JP3476876B2 - ケイ素及び酸素含有被覆の堆積方法 - Google Patents

ケイ素及び酸素含有被覆の堆積方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、気化した水素シルセス
キオキサン樹脂(H−樹脂)から、ケイ素と酸素を含有
する高品質の被覆であって、形成された被覆の有する不
完全な酸化による不純物が最小限であるものを堆積させ
ることに関する。この方法は、その中に被覆すべき基材
が入っていて、亜酸化窒素を含んでなる反応性の環境を
有する堆積室に、水素シルセスキオキサン蒸気を導入
し、次いでこの蒸気の反応を誘起して被覆を形成するこ
とを含む。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】亜酸化
窒素(N2 O)を含む反応性の環境中においてシリカ蒸
気を堆積させる方法は当該技術分野で知られており、現
在多くのものが業界で使用されている。典型的に、その
ような堆積方法は、亜酸化窒素の存在下で単量体のケイ
素源(例えばSiH4 、SiH2 Cl2 等)を分解して
二酸化ケイ素の誘電性被覆を形成することを伴う。
【0003】米国特許第4239811号明細書は、酸
素の存在下において単量体クロロシランを亜酸化窒素と
反応させることで二酸化ケイ素被覆を堆積させる低圧気
相成長方法を教示している。酸素を投入することが後の
酸化サイクル中における劣化によりよく耐える二酸化ケ
イ素層を作り出す、ということが分かった。とは言うも
のの、この特許明細書は、亜酸化窒素とともに単量体シ
ラン化合物を使用することを記載しているだけである。
【0004】溶液中のH−樹脂を使用して被覆を形成す
ることは、当該技術分野において同様に知られているこ
とである。例えば、水素シルセスキオキサンを使って基
材上にセラミック被覆を形成することを記載する米国特
許第4756977号明細書を参照されたい。同様に、
米国特許第4808653号明細書は、水素シルセスキ
オキサンを他の金属酸化物前駆物質と一緒に使用して基
材上にセラミック被覆を形成することを開示している。
しかしながら、これらの特許明細書は樹脂を溶液中で使
用することを記載しているだけである。
【0005】米国特許第5165955号明細書は、基
材上にケイ素と酸素を含有する被覆を堆積させるために
気化した低分子量の水素シルセスキオキサンを使用する
ことを記載している。その特許請求の範囲(クレーム)
に記載された反応性環境は、アンモニア、空気、酸素及
びアミンを含む。しかしながら、この特許明細書は、そ
の特許請求の範囲(クレーム)に記載された方法で低分
子量H−樹脂を亜酸化窒素とともに使用することができ
ることを教示しなかった。
【0006】1993年7月8日出願の欧州特許出願第
93 305 375号明細書は、H−樹脂を亜酸化窒
素で硬化させることを開示している。しかしながら、こ
の特許明細書は、本願の特許請求の範囲に記載された気
化種と対照される樹脂状ポリマーを硬化させることに限
定されている。
【0007】
【課題を解決するための手段、実施例、及び作用効果】
本発明の発明者らは、思いも寄らぬことに、通常の気相
成長技術での亜酸化窒素と気体の低分子量H−樹脂との
反応が高純度のケイ素及び酸素含有被覆をもたらすこと
ができることを見いだした。この明細書に記載された技
術により製造される被覆は、電子デバイスのような基材
上の保護層及び誘電性層として有用である。
【0008】本発明では、単純な熱気相成長技術によっ
て、気化したH−樹脂を亜酸化窒素と反応させて所望の
被覆を成長させる。発明者らは、亜酸化窒素はH−樹脂
の有効な酸化剤であるばかりでなく、完全な酸化を保証
することにより高純度の被覆生成物を製造するのに有効
な薬剤でもあるということを見いだした。
【0009】H−樹脂は、この発明では、HSi(O
H)x (OR)y z/2 の構造の単位(この式中の各R
は独立に、酸素原子を介してケイ素に結合すると加水分
解可能な置換基を形成する有機基であり、x=0〜2、
y=0〜2、z=1〜3、そしてx+y+z=3であ
る)を有する種々のヒドリドシラン樹脂を表すために使
用される。これらの樹脂は、完全に縮合されていてもよ
