JP3473196B2 - 電子天びん - Google Patents

電子天びん

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は電磁力平衡型の電子
天びんに関し、更に詳しくは、天びん桿の変位検出結果
をデジタル変換するとともに、そのデジタルデータを用
いたPID演算によって、電磁コイルに流すべきフィー
ドバック電流値を決定する、いわゆるフルデジタル方式
の電子天びんに関する。 【0002】 【従来の技術】電磁力平衡型の電子天びんにおいては、
一般に、被測定荷重が作用することによって生じる天び
ん桿のバランス点からのずれを変位検出器で検出し、そ
の検出結果に応じた電流を、静磁場内に置かれたコイル
(電磁コイル)に流すことによって、被測定荷重に対応
した電磁力を発生して天びん桿をバランスさせるサーボ
系を備えており、そのバランス状態において電磁コイル
に流れる電流の大きさから、被測定荷重の大きさを求
め、これを平均化処理等のデータ処理を行った後、計量
値として表示する。ここで、このサーボ系においては、
通常、電磁コイルに流すべきフィードバック電流は、変
位検出結果をPID(比例・積分・微分)演算すること
によって決定している。 【0003】このような電磁力平衡型の天びんにおいて
は、従来、天びん桿の変位検出値をA−D変換した後、
デジタル演算によってPID演算する、いわゆるフルデ
ジタル方式のものは市販されておらず、基本的には、ア
ナログPID演算によってフィードバック値を決定して
おり、平均化処理等を行って計量値を決定するためのデ
ータ処理部で用いるデータは、フィードバック電流を電
圧変換した信号ないしはアナログPID演算結果をA−
D変換器でデジタル化することによって得ている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記したようなアナロ
グPID演算処理を用いたサーボ系と、フィードバック
電流値をデジタル化するA−D変換器を備えた電子天び
んでは、サーボ系とA−D変換器の双方に高い安定度が
要求され、分解能、応答性、安定性の全てを同時に得る
ことが困難である。 【0005】ところで、フルデジタル方式の電子天びん
が実用化されていない理由は、A−D変換に伴う量子化
誤差を低減することが難しい点にある。このような量子
化誤差は、測定精度に悪影響を及ぼすばかりでなく、サ
ーボ系に不感帯およびヒステリシスを生じさせる原因と
なる。 【0006】すなわち、変位検出信号をA−D変換器で
デジタル化する場合、A−D変換器の量子化レベル以下
の信号の変化があってもデジタル信号には反映しない。
このようなデジタル信号を用いてPID演算を施し、そ
の演算結果によってフィードバック電流値を決定する場
合、デジタル化されないレベルの偏差が残り、サーボ系
に不感帯およびヒステリシスを生じさせる。このような
問題点を解消し、あるいは低減するためには、A−D変
換器として、その入力範囲が広く、かつ、高い分解能を
持つものを用いる必要があるが、このような高分解能で
しかも広いダイナミックレンジを持つA−D変換器は極
めて高価であるばかりでなく、変換時間が長くなって応
答性が低下してしまうという問題がある。 【0007】ここで、量子化誤差を低減するための一般
論としては、変位検出信号を例えば対数アンプ等の非線
形アンプを通過させることによって、高いレベルに比し
て低いレベルの信号が高利得となるように変換したうえ
で、A−D変換器に入力してデジタル化し、デジタル演
算によって元の信号の形に戻す方法や、あるいは、変位
検出信号に既知の所定周期の三角波信号を重畳させる等
の方法がある。 【0008】しかし、前者のA−D変換器へのアナログ
入力信号を変換する方法では、アナログ回路が複雑でパ
ラメータの設定工数に要するコストが問題となり、ま
た、後者の特定の交流信号を重畳する方法は、統計的な
結果を期待したもので、精度に限度があり、また、信号
および系に非直線性があれば誤差になってしまうという
問題がある。 【0009】本発明の目的は、特に高い分解能のA−D
変換器を用いることなく、その量子化レベル以下の変位
信号の情報をもデジタルPID演算に反映させてフィー
ドバック値を決定することができ、もって比較的安価
で、しかもフルデジタルで高い分解能を持つ電子天びん
を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の電子天びんは、図1に例示するように、被
測定荷重による天びん桿1の回転変位を変位検出器4に
