作製することもできる。さらに後記のように裁
断前に前記パイプ状非繊維構造物質部材を延伸加工する
ことによって、長手軸の揃った繊維組織を持つ該電子放
出材料が作製可能となるので、電子放出能力を高めるこ
とができる。
【0094】以上のように本発明の構成において、非繊
維構造物質からなる部材に存在する孔が貫通孔であると
いう好ましい例によれば、より簡便で選択性の高い高効
率電子放出材料を提供することができる。
【0095】また該電子放出材料は、部材孔部に充填さ
れた繊維構造物質端面が電子放出部として有効に作用す
る領域である。故に、孔数によって電子放出総量や電子
放出位置を制御することができる。図9は非繊維構造物
質4からなる部材に存在する単一孔(図9(a))及び複数
孔(三個;図9(b))に繊維構造物質3を充填した構成の
概念的模式図であるが、図9(b)のような構成は図9
(a)の単一孔部材を複数本束ねて延伸加工処理すれば容
易に実現することができる。
【0096】以上のように本発明の構成において、非繊
維構造物質からなる部材に存在する孔が単一孔または複
数孔であるという好ましい例によれば、電子放出量や領
域の自由度が高い高効率電子放出材料を提供することが
できる。
【0097】また前記のように該電子放出材料における
非繊維構造物質からなる部材の形状は任意であるが、作
製上または使用上の観点から見ると円筒状部材の構成が
容易である。故に本発明の構成において、非繊維構造物
質からなる部材の形状が円筒形であるという好ましい例
によれば、安価にかつ生産性高く高効率電子放出材料を
提供することができる。
【0098】これまで、繊維構造物質を部材の孔部に充
填した電子放出材料に関して記載したが、さらに図10に
示すように繊維構造物質3からなる部分の先端を非繊維
構造物質4部材より突起状に突出させることによって、
より効率的に電子を放出させることが可能であることを
本発明者らは見いだした。なぜなら、この構成により前
記記載の電界集中形状効果をより強く作用させることが
できるためである。すなわち、単独では使用困難であっ
た繊維構造物質を非繊維構造物質からなる部材の孔部分
に充填し、かつ繊維構造物質の先端部を部材より突起状
に突出させることにより、安定性に高くかつより高効率
に電子を放出することが可能な電子放出材料を提供する
ことができる。
【0099】なお該電子放出材料の作製は、特に限定さ
れるものではないが、繊維構造物質の成型物を圧入する
際、その先端部が部材より突出するようにしてもよい
し、前記記載の電子放出材料(図6〜9参照)を作製後、
繊維構造物質を被覆している非繊維構造物質部分を一部
除去することで形成してもよい。
【0100】その突出部の形状は特に限定されるもので
はないが、作製上または使用上の観点から見ると円柱状
が一般的である。しかしながら、さらに形状効果を促進
するために図10(c)のように円錐台や円錐状にしてもよ
い。故に本発明の構成において、繊維構造物物質からな
る部分の形状が円柱形、円錐台または円錐形のいずれか
より選択されるという好ましい例によれば、より効率的
な電子放出材料を提供することができる。
【0101】ここで繊維構造物物質3として用いる材料
としては、炭素(C)を主成分とする材料を含むことが望
ましい。なぜならば、炭素系材料は前記のように電界印
加による電子放出が比較的容易であると共に、加工性に
富んでいるため部材に充填する繊維構造物質として適し
ているからである。故に本発明の構成において、繊維構
造物質が炭素(C)を主成分とする材料を含むというが好
ましい例によれば、容易に電子放出能力の高い易電子放
出部を有する電子放出素子を提供することができる。
【0102】中でもとりわけ炭素を主成分とする材料と
して、少なくとも炭素の六員環構造からなるグラフェン
構造を構成要素に持つ材料を選択し、部材に充填するこ
とで電子放出能の高い電子放出材料を容易に作製できる
ことを本発明者らは見いだした。具体的には、金属など
比較的強電界下でしか電子を放出することの出来ない非
繊維構造物質からなる円筒部材に脆性の高い繊維状炭素
(グラファイト)を充填することで、本来取り扱いが困難
であった前記材料を容易に操作することが可能な高効率
電子放出材料とすることができた。故に本発明の構成に
おいて、炭素を主成分とする材料が少なくとも炭素の六
員環構造からなるグラフェン構造を構成要素に持つとい
う好ましい例によれば、容易に電子放出能力の高い易電
子放出部を有する電子放出素子を提供することができ
る。
【0103】さらに本発明の構成において、炭素の六員
環構造からなるグラフェン構造を構成要素に持つ材料が
少なくともカーボン・ナノ・チューブを含むという好ま
しい例によれば、より電子放出能力の高い電子放出材料
を構成することができる。具体的な充填例としては、カ
ーボン・ナノ・チューブ含有物の一般的な製法であるア
ーク放電法において得られた繊維状の陰極部堆積物をそ
のまま充填してもよいし、その粉砕物を充填してもよ
い。さらにカーボン・ナノ・チューブ成分を精製する目
的で前記陰極堆積物をエタノールなどの溶媒中で粉砕
し、その上澄み液を回収・乾燥することにより得られた
ものを充填してもよい。しかしながら用いる材料はこの
限りではなく、カーボンナノチューブを含む物質と黒鉛
粒、粉末、金属炭化物粉末などを混合して、部材の孔部
に充填してもよい。また上記のようにして得られた電子
放出材料はそのままでも使用可能であるが、400〜700℃
程度の温度での加熱加工処理や延伸加工処理を施すこと
により、さらに電子放出能力を高めることも可能であ
る。例えば、カーボン・ナノ・チューブを含んだ材料を
内側に詰めた円筒部材を延伸加工処理して全体を細く延
ばした場合、延伸処理過程で円筒部材内部に配置された
カーボン・ナノ・チューブを含む物質は細く延ばされ
る。その結果、中に含まれているカーボン・ナノ・チュ
ーブの配列方向を一方向に配向させることができるの
で、電子放出が起こりやすいと考えられるカーボン・ナ
ノ・チューブ端面を電子放出部端面に制御して配置する
ことができる。このような手法で電子放出材料を製造す
ることにより、低引き出し電圧下においても電子放出が
可能であり、かつ電界放射電子の方向が揃った応用上有
利な電子放出材料を提供することができる。上記のよう
な効果が顕著に現れるのは、カーボン・ナノ・チューブ
含有量が1vol%以上の場合である。故に本発明の構成
において、カーボン・ナノ・チューブの含有量が1vol
%以上であるという好ましい例によれば、実用性の高い
電子放出材料を提供できる。
【0104】繊維構造物質であり、かつ電子放出材料に
適したカーボン・ナノ・チューブを用いて該電子放出材
料を形成する場合、当然のことながらその含有量が高い
に越したことはない。しかしながら、上記のように実用
上、数vol%もあれば充分である。その際、カーボン・
ナノ・チューブと同時に充填される混合物によってカー
ボン・ナノ・チューブが変質したり分解したりする度合
いが変化することが考えられる。故に本発明の構成にお
いて、易電子放出物質がカーボン・ナノ・チューブと黒
鉛、フラーレン、ダイヤモンド、ダイヤモンド・ライク
・カーボンから選ばれる炭素系物質、またはそれらの混
合物を構成要素に有する、あるいは易電子放出物質がカ
ーボン・ナノ・チューブとタングステン(W)、モリブデ
ン(Mo)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナ
ジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ニッケル
(Ni)、ホウ素(B)、シリコン(Si)から選ばれる物質の炭
化物、またはそれらの炭化物の混合物を構成要素に有す
るという好ましい例によれば、カーボン・ナノ・チュー
ブの変質あるいは分解を防止できるため、安定性の高い
電子放出材料を提供することができる。
【0105】また本発明の構成において、非繊維構造物
質が金属である、さらにその金属が例えば銅(Cu)、銀(A
g)、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)などの炭化物
を形成しない金属、または前記金属の合金により構成す
るという好ましい例によれば、延伸加工などによる加工
性が高く、かつ充填過程や加熱処理、延伸処理などの加
工過程で内部のカーボン・ナノ・チューブと金属が反応
を起こしてカーボン・ナノ・チューブが変質あるいは分
解することを防げるため、安定性の高い電子放出材料を
提供することができる。
【0106】続いて図11に本発明に係る他の電子放出材
料の構成を表す概念的模式図を示す。本電子放出材料
は、炭素(C)を主成分とする材料と導電性または非導電
性材料とで構成されており、炭素(C)を主成分とする材
料5が導電性または非導電性材料6からなる部材の孔部
分に充填されている。この際、炭素を主成分とする材料
5で構成される部分や導電性または非導電性材料6から
なる部材の形状は、図11(a)(b)(c)に示したように円
柱充填層/円柱状部材、円柱充填物/角柱状部材、角柱
充填物/角柱状部材などが挙げられるが、他の形状組合
せでもよい。また図12のように、導電性または非導電性
材料6からなる部材の形状としても柱状(図12(a))や、
図12(b)(c)のような錐状構造でもよい。しかしながら
作製上または使用上の観点から見ると、図11(a)及び図
12(a)に示した円柱充填層/円柱状部材の構成が最も適
している。
【0107】前記のように炭素を主成分とする材料は、
一般的に電子放出材料として高い可能性を有しているこ
とから、炭素を主成分とする材料/導電性あるいは非導
