JP4501379B2 - ルテニウム−シリコン混合膜を形成する方法 - Google Patents
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Description
このような配線材料の代表的なものの基本構造は、(1)予め配線部分となるべき溝が形成された絶縁層、(2)化学機械研磨時の過剰研磨防止層ともなる拡散防止膜層及び(3)銅に代表される配線材料が積層されたものである。
しかし近年、半導体装置の性能向上を目的とした絶縁膜の低誘電率化が注目されている。この低誘電率化のため、誘電率の高い上記SiO2膜に代わるものとして、シルセスキオキサン(比誘電率;約2.6〜3.0)、フッ素添加SiO2(比誘電率;約3.3〜3.5)、ポリイミド系樹脂(比誘電率;約2.4〜3.6、商品名「PIQ」(日立化成工業(株)製)、商品名「FLARE」(Allied Signal社製)等)、ベンゾシクロブテン(比誘電率;約2.7、商品名「BCB」(Dow Chemical社製)等)、水素含有SOG(比誘電率;2.5〜3.5)、有機SOG(比誘電率;1.9〜3.0、商品名「HSGR7」(日立化成工業(株)製)、商品名「Black Diamond」(Applied Materials社製)、商品名「Coral」(Novellus System社製)、商品名「Aurora」(日本エーエスエム(株)製)、商品名「Nanoglass」(Honeywell社製)、商品名「LKD」シリーズ(JSR(株)製)等)及びポリフェニレン系樹脂( 比誘電率;2.2〜2.9、商品名「SiLK」(Dow Chemical社製))などからなる絶縁膜が開発されている。
なお、上記のうち、「SOG」とは、「Spin On Glass」の略称であり、一般に、ケイ酸化合物類を有機溶剤に溶解あるいは分散した液をスピンコート法などによりウェハーなどに塗布した後、加熱処理して得られる絶縁膜を意味する。
このような問題に対し、特許文献1では、低誘電率の絶縁膜に特定の薬品による洗浄工程を実施したのちに拡散防止膜層を形成する方法が開示されている。また、特許文献2では、低誘電率の絶縁膜層上部に開口部を設け、後の工程で発生する揮発成分を当該開口部から放出させることによる剥離防止の技術が開示されている。
しかし、これらの技術は、若干の改善効果を示すものの問題を根本的に解決するものではなく、いまだに絶縁膜層と拡散防止膜層の界面剥離を防止する方法が望まれている。
すなわち、本発明によると、本発明の上記目的は、(A)下記一般式(1)、(3)、(7)または(9)で表される化合物から選択される少なくとも一種のルテニウム化合物(以下、「特定ルテニウム化合物」ということがある。)、及び
(B)環状シラン化合物
を予め混合した原料を基体上に塗布し、次いで熱処理することを特徴とする、ルテニウム−シリコン混合膜からなる拡散防止膜層を低誘電率の絶縁膜上に形成する方法、または(B)環状シラン化合物の塗膜を形成し、次いで熱処理して形成された膜上に(A)下記一般式(1)、(3)、(7)または(9)で表される化合物から選択される少なくとも一種のルテニウム化合物の塗膜を形成し、次いで熱処理することを特徴とする、ルテニウム−シリコン混合膜からなる拡散防止膜層を低誘電率の絶縁膜上に形成する方法によって達成される。
(Cp')2Ru ・・・(1)
ここで、Cp'は下記式(2)で表される配位子であり、2つあるCp'は同一でも互いに異なっていてもよい。
(D)Ru(CO)3 ・・・(3)
ここでDは下記式(4)〜(6)で表される配位子から選択される1種である。
ここで、ACAC’は下記式(8)で表される配位子であり、3つあるACAC’は同一であっても互いに異なっていてもよい。
(R3COO)3Ru ・・・(9)
ここで、R 3 は炭素数1〜6のアルキル基、フッ化アルキル基またはヒドロキシアルキル基であり、3つあるR3は同一でも互いに異なっていてもよい。
上記式(1)で表されるルテニウム化合物としては、例えば、ビスシクロペンタジエニルルテニウム、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(フロロシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(トリフロロメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ルテニウム、(シクロペンタジエニル)トリメチルシリルシクロペンタジエニルルテニウム、(シクロペンタジエニル)トリフロロメチルシクロペンタジエニルルテニウム、(シクロペンタジエニル)フロロシクロペンタジエニルルテニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリメチルシリルシクロペンタジエニルルテニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリフロロメチルシクロペンタジエニルルテニウム、(エチルシクロペンタジエニル)フロロシクロペンタジエニルルテニウム等を挙げることができる、それらのうち、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム及びビス(トリフロロメチルシクロペンタジエニル)ルテニウムが好ましい。
(B)環状シラン化合物は、下記一般式(10)で表される化合物である。
SinH2n ・・・(10)
ここで、nは3〜20の整数、好ましくは5〜10の整数、さらに好ましくは5〜7の整数であり、特に5又は6の整数である。
