JP4771516B2 - 化学気相成長材料及び化学気相成長方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化学気相成長材料及び化学気相成長方法に関する。
DRAM(Dynamic Random Access Memory)に代表される半導体デバイスは、その高集積化と微細化の急激な要求に伴い、従来法でメモリセル容量を確保することが困難になってきている。そこで、近年はさらなる高集積化と微細化に向けて、デバイスを構成する各金属膜、金属酸化膜の材料変更が必要となっている。
なかでも、半導体デバイス内の多層配線用途での導電性金属膜の改良が要求されており、新たに導電性の高い銅配線への変換が進んでいる。この銅配線の導電性を高める目的で多層配線の層関絶縁膜材料には低誘電率材料(Low−k材料)が用いられているが、この低誘電率材料中に含まれている酸素原子が銅配線に容易に取り込まれその導電性を下げるといった問題が生じている。その為、低誘電率材料からの酸素の移動を防ぐ目的で、低誘電率材料と銅配線の間にバリア膜を形成する技術が検討されている。このバリア膜用途として、誘電体層からの酸素を取り込みにくい電極材料として、白金、ルテニウムを、また、酸化物自体が導電性を有するものとして、酸化ルテニウムを利用することが検討されている。これらのうち白金膜は、ドライエッチングによる加工が困難であるのに対して、金属ルテニウム膜あるいは酸化ルテニウム膜は比較的容易にドライエッチングにより加工することができ、バリア膜材料として好適に用い得ることが知られている(非特許文献1〜3参照)。
また、微細化に伴う複雑な銅配線の形成法として、半導体ウエハー面に形成された配線溝に銅をメッキ法にて埋め込むダマシン法が現在検討されている。このダマシン法に用いる配線溝材料としては通常上記低誘電率材料等の絶縁性材料が用いられるため、メッキの為の導電性付与とメッキの成長を安定的に促進するメッキ成長核の付与の目的から、導電性金属膜を配線溝上部に成膜(メッキ成長膜)している。現在はこのメッキ成長膜にスパッタ法で成膜された銅薄膜を用いている(特許文献1〜2参照)。このメッキ成長層の材料として銅以外の導電性金属の導入が検討されており、特に上記バリア膜とメッキ成長膜双方の役割を同時に満たす目的から、金属ルテニウムが注目されている。
上記の金属ルテニウム膜の形成には、従来スパッタリング法が多く用いられてきたが、近年、より微細化した構造や、薄膜化、量産性への対応として、化学気相成長法の検討が行われている(特許文献3〜7参照。)。
しかし、一般に化学気相成長法で形成した金属膜は微結晶の集合状態が疎であるなど表面モルフォロジーが悪く、これをバリア膜として用いると膜欠損によるバリア能力の低下が生じる。また、微細化を実現するために膜厚を極めて薄い電極を形成しようとすると、均一の膜とはならず島状に金属部分が点在する欠陥を有する膜しか形成できずに電気伝導性に劣ることとなり、これをメッキ成長膜として用いると不均一な銅配線の形成を招き、銅配線エラーの原因となる。
近年、上記モルフォロジーの問題を解決する手段として、ビス(ジピバロイルメタナート)ルテニウムやルテノセン、ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウムを化学気相成長材料に用いた検討が行われている(特許文献8〜10参照。)。
しかし、これらの化学気相成長材料を用いた手法では、モルフォロジーは向上するが、膜の導電性がスパッタ法などにより形成されたルテニウム膜より劣り、さらには成膜されたルテニウム膜中の不純物が多い問題点もあるため、これらを原料として化学気相成長法により形成されたルテニウム膜をDRAM用の電極として用いると、DRAM性能が不足する問題がある。
さらにこれらの化学気相成長材料を製造工程で用いる場合、その製品歩留まり向上目的からも材料の良好な保存安定性が要求される。しかし、既存のルテノセンやビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム等は、空気の混入などにより短時間で材料の酸化、性能劣化が生じ、結果として成膜したルテニウムの導電性が低下してしまい、その保存安定性と空気中での安定な取扱い性に問題がある。保存安定性が良好なビス(ジピバロイルメタナート)ルテニウムなどを化学気相成長材料に用いると、成膜されたルテニウム膜中の不純物が多く、良質なルテニウム膜が得られない問題がある。
日経マイクロデバイス 2000年2月号PP93−106 電子材料 2003年11月号PP47−49 Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.43,No.6A(2004)PP3315−3319 特開2000−080494号報 特開2003−318258号報 特開平11−340435号公報 特開2002−161367号公報 特開2002−212112号公報 特表2002−523634号公報 特開2002−69639号公報 特開平06−283438号公報 特開平11−35589号公報 特開2002−114795号公報
本発明は上記問題に鑑みなされたもので、その目的は保存安定性に優れ、良質なルテニウム膜を得ることができる化学的気成長相材料及びその化学的気相成長材料を用いてルテニウム膜を形成する簡易な方法を提供することにある。
本発明によると、本発明の上記課題は、第一に、下記式(1)
RuLY (1)
ここで、Lは下記式(2)
Figure 0004771516
で表される基であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又はメチル基であり、そしてYは1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、シクロペンタジエニル、1,3−ブタジエンまたは2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンである、
で表わされる化合物からなる化学気相成長材料によって達成される。
本発明によると、本発明の上記課題は、第二に、上記の化学気相成長材料から、化学気相成長法によりルテニウム膜を形成する方法によって解決される。
本発明によると、長期間の保存安定性に優れ、しかも良質なルテニウム膜を得ることができる化学的気相材料及びその化学的気相材料を用いてルテニウム膜を形成する簡易な方法が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の化学気相成長材料は、上記式(1)で表される化合物からなる。
上記式(1)において、Lは上記式(2)で表される。
上記式(2)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又はメチル基である。R 及びRの好ましい例としては、トリフルオロメチル基、メチル基を挙げることができる。またRの好ましい例としては、水素原子、フッ素原子、メチル基を挙げることができる。
上記式(1)において、Yは1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、シクロペンタジエニル、1,3−ブタジエン、2,3.−ジメチル−1,3−ブタジエンのいずれかである。Yの好ましい例としては、1,5−シクロオクタジエン、1.4.−シクロヘキサジエン、シクロペンタジエンを挙げることができ、更に好ましくは1,5−シクロオクタジエン、1,4−シクロヘキサジエンである。
上記式(1)で表される化学気相成長材料の具体例としては、例えば
ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、
ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロオクタジエン)ルテニウム、
ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム、
ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム、
ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(シクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(シクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(シクロペンタジエニル)ルテニウム、
ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−ブタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,3−ブタジエン)ルテニウム、
ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン)ルテニウム、
等を挙げることができる。
これらのうち、
ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(シクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(シクロペンタジエニル)ルテニウ
好ましい。
これらの化合物は化学気相成長材料には単独で、または2種以上を混合して使用することができる。1種類の化学気相成長材料を単独で使用することが好ましい。
本発明の化学的気相成長方法は上記の化学気相成長材料を使用する。
本発明の化学的気相成長方法は、上記の化学気相成長材料を使用する他は、それ自体公知の方法を使用できるが、例えば次のようにして実施することができる。
(1)本発明の化学気相成長材料を気化せしめ、次いで(2)該気体を加熱して、熱分解せしめて基体上にルテニウムを堆積せしめる。なお、上記工程(1)において、本発明の化学気相成長材料の分解を伴っても本発明の効果を減殺するものではない。
ここで使用できる基体としては、例えば、ガラス、シリコン半導体、石英、金属、金属酸化物、合成樹脂等適宜の材料を使用できるが、ルテニウム化合物を熱分解せしめる工程温度に耐えられる材料であることが好ましい。
上記工程(1)において、ルテニウム化合物を気化せしめる温度としては、好ましくは100〜350℃であり、更に好ましくは120〜300℃である。
上記工程(2)において、ルテニウム化合物を熱分解せしめる温度としては、好ましくは180〜450℃であり、より好ましくは200〜400℃であり、更に好ましくは250〜400℃である。
本発明の化学的気相成長方法は、不活性気体の存在下もしくは不存在下又は還元性気体の存在下もしくは不存在下のいずれの条件下でも実施することができる。また、不活性気体および還元性気体の両者が存在する条件で実施してもよい。ここで不活性気体としては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。また、還元性気体としては、例えば水素、アンモニア等を挙げることができる。
また本発明の化学的気相成長方法は、酸化性気体の共存化で実施することも可能である。ここで、酸化性気体としては、例えば酸素、一酸化炭素、亜酸化窒素等を挙げることができる。特に、成膜したルテニウム膜中不純物を低減させる目的から、これら酸化性気体を共存させることが好ましい。酸化性気体を共存させる場合、雰囲気中の酸化性気体の割合は、1〜70モル%であることが好ましく、3〜40モル%であることがより好ましい。
本発明の化学的気相成長方法は、加圧下、常圧下および減圧下のいずれの条件でも実施することができる。なかでも、常圧下又は減圧下で実施することが好ましく、15,000Pa以下の圧力下で実施することがさらに好ましい。
本化学気相成長材料は、空気中の保存に対して酸化等の劣化が生じにくく保存安定性に優れる。市販の実験用の密閉容器に入れて冷暗所に保持するならば、特に容器内の雰囲気を不活性雰囲気にせずとも、15日間は材料の劣化は生じない。
上記の如くして得られたルテニウム膜は、後述の実施例から明らかなように、保存安定性に優れ、純度および電気伝導性が高く、例えば、配線電極のバリア膜、メッキ成長膜等に好適に使用することができる。
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明する。
合成例1
(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウムジクロライド0.27gを窒素置換した100mLフラスコ中に計り取り、50℃下で60分減圧下においた。室温に戻した後に乾燥した窒素でフラスコを満たした。ここによく乾燥したジメチルフォルムアミド5mLとアセチルアセトン0.3mLを窒素雰囲気下で加えて攪拌し、上記(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウムジクロライドを溶解した。次いで溶液を攪拌しながら140℃に加熱し、次いで無水炭酸ナトリウム1gを10分間かけて加え、更に2時間加熱攪拌した。攪拌を止めて2時間かけて室温に戻し、上澄み液をシリンジにて取り出した後、残った固形分を無水メタノール100mLで2回洗浄し、オレンジ色結晶固体を得た。これをジメチルフォルムアミド20mLに溶解し、ジエチルエーテルとテトラヒドロフランの混合溶媒(混合比 1/1(溶積比))を用いて、中性アルミナカラムによるカラムクロマトグラフィーを実施し、赤褐色部を採取した。減圧にて濃縮後、133Paにおいて40℃で2時間加熱して溶媒を除き、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム0.23gを赤紫色の固体として得た。収率56%。
ここで得られた固体の元素分析を実施したところ、炭素:53.4%、水素:6.2%、であった。なお、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウムとしての理論値は、炭素:53.1%、水素:6.4%である。
以下の実施例において、比抵抗はナプソン社製探針抵抗率測定器、形式「RT−80/RG−80」により測定した。膜厚及び膜密度はフィリップス社製斜入射X線分析装置、形式「X’Pert MRD」により測定した。ESCAスペクトルは日本電子(株)製形式「JPS80」にて測定した。また密着性の評価は、JIS K−5400に準拠して碁盤目テープ法によった。
実施例1
(1). 合成例1にて得られたビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム0.01gを窒素ガス中で石英製ボート型容器に計り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流の下流方向側の近傍に熱酸化膜付きシリコンウエハを置き、室温下で反応容器内に酸素・窒素混合ガス(酸素含量5vol%)を250mL/minの流量にて60分間流した。その後反応容器中に酸素・窒素混合ガス(酸素含量5vol%)を20mL/minの流量で流し、さらに系内を110Paにし、反応容器を280℃に30分間加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、窒素ガスを系に入れて圧力を戻し、次いで101.3kPaで窒素ガスを200mL/minの流量で流し、反応容器の温度を350℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は300Åであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、20μΩcmであった。この膜の膜密度は12.0g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
