JP3473386B2 - 車両用交流発電機のステータコイル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、車両用交流発電機
のステータコイルに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の車両用交流発電機は、そのロ−タ
コアは、互いに同形で向かい合って回転軸に装着される
一対のランデル型ポールコアを有し、これらランデル型
ポールコアは、円筒状の基部と、基部の軸方向外端部か
ら周方向所定間隔を隔てて径外方向へ向けて伸びる角柱
状の多数の爪基部と、各爪基部の径方向先端部から軸方
向内側へ延設されてステータコア内に収容される爪部と
を備えている。

【０００３】ステータコイルは、上記ランデル型ポール
コアの各爪基部に対し径外側へ一定のギャップを隔てつ
つステータコアの端面から突出するコイルエンドを有し
ている。また、このランデル型ロータコアの軸方向端面
に遠心ファンを固定し、その冷却風により遠心ファンの
径外側のコイルエンドを冷却する構造も多用されてい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上述した従来のランデ
ル型ポールコアを有する車両用交流発電機では、その高
回転化の進展により騒音特に高周波騒音を低減すること
が重要な問題となっている。この問題を解決するため
に、遮音構造を追設したりすることも考えられるが、製
造工数、重量及び体格が増加してしまうという不具合が
派生してしまう。

【０００５】また、従来の車両用交流発電機では、その
高出力化の進展により通風動力を増加することなく冷却
風量を増大することが重要な問題となっている。本発明
は上記問題に鑑みなされたものであり、製造工数、重量
及び体格の増加を抑止しつつ騒音低減を実現する車両用
交流発電機のステータコイルを提供することをその解決
すべき課題としている。

【０００６】また、製造工数、重量及び体格の増加を抑
止しつつ騒音低減を実現するとともに、更に通風動力を
増加することなく冷却風量を増大することが可能な両用
交流発電機のステータコイルを提供することをその解決
すべき他の課題としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】請求項１記載の構成によ
れば、ステータコイルのコイルエンドの径内側の表面は
ステータコアの端面近傍で最も高い拡径率で拡径され
る。なお、ここで、ステータコアの端面近傍とは、コイ
ルエンドの軸方向長におけるステータコアの端面側の半
分という意味であるが、このましくは、ステータコイル
の端面直近部すなわちコイルエンドの軸方向長における
ステータコアの端面側の３０％以内の部分を意味するも
のとする。

【０００８】このようにすれば、車両用三相交流発電機
において製造工数、重量及び体格の増加を抑止しつつ騒
音低減を実現することができる。以下、詳しく説明す
る。本発明者らが車両用三相交流発電機の騒音発生部位
を特定するために種々実験した結果、ランデル型ポール
コアを有する車両用交流発電機における騒音の多くは、
ランデル型ポールコアの多数の爪磁極やポールコアの端
面に固定された冷却ファンの回転に起因して生じる風切
り音であることがわかっている。

【０００９】更に、騒音エネルギーのかなりの部分は、
各爪磁極（特にその回転方向に面する側端面）や、それ
に軸方向に隣接する遠心ファンの各翼の旋回により生起
された旋回空気流がこれら爪磁極や遠心ファンから径外
方向せ旋回しつつ吹き出された後、これら爪磁極や遠心
ファンの径外側を囲覆するステータコイルのコイルエン
ドに衝突して発生していることがわかった。

【００１０】そこで、本発明者らが、ステータコイルの
コイルエンドを、ステータコアのスロットから出た直後
で径外側に大きく屈曲して、コイルエンドの径内側の表
面と爪磁極や遠心ファンとの間の径方向ギャップ（ロー
タ側ギャップともいう）を拡大して騒音を測定したとこ
ろ、優れた騒音低減効果が得られることがわかった。こ
の理由について以下に推測する。