上記一般式(10)で表される環状シラン化合物としては、例えば、シクロトリシラン、シクロテトラシラン、シクロペンタシラン、シリルシクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シクロヘプタシラン等を挙げることができ、それらのうち、シクロペンタシラン、シリルシクロペンタシラン、シクロヘキサシランが好ましい。
(1)上記したような(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を気化せしめ、次いで(2)該気体を加熱して(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を熱分解せしめて基体上にルテニウム−シリコン混合膜を堆積せしめる。なお、上記工程(1)において、(A)特定ルテニウム化合物及び/又は(B)環状シラン化合物の分解を伴っても本発明の効果を減殺するものではない。
ここで、低誘電率の絶縁膜としては、例えばシルセスキオキサン(比誘電率;約2.6〜3.0)、フッ素添加SiO2(比誘電率;約3.3〜3.5)、ポリイミド系樹脂(比誘電率;約2.4〜3.6、商品名「PIQ」(日立化成工業(株)製)、商品名「FLARE」(Allied Signal社製)等)、ベンゾシクロブテン(比誘電率;約2.7、商品名「BCB」(Dow Chemical社製)等)、水素含有SOG(比誘電率;2.5〜3.5)、有機SOG(比誘電率;1.9〜3.0、商品名「HSGR7」(日立化成工業(株)製)、商品名「Black Diamond」(Applied Materials社製)、商品名「Coral」(Novellus System社製)、商品名「Aurora」(日本エーエスエム(株)製)、商品名「Nanoglass」(Honeywell社製)、商品名「LKD」シリーズ(JSR(株)製)等)及びポリフェニレン系樹脂( 比誘電率;2.2〜2.9、商品名「SiLK」(Dow Chemical社製))等を挙げることができる。
工程(1)において、(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を一の気化器から気化せしめる場合の(A)特定ルテニウム化合物と(B)環状シラン化合物の使用量の比は、(A)特定ルテニウム化合物1モルに対して、(B)環状シラン化合物が好ましくは0.5〜200モル、さらに好ましくは1.5〜50モルである。この範囲の使用量の比とすることにより、絶縁膜層に低誘電率の材料を使用したダマシン構造の形成にあたって、界面剥離を効果的に抑制することができるルテニウム−シリコン混合膜を形成することができる。
上記工程(1)において、(A)特定ルテニウム化合物と(B)環状シラン化合物を格別の気化器から気化せしめる場合の気化温度としては、(A)特定ルテニウム化合物について好ましくは100〜500℃、さらに好ましくは150〜400℃であり、(B)環状シラン化合物について好ましくは−30〜300℃、さらに好ましくは30〜200℃である。
本発明のルテニウム−シリコン混合膜を形成する方法として、化学気相成長法を採用する場合には、化学気相成長法を不活性気体の存在下もしくは不存在下並びに還元性気体の存在下もしくは不存在下のいずれの条件でも実施することができる。また、不活性気体及び還元性気体の両社が存在する条件で実施してもよい。
ここで、不活性気体としては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。また、還元性気体としては、例えば、水素、アンモニア等を挙げることができる。
また、化学気相成長法は、加圧下、常圧下及び減圧下のいずれの条件でも実施することができるが、常圧下又は減圧下で実施することが好ましく、15,000Pa以下の圧力下で実施することが更に好ましい。
塗布法(1)
上記(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を含有する組成物を調製し、これを基体上に塗布し、次いで熱処理することにより、ルテニウム−シリコン混合膜を形成する方法。
塗布法(2)
基体上に上記(B)環状シラン化合物の塗膜を形成し、次いで熱処理して形成された膜上に上記(A)特定ルテニウム化合物の塗膜を形成し、次いで熱処理することにより、ルテニウム−シリコン混合膜を形成する方法。
上記塗布法(1)において調製される(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を含有する組成物は、(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を必須成分として含有し、好ましくは更に溶媒を含有する。ここで使用できる溶媒としては、(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を溶解又は分散し、これらと反応しないものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒等を挙げることができる。
エーテル系溶媒としてジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン;
ハロゲン系溶媒として塩化メチレン、クロロホルム等を挙げることが出来る。これら溶媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用することができる。
これらのうち、上記(A)特定ルテニウム化合物と(B)環状シラン化合物の溶解性 及び得られる組成物の安定性の点で炭化水素系溶媒または炭化水素系溶媒とエーテル系溶媒との混合物を用いることが好ましい。