電性材料を用いた、図11及び図12のような構成の電子放
出材料には次のような利点が挙げられる。まず第1に、
従来単独では使用が困難であった炭素を主成分とする材
料を部材に充填することによって、電子放出材料として
の取り扱いを容易にすることが出きる。また第2に、う
まく導電性または非導電性材料を選択することによっ
て、炭素を主成分とする材料の端面、すなわち電子放出
部分に対して印加電界を集中させることが可能となる。
言い換えれば、形状効果によって効率的に炭素を主成分
とする材料に電界を印加できるので、低い引き出し電圧
でも電子を外部に取り出すことが可能となる。
【0108】以上本発明者らは、炭素を主成分とする材
料を部材の孔部分に充填することで、それら材料を電子
放出材料として容易に取り扱いできることを見いだし
た。また本発明者らは、前記構成によって炭素を主成分
とする材料から効率的に電子を放出させることが可能で
あることを見いだした。すなわち、単独では使用困難で
あった炭素を主成分とする材料を導電性または非導電性
材料からなる部材の孔部分に充填することにより、安定
性に高くかつ高効率に電子を放出することが可能な電子
放出材料を提供することができる。
【0109】なお該電子放出材料の作製は、特に限定さ
れるものではないが、孔部が形成された導電性または非
導電性材料からなる部材に粉体状の炭素を主成分とする
材料を充填して押し固めてもよいし、バインダーに混ぜ
られたインク状の炭素を主成分とする材料を孔部に充填
した後、バインダー成分を除去してもよい。また予め成
型された炭素を主成分とする材料を導電性または非導電
性材料からなる部材の孔部に圧入してもよい。
【0110】また図11及び図12のような構成の場合、部
材に用いられる材質は基本的に導電性のものに限られ
る。故に前記本発明の構成において、図13に示すように
導電性または非導電性材料6からなる部材に存在する孔
が貫通孔であれば、部材として用いる導電性または非導
電性材料6の選択性を高めることができる。またこの構
成の場合、パイプ状の導電性または非導電性材料部材に
炭素を主成分とする材料を充填した後、所望のサイズに
裁断することによって、簡便に該電子放出材料を作製す
ることもできる。さらに後記のように裁断前に前記パイ
プ状部材を延伸加工することによって、微細な径を持つ
該電子放出材料が作製可能となると共、電子放出能力を
高めることができる。
【0111】以上のように本発明の構成において、導電
性または非導電性材料からなる部材に存在する孔が貫通
孔であるという好ましい例によれば、より簡便で選択性
の高い高効率電子放出材料を提供することができる。
【0112】また該電子放出材料は、部材孔部に充填さ
れた炭素を主成分とする材料端面が電子放出部として有
効に作用する領域である。故に、孔数によって電子放出
総量や電子放出位置を制御することができる。図14は導
電性または非導電性材料6からなる部材に存在する単一
孔(図14(a))及び複数孔(三個;図14(b))に炭素を主成
分とする材料5が充填した構成の概念的模式図である
が、図14(b)のような構成は図14(a)の単一孔部材を複
数本束ねて延伸加工処理すれば容易に実現することがで
きる。
【0113】以上のように本発明の構成において、導電
性または非導電性材料からなる部材に存在する孔が単一
孔または複数孔であるという好ましい例によれば、電子
放出量や電子放出領域の自由度が高い高効率電子放出材
料を提供することができる。
【0114】また前記のように該電子放出材料における
導電性または非導電性材料からなる部材の形状は任意で
あるが、作製上または使用上の観点から見ると円筒状部
材の構成が容易である。故に本発明の構成において、導
電性または非導電性材料からなる部材の形状が円筒形で
あるという好ましい例によれば、安価にかつ生産性高く
高効率電子放出材料を提供することができる。
【0115】これまで、炭素を主成分とする材料を部材
の孔部に充填した電子放出材料に関して記載したが、さ
らに図15に示すように炭素を主成分とする材料5からな
る部分の先端を導電性または非導電性材料6部材より突
起状に突出させることによって、より効率的に電子を放
出させることが可能であることを本発明者らは見いだし
た。なぜなら、この構成により前記記載の電界集中形状
効果をより強く作用させることができるためである。す
なわち、単独では使用困難であった炭素を主成分とする
材料を導電性または非導電性材料からなる部材の孔部分
に充填し、かつ炭素を主成分とする材料の先端部を部材
より突起状に突出させることにより、安定性に高くかつ
より高効率に電子を放出することが可能な電子放出材料
を提供することができる。
【0116】なお該電子放出材料の作製は、特に限定さ
れるものではないが、炭素を主成分とする材料の成型物
を圧入する際、その先端部が部材より突出するようにし
てもよいし、前記記載の電子放出材料(図11〜14参照)を
作製後、炭素を主成分とする材料を被覆している導電性
または非導電性材料部分を一部除去することで形成して
もよい。
【0117】その突出部の形状は特に限定されるもので
はないが、作製上または使用上の観点から見ると円柱状
が一般的である。しかしながら、さらに形状効果を促進
するために図15(c)のように円錐台や円錐状にしてもよ
い。故に本発明の構成において、炭素を主成分とする材
料からなる部分の形状が円柱形、円錐台または円錐形の
いずれかより選択されるという好ましい例によれば、よ
り効率的な電子放出材料を提供することができる。
【0118】ここで炭素を主成分とする材料5として、
少なくとも炭素の六員環構造からなるグラフェン構造を
構成要素に持つ材料を選択し、部材に充填することで電
子放出能の高い電子放出材料を容易に作製できることを
本発明者らは見いだした。その詳細については、前記と
同様であるため割愛する。
【0119】さらに本発明の構成において、炭素の六員
環構造からなるグラフェン構造を構成要素に持つ材料が
少なくともカーボン・ナノ・チューブを含むという好ま
しい例によれば、より電子放出能力の高い電子放出材料
を構成することができる。具体的な充填例については、
前記記載の通りである。またこの場合においても、得ら
れた電子放出材料はそのままでも使用可能であるが、40
0〜700℃程度の温度での加熱処理や延伸処理を施すこと
により、さらに電子放出能力を高めることも可能であ
る。
【0120】また本発明の構成において、カーボン・ナ
ノ・チューブの含有量が1vol%以上であるという好ま
しい例によれば、実用性の高い電子放出材料を提供でき
る。
【0121】また本発明の構成において、炭素を主成分
とする材料がカーボン・ナノ・チューブと黒鉛、フラー
レン、ダイヤモンド、ダイヤモンド・ライク・カーボン
から選ばれる炭素系物質、またはそれらの混合物を構成
要素に有する、または炭素を主成分とする材料がカーボ
ン・ナノ・チューブとタングステン(W)、モリブデン(M
o)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウ
ム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ニッケル(N
i)、ホウ素(B)、シリコン(Si)から選ばれる物質の炭化
物、またはそれらの炭化物の混合物を構成要素に有する
という好ましい例によれば、カーボン・ナノ・チューブ
が変質を受ける度合いが小さいため、安定性の高い電子
放出材料を提供することができる。
【0122】また本発明の構成において、部材に用いる
導電性材料が金属である、さらにその金属が例えば銅(C
u)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)など
の炭化物を形成しない金属、または前記金属の合金によ
り構成するという好ましい例によれば、延伸加工などに
よる加工性が高く、かつ充填過程や延伸処理などの加工
過程で内部のカーボン・ナノ・チューブと導電性材料が
反応を起こしてカーボン・ナノ・チューブが変質又は分
解して消滅することを防げるため、安定性の高い電子放
出材料を提供することができる。
【0123】また本発明者らは、電子放出能力の異なる
複数の物質から構成される電子放出材料の製造方法にお
いて、易電子放出物質を内部に充填した難電子放出物質
部材に対して延伸処理を施すことにより、容易にかつ精
度良く電子放出材料を製造できることを見いだした。
【0124】図16は延伸処理工程によって該電子放出材
料を製造する様子を表した模式図である。手順として
は、まず太めのパイプ状難電子放出物質部材7に易電子
放出物質1を充填する(図16(a))。充填する方法につい
ては、特に限定されるものではないが、パイプ状難電子
放出物質部材7に粉体状の易電子放出物質1を詰めても
よいし、バインダーに混ぜられたインク状の易電子放出
物質1を筒部に注入後、バインダー成分を除去してもよ
い。また予め成型された易電子放出物質1を筒部に圧入
してもよい。続いて、延伸装置8を用いて前記パイプ状
難電子放出物質部材7を延伸加工することによって、該
電子放出材料9を作製する(図16(b))。このような延伸
加工処理を用いることで、容易に所望の径を持つ電子放
出材料9を作製することができると共に、内部に詰めら
れていた易電子放出物質1を緻密な構造とすることがで
きる。また延伸処理の際、複数本のパイプ状難電子放出
物質部材7を束ねて処理することで、複数個の易電子放
出物質1からなる領域を同時に形成することができる。
【0125】なおこのような延伸処理を何度か繰り返す
ことで、微細な径を持つ該電子放出材料9も作製可能と