【００１１】上記爪磁極や遠心ファンにより付勢されて
旋回しながら径外側へ吹き出される旋回空気流のほとん
どは、上記ロータ側ギャップの広狭にかかわらず、最終
的にステータコイルのコイルエンドに衝突して騒音を発
生する筈である。しかし、遠心ファンの遠心翼や、一種
の遠心翼とみなすことができる爪磁極から、特に爪磁極
から、それらの径外側に出た旋回空気流は周方向各部に
おいて大きな風速、流量、風向のばらつきを有してい
る。

【００１２】たとえば、爪磁極により生起される旋回空
気流のうち、爪磁極の回転方向に面する側端面近傍を径
外側に流れる空気流成分は、回転方向後側から迫ってく
る爪磁極により影響されて高密度かつ高速となり、速度
ベクトルはより周方向へ寝る傾向となる。一方、爪磁極
の反回転方向に面する側端面近傍を径外側に流れる空気
流成分は、回転方向前方側へ逃げる爪磁極により影響さ
れて低密度かつ低速となり、速度ベクトルはより径方向
へ立つ傾向となる。更に、ステータコイルのコイルエン
ドに面する頂面がコイルエンドの所定部分を通過する
間、このコイルエンドの所定部分に吹き当たる旋回空気
流成分は、爪磁極が一種の旋回空気流遮断効果を発生す
るので、非常に低密度かつ低速となる。

【００１３】結局、上述した旋回空気流の周方向の各種
ばらつきは局部的な渦流も派生させるので、爪磁極から
径外側に吹き出た旋回空気流の風速度及び風向きは周方
向において大きな周期変動を有し、この周方向に大きな
周期変動を有する旋回空気流がコイルエンドに衝突する
ことにより、高周波の騒音が生じると考えられる。この
問題は、遠心ファンにおいても同じであるが、爪磁極の
場合は、遠心ファンの遠心翼に比べてステータコイルの
コイルエンドに面する頂面がきわめて広いので、一層顕
著となる。

【００１４】本構成で行ったように、爪磁極（本明細書
では、ランデル型ポールコアの爪部及び爪基部を総称し
て爪磁極と称する）とその径外側のステータコイルのコ
イルエンドとの間のロータ側ギャップを増大すると、爪
磁極から径外側に吹き出され、このロータ側ギャップ中
を周方向へ旋回する旋回空気流の旋回期間が延長される
のでコイルエンドへの衝突速度、密度が緩和される。

【００１５】更に、旋回空気流がこのロータ側ギャップ
内を旋回している最中に、旋回空気流の周方向各部にお
ける速度、密度、風向のばらつきが緩和されて一様とな
り、この一様化された旋回空気流がコイルエンドの径内
側の表面に衝突するので、特に高調波騒音成分が低減さ
れるものと考えられる。参考のために、図２に旋回空気
流の速度ベクトルの周方向分布を示す。Ｃ１は爪磁極の
径外側の表面の回転円であり、Ｃ２はコイルエンドの径
内側の表面位置を示す。

【００１６】換言すれば、上述したロータ側ギャップ
は、一般の遠心ファンにおいて回転する遠心翼の径外側
に設けられるシュラウドの機能を果たし、ロータ側ギャ
ップの径方向幅を増大することによりロータ側ギャップ
中の旋回空気流の速度、密度、風向の均一化を促進し、
それにより旋回空気流とコイルエンドとの干渉による高
調波騒音を良好に低減できたものと考えられる。以下、
これをシュラウド拡幅による旋回空気流の整流効果と称
する。

