JP3480339B2 - 電磁誘導加熱用複合材及びその製造方法 - Google Patents

電磁誘導加熱用複合材及びその製造方法

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JP3480339B2
JP3480339B2 JP31813998A JP31813998A JP3480339B2 JP 3480339 B2 JP3480339 B2 JP 3480339B2 JP 31813998 A JP31813998 A JP 31813998A JP 31813998 A JP31813998 A JP 31813998A JP 3480339 B2 JP3480339 B2 JP 3480339B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁誘導加熱用複
合材に関し、さらに詳しくは、アルミニウム基材などの
非磁性基材上に、高周波磁界により発生する誘導電流
(過電流)により発熱体となる磁性メッキ層が形成され
た高出力が可能な電磁誘導加熱用複合材、及びその製造
方法に関する。また、本発明は、このような高出力が可
能な電磁誘導加熱用複合材からなるIH(電磁誘導加
熱)ジャー炊飯器内釜などの電磁誘導加熱用調理器具に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電気炊飯器は、ヒーターの熱を内
釜に伝えて、中の米に熱を加えていたが、最近では、ヒ
ーターを使用せずに内釜自体を発熱させる電磁誘導加熱
方式のIHジャー炊飯器が普及してきている。発熱体と
なる内釜は、一般に、アルミニウム層(内側)とステン
レス層(外側)の二重構造となっている。このIHジャ
ー炊飯器では、内釜の下にコイルが設けられている。こ
のコイルに、周波数が20〜40KHzになるように、
インバーター回路中でスイッチのON/OFFを繰り返
して電流を断続的に流すと、スイッチのON時にはコイ
ルの周囲に磁界が発生し、OFF時には消失するため、
コイルの回りに磁力線が断続的に発生する。この磁力線
の数(磁束)の変化に誘起されて、渦電流がステンレス
層に発生する。ステンレスは、電気抵抗値が大きいた
め、電気エネルギーのほとんどは熱に変換される。この
熱は、熱伝導の良いアルミニウム層を伝わって、内釜の
全体に伝えられる。
【0003】従来、IHジャー炊飯器内釜や電磁調理器
用鍋などの電磁誘導加熱用器具(電磁加熱調理器具)
は、発熱を受け持つ鉄、ステンレスなどの磁性金属板と
熱伝導を受け持つアルミニウム板とからなる複合材を、
所定形状に打ち抜き加工した後、アルミニウム板を内側
として深絞り等のプレス成形加工をすることにより製造
されている。アルミニウム板の外表面側には、炊飯等の
こびりつきを防止するために、通常、フッ素樹脂被覆層
が設けられている。複合材としては、一般に、ロール圧
延によって磁性金属板とアルミニウム板とを複合化(ク
ラッド化)したものが用いられている。
【0004】しかしながら、このようなクラッド法によ
る複合材は、(1)アルミニウム板を圧縮して接合する
ため、板厚のバラツキが大きく、このため、プレス成形
加工時に割れやしわが発生しやすい、(2)複合材を所
定形状に打ち抜き加工する際に多量に発生する打ち抜き
しろも複合材であって、金属または合金の単独材ではな
いため、リサイクルが不可能である、(3)磁性金属板
を発熱に必要な部分にのみ配置した複合材の製造が困難
である、といった問題を抱えていた。
【0005】これに対して、最近、アルミニウム基材な
どの非磁性基材の片面に、メッキ法により磁性体層を形
成した電磁誘導加熱用複合材が提案されている。例え
ば、特開平8−191758号公報には、アルミニウ
ムまたはアルミニウム合金からなるアルミニウム基材
と、前記基材の片面の少なくとも一部に形成された亜
鉛または亜鉛合金からなる中間層と、前記中間層の上
に形成された高周波の磁束により発生する渦電流が流れ
ることにより発熱体となる導電層とを備えた電磁加熱用
金属板が開示されている。この導電層は、ニッケル、ニ
ッケル合金、鉄、鉄合金、コバルト、コバルト合金など
の磁性材料から形成され、より具体的には、これらの金
属イオンを含有する溶液から電気化学的転化法(即ち、
電気メッキ、化学メッキ、無電解メッキなどのメッキ
法)により形成されている。中間層は、メッキ膜の密着
性を高めるために、アルミニウム基材上に形成されてい