なる。すなわち、内部が中空な難電子放出物質の内部に
易電子放出物質を充填した後、全体を延伸加工すること
により、安価にかつ効率的に電子を放出する電子放出材
料を製造することが可能となる。
【0126】さらに本発明者らは、易電子放出物質1と
してカーボン・ナノ・チューブに代表されるような縦横
のアスペクト比が大きい繊維状物質を適用した場合にお
いては、上記延伸処理を施すことによって以下のような
効果も得られることを見いだした。例えば一般的なカー
ボン・ナノ・チューブのサイズは、チューブ端面の直
径:1〜50nm、チューブ長手方向長さ: 0.5〜3μm程
度であり、難電子放出物質部材7への充填処理によって
非常に多数のカーボン・ナノ・チューブを配置すること
ができるが、充填処理のみでは個々のカーボン・ナノ・
チューブの長手方向を揃えることは困難である。しかし
ながら、図16のような方法でカーボン・ナノ・チューブ
を内部に充填した円筒部材7を延伸加工処理する過程に
おいて、円筒部材中のカーボン・ナノ・チューブを含む
物質は細く延ばされ、さらにはカーボン・ナノ・チュー
ブの長手方向が延伸される円筒部材の長手方向に配向し
ていく。すなわち、カーボン・ナノ・チューブなど繊維
状からなる易電子放出物質1を充填した難電子放出物質
部材7を延伸加工することにより、任意方向を向いてい
たカーボン・ナノ・チューブの長手方向を軸方向にが揃
えられるため、電界集中に対する形状効果が非常に大き
く、かつ電界放射電子流の拡がりが十分に小さい応用に
有利な電子放出材料を作製することができる。
【0127】また本発明者らは、電子放出能力の異なる
複数の物質から構成される電子放出材料の製造方法にお
いて、易電子放出物質を被覆している難電子放出物質部
材の少なくとも一部を除去する工程を含むことにより、
難電子放出部材より易電子放出物質を突起状に突出させ
た構成である高効率電子放出材料を製造できることを見
いだした。上記のような製造方法で得られた該電子放出
材料をそのまま使用することも可能であるが、さらに電
界集中に対する形状効果を促進するために、難電子放出
部材の一部除去して易電子放出物質を露出させることが
有効である。
【0128】難電子放出物質部材を除去する方法につい
ては、特に限定されるものではないが、パイプ状難電子
放出物質部材を機械的に易電子放出物質からなる芯部よ
り剥いでもよいし、薬品を用いた化学的なエッチング処
理によって除去してもよい。以上のように、易電子放出
物質の周辺を被覆した難電子放出物質部材の少なくとも
一部を除去することにより、安定性に高く、かつより高
効率に電子を放出することが可能な電子放出材料を製造
することができる。
【0129】また本発明者らは、組織構造の異なる複数
の物質から構成される電子放出材料の製造方法におい
て、繊維構造物質を内部に充填した非繊維構造物質部材
に対して延伸処理を施すことにより、容易に電子放出材
料を製造できることを見いだした。図17は延伸処理工程
によって該電子放出材料を製造する様子を表した模式図
である。手順としては、まず太めのパイプ状非繊維構造
物質部材10に繊維構造物質3を充填する(図17(a))。充
填する方法については、特に限定されるものではない
が、パイプ状非繊維構造物質部材10に粉体状の繊維構造
物質3を詰めてもよいし、バインダーに混ぜられたイン
ク状の繊維構造物質3を筒部に注入後、バインダー成分
を除去してもよい。また予め成型された繊維構造物質3
を筒部に圧入してもよい。続いて、延伸装置8を用いて
前記パイプ状非繊維構造物質10を延伸加工することによ
って、該電子放出材料11を作製する(図17(b))。このよ
うな延伸加工処理を用いることで、容易に所望の径を持
つ該電子放出材料11を作製することができると共に、内
部に詰められていた繊維構造物質3を緻密な構造とする
ことができる。また延伸処理の際、複数本のパイプ状非
繊維構造物質10を束ねて処理することで、複数個の繊維
構造物質3からなる領域を同時に形成することができ
る。なお、このような延伸処理を何度か繰り返すこと
で、微細な径を持つ該電子放出材料11も作製可能とな
る。
【0130】さらに繊維構造物質3を充填して、このよ
うな延伸処理を施すことによって以下のような効果を得
ることができる。図17(a)のように繊維構造物質3を非
繊維構造物質部材10に充填した際、充填処理のみでは繊
維状構成要素の長手方向を充分に揃えることは困難であ
る。しかしながら、図17のような方法で繊維構造物質を
内部に充填した円筒部材10を延伸加工処理する過程にお
いて、円筒部材中の繊維構造物質は細く延ばされ、さら
には個々の繊維状構成要素12の長手方向が延伸される円
筒部材の長手方向に配向していく。すなわち、繊維構造
物質を充填した非繊維構造物質部材10を延伸加工するこ
とにより、充分に方位の揃ってなかった繊維状構成要素
12の長手軸方向を軸方向に揃えることができる。故に得
られた該電子放出材料11中に存在する繊維状構成要素12
は、部材端面とは垂直な方向に長手軸方向を一様に有す
る(図17(b)中、先端部拡大、参照)。その結果、電界集
中に対する形状効果が非常に大きく、かつ電界放射電子
流の拡がりが十分に小さい応用に有利な電子放出材料を
作製することができる。すなわち、内部が中空な非繊維
構造物質の内部に繊維構造物質を充填した後、全体を延
伸加工することにより、安価にかつ効率的に電子を放出
する電子放出材料を製造することが可能となる。
【0131】また本発明者らは、組織構造の異なる複数
の物質から構成される電子放出材料の製造方法におい
て、繊維構造物質を被覆している非繊維構造物質部材の
少なくとも一部を除去する工程を含むことにより、非繊
維構造物質部材より繊維構造物質を突起状に突出させた
構成である高効率電子放出材料を製造できることを見い
だした。上記のような製造方法で得られた該電子放出材
料をそのまま使用することも可能であるが、さらに電界
集中に対する形状効果を促進するために、非繊維構造物
質部材の一部除去して繊維構造物質を露出させることが
有効である。非繊維構造物質部材を除去する方法につい
ては、特に限定されるものではないが、パイプ状非繊維
構造物質部材を機械的に繊維構造物質からなる芯部より
剥いでもよいし、薬品を用いた化学的なエッチング処理
によって除去してもよい。以上のように、繊維構造物質
の周辺を被覆した非繊維構造物質部材の少なくとも一部
を除去することにより、安定性に高く、かつより高効率
に電子を放出することが可能な電子放出材料を製造する
ことができる。
【0132】また本発明者らは、炭素(C)を主成分とす
る材料と導電性あるいは非導電性材料とで構成される電
子放出材料の製造方法において、炭素(C)を主成分とす
る材料を内部に充填した導電性あるいは非導電性材料に
対して延伸処理を施すことにより、容易に電子放出材料
を製造できることを見いだした。その詳細については、
前記記載の構成例と同様のため割愛する。すなわち、内
部が中空な部材の内部に炭素を主成分とする材料を充填
した後、全体を延伸加工することにより、安価にかつ効
率的に電子を放出する電子放出材料を製造することが可
能となる。
【0133】また本発明者らは、炭素(C)を主成分とす
る材料と導電性あるいは非導電性材料とで構成される電
子放出材料の製造方法において、炭素を主成分とする材
料を被覆している導電性あるいは非導電性材料部材の少
なくとも一部を除去する工程を含むことにより、部材よ
り炭素を主成分とする材料を突起状に突出させた構成で
ある高効率電子放出材料を製造できることを見いだし
た。すなわち、炭素を主成分とする材料の周辺を被覆し
た導電性あるいは非導電性材料の少なくとも一部を除去
することにより、安定性に高く、かつより高効率に電子
を放出することが可能な電子放出材料を製造することが
できる。
【0134】また本発明者らは、前記電子放出材料を適
用した電子放出素子の構造について検討した。図18に本
発明に係る電子放出素子の基本的な構成の一例を示す模
式的断面図を示す。図18に示すように本電子放出素子
は、主な構成部分として基材13と、カソード電極14と、
カソード電極に接して配置された電子放出部15と、電子
放出部から電子を引き出すための制御電極16と、絶縁体
層17と、アノード電極18からなる。なおここで電子放出
部15は、前記記載の電子放出部が電子放出能力の異なる
複数の物質から構成されており、かつ易電子放出物質18
が難電子放出物質からなる部材19の孔部分に充填されて
いる電子放出材料(図18(a))、あるいは易電子放出物質
18が難電子放出物質からなる部材19の孔部分に充填され
ており、かつ前記易電子放出物質が前記難電子放出物質
からなる部材より突起状に突出している電子放出材料
(図18(b))からなる。また図21は比較のために、同様の
構成部分からなるFE型電子放出素子の構造(スピント型)
を示したものである。いずれの構成においても、基材1
3、カソード電極14、制御電極16、絶縁体層17、アノー
ド電極18に用いられる材料および形成方法は共通であ
り、特に限定されるものではない。
【0135】例えば、基材13の材質としては、ガラスや
石英、あるいはシリコン基板などが一般的である。また
カソード電極14は、電子放出部15に電子を供給する下部
電極層として作用するものであり、通常の金属層(例え
ば、Al、Ti、Wなど)、あるいは低抵抗層(例えば、多結
晶Siなど)のみの構成でもよいし、電子放出部15に供給
する電流量制御を目的とした抵抗体層/金属層(あるい
は低抵抗層)の様な積層構造でもよい。その形成方法に
ついても通常の真空蒸着法や化学気相合成法(CVD法)