【００１７】また、上述した爪磁極の径外側における旋
回空気流の混乱を抑止することができるので、風損を低
減してその分、風量増大を図ることもできる。更に、本
発明ではランデル型ロータコアの端面に非遠心ファンす
なわち、軸流ファン又は斜流ファンを設ける場合には、
上記ステータコイルのコイルエンドの内径拡大にを行わ
ない。したがって、本構成では、軸流ファン又は斜流フ
ァンから径外側へ吹き出す旋回空気流を減らすことがで
き、これにより、ロータコアを軸方向に貫通してそれを
冷却する軸方向冷却風の低下を抑止することができる。
請求項２記載の構成によれば請求項１記載の車両用交流
発電機のステータコイルにおいて更に、ステータコイル
のコイルエンドの径外側の表面はステータコアの端面近
傍で最も高い拡径率で拡径されるので、コイルエンドの
拡径作業により、請求項１及び２の構成を実現できるの
で、製造作業が簡素となる他、コイルエンド内部のコイ
ル密度が増加して内部の空気抵抗が増大するのを防止す
ることができる。

【００１８】請求項３記載の構成によれば請求項１又は
２記載の車両用交流発電機のステータコイルにおいて更
に、コイルエンドは、ランデル型ロータコアの軸方向端
面に固定された遠心ファンの径外側の空間に達するの
で、請求項１に関して既に説明した上記シュラウド拡幅
による旋回空気流の整流効果が遠心ファンの遠心翼に対
しても有効となり、一層の騒音低減効果を得ることがで
きる。

【００１９】

【００２０】

【発明を実施するための形態】本発明の好適な態様を以
下の実施例を参照して説明する。ロータ側ギャップは、
ステータコイルのコイルエンドの全周のうちの爪磁極に
最も近接する部分と爪磁極（更に言えば爪基部）との間
の径方向距離をいうものとする。

【００２１】同様に、フレーム側ギャップも、ステータ
コイルのコイルエンドの全周のうちのフレームに最も近
接する部分と爪磁極（更に言えば爪基部）との間の径方
向距離をいうものとする。

【００２２】

【実施例１】（回転子の全体構成）この実施例のランデ
ル型ポールコアを用いる車両用交流発電機の全体構成を
図１を参照して説明する。この車両用交流発電機１は、
電機子として働く固定子２と、界磁子として働く回転子
３とを有している。

【００２３】固定子２は、ハウジング（フレーム）４に
固定されるステータコア２１と、ステータコア２１に巻
装される三相のステータコイル２２とを有している。ス
テータコイル２２は、ステータコア２１から前方に突出
するコイルエンド２２ａと、ステータコア２１から後方
に突出するコイルエンド２２ｂとを有している。回転子
３は、ハウジング４に回転自在に支承されるシャフト５
に一体に嵌着されており、互いに軸方向に向かい合って
重ね合わされたランデル型ロータコア６をなす一対のラ
ンデル型ポールコア７、フィールドコイル（界磁コイ
ル）８を有している。

【００２４】ランデル型ポールコア７は、円筒状の基部
７１と、基部７１の軸方向外端部から周方向６０度ずつ
隔てて径外方向へ向けて伸びる６本の角柱状の多数の爪
基部７２と、各爪基部７２の径方向先端部から軸方向内
側へ延設されてステータコア２１内に収容される爪部７
３とからなる。爪基部７２の径外側の角部は面取りさ
れ、これにより爪基部７２の頂面７２ａは、爪部７３と
の境界点７５からランデル型ポールコア７の外端面７４
に達するまで下り斜面又はＲ形状となっている。

【００２５】８は、前側のランデル型ポールコア７の外
端面７４に固定された斜流ファンであり、斜流ファン８
はハウジング４の前側吸入口４１から吸入した空気流の
一部をコイルエンド２２ａに吹き当て、空気流の残部を
各爪部７３の間隙を通じて後方へ吹き出す。９は、後側
のランデル型ポールコア７の外端面７４に固定された遠
心ファンであり、遠心ファン９はハウジング４の後側吸
入口４２から吸入した空気流をコイルエンド２２ｂに吹
き当てられた後、ハウジング４の周壁部に形成された開
口から外部に排出される。各爪部７３の間隙を通じて後
方へ吹き出された上記空気流の残部も、遠心ファン９に
より生起された上記空気流とともにコイルエンド２２ｂ
に吹き当てられた後、ハウジング４の周壁部に形成され
た開口から外部に排出される。