よって検出し、その変位検出結果に応じて電磁コイル2
に流すフィードバック電流の大きさを制御することによ
り、被測定荷重に対応する電磁力を発生して天びん桿1
をバランスさせるサーボ系10を備え、そのバランス状
態で電磁コイルに流れる電流値から被測定荷重の大きさ
を求める電子天びんにおいて、サーボ系10が、変位検
出器4の出力を増幅する増幅器11と、変位検出器4の
出力を時間積分する積分回路12と、その積分回路12
と増幅器11の出力を加算する加算回路13と、その加
算回路13の出力をデジタル化するA−D変換器14
と、そのA−D変換器14の出力を入力変数として、所
定周期ごとにPID演算を行って電磁コイル2に流すべ
きフィードバック電流の大きさを決定するデジタルPI
D演算手段15を含んでいることによって特徴づけられ
る。 【0011】ここで、本発明における増幅器11として
は、入力信号に一定の定数を乗じた信号を出力する線形
増幅器のほか、入力信号をパラメータとして例えば対数
関数や折れ線関数を演算することによって、変位検出信
号の0レベル近傍のみを高利得とするような非線形増幅
器を使用することができる。 【0012】 【作用】A−D変換器14には、増幅器11による変位
検出器4の出力の増幅信号のみならず、積分回路12の
出力もが重畳されて入力され、その積分回路12の出力
によって、変位検出信号の増幅信号のみをA−D変換器
14に入力したときに量子化誤差となってしまう情報量
が、デジタルデータとしてデジタルPID演算手段15
に供給される。 【0013】すなわち、変位検出器4の出力を入力する
積分回路12の出力は、例えばその入力信号が一定レベ
ルである場合、図2に例示するようにその出力は時間と
ともに増大する。従って、変位検出器4の出力がA−D
変換器14の量子化レベル以下の入力信号であったとし
ても、積分回路12を経ることによって、ある一定時間
が経過した後には、その変位検出出力は量子化レベルの
大きさにまで達するに到る。このような積分回路12の
出力を、増幅器11の出力に重畳させてA−D変換器1
4に導入すれば、A−D変換器14のデジタル出力に
は、ある程度の時間差はあるものの、増幅器11の出力
だけでは量子化誤差となっていた微小変位情報もが含ま
れることになる。 【0014】ここで、天びんの平衡動作において、A−
D変換器14の量子化レベル以下の微小変位に対する応
答は、変位が比較的大きい場合の応答に比して遅くとも
問題はなく、従って、積分回路12によって積分される
ことでA−D変換器14の量子化レベルにまで到達する
までに上述のようにある程度の時間を要しても、実用的
な問題はない。 【0015】また、本発明の構成において、積分回路1
2の出力は時間経過とともに増大するように見かけられ
るが、変位検出器4の出力が負の状態では時間経過とと
もに減少し、また、この積分回路12の出力は増幅器1
1の出力と重畳された後にデジタル化され、PID演算
された上で電磁コイル2に流れる電流としてフィードバ
ックされ、更にその電流が流れることによって生じる電
磁力により天びん桿1の変位が0となるようにサーボ系
が機能するのであるから、A−D変換器14へのアナロ
グ入力信号として、増幅器11とと積分回路12の各出
力のいずれが主たる部分を占めようとも問題となること
はなく、要は天びん桿1を平衡させるべくPID演算に
供されるデジタル変位検出データに、従来ではA−D変
換器14による量子化誤差となっていた微小変位情報が
確実に含まれることになり、特に高分解能のA−D変換
器を用いることなく、フルデジタルで高い分解能を持つ
電子天びんが得られる。 【0016】 【発明の実施の形態】図1は本発明の実施の形態の全体
構成を模式的に示すブロック図である。被測定荷重Wが
負荷される測定皿1aは、支点1bを中心として回動自
在の天びん桿1の一端部に支承されている。この天びん
桿1の他端部近傍には、巻き枠2aを介して電磁コイル
2が巻回されている。この電磁コイル2は、永久磁石3
aを主体とする磁気回路3が作る静磁場中に配置されて
おり、そこに流れる電流の大きさに応じた電磁力を発生
する。 【0017】天びん桿1の他端部の先端には変位検出器
4が配設されており、この変位検出器4の出力Ea(t)は
増幅器11および積分回路12に入力される。増幅器1
1は例えば線形の直流増幅器であり、変位検出器4の出
力Ea(t)に一定の係数を乗じた信号Eb(t)を出力する。 【0018】一方、積分回路12は変位検出器4の出力
Ea(t)を時間積分した出力Ec(t)を出力するが、この積
分回路12はクロック発生部17から出力されるリセッ