などの手法を用いて適宜形成される。また基材13そのも
のが導電性の場合は、基材を電極部として用いることが
できるため、カソード電極14を省略することも可能であ
る。その場合は、電子放出部15が直接基材13上に配置さ
れる。絶縁体層17は、カソード電極14と制御電極16を電
気的に絶縁分離するためのものであり、一般的には二酸
化シリコン膜や窒化シリコン膜が用いられる。制御電極
16としては、一般的にモリブデン(Mo)やアルミニウム(A
l)などの金属が用いられる。
【0136】図18と図21とを比較すると、電子放出部の
構成が大きく異なっている。一般的に制御電極の印加電
圧によって形成される電界によって、電子放出部を構成
する易電子放出物質より電子が放出される。その電子放
出点は図21に示すような構造の場合、電子放出部15を構
成する円錐先端近傍のみである。またその電子放出特性
は、前記のように電子放出部15の先端形状や表面状態に
大きく左右される。それに対し、図18に示すような構成
では、制御電極16によって印加される電界によって、カ
ソード電極14上に配置された該電子放出材料の易電子放
出物質19端面から効率よく電子が放出されるので、低電
界下でも電子放出電流を得ることが可能となる。また電
子放出能が高く、電子放出部の形状依存性が小さいた
め、安定な電子放出特性を維持することができる。
【0137】以上のように本発明らは、少なくともカソ
ード電極と、前記カソード電極に接して配置された電子
放出部と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極
と、アノード電極を備えた電子放出素子において、電子
放出部に前記電子放出能力の異なる複数の物質から構成
された該電子放出素子材料を適用した結果、従来以上の
性能を有する電子放出素子が作製可能であることを確認
した。すなわち、電子放出能力の異なる複数の物質から
構成されており、易電子放出物質が難電子放出物質から
なる部材の孔部分に充填されているような電子放出材
料、あるいは電子放出部が電子放出能力の異なる複数の
物質から構成されており、かつ易電子放出物質が難電子
放出物質からなる部材の孔部分に充填されており、かつ
前記易電子放出物質が前記難電子放出物質からなる部材
より突起状に突出しているような電子放出材料を電子放
出部の材料として採用することにより、より効率的な電
子放出素子を提供することができる。
【0138】また本発明者らは、少なくともカソード電
極と、前記カソード電極に接して配置された電子放出部
と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極と、アノ
ード電極を備えた電子放出素子において、電子放出部を
電子放出能力の異なる複数の物質から構成し、易電子放
出物質の周囲の少なくとも一部を難電子放出物質で被覆
する構成にすることにより、前記電子放出部に該電子放
出材料を適用した場合と同様、従来以上の性能を有する
電子放出素子が作製可能であることを確認した。すなわ
ち上記構成により、より効率的な電子放出素子を提供す
ることができる。
【0139】また本発明者らは図19に示すように、少な
くともカソード電極と、前記カソード電極に接して配置
された電子放出部と、前記電子放出部近傍に設置された
制御電極と、アノード電極を備えた電子放出素子であっ
て、電子放出部が電子放出能力の異なる複数の物質から
構成されており、かつ易電子放出物質19からなる部分の
先端が制御電極16位置に対して空間的に同位置あるいは
アノード電極18側に位置した場合によっても、制御電極
15の電圧制御により効率的に電子を放出する電子放出素
子が作製可能であることを確認した。
【0140】また本発明者らは、図18に示した電子放出
素子の構成とは異なる構造を有する電子放出素子につい
て検討した。図20に本発明に係る電子放出素子の基本的
な構成の一例を示す模式図を示す。図20に示すように本
電子放出素子は、主な構成部分として基材13と、カソー
ド電極14と、カソード電極に接して配置された電子放出
部15と、アノード電極18からなる。なおここで電子放出
部15は、電子放出部が電子放出能力の異なる複数の物質
から構成されており、かつ中心部分に易電子放出物質19
からなる芯が存在すると共に、その周りを難電子放出物
質からなる絶縁物層21と導電物層22の二層構造で被覆し
た構成をしている。この構成においても、基材13、カソ
ード電極14、アノード電極18に用いられる材料および形
成方法は前記と同様であり、特に限定されるものではな
い。図20と図18を比較すると、電子放出部15近傍の制御
電極の構成が大きく異なっている。本発明においては、
易電子放出物質19を被覆している難電子放出物質部分を
絶縁物層21、導電物層22で構成することで、前記導電物
層22自体に制御電極としての役割を持たせる構成となっ
ている。その結果、改めて絶縁層や制御電極を形成する
必要はない。またこの構造においても前記電子放出素子
の場合と同様に、制御電極として働く導電物層22によっ
て印加される電界によって、カソード電極14上に配置さ
れた該電子放出材料の易電子放出物質19端面から効率よ
く電子が放出されるので、低電界下でも電子放出電流を
得ることが可能となる。また電子放出能が高く、電子放
出部の形状依存性が小さいため、安定な電子放出特性を
維持することができる。以上のように少なくともカソー
ド電極と、前記カソード電極に接して配置された電子放
出部と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極と、
アノード電極を備えた電子放出素子の電子放出部構成
が、電子放出能力の異なる複数の物質から構成されてお
り、かつ易電子放出物質の周囲の少なくとも一部を難電
子放出物質で被覆した構成であり、かつ前記難電子放出
物質からなる部分が絶縁物と導電物の二層構造を有して
おり、かつ前記導電物が制御電極であるようにすること
により、他構成からなる高効率電子放出素子が作製する
ことができる。
【0141】また本発明者らは、前記の易/難電子放出
物質で構成された電子放出部の場合と同様に、電子放出
部が繊維構造物質/非繊維構造物質からなる場合につい
ても検討した。構成自体は図18と同じであるが、電子放
出部15が組織構造の異なる複数の物質から構成されてお
り、かつ繊維構造物質が非繊維構造物質からなる部材の
孔部分に充填されている電子放出材料、あるいは繊維構
造物質が非繊維構造物質からなる部材の孔部分に充填さ
れており、かつ前記繊維構造物質が前記非繊維構造物質
からなる部材より突起状に突出している電子放出材料か
ら構成される。他の構成についての説明は、同様のため
割愛する。その結果、上記構成においても、制御電極16
より印加される電界によって、カソード電極14上に配置
された該電子放出材料の繊維構造物質端面から効率よく
電子が放出されるので、低電界下でも電子放出電流を得
ることが可能となる。また電子放出能が高く、電子放出
部の形状依存性が小さいため、安定な電子放出特性を維
持することができる。
【0142】以上のように本発明者らは、少なくともカ
ソード電極と、前記カソード電極に接して配置された電
子放出部と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極
と、アノード電極を備えた電子放出素子において、電子
放出部に前記の組織構造の異なる複数の物質から構成さ
れた電子放出素子材料を適用した結果、従来以上の性能
を有する電子放出素子が作製可能であることを確認し
た。すなわち、組織構造の異なる複数の物質から構成さ
れており、繊維構造物質が非繊維構造物質からなる部材
の孔部分に充填されている電子放出材料、あるいは繊維
構造物質が非繊維構造物質からなる部材の孔部分に充填
されており、かつ前記繊維構造物質が前記非繊維構造物
質からなる部材より突起状に突出している電子放出材料
を電子放出部の材料として採用することにより、より効
率的な電子放出素子を提供することができる。
【0143】また本発明者らは、少なくともカソード電
極と、前記カソード電極に接して配置された電子放出部
と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極と、アノ
ード電極を備えた電子放出素子において、電子放出部を
組織構造の異なる複数の物質から構成し、繊維構造物質
の周囲の少なくとも一部を非繊維構造物質で被覆する構
成にすることにより、前記電子放出部に該電子放出材料
を適用した場合と同様、従来以上の性能を有する電子放
出素子が作製可能であることを確認した。すなわち、上
記構成により、より効率的な電子放出素子を提供するこ
とができる。
【0144】また本発明者らは、少なくともカソード電
極と、前記カソード電極に接して配置された電子放出部
と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極と、アノ
ード電極を備えた電子放出素子であって、組織構造の異
なる複数の物質から構成されており、かつ繊維構造物質
からなる部分の先端が制御電極位置に対して空間的に同
位置あるいはアノード電極側に位置することによって
も、制御電極の電圧制御によって効率的に電子を放出す
る電子放出素子が作製可能であることを確認した。
【0145】また本発明者らは、構造自体は図20と同じ
であるが、電子放出部15が組織構造の異なる複数の物質
から構成され、かつ組織構造物質の周囲に非繊維構造物
質からなる絶縁物と導電物の二層構造を有した素子構成
である電子放出素子についても検討した。他の構成につ
