JP2005060814A - ルテニウム化合物および金属ルテニウム膜の製造法 - Google Patents

ルテニウム化合物および金属ルテニウム膜の製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】 良質の膜状金属ルテニウムを得ることができるルテニウム化合物およびそれを用いて化学気相成長方法により金属ルテニウム膜を製造する方法を提供すること。
【解決手段】 化学気相成長材料であるルテニウム化合物は、例えば下記式(1)で表される。
【化1】
Figure 2005060814

【選択図】 なし

Description

本発明は化学的気相成長のためのルテニウム化合物およびそれを用いて化学気相成長法により金属ルテニウム膜を製造する方法に関する。
従来、DRAM(Dynamic Random Access Memory)は、酸化ケイ素と窒化ケイ素の積層膜(ON膜)がキャパシタ絶縁膜用の誘電体として用いられ、メモリセル構造の3次元化によって容量の確保が図られてきた。しかし、最近のDRAMの急速な高集積化と微細化に伴い、従来法でメモリセル容量を確保することが困難になってきている。
そこで、近年はさらなる微細化に向けて、ON膜に比べて誘電率が非常に高いペロブスカイト型の結晶構造を有するチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、PZT等の材料が検討されている。しかし、このような高誘電率材料をキャパシタの絶縁膜に用いても、電極−誘電体界面に低誘電率層が形成される場合があり、キャパシタ容量を高めるに際して障害となっていた。この低誘電率層は、誘電体層から電極材料への酸素原子の移動によって形成されると考えられている。そこで、誘電体層からの酸素を取り込みにくい電極材料として、白金、ルテニウムを、また、酸化物自体が導電性を有するものとして、酸化ルテニウムを利用することが検討されている。これらのうち白金膜は、ドライエッチングによる加工が困難であるのに対して、金属ルテニウム膜あるいは酸化ルテニウム膜は比較的容易にドライエッチングにより加工することができ、ペロブスカイト型構造の誘電体を絶縁膜に有するキャパシタの電極として好適に用い得ることが知られている。
上記の金属ルテニウム膜の形成には、従来スパッタリング法が多く用いられてきたが、近年、より微細化した構造や、量産性への対応として、化学気相成長法の検討が行われている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
しかし、一般に化学気相成長法で形成した金属膜は微結晶の集合状態が疎であるなど表面モフォロジーが悪く、これをキャパシタの電極として用いると電界集中によるリーク電流の増大が生じる。また、微細化を実現するために膜厚を極めて薄い電極を形成しようとすると、均一の膜とはならず島状に金属部分が点在する欠陥を有する膜しか形成できずに電気伝導性に劣ることとなり、これをキャパシタ電極として用いるとキャパシタ面積を稼ぐことができず、キャパシタ動作に必要な容量が確保できないという問題が生じる。
近年、上記モルフォロジーの問題を解決する手段として、ビス(ジピバロイルメタナート)ルテニウムやルテノセン・ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウムを化学気相成長材料に用いた検討が行われている(例えば、特許文献6〜8参照。)。
しかし、これらの化学気相成長材料を用いた手法では、モルフォロジーや立体基板のステップカバレージの問題は向上するが、膜の導電性がスパッタ法などにより形成されたルテニウム膜より劣り、さらには成膜されたルテニウム膜中の不純物が多い問題点もあるため、これらを原料として化学気相成長法により形成されたルテニウム膜をDRAM用の電極として用いると、DRAM性能が不足する問題がある。
特開平11−340435号公報 特開2002−161367号公報 特開2002−212112号公報 特表2002−523634号公報 特開2002−69639号公報 特開平06−283438号公報 特開平11−35589号公報 特開2002−114795号公報
本発明は上記問題に鑑みなされたもので、その目的は良質の膜状の金属ルテニウムを得ることができる化学的気相成長のためのルテニウム化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記ルテニウム化合物を用いて金属ルテニウム膜を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、下記式(1)
Figure 2005060814
ここで、X1およびX2は、互に独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基または下記式(1)−1
Figure 2005060814
ここで、R1、R2およびR3は、互に独立に、炭素数1〜10の炭化水素基である、
で表される基である、但しX1およびX2が共に水素原子であることはない、
で表される化合物、下記式(2)
Ru(OCOR43 ・・・(2)
ここで、R4はトリフルオロメチル基または炭素数1〜10の炭化水素基であり、3つのR4は互に同一であっても異なっていてもよい、
で表される化合物、下記式(3)
YRu(CO)3 ・・・(3)
ここで、Yはシクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル、ブタジエニルまたは2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基である、
で表される化合物および下記式(4)
YRuHnm ・・・(4)
ここで、Yの定義は上記式(3)に同じであり、Lはカルボニル基、メチル基またはエテニル基であり、nは1〜4の整数でありそしてmは0〜2の整数である、但しn+m=3または4であり、mが2のときは2つのLは同一でも異なっていてもよい、
で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる、化学的気相成長のためのルテニウム化合物によって達成される。
また、本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、本発明のルテニウム化合物から化学的気相成長法により金属ルテニウム膜を製造する方法によって達成される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のルテニウム化合物は、上記式(1)、(2)、(3)または(4)で表される。