トパルスにより、後述するA−D変換器14の変換タイ
ミングと同期して一定周期でリセットされ、そのリセッ
トパルスによるリセット動作の終了時刻をt0 とする
と、この積分回路12の出力Ec(t)は、 【0019】 【数1】 【0020】となる。つまり、例えば変位検出器4の出
力Ea(t)が一定値の場合、積分回路12の出力は、 【0021】 【数2】 【0022】と、時間とともに直線的に変化する。増幅
器11と積分回路12の出力は、加算回路13によって
加算された後、A−D変換器14のアナログ入力に導入
される。A−D変換器14では、クロック発生部17か
ら変換タイミングパルスが供給されるごとに、アナログ
入力に導入された信号をデジタル化し、そのデジタル変
換データをデジタルPID演算部15に供給する。 【0023】デジタルPID演算部15では、クロック
発生部17からフィードバックタイミングパルスが供給
されるごとに、A−D変換器14からのデジタル変換デ
ータをパラメータとて、比例演算、時間積分演算、およ
び時間微分演算を施してフィードバック値を決定し、パ
ルス変調回路16に供給する。また、このデジタルPI
D演算部15によって決定されたフィードバック値は、
刻々の被測定荷重Wの大きさを表すデータとしてデータ
処理部(図示せず)に供給され、このデータ処理部にお
いて平均化処理等を施されることによって、計量表示値
が決定される。 【0024】パルス幅変調回路16は、デジタルPID
演算部15から供給されるフィードバック値の大きさに
応じたデューティを持ち、かつ、一定の波高値を持つパ
ルス電流を発生し、そのパルス電流を電磁コイル2に供
給する公知の回路であり、デジタルPID演算部15か
らのデータが到来するごとに、電流パルスを立ち上げる
と同時に、クロック発生部17から供給されるPMWク
ロックパルスの計数を開始し、その計数値がPID演算
部15からのフィードバック値に応じた値に達した時点
でその電流パルスを立ち下げることによって、フィード
バックタイミングパルスと同期して、フィードバック値
に応じたデューティを持つ一定波高値のパルス電流を発
生する。なお、このパルス変調回路16は、例えば定電
流源、プリセットカウンタ、および電子スイッチ等によ
って構成することができる。 【0025】以上の構成において、各パルスの周波数の
一例を挙げると、PWMクロックパルスは20MHz、
A−D変換器14に対する変換タイミングパルスは10
kHz、フィードバックタイミングパルスは1kHzで
あり、積分回路12に対するリセットパルスは200H
zである。 【0026】以下、以上の本発明の実施の形態の動作に
ついて説明する。図2は、サーボ系による電磁コイル2
へのフィードバックを行わない状態において、変位検出
器4の出力が一定の微小値を継続している状態での積分
回路12の出力信号波形とその信号のA−D変換結果の
例と、積分回路12へのリセットパルス並びにA−D変
換器14への変換タイミングパルスとを併記して示すタ
イムチャートである。 【0027】変位検出器4の出力が一定値を継続してい
る場合、積分回路12の出力は時間とともに直線的に増
大するが、その変位検出器4の出力がA−D変換器14
の分解能(1ビット分)よりも小さい値である場合に
は、時間とともに増大する積分回路12の出力は、ある
一定時間が経過することによって、A−D変換器14の
1ビット分の大きさに到達する。従って、A−D変換器
14の出力は、各A−D変換タイミングごとにはその微
小変位検出出力をデジタル化できないものの、上記した
一定時間ごとに1ビット分だけ変化する。 【0028】例えば、変位検出器4の出力がA−D変換
器14の分解能の1/5の大きさを維持したとき、1m
sec程度の一定時間ごとに積分回路12の出力が1ビ
ット相当量だけ増大していくように積分回路12の定数
を設定しておけば、A−D変換器4に対して分解能の1
/5の定常的な入力に対して、そのデジタル出力は1m
secごとに1ビットずつ増大する。従ってA−D変換
器14の出力には、その変換タイミングである0.1m
secごとには変位検出器4の微小検出出力が反映され
ないものの、10回の変換タイミングごとに、その微小
検出出力を積分した結果が反映され、その情報がデジタ
ルPID演算部15に供給されることになり、A−D変
換器14の分解能よりも小さいレベルの変位情報がデジ
タルサーボ系に供給され、量子化誤差が解消される。 【0029】なお、図2は、電磁コイル2へのフィード
バックを行わない状態で示しているが、このようなレベ
ルの時間では、天びんメカニズムの慣性により、フィー