いての説明は、同様のため割愛する。その結果前記電子
放出素子の場合と同様に、制御電極として働く導電層に
よって印加される電界によって、カソード電極14上に配
置された該電子放出材料の繊維構造物質端面から効率よ
く電子が放出されるので、低電界下でも電子放出電流を
得ることが可能となる。また電子放出能が高く、電子放
出部の形状依存性が小さいため、安定な電子放出特性を
維持することができる。
【0146】以上のように、少なくともカソード電極
と、前記カソード電極に接して配置された電子放出部
と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極と、アノ
ード電極を備えた電子放出素子の電子放出部構成が、組
織構造の異なる複数の物質から構成されており、かつ組
織構造物質の周囲の少なくとも一部を非繊維構造物質で
被覆した構成であり、かつ前記非繊維構造物質からなる
部分が絶縁物と導電物の二層構造を有しており、かつ前
記導電物が制御電極であるようにすることにより、他の
構成からなる高効率電子放出素子が作製可能である。
【0147】また本発明者らは、電子放出部が炭素(C)
を主成分とする材料/導電性あるいは非導電性材料から
なる場合についても検討した。構成自体は図18と同じで
あるが、電子放出部15が炭素を主成分とする材料と導電
性あるいは非導電性材料とで構成されており、かつ炭素
を主成分とする材料が導電性あるいは非導電性材料から
なる部材の孔部分に充填されている電子放出材料、ある
いは炭素を主成分とする材料が導電性あるいは非導電性
材料からなる部材の孔部分に充填されており、かつ前記
炭素を主成分とする材料が前記導電性あるいは非導電性
材料からなる部材より突起状に突出している電子放出材
料から構成される。他の構成についての説明は、同様の
ため割愛する。その結果、上記構成においても、制御電
極16によって印加される電界によって、カソード電極14
上に配置された該電子放出材料の炭素を主成分とする材
料端面から効率よく電子が放出されるので、低電界下で
も電子放出電流を得ることが可能となる。また電子放出
能が高く、電子放出部の形状依存性が小さいため、安定
な電子放出特性を維持することができる。
【0148】以上のように本発明者らは、少なくともカ
ソード電極と、前記カソード電極に接して配置された電
子放出部と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極
と、アノード電極を備えた電子放出素子において、電子
放出部に炭素(C)を主成分とする材料と導電性あるいは
非導電性材料とで構成された電子放出素子材料を適用し
た結果、従来以上の性能を有する電子放出素子が作製可
能であることを確認した。すなわち、炭素(C)を主成分
とする材料と導電性あるいは非導電性材料とで構成され
ており、炭素を主成分とする材料が導電性あるいは非導
電性材料からなる部材の孔部分に充填されている電子放
出材料、あるいは炭素を主成分とする材料が導電性ある
いは非導電性材料からなる部材の孔部分に充填されてお
り、かつ前記炭素を主成分とする材料が前記導電性ある
いは非導電性材料からなる部材より突起状に突出してい
る電子放出材料を電子放出部の材料として採用すること
により、より効率的な電子放出素子を提供することがで
きる。
【0149】また本発明者らは、少なくともカソード電
極と、前記カソード電極に接して配置された電子放出部
と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極と、アノ
ード電極を備えた電子放出素子において、電子放出部を
炭素(C)を主成分とする材料と導電性あるいは非導電性
材料とで構成し、炭素を主成分とする材料の周囲の少な
くとも一部を導電性あるいは非導電性材料で被覆する構
成にすることにより、従来以上の性能を有する電子放出
素子が作製可能であることを確認した。すなわち、上記
構成により、より効率的な電子放出素子を提供すること
ができる。
【0150】また本発明者らは、少なくともカソード電
極と、前記カソード電極に接して配置された電子放出部
と、前記電子放出部近傍に設置された制御電極と、アノ
ード電極を備えた電子放出素子であって、炭素を主成分
とする材料と導電性あるいは非導電性材料とで構成され
ており、かつ炭素を主成分とする材料からなる部分の先
端が制御電極位置に対して空間的に同位置あるいはアノ
ード電極側に位置することによっても、制御電極の電圧
制御によって効率的に電子を放出する電子放出素子が作
製可能であることを確認した。
【0151】また本発明者らは、構成自体は図20と同じ
であるが、電子放出部15を炭素を主成分とする材料と導
電性あるいは非導電性材料とで構成し、かつ炭素を主成
分とする材料の周囲に絶縁物と導電物の二層構造とした
電子放出素子についても検討した。他の構成についての
説明は、同様のため割愛する。その結果前記電子放出素
子の場合と同様に、制御電極として働く導電層によって
印加される電界によって、カソード電極14上に配置され
た炭素を主成分とする材料端面から効率よく電子が放出
されるので、低電界下でも電子放出電流を得ることが可
能となる。また電子放出能が高く、電子放出部の形状依
存性が小さいため、安定な電子放出特性を維持すること
ができる。以上のように、少なくともカソード電極と、
前記カソード電極に接して配置された電子放出部と、ア
ノード電極を備えた電子放出素子の電子放出部構成が、
炭素を主成分とする材料と導電性あるいは非導電性材料
とで構成されており、かつ炭素を主成分とする材料の周
囲の少なくとも一部を導電性あるいは非導電性材料で被
覆した構成であり、かつ前記導電性あるいは非導電性材
料からなる部分が絶縁物と導電物の二層構造を有してお
り、かつ前記導電物が制御電極であるようにすることに
より、他の構成からなる高効率電子放出素子が作製可能
である。
【0152】また本発明者らは、少なくとも平面基板
と、電子放出素子とを備えた電子放出源であって、入力
信号に応じて個々の電子放出量が制御可能な前記記載の
電子放出素子を平面基板上に複数個配置することによっ
て、トータルとして非常に低電力駆動が可能な二次元の
平面電子放出源が作製可能であることを確認した。
【0153】また本発明者らは、少なくとも封止された
容器と、前記容器の内部に配置された蛍光体層と、前記
蛍光体層に電子線を照射する電子放出源からなる蛍光体
発光装置であって、電子放出源が前記記載の構成である
ことによって、効率的に蛍光体を発光させることが可能
な蛍光体発光装置が作製可能であることを確認した。
【0154】また本発明の構成において、蛍光体発光装
置が画像描画装置であるという好ましい例によれば、低
電力駆動平面ディスプレイとして応用できる。
【0155】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的
に説明する。
【0156】(実施例1)易電子放出物質としてカーボ
ン・ナノ・チューブ含有物を採用し、難電子放出物質で
ある金属円筒部材に充填した場合について以下に説明す
る。
【0157】まず、易電子放出物質として用いるカーボ
ン・ナノ・チュープ含有物は、ヘリウム(He)ガス雰囲気
中で炭素棒電極間で直流アーク放電させることにより形
成する陰極堆積物より採取した。実験条件は、He圧力:
40Torr、炭素棒の純度:99.999%、直流アーク放電電
圧:25V、放電電流:300Aである。カーボン・ナノ・
チューブは通常、上記陰極堆積物内部の柱状組織部に多
数存在していることから、この部分のみを回収し乳鉢で
粉体化したものを易電子放出物質として準備した。なお
この試料におけるカーボン・ナノ・チューブの含有量は
5〜10vol%である。 この試料を難電子放出物質であ
る直径:6mm(肉厚:0.5mm)の銀(Ag)の円筒に充填し、
両端をゴム栓で封じた。そしてカーボン・ナノ・チュー
ブ含有物を充填したAg円筒を直径0.5mmになるまで線引
き加工(延伸加工)した。この段階でカーボン・ナノ・チ
ューブを含む易電子放出物質領域の線径は約0.3mm程度
である。このようにして形成された線状の電子放出材料
を長さ1mmに切断したものを試料23とし、その切断面か
らの電子放出特性を評価した。
【0158】図21のように、この試料23を真空容器24内
のカソード電極として働く試料台25の上に設置し、試料
23の切断面に対向してアノード電極として働く、表面に
蛍光体26を塗布した導電膜27付きガラス板28を設置し
た。直流電源29により上記試料23とアノード電極間に電
圧を印加すると、カーボン・ナノ・チューブ含有物が露
出している試料23端面に対して電界がかかり、カーボン
・ナノ・チューブ含有物からの電子放出が観測された。
その際カーボン・ナノ・チューブ含有物はAgからなる円
筒部材の孔部に充填されているため、放出電子流30はほ
とんど広がりを持たず直進して、蛍光体26を微細な輝点
スポットとして発光させた。この場合、上記試料23端面
と正電圧が印加された導電膜27間の距離を1mmとし、試
料−電極間に2kVの電圧をかけることにより、100μA
以上の電界放出電流を得た。
【0159】本実施例においては、試料23に充填した易
電子放出物質が5〜10vol%のカーボン・ナノ・チュー
ブを含む材料の場合について述べたが、1vol%以上の
カーボン・ナノ・チューブを含めば、ある程度以上の存
在確率でカーボン・ナノ・チューブを試料端面部に存在
させることができるので、電界印加により上記試料23端
面から実用上充分な放出電流量を得られることを確認し
た。
【0160】(実施例2)易電子放出物質として、精製