上記式(1)において、X1またはX2を有するシクロペンタジエニル基はη5−配位をしているものと理解されるべきである。
上記式(2)において、Rは炭素数1〜10の炭化水素基またはトリフルオロメチル基であり、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基またはトリフルオロメチル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基またはトリフルオロメチル基である。
上記式(3)および(4)において、Yはシクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプタジエニル基、シクロオクタジエニル基、ブタジエニル基または2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基である。シクロペンタジエニル基はη5−配置をしていると理解されるべきであり、Yのその他の基は非共役四電子配位をしていると理解されるべきである。
Yは好ましくはシクロペンタジエニル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、1,4−シクロヘキサジエニル基、1,3−シクロオクタジエニル基、1,4−シクロオクタジエニル基または2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基であり、これらのうち、シクロペンタジエニル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、1,4−シクロヘキサジエニル基または2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基であることがより好ましく、シクロペンタジエニル基または2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基であることがさらに好ましい。上記式(4)において、Lはカルボニル基、メチル基またはエテニル基であり、カルボニル基またはメチル基であることが好ましく、カルボニル基であることがさらに好ましい。
上記式(1)、(2)、(3)または(4)で表されるルテニウム化合物のうち、上記式(1)、(3)または(4)で表される化合物が好ましく、特にビス(トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(フルオロシクロペンタジエニル)ルテニウム、シクロオクタジエニルトリカルボニルルテニウム、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウム、シクロペンタジエニルルテニウムテトラヒドリド、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルルテニウムテトラヒドリド、シクロペンタジエニルカルボニルルテニウムジヒドリドまたは2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルカルボニルルテニウムジヒドリドであることが好ましい。
これらの化合物は化学気相成長材料としては単独で、または2種以上を混合して使用することができる。1種類の化学気相成長材料を単独で使用することが好ましい。
本発明の化学的気相成長方法は上記のルテニウム化合物を使用することを特徴とする。
本発明の化学的気相成長方法は、上記のルテニウム化合物を使用する他は、公知の方法を使用できるが、例えば次のようにして実施することができる。
(1)本発明のルテニウム化合物を気化せしめ、次いで(2)該気体を加熱して、上記化学気相成長材料としてのルテニウム化合物を熱分解せしめて基体上にルテニウムを堆積せしめる。なお、上記工程(1)において、本発明のルテニウム化合物の分解を伴っても本発明の効果を減殺するものではない。
ここで使用できる基体としては、例えば、ガラス、シリコン半導体、石英、金属、金属酸化物、合成樹脂等適宜の材料を使用できるが、ルテニウム化合物を熱分解せしめる工程温度に耐えられる材料であることが好ましい。
上記工程(1)において、ルテニウム化合物を気化せしめる温度としては、好ましくは50〜400℃であり、さらに好ましくは100〜350℃である。
上記工程(2)において、ルテニウム化合物を熱分解せしめる温度としては、好ましくは80〜500℃であり、さらに好ましくは100〜400℃である。この熱分解温度は、上記基体を予め熱しておくことで実現することができる。
本発明のルテニウム化合物として、上記式(1)で表される化合物を使用する場合には、熱分解温度としては150〜450℃が好ましく、さらに好ましくは180〜400℃である。
本発明のルテニウム化合物として、上記式(2)で表される化合物を使用する場合には、熱分解温度としては200〜500℃が好ましく、さらに好ましくは250〜450℃である。
本発明のルテニウム化合物として、上記式(3)で表される化合物を使用する場合は、熱分解温度としては80〜500℃が好ましく、さらに好ましくは100〜400℃である。
本発明のルテニウム化合物として、上記式(4)で表される化合物を使用する場合には、熱分解温度としては100〜400℃が好ましく、さらに好ましくは150〜350℃である。
本発明の化学的気相成長方法は、不活性気体の存在下もしくは不存在下並びに還元性気体の存在下もしくは不存在下のいずれの条件下でも実施することができる。また、不活性気体および還元性気体の両者が存在する条件で実施してもよい。ここで不活性気体としては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。また、還元性気体としては、例えば水素、アンモニア等を挙げることができる。
また、本発明の化学的気相成長方法は、加圧下、常圧下および減圧下のいずれの条件でも実施することができるが、常圧下または減圧下で実施することが好ましく、15,000Pa以下の圧力下で実施することがさらに好ましい。
上記の如くして得られたルテニウム膜は、後述の実施例から明らかなように、純度および電気伝導性が高く、例えば、キャパシタの電極等に好適に使用することができる。
本発明によれば、良質の膜状の金属ルテニウムを得ることができる化学的気相成長のためのルテニウム化合物およびそれを用いた化学気相成長方法が提供される。
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明する。
合成例1