る。特開平9−157886号公報には、少なくともニ
ッケルと鉄とを有し、膜厚を10〜100μmとした電
磁誘導加熱用合金メッキ膜を、非磁性材料などのメッキ
可能な基材上に形成した電磁誘導加熱用合金メッキ材が
開示されている。
【0006】前述の如き非磁性基材の片面に磁性メッキ
層が形成された電磁誘導加熱用複合材は、(1)圧縮に
よるクラッド化工程を必要としないため、アルミニウム
基材のプレス成形加工時に割れやしわが発生しない、
(2)アルミニウム基材を単独で打ち抜き加工するた
め、打ち抜きしろの再利用が可能である、(3)アルミ
ニウム基材を所望の形状にプレス成形加工した後、必要
な部分に磁性メッキ層を形成することができる、(4)
磁性メッキ層を形成する金属や合金の種類、合金の組成
などを選択することにより、透磁率や導電率を高めるこ
とができる、といった利点がある。
【0007】一方、IHジャー炊飯器は、内釜の容量が
大きいため、大きな発熱量を必要としている。ところ
が、本発明者らが検討した結果、非磁性基材の片面に磁
性メッキ層が形成された電磁誘導加熱用複合材は、電磁
誘導加熱の出力を十分に高めることが困難であることが
判明した。本発明者らの実験結果によれば、例えば、ア
ルミニウム釜の外側底面にNi−Fe合金(Fe=20
%)メッキ層を形成した内釜は、メッキ層の厚み150
μmで900W程度の出力しか得られないことがわかっ
た。IHジャー炊飯器では、1200W以上の出力が必
要とされる。出力が小さな内釜を使用すると、炊飯時、
十分な火力が得られないため、米が生煮えとなったり、
飯に芯が残ったりする。磁性メッキ層の膜厚を大きくす
ると、出力を高めることができるものの、高価なNiな
どの金属の使用量が増大するため、材料費が高くなる。
膜厚を大きくするために、メッキ時間を長くすると、生
産性が低下する。膜厚を大きくするために、電流量を多
くするのは、メッキ条件が厳しくなり、限界がある。
【0008】前記先行文献には、種々の組成の磁性メッ
キ層が開示され、また、試験片を用いた電磁誘導加熱で
の出力実験では、比較的高出力が得られた実験例も示さ
れているが、従来の磁性メッキ層を有する電磁誘導加熱
用複合材を実際に大容量のIHジャー炊飯器内釜に適用
した場合、十分な高出力を得ることが困難である。した
がって、磁性メッキ層を有する電磁誘導加熱用複合材を
実用化するには、電磁誘導加熱での高出力化を図ること
が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、非磁
性基材の片面に磁性メッキ層を有し、高出力が可能な電
磁誘導加熱用複合材及びその製造方法を提供することに
ある。本発明の他の目的は、高出力が可能な電磁誘導加
熱用複合材からなる電磁誘導加熱用調理器具を提供する
ことにある。本発明者らは、前記従来技術の問題点を克
服するために鋭意研究した結果、非磁性基材の片面に磁
性メッキ層が形成された電磁誘導加熱用複合材を高温条
件下で熱処理することにより、高出力化が可能となり、
磁性メッキ層の膜厚をそれ程大きくすることなく、大き
な発熱量を達成できることを見いだした。
【0010】熱処理温度は、通常、270℃以上、好ま
しくは300℃以上である。熱処理時間は、通常、5分
間以上、好ましくは10分間以上であり、熱処理温度が
高いほど短時間でよい。このような高温条件下での熱処
理により、電磁誘導加熱での出力が増大する機構は、現
段階では必ずしも明確ではないが、本発明者らは、常法
により作製された磁性メッキ層には内部歪みが存在して
おり、この内部歪みが熱処理により緩和されたためであ
ると推定している。熱処理により磁性メッキ層の内部歪
みが緩和されると、電磁誘導加熱での発熱量を決定する
パラメーターである透磁率や導電率が向上し、それによ
って、出力が大きくなるものと推定される。
【0011】実際に、熱処理により、磁性メッキ層の内
部歪みが緩和されていることは、磁性メッキ層のX線回
折ピークの半価幅が小さくなることによって確認するこ
とができる。そして、本発明者らは、磁性メッキ層の
[111]面でのX線回折ピークの半価幅が0.40以
下、好ましくは0.35以下となれば、膜厚を比較的薄
くしても、十分な高出力の得られることを見いだした。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったも
のである。