したカーボン・ナノ・チューブ含有物を構成要素に持つ
材料を採用し、難電子放出物質である金属円筒部材に充
填した場合について以下に説明する。
【0161】まず、易電子放出物質として用いるカーボ
ン・ナノ・チュープ含有物は、上記実施例1と同様、ヘ
リウム(He)ガス雰囲気中で炭素棒電極間で直流アーク放
電させることにより形成する陰極堆積物より採取した。
得られた陰極堆積物内部の柱状組織部を回収し乳鉢で粉
体化したものをエタノールに混合し、さらに超音波を照
射することによって粉砕、分散させた後、遠心分離によ
ってカーボン・ナノ・チューブとそれ以外の成分を分離
させ、前記処理後に得られる上澄み液を回収した。この
溶液を乾燥させて、不純物分を除去したカーボン・ナノ
・チューブ含有物を得た。なおこの精製処理によって、
含有物中のカーボン・ナノ・チューブの含有割合は40〜
60vol%まで増加した。
【0162】この精製カーボン・ナノ・チューブ含有物
を難電子放出物質である直径:6mm(肉厚:0.5mm)のAg
円筒に充填し、両端をゴム栓で封じ、そして円筒の直径
が0.5mmになるまで線引き加工(延伸加工)した。この段
階でカーボン・ナノ・チューブを多く含む易電子放出物
質領域の線径は約0.3mm程度である。このようにして形
成された線状の電子放出材料を長さ1mmに切断したもの
を試料とし、前記と同様、その切断面からの電子放出特
性を評価した。
【0163】その結果、上記実施例の場合と同様、電圧
を印加することでカーボン・ナノ・チューブ含有物から
の電子放出が観測された。この場合もカーボン・ナノ・
チューブ含有物はAgからなる円筒部材の孔部に充填され
ているため、放出電子流はほとんど広がりを持たず直進
して、蛍光体を微細な輝点スポットとして発光させた。
得られた電界放出電流量は、上記試料端面と正電圧が印
加された導電膜間の距離を1mmとし、試料−電極間に2
kVの電圧をかけた時、1mA以上であり、上記実施例1
よりも効率的に電子が電界放出していることが確認され
た。
【0164】本実施例においては、試料に充填した易電
子放出物質が精製したカーボン・ナノ・チューブ含有物
のみの場合について述べたが、含有割合を調整する目的
で精製カーボン・ナノ・チューブ含有物に炭素系物質や
フラーレン粉末、アルミニウム(Al)粉末を混合して、含
有割合を1〜50vol%の範囲にした場合においても同様
の結果が得られた。
【0165】また上記以外にも、混合物として黒鉛、フ
ラーレン、ダイヤモンド・ライク・カーボン、ダイヤモ
ンドなどの炭素系材料やタングステン、モリブデン、ク
ロム、タンタル、ニオブ、バナジウム、ジルコニウム、
チタン、ニッケル、ボロン、窒素、シリコンなどの物質
の炭化物、あるいはそれらの混合物でも、含有カーボン
・ナノ・チューブを変質させることないので、同様の結
果が得られることを本発明者らは確認した。
【0166】また易電子放出物質を充填する円筒部材の
材質についても、本実施例ではAgのみの場合につて述べ
たが、他にも銅、銀、金、白金、アルミニウムなどの炭
化物を形成しない金属物質、またはこれらの混合物を用
いてもよいことを確認した。
【0167】(実施例3)上記実施例2で用いた試料に
おいて、易電子放出物質を被覆している金属部分の一部
を除去した場合について以下に説明する。
【0168】まず、上記実施例2で用いた試料の一方の
端面部分のAgを酸溶液で除去し、Ag円筒部材からカーボ
ン・ナノ・チューブ含有物からなる易電子放出物質部分
を約0.3mm程度突出させたものを試料とし、前記実施例
と同様、その突出部を持つ端面からの電子放出特性を評
価した。
【0169】その結果、上記実施例と同様、正電圧を印
加することでカーボン・ナノ・チューブ含有物からの電
子放出が観測された。得られた電界放出電流量は、上記
突出部先端と正電圧が印加された導電膜間の距離を1mm
とし、試料−電極間に1kVの電圧をかけた時、1mA以
上であり、上記の実施形態よりも効率的に電子が電界放
出していることが確認された。
【0170】本実施例においては、易電子放出物質を被
覆している金属部分を酸溶液で除去したが、機械的に剥
いだ場合や他の方法で除去した場合も同様の結果が得ら
れた。
【0171】(実施例4)上記実施例2で用いた試料を
電子放出部に持つ図18に示したような構成の電子放出素
子を作製した場合について以下に説明する。
【0172】まず、ガラス基材にカソード電極、絶縁体
層、制御電極などをパターニングして形成し、前記カソ
ード電極の上に上記実施例2で用いた試料を設置した。
さらに蛍光体が表面に塗布されたアノード電極を配置
し、制御電極に正電圧を印加することで試料から電子を
引き出した後、アノード電極に印加された加速電圧によ
り電子を蛍光体に照射して発光させることで評価した。
【0173】その結果、上記構成において制御電極に印
加する電圧を変化させることでカーボン・ナノ・チュー
ブ含有物から放出される電子放出量が変化し、蛍光体発
光の様子を制御できることが確認された。
【0174】本実施例においては、易電子放出物質が金
属円筒に充填されている場合の結果であるが、易電子放
出物質を円筒部材から突出させた場合やさらに易電子放
出物質の突出部先端が制御電極位置に対して空間的にア
ノード電極側に位置した場合も同様に、電子放出素子と
して機能することを本発明者らは確認した。
【0175】(実施例5)上記実施例4で用いた電子放
出素子を複数個ガラス基材上に配置した構成の電子放出
源を作製した場合について以下に説明する。
【0176】上記と同様の方法で、カソード電極の上に
上記実施例2で用いた試料を設置した電子放出素子をガ
ラス基板上に複数個配置し、個々の電子放出素子に対し
て独立に制御電極に正電圧を印加した。
【0177】その結果、上記構成において個々の制御電
極に印加する電圧を変化させることで、それぞれに対応
する電子放出素子の電子放出量が制御できることが確認
された。
【0178】さらにアノード電極に蛍光体を塗布して個
々の電子放出素子から放出させた電子によって蛍光体を
発光させた場合、制御電極に印加する電圧を制御するこ
とで二次元的に蛍光体発光の様子が制御できることが確
認された。すなわち、制御電極に印加する電圧を画像信
号とすることで上記構成を用いた電子放出源を画像描画
装置の電子放出源として用いることができることを本発
明者らは確認した。
【0179】(実施例6)易電子放出物質として繊維状
グラファイトを採用し、難電子放出物質である金属円筒
部材に充填した場合について以下に説明する。
【0180】まず、易電子放出物質として用いる繊維状
グラファイト粉体を準備した。この物質を難電子放出物
質である直径:6mm(肉厚:0.5mm)のAg円筒に充填し、
両端をゴム栓で封じた。そして繊維状グラファイト粉体
を充填したAg円筒を直径0.5mmになるまで線引き加工(延
伸加工)した。この段階で繊維状グラファイトを含む易
電子放出物質領域の線径は約0.3mm程度である。このよ
うにして形成された線状の電子放出材料を長さ1mmに切
断したものを試料とし、その切断面からの電子放出特性
を評価した。
【0181】その結果、上記実施例と同様、電圧を印加
することで繊維状グラファイトからの電子放出が観測さ
れた。得られた電界放出電流量は、上記試料端面と正電
圧が印加された導電膜間の距離を1mmとし、試料−電極
間に4kVの電圧をかけた時、1mA程度であった。
【0182】本実施例においては、試料に充填した易電
子放出物質が繊維状グラファイトの場合について述べた
が、他の易電子放出物質となりうる材料、例えば、カー
ボン・ファイバー、粉体状の低仕事関数金属/酸化物、
窒化ホウ素などを充填した場合においても同様の結果が
得られた。
【0183】(実施例7)上記実施例2で用いた試料の
周りにさらに絶縁物層及び導電物層を形成した試料を電
子放出部とする、図20に示したような構成の電子放出素
子を作製した場合について以下に説明する。
【0184】まず、ガラス基材にカソード電極をパター
ニングして形成し、前記カソード電極の上に上記実施例
2で用いた試料の周りにさらに絶縁物層及び導電物層を
形成した試料を設置した。本実施例においては、上記試
料の側壁に化学気相蒸着法あるいはスパッタ蒸着法を用
いて5〜10μm程度の厚さの絶縁体層(二酸化シリコン
層)を形成した後、さらに真空蒸着法で導電物層(アルミ
ニウム層)を形成した。さらに蛍光体が表面に塗布され
たアノード電極を配置し、制御電極に正電圧を印加する
ことで試料から電子を引き出した後、アノード電極に印
加された加速電圧により電子を蛍光体に照射して発光さ
せることで評価した。
【0185】その結果、上記構成において制御電極とし
て作用する試料表面の導電物層に正電圧を印加すること
で試料中心部に存在するカーボン・ナノ・チューブ含有
物から電子が放出されることが確認された。またその電
圧値を変化させることで、電子放出量が変化し、蛍光体
発光の様子を制御できることが確認された。
【0186】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る電子放出材
料によれば、単独では使用困難であった炭素系材料など
易電子放出物質を難電子放出物質からなる部材の孔部分
に充填することにより、安定性に高くかつ高効率に電子
を放出することが可能な電子放出材料を容易に形成する
ことが可能となる。
【0187】さらに易電子放出物質からなる部分を難電
子放出物質からなる部材より突起状に突出させることに
より、より効率的に電子放出が可能となる。
【0188】また、難電子放出物質からなる部材に存在
する孔が貫通孔であることより、より簡便な手法で易電