く(x=0、y=0、z=3)、部分的に加水分解され
ているだけでもよく(yはポリマーの全部の単位にわた
って0に等しくない)、及び/又は部分的に縮合されて
いるだけでもよい(xはポリマーの全部の単位にわたっ
て0に等しくない)。この構造式によって表されはしな
いけれども、これらの樹脂のいろいろな単位は、それら
の形成及び処理に関係する種々の因子のために、Si−
H結合を0個又は2個以上有することができる。実質的
に縮合されたH−樹脂(シラノール300ppm未満)
の典型的なものは、米国特許第3615272号明細書
の方法により生成されたものである。これらの重合物質
は式(HSiO3/2 n の単位(この式のnは一般に8
〜1,000である)を有する。好ましい樹脂は、80
0〜2,900の数平均分子量と8,000〜28,0
00の重量平均分子量(校正標準としてポリジメチルシ
ロキサンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GP
C))分析により得られる)を有する。
【0010】完全に縮合されていなくてもよいH−樹脂
の典型的なものには、米国特許第5010159号明細
書のもの、あるいは米国特許第4999397号明細書
のものが含められる。完全に加水分解され又は縮合され
ていないH−樹脂の典型的なものは、酸性化された酸素
含有極性有機溶媒中でヒドロカルボノキシヒドリドシラ
ンを水で加水分解することを含む方法によって生成され
るものである。
【0011】上記の可溶性ヒドリドシラン樹脂は次い
で、本発明の成長法で気化させることができる低分子量
種を得るため分別される。ここではポリマーを分別する
ための通常のいずれの技術も使用することができる。と
は言え、特に好ましいのは、種々の流体をそれらの臨界
点で、あるいはその近くで、あるいはそれより上で使用
することである。この方法は、米国特許第506326
7号明細書に都合よく記載されている。それに記載され
た方法は、(1)H−樹脂をポリマーのある画分を溶解
させるのに十分な時間流体と、その臨界点で、あるいは
その近くで、あるいはそれより上で接触させ、(2)そ
の画分を含有している流体を残りのポリマーから分離
し、そして(3)所望の画分を回収することを含むもの
である。
【0012】具体的に言えば、この特許明細書は、抽出
容器にH−樹脂を入れ、次いで抽出流体にこの容器を通
過させることを記載している。この抽出流体とその溶解
特性は、H−樹脂の所望される分子量画分のみが溶解す
るように制御される。次いで、H−樹脂の所望の画分を
有する溶液は容器から取出され、流体に溶解しないH−
樹脂の画分も、ゲルあるいは汚染物のような他のいずれ
の不溶性物質も、後に残る。
【0013】次に、H−樹脂の所望画分は、溶媒の溶解
特性を変えて、それにより所望の画分を沈殿させて、溶
液から回収される。次いでこれらの沈殿物は単に、簡単
なろ過のような方法により分離室で集められるだけであ
る。
【0014】この方法で使用される抽出流体は、その臨
界点に、あるいはその近くに、あるいはそれより上にあ
る場合には、H−樹脂の所望される画分を溶解し、残り
の画分を溶解しない、いずれの化合物も包含する。とは
言うものの、溶媒化合物の臨界温度及び臨界圧力に対し
ては、適当な点に到達するのに不合理な処置が必要ない
ように、通常更に考慮が払われる。使用可能である具体
的な化合物の例には、二酸化炭素と、エタンやプロパン
のような大抵の低分子量炭化水素類が含められる。
【0015】このような方法によって、H−樹脂のうち
の所望の画分を回収することができる。とは言え、ここ
での所望の画分が結果的に得られるこのほかの同等の方
法も考えられる。例えば、溶液分別あるいは昇華といっ
たような方法も、ここで使用することができる。
【0016】本発明の方法で使用されるH−樹脂の好ま
しい画分は、適度の温度及び/又は減圧条件下で揮発す
ることができるものである。一般に、そのような画分は
その少なくとも約75%の種が2,000未満の数平均
分子量を有するものである。とは言うものの、ここで好
ましいのは、その少なくとも約75%の種が1,600
未満の数平均分子量を有する画分であり、少なくとも約