ルテニウムカルボニル(Ru3(CO)12)2.1gを窒素置換した200mLフラスコ中に量り取り、50℃下で30分減圧処理を実施した。室温に戻した後に乾燥した窒素でフラスコを置換した。ここによく乾燥したトルエン100mLと、蒸留精製した1,5−シクロオクタジエン60mLを窒素雰囲気下で加えた。溶液を100℃に加熱し、9時間攪拌した。攪拌終了後、溶媒および未反応シクロオクタジエンを蒸留にて留去し、残った粘性溶液を窒素中でシリカゲルカラムをヘキサン展開溶媒で通過し、濃褐色部を採取した。溶媒を乾燥後、133Paにて減圧下、80℃で混合物を昇華し、黄色の針状結晶としてシクロオクタジエニルトリカルボニルルテニウム0.8gを得た(収率31%)。
合成例2
窒素置換した300mLフラスコ中で、トリメチルシリルクロライド11gをよく乾燥したテトラヒドロフラン30mLに溶解し、溶液を−78℃に冷却した。ここにシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液(2.0mol/L)100mLを窒素気流下で1時間掛けて滴下した。溶液を−78℃で1時間攪拌し、さらに6時間かけて室温に戻した。混合溶液中に析出した塩を窒素雰囲気下で濾過により除き、溶液を蒸留することでトリメチルシリルシクロペンタジエン8gを得た。
窒素置換した300mLフラスコ中で、金属ナトリウム0.5gをよく乾燥したテトラヒドロフラン溶液に混合し、これを−78℃に冷却した。ここに上記で合成したトリメチルシリルシクロペンタジエン2.5gをテトラヒドロフラン30mLに溶解した溶液を窒素気流下で1時間かけて滴下して、さらに3時間攪拌しつつ室温まで昇温し、トリメチルシリルシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液を得た。
これとは別に、窒素置換した500mLフラスコ中で、ジクロロ(シクロオクタジエニル)ルテニウム5gをよく乾燥したテトラヒドロフラン200mLに溶解した。この溶液を−78℃に冷却し、ここに先に合成したトリメチルシリルシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液を窒素気流下で1時間かけて滴下した。溶液は−78℃で3時間攪拌し、その後攪拌させながら12時間掛けて室温に戻した。溶液をアルゴンガス中で中性アルミナカラムを一度通して精製し、濃縮後、再度中性アルミナカラムにより分離・精製を行い、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウムを0.9g得た(収率13%)。
合成例3
窒素置換した100mLフラスコ中で、金属ナトリウム0.25gをよく乾燥したテトラヒドロフランと混合し、−78℃に冷却した。ここにトリメチルシリルシクロペンタジエン1.3gをテトラヒドロフラン30mLに溶解した溶液を窒素気流下で1時間かけて滴下して、攪拌しつつ3時間かけて室温まで昇温し、トリメチルシリルシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液を得た。
これとは別にシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液(2.0mol/L)18mLを用意した。
さらにこれらとは別に、窒素置換した500mLフラスコ中で、ジクロロ(1,5―シクロオクタジエニル)ルテニウム5gをよく乾燥したテトラヒドロフラン200mLに溶解した。この溶液を−78℃に冷却し、ここに先に調整したトリメチルシリルシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液およびシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液のそれぞれを同時に窒素気流下で1時間かけて滴下した。溶液は−78℃で3時間攪拌し、その後攪拌させながら12時間かけて室温に昇温した。溶液をアルゴンガス中で中性アルミナカラムを一度通して精製し、濃縮後、再度中性アルミナカラムにより分離・精製を行い、トリメチルシリルシクロペンタジエニル(シクロペンタジエニル)ルテニウムを0.23g得た(収率4.3%)。
合成例4
ルテニウムカルボニル(Ru3(CO)12)2.1gを200mLフラスコ中に量り取り、40℃下で30分減圧処理を実施した。室温に戻した後に乾燥した窒素でフラスコを置換した。ここによく乾燥したトルエン100mLと、蒸留精製した2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン40mLを窒素雰囲気下で加えた。溶液を85℃にて環流し、9時間攪拌した。攪拌終了後、溶媒および未反応2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンを減圧にて除去し、残った粘性溶液を窒素中でカラムクロマトグラフィー(充填剤はシリカゲル、展開媒はヘキサン。)で精製し、濃褐色部を採取した。溶媒を乾燥後、130Pa、80℃にて昇華精製し、黄色の針状結晶として2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルトリカルボニルルテニウム0.6gを得た(収率42%)。
合成例5
ルテニウムカルボニル(Ru3(CO)12)2.1gを窒素置換した200mLオートクレーブ中に量り取り、40℃下で30分減圧処理を実施した。室温に戻した後に乾燥した窒素でオートクレーブを置換した。ここによく乾燥したトルエン100mLと、ブタジエン50mLを窒素雰囲気下で加えた。密閉した後、混合物を80℃に加熱し、9時間攪拌した。攪拌終了後、溶媒および未反応ブタジエンを蒸留で除去し、残った粘性溶液を窒素中でカラムクロマトグラフィー(充填剤はシリカゲル、展開媒はヘキサン。)で精製し、濃褐色部を採取した。溶媒を除去後、650Pa、90℃にて昇華精製し、黄色の針状結晶としてブタジエニルトリカルボニルルテニウム0.3gを得た(収率28%)。
合成例6
窒素置換した200mLナス型フラスコ中に2−シクロペンテン−1−オン10gを計り取り、トルエン100gに溶解した。窒素気流中、−78℃に冷却して、トリフルオロ酢酸0.1gを添加した。さらにトリフルオロメチルトリメチルシラン22gをトルエン50mLに溶解した溶液を2時間かけて滴下した。その後5時間攪拌した後、2時間かけて室温に戻した。
反応混合物を蒸留およびカラムクロマトグラフィー(充填剤はシリカゲル、展開媒はヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(混合比=8/1(容積比))により精製し、2−トリフルオロメチル−2−シクロペンテン−1−オールを得た(収量7.6g、収率42%)。
別の窒素置換した200mLフラスコ中で上記2−トリフルオロメチル−2−シクロペンテン−1−オールを5gと脱水エタノール100mLを混合し、窒素気流中−10℃に冷却した後、0.1規定塩酸10mLを1時間かけて滴下した。その後冷却を止め、攪拌しつつ3時間かけて室温に戻した。次いで50℃に加熱し、その温度において1時間攪拌を継続した後、室温まで冷却した。