ドバックを掛けてもほぼ同様な信号が得られる。 【0030】また、以上の例においては、積分回路12
に対してA−D変換タイミングパルスと同期してリセッ
トをかけることによって、変位が大きい場合等における
A−D変換器14への入力信号として、積分回路12の
出力信号が増大することを回避するようにした例を示し
たが、このリセットは必ずしも必要ではない。すなわ
ち、A−D変換器14には、積分回路12の出力と増幅
器11の出力が重複して入力され、そのデジタル出力を
用いたPID演算によって電磁コイル2へのフィードバ
ック電流の大きさが決定され、これによって天びん桿1
がバランス状態に戻されることから、A−D変換器14
への入力信号である、増幅器11と積分回路12の出力
の合計によって、変位情報が正しくサーボ系に伝達され
れば、いずれの出力が主体をなそうとも特に問題は生じ
ない。また、何らかの事情により、積分回路12の出力
の増大がサーボ系に悪影響を及ぼす恐れがある場合に
は、積分回路12にリセットをかけるほか、積分回路1
2の出力をある一定レベル以下に制限する等の他の対策
も採用することができる。 【0031】更に、以上の実施の形態では、電磁コイル
2にデューティが変化するパルス電流を流す、いわゆる
パルス変調方式の電子天びんについて説明したが、本発
明はこれに限定されず、電磁コイル2へのフィードバッ
ク電流の供給の仕方については任意の方式を採用するこ
とができる。 【0032】更にまた、増幅器11として、線形増幅器
に代えて、制御の分野において常用されているように、
変位検出器の出力の所要レベルの範囲を強調すべく折れ
線関数で変換し、あるいは対数変換する等、非線形増幅
器を採用してもよいことは勿論である。 【0033】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
天びん桿の変位を検出する変位検出器の出力を、増幅器
で増幅すると同時に積分回路によって時間積分し、その
積分出力を増幅出力とともにA−D変換器に入力してデ
ジタル化し、そのデジタル変換データをデジタルPID
演算して電磁コイルに供給すべきフィードバック電流値
を決定するから、A−D変換器の分解能以下の微小な変
位検出値についても、デジタルPID演算のパラメータ
として取り込まれることになり、比較的分解能の低いA
−D変換器を用いても、その量子化誤差が生じにくく、
安価で高分解能のフルデジタルの電子天びんが得られ
る。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施の形態の全体構成を模式的に示す
ブロック図 【図2】そのサーボ系10によるフィードバックをかけ
ない状態で示す積分回路12の出力信号波形およびその
A−D変換結果の例と、積分回路12へのリセットパル
スおよびA−D変換タイミングパルスとを併記して示す
タイムチャート 【符号の説明】 1 天びん桿 1a 測定皿 1b 支点 2 電磁コイル 3 磁気回路 4 変位検出器 10 サーボ系 11 増幅器 12 積分回路 13 加算回路 14 A−D変換器 15 PID演算部 16 パルス変調回路 17 クロック発生部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01G 7/04 G01G 23/37 G01G 7/

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 被測定荷重による天びん桿の回転変位を
    変位検出器によって検出し、その変位検出結果に応じて
    電磁コイルに流すフィードバック電流の大きさを制御す
    ることにより、被測定荷重に対応する電磁力を発生して
    上記天びん桿をバランスさせるサーボ系を備え、そのバ
    ランス状態で上記電磁コイルに流れる電流値から被測定
    荷重の大きさを求める電子天びんにおいて、上記サーボ
    系は、上記変位検出器の出力を増幅する増幅器と、上記
    変位検出器の出力を時間積分する積分回路と、その積分
    回路と増幅器の出力を加算する加算回路と、その加算回
    路の出力をデジタル化するA−D変換器と、そのA−D
    変換器の出力を入力変数として、所定周期ごとにPID
    演算を行って上記電磁コイルに流すべきフィードバック
    電流の大きさを決定するデジタルPID演算手段を含む
    ことを特徴とする電子天びん。
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