【0012】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれ
ば、非磁性基材の片面に磁性メッキ層が形成された電磁
誘導加熱用複合材において、該磁性メッキ層がNi−F
e合金からなる厚み40〜160μmの磁性メッキ層で
あり、かつ、該磁性メッキ層の[111]面でのX線回
折ピークの半価幅が0.40以下であることを特徴とす
る電磁誘導加熱用複合材が提供される。また、本発明に
よれば、非磁性基材の片面にNi−Fe合金からなる厚
み40〜160μmの磁性メッキ層を形成した後、乾熱
雰囲気下、270℃以上の温度で5分間以上の時間、
磁性メッキ層を熱処理することにより、該磁性メッキ層
の[111]面でのX線回折ピークの半価幅を0.40
以下とすることを特徴とする電磁誘導加熱用複合材の製
造方法が提供される。
【0013】 本発明によれば、非磁性基材から形成さ
れた容器の外面に、厚み40〜160μmで、[11
1]面でのX線回折ピークの半価幅が0.40以下のN
i−Fe合金からなる磁性メッキ層が形成されている電
磁誘導加熱用調理器具が提供される。磁性メッキ層とし
ては、Ni−Fe合金からなる厚み40〜160μmの
磁性メッキ層が用いられる。非磁性基材としては、アル
ミニウムまたはアルミニウム合金などのアルミニウム基
材が好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明で使用する非磁性基材とし
ては、アルミニウムやアルミニウム合金からなるアルミ
ニウム基材、セラミック基材、非磁性ステンレス基材、
ガラス基材などを挙げることができるが、熱伝導性や加
工性などの点でアルミニウム基材が好ましい。また、I
Hジャー炊飯器の内釜の用途には、アルミニウム基材が
特に好ましい。非磁性基材の厚みは、強度、熱伝導性、
用途などに応じて、適宜定めることができるが、通常、
0.5〜5mm程度である。
【0015】非磁性基材の片面には、常法に従って、フ
ッ素樹脂被覆層を形成して、非粘着性とすることができ
る。非磁性基材を容器の形状に成形する場合には、その
内側の面にフッ素樹脂被覆層を形成する。フッ素樹脂被
覆層は、非磁性基材を容器の形状に成形してから、その
内側の表面に形成してもよいし、あるいは、アルミニウ
ム基材などの場合には、フラットな板材(例えば、サー
クル板)の形状でフッ素樹脂被覆層を形成してから容器
の形状にプレス成形加工してもよい。フッ素樹脂被覆層
の厚みは、特に限定されないが、熱伝導性の観点から、
通常、5〜50μm、好ましくは10〜30μm程度と
することが望ましい。フッ素樹脂としては、四フッ化エ
チレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パ
ーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PF
A)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピ
レン共重合体(FEP)などを挙げることができるが、
これらの中でも四フッ化エチレン樹脂が好ましい。
【0016】非磁性基材の他面(外面)には、磁性メッ
キ層を形成するが、必ずしも全面に形成する必要はな
く、例えば、IHジャー炊飯器の内釜として使用する場
合は、加熱用コイルの配置されている底部(底面や底面
から立ち上がる外側壁面の下部)にのみ磁性メッキ層を
形成することができる。
【0017】 磁性メッキ層を形成する金属材料として
は、メッキが可能で、かつ、高周波磁界により渦電流が
流れて発熱体となる磁性層を形成することができるNi
−Fe合金が用いられる。Ni−Fe合金における原子
数比は、通常、5:95〜95:5、好ましくは10:
90〜90:10である。透磁率などの観点から、Ni
−Fe合金が好ましい。また、この合金に各種元素を添
加することができる。このような元素としては、例え
ば、P、C、及びBなどを挙げることができる。これら
の元素を磁性メッキ層中に分散させることにより、電磁
誘導加熱したときの「固有抵抗/浸透深さ」の比で表さ
れる表皮抵抗を高めて、発熱量を高めることができる
(特開平8−191758号公報)。これらの元素は、
磁性メッキ層中に分散させる。
【0018】 磁性メッキ層は、非磁性基材を電気メッ
キ、化学メッキ、無電解メッキなどのメッキ処理するこ
とにより形成することができる。即ち、金属イオンを含