子放出物質を部材に充填することが可能となる。
【0189】また、難電子放出物質からなる部材に存在
する孔が単一孔あるいは複数孔であることより、電子放
出の領域を自由に設計することができる。
【0190】また、難電子放出物質からなる部材の形状
が円筒形であることより、安価にかつ生産性高く高効率
電子放出材料を得ることが可能となる。
【0191】また、易電子放出物質からなる部分の形状
が円柱形、円錐台あるいは円錐形であることより、安価
にかつ生産性高く高効率電子放出材料を得ることが可能
となる。
【0192】また、易電子放出物質が炭素(C)を主成分
とする材料を含むことより、電子放出能力の高い易電子
放出部を形成することが可能となる。とりわけ、炭素を
主成分とする材料が少なくとも炭素の六員環構造からな
るグラフェン構造を構成要素に持つことより、その電子
放出能は著しく高くなる。また、炭素の六員環構造から
なるグラフェン構造を構成要素に持つ材料が少なくとも
カーボン・ナノ・チューブを含むことより、さらにその
電子放出能力を高めることができる。その効果が顕著に
現れるのは、カーボン・ナノ・チューブ含有量が1vol
%以上の場合である。
【0193】また、易電子放出物質が、カーボン・ナノ
・チューブと、黒鉛、フラーレン、ダイヤモンドおよび
ダイヤモンド・ライク・カーボンから選ばれる少なくと
も1つの炭素系物質とを、あるいはカーボン・ナノ・チ
ューブと、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム
(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、ジ
ルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ホウ素
(B)およびシリコン(Si)から選ばれる少なくとも1つの
炭化物とを構成要素に有することより、非常に安定でか
つ電子放出能の非常に易電子放出物質部をる提供するこ
とが可能となる。
【0194】また、難電子放出物質が金属、さらにその
金属が例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、アル
ミニウム(Al)などの炭化物を形成しない金属、あるいは
前記金属の合金により構成することにより、易電子放出
物質を改質することなく容易に電子放出能の高い状態を
維持することが可能となる。
【0195】また、繊維構造物質を部材の孔部分に充填
することにより、安定性に高くかつ高効率に電子を放出
することが可能な電子放出材料を容易に形成することが
できる。
【0196】さらに、繊維構造物質からなる部分を部材
より突起状に突出させることにより、より効率的に電子
放出が可能となる。
【0197】また、部材に存在する孔が貫通孔であるこ
とより、より簡便な手法で繊維構造物質を部材に充填す
ることが可能となる。
【0198】また、部材に存在する孔が単一孔あるいは
複数孔であることより、電子放出の領域を自由に設計す
ることができる。
【0199】また、部材の形状が円筒形であることよ
り、安価にかつ生産性高く高効率電子放出材料を得るこ
とが可能となる。
【0200】また、繊維構造物質からなる部分の形状が
円柱形、円錐台あるいは円錐形であることより、安価に
かつ生産性高く高効率電子放出材料を得ることが可能と
なる。
【0201】また、繊維構造物質が炭素(C)を主成分と
する材料を含むことより、電子放出能力の高い易電子放
出部を形成することが可能となる。とりわけ、炭素を主
成分とする材料が少なくとも炭素の六員環構造からなる
グラフェン構造を構成要素に持つことより、その電子放
出能は著しく高くなる。また、炭素の六員環構造からな
るグラフェン構造を構成要素に持つ材料が少なくともカ
ーボン・ナノ・チューブを含むことより、さらにその電
子放出能力を高めることができる。その効果が顕著に現
れるのは、カーボン・ナノ・チューブ含有量が1vol%
以上の場合である。
【0202】また、繊維構造物質が、カーボン・ナノ・
チューブと、黒鉛、フラーレン、ダイヤモンドおよびダ
イヤモンド・ライク・カーボンから選ばれる少なくとも
1つの炭素系物質とを、あるいはカーボン・ナノ・チュ
ーブと、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(C
r)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、ジル
コニウム(Zr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ホウ素(B)
およびシリコン(Si)から選ばれる少なくとも1つの炭化
物とを構成要素に有することより、非常に安定でかつ電
子放出能の非常に電子放出物質部を提供することが可能
となる。
【0203】また、非繊維構造物質が金属、さらにその
金属が例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、アル
ミニウム(Al)などの炭化物を形成しない金属、あるいは
前記金属の合金により構成することにより、繊維構造物
質を改質することなく容易に電子放出能の高い状態を維
持することが可能となる。
【0204】また、炭素(C)を主成分とする材料を部材
の孔部分に充填することにより、安定性に高くかつ高効
率に電子を放出することが可能な電子放出材料を容易に
形成することができる。
【0205】また、炭素を主成分とする材料からなる部
分を部材より突起状に突出させることにより、より効率
的に電子放出が可能となる。
【0206】また、部材に存在する孔が貫通孔であるこ
とより、より簡便な手法で炭素を主成分とする材料を部
材に充填することが可能となる。
【0207】また、部材に存在する孔が単一孔あるいは
複数孔であることより、電子放出の領域を自由に設計す
ることができる。
【0208】また、部材の形状が円筒形であることよ
り、安価にかつ生産性高く高効率電子放出材料を得るこ
とが可能となる。
【0209】また、炭素を主成分とする材料からなる部
分の形状が円柱形、円錐台あるいは円錐形であることよ
り、安価にかつ生産性高く高効率電子放出材料を得るこ
とが可能となる。とりわけ、炭素を主成分とする材料が
少なくとも炭素の六員環構造からなるグラフェン構造を
構成要素に持つことより、その電子放出能は著しく高く
なる。また、炭素の六員環構造からなるグラフェン構造
を構成要素に持つ材料が少なくともカーボン・ナノ・チ
ューブを含むことより、さらにその電子放出能力を高め
ることができる。その効果が顕著に現れるのは、カーボ
ン・ナノ・チューブ含有量が1vol%以上の場合であ
る。
【0210】また、炭素を主成分とする材料が、カーボ
ン・ナノ・チューブと、黒鉛、フラーレン、ダイヤモン
ドおよびダイヤモンド・ライク・カーボンから選ばれる
少なくとも1つの炭素系物質とを、あるいはカーボン・
ナノ・チューブと、タングステン(W)、モリブデン(M
o)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、バナジウ
ム(V)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ニッケル(N
i)、ホウ素(B)およびシリコン(Si)から選ばれる物質の
炭化物とを、構成要素に有することより、非常に安定で
かつ電子放出能の非常に電子放出物質部を提供すること
が可能となる。
【0211】また、部材材料が金属、さらにその金属が
例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウ
ム(Al)などの炭化物を形成しない金属、あるいは前記金
属の合金により構成することにより、炭素を主成分とす
る材料を改質することなく容易に電子放出能の高い状態
を維持することが可能となる。
【0212】また、難電子放出物質の内部に易電子放出
物質を充填した後、全体を延伸加工することにより、安
価にかつ効率的に電子を放出する電子放出材料を製造す
ることが可能となる。
【0213】また、易電子放出物質の周辺を被覆した難
電子放出物質部材の少なくとも一部を除去することによ
り、より効率的に電子を放出することが可能な電子放出
材料を製造することができる。
【0214】また、非繊維構造物質の内部に繊維構造物
質を充填した後、全体を延伸加工することにより、安価
にかつ効率的に電子を放出する電子放出材料を製造する
ことが可能となる。
【0215】また、繊維構造物質の周辺を被覆した非繊
維構造物質部材の少なくとも一部を除去することによ
り、より効率的に電子を放出することが可能な電子放出
材料を製造することができる。
【0216】また、導電性または非導電性材料の内部に
炭素(C)を主成分とする材料を充填した後、全体を延伸
加工することにより、安価にかつ効率的に電子を放出す
る電子放出材料を製造することが可能となる。
【0217】また、炭素(C)を主成分とする材料の周辺
を被覆した導電性または非導電性材料部材の少なくとも
一部を除去することにより、より効率的に電子を放出す
ることが可能な電子放出材料を製造することができる。
【0218】本発明によれば、より効率的な電子放出素
子を提供することができる。
【0219】特に、易電子放出物質の周囲の少なくとも
一部を難電子放出物質で被覆した構成であることより、
さらに効率的な電子放出素子を提供することができる。
【0220】また、易電子放出物質からなる部分の先端
が制御電極位置に対して空間的に同位置あるいはアノー
ド電極側に位置することにより、さらに効率的な電子放