塗布法(1)において調製される組成物がを含有するものである場合、溶媒の使用量としては、組成物の全量から溶媒を除いた量が組成物全体の好ましくは1〜80重量%、さらに好ましくは20〜60重量%である。
塗膜の厚さとしては好ましくは3〜3000Åとすることができ、更に好ましくは10〜1000Åとすることができる。
なお、この厚さは、(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を含有する組成物が溶媒を含有するものである場合には、溶媒除去後の厚さとして理解されるべきである。
上記熱処理について、その温度は、30〜500℃とするのが好ましく、150〜400℃とするのがさらに好ましい。加熱時間は5〜90分程度が好ましい。また、熱処理する時の雰囲気は非酸化性雰囲気が好ましく、特に酸素濃度はできる限り低く設定することがより好ましい。また、水素が存在する雰囲気中で熱処理すると良質の膜を得ることができるので好ましい。上記雰囲気中の水素は、例えば窒素、ヘリウム、アルゴンなどとの混合ガスとして用いてもよい。
塗布法(2)において、基体上に(B)環状シラン化合物の塗膜を形成する工程では、(B)環状シラン化合物をそのまま塗布しても良いが、(B)環状シラン化合物と溶媒とを含有する組成物を調製し、これを塗布することが好ましい。ここで使用できる溶媒としては、塗布法(1)における(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を含有する組成物の調製に使用することができる溶媒として例示した溶媒を好適に用いることができる。
塗布法(2)において、(B)環状シラン化合物の塗膜を基体上に形成するに際しては、上記塗布法(1)における塗布方法と同様に実施することができる。ここで、塗膜の厚さとしては好ましくは3〜2000Åとすることができ、更に好ましくは10〜1000Åとすることができる。
なお、この厚さは、(B)環状シラン化合物の塗膜を形成する際、(B)環状シラン化合物と溶媒を含有する組成物を塗布する方法によった場合には、溶媒除去後の厚さとして理解されるべきである。
塗布法(2)においては、次いで加熱処理がなされる。上記熱処理について、その温度は、50〜500℃とするのが好ましく、150〜400℃とするのがさらに好ましい。加熱時間は5〜90分程度が好ましい。加熱時の雰囲気としては、上記塗布法(1)における加熱処理の場合と同様に設定することができる。
上記(A)特定ルテニウム化合物の塗膜を形成する工程では、(A)特定ルテニウム化合物と溶媒とを含有する組成物を調製し、これを塗布することによって行われる。ここで使用できる溶媒としては、塗布法(1)における(A)特定ルテニウム化合物及び(B)環状シラン化合物を含有する組成物の調製に使用することができる溶媒として例示した溶媒を好適に用いることができる。
塗布法(2)において、(A)特定ルテニウム化合物の塗膜を基体上に形成するに際しては、上記塗布法(1)における塗布方法と同様に実施することができる。ここで、塗膜の厚さとしては好ましくは1〜2000Åとすることができ、更に好ましくは10〜1000Åとすることができる。
なお、この厚さは、溶媒除去後の厚さとして理解されるべきである。
塗布法(2)においては、次いで更に加熱処理がなされることにより、ルテニウム−シリコン混合膜が形成される。上記熱処理について、その温度は、150〜500℃とするのが好ましく、200〜400℃とするのがさらに好ましい。加熱時間は5〜90分程度が好ましい。加熱時の雰囲気としては、上記塗布法(1)における加熱処理の場合と同様に設定することができる。
上記のようにして形成されたルテニウム−シリコン混合膜の厚さとしては、好ましくは10〜2000Åであり、さらに好ましくは50〜1000Åである。この値が10Å未満であると、ダマシン構造の形成に際して絶縁膜層と拡散防止層間の界面剥離を抑制する効果が不十分となる場合があり、一方、2000Åを超えると、微細なダマシン構造の形成の障害となる場合がある。
実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特記しない限り、それぞれ重量部、重量%を意味する。
また、各種の評価は、それぞれ以下のようにして行なった。
比誘電率
比誘電率は、HP4284AプレシジョンLCRメータ及びHP16451B電極(いずれも、横河・ヒューレットパッカード(株)製)を用いて、周波数100kHzの条件において、CV法により測定した。
なお、上記「CV法」とは、特定の印可電圧(V)において試料の静電容量(C)を測定し、その値から試料の比誘電率を算出する方法をいう。
弾性率
弾性率は、ナノインデンターXP(ナノインスツルメント社製)を用いて、連続剛性測定法により測定した。
膜厚
膜厚は斜入射X線分析装置(フィリップス社製、形式「X’Pert MRD」)により測定した。
ESCAスペクトル
ESCAスペクトルは日本電子(株)製、形式「JPS80」にて測定した。
密着性
密着性は、JIS K−5400に準拠して碁盤目テープ法によって評価した。
窒素置換した300mLフラスコ中で、トリメチルシリルクロライド11gを良く乾燥したテトラヒドロフラン30mLに溶解した。この溶液を−78℃に冷却し、ここにシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液(2.0mol/L)100mLを窒素気流下で1時間掛かけて滴下した。その後−78℃で1時間攪拌を継続し、次いで6時間かけて室温に戻した。反応混合物中の析出物を窒素雰囲気下で濾過により除いた後、蒸留精製によりトリメチルシリルシクロペンタジエン8gを得た。