(2). 保存安定性の確認として、空気に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム1gを50mL容量の石英製三口フラスコに入れ、容器全体を50℃に加熱し、その後常圧下で空気を3L/min.の流量で3時間流通させた。外観上ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウムの変化は無かった。その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素で容器内を置換してから、上記(1)と同様の要領で成膜を実施したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は300Åであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、20μΩcmであった。この膜の膜密度は12.0g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られず、空気暴露加熱テストによるルテニウム金属膜質の劣化は観察されなかった。
比較例1
(1). 市販のビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム0.01gを窒素ガス中で石英製ボート型容器に量計り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流の下流の方向側の近傍に石英基板を置き、室温下で反応容器内に酸素・窒素混合ガス(酸素含量5vol%)を250mL/minの流量にて60分間流した。その後反応容器中に酸素・窒素混合ガス(酸素含量5vol%)を20mL/minの流量で流し、さらに系内を110Paにし、反応容器を350℃に30分間加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、窒素ガスを系に入れて圧力を戻し、次いで101.3kPaで窒素ガスを200mL/minの流量で流し、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は250Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが判った。このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、25μΩcmであった。また、この膜の膜密度は12.1g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
(2). 市販のビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウムに対し、実施例1の(2)と同様に空気に対する劣化性検討としての加熱加速テストを実施した。ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム1gを50mL容量の石英製三口フラスコに入れ、容器全体を50℃に加熱し、その後常圧下で空気を3L/min.の流量で3時間流通させた。これにより、本来は薄黄色透明液体状であるビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウムの外観は黄色不透明の液体状に変化した。その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素で容器内を置換してから、上記(1)と同様の要領で成膜を実施したところ、基板上にやや黒ずんだ金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は200Åであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、78μΩcmと低い導電率しか示さなかった。この膜の膜密度は10.8g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、100個の碁盤目ルテニウム膜のうち80個のルテニウム膜が剥離し、ルテニウム膜質が著しく低下した。このように、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウムは空気暴露加熱テストにより成膜されたルテニウム金属膜質が劣化した。

Claims (3)

  1. 下記式(1)
    RuLY (1)
    ここで、Lは下記式(2)
    Figure 0004771516
    で表される基であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基又はメチル基であり、そしてYは1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、シクロペンタジエニル、1,3−ブタジエンまたは2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンである、
    で表わされる化合物からなる化学気相成長材料。
  2. 上記式(1)で表される化合物が、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロオクタジエン)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(1,4−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(シクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(シクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(1,1,1−トリフロロ−ペンタ−2,4−ジケト)(シクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(1,3−ブタジエン)ルテニウム、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(1,3−ブタジエン)ルテニウム、ビス(ペンタ−2,4−ジケト)(2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン)ルテニウム又はビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフロロペンタ−2,4−ジケト)(2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン)ルテニウムである、請求項1に記載の化学気相成長材料。
  3. 請求項1又は2に記載の化学気相成長材料から、化学気相成長法によりルテニウム膜を形成する方法。
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