75%の種が400〜1,000の数平均分子量を有す
る画分が特に好ましい。更に、幅広い分子量の物質もこ
こでのH−樹脂蒸気の源として使用してもよいと考えら
れる。しかしながら、そのような物質が揮発するとしば
しば、不揮発性の種を含む残留物が残る。
【0017】H−樹脂の所望の画分が得られたなら、そ
れを気化させて、被覆すべき基材が入っている成長室へ
導入する。気化は、H−樹脂の試料をその気化点より高
い温度に加熱して、又は真空を利用して、あるいはこれ
らを組み合わせて、行うことができる。一般に、気化
は、大気圧下で50〜300℃の範囲の温度で、あるい
は減圧下でもっと低い温度(室温近く)で、行うことが
できる。
【0018】本発明の方法で使用されるH−樹脂蒸気の
量は、所望の被覆を堆積させるのに十分な量である。こ
れは、所望される被覆の厚さや被覆すべき面積といった
ような因子に依存して、広い範囲にわたって変えること
ができる。その上、蒸気は、ほとんどいずれの所望濃度
で使用してもよい。希釈した蒸気を使用する場合には、
それは例えば空気、アルゴン又はヘリウムといったよう
なほとんどいずれの相容性ガスと組み合わせてもよい。
【0019】気化したH−樹脂は、次いで亜酸化窒素を
含む環境中で反応させて、基材上に被覆を堆積させる。
気体種の反応は当該技術分野においてよく知られてお
り、ここでは通常のいずれの化学気相成長(CVD)技
術も使用することができる。例えば、熱CVDや低圧C
VD(LPCVD)、減圧CVD(SACVD)(すな
わち1気圧未満でのCVD)、プラズマ支援CVD(P
ECVD)、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、ジェ
ット気相成長といったような方法、あるいは任意の同様
の技術を使用することができる。これらの方法は、所望
の反応を起こさせるために気化した種にエネルギー(例
えば熱のようなもの)を加えることを必要とする。
【0020】熱CVDでは、成長室(堆積室)に亜酸化
窒素の反応性の環境が満たされる。気化したH−樹脂の
流れに加熱された基材上を通過させて、高純度の被覆を
堆積させる。H−樹脂蒸気は、高温の基材と接触する
と、反応して被覆を堆積する。これらの被覆を、所望さ
れる厚さに応じて、数分〜数時間で形成するのには、1
00〜1,000℃の範囲の基材温度が十分なものであ
る。このCVD法では、成長室の昇圧は必要ない。
【0021】PECVDでは、気化したH−樹脂にプラ
ズマ場を通過させてH−樹脂を反応させる。それにより
生成された反応性の種は次いで基材に向けられ、容易に
付着する。一般に、この方法が熱CVD法に優る利点
は、より低い基材温度を使用することができることであ
る。例えば、20〜600℃の基材温度が典型的であ
る。
【0022】そのような方法で使われるプラズマは、例
えば放電、無線周波数又はマイクロ波の範囲の電磁界、
レーザー又は粒子ビームといったような種々の源から得
られるエネルギーを含む。一般に、大抵のプラズマ成長
法で好ましいのは、無線周波数(10kHz 〜102 MHz
)又はマイクロ波(0.1〜10GHz )を適度なパワ
ー密度(0.1〜5W/cm2 )で使用するものである。と
は言え、一般に、具体的な周波数、パワー及び圧力は装
置に合わされる。
【0023】他方で、LPCVDでは、堆積室を0.6
7kPa(5torr未満の圧力に維持する。気化し
たH−樹脂が亜酸化窒素の存在下で加熱された基材の上
を通過してこれらの被覆を形成するときには、100〜
1,200℃の範囲の基材温度が維持される。LPCV
DとCVDについてのメカニズムは完全に分かってはい
ないが、気化したH−樹脂にエネルギーが加わることが
酸素との反応を誘起して、基材上にケイ素と酸素を含有
する被覆が生成されるように分子の転位(rearrangemen
t )を引き起こすものと仮定される。
【0024】堆積室内の亜酸化窒素を含む反応性の環境
は、H−樹脂の完全な酸化を保証し、それにより、高純
度のシリカ被覆を堆積して、一般に、被覆中のケイ素下
級酸化物(silicon suboxides )や残留Si−OC及び
/又はSi−OHの量を最小限にする。
【0025】一般的に、反応器における亜酸化窒素の濃