有する溶液からの電気化学的転化により、磁性メッキ層
を形成する。これらのメッキ処理に使用するメッキ浴の
組成やメッキ処理条件などは、公知技術に基づいて、適
宜選択することができる(特開平8−191758号公
報、特開平9−157886号公報など)。磁性メッキ
層の厚みは、熱伝導性と経済性のバランス等の観点から
みて、40〜160μmとする。多くの場合、磁性メッ
キ層の膜厚は、50〜150μm程度で良好な結果を得
ることができる。なお、磁性メッキ層は、1層としてだ
けではなく、所望により2層以上の多層に形成してもよ
い。多層に形成する場合は、各層のメッキ組成が異なっ
ていてもよい。
【0019】非磁性基材としてアルミニウム基材を用い
る場合は、その表面が酸化アルミニウムを主成分とする
層で覆われているため、そのままでは磁性メッキ層との
密着性に劣る場合がある。そのため、ジンケート処理に
より、アルミニウム基材の表面に亜鉛または亜鉛合金
(鉄、ニッケル、コバルトなどとの合金)からなる中間
層(亜鉛置換メッキ処理層など)が形成される(特開平
8−191758号公報)。
【0020】本発明の最大の特徴は、磁性メッキ層の熱
処理を行う点にある。熱処理を行うと、磁性メッキ層の
内部歪みが緩和されて、電磁誘導加熱での発熱量を決定
するパラメーターである透磁率や導電率が向上し、その
結果、出力が大きくなるものと推定される。熱処理によ
り磁性メッキ層の内部歪みが緩和されることは、X線回
折ピークの半価幅が熱処理前に比べて小さくなることに
より確認することができる。本発明では、この熱処理に
より、磁性メッキ層の[111]面でのX線回折ピーク
の半価幅(以下、X線半価幅と略記)が0.40以下と
なるように磁性メッキ層の内部歪みを緩和する。熱処理
条件としては、X線半価幅が0.40以下となる条件で
あれば特に限定されないが、処理効率の観点から、27
0℃以上の温度で5分間以上の時間、磁性メッキ層を熱
処理することが好ましい。顕著な出力の改善効果を得る
には、X線半価幅は、好ましくは0.38以下、より好
ましくは0.35以下となるように熱処理することが望
まし。最も好ましい改善効果は、X線半価幅が0.30
以下の場合に得ることができる。X線半価幅の下限は、
好ましくは0.05、より好ましくは0.10程度であ
る。X線半価幅が大きすぎると、出力の向上効果が小さ
くなる。なお、熱処理により、[200]面での半価幅
も減少し、その減少傾向は、熱処理温度が高くなるにつ
れて、あるいは熱処理時間が長くなるにつれて大きくな
る。
【0021】熱処理温度の上限は、非磁性基材にもよる
が、基材としてアルミニウム合金を用いた場合は550
℃程度である。また、熱処理時間の上限は、30時間程
度である。熱処理効率の観点から、熱処理条件は、好ま
しくは、270〜500℃の熱処理温度で5分間〜2時
間の熱処理時間、より好ましくは、300〜450℃の
熱処理温度で10〜60分間の熱処理時間である。熱処
理温度が低すぎると、短時間の熱処理により、磁性メッ
キ層のX線半価幅を十分に小さくすることが難しくな
る。熱処理温度が高すぎると、エネルギー効率が悪くな
る。熱処理時間は、短すぎると、X線半価幅を十分に小
さくすることができず、長すぎると経済的ではない。ま
た、Ni−Fe合金においては、512℃以下の温度
で、あまり長時間熱処理すると、透磁率の低い合金相を
形成することが知られており、有効ではない。熱処理の
効率と出力増大とのバランスの観点から、350〜40
0℃で10〜50分間熱処理することが最も好ましい。
熱処理は、乾熱雰囲気下で実施するが、通常は大気中で
行う。
【0022】本発明の電磁誘導加熱用複合材は、比較的
薄い膜厚で1200W以上の出力を達成することが可能
であるため、IHジャー炊飯器の内釜として用いた場
合、生煮えや飯粒に芯が残るといった不都合を生じるこ
とがない。本発明の電磁誘導加熱用複合材の出力(発熱
量)の程度は、メッキの組成や膜厚など種々の要因によ
って変化するが、熱処理前(X線半価幅の低下処理前)
のものに比べて、明らかに顕著な出力の増大を得ること
ができる。このような熱処理による顕著な作用効果は、
従来、当業界では知られていなかったことである。
【0023】熱処理後、磁性メッキ層の上には、クロム
メッキ、クロメート処理被膜、亜鉛メッキ被膜などの耐
蝕性金属被膜を形成することが好ましい。また、磁性メ
ッキ層の上に、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミ
ド樹脂などの耐熱性樹脂の被覆層を形成することもでき
る。本発明の電磁誘導加熱用複合材は、IHジャー炊飯
器の内釜や電磁調理器用鍋などとして好適である。
【0024】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明
についてより具体的に説明する。本発明で採用している
測定法は、次のとおりである。 (1)出力 各実施例及び比較例で作成した内釜を市販のIHジャー
炊飯器に備えつけて加熱し、ワットメータを使用して最
大出力を測定した。 (2)磁性メッキ層のX線回折ピークの半価幅 CuKα線を用いて、磁性メッキ層の[111]面での
X線回折ピークの半価幅を測定した。半価幅は、ピーク
高さが1/2になるところのピーク幅(deg)により
求めた。 (3)炊飯試験 各実施例及び比較例で作成した内釜を市販のIHジャー
炊飯器に備えつけ、実際に1升の米を炊飯してみて、飯
の炊き上がり状態を観察し、飯粒に芯のない炊飯ができ
たものを「良好」と評価し、飯粒に芯があったり、生煮
えの場合を「芯あり、生煮え」と評価した。
【0025】[実施例1]アルミニウム板〔材質=JI
S3004系アルミニウム合金、厚み=1.5mm、直
径=525mmφのサークル板〕に、NaCl水溶液中
で20クーロン/cm2 の電気量で電解エッチングを施
し、その表面に微細な凹凸を設けた。その片面に、四フ
ッ化エチレン樹脂分散液を塗布し、焼き付けて、四フッ
化エチレン樹脂被覆層(厚み20μm)を形成した。こ
のフッ素樹脂被覆板を油圧プレスを用いて、市販のIH
ジャー炊飯器に備えつけることができる1升炊き用の内
釜状にプレス成形加工した。プレス成形加工により得ら
れた内釜状成形物の外側の底部を120g/Lの水酸化
ナトリウム水溶液に80℃で処理した後、亜鉛置換メッ
キ(厚み0.1μm)処理を施した。
【0026】次いで、スルファミン酸ニッケル四水和物
(480g/L)、硫酸鉄七水和物(25g/L)、硼
酸(30g/L)、NH4 OH・HCl(5g/L)、
サッカリン酸ナトリウム(1g/L)、ラウリル硫酸ナ
トリウム(0.1g/L)、及びNH2 SO3 H(15
g/L)を含有するNi−Feメッキ浴を使用し、浴温
55℃、陰極電流25A/dm2 でメッキ処理を行い、
前記内釜状成形物の外側の底部の亜鉛メッキ層の上に厚
み150μmのNi−Fe(Fe=20%)合金メッキ
層を形成した。さらに、得られた内釜を大気中で400
℃で30分間の熱処理を行った。このようにして得られ
た内釜を市販のIHジャー炊飯器にセットし、加熱した
際の出力をワットメーターで測定した。また、この内釜
を用いて、IHジャー炊飯器による炊飯試験を行った。
さらに、このNi−Fe合金層の[111]面のX線回
折ピークの半価幅をCuKα線を用いて測定した。結果
を表1に示す。
【0027】[実施例2]Ni−Fe合金メッキ層の熱
処理時間を20分間に変えたこと以外は、実施例1と同
様に操作した。結果を表1に示す。
【0028】[実施例3]Ni−Fe合金メッキ層の熱
処理時間を10分間に変えたこと以外は、実施例1と同
様に操作した。結果を表1に示す。
【0029】[実施例4]Ni−Fe合金メッキ層の厚
みを100μmに変えたこと以外は、実施例1と同様に
操作した。結果を表1に示す。
【0030】[実施例5]Ni−Fe合金メッキ層の熱
処理条件を300℃に変えたこと以外は、実施例1と同
様に操作した。結果を表1に示す。
【0031】[実施例6]Ni−Fe合金メッキ層の熱
処理温度を350℃に変えたこと以外は、実施例1と同
様に操作した。結果を表1に示す。
【0032】[実施例7]Ni−Fe合金メッキ層の熱
処理時間を10分間に変えたこと以外は、実施例6と同
様に操作した。結果を表1に示す。
【0033】[実施例8]Ni−Fe合金メッキ層の熱
処理温度を450℃に変えたこと以外は、実施例1と同
様に操作した。結果を表1に示す。
【0034】[実施例9]Ni−Fe合金メッキ層の熱
処理時間を20分間に変えたこと以外は、実施例8と同
様に操作した。結果を表1に示す。
【0035】[実施例10]Ni−Fe合金メッキ層の
熱処理時間を10分間に変えたこと以外は、実施例8と
同様に操作した。結果を表1に示す。
【0036】[比較例1]Ni−Fe合金メッキ層の熱
処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に操作