次いで、窒素置換した100mLフラスコに、金属ナトリウム0.5g及び良く乾燥したテトラヒドロフラン30mLを投入し、−78℃に冷却した。ここに窒素気流下で、上記で合成したトリメチルシリルシクロペンタジエン2.5gをテトラヒドロフラン30mLに溶解した溶液を1時間かけて滴下し、次いで3時間かけて室温まで昇温し、トリメチルシリルシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液(濃度0.30mol/L)を得た。
さらに、窒素置換した500mLフラスコ中で、ジクロロ(シクロオクタジエニル)ルテニウム5gを良く乾燥したテトラヒドロフラン200mLに溶解した。この溶液を−78℃に冷却し、ここに上記で合成したトリメチルシリルシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液70mLを窒素気流下で1時間かけて滴下した。その後−78℃で3時間攪拌を継続し、次いで12時間かけて室温に戻した。反応混合物につき、アルゴンガス中で中性アルミナカラムを一度通して精製し、濃縮後、再度中性アルミナカラムにより精製し、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウムを0.9g得た(収率13%)。
トリルテニウムドデカカルボニル(Ru3(CO)12)2.1gを窒素置換した200mLフラスコ中に取り、50℃で30分間減圧下においた。室温に戻した後に乾燥した窒素をフラスコに満たした。ここに良く乾燥したトルエン100mLと、蒸留精製した1,5−シクロオクタジエン60mLを窒素雰囲気下で加えた。溶液を100℃に加熱し、9時間攪拌した。その後、溶媒及び未反応シクロオクタジエンを減圧にて除去し、残った粘稠な液体を、展開溶媒としてヘキサンを用いて窒素中でシリカゲルカラムに通し、濃褐色部を採取した。減圧にて溶媒を除去後、133Pa、80℃で昇華精製を行い、黄色の針状結晶としてシクロオクタジエニルトリカルボニルルテニウム0.8gを得た(収率=31%)。
窒素置換した500mLフラスコ中に、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14.47gをとり、110mlのメタノールを加えた。そこにアセト酢酸エチル9.76gをメタノール100mlに溶解した溶液を、窒素気流下、15分かけて滴下した。その後1時間攪拌を継続した。このとき、時間とともに無色であった反応溶液は黄色に変化した。次いで、無水三塩化ルテニウム5.19gをメタノール200mlに溶解した溶液を、窒素気流下で30分かけて滴下した。その後、5時間還留した後、窒素気流下で24時間室温にて静置した。反応混合物中の析出物を孔径0.45μmのメンブランフィルターで除去し、次いでエバポレーターでメタノールを除去した。残存物を100mLのエタノールに溶解し、1時間静置した後、析出した塩を孔径0.45μmのメンブランフィルターで除去した。次いで、エバポレーターにて溶媒を除去し、さらに60℃で減圧乾燥し、トリス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)ルテニウム9.1gを得た(収率=74%)。
2Lの4つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、乾燥したテトラヒドロフラン1.5Lとリチウム27.4gを仕込み、窒素でバブリングした。内容物を0℃に冷却し、ここに、ジフェニルジクロルシラン500gを窒素気流下で1時間かけて滴下した。リチウムが完全に消失するまで攪拌を続けた後、50℃でさらに1時間加熱攪拌した。室温に戻した後、反応混合物を氷水5L中に注いだ。沈殿物を濾取し、水で洗浄した後、シクロヘキサンで洗浄した。こうして得た粗生成物を酢酸エチルで再結晶することによりデカフェニルシクロペンタシラン180gを得た。
次に窒素置換した2Lのフラスコに上記で得たデカフェニルシクロペンタシラン100g及びトルエン1000mLを仕込み、塩化アルミニウム50gを加え窒素気流中で室温下5時間攪拌した。その後、塩化水素ガスを3時間バブリングした。
一方、別の3Lフラスコ中にリチウムアルミニウムヒドリド42gをジエチルエーテル500mLに懸濁させ、−20℃に冷却した。ここに、上記の反応混合物を、窒素気流下で1時間かけて添加し、−20℃で12時間攪拌を続けた。次いで、これを濾過した後、2.66kPa、70℃で蒸留することにより無色透明のシクロペンタシラン30gを得た(収率=11%)。
2Lの4つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、乾燥したテトラヒドロフラン1.5Lとリチウム27.4gを仕込み、窒素でバブリングした。内容物を0℃に冷却し、ここに、ジフェニルジクロルシラン500gを窒素気流下で1時間かけて滴下した。リチウムが完全に消失するまで攪拌を続けた後、反応混合物を氷水5L中に注いだ。沈殿物を濾取し水で洗浄した後、シクロヘキサンで洗浄して、ドデカフェニルシクロヘキサシラン216gを得た。
次に窒素置換した2Lのフラスコに上記で得たドデカフェニルシクロヘキサシラン100g及びトルエン1000mLを仕込み、塩化アルミニウム50gを加え窒素気流中で室温下5時間攪拌した。その後、塩化水素ガスを3時間バブリングした。
一方、別の3Lフラスコ中にリチウムアルミニウムヒドリド42gをジエチルエーテル500mLに懸濁させ、−20℃に冷却した。ここに、上記の反応混合物を、窒素気流下で1時間かけて添加し、−20℃で12時間攪拌を続けた。次いで、これを濾過した後、6.65kPa、115℃で蒸留することにより無色透明のシリルシクロペンタシラン20gを得た(収率=7.1%)。