【００２６】この車両用交流発電機のランデル型ポール
コア以外の更に詳細な他の構造説明および動作説明は省
略する。以下、本発明の特徴部分を説明する。この実施
例の特徴は、遠心ファン側に突出するステータコイル２
２のコイルエンド２２ｂの基端部を拡径方向へ屈曲した
点にある。 詳しく説明すると、コイルエンド２２ｂの
径内側の表面２２０は、ステータコア２１の端面近傍に
て急激に径外側へ屈曲された形状の段差部２２１と、段
差部２２１から後方へほぼ軸方向へ伸びる形状の主部２
２２とからなる。これにより、コイルエンド２２ｂの径
内側の表面２２０と爪基部７２の頂面７２ａとの間のロ
ータ側ギャップ１０の径方向距離ｄは、段差部２２１で
急激に増大し、主部２２２で爪基部７２の頂面７２ａの
傾斜率に一致して増大する。

【００２７】同様に、コイルエンド２２ｂの径外側の表
面２２３は、ステータコア２１の端面近傍にて急激に径
外側へ屈曲された形状の段差部２２４と、段差部２２４
から後方へほぼ軸方向へ伸びる形状の主部２２５とから
なる。また、コイルエンド２２ｂの軸方向先端部は、ラ
ンデル型ポールコア７の外端面７４に固定された遠心フ
ァン９の径外側の空間に達している。

【００２８】ただし、コイルエンド２２ａの軸方向断面
において、その径内側の表面及び径外側の表面はほぼ軸
方向に延設されている。このようにすれば、遠心ファン
９及び後方側のランデル型ポールコア７の特に爪基部７
２により生起される旋回空気流はロータ側ギャップ１０
の径方向距離ｄが増大されるために、良好に整流され
る。また、旋回空気流の周方向各部における速度、密度
が緩和される。それらの結果、顕著な騒音低減効果が得
られる。

【００２９】また、コイルエンド２２ｂの径内側の表面
２２０及び径外側の表面２２３の両方をコイルエンド２
２ｂの基端部で拡径しているので、コイルエンド２２ｂ
内部のコイル密度が増加して内部の空気抵抗が増大する
のを防止することができる。更に、斜流ファン８側にお
いてはコイルエンド２２ａの拡径を実施しないので、斜
流ファン８により生起されて軸方向へ流れる空気流が減
少することがない。

【００３０】なお、上記した実施例では遠心ファン９に
隣接するランデル型ポールコア７に近接するコイルエン
ド２２ｂをその基端部で拡径してロータ側ギャップ１０
を増大させたが、ステータコア２１のスロットに挿入さ
れてステータコイル２２を保護するウエッジのスロット
から後方への突出量を減らしたり、爪基部７２の頂面７
２ａの傾斜率を増大することも同様の趣旨で騒音低減に
有効であることはもちろんである。

【００３１】実験結果を以下に説明する。ただし、爪基
部７２の頂面７２ａの傾斜率は２０度、爪基部７２の最
大径は８６ｍｍ、最小径は７６ｍｍ、ステータコア２１
の端面からランデル型ポールコア７の外端面７４までの
爪基部７２の頂面７２ａの軸方向長さは９ｍｍ、爪基部
７２の頂面７２ａの周方向長さは２３ｍｍ、コイルエン
ド２２ｂの段差部２２１、２２４の軸方向長さは４ｍ
ｍ、コイルエンド２２ｂの主部２２２、２２５の軸方向
長さは１５ｍｍ、ロータ側ギャップ１０の径方向幅ｄの
最小値は１ｍｍ、最大値は８ｍｍ、コイルエンド２２ｂ
の径外側の表面２２３の拡径形状はその径内側の表面２
２０の拡径形状に一致しているとする。