反応混合物を飽和食塩水で洗浄し、その後蒸留およびカラムクロマトグラフィー(充填剤はシリカゲル、展開媒はヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(混合比=5/1(容積比))により精製し、トリフルオロメチル−1,3−シクロペンタジエンを得た(収量2.6g、収率60%)。
アルゴン置換した200mLフラスコ中によく乾燥したテトラヒドロフラン50mLを取り、その中に金属ナトリウム0.5gを投入し、−78℃に冷却した。ここに上記で合成したトリフルオロメチル−1,3−シクロペンタジエン2.5gをテトラヒドロフラン30mLに溶解した溶液を1時間かけて滴下して、さらに3時間攪拌しつつ室温まで昇温し、トリフルオロメチルシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液(濃度0.62mol/L)を得た。
これとは別に、アルゴン置換した500mLフラスコ中によく乾燥したテトラヒドロフラン200mLを取り、その中にジクロロ(シクロオクタジエニル)ルテニウム5gを投入し、よく混合し、懸濁状とした。この懸濁液をアルゴン気流中で−78℃に冷却し、ここに上記で合成したトリフルオロメチルシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液15mLを1時間かけて滴下した。反応混合物をさらに−78℃で3時間攪拌し、その後攪拌しつつ12時間掛けて室温に戻した。反応混合物につき、アルゴン気流中で中性アルミナカラムを一度通して精製し、濃縮後、再度中性アルミナカラムにより精製を行い、ビス(トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ルテニウムを0.2g得た(収率30%)。
合成例7
窒素置換した200mLナス型フラスコ中に1,3−シクロペンタジエニル−1−オール10gを計り取り、トルエン100gに溶解した。窒素気流中、−78℃に冷却して、1,3−ジメチル−2−ジフルオロイミダゾリジン25gをトルエン50mLで希釈した溶液を2時間かけて滴下した。その後5時間攪拌した後、2時間かけて室温に戻した。
反応混合物を蒸留およびカラムクロマトグラフィー(充填剤はシリカゲル、展開媒はヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(混合比=5/1(容積比))により精製し、フルオロシクロペンタジエンを得た(収量4.1g、収率40%)。
アルゴン置換した200mLフラスコ中によく乾燥したテトラヒドロフラン50mLを取り、その中に金属ナトリウム0.5gを投入し、−78℃に冷却した。ここに上記で合成したフルオロシクロペンタジエン2.1gをテトラヒドロフラン30mLに溶解した溶液を1時間かけて滴下して、さらに3時間攪拌しつつ室温まで昇温し、フルオロシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液(濃度0.59mol/L)を得た。
これとは別に、アルゴン置換した500mLフラスコ中によく乾燥したテトラヒドロフラン200mLを取り、その中にジクロロ(シクロオクタジエニル)ルテニウム5gを投入し、よく混合し、懸濁状とした。この懸濁液をアルゴン気流中で−78℃に冷却し、ここに上記で合成したフルオロシクロペンタジエニルナトリウムのテトラヒドロフラン溶液14mLを1時間かけて滴下した。反応混合物をさらに−78℃で3時間攪拌し、その後攪拌しつつ12時間掛けて室温に戻した。反応混合物につき、アルゴン気流中で中性アルミナカラムを一度通して精製し、濃縮後、再度中性アルミナカラムにより精製を行い、ビス(フルオロシクロペンタジエニル)ルテニウムを0.4g得た(収率8.4%)。
合成例8
アルゴン置換した100mLナスフラスコ中でトリフルオロ酢酸9.7gをエタノール30mLに溶解し、ここに水酸化ナトリウム3.4gを添加して、室温にて2時間攪拌した。
一方、別のアルゴン置換した500mL三口フラスコ中で、塩化ルテニウム3水和物5gをメタノール100mLに溶解した。この溶液を0℃に冷却し、上記で調製したトリフルオロ酢酸と水酸化ナトリウムとエタノールの溶液の全量を1時間かけて滴下し、さらに攪拌しつつ3時間かけて室温まで昇温した。
この反応混合物を1L分液漏斗中に取り、これにエチルエーテルを200mL添加し、0.1規定塩酸で2回洗浄し次いで飽和食塩水で2回洗浄した。その後エーテル溶液を減圧にて除去し、トリフルオロ酢酸ルテニウム(Ru(OCOCF33)3.9gを得た(収率46%)。
合成例9
アルゴン置換した100mLナスフラスコ中で2−エチルヘキサン酸12.2gをエタノール30mLに溶解し、ここに水酸化ナトリウム3.4gを添加して、室温にて2時間攪拌した。
一方、別のアルゴン置換した500mL三口フラスコ中で、塩化ルテニウム3水和物5gをメタノール100mLに溶解した。この溶液を0℃に冷却し、上記で調製した2−エチルヘキサン酸と水酸化ナトリウムとエタノールの溶液の全量を1時間かけて滴下し、さらに攪拌しつつ3時間かけて室温まで昇温した。
この反応混合物を1L分液漏斗中に取り、これにエチルエーテルを200mL添加し、0.1規定塩酸で2回洗浄し次いで飽和食塩水で2回洗浄した。その後エーテル溶液を減圧にて除去し、2−エチルヘキサン酸ルテニウム(Ru(OCOC(C25)(CH23CH33)5.8gを得た(収率53%)。
合成例10
アルゴン置換した200mLフラスコ中にルテニウムカルボニル(Ru3(CO)12)2.1gを計り取り、25℃において30分間減圧下においた。ついで乾燥したアルゴンを導入し、常圧とした後、よく乾燥したトルエン100mLと、蒸留精製したシクロペンタジエン60mLを加えた。アルゴン気流下、溶液を90℃に加熱し、4時間攪拌した。攪拌終了後、溶媒および未反応シクロペンタジエンを減圧にて除去し、赤褐色ペースト状の反応混合物を得た。この反応混合物をアルゴン中でペンタンに溶解させ、不溶物を濾別した後、アルゴン雰囲気下で中性アルミナカラムに通して精製し、黄色のフラクションを採取した。次いで、溶媒を減圧にて除去し、次いで133Pa、80℃において昇華し、黄色の針状結晶としてシクロペンタジエニルトリカルボニルルテニウムを0.15g得た。