度は重要ではない。本発明の方法では0.1〜100%
の任意の有効な濃度を使用することができる。反応性環
境は、堆積室に一般的に注入される任意のガス種を追加
して含むことができる。例えば、空気、酸素、アンモニ
ア、アミン類といったような反応性のガス種、あるいは
アルゴンやヘリウムのような不活性のガス種を使用する
ことができる。
【0026】本発明の方法は、広い範囲の厚さの望まし
い被覆を堆積させるために使用することができる。例え
ば、単分子層から2〜3μmを上回るまでの範囲の被覆
が可能である。これらの被覆はまた、他の被覆で、例え
ば別のSiO2 被覆、SiO 2 /変性用セラミック酸化
物層、ケイ素含有被覆、ケイ素−炭素含有被覆、ケイ素
−窒素含有被覆、ケイ素−窒素−炭素含有被覆、ケイ素
−酸素−窒素含有被覆及び/又はダイヤモンド様炭素被
覆といったようなもので、被覆してもよい。そのような
被覆とそれらの成長(堆積)のメカニズムは当該技術分
野において知られている。多くのことが米国特許第49
73526号明細書に教示されている。
【0027】被覆すべき基材の選定は、堆積容器の温度
と環境中での熱安定性と化学的安定性についての必要に
よってのみ制限される。従って、基材は、例えばガラ
ス、金属、プラスチック、セラミック又はその他同様の
ものでよい。とは言うものの、ここでは、電子デバイス
を被覆して保護被覆又は誘電性被覆を施すことが特に好
ましいことである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−186213(JP,A) 特開 平1−202826(JP,A) 特開 平1−130535(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 16/12 C23C 16/40 C23C 16/42 H01L 21/316

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材を入れた、亜酸化窒素を含んでなる
    反応性の環境を有する堆積室に、気体の水素シルセスキ
    オキサンを含むガスを導入し、そしてこのガスの反応を
    誘起して被覆を形成することを含む、基材上にケイ素と
    酸素を含有する被覆を堆積させる方法。
  2. 【請求項2】 前記水素シルセスキオキサン75%よ
    り多くの種が2,000未満の数平均分子量を有する画
    分を有する、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記水素シルセスキオキサンがキャリヤ
    ガスで希釈される、請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記水素シルセスキオキサンが、化学気
    相成長、電子サイクロトロン共鳴及びジェット気相成長
    から選ばれた手段により反応を誘起される、請求項1記
    載の方法。
  5. 【請求項5】 前記水素シルセスキオキサンが、100
    〜1,000℃の温度又はプラズマへの暴露から選ばれ
    た手段により反応を誘起される、請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記プラズマが無線周波数エネルギー又
    はマイクロ波エネルギーを含む、請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記被覆の堆積を低圧化学気相成長によ
    り行い、前記堆積室を0.67kPa(5torr
    満の圧力及び100〜1,200℃の範囲の温度に維持
    する、請求項1記載の方法。
  8. 【請求項8】 当該被覆された基材の上に、SiO2
    覆、SiO2 /変性用セラミック酸化物層、ケイ素含有
    被覆、ケイ素−炭素含有被覆、ケイ素−窒素含有被覆、
    ケイ素−窒素−炭素含有被覆、ケイ素−酸素−窒素含有
    被覆及びダイヤモンド様炭素被覆から選ばれた被覆を適
    用することを更に含む、請求項1記載の方法。
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