【００３２】回転数１００００ｒｐｍで回転させた場
合、車両用三相交流発電機１からｍ離れた位置の騒音レ
ベルは、コイルエンド２２ｂをコイルエンド２２ａと同
様に拡径しない従来例よりも、上記のように拡径した場
合で約８ｄＢ低下できることがわかった。コイルエンド
２２ｂの径方向断面形状を模式的に図３に示し、その変
形態様を図４〜図６に示す。

【００３３】図４は、両側のコイルエンド２２ａ、２２
ｂの両方をその基端部で拡径したものであり、両側に遠
心ファンをもつ形式の車両用三相交流発電機などに有効
である。図５は、コイルエンド２２ａの径内側の表面だ
け上記拡径を行い、その径外側の表面の拡径を行わない
例であり、この場合には、コイルエンド２２ａ内部の空
気流遮蔽率が増加する。

【００３４】図６は、図５に示す態様おいて更に、コイ
ルエンド２２ｂの径外側の表面の拡径を行わない例であ
り、この場合には、コイルエンド２２ｂ内部の空気流遮
蔽率が増加する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の車両用交流発電機の一実施例を示す軸
方向断面図である。

【図２】図１に示すコイルエンド２２ｂの径内側におけ
る空気の流れを示す説明図である。

【図３】図１に示すコイルエンド２２ａ、コイルエンド
２２ｂの径方向断面形状を示す模式図である。

【図４】変形態様におけるコイルエンド２２ａ、コイル
エンド２２ｂの径方向断面形状を示す模式図である。

【図５】変形態様におけるコイルエンド２２ａ、コイル
エンド２２ｂの径方向断面形状を示す模式図である。

【図６】変形態様におけるコイルエンド２２ａ、コイル
エンド２２ｂの径方向断面形状を示す模式図である。

【符号の説明】

１は車両用交流発電機、１０はロータ側ギャップ、２１
はステータコア、２２はステータコイル、２２ａ、２２
ｂはコイルエンド、６はランデル型ロータコア、７はラ
ンデル型ポールコア、８は斜流ファン、９は遠心ファ
ン、７１は円筒状の基部、７２は爪基部、７３は爪部、
２２０はコイルエンド２２ｂの径内側の表面、２２１は
コイルエンド２２ｂの径内側の表面２２０の段差部、２
２２はコイルエンド２２ｂの径内側の表面２２０の主
部、２２３はコイルエンド２２ｂの径外側の表面、２２
４はコイルエンド２２ｂの径外側の表面２２３の段差
部、２２５はコイルエンド２２ｂの径外側の表面２２３
の主部。

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H02K 19/22

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】コイルエンドがランデル型ロータコアに対
   し径外側へ所定のロータ側ギャップを隔てつつステータ
   コアの端面から突出する車両用三相交流発電機のステー
   タコイルにおいて、 前記コイルエンドの径内側の表面は、最も高い拡径率で
   拡径される径内側段差部をステータコアの端面近傍に有
   し、 前記コイルエンドは、 前記径内側段差部を有して前記ランデル型ロータコアの
   一端面側の遠心ファンに近接する第一のコイルエンド
   と、 前記径内側段差部を有することなく前記ランデル型ロー
   タコアの他端面側の非遠心ファンに近接する第二のコイ
   ルエンドと、 を有する ことを特徴とする車両用交流発電機のステータ
   コイル。
2. 【請求項２】請求項１記載の車両用交流発電機のステー
   タコイルにおいて、 前記コイルエンドの径外側の表面は、最も高い拡径率で
   拡径される径外側段差部をステータコアの端面近傍に有
   することを特徴とする車両用交流発電機のステータコイ
   ル。
3. 【請求項３】請求項１又は２記載の車両用交流発電機の
   ステータコイルにおいて、 前記コイルエンドは、前記ランデル型ロータコアの軸方
   向端面に固定された遠心ファンの径外側の空間に達する
   ことを特徴とする車両用交流発電機のステータコイル。