次いで、アルゴン置換した100mLオートクレーブ中に、上記で調製したシクロペンタジエニルトリカルボニルルテニウム0.8gを乾燥したトルエン50mLに溶解した溶液を入れた。オートクレーブに水素を5MPaの圧力で加え、120℃で5時間攪拌した。攪拌停止後、室温に戻した後水素を放出して、反応混合物をアルゴンによる圧送にて取り出した。溶媒を減圧にて除去し、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒(混合比=1/20(容積比))を用いて再結晶を行い、シクロペンタジエニルルテニウムテトラヒドリド0.3gを得た(収率12%)。
合成例11
アルゴン置換した200mLフラスコ中にルテニウムカルボニル(Ru3(CO)12)2.1gを計り取り、25℃において30分間減圧下においた。次いで乾燥したアルゴンを導入し、常圧とした後、よく乾燥したトルエン100mLと、蒸留精製した2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン30mLを加えた。アルゴン気流下、溶液を90℃に加熱環流し、4時間攪拌した。攪拌終了後、溶媒および未反応2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンを減圧にて除去し、赤褐色ペースト状反応混合物を得た。この反応混合物をアルゴン中でペンタンに溶解させ、不溶物を濾別した。この溶液部をアルゴン雰囲気下で中性アルミナカラムに通して精製し、黄色のフラクションを採取した。その後溶媒を減圧にて除去し、次いで133Pa、80℃において昇華し、黄色の針状結晶として2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルトリカルボニルルテニウムを0.13g得た。
次いで、アルゴン置換した100mLオートクレーブ中に、上記で調製した2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルトリカルボニルルテニウム0.8gをトルエン50mLに溶解した溶液を入れた。オートクレーブに水素を5MPaの圧力で加え、120℃で5時間攪拌した。攪拌停止後、室温に戻した後水素を放出して、反応混合物をアルゴンによる圧送にて取り出した。溶媒を減圧にて除去し、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒(混合比=1/20(容積比))を用いて再結晶を行い、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルルテニウムテトラヒドリド0.3gを得た。
以下の実施例において、比抵抗はナプソン社製探針抵抗率測定器、形式「RT−80/RG−80」により測定した。膜厚はフィリップス社製斜入射X線分析装置、形式「X’Pert MRD」により測定した。ESCAスペクトルは日本電子(株)製形式「JPS80」にて測定した。また密着性の評価は、JIS K−5400に準拠して碁盤目テープ法によった。
実施例1
合成例1にて得られたシクロオクタジエニルトリカルボニルルテニウム0.1gをアルゴンガス中で石英製ボート型容器に量り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流方向側近傍に石英基板を置き、室温下で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を100mL/minの流量で流し、さらに系内を1,333Paにし、反応容器を180℃に30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、101.3kPaで水素・窒素混合ガス(水素3%)を500mL/minの流量で流し、反応容器を350℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は450Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また炭素に基づくピークは観察されなかった。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で抵抗率を測定したところ、20μΩcmであった。また、ここで形成されたRu膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とRu膜との剥離は全く見られなかった。さらに、この膜の膜密度は12.2g/cm3であった。
実施例2
合成例1にて得られたシクロオクタジエニルトリカルボニルルテニウム0.1gをアルゴンガス中で石英製ボート型容器に量り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流方向側近傍に石英基板を置き、室温下で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を30mL/minの流量で流し、さらに系内を80Paにし、反応容器を170℃に40分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、101.3kPaで水素・窒素混合ガス(水素3%)を500mL/minの流量で流し、反応容器を350℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は730Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また炭素に基づくピークは観察されなかった。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で抵抗率を測定したところ、17μΩcmであった。また、ここで形成されたRu膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とRu膜との剥離は全く見られなかった。さらに、この膜の膜密度は11.2g/cm3であった。
実施例3
上記合成例2で得られたビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ルテニウム0.1gをアルゴンガス中で石英製ボート型容器に量り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流方向側近傍に石英基板を置き、室温下で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を50mL/minの流量で流し、さらに系内を1333Paにし、反応容器を170℃に30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、101.3kPaで水素・窒素混合ガス(水素3%)を500mL/minの流量で流し、反応容器を350℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は350Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また炭素に基づくピークは観察されなかった。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で抵抗率を測定したところ、15μΩcmであった。また、ここで形成されたRu膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とRu膜との剥離は全く見られなかった。さらに、この膜の膜密度は11.8g/cm3であった。
