JP3828270B2 - 電子放出装置 - Google Patents

電子放出装置

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ブラウン管に用いられる電子銃などの、真空配置された中で電子を放出する電子放出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子放出装置としては、例えばテレビジョンに用いられる受像管の構成要素としての電子銃がある。この電子銃(カソード)の基本的な構成は、図2に示すように、先端部が閉じた構成の陰極筒201の先端に、電子放出層202が形成されている。また、陰極筒201の内部にはヒータ203が備えられている。
この陰極筒201は、マグネシウムや珪素などの還元剤をドープした高純度のNiから構成し、厚さは0.1mm程度である。また、電子放出層202は、酸化バリウム・酸化カルシウム・酸化ストロンチウムのいわゆる三元酸化物から構成するようにしている。
【0003】
そして、電子放出層202は、ヒータ203により800℃程度に加熱されると、主にバリウムが還元されて遊離し、この遊離されたバリウムが電子放出層202表面に向かい、これが電子放出を容易にしている。
放出された電子ビームは、第1グリッド204で集められ、第2グリッド205,第2グリッド206,ホーカス電極である第4グリッド207,第5グリッド208を通過して蛍光面209に収束される(図2(b))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、そのバリウムは使用中にガスと反応して消耗するので、常に電子放出層202内部から補給されるように作られている。しかし、多くの電子を放出させるために高電流を流そうとしても、そのバリウムの補給が十分にはできない。加えて、電子放出のために加熱されるが、電子放出層202は熱で劣化するという問題があった。
【0005】
この発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、耐性がありより多くの電子を放出させることができるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の電子放出装置は、表面に複数の凹部を備えかつその凹部に円筒状のグラファイトからなるカーボンナノチューブの集合体が詰められた電子放出部を備えた陰極と、電子放出部の電子放出側に対向配置されてその先端部より電子を引き出すための電子引き出し電極とを備えるようにした。
このように構成したので、電子放出部と電子引き出し電極との間に電位を印加すると、電子放出部の凹部に詰め込まれたカーボンナノチューブの先端に高電界が集中して電子が引き出される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下この発明の実施の形態を図を参照して説明する。
図1は、この発明の実施の形態における電子放出装置の要部構成を示す構成図である。ここでは、電子銃を例に取り説明する。この電子銃(電子放出装置)は、基台101上にxy方向に移動可能な可動ステージ102を備え、その可動ステージ102上に先端部に電子放出部103aを備えた陰極103を配置している。また、陰極103の先端部延長上に、基台101に固定された状態で引き出し電極104が配置されている。なお、この引き出し電極104には、アパーチャ104aが形成されている。
つまり、この実施の形態では、電子放出部103aと引き出し電極104とによる電界放出型冷陰極電子源で電子銃を構成するようにした。また、可動ステージ102を移動させて、アパーチャ104aに対する陰極103の先端部の位置と向きを制御することで、電子引き出し効率の最適化を図ることができる。
【0008】
そして、この実施の形態においては、図1(b),(c)に示すように、電子放出部103aに複数の凹部111を備え、そこにカーボンナノチューブの集合体を備えるようにした。なお、図1(b)は平面図、図1(c)はそのAA’断面を示している。
より詳しく説明すれば、カーボンナノチューブの集合体からなる長さ数10μmの針形状の柱状グラファイト複数が、その長手方向をほぼ同一方向に向けて束ねられた状態に、凹部111に詰め込まれている。この電子放出部103aは、厚さ5mm程度で5mmφ程度に形成され、また、穴径0.5mm程度とした凹部111を複数備えるようにした。また、この電子放出部103aの材料としては、例えばニッケル合金,ステンレス鋼,426合金などを用いるようにすればよい。
【0009】
そして、その凹部111には、カーボンナノチューブの集合体からなる柱状グラファイトの粉体を、5〜6kgw程度の圧力で押し詰めればよい。例えば、柱状グラファイトの粉体を、電子放出部103aの凹部111形成面にかぶせるように載せて、その上よりローラーなどで圧力を加えるようにして形成すればよい。また、ドクターブレード法などに刷り込むようにしてもよい。
ここで、カーボンナノチューブについて説明すると、これは、例えば図1(d)に示すように、完全にグラファイト化して筒状をなし、その直径は4〜50nm程度であり、その長さは1μmオーダである。そして、図1(e)に示すように、その先端部は五員環が入ることにより閉じている。なお、おれることで先端が閉じていない場合もある。