出素子を提供することができる。
【0221】また、易電子放出物質の周囲の少なくとも
一部を難電子放出物質で被覆した構成であり、難電子放
出物質からなる部分が絶縁物と導電物の二層構造を有し
ており、かつ前記導電物が制御電極であることにより、
より効率的な電子放出素子を提供することができる。
【0222】また、電子放出部の易電子放出物質が難電
子放出物質の孔部分に充填されている、あるいは電子放
出部の易電子放出物質が難電子放出物質の孔部分に充填
されており、かつ前記易電子放出物質が前記難電子放出
物質より突起状に突出していることにより、安定性の高
い電子放出素子を提供することができる。
【0223】また、繊維構造物質が非繊維構造物質から
なる部材の孔部分に充填されている電子放出材料、ある
いは繊維構造物質が非繊維構造物質からなる部材の孔部
分に充填されており、かつ前記繊維構造物質が前記非繊
維構造物質からなる部材より突起状に突出している電子
放出材料を電子放出部の材料として採用することによ
り、さらに効率的な電子放出素子を提供することができ
る。
【0224】また、繊維構造物質の周囲の少なくとも一
部を非繊維構造物質で被覆した構成であることより、さ
らに効率的な電子放出素子を提供することができる。
【0225】また、繊維構造物質からなる部分の先端が
制御電極位置に対して空間的に同位置あるいはアノード
電極側に位置することにより、さらに効率的な電子放出
素子を提供することができる。
【0226】また、繊維構造物質の周囲の少なくとも一
部を非繊維構造物質で被覆した構成であり、前記非繊維
構造物質からなる部分が絶縁物と導電物の二層構造を有
しており、かつ前記導電物が制御電極であることによ
り、さらに効率的な電子放出素子を提供することができ
る。
【0227】また、炭素を主成分とする材料が導電性あ
るいは非導電性材料からなる部材の孔部分に充填されて
いる電子放出材料、あるいは炭素を主成分とする材料が
導電性または非導電性材料からなる部材の孔部分に充填
されており、かつ前記炭素を主成分とする材料が前記導
電性または非導電性材料からなる部材より突起状に突出
している電子放出材料を電子放出部の材料として採用す
ることにより、さらに効率的な電子放出素子を提供する
ことができる。
【0228】また、炭素を主成分とする材料の周囲の少
なくとも一部を導電性あるいは非導電性材料で被覆した
構成であることより、さらに効率的な電子放出素子を提
供することができる。
【0229】また、炭素を主成分とする材料からなる部
分の先端が制御電極位置に対して空間的に同位置あるい
はアノード電極側に位置することにより、さらに効率的
な電子放出素子を提供することができる。
【0230】また、炭素を主成分とする材料の周囲の少
なくとも一部を導電性あるいは非導電性材料で被覆した
構成であり、かつ前記導電性あるいは非導電性材料から
なる部分が絶縁物と導電物の二層構造を有しており、か
つ前記導電物が制御電極であることにより、さらに効率
的な電子放出素子を提供することができる。
【0231】本発明によれば、上記電子放出素子を、電
子放出量が個別に制御できるように、平面基板上に複数
個配列することにより、効率的な電子放出源を提供する
ことができる。また、この電子放出源を利用することに
より、効率的な蛍光体発光装置、特に低電力駆動が可能
な画像描画装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る電子放出材料の基本的な構成の
一例を示す概念的模式図である。
【図2】 本発明に係る電子放出材料の他の基本的な構
成の一例を示す模式的平面図である。
【図3】 本発明に係る電子放出材料の他の基本的な構
成の一例を示す模式的平面図である。
【図4】 本発明に係る電子放出材料の他の基本的な構
成の一例を示す模式的平面図である。
【図5】 本発明に係る電子放出材料の他の基本的な構
成の一例を示す模式的平面図である。
【図6】 本発明に係る他の電子放出材料の基本的な構
成の一例を示す模式的平面図である。
【図7】 本発明に係る他の電子放出材料の他の基本的
な構成の一例を示す模式的平面図である。
【図8】 本発明に係る他の電子放出材料の他の基本的
な構成の一例を示す模式的平面図である。
【図9】 本発明に係る他の電子放出材料の他の基本的
な構成の一例を示す模式的平面図である。
【図10】 本発明に係る他の電子放出材料の他の基本
的な構成の一例を示す模式的平面図である。
【図11】 本発明に係る他の電子放出材料の他の基本
的な構成の一例を示す模式的平面図である。
【図12】 本発明に係る他の電子放出材料の他の基本
的な構成の一例を示す模式的平面図である。
【図13】 本発明に係る他の電子放出材料の他の基本
的な構成の一例を示す模式的平面図である。
【図14】 本発明に係る他の電子放出材料の他の基本
的な構成の一例を示す模式的平面図である。
【図15】 本発明に係る他の電子放出材料の他の基本
的な構成の一例を示す模式的平面図である。
【図16】 本発明に係る電子放出材料の製造方法の模
式図である。
【図17】 本発明に係る電子放出材料の製造方法の模
式図である。
【図18】 本発明に係る電子放出素子の基本的な構成
の一例を示す模式図である。
【図19】 本発明に係る電子放出素子の他の基本的な
構成の一例を示す模式図である。
【図20】 本発明に係る電子放出素子の他の基本的な
構成の一例を示す模式図である。
【図21】 本発明に係る電子放出材料の特性評価系の
模式図である。
【図22】 スピント型の電子放出素子の基本的な構成
の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 易電子放出物質 2 難電子放出物質 3 繊維構造物質 4 非繊維構造物質 5 炭素を主成分とする材料 6 導電性あるいは非導電性材料 7 パイプ状難電子放出物質部材 8 延伸装置 9 電子放出材料 10 パイプ状非繊維構造物質部材 11 電子放出材料 12 繊維状構成要素 13 基材 14 カソード電極 15 電子放出部 16 制御電極 17 絶縁体層 18 アノード電極 19 易電子放出物質 20 難電子放出物質からなる部材 21 絶縁物層 22 導電物層 23 試料 24 真空容器 25 試料台 26 蛍光体 27 導電膜 28 ガラス板 29 直流電源 30 放出電子流
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 関口 友宏 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 黒川 英雄 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 古賀 啓介 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 白鳥 哲也 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (72)発明者 川瀬 透 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開2000−208026(JP,A) 特開 平5−211030(JP,A) 特開 平10−12124(JP,A) 特開 平4−233127(JP,A) 米国特許5697827(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 9/02 - 9/04 H01J 1/304 JICSTファイル(JOIS)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カソード電極と、前記カソード電極に対
    向して配置されたアノード電極と、前記カソード電極上
    に配置された電子放出部材とを備える電子放出素子の製
    造方法であって、 難電子放出物質からなる略円筒状体に、前記難電子放出
    物質とは異なる易電子放出物質を充填したのち、前記略
    円筒状体を延伸して前記略円筒状体の径を小さくする工
    程、および 前記径を小さくした略円筒状体を切断することによっ
    て、貫通孔を有する難電子放出物質と、前記貫通孔に充
    填され前記難電子放出物質よりも電子を放出しやすい易
    電子放出物質とを備える電子放出部材を形成する工程を
    含むことを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記易電子放出物質がカーボン・ナノ・
    チューブを含む請求項1に記載の電子放出素子の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記電子放出部材を形成する工程のの
    ち、前記難電子放出物質の端部を除去することによっ
    て、前記電子放出部材に、前記易電子放出物質からなる
    凸部を形成する工程をさらに含む請求項1に記載の電子
    放出素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記略円筒状体を延伸することにより前
    記易電子放出物質を略一方向に配列させる、請求項1に
    記載の電子放出素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記易電子放出物質がカーボン・ナノ・
    チューブを含む、請求項4に記載の電子放出素子の製造
    方法。
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