実施例4
上記合成例3で得られたトリメチルシリルシクロペンタジエニル(シクロペンタジエニル)ルテニウム0.1gをアルゴンガス中で石英製ボート型容器に量り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流方向側近傍に石英基板を置き、室温下で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を50mL/minの流量で流し、さらに系内を1,333Paにし、反応容器を170℃に30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、101.3kPaで水素・窒素混合ガス(水素3%)を500mL/minの流量で流し、反応容器を350℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は380Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また炭素に基づくピークは観察されなかった。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で抵抗率を測定したところ、45μΩcmであった。また、ここで形成されたRu膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とRu膜との剥離は全く見られなかった。さらに、この膜の膜密度は11.7g/cm3であった。
実施例5
合成例4にて得られた2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルトリカルボニルルテニウム0.1gをアルゴンガス中で石英製ボート型容器に量り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流方向側近傍に石英基板を置き、室温下で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を100mL/minの流量で流し、さらに系内を130Paにし、反応容器を180℃に30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、101.3kPaで水素・窒素混合ガス(水素3%)を500mL/minの流量で流し、反応容器を350℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は450Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また炭素に基づくピークは観察されなかった。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で抵抗率を測定したところ、14.3μΩcmであった。また、ここで形成されたRu膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とRu膜との剥離は全く見られなかった。さらに、この膜の膜密度は12.3g/cm3であった。
実施例6
合成例5にて得られたブタジエニルトリカルボニルルテニウム0.1gをアルゴンガス中で石英製ボート型容器に量り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流方向側近傍に石英基板を置き、室温下で反応容器内に窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を100mL/minの流量で流し、さらに系内を130Paにし、反応容器を120℃に30分加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、101.3kPaで水素・窒素混合ガス(水素3%)を500mL/minの流量で流し、反応容器を350℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は450Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また炭素に基づくピークは観察されなかった。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で抵抗率を測定したところ、14.9μΩcmであった。また、ここで形成されたRu膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とRu膜との剥離は全く見られなかった。さらに、この膜の膜密度は12.0g/cm3であった。
比較例1
実施例3において、ビストリメチルシリルシクロペンタジエニルルテニウムの代わりに市販のビスエチルシクロペンタジエニルルテニウムを用い、反応容器の加熱温度を300℃とした他は実施例3と同様にして実施し、厚さ600Åの膜を得た。この膜をESCAにより分析した所、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、金属ルテニウムであることが分かった。この金属ルテニウム膜の抵抗率を4探針法により測定したところ、125μΩcmであった。また、ここで形成されたRu膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、碁盤目100個中、100個が剥離してしまった。さらに、この膜の膜密度は11.2g/cm3であった。
実施例7
石英製筒状反応容器内に、合成例6にて得られたビス(トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム0.1gを入れた石英製ボート型容器および石英基板をセットした。室温下で反応容器内に石英性ボート型容器側から窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を30mL/minの流量で流し、さらに系内を6700Paに減圧し、反応容器を300℃に加熱した。ボート型容器からミストが発生し、同時に石英基板に堆積物が見られた。