した。結果を表1に示す。
【0037】[比較例2]Ni−Fe合金メッキ層の熱
処理温度を250℃に変えたこと以外は、実施例1と同
様に操作した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】[実施例11]アルミニウム板〔材質=J
IS3004系アルミニウム合金、厚み=1.5mm、
直径=525mmφのサークル板〕をプレス成形加工し
て鍋を作成した。この鍋の底部に、実施例1と同様にし
て、亜鉛メッキ処理を施した後、厚み80μmのNi−
Fe(Fe=25%)のメッキ層を形成し、次いで、大
気中で400℃で30分間加熱した。メッキ層の[11
1]面でのX線回折ピークの半価幅は、0.21であっ
た。このようにして得られた電磁調理器用鍋に1Lの水
を入れ、市販の電磁誘導加熱調理器のトッププレート上
に載せて発熱特性を評価した。その結果、5分間で水の
温度が80℃に到達した。
【0040】[比較例3]Ni−Feメッキ層の熱処理
を行わなかったこと以外は、実施例11と同様に操作し
た。その結果、1時間以上でも、50℃までしか上がら
なかった。熱処理を行わない場合、実施例11と同じ5
分間で水の温度が80℃に到達するようにするには、メ
ッキ層の厚みを120μmにしなければならなかった。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、非磁性基材の片面に磁
性メッキ層を有し、高出力が可能な電磁誘導加熱用複合
材及びその製造方法が提供される。また、本発明によれ
ば、高出力が可能な電磁誘導加熱用複合材からなる電磁
誘導加熱用調理器具が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡崎 博志 大阪府泉南郡熊取町大字野田950番地 住友電気工業株式会社熊取製作所内 (72)発明者 山田 克弥 大阪府泉南郡熊取町大字野田950番地 住友電気工業株式会社熊取製作所内 (56)参考文献 特開2000−87293(JP,A) 特開 昭62−280395(JP,A) 特開 平11−70043(JP,A) 特開 平10−294172(JP,A) 特開 平9−157886(JP,A) 特開 平9−129363(JP,A) 特開 平9−75225(JP,A) 特開 平9−3692(JP,A) 特開 平9−3576(JP,A) 特開 平8−253889(JP,A) 特開 平8−191758(JP,A) 特開 平8−39432(JP,A) 特開 平7−233495(JP,A) 特開 平6−346276(JP,A) 特開 平6−304065(JP,A) 特開 平6−122990(JP,A) 特開 平4−144112(JP,A) 特公 昭42−20166(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 7/00 C25D 5/50 H05B 6/12 A47J 27/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基材の片面に磁性メッキ層が形成
    された電磁誘導加熱用複合材において、該磁性メッキ層
    がNi−Fe合金からなる厚み40〜160μmの磁性
    メッキ層であり、かつ、該磁性メッキ層の[111]面
    でのX線回折ピークの半価幅が0.40以下であること
    を特徴とする電磁誘導加熱用複合材。
  2. 【請求項2】 非磁性基材が、アルミニウム基材である
    請求項1記載の電磁誘導加熱用複合材。
  3. 【請求項3】 非磁性基材の片面にNi−Fe合金から
    なる厚み40〜160μmの磁性メッキ層を形成した
    後、乾熱雰囲気下、270℃以上の温度で5分間以上の
    時間、磁性メッキ層を熱処理することにより、該磁性
    メッキ層の[111]面でのX線回折ピークの半価幅を
    0.40以下とすることを特徴とする電磁誘導加熱用複
    合材の製造方法。
  4. 【請求項4】 非磁性基材から形成された容器の外面
    に、厚み40〜160μmで、[111]面でのX線回
    折ピークの半価幅が0.40以下のNi−Fe合金から
    なる磁性メッキ層が形成されている電磁誘導加熱用調理
    器具。
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