石英製セパラブルフラスコに、エタノール471g、イオン交換水237gと水酸化テトラメチルアンモニウムの25%水溶液17.2gをとり、均一に攪拌した。この溶液にメチルトリメトキシシラン44.9gとテトラエトキシシラン68.6gの混合物を添加した。溶液を55℃に加熱し、その温度で2時間攪拌を継続した。次いで、マレイン酸の20%水溶液28gとプロピレングリコールモノプロピルエーテル440gを加え、その後、エバポレーターを使用し、50℃で完全加水分解縮合物換算で10%となるまで溶液を濃縮した。この溶液を分液漏斗に移し、酢酸エチル300gとイオン交換水300gを加え、よく震盪した。上層を取り出し、エバポレーターを用いて50℃にて完全加水分解縮合物換算10%となるまで溶液を濃縮した。この溶液を0.2μm孔径のテフロン(登録商標)製フィルターでろ過し、低誘電率の絶縁膜形成用組成物を得た。
得られた組成物をスピンコート法によりシリコンウエハ上に塗布し、空気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下で340℃、360℃、380℃の順でそれぞれ30分間ずつ加熱し、さらに真空下425℃で1時間加熱することにより、膜厚10000Å、比誘電率は2.2、弾性率は5.8GPaの無色透明の低誘電率の絶縁膜層を有するシリコン基板を作成した。
以下の実施例において、プラズマエンハンスト化学気相蒸着法による夜窒化チタン膜の形成は、以下の方法によった。
すなわち、試料基板をチャンバーに装着した後、チャンバー内を0.13Paまで減圧した。次いで基板温度を550℃に保ち、チャンバー内に四塩化チタンガス、窒素ガス及び水素ガスをそれぞれ10mL/min、350mL/min及び50mL/minの流量で流しつつ、チャンバー内を周波数2.45GHzのプラズマ雰囲気とし、1時間かけて基板上に窒化チタン膜を成膜した。
上記合成例1で合成したビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウム0.05g及び上記合成例4で合成したシクロペンタシラン0.05gをそれぞれ窒素下で石英製ボート型容器に計り取り混合した(Si/Ru比は、モル比で2.5に相当する。)。この石英製ボート型容器と、予め上記「低誘電率の絶縁膜層を有するシリコン基板の作成」の手法により作成した低誘電率の絶縁膜層を有するシリコン基板(以下、「絶縁膜基板」という。)とを、窒素気流中で石英製反応容器にセットした。このとき、絶縁膜基板は、石英型ボートに対して、反応容器内の気流の下流方向側近傍に置いた。室温で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した後、反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を100mL/minの流量で流し、さらに系内を1300Paにし、反応容器を120℃に30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、絶縁膜基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、101.3kPaで水素・窒素混合ガス(水素3vol%)を500mL/minの流量で流し、反応容器を350℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、絶縁膜基板上に金属光沢のある膜が得られた。この膜の膜厚は500Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに、またSi2p軌道に帰属されるピークが99.0eVに観測され、他の元素に由来するピークは全く観察されずルテニウムとシリコンとの混合膜であることが判った。
次いで、上記の、表面にルテニウムとシリコンの混合膜が形成された絶縁膜基板上に、プラズマエンハンスト化学気相蒸着法にて膜厚1000Åの窒化チタンを成膜し、シリコン基板上に低誘電率の絶縁膜、ルテニウムとシリコンの混合膜及び窒化チタン膜が順次形成された積層膜を得た。
この積層膜が形成されたシリコン基板について、碁盤目テープ法に準拠して密着性の評価を行ったところ、100個の碁盤目のうち1個も剥離せず、良好な密着性を示した。
上記合成例4で合成したシクロペンタシラン0.05gを窒素下で石英製ボート型容器に取った。この石英製ボート型容器と絶縁膜基板とを、窒素気流中で石英製反応容器にセットした。このとき、絶縁膜基板は、石英型ボートに対して、反応容器内の気流の下流方向側近傍に置いた。50℃で反応容器内に窒素ガスを50mL/minの流量にて30分流した。ボート型容器からミストが発生し、絶縁膜基板に堆積物が見られた。その後、窒素ガスを同じ流量で流しつつ、反応容器を120℃に加熱しさらに30分窒素ガスを流した。次いで、反応容器を300℃に昇温し、窒素気流下で1時間保持したところ、基板上に金属光沢のある膜が得られた。ここで、絶縁膜基板をいったん取り出し、形成された膜の膜厚を測定したところ、300Åであった。
続いて、上記合成例1で合成したビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウム0.05gを窒素下で石英製ボート型容器に取り、この石英製ボート型容器と上記で得られた表面に金属光沢のある膜を有する絶縁膜基板とを石英製反応容器に窒素中にてセットした。このときも、絶縁膜基板は、石英型ボートに対して、反応容器内の気流の下流方向側近傍に置いた。室温下で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。次いで、反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を100mL/minの流量で流し、さらに系内を1300Paにし、反応容器を120℃に30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、絶縁膜基板に更に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、反応容器内を水素・窒素混合ガス(水素3%)で満たして圧力を101.3kPaとした。この圧力を保ったまま水素・窒素混合ガス(水素3%)を500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を350℃に昇温し、その温度で1時間保持したところ、基板上の堆積物が金属光沢ある膜となった。新たに形成された部分の膜の膜厚を測定したところ、250Åであった。
このようにして形成された積層膜につき、ESCAスペクトルを測定したところ、膜最上部から100Åの深さまではRu3d軌道に帰属されるピーク280eVと284eVが観察され、膜の最上層部を除いては他の元素に由来するピークは全く観察されず、この部分は金属ルテニウム膜であることが判った。さらに膜最上部からの深さが100〜400Åの部分では、金属ルテニウム由来のピークの他にSi2p軌道に帰属されるピークが99.0eVに観測され始め、膜の深さ方向へ進むにつれてルテニウム由来のピーク強度が減少し、シリコン由来のピーク強度が増大した。よってこの部分においては、ルテニウムとシリコンが混在していることが判った。さらに膜最上部から400Åより深い部分では、シリコンに帰属されるピークのみが観測され、他の元素に由来するピークは全く観察されず、この部分についてはシリコン膜であることが判った。
次いで、上記の、表面にシリコン膜、ルテニウムとシリコンとが混在する膜及びルテニウム膜が順次形成された絶縁膜基板上に、プラズマエンハンスト化学気相蒸着法にて膜厚1000Åの窒化チタンを成膜し、シリコン基板上に低誘電率の絶縁膜、シリコン膜、ルテニウムとシリコンとが混在する膜、ルテニウム膜及び窒化チタン膜が順次形成された積層膜を得た。
この積層膜が形成されたシリコン基板について、碁盤目テープ法に準拠して密着性の評価を行ったところ、100個の碁盤目のうち1個も剥離せず、良好な密着性を示した。
上記合成例2で合成した1,5−シクロオクタジエニルルテニウムトリカルボニル0.03g及び上記合成例4で合成したシクロペンタシラン0.05gをそれぞれ窒素下で石英製ボート型容器に計り取り混合した(Si/Ru比は、モル比で3.0に相当する。)。この石英製ボート型容器と、絶縁膜基板とを、窒素気流中で石英製反応容器にセットした。このとき、絶縁膜基板は、石英型ボートに対して、反応容器内の気流の下流方向側近傍に置いた。室温で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した後、水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を100mL/minの流量で流し、さらに系内を665Paにし、反応容器を120℃に30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、絶縁膜基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、101.3kPaで水素・窒素混合ガス(水素3vol%)を500mL/minの流量で流し、反応容器を350℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、絶縁膜基板上に金属光沢のある膜が得られた。この膜の膜厚は450Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに、またSi2p軌道に帰属されるピークが99.0eVに観測され、他の元素に由来するピークは全く観察されずルテニウムとシリコンとの混合膜であることが判った。
次いで、上記の、表面にルテニウムとシリコンの混合膜が形成された絶縁膜基板上に、プラズマエンハンスト化学気相蒸着法にて膜厚1000Åの窒化チタンを成膜し、シリコン基板上に低誘電率の絶縁膜、ルテニウムとシリコンの混合膜及び窒化チタン膜が順次形成された積層膜を得た。
この積層膜が形成されたシリコン基板について、碁盤目テープ法に準拠して密着性の評価を行ったところ、100個の碁盤目のうち1個も剥離せず、良好な密着性を示した。
上記合成例4で合成したシクロペンタシラン0.05gを窒素下で石英製ボート型容器に取った。この石英製ボート型容器と絶縁膜基板とを、窒素気流中で石英製反応容器にセットした。このとき、絶縁膜基板は、石英型ボートに対して、反応容器内の気流の下流方向側近傍に置いた。50℃で反応容器内に窒素ガスを50mL/minの流量にて30分流した。ボート型容器からミストが発生し、絶縁膜基板に堆積物が見られた。その後、窒素ガスを同じ流量で流しつつ、反応容器を120℃に加熱しさらに30分窒素ガスを流した。次いで、反応容器を300℃に昇温し、窒素気流下で1時間保持したところ、基板上に金属光沢のある膜が得られた。ここで、絶縁膜基板をいったん取り出し、形成された膜の膜厚を測定したところ、300Åであった。
続いて、上記合成例2で合成した1,5−シクロオクタジエニルルテニウムトリカルボニル0.03gを窒素下で石英製ボート型容器に取り、この石英製ボート型容器と上記で得られた表面に金属光沢のある膜を有する絶縁膜基板とを石英製反応容器に窒素中にてセットした。このときも、絶縁膜基板は、石英型ボートに対して、反応容器内の気流の下流方向側近傍に置いた。室温下で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。次いで、反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を100mL/minの流量で流し、さらに系内を133Paにし、反応容器を180℃に30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、絶縁膜基板に更に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、反応容器内を水素・窒素混合ガス(水素3%)で満たして圧力を101.3kPaとした。この圧力を保ったまま水素・窒素混合ガス(水素3%)を500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を350℃に昇温し、その温度で1時間保持したところ、基板上の堆積物が金属光沢ある膜となった。新たに形成された部分の膜の膜厚を測定したところ、230Åであった。
このようにして形成された積層膜につき、ESCAスペクトルを測定したところ、膜最上部から90Åの深さまではRu3d軌道に帰属されるピーク280eVと284eVが観察され、膜の最上層部を除いては他の元素に由来するピークは全く観察されず、この部分は金属ルテニウム膜であることが判った。さらに膜最上部からの深さが90〜360Åの部分では、金属ルテニウム由来のピークの他にSi2p軌道に帰属されるピークが99.0eVに観測され始め、膜の深さ方向へ進むにつれてルテニウム由来のピーク強度が減少し、シリコン由来のピーク強度が増大した。よってこの部分においては、ルテニウムとシリコンが混在していることが判った。さらに膜最上部から360Åより深い部分では、シリコンに帰属されるピークのみが観測され、他の元素に由来するピークは全く観察されず、この部分についてはシリコン膜であることが判った。
次いで、上記の、表面にシリコン膜、ルテニウムとシリコンとが混在する膜及びルテニウム膜が順次形成された絶縁膜基板上に、プラズマエンハンスト化学気相蒸着法にて膜厚1000Åの窒化チタンを成膜し、シリコン基板上に低誘電率の絶縁膜、シリコン膜、ルテニウムとシリコンとが混在する膜、ルテニウム膜及び窒化チタン膜が順次形成された積層膜を得た。
この積層膜が形成されたシリコン基板について、碁盤目テープ法に準拠して密着性の評価を行ったところ、100個の碁盤目のうち1個も剥離せず、良好な密着性を示した。
窒素下にて、上記合成例3で合成したトリス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)ルテニウム1gと上記合成例5で合成したシリルシクロペンタシラン0.7gをトルエン78.4gに溶かした(Si/Ru比は、モル比で2.0に相当する。)。この溶液を、孔径が0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過した後、絶縁膜基板上に窒素雰囲気下、スピンコート法(3,500rpm)により塗布した。この塗布基板につき、窒素雰囲気中で溶媒を蒸発させた後、窒素雰囲気中300℃で30分、次いで400℃で30分加熱した。絶縁膜基板上に金属光沢のある膜が得られた得られた。この膜の膜厚は350Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに、またSi2p軌道に帰属されるピークが99.0eVに観測され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムとシリコンとの混合膜であることが判った。
次いで、上記の、表面にルテニウムとシリコンの混合膜が形成された絶縁膜基板上に、プラズマエンハンスト化学気相蒸着法にて膜厚1000Åの窒化チタンを成膜し、シリコン基板上に低誘電率の絶縁膜、ルテニウムとシリコンの混合膜及び窒化チタン膜が順次形成された積層膜を得た。
この積層膜が形成されたシリコン基板について、碁盤目テープ法に準拠して密着性の評価を行ったところ、100個の碁盤目のうち1個も剥離せず、良好な密着性を示した。
上記合成例5で合成したシリルシクロペンタシラン0.2gを窒素下にてトルエン9.8gに溶解し、孔径が0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで異物を除去した後、絶縁膜基板上に窒素雰囲気下、スピンコート法(3,500rpm)により塗布した。この塗布基板を窒素雰囲気中に置き、溶媒を蒸発させた後、窒素雰囲気中400℃で60分加熱した。絶縁膜基板上に金属光沢ある膜が得られた。この膜の膜厚は600Åであった。
次いで、上記合成例3で合成したトリス(1−エトキシブタン−1,3−ジケト)ルテニウム0.2gを窒素下でトルエン9.8gに溶解し、孔径が0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過した後、上記で得られた表面に金属光沢のある膜を有する絶縁膜基板上に、窒素雰囲気下、スピンコート法(回転数は3500rpmである。)により塗布した。この塗布基板を窒素雰囲気中に置き、溶媒を蒸発させた後、窒素雰囲気中500℃で30分加熱した。ここで新たに形成された部分の膜の膜厚を測定したところ、210Åであった。
このようにして形成された積層膜につき、ESCAスペクトルを測定したところ、膜最上部から90Åの深さまではRu3d軌道に帰属されるピーク280eVと284eVが観察され、膜の最上層部を除いては他の元素に由来するピークは全く観察されず、この部分は金属ルテニウム膜であることが判った。さらに膜最上部からの深さが90〜330Åの部分では、金属ルテニウム由来のピークの他にSi2p軌道に帰属されるピークが99.0eVに観測され始め、膜の深さ方向へ進むにつれてルテニウム由来のピーク強度が減少し、シリコン由来のピーク強度が増大した。よってこの部分においては、ルテニウムとシリコンが混在していることが判った。さらに膜最上部から330Åより深い部分では、シリコンに帰属されるピークのみが観測され、他の元素に由来するピークは全く観察されず、この部分についてはシリコン膜であることが判った。
次いで、上記の、表面にシリコン膜、ルテニウムとシリコンとが混在する膜及びルテニウム膜が順次形成された絶縁膜基板上に、プラズマエンハンスト化学気相蒸着法にて膜厚1000Åの窒化チタンを成膜し、シリコン基板上に低誘電率の絶縁膜、シリコン膜、ルテニウムとシリコンとが混在する膜、ルテニウム膜及び窒化チタン膜が順次形成された積層膜を得た。
この積層膜が形成されたシリコン基板について、碁盤目テープ法に準拠して密着性の評価を行ったところ、100個の碁盤目のうち1個も剥離せず、良好な密着性を示した。
市販のビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウム0.06gを窒素下で石英製ボート型容器に取った。この石英製ボート型容器と、絶縁膜基板とを、窒素気流中で石英製反応容器にセットした。このとき、絶縁膜基板は、石英型ボートに対して、反応容器内の気流の下流方向側近傍に置いた。室温下で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を100mL/minの流量で流し、さらに系内を1300Paにし、反応容器を120℃にて30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した絶縁膜基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、水素・窒素混合ガス(水素3%)を反応容器に満たした。さらに水素・窒素混合ガス(水素3%)を101.3kPaで500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を350℃に上昇し、そのまま1時間保持した。基板上に金属光沢のある膜が得られた。この膜の膜厚は300Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観測され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウム膜であることが判った。
ついで、この金属ルテニウム膜が形成された絶縁膜基盤上に、プラズマエンハンスト化学気相蒸着法にて膜厚1000Åの窒化チタンを成膜し、シリコン基板上に低誘電率の絶縁膜、ルテニウム膜及び窒化チタン膜が順次形成された積層膜を得た。
この積層膜が形成されたシリコン基板について、碁盤目テープ法に準拠して密着性の評価を行ったところ、100個の碁盤目のうち50個が剥離した。
絶縁膜基盤に、プラズマエンハンスト化学気相蒸着法にて膜厚1000Åの窒化チタンを成膜し、シリコン基板上に低誘電率の絶縁膜及び窒化チタン膜が順次形成された積層膜を得た。
この積層膜が形成されたシリコン基板について、碁盤目テープ法に準拠して密着性の評価を行ったところ、100個の碁盤目のうち70個が剥離した。
Claims (2)
- (A)下記一般式(1)、(3)、(7)または(9)で表される化合物から選択される少なくとも一種のルテニウム化合物、及び
(B)環状シラン化合物
を予め混合した原料を基体上に塗布し、次いで熱処理することを特徴とする、ルテニウム−シリコン混合膜からなる拡散防止膜層を低誘電率の絶縁膜上に形成する方法。
(Cp')2Ru ・・・(1)
ここで、Cp'は下記式(2)で表される配位子であり、2つあるCp'は同一でも互いに異なっていてもよい。
(D)Ru(CO)3 ・・・(3)
ここでDは下記式(4)〜(6)で表される配位子から選択される1種である。
ここで、ACAC'は下記式(8)で表される配位子であり、3つあるACAC'は同一であっても互いに異なっていてもよい。
(R3COO)3Ru ・・・(9)
ここで、R 3 は炭素数1〜6のアルキル基、フッ化アルキル基またはヒドロキシアルキル基であり、3つあるR3は同一でも互いに異なっていてもよい。 - (B)環状シラン化合物の塗膜を形成し、次いで熱処理して形成された膜上に(A)下記一般式(1)、(3)、(7)または(9)で表される化合物から選択される少なくとも一種のルテニウム化合物の塗膜を形成し、次いで熱処理することを特徴とする、ルテニウム−シリコン混合膜からなる拡散防止膜層を低誘電率の絶縁膜上に形成する方法。
(Cp')2Ru ・・・(1)
ここで、Cp'は下記式(2)で表される配位子であり、2つあるCp'は同一でも互いに異なっていてもよい。
(D)Ru(CO)3 ・・・(3)
ここでDは下記式(4)〜(6)で表される配位子から選択される1種である。
ここで、ACAC'は下記式(8)で表される配位子であり、3つあるACAC'は同一であっても互いに異なっていてもよい。
(R3COO)3Ru ・・・(9)
ここで、R 3 は炭素数1〜6のアルキル基、フッ化アルキル基またはヒドロキシアルキル基であり、3つあるR3は同一でも互いに異なっていてもよい。
基体上に上記(B)環状シラン化合物の塗膜を形成し、次いで熱処理して形成された膜上に上記(A)ルテニウム化合物の塗膜を形成し、次いで熱処理することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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