乾燥窒素ガスを導入して常圧に戻し、次いで101.3kPaにて水素・窒素混合ガス(水素3vol%)を500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を400℃に昇温し1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。
この膜の膜厚は550Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、23μΩcmであった。この膜の膜密度は12.2g/cm3であった。
また、ここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
実施例8
実施例7において、基板としてシリコン熱酸化膜を表面に有する基板(Electronics & Materials社製、商品名「Th−SiO2」シリーズ、SiO2膜厚500Å)を使用した他は実施例7と同様にして実施し、膜厚540Åの金属光沢を有する膜を得た。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、20μΩcmであった。この膜の膜密度は12.4g/cm3であった。
また、ここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
実施例9
石英製筒状反応容器内に、合成例7で得られたビス(フルオロシクロペンタジエニル)ルテニウム0.1gを入れた石英製ボート型容器および石英基板をセットした。室温下で反応容器内に石英性ボート型容器側から窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を50mL/minの流量で流し、さらに系内を1300Paに減圧し、反応容器を200℃に加熱した。ボート型容器からミストが発生し、同時に石英基板に堆積物が30分で400Åの厚みに堆積された。
乾燥窒素ガスを導入して常圧に戻し、次いで101.3kPaにて水素・窒素混合ガス(水素3vol%)を500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を400℃に昇温し1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。
この膜の膜厚は380Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、18μΩcmであった。この膜の膜密度は12.3g/cm3であった。
また、ここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
実施例10
実施例9において、基板としてシリコン熱酸化膜を表面に有する基板(Electronics & Materials社製、商品名「Th−SiO2」シリーズ、SiO2膜厚500Å)を使用した他は実施例9と同様にして実施し、膜厚390Åの金属光沢を有する膜を得た。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、18μΩcmであった。この膜の膜密度は12.4g/cm3であった。
また、ここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
実施例11
石英製筒状反応容器内に、合成例8で得られたトリフルオロ酢酸ルテニウム0.1gを入れた石英製ボート型容器および石英基板をセットした。室温下で反応容器内に石英性ボート型容器側から窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を50mL/minの流量で流し、さらに系内を1300Paに減圧し、反応容器を250℃に加熱した。ボート型容器からミストが発生し、同時に石英基板に堆積物が30分で480Åの厚みに形成された。
乾燥窒素ガスを導入して常圧に戻し、次いで101.3kPaにて水素・窒素混合ガス(水素3vol%)を500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を500℃に昇温し1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。
この膜の膜厚は410Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、45μΩcmであった。この膜の膜密度は12.0g/cm3であった。
また、ここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
実施例12
石英製筒状反応容器内に、合成例9で得られた2−エチルヘキサン酸ルテニウム0.1gを入れた石英製ボート型容器および石英基板をセットした。室温下で反応容器内に石英性ボート型容器側から窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を30mL/minの流量で流し、さらに系内を1,300Paに減圧し、反応容器を300℃に加熱した。ボート型容器からミストが発生し、同時に石英基板に堆積物が30分で530Åの厚みに形成された。
乾燥窒素ガスを導入して常圧に戻し、次いで101.3kPaにて水素・窒素混合ガス(水素3vol%)を500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を500℃に昇温し1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。
この膜の膜厚は400Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、49μΩcmであった。この膜の膜密度は11.9g/cm3であった。
また、ここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
実施例13
石英製筒状反応容器内に、上記合成例10で得られたシクロペンタジエニルルテニウムテトラヒドリド0.1gを入れた石英製ボート型容器および石英基板をセットした。室温下で反応容器内に石英性ボート型容器側から窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を50mL/minの流量で流し、さらに系内を650Paに減圧し、反応容器を300℃に加熱した。ボート型容器からミストが発生し、同時に石英基板に堆積物が30分で580Åの厚みに形成された。
乾燥窒素ガスを導入して常圧に戻し、次いで101.3kPaにて水素・窒素混合ガス(水素3vol%)を500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を350℃に昇温し1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。