【0010】
このカーボンナノチューブは、ヘリウムガス中で2本の炭素電極を1〜2mm程度離した状態で直流アーク放電を起こしたときに、陽極側の炭素が蒸発して陰極側の炭素電極先端に凝集した堆積物中に形成される。
すなわち、炭素電極間のギャップを1mm程度に保った状態で、ヘリウム中で安定なアーク放電を持続させると、陽極の炭素電極の直径とほぼ同じ径をもつ円柱状の堆積物が、陰極先端に形成される。
その円柱状の堆積物は、外側の固い殻と、その内側のもろくて黒い芯との2つの領域から構成されている。そして、内側の芯は、堆積物柱の長さ方向にのびた繊維状の組織をもっている。その繊維状の組織が、上述した柱状グラファイトであり、堆積物柱を切り出すことなどにより、柱状グラファイトを得ることができる。なお、外側の固い殻は、グラファイトの多結晶体である。
【0011】
そして、その柱状グラファイトにおいて、カーボンナノチューブは、炭素の多面体微粒子(ナノポリヘドロン:nanopolyhedoron)とともに、複数が集合している。そして、図1(f)に示すように、柱状グラファイト131は、カーボンナノチューブ132が、ほぼ同一方向を向いて集合した構造体である。なお、この図1(e)は、柱状グラファイトを途中で切った断面をみる斜視図である。
なお、カーボンナノチューブは、図1(d),(e)では、グラファイトの単層が円筒状に閉じた形状として模式的に示した。しかし、これに限るものではなく、複数のグラファイトの層が入れ子構造的に積層し、それぞれのグラファイト層が円筒状に閉じた同軸多層構造となっている形状もある。そして、それらの中心部分は、空洞となっている。
【0012】
以上示したように、この実施の形態においては、カーボンナノチューブを複数備えた凹部111に詰めた構成の電子放出部103aと引き出し電極104とによる電界放出型冷陰極電子源で電子銃を構成するようにした。この結果、この実施の形態によれば、電流密度(エミッション量)として10A/cm2 以上の性能が得られた。また、理論的には、400A/cm2 の性能が得られる。
また、カーノンナノチューブは、電子放出部103aの凹部111に詰め込まれることで固定され、バインダなどで固定されているわけではない。このため、カーボンナノチューブがバインダなどにより覆われることがなく、カーボンナノチューブ先端部よりエミッションがでやすい状態となっている。
【0013】
ところで、上述では、電子銃を例に取り説明したが、電子放出装置の適用対象としてはこれに限るものではない。例えば、蛍光表示装置の電子放出源として用いるようにしてもよいことはいうまでもない。
この場合、蛍光表示装置を構成する真空容器内に電子放出部を配置し、それに対向して蛍光体層が形成された陽極をその真空容器内に配置し、電子放出部から放出された電子を蛍光体層に衝撃させる構成とすればよい。ここで、陽極を引き出し電極として用いるようにしてもよく、また、蛍光体層と電子放出部との間に引出し電極を備える構成としてもよい。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明では、表面に複数の凹部を備えかつその凹部に円筒状のグラファイトからなるカーボンナノチューブの集合体が詰められた電子放出部と、電子放出部の電子放出側に対向配置されてその先端部より電子を引き出すための電子引き出し電極とを備えるようにした。
このように構成したので、電子放出部と電子引き出し電極との間に電位を印加すると、電子放出部の凹部に詰め込まれたカーボンナノチューブの先端に高電界が集中して電子が引き出される。
そして、この発明によれば、従来のように使用中にガスと反応して熱電子発生源が消耗するなどのことが無く、より長期に安定してより多くの電子を放出させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態における電子放出装置の要部構成を示す構成図である。
【図2】 従来の電子放出装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
101…基台、102…可動ステージ、103…陰極、103a…電子放出部、104…引き出し電極、111…凹部、104a…アパーチャ、131…柱状グラファイト、132…カーボンナノチューブ。

Claims (2)

  1. 電子放出側の表面に複数の凹部を備えかつその凹部に円筒状のグラファイトからなるカーボンナノチューブの集合体が詰められた電子放出部を備えた陰極と、
    前記電子放出部の電子放出側に対向配置されてその先端部より電子を引き出すための電子引き出し電極と
    を備えたことを特徴とする電子放出装置。
  2. 請求項1記載の電子放出装置において、
    前記電子放出部は、前記電子引き出し電極との相対位置を変更できる移動可能な可動ステージ上に固定されていることを特徴とする電子放出装置。
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