この膜の膜厚は500Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、17μΩcmであった。この膜の膜密度は12.6g/cm3であった。
また、ここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
実施例14
石英製筒状反応容器内に、上記合成例10で得られたシクロペンタジエニルルテニウムテトラヒドリド0.1gを入れた石英製ボート型容器および石英基板をセットした。室温下で反応容器内に石英性ボート型容器側から窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に窒素ガスを50mL/minの流量で流し、さらに系内を650Paに減圧し、反応容器を150℃に加熱した。ボート型容器からミストが発生し、同時に石英基板に堆積物が30分で460Åの厚みに形成された。
乾燥窒素ガスを導入して常圧に戻し、次いで101.3kPaにて窒素ガスを500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を400℃に昇温し1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。
この膜の膜厚は380Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、18.1μΩcmであった。この膜の膜密度は12.1g/cm3であった。
また、ここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
実施例15
石英製筒状反応容器内に、上記合成例11で得られた2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルルテニウムテトラヒドリド0.1gを入れた石英製ボート型容器および石英基板をセットした。室温下で反応容器内に石英性ボート型容器側から窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に窒素ガスを50mL/minの流量で流し、さらに系内を650Paに減圧し、反応容器を150℃に加熱した。ボート型容器からミストが発生し、同時に石英基板に堆積物が30分で490Åの厚みに形成された。
乾燥窒素ガスを導入して常圧に戻し、次いで101.3kPaにて窒素ガスを500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を400℃に昇温し1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。
この膜の膜厚は410Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、13μΩcmであった。この膜の膜密度は12.6g/cm3であった。
また、ここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
実施例16
石英製筒状反応容器内に、上記合成例11で得られた2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニルルテニウムテトラヒドリド0.1gを入れた石英製ボート型容器および石英基板をセットした。室温下で反応容器内に石英製ボート型容器側から窒素ガスを250mL/minの流量にて30分流した。その後反応容器中に水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を50mL/minの流量で流し、さらに系内を650Paに減圧し、反応容器を180℃に加熱した。ボート型容器からミストが発生し、同時に石英基板に堆積物が30分で470Åの厚みに形成された。
乾燥窒素ガスを導入して常圧に戻し、次いで101.3kPaにて水素・窒素混合ガス(水素含量3vol%)を500mL/minの流量で流しつつ、反応容器を350℃に昇温し1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。
この膜の膜厚は410Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。また、この金属ルテニウム膜を4端子法で比抵抗を測定したところ、15.8μΩcmであった。この膜の膜密度は12.6g/cm3であった。
またここで形成されたルテニウム膜につき、碁盤目テープ法によって密着性を評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。

Claims (2)

  1. 下記式(1)
    Figure 2005060814
    ここで、X1およびX2は、互に独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基または下記式(1)−1
    Figure 2005060814
    ここで、R1、R2およびR3は、互に独立に、炭素数1〜10の炭化水素基である、
    で表される基である、但しX1およびX2が共に水素原子であることはない、
    で表される化合物、下記式(2)
    Ru(OCOR43 ・・・(2)
    ここで、R4はトリフルオロメチル基または炭素数1〜10の炭化水素基であり、3つのR4は互に同一であっても異なっていてもよい、
    で表される化合物、下記式(3)
    YRu(CO)3 ・・・(3)
    ここで、Yはシクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル、ブタジエニルまたは2,3−ジメチル−1,3−ブタジエニル基である、
    で表される化合物および下記式(4)
    YRuHnm ・・・(4)
    ここで、Yの定義は上記式(3)に同じであり、Lはカルボニル基、メチル基またはエテニル基であり、nは1〜4の整数でありそしてmは0〜2の整数である、但しn+m=3または4であり、mが2のときは2つのLは同一でも異なっていてもよい、
    で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる、化学的気相成長のためのルテニウム化合物。
  2. 請求項1のルテニウム化合物から化学的気相成長法により金属ルテニウム膜を